前記ポリアミド樹脂がポリアミド6、ポリアミド66及びポリアミド11からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂と相容化剤とフィラーとを含有するものである。
【0014】
(ポリアミド樹脂)
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、アミド結合(−NH−CO−)を介して複数のモノマーが重合されてなる鎖状骨格を有する重合体である。前記モノマーとしては、アミノ酸、ラクタム、ジアミン及びジカルボン酸が挙げられる。前記アミノ酸としては、6‐アミノカプロン酸、11‐アミノウンデカン酸、12‐アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられ、前記ラクタムとしては、ε‐カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω−ラウリルラクタム等が挙げられる。また、前記ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノぺンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1、19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。さらに、前記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのモノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明に用いられるポリアミド樹脂としては特に制限はないが、具体的には、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、ポリアミド10T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/2M−5T、ポリアミド9T/2M−8T等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのポリアミド樹脂のうち、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上するという観点から、PA6、PA66、PA11が好ましく、PA6がより好ましい。
【0016】
前記ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)としては特に制限はないが、5,000〜100,000が好ましく、5,000〜70,000がより好ましく、10,000〜40,000が更に好ましい。また、前記ポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)としては特に制限はないが、5,000〜100,000が好ましく、7,500〜80,000がより好ましく、10,000〜70,000が更に好ましい。なお、前記数平均分子量及び前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0017】
(ポリオレフィン樹脂)
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂は、温度230℃、荷重21.18Nの条件でJIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が23g/10min以上のものである。このようなMFRを有するポリオレフィン樹脂を用いることによって、高い剛性と延性とが両立した熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。一方、MFRが前記下限未満になると、熱可塑性樹脂組成物の延性が向上しない。また、熱可塑性樹脂組成物の延性が向上するという観点から、前記MFRとしては30g/10min以上が好ましく、40g/10min以上がより好ましく、50g/10min以上が更に好ましい。
【0018】
前記ポリオレフィン樹脂としては特に制限はないが、エチレン単独重合体(ポリエチレン)、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。前記α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数3〜20の不飽和炭化水素が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのポリオレフィン樹脂のうち、熱可塑性樹脂組成物の剛性が更に向上するという観点から、プロピレンに由来する構成単位を主構成単位として有するプロピレン系樹脂、エチレンに由来する構成単位を主構成単位として有するエチレン系樹脂が好ましく、前記プロピレン系樹脂がより好ましい。また、このようなプロピレン系樹脂及びエチレン系樹脂としては、熱可塑性樹脂組成物の剛性が更に向上するという観点から、プロピレン又はエチレンに由来する構成単位の含有量が、それぞれ、プロピレン系樹脂又はエチレン系樹脂中の全構成単位のうちの50モル%以上であるものが好ましく、100モル%であるもの(ポリプロピレン又はポリエチレン)がより好ましい。
【0019】
前記ポリオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)としては特に制限はないが、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜450,000がより好ましく、10,000〜400,000が更に好ましい。また、前記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)としては特に制限はないが、10,000〜500,000が好ましく、50,000〜450,000がより好ましく、100,000〜400,000が更に好ましい。なお、前記数平均分子量及び前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0020】
なお、本発明に用いられるポリオレフィン樹脂は、前記ポリアミド樹脂と相容性がなく、かつ、前記ポリアミド樹脂と結合し得る反応性基を実質的に有しないという点において、後述する変性エラストマーとは異なるものである。
【0021】
(相容化剤)
本発明に用いられる相容化剤としては、例えば、前記ポリアミド樹脂と反応し得る反応性基を有する変性エラストマーが挙げられる。このような変性エラストマーを相容化剤として用いることによって、高い剛性と延性とが両立し、耐衝撃性にも優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。一方、前記ポリアミド樹脂と反応し得る反応性基を有する変性エラストマーの代わりに前記ポリアミド樹脂と反応し得る反応性基を有するポリオレフィン樹脂(前記変性エラストマーを除く)を用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び延性が低下する。
【0022】
前記変性エラストマーとしては、前記反応性基を有する変性オレフィン系熱可塑性エラストマー、前記反応性基を有する変性スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0023】
前記反応性基を有する変性オレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ぺンテン、1−オクテン等のα−オレフィンのうちの2種以上のモノマーの共重合体が挙げられる。これらの共重合体は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの共重合体のうち、熱可塑性樹脂組成物の剛性及び耐衝撃性が更に向上するという観点から、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体、及び、プロピレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−1−ブテン共重合体(EBR)、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体(EOR)、プロピレン−1−ブテン共重合体(PBR)、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体(POR)が挙げられる。
【0024】
前記反応性基を有する変性スチレン系熱可塑性エラストマーを構成するスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系化合物と共役ジエン化合物又は前記α−オレフィンとのブロック共重合体、及びその水添体が挙げられる。これらの共重合体は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン;ビニルナフタレンが挙げられる。また、前記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)が挙げられる。
【0025】
前記ポリアミド樹脂と結合し得る反応性基としては、前記ポリアミド樹脂と共有結合し得る官能基、具体的には、酸無水物基(−CO−O−OC−)、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基[−C
2O(2つの炭素原子と1つの酸素原子とからなる三員環構造)]、オキサゾリン基(−C
3H
4NO)、イソシアネート基(−NCO)が挙げられる。これらの官能基のうち、反応性が高いという観点から、酸無水物基が好ましい。また、前記変性エラストマーにおける前記反応性基の割合としては、0.5質量%以上が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0026】
また、前記反応性基を前記オレフィン系熱可塑性エラストマー及び前記スチレン系熱可塑性エラストマーに付与する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、前記エラストマーに前記酸無水物基を付与する方法としては、酸無水物を前記エラストマーのモノマーとしてさらに添加する方法が挙げられる。前記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸が挙げられる。これらの酸無水物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの酸無水物のうち、反応性が高いという観点から、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0027】
本発明に用いられる前記反応性基を有する変性エラストマーとしては、無水マレイン酸変性EPR、無水マレイン酸変性PBR、無水マレイン酸変性EBR、無水マレイン酸変性EOR、無水マレイン酸変性POR等の無水マレイン酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー;無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SBS、無水マレイン酸変性SIS、無水マレイン酸変性SEPS等の無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの変性エラストマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの変性エラストマーのうち、前記反応性基を有する変性オレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましく、反応性が高く、また、前記ポリオレフィン樹脂とより相容しやすく、熱可塑性樹脂組成物の剛性及び耐衝撃性が更に向上するといった観点から、無水マレイン酸変性PBR、無水マレイン酸変性EBR、無水マレイン酸変性EORがより好ましい。
【0028】
前記反応性基を有する変性エラストマーの重量平均分子量(Mw)としては特に限定はないが、重量平均分子量が大きい方が熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上するという観点から、10,000〜500,000が好ましく、20,000〜500,000がより好ましく、25,000〜400,000が更に好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0029】
(フィラー)
本発明に用いられるフィラーとしては特に制限はなく、無機繊維(ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維(炭素繊維)、チタン酸カリウム繊維等);有機繊維(芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維、植物性繊維等);ガラス、シリカ、黒鉛、珪酸化合物(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等)、金属炭酸塩又は硫酸塩(カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の炭酸塩又は硫酸塩)などからなる粒子やフレークが挙げられる。このようなフィラーを配合することによって、剛性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。これらのフィラーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのフィラーの中でも、炭素繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0030】
また、前記フィラーとしては、熱可塑性樹脂組成物の流動性及び成形性が向上するという観点から、平均長さが6mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。なお、平均長さは、無作為に抽出した100個以上のフィラーの長軸方向の長さ(最長軸の長さ)を電子顕微鏡により測定し、その値を平均することにより求めることができる。
【0031】
さらに、前記フィラーとしては、熱可塑性樹脂組成物の剛性向上効果が高くなるという観点から、平均アスペクト比が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。なお、平均アスペクト比は、無作為に抽出した100個以上のフィラーの長軸方向の長さ(最長軸の長さ)及び短軸方向の直径(前記最長軸に直行する面の最大長さ)を電子顕微鏡により測定し、各フィラーのアスペクト比(長軸方向の長さと短軸方向の直径との比(長軸方向の長さ/短軸方向の直径))を求め、その値を平均することにより求めることができる。
【0032】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂と前記相容化剤と前記フィラーとを含有するものである。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記ポリアミド樹脂の含有量は、前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂と前記相容化剤との合計100質量%に対して35〜75質量%である。前記ポリアミド樹脂の含有量が前記下限未満になると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、他方、前記上限を超えると、相対的に前記ポリオレフィン樹脂の含有量が減少するため、熱可塑性樹脂組成物の延性が低下する。また、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び延性が更に向上するという観点から、前記ポリアミド樹脂の含有量としては40〜65質量%が好ましい。
【0034】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記ポリオレフィン樹脂の含有量は、前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂と前記相容化剤との合計100質量%に対して15〜55質量%である。前記ポリオレフィン樹脂の含有量が前記下限未満になると、熱可塑性樹脂組成物の延性が低下し、他方、前記上限を超えると、相対的に前記ポリアミド樹脂の含有量が減少し、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。また、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び延性が更に向上するという観点から、前記ポリオレフィン樹脂の含有量としては20〜50質量%が好ましい。
【0035】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記相容化剤の含有量は、前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂と前記相容化剤との合計100質量%に対して5〜30質量%である。前記相容化剤の含有量が前記下限未満になると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び延性が低下し、他方、前記上限を超えると、熱可塑性樹脂組成物の剛性が低下する。また、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と剛性と延性とが更に向上するという観点から、前記相容化剤の含有量の含有量としては10〜25質量%が好ましい。
【0036】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、前記フィラーの含有量としては、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、50質量%以下が好ましく、3〜35質量%がより好ましい。前記フィラーの含有量が前記下限未満になると、熱可塑性樹脂組成物の剛性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱可塑性樹脂組成物の成形性が低下する傾向にある。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上するという観点から、前記ポリアミド樹脂と前記反応性基を有する変性エラストマーとの反応物が含まれていることが好ましい。このような反応物は、前記変性エラストマーが有する前記反応性基が前記ポリアミド樹脂と反応することによって生じる成分である。このような反応物を得る方法としては特に制限はなく、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、前記ポリアミド樹脂と前記反応性基を有する変性エラストマーとを含む混合材料を加熱溶融混練することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物中で生成させることができる。このような反応物の含有量としては、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、60質量%以下が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。前記反応物の含有量が前記上限を超えると、熱可塑性樹脂組成物の剛性が低下する傾向にある。
【0038】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、例えば、上記以外の他の熱可塑性樹脂、抗酸化剤、抗紫外線剤、熱安定化剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、発泡剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤は1種が単独で含まれていても2種以上が含まれていてもよい。また、このような添加剤の含有量としては、熱可塑性樹脂組成物全体に対して、添加剤の合計量で10質量%以下が好ましい。
【0039】
前記他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸)、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤(ハロゲン化芳香族化合物等)、リン系難燃剤(窒素含有リン酸塩化合物、リン酸エステル等)、窒素系難燃剤(グアニジン、トリアジン、メラミン、及びこれらの誘導体等)、無機系難燃剤(金属水酸化物等)、ホウ素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、硫黄系難燃剤、赤リン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記難燃助剤としては、各種アンチモン化合物、亜鉛を含む金属化合物、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウム、粘度質珪酸塩等が挙げられる。これらの難燃助剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記着色剤としては、顔料、染料等が挙げられる。これらの着色剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0040】
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂、前記ポリオレフィン樹脂、前記相容化剤、前記フィラー、及び必要に応じて他の成分を、所定の含有量となるように混合することによって得ることができる。このとき、各成分を一括して混合してもよいし、1種又は2種以上を複数回に分けて添加投入(多段配合)して混合してもよい。混合方法としては、例えば、混練装置を用いる混練方法が挙げられる。前記混練装置としては、例えば、押出機(一軸スクリュー押出機、二軸溶融混練押出機等)、ニーダ、ミキサ(高速流動式ミキサ、パドルミキサ、リボンミキサ等)が挙げられる。これらの混練装置は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。2種以上の混練装置を併用する場合には、連続的に運転してもよく、回分的に(バッチ式で)運転してもよい。
【0041】
混練温度としては特に制限はなく、混練する樹脂の種類によって適宜調整されるものであるため、一概にはいえないが、本発明に用いられる各樹脂が溶融された状態で混合されることができるという観点からは、100〜350℃が好ましく、180〜320℃がより好ましく、200〜300℃がさらに好ましい。
【0042】
〔成形体〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物はどのように成形してもよく、その方法は特に制限されない。また、得られる成形体の形状、大きさ及び厚さ等も特に制限されず、その用途も特に制限されない。例えば、前記成形体は、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の外装材、内装材及び構造材等として用いることができる。また、前記自動車用の材としては、自動車用外装材、自動車用内装材、自動車用構造材、自動車用衝撃エネルギー吸収材、自動車用歩行者保護材、自動車用乗員保護材及びエンジンルーム内部品等が挙げられる。具体的には、耐衝撃吸収部品、バンパー、スポイラー、カウリング、フロントグリル、ガーニッシュ、ボンネット、トランクリッド、フェンダーパネル、ドアパネル、ルーフパネル、インストルメントパネル、ドアトリム、クオータートリム、ルーフライニング、ピラーガーニッシュ、デッキトリム、トノボード、パッケージトレイ、ダッシュボード、コンソールボックス、キッキングプレート、スイッチベース、シートバックボード、シートフレーム、アームレスト、サンバイザ、インテークマニホールド、エンジンヘッドカバー、エンジンアンダーカバー、オイルフィルターハウジング、エアフィルターボックス、車載用電子部品(ECU、TVモニター等)のハウジングが挙げられる。
【0043】
さらに、前記成形体は、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材、具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥等)の表装材、構造材等としても用いることができほか、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材、パーティション部材、家電製品(薄型TV、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、携帯電話、携帯ゲーム機、ノート型パソコン等)及び鞄(スーツケース等)の筐体及び構造体としても用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
ポリアミド樹脂としてポリアミド6(PA6、東レ株式会社製「アミランCM1007」、数平均分子量:30,000、重量平均分子量:56,000)40質量部、相容化剤として無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体(変性EBR−1、三井化学株式会社製「タフマーMH7020」)10質量部、ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−1、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックSA06GA」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):60g/10min)20質量部、及びフィラーとして炭素繊維(CF、三菱ケミカル株式会社製「チョップドCFTR06NE B4J」、平均長さ:6mm、平均アスペクト比:1000)30質量部を、二軸溶融混練押出機(株式会社パーカーコーポレーション製「HK−25D」、スクリュー径:25mm、L/D=41)を用いて、温度230℃、押出速度10kg/h、スクリュー回転数400rpmの条件で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「FNX140」)を用いて、設定温度230℃、金型温度40℃の条件で射出成形して、JIS K7139に準拠したダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0046】
(実施例2)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−2、サンアロマー株式会社製「YS559」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):60g/10min)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0047】
(実施例3)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−3、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックHT40T」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):24g/10min)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0048】
(実施例4)
相容化剤として無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体(変性EBR−2、三井化学株式会社製「タフマーMH5040」)10質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0049】
(実施例5)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−3、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックHT40T」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):24g/10min)20質量部を用いた以外は実施例4と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0050】
(実施例6)
ポリアミド樹脂の量を35質量部に、ポリオレフィン樹脂の量を25質量部に変更した以外は実施例3と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0051】
(実施例7)
ポリアミド樹脂の量を35質量部に、ポリオレフィン樹脂の量を25質量部に変更した以外は実施例4と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0052】
(比較例1)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−4、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックMA1B」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):20g/10min)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0053】
(比較例2)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−5、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックMA3H」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):10g/10min)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0054】
(比較例3)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−6、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックF113G」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):3g/10min)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0055】
(比較例4)
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(PP−6、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックF113G」、MFR(温度230℃、荷重21.18NでJIS K7210に準拠して測定):3g/10min)20質量部を用いた以外は実施例4と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0056】
(比較例5)
前記無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体(変性EBR−1)の代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(変性PP、三洋化成工業株式会社製「UMEX1010」)10質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0057】
(比較例6)
ポリアミド樹脂の量を35質量部に、ポリオレフィン樹脂の量を25質量部に変更した以外は比較例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0058】
(比較例7)
ポリアミド樹脂の量を35質量部に、ポリオレフィン樹脂の量を25質量部に変更した以外は比較例2と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0059】
(比較例8)
ポリアミド樹脂の量を35質量部に、ポリオレフィン樹脂の量を25質量部に変更した以外は比較例3と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0060】
(比較例9)
ポリアミド樹脂の量を35質量部に、ポリオレフィン樹脂の量を25質量部に変更した以外は比較例4と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を調製し、さらに、この熱可塑性樹脂組成物を用いてダンベル形引張試験片(多目的試験片)タイプA1を作製した。
【0061】
<曲げ弾性率測定>
実施例及び比較例で得られた各試験片について、JIS K7171に準拠して、支点間距離64mm、試験速度(支点間中央に配置した圧子(先端半径5mm)と支持台との間の相対移動速度)2mm/minの条件で曲げ弾性率を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0062】
<破断伸び測定>
実施例及び比較例で得られた各試験片について、JIS K7161に準拠して、つかみ具間距離115mm、試験速度(引張速度)5mm/minの条件で破断伸びを測定し、下記基準で評価した。その結果を表1及び表2に示す。
A:破断伸びが4%以上。
B:破断伸びが4%未満。
【0063】
<総合評価>
曲げ弾性率及び破断伸びに基づいて下記基準で評価した。その結果を表1及び表2に示す。
A:曲げ弾性率が8GPa以上かつ破断伸びが4%以上。
B:曲げ弾性率が8GPa未満又は破断伸びが4%未満。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び表2に示したように、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂と相容化剤とフィラーとを含有する熱可塑性樹脂組成物において、前記ポリオレフィン樹脂としてMFR(温度230℃、荷重21.18N)が23g/10min以上のポリオレフィン樹脂を用い、前記相容化剤として無水マレイン酸変性エラストマーを用いた場合(実施例1〜7)には、前記ポリオレフィン樹脂としてMFR(温度230℃、荷重21.18N)が20g/10min以下のポリオレフィン樹脂を用いた場合(比較例1〜4、比較例6〜9)及び前記無水マレイン酸変性エラストマーの代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いた場合(比較例5)に比べて、破断伸びが大きくなり、延性が向上して、高い剛性と延性とが両立することがわかった。