【解決手段】エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、金属錯体、極性基を有する化合物、顔料、及び極性基含有顔料分散剤を含有する平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ、該インキの製造方法であって、金属錯体及び極性基を有する化合物を予め混合分散させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、顔料、及び極性基含有顔料分散剤を混合分散させる平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法。
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、金属錯体、極性基を有する化合物、顔料、及び極性基含有顔料分散剤を含有することを特徴とする平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ。
前記極性基を有する化合物が、酸基、ヒドロキシル基、及び/又は塩基性基を含有する化合物である請求項1に記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
前記極性基を有する化合物が、酸基、ヒドロキシル基、及び/又は塩基性基を含有する(メタ)アクリレートである請求項1または2に記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキ。
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、金属錯体、極性基を有する化合物、顔料、及び極性基含有顔料分散剤を含有する平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法であって、金属錯体及び極性基を有する化合物を予め混合分散させた後、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、顔料、及び極性基含有顔料分散剤を混合分散させることを特徴とする平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法。
請求項1〜5のいずれかに記載の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを用いてオフセット印刷し、印刷されたインキを活性エネルギー線を用いて硬化させることを特徴とするインキ硬化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(言葉の定義)
本発明において(メタ)アクリレート樹脂とは、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基、或いはその両方を有する樹脂のことをいう。また、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基の一方或いは両方のことをいい、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0014】
(エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー)
本発明で使用するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー及び又はオリゴマーは、活性エネルギー線硬化性技術分野で使用されるモノマー及び又はオリゴマーであれば特に限定なく使用することができる。特に反応基として(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基等を有するものが好ましい。また反応基数や分子量にも特に限定はなく、反応基数の多いものほど反応性は高いが粘度や結晶性が高くなる傾向にあり、また分子量が高いものほど粘度が高くなる傾向にあることから、所望の物性に応じて適宜組み合わせて使用することができる。例えばUV−LEDのような低エネルギー照射で好適に硬化させるという点では、より反応性の高い3官能以上のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを組み合わせ、用途に応じて印刷基材への接着性、皮膜の柔軟性等の必要物性を得る為に、適宜単官能、2官能のモノマーを単独もしくは併用することが好ましい。
【0015】
具体的には例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、重合性オリゴマー等の、ランプ方式で実績のあるものが、本発明で述べる紫外線発光ダイオード方式においてもそのまま使用することが可能である。
【0016】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
重合性オリゴマーとしては、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、チオール変性ポリエステルアクリレート、チオール(メタ)アクリレートなどのチオール変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
また前記エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー及び又はオリゴマーとして、4官能以上の(メタ)アクリレートは、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙への印刷用途において、硬化性や強度の向上に大きく寄与するため使用することが好ましく、インキ固形分全量に対し15〜70質量%の範囲で使用することが好ましい。一方、プラスチックへの印刷用途においては、硬化塗膜の架橋密度が上昇するに従って、基材と硬化塗膜との密着性が減少するため、4官能以上の(メタ)アクリレートの含有量を適宜減少させる必要がある。この場合、4官能以上の(メタ)アクリレートはインキ固形分全量に対し0〜50質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0020】
(金属錯体)
本発明で使用する金属錯体は、キレート剤と称される場合もある。具体的には例えば、アルミニウムトリエチレートアルミニウムトリプロピレート、アルミニウムジプロピレートモノブチレート、アルミニウムトリブチレート等のアルミニウムトリアルキレート;アルミニウムアセチルアセテートジプロピレート、アルミニウムアセチルアセテートジブチレート、アルミニウムトリアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオクタデシルアセトアセテートジプロピレート等のアルミニウムアルキルアセトアセテート;チタンテトラプロピレート、チタンテトラブチレート等のチタンテトラアルキレート;チタンビス(アセチルアセテート)ジプロピレート等のチタンアルキルアセトアセテート;ジルコニウムテトラブチレート等のジルコニウムテトラアルキレート等が挙げられる。これらの具体的な市販製品としては、例えば、川研ファインケミカル株式会社製のアルミニウム有機化合物シリーズ(「AMD」、「ASBD」、「AIPD」、「PADM」、「アルミニウムエトキサイド」、「ALCH」、「ALCH−TR」、「アルミキレートM」、「アルミキレートD」、「アルミキレートA、A(W)」)、味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクト」シリーズ(「AL−M」、「TTS」)、松本ファインケミカル株式会社製「オルガチックス」シリーズ(「AL−3001」、「AL−3100」、「AL−3200」、「AL−3215」、「TA−8」、「TA−21」、「TA−23」、「TA−30」、「TC−100」、「TC−401」、「TC−710」、「TC−750」、「ZA−45」、「ZA−65」、「AC−150」、「ZC−540」)等が挙げられる。前記金属錯体(B)は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0021】
また、金属アルコキシドや金属アシレート等の金属化合物も使用することができる。具体的には、アルミニウム、チタンおよびジルコニウムからなる群より選択される金属のアルコシキド、そのアシレートである。
金属アルコキシドとしては、例えばアルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムジソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ターシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テト ラステアリルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等が挙げられる。
【0022】
金属アシレートとしては、例えばアルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、チタンイソステアレート、オクチル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0023】
前記金属錯体の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ中の配合量は、所望のインキ性能等に応じて適宜調整可能であるが、特に、流動性が高く印刷面の光沢に優れ、かつ、耐ミスチングや乳化適正等のその他の性能も十分に高い印刷インキとなることから、0.01質量%から1.5質量%が好ましく、0.01質量%から1.0質量%の範囲が特に好ましい。
また前記金属錯体は、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ100gあたり、0.01mmol〜3.0mmolが好ましく、0.04〜2.0mmolが特に好ましい。
前記金属錯体の物質量に対する後述する極性基を有する化合物の極性基の物質量の比は0.5〜10が好ましく、0.5〜3.0がより好ましい。
【0024】
(極性基を有する化合物)
本発明においては、前記金属錯体と、極性基を有する化合物を併用することが必須である。
金属錯体は、顔料や極性基含有顔料分散剤の極性基に配位して分散状態の安定化に寄与するため印刷インキの流動性が向上することは公知であり(特許文献2段落0022参照)、インキ中に一定量の極性基が存在すればある程度の流動性の向上は得られる。本発明においては、極性基を有する化合物として顔料分散剤に限定されることなく、極性基を有する化合物であれば流動性の向上は得られる。
【0025】
極性基としては、特に限定されることなく、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基などが挙げられる。これらは単独または2種以上の組み合わせで用いられる。これらの中でも、ヒドロキシル基やカルボキシル基が好ましい。
【0026】
また、これらの極性基を有する化合物のうち、特にバインダー樹脂になりうるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーやオリゴマー、ポリマーに極性基を有する化合物が、特に流動性の向上に寄与でき好ましい。
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーやオリゴマー、ポリマーに極性基を有する化合物としては、極性基を有するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーや、エポキシ化合物にヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物等を反応させたエポキシ(メタ)アクリレートや、ポリイソシアネート化合物にヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物や酸基含有ヒドロキシ化合物を反応させたウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
(極性基を有するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー)
極性基を有するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、前述のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーにおいてアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基等の極性基を有するモノマーとして具体的には、前述のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーにおいてアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、エポキシ基、ニトリル基、ニトロ基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基等の極性基を有するモノマーの他、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイミド、アリルアルコール、オキサゾリン等が挙げられる。上記化合物は、単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0028】
(エポキシ(メタ)アクリレート)
前記エポキシ(メタ)アクリレートは分子中にヒドロキシル基を有し、一例としては例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0029】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
前記ウレタン(メタ)アクリレートの一例としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a1)、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)及び酸基含有ヒドロキシ化合物(a3)を定法に従い反応させた酸基含有ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)は、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記構造式(1)で表される繰り返し構造を有するポリイソシアネート化合物;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0031】
【化1】
[式中、R
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜6の炭化水素基の何れかである。R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基、又は構造式(1)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。lは0又は1〜3の整数であり、mは1以上の整数である。]
【0032】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)の中でも、流動性及び印刷面の光沢に優れる他、耐ミスチング性や乳化適正等の一般的な印刷適性にも優れる印刷インキが得られることから、前記構造式(1)で表される分子構造を有するポリイソシアネート化合物や、各種ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体など平均官能基数が3以上であるポリイソシアネート化合物を必須で用いることが好ましい。特に、前記ポリイソシアネート化合物(a1)に占める前記平均官能基数が3以上であるポリイソシアネート化合物の割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性体である場合、原料ジイソシアネート化合物は脂肪族又は脂環式ジイソシアネート化合物であることが好ましく、脂肪族ジイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0033】
前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等の脂肪族ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物;グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の脂肪族ヒドロキシポリ(メタ)アクリレート化合物;アクリル酸4−ヒドロキシフェニル、アクリル酸β−ヒドロキシフェネチル、アクリル酸4−ヒドロキシフェネチル、アクリル酸1−フェニル−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシ−4−アセチルフェニル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の芳香族ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリオキシアルキレン変性モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物;前記モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、ε−カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0034】
前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)の中でも、流動性及び印刷面の光沢に優れる他、耐ミスチング性や乳化適正等の一般的な印刷適性にも優れる印刷インキが得られることから、前記脂肪族ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物、前記脂肪族ヒドロキシポリ(メタ)アクリレート化合物、及びこれらのポリオキシアルキレン変性体或いはラクトン変性が好ましく、ラクトン変性脂肪族ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、ラクトン変性脂肪族ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。更に、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)に占める前記ラクトン変性脂肪族ヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物の割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0035】
前記酸基含有ヒドロキシ化合物(a3)は、分子構造中にカルボキシ基等の酸基とヒドロキシ基とを有するものであれば、カルボキシ基及びヒドロキシ基の数やその他の具体構造は特に限定されない。また、酸基含有ヒドロキシ化合物(a3)それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、流動性及び印刷面の光沢に一層優れる印刷インキが得られることから脂肪族化合物であることが好ましく、炭素原子数2〜20の脂肪族炭化水素上にカルボキシ基を1〜3個、ヒドロキシ基を1〜3個有する化合物がより好ましい。このような化合物の具体例としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシヘプタデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸(ヒドロキシステアリン酸)、リシノール酸等のモノヒドロキシ化合物;グリセリン酸、2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−(ジヒドロキシメチル)プロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、3,3−ジメチロールプロピオン酸等のジヒドロキシ化合物;3−ヒドロキシ−2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸等のトリヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0036】
前記酸基含有ウレタン(メタ)アクリレートは、前記ポリイソシアネート化合物(a1)、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)及び前記酸基含有ヒドロキシ化合物(a3)の他、他の反応原料を併用したものであってもよい。他の反応原料としては、例えば、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)や前記酸基含有ヒドロキシ化合物(a3)以外のポリオール化合物等が挙げられる。前記ポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。
【0037】
前記他の反応原料を用いる場合には、本発明が奏する効果が十分に発揮されることから、前記酸基含有ウレタン(メタ)アクリレートの反応原料に占める前記ポリイソシアネート化合物(a1)、前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(a2)及び前記酸基含有ヒドロキシ化合物(a3)の合計質量の割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0038】
前記酸基含有ウレタン(メタ)アクリレートの酸価は、流動性及び印刷面の光沢に一層優れる印刷インキが得られることから1〜50mgKOH/gの範囲であることが好ましく、3〜40mgKOH/gの範囲であることがより好ましく、3〜35mgKOH/gの範囲であることが特に好ましい。本発明において樹脂の酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0039】
前記酸基含有ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量(Mw)は、印刷インキ用途に用いた際の流動性及び印刷面の光沢に一層優れる印刷インキが得られることから1,000〜25,000の範囲であることが好ましく、1,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。
【0040】
本願発明において樹脂の分子量は下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0041】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0042】
(ウレタンアクリレート由来のインキ中の極性基濃度)
前記ウレタンアクリレート由来の酸基の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキ100gに占める物質量は0.01〜3.0mmolが好ましく、特に、0.03〜1.5mmolがインキの流動性を向上させるうえで特に好ましい。
【0043】
(その他のバインダー樹脂)
本発明においては、前記以外の、バインダーとなりうる樹脂を含有することもできる。ここで述べるバインダー樹脂とは、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキに要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般を示しており、例えば非反応性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体、アルデヒド樹脂、ケトン樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができ、また前述以外のエポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。
【0044】
前記ジアリルフタレート樹脂としては、オルソ、イソ、テレの3種の異性体が存在するが、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキで用いるバインダー樹脂としてジアリルオルソフタレート樹脂(単にジアリルフタレート樹脂と称されることが多い)、ジアリルイソフタレート樹脂を使用する事ができる。
前記ジアリルイソフタレート樹脂としては、例えば、主剤としてのフタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
ジアリルオルソフタレート樹脂、ジアリルイソフタレート樹脂は、優れた紙剥け性、耐乳化適性、ロングランでの印刷適性を付与するために特に有用である。
ジアリルオルソフタレート樹脂としては、具体的には、ダイソーダップA(大阪ソーダ社製)、ジアリルイソフタレート樹脂としては、ダイソーイソダップ(大阪ソーダ社製)が挙げられる。
【0045】
(顔料)
本発明で使用する顔料は、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0046】
また、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキには、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキ中に0.1〜60重量%の範囲で使用することにより、着色やインキのレオロジー特性を調整したりすることが可能である。
【0047】
(顔料分散剤)
本発明で使用する顔料分散剤は、極性基含有の顔料分散剤(以後極性基含有顔料分散剤と称する場合がある)であると顔料の分散性とインキ流動性をより向上できることから好ましい。極性基は、酸性基、塩基性基、その他の官能基が挙げられる。
酸性基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。塩基性基は、アミノ基、アミド基、イミド基等の窒素原子を有する官能基等が挙げられる。その他の官能基は、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。極性基含有顔料分散剤は、2種類以上の極性基を有していることもできる。中でも極性基が塩基性基の、塩基性基含有の顔料分散剤(以後塩基性基含有顔料分散剤と称する場合がある)が好ましい。
なお、極性基含有顔料分散剤は、ジアリルフタレート樹脂、極性基を含有する光重合開始剤、光重合開始剤の触媒を含まない。
【0048】
特に、前記金属錯体、前記極性基を持つ化合物と、酸価を持つ塩基性基含有顔料分散剤を併用することが平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの流動性を一層向上させるため特に好ましい。
【0049】
本発明において塩基性基含有顔料分散剤は、市販の塩基性分散剤と称される分散剤を挙げることができる。塩基性分散剤と称される分散剤の中でも、酸価を持ち且つ少なくとも塩基性吸着基を持つ塩基性分散剤を使用することが好ましい。上記条件を満たす市販の分散剤の酸価を例示すると、例えば、ソルスパース24000(酸価29mgKOH/g)、ソルスパース26000(酸価50mgKOH/g)ソルスパース32000(酸価18mgKOH/g)ソルスパース33000(酸価27mgKOH/g)、ソルスパース39000(酸価17.5mgKOH/g)(以上ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821(酸価17mgKOH/g)、PB822(14mgKOH/g)、PB824(酸価21mgKOH/g)PB881(酸価17mgKOH/g)(以上味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
この中でも、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキに対しては、塩基性基含有顔料分散剤の酸価が10〜55mgKOH/gが好ましく、10〜35mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0051】
(光重合開始剤)
本発明で使用する光重合開始剤は特に限定はなく、汎用の光重合開始剤を併用することができる。具体的には例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ピペリジノフェニル)−ブタン−1−オン、1−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチル― 2 ― (4−モルフォリニル―1−プロパノン、1−(9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−2−メチル−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどの化合物が挙げられる。
【0052】
また、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート等のアシルフォスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
【0053】
また、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−ジイソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩等のチオキサントン化合物が挙げられる。
【0054】
また、4,4´−ビス−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノン類、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン化合物が挙げられる。
【0055】
それ以外には、例えばベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2,3,4−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3‘−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、〔4−(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテルなどが挙げられる。
前記汎用の光重合開始剤は、1種でも数種併用して使用してもよい。
【0056】
〔増感剤・光開始助剤〕
本発明においては、光増感剤や三級アミン等の光開始助剤を併用しても良く、好ましい。光増感剤としては、特に限定されないが、チオキサントン系、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アントラキノン系、クマリン系などが挙げられる。
これらの中でも、特に2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物や、ミヒラーケトン、4,4´−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなど4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノン類が好ましく、性能、安全性や入手しやすさなどの観点から、2,4−ジエチルチオキサントン,2−イソプロピルチオキサントン、4,4´−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。
【0057】
増感剤や光開始助剤を併用する場合は、インキ固形分全量に対し0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7.0質量%の範囲がより好ましい。0.05質量%未満の場合は、十分な硬化性の向上効果が得られず、10質量%を超える場合は、硬化塗膜の色相が許容できないくらい黄味に変色したり、増感剤が析出したり、インキの流動性が著しく低下したりする。
【0058】
一方、三級アミンとしては、特に限定されないが、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N−ジメチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエイト、2−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエイト等が挙げられ、酸素による重合阻害を低減させたり、紫外線により活性化されたチオキサントン類、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノン類と反応し、活性ラジカル供与体となり、インキの硬化性能を向上させたり、光重合開始剤の溶解性を向上させたりする。三級アミンはインキ固形分全量に対し0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0059】
また高い衛生性を求められる用途においては、1分子内に複数の光増感剤や三級アミンを多価アルコール等で分岐させた高分子量化合物も適宜使用することができる。
【0060】
(その他添加剤)
その他の添加剤としては、例えば耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性を付与する添加剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物などの合成ワックス等を例示することができる。
【0061】
また例えば、インキの保存安定性を付与する添加剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p −メトキシフェノール、t −ブチルカテコール、t −ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1−ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p −ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−p −ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ−p −ニトロフェニルメチル、N−(3−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等の重合禁止剤が例示される。
【0062】
その他、要求性能に応じて蛍光増白剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等の添加剤を添加することができる。
【0063】
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、無溶剤で使用することもできるし、必要に応じて適当な溶媒を使用する事も可能である。溶媒としては、上記各成分と反応しないものであれば特に限定されるものではなく、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
(平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法)
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、従来と同様の方法によって製造すればよく、例えば、常温から100℃の間で、前記顔料、樹脂、アクリル系モノマーもしくはオリゴマー、重合禁止剤、開始剤およびアミン化合物等の増感剤、その他添加剤などインキ組成物成分を、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサーなどの練肉、混合、調整機を用いて製造される。
【0065】
更に、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法においては、前記金属錯体及び前記極性基を有する化合物を予め混合分散させた後、前記エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、前記顔料、及び前記極性基含有顔料分散剤を混合分散させると、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの流動性を一層向上させることができる。
明確な理由は定かではないが、あらかじめ前記金属錯体と前記極性基を持つ化合物を混合分散させることで(金属錯体と極性基を有する化合物の極性基とは反応することが知られていることから)、金属錯体と極性基を有する化合物の一部が反応した反応生成物が生じ、これが流動性に寄与すると推定される。
【0066】
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの製造方法として、より具体的には、次に示す(1)〜(3)の工程を経た製造方法が好ましい。なお(1)及び(2)をまとめて予備分散(プレミキシング)、(3)を本分散と称している。
(1)前記金属錯体及び前記極性基を有する化合物を予め混合分散させて組成物Xを得る。(これには前述の通り、金属錯体と極性基を有する化合物の一部が反応した反応生成物が生じていると推定される)
(2)(1)で得た組成物Xと前記反応生成物を含有する前記金属錯体と極性基を持つ化合物とを攪拌混合した組成物に、極性基含有顔料分散剤、顔料、バインダー樹脂、光重合開始剤、その他添加剤とを、50〜70℃の条件で攪拌し分散体を得る。
(3)その後、3本ロールミル、ビーズミル、その他公知の分散機により分散を行い、オフセット印刷に適した顔料粒子径に調整した分散体即ちインキを得る。
この製造方法とすることで、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキの流動性を一層向上させることができる。
本製造方法で使用する分散機の攪拌翼の周速や攪拌時間は、混合物を入れるタンクの容量により適宜調整することができるが、好ましいディゾルバーの攪拌羽の直径とタンクの直径の比d/Dは、0.2〜0.5が好ましく、また、好ましいディゾルバーの周速度は、20〜30m/sの範囲である。
【0067】
(インキ硬化物の製造方法、印刷物)
本発明のインキ硬化物は、基材上に、平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを用いてオフセット印刷し、印刷されたインキを活性エネルギー線を用いて硬化させることを特徴とする。
【0068】
(印刷方法)
本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、前述の通り平版印刷(湿し水を使用する平版印刷や湿し水を使用しない水無し平版印刷)を該版に付けられたインキをブランケット等の中間転写体に転写した後被印刷体に印刷する転写(オフセット)方式を組み合わせた平版オフセット印刷方式で好ましく使用できる。
【0069】
平版オフセット印刷方式に適用できるインキは、5〜100Pa・sの比較的粘度の高いインキであり、平版印刷機の機構は、インキが印刷機のインキ壺から複数のローラーを経由して版面の画線部に供給され、湿し水を使用する平版印刷では非画線部に湿し水が供給されインキを反発し、紙上に画像が形成される。
【0070】
湿し水を使用した平版印刷においては、インキと湿し水との乳化バランスが重要であり、インキにおいても耐乳化性の高速印刷適性が求められている。インキは乳化量が高過ぎると非画線部にもインキが着肉し易くなり汚れが発生したり、印刷濃度の低下、水棒ローラー上に乳化したインキが絡み、フライング、給紙外部のブランケットへのインキの溜まりなどの印刷不良が生じる。乳化量が少ないと絵柄の少ない印刷時には、地汚れと呼ばれる非画線部の汚れが顕著となり、安定して印刷する事が難しくなる。
【0071】
この観点から、本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキは、前記の極性基を有する化合物及び顔料分散剤以外のインキに使用する樹脂やモノマーの酸価が1.0〜10.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜2.0の範囲内であることがなお好ましい。インキ酸価が10.0を上回ると、インキが乳化しやすくなり、印刷中に湿し水の供給量を上昇させると、印刷物の濃度が低下したり、版上で親水化処理された非画線部に乳化したインキが付着しやすくなるため、印刷物の非画線部に地汚れと呼ばれる汚れが生じる。一方、インキ酸価が1.0を下回ると、インキの流動性や印刷物の光沢の低下を招く。
【0073】
(印刷基材)
本発明の印刷物で使用する印刷基材としては、特に限定は無く、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0074】
またプラスチック基材や軟包装基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム;OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ−p−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等や、特にシーラントフィルムとして使用される低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレン)、VMLDPE(アルミ蒸着低密度ポリエチレン)、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂等の樹脂フィルムがあげられる。
また前記樹脂フィルムに各種バリア機能等の機能性を付与するための、アルミニウム箔などの軟質金属箔、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層等が設けられた複合フィルムも挙げられる。
【0075】
前記基材において、プラスチック基材や軟包装基材に使用される樹脂フィルムは一般的に表面エネルギーが低く、活性エネルギー線硬化型インキに対する濡れが悪いため、密着性不良を引き起こしやすい。その為、高周波電源により供給される高周波・高電圧出力を、コロナ処理装置が備える放電電極とアースロールとの間に印加することでコロナ放電を発生させ、このコロナ放電下に前記フィルムを通過させることにより、前記基材の表面エネルギーを向上させることが好ましい。
【0076】
また、一般的にプライマーもしくはアンカー(コート剤)と称される密着性付与剤を予め前記プラスチック基材、軟包装基材上に塗布してもよく好ましい。
【0077】
これら基材に、平版オフセット印刷方式により本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを転写印刷しインキ層を設ける。
平版オフセット印刷方式による印刷は、カラープロセスインキや特色インキを、単色や多色使いで刷重ね印刷を行う方法が一般的である。
平版オフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、リョービMHIグラフィックテクノロジー社、マンローランド社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製RMGTシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【0078】
(光源)
前記印刷されたインキを硬化させる目的で使用する活性エネルギー源としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線が挙げられる。前記紫外線発光ダイオード(UV−LED)としては、そのピーク波長が350〜420nm程度であるものが好ましく350〜400nmの範囲であるものがより好ましく、積算光量が5mJ/cm
2〜200mJ/cm
2程度であり、より好ましくは、10〜100mJ/cmであることが好ましい。
【0079】
また紫外線発光ダイオード光源より印刷基材上のUV硬化性組成物へ照射される紫外線の照射強度(mW/cm
2)に関しては、印刷方向に並べる紫外線発光ダイオード光源の個数、光源から組成物までの照射距離等の諸条件によっても適切な照射強度範囲が変動することから特に規定はしないが、本発明で述べる印刷方式における印刷基材の移動速度は60〜400m/min.程度であるから、該印刷速度で移動する印刷基材上のUV硬化性組成物に対して、積算光量値が先に述べた程度となる照射強度であることが好ましい。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、通常湿し水を使用する平版オフセット印刷に適用されるが、湿し水を使用しない水無し印刷にも好適に用いることができる。また本発明の平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型印刷インキは、フォーム用印刷物、各種書籍用印刷物、カルトン紙等の各種包装用印刷物、各種プラスチック印刷物、シール/ラベル用印刷物、美術印刷物、金属印刷物(美術印刷物、飲料缶印刷物、缶詰等の食品印刷物)などの印刷物に適用される。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
赤外線吸収スペクトルの測定)
[機種] 日本分光株式会社製 FT/IR−4100
[測定条件]イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルを確認することで反応完結を確認した。
【0083】
質量平均分子量(Mw)の測定
下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−Mx4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020model II
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0084】
酸価の測定条件
JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定した。
【0085】
(製造例1) 極性基を有する化合物(A−1)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)187.1質量部、12−ヒドロキシステアリン酸16.1質量部、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム0.17質量部を加え、65℃まで加熱した。イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュールN3300」)108.6質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃まで加熱して2時間反応させた。イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルが消失したのを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂である極性基を有する化合物(A−1)を得た。極性基を有する化合物(A−1)の質量平均分子量(Mw)は4,477、酸価は11.2mgKOH/gであった。
【0086】
(製造例2) 極性基を有する化合物(A−2)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)143.3質量部、12−ヒドロキシステアリン酸6.0質量部、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム0.12質量部を加え、65℃まで加熱した。イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュールN3300」)79.8質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃まで加熱して2時間反応させた。イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルが消失したのを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂である極性基を有する化合物(A−2)を得た。極性基を有する化合物(A−2)の質量平均分子量(Mw)は4,275、酸価は6.0mgKOH/gであった。
【0087】
(製造例3) 極性基を有する化合物(A−3)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)116.4質量部、12−ヒドロキシステアリン酸31.3質量部、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム0.12質量部を加え、65℃まで加熱した。イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュールN3300」)79.1質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃まで加熱して2時間反応させた。イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルが消失したのを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂である極性基を有する化合物(A−3)を得た。極性基を有する化合物(A−3)の質量平均分子量(Mw)は4,663、酸価は27.3mgKOH/gであった。
【0088】
(製造例4) 極性基を有する化合物(A−4)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)201.4質量部、グリコール酸3.8質量部、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム0.17質量部を加え、65℃まで加熱した。イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュールN3300」)116.7質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃まで加熱して2時間反応させた。イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルが消失したのを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂である極性基を有する化合物(A−4)を得た。極性基を有する化合物(A−4)の質量平均分子量(Mw)は4,135、酸価は8.9mgKOH/gであった。
【0089】
(製造例5) 極性基を有する化合物(A−5)の製造
攪拌機、ガス導入管、コンデンサー及び温度計を備えたフラスコに、ラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(株式会社ダイセル製「プラクセルFA2D」)167.9質量部、ジメチロールプロピオン酸3.4質量部、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム0.17質量部を加え、65℃まで加熱した。イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュールN3300」)116.9質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃まで加熱して2時間反応させた。イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルが消失したのを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂である極性基を有する化合物(A−5)を得た。極性基を有する化合物(A−5)の質量平均分子量(Mw)は4,389、酸価は5.5mgKOH/gであった。
【0090】
(極性基を有する化合物と金属錯体の組成物(1)〜(8)の製造)
表1に示す割合で、極性基を有する化合物(A−1)〜(A−5)と(メタ)アクリレートモノマーと金属錯体とを混合し、1時間攪拌して組成物(1)〜(8)を得た。表中1中数字は部数を表し、表1中の略語は次の通りである。
(メタ)アクリレートモノマー:ダイセル・オルネクス株式会社製「OTA 480」、プロピレンオキサイド変性グリセリントリアクリレート、1分子あたりのプロピレンオキサイド平均付加数3
金属錯体(B−1):川研ファインケミカル株式会社製「ALCH−TR」、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)
金属錯体(B−2):味の素ファインテクノ株式会社製「プレンアクトAL−M」、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート
【0091】
【表1】
【0092】
(製造例6) ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の製造
攪拌翼、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた四つ口フラスコにポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMR−400」)60.3質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン0.1質量部、メトキシハイドロキノン0.02質量部、オクチル酸亜鉛0.02質量部を加え、75℃まで加熱した。フラスコ内を攪拌しながら2−ヒドロキシエチルアクリレート35.7質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃で反応を続け、イソシアネート基を示す2250cm
−1の赤外吸収スペクトルが消失したのを確認し、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得た。
【0093】
(実施例及び比較例) 印刷インキの製造
(予備分散)
組成物(1)〜(8)及び金属錯体以外のインキ原料を、直径65(D)mmの容器に所定の割合で配合し、直径30(d)mmの攪拌翼の付いた縦型ディゾルバーVMA社製 ディスパーマットLC30(d/D=0.46))で、16,000rpm(周速25m/s)の条件で5分攪拌した。その後、組成物(1)〜(8)及び金属錯体を、攪拌済みの前記印刷インキ原料中に投入し、その後、再び16,000rpm(周速25m/s)の条件で10分間攪拌した。攪拌後、得られた分散体の温度を測定し、50℃〜70℃の範囲であることを確認した。
【0094】
(本分散)
上記予備分散工程で得られた分散体を、3本ロールミルを用いて練肉して平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化型インキを得た。
【0095】
インキ原料の詳細は、表1に記載の通りである。
【0096】
(性能評価試験)
<静置流動性>
実施例及び比較例で得た平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキを25℃雰囲気で60°に傾けた真鍮製の傾斜板の上に1.3g垂らし、インキの着地点から10分間に流動した距離を測定し静置流動性として評価した。なお、評価基準は、下記の通り表記する。
5:86mm 以上
4:61−85mm
3:46−60mm
2:21−45mm
1:20mm以下
【0097】
<連続印刷性>
実施例及び比較例で得た平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキについて、下記印刷機を使用して連続印刷テストを行い、それぞれ3000枚、8000枚、12000枚、16000枚毎にサンプリングを行い、印刷物の汚れの有無を目視観察することで連続印刷性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
5:16000枚時点で良好な印刷物が得られた。
4:12000枚時点で良好な印刷物が得られたが、16000枚では良好な印刷物が得られなかった。
3:8000枚時点で良好な印刷物が得られたが、12000枚では良好な印刷物が得られなかった。
2:3000枚時点で良好な印刷物が得られたが、8000枚では良好な印刷物が得られなかった。
1:3000枚時点で良好な印刷物が得られなかった。
【0098】
(印刷条件)
・オフセット印刷機:LITHRONEG40(小森コーポレーション製)
・PS版:XP−F (富士ファイルグローバルグラフィックスシステムズ製)
・用紙:OKトップコートプラス(王子製紙製)
・湿し水:水道水/アストロマーク3(株式会社日研化学研究所社製)/イソプロピルアルコール=95質量%/2質量%/3質量%の組成で混合
・印刷条件:室温25±1℃、印刷速度 8000枚/時
・印刷操作条件:湿し水供給装置の目盛りを印刷物に汚れが生じない程度に湿し水の供給量を可能な限り低く設定した。
【0099】
<保存安定性>
実施例及び比較例で得た平版オフセット印刷用活性エネルギー線硬化性インキを60℃で放置し、2週間後、及び4週間後のインキ状態を目視と、金属ヘラによる触診により観察することで保存安定性を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
〇:4週間後、インキに異常がなかった。良好
△:2週間後、インキに異常がなかったが、4週間後にインキがゲル化した。実用域
×:2週間後にインキがゲル化した。実用不可。
【0100】
結果を表2〜表7に示す。表中空欄は未配合を表す。
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
表中、略語は次の通りである。
極性基(−COOH)のmmol/g:金属錯体と極性基を有する化合物との混合物である組成物(1)〜(8)中の極性基であるカルボキシル基のmmol/gである。
金属錯体のmmol/g:金属錯体と極性基を有する化合物との混合物である組成物(1)〜(8)中の金属錯体のmmol/gである。
ピグメントレッド57:1:DIC社 SYMULER BRILLIANT CARMINE 6B 426SD
ピグメントイエロー13 :DIC社 SYMULER FAST YELLOW 4340
ピグメントブラック7:BIRLA CARBON社 カーボンラーベン1060パウダー
ピグメントブルー15:3:DIC社 FASTOGEN BLUE FA5375
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:東亞合成株式会社 アロニックスM−400
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート:東亞合成株式会社 アロニックスM−408
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート:MIWON社製 Miramer M3130
Q−1301:和光純薬工業社製「Q1301」5質量部とMIRAMER M313095質量部とを攪拌混合したもの