【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液の乾燥物である成形体である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液を乾燥させることで、高価なロタキサンの重合体を含まない場合であっても、高い強靭性を有する成形体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の成形体は、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液の乾燥物である。
上記構成とすることで、高価なロタキサンの重合体を含まずに、高い強靭性を有する成形体とすることができる。
【0010】
上記水系分散液は、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子を含有する。
【0011】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル酸エステル化合物」とは、(メタ)アクリル酸エステルを有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
上記直鎖状又は分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
上記(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、なかでも、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルアクリレートが好ましく、メチルアクリレートがより好ましい。
【0015】
上記微粒子は、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない限り、他の重合体を含んでいてもよい。また、上記微粒子の形状は球体であることが好ましい。
上記他の重合体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの重合体、ジビニルベンゼンの重合体等が挙げられる。
【0016】
また、上記微粒子は、ブタジエン、イソプレン又はクロロプレンの重合体を含まないことが好ましい。
上記重合体を含む場合、着色による透明性の低下やゴム特有の臭気の発生等の問題がある。
【0017】
上記微粒子における(メタ)アクリルモノマーの重合体の含有量は、60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることが更に好ましい。
【0018】
上記水系分散液における上記微粒子の含有量は、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。
【0019】
上記水系分散液は、水系溶剤を含有することが好ましい。
上記水系溶剤としては、水、水溶性有機溶剤、水と水溶性有機溶剤との混合物等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
なかでも水が好ましく用いられる。
【0020】
上記水系分散液における上記水系溶剤の含有量は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、97重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、得られる成形体の強靭性を充分に高めることができる。
【0021】
上記水系分散液は、上記水系溶剤以外に、水難溶性の低分子物質を含んでいてもよい。
上記水難溶性の低分子物質としては、セチルアルコール、n−ヘキサデカン等が挙げられる。
ここで、水難溶性とは、20℃の水に対する溶解度が0.02mg/l以下であることを意味する。
【0022】
上記水系分散液における上記水難溶性の低分子物質の含有量は、0.3重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがより好ましく、2.5重量%以下であることが好ましく、2.0重量%以下であることがより好ましい。
【0023】
上記水系分散液は、更に、後述する成形体を製造する方法に用いる界面活性剤、重合開始剤等を含有していてもよい。
【0024】
本発明の成形体は、上記水系分散液の乾燥物である。
上記水系分散液の乾燥物であることで、高価なロタキサンの重合体を含まない場合でも、高い強靭性を有する成形体とすることができる。
【0025】
上記乾燥物とするための乾燥方法としては、後述する成形体を製造する方法における乾燥方法を用いることができる。
【0026】
本発明の成形体の形状は、特に限定されず、例えば、フィルム状、板状、シート状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、中空状、枠状、箱状等が挙げられる。
【0027】
本発明の成形体を製造する方法としては、上記(メタ)アクリルモノマーの重合体を含む、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液を成形し、乾燥する方法等が挙げられる。
上記(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液を成形する工程、及び、乾燥する工程を有する成形体の製造方法もまた本発明の1つである。
【0028】
本発明の成形体の製造方法は、上記(メタ)アクリルモノマーを含む混合液を重合反応させることで、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液を得る工程を有することが好ましい。
【0029】
上記重合させる方法としては、例えば、乳化重合、懸濁重合、分散重合、ソープフリー重合、マイクロエマルション重合、ミニエマルション重合、マイクロサスペンション重合等が挙げられる。
【0030】
上記(メタ)アクリルモノマーを含む混合液に含まれる(メタ)アクリルモノマーとしては、上述の(メタ)アクリルモノマーを用いることができる。
なかでも、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルアクリレートが好ましく、メチルアクリレートがより好ましい。
【0031】
上記混合液における(メタ)アクリルモノマーの含有量は、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、重合反応を充分に進行させることができる。
【0032】
上記混合液は、水系溶剤を含有することが好ましい。
上記水系溶剤としては、水、水溶性有機溶剤、水と水溶性有機溶剤との混合物等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等が挙げられる。
なかでも水が好ましく用いられる。
上記水系溶剤は、水系分散液の溶剤として使用してもよい。
【0033】
上記水系溶剤の含有量は、上記(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して、100重量部以上であることが好ましく、250重量部以上であることがより好ましく、10000重量部以下であることが好ましく、2000重量部以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、得られる微粒子の粒径を好適なものとすることができる。
【0034】
上記混合液は、上記水系溶剤以外に、水難溶性の低分子物質を含んでいてもよい。
上記水難溶性の低分子物質としては、例えば、セチルアルコール、n−ヘキサデカン等が挙げられる。
【0035】
上記重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩類、有機過酸化物、アゾ系化合物等が挙げられる。
上記過硫酸塩類としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。
なかでも、過硫酸塩類が好ましく、過硫酸カリウムがより好ましい。
【0036】
上記重合開始剤の添加量は、上記(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して、0.05重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、15重量部以下であることが好ましく、12重量部以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、重合反応を充分に進行させることができる。
【0037】
上記重合反応において、(メタ)アクリルモノマーを含む混合液は、界面活性剤を含有していてもよい。
上記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
上記アニオン界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
上記カチオン界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのような第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
上記ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
なかでも、アニオン界面活性剤が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0038】
上記混合液が上記界面活性剤を含む場合、上記界面活性剤の添加量は、上記(メタ)アクリルモノマー100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましく、0.25重量部以上であることがより好ましく、5重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがより好ましい。
【0039】
上記重合反応における反応温度は、25℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、重合反応を充分に進行させることができる。
【0040】
上記重合反応における反応時間は、5時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましく、36時間以下であることが好ましく、24時間以下であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、重合反応を充分に進行させることができる。
【0041】
本発明の成形体の製造方法は、上記重合反応を進行させて得られた上記(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない微粒子の水系分散液を成形する工程を有する。
本発明の成形体の製造方法では、上記水系分散液を成形することで、高価なロタキサンを含まない場合でも強靭性の高い成形体を得ることができる。
なお、上記水系分散液の媒体は、上記に記載した通りであるが、上記混合液にて使用したものをそのまま用いてもよい。
【0042】
上記微粒子は、(メタ)アクリルモノマーの重合体を含み、ロタキサンの重合体を含まない限り、他の重合体を含んでもよいが、より強靭性の高い成形体を得られることから、(メタ)アクリルモノマーの重合体からなる微粒子であることが好ましい。
【0043】
上記水系分散液を成形する方法としては、例えば、基材上に塗布する方法、基材上に噴霧する方法、型枠に流し込む方法等が挙げられる。
【0044】
本発明の成形体の製造方法では、更に、上記成形する工程の後に、乾燥する工程を有する。
上記乾燥方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
上記乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、水系分散液中の水系溶剤等の量に応じて適宜設定される。
【0045】
本発明の成形体の用途は特に限定されず、例えば、保護フィルム、保護テープ等が挙げられる。