【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の第1の解決策によれば、本発明は、熱間成形可能な鋼から成るブランクをプレス硬化させるための方法であって、この方法が、
・コーティングされてない裸のブランクが、加熱ゾーンを経て搬送され、連続的又は非連続的に少なくとも部分的に少なくともオーステナイト化温度に加熱されるステップと、
・オーステナイト化温度への加熱中に、酸素アクセスが防止されるステップと、
・このように加熱されたブランクが、酸素アクセスを回避しつつオーステナイト化温度未満であるがマルテンサイト開始温度超の温度に冷却される(中間冷却)ステップと、
・ブランクが、次いで、数秒以内にマルテンサイト開始温度への更なる冷却の前に熱間成形型に導入され、この型内で成形され、少なくとも部分領域内をプレス硬化されるステップと、
・成形されたブランクが、型から取り出され、別の場所に保管されるステップと、
を備えること、を特徴とする方法を提案する。
【0010】
コーティングされてない裸のブランクの使用により、実質的なコストの利点が得られる。即ち、それは、コーティングが省略されるからである。別の利点は、オーステナイト化温度への加熱が、これによりコーティングされたブランクの場合よりも迅速に達成できることによって得られる。即ち、これにより、著しい省エネルギーが達成される。また、付加的な防食コーティングを有しない材料を安価に調達することができる。
【0011】
更に、コーティングに基づいた水素脆化は生じない。
【0012】
スケール形成が行なわれないことを保証するため、オーステナイト化温度への加熱が、酸素アクセスなしで行なわれる。更に、オーステナイト化温度に加熱されたブランクは、酸素アクセスを更に回避しつつオーステナイト化温度未満であるがマルテンサイト開始温度超の温度に冷却される。次いで、ブランクは、冷却ゾーンを出た後、最短の時間内、即ち数秒以内、例えば1〜5秒以内に熱間成形型に導入され、この熱間成形型内で成形及びプレス硬化される。
【0013】
酸素アクセスが十分に回避されることによって、スケーリングも回避される。せいぜい、薄い酸化物層形成が生じるが、これは、更なる処理のために無害である。
【0014】
即ち、本発明による手順により、オーステナイト化温度へのウォームアップ時間が短縮される。また、コーティングされてない材料は、コーティングされた材料よりも安価に調達することができ、ここでは水素脆化の問題が生じない。
【0015】
前記課題の第2の解決策として、本発明は、熱間成形可能な鋼から成るブランクをプレス硬化させるための方法であって、この方法が、
・コーティングされてない裸のブランクが、成形部品に成形されるステップと、
・少なくとも部分的に又は完全に成形された裸のブランクが、加熱ゾーンを経て搬送され、連続的又は非連続的に少なくとも部分的に少なくともオーステナイト化温度に加熱されるステップと、
・オーステナイト化温度への加熱中に、酸素アクセスが防止されるステップと、
・このように加熱されたブランクが、酸素アクセスを回避しつつオーステナイト化温度未満であるがマルテンサイト開始温度超の温度に中間冷却装置によって冷却されるステップと、
・ブランクが、次いで、数秒以内でマルテンサイト開始温度への更なる冷却の前に熱間成形型に導入され、未だ完全に成形されていない場合はこの型内で最終成形され、少なくとも部分領域内をプレス硬化されるステップと、
・成形されたブランクが、型から取り出され、別の場所に保管されるステップと、
を備えること、を特徴とする方法を提案する。
【0016】
この提案は、請求項1がコーティングされてない裸のブランクから始められる点でのみ、請求項1による提案と異なり、これに対し、請求項2によれば、このコーティングされてない裸のブランクは、部分的に又は完全に成形されているので、相応の成形部品が、ブランク材料から構成されている。次いで、この成形部品は、別の方法の特徴に応じて処理される。第1の解決策に関して述べられた利点は、第2の解決策にも当て嵌まる。
【0017】
好ましくは、ブランクが、連続加熱炉内で加熱されること、が企図されている。
【0018】
また、ブランクが、ローラ炉床炉を経て搬送及び加熱されること、が企図され得る。
【0019】
ブランクがコーティングされていないことにより、ローラ路床路内のローラの摩耗はより少なくなる。それは、ローラは、コーティング材料によって損傷を受けることがないので、整備コストが低くなるからである。
【0020】
また、連続加熱炉が、ガスにより又は電気的に加熱されること、が企図され得る。
【0021】
ガスによる加熱が好ましいが、電流による加熱も可能である。電力で作動される相応の加熱ユニットが、従来技術で知られている。
【0022】
選択的又は付加的に、ブランクが、場合によっては連続加熱炉の前でも誘導的又は導電的に加熱されること、も企図され得る。
【0023】
また、ブランクが、加熱ゾーンに進入する前に矯正及び/又は圧延されること、が企図され得る。
【0024】
好ましくは、加熱が、シールドガス、特に不活性ガス下で行なわれること、が企図されている。
【0025】
この手順は、良好に制御可能であり、高い確度でスケール形成の回避を生じさせる。
【0026】
更に、好ましくは、中間冷却が、鉛浴、塩浴又は同等の媒体の浴によって行なわれ、この浴内で、ブランク温度が、750℃未満で420℃のマルテンサイト開始温度超の範囲に設定されること、が企図され得る。
【0027】
これにより、簡単に温度が所望の範囲内に設定可能であるので、スケール形成を回避するため、温度は、少なくとも750℃未満であるが、成形及びプレス硬化が可能であるように、マルテンサイト開始温度のはるか上に設定される。
【0028】
選択的に、有利には、中間冷却が、低温の不活性ガスによって、750℃〜420℃の温度に行なわれること、も企図され得る。
【0029】
また、中間冷却が、冷却された型内で又は装置の冷却されたプレートの間で行なわれること、が企図され得る。
【0030】
好ましくは、ブランクが、連続加熱炉からこの連続加熱炉に接続された閉じたシステムを介して中間冷却装置に接続され、これにより、酸素アクセスなしで、好ましくは不活性ガス雰囲気下で、連続加熱炉から中間冷却装置へのブランクの搬送が行なわれること、も企図されている。
【0031】
この場合、連続加熱炉は、例えばローラ炉床炉として形成することができる。
【0032】
ブランクが連続加熱炉を出て、中間冷却装置に導入される時に、ブランクへの酸素アクセスを回避するため、連続加熱炉から中間冷却装置への搬送は、酸素アクセスなしで行なわれるが、これは、例えば、接続通路がこれら両ユニットを互いに接続し、これにより、空気中の酸素のアクセスが防止され、シールドガス雰囲気が維持され得ることによるものである。
【0033】
加えて、好ましくは、連続加熱炉及び/又は中間冷却装置が、入側及び出側で、それぞれに配置されたスルースによって空気アクセスに対して保護されること、が企図されている。
【0034】
そのようなスルースは、ブランクがユニットに導入されるもしくはユニットから搬出される場合に、空気アクセスを十分に回避する。
【0035】
用途に応じて、好ましくは、異なった技術的特性又は機械的特性を備えた領域を形成するため、ブランクの部分が、異なった時間長さで冷却されるか、冷却用のシールドガス雰囲気にさらされること、が企図されている。
【0036】
このため、ブランクの搬送速度が、請求項14に記載の目的のために制御されること、が企図され得る。
【0037】
また、成形型へのブランクの搬送が、ローラコンベア及び/又はハンドリングロボットによって行なわれること、が企図され得る。
【0038】
特に好ましくは、選択的に、ブランクに以下の組織形成、即ち、
・100%マルテンサイトの組織、
・オーステナイト、フェライト、ベイナイト及び/又はパーライトの成分を備えた主にマルテンサイトの組織、
・1%〜99%のマルテンサイト又は1%〜99%ベイナイト、
・1%〜99%のマルテンサイトと残りがオーステナイト、
・主にベイナイトで、残りがオーステナイト、フェライト、マルテンサイト及び/又はパーライト、
を備えた領域が形成されること、が企図されている。
【0039】
特に、好ましくは、等級22MnB5相当の鋼から成るブランクが使用されること、が企図されている。
【0040】
ブランクがプレス硬化前にプレス機内で既に部分的に又は完全に成形された場合、プレス硬化時に0.1%〜10%のオーダーの部分的にしか成形されてないブランクの最終成形が行なわれる。
【0041】
この最終成形は、部品に依存して変化し得る。
【0042】
加えて、好ましくは、ブランクが、矩形のシートから成ること、が企図されている。
【0043】
また、ブランクが、予め切断されたシート部分から成ること、が企図され得る。
【0044】
この場合、第1のステップで、矩形のブランクからシート部分が切り取られるが、その場合、このシート部分は、いわば、相応にプロセスに従って処理される別のブランクである。
【0045】
加えて、好ましくは、プレス過程の1つの後にシート部分の切断の最適化が行なわれること、が企図されている。
【0046】
また、ブランクに、穴、凹部、輪郭又は他の加工が、プレス過程の1つの前又は後に導入されること、が企図され得る。
【0047】
しばしば、相応の部品は、関連する穴を、凹部及び輪郭又は除去部として備えるが、それらは、同様にプレス過程の前又は後にブランクに導入することができる。
【0048】
可能な手順は、ブランクが、室温で成形されること、に見られる。
【0049】
特定の状況下で有利なバリエーションは、成形特性を改善するために、ブランクが、室温に対して高い温度で成形され、温度上昇が、ブランク及び/又は成形型の加熱によって行なわれること、に見られる。
【0050】
室温に対して高い温度での成形は、特定の状況下で、良好な成形特性を生じさせる。この場合、温度上昇のために、ブランクと相応の型の両方を加熱することができる。
【0051】
場合によっては有利な選択的な手順は、ブランクが、室温に対して低い温度で成形され、ブランク及び/又は成形型の温度低下が行なわれること、に見られる。
【0052】
この場合、場合によっては、温度低下が、窒素、場合によっては液体窒素による冷却によって行なわれること、が企図されている。
【0053】
低い温度の場合−これは、例えば窒素によって冷却された部品(ブランク)又は型によって生じ得る−は、特定の状況下で潤滑剤に等しい効果が得られるが、凍結した窒素は、成形後に自動的に消滅し、不利な結果を有しない。
【0054】
更に、材料−好ましくはこの材料からブランクが成る−が、22MnB5だけでなく、同等の材料でもあり得ることを述べておく。同様に、既存の材料の場合でも、プロセス経過に適合させるために、分析を最適化することもできる。例えば、C含有量、Mn含有量又はB含有量は、他の合金元素と同様に相応に適合させることができる。
【0055】
別の方法の特徴は、材料厚さが変化するテーラードブランク材料から成るブランクが使用されること、にある。
【0056】
いわゆるテーラードブランク材料は、従来技術で知られている。この場合、ブランクは、初期材料から異なった厚さに圧延され、次いで、異なる材料厚さのブランク片が互いに結合、特に溶接され、次処理される。このような材料も、本発明による方法のために使用することができる。
【0057】
別の可能性は、材料厚さが変化するフレキシブル圧延材料から成るブランクが使用されること、にある。
【0058】
このようなフレキシブル圧延材料も、従来技術で知られている。この場合、ストリップ材料は、異なる厚さに圧延され、次いで、ブランクに分割さるので、ブランクは、統一的なシート厚さを備えるのではなく、異なるシート厚さを有する。
【0059】
この材料も、本発明による目的のために有利に使用可能である。
【0060】
特徴は、全体的又は部分的に1.5mm以下の薄い材料から成るブランクが使用されること、にある。
【0061】
本発明による方法において1.5mm又はそれより薄い厚さの材料が使用される場合、これは、方法に対して良好に使用可能である。中間冷却が設けられることにより、材料は、中間冷却後、中間冷却なしのプレス硬化の場合よりも硬くなり、これが、有利な手順を生じさせる。
【0062】
別の特徴は、結晶粒粗大化を回避又は最小化するために、ブランクが、加熱ゾーン内で5分未満の時間の間加熱されること、に見られる。
【0063】
本発明によれば、例えばAlSiでのコーティング時には必要であるような5分以上の保持時間は必要ないので、本発明により、適合された温度及び時間によってブランクの材料の組織を最適化することができる。これにより、結晶粒肥大化を防止することができ、顧客固有の組織/粒度を設定すべき場合に良好に顧客の要望に対応することができる。
【0064】
好ましい手順を概略化した形態で図面に図示し、以下で詳細に説明する。