特開2021-195630(P2021-195630A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195630(P2021-195630A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】被介護者用着衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20211129BHJP
【FI】
   A41D13/12 163
   A41D13/12 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-100529(P2020-100529)
(22)【出願日】2020年6月9日
(71)【出願人】
【識別番号】520042870
【氏名又は名称】酒井 惠美子
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 惠美子
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA02
3B011AB08
3B011AC08
3B011AC17
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】介護者の介護負担を軽減することができるとともに、介護者が気軽に使用することができる被介護者用着衣を提供する。
【解決手段】本発明に係る被介護者用着衣1は、展開状態において矩形状のシートで構成され、両側縁に設けられるファスナ3を閉じると、被介護者の胴体部及び大腿部を包むことができる大きさの筒状になる本体部2と、本体部2の内面に本体部2と一体又は別体に設けられる防水性シート4とを備える。この構成により、本発明に係る被介護者用着衣1によれば、ファスナ3を開閉するだけで簡単に着脱することができ、また、ファスナ3を開くだけでおむつを簡単に交換することができるため、介護者の介護負担を大きく軽減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態において矩形状のシートで構成され、両側縁に設けられるファスナを閉じると、被介護者の胴体部及び大腿部を包むことができる大きさの筒状になる本体部と、
本体部の内面に本体部と一体又は別体に設けられる防水性シートとを備える
被介護者用着衣。
【請求項2】
シートの幅方向中央部に被介護者の後側が位置し、被介護者の前側にファスナが位置するように筒状にされる
請求項1に記載の被介護者用着衣。
【請求項3】
ファスナは、
一方のエレメントをスライドするスライダに他方のエレメントの端部のピンを係入してファスナを閉じるオープンタイプのファスナであり、
ピンが本体部の上側となるように設けられることにより、上側から下側に向かって閉操作され、下側から上側に向かって開操作される
請求項1又は請求項2に記載の被介護者用着衣。
【請求項4】
防水性シートは、左右側部が本体部の左右側部から左右に突出するように本体部よりも幅広である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の被介護者用着衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきりの被介護者に適した被介護者用着衣に関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの高齢者等の被介護者は、おむつを着用し、この上にパジャマ等の衣服を着用して床に入ることが多い。特許文献1に記載された被介護者用着衣は、被介護者が就寝中に無意識のうちに下腹部に手を伸ばしておむつを取り外してしまうことを防止するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−055819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された被介護者用着衣は、一対の紐を被介護者の背中で交差するように被介護者の肩に掛け、別の一対の紐を被介護者の下腹部で結び、さらに別の二対の紐を被介護者の各大腿部の表側で結ぶことにより、被介護者に装着されるものである。このため、介護者による被介護者用着衣の着脱作業やおむつの交換作業が煩雑となり、介護者に大きな介護負担が掛かる。
【0005】
また、特許文献1に記載された被介護者用着衣は、一時的に被介護者の身体を拘束し、被介護者の運動を抑制する、いわゆる身体拘束衣に当たるおそれがある。平成13年に厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」を公表したことに伴い、この種の被介護者用着衣は、自治体等の担当局から承認を得ないと、使用することができなくなった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、介護者の介護負担を軽減することができるとともに、介護者が気軽に使用することができる被介護者用着衣を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る被介護者用着衣は、
展開状態において矩形状のシートで構成され、両側縁に設けられるファスナを閉じると、被介護者の胴体部及び大腿部を包むことができる大きさの筒状になる本体部と、
本体部の内面に本体部と一体又は別体に設けられる防水性シートとを備える
被介護者用着衣である。
【0008】
ここで、本発明に係る被介護者用着衣の一態様として、
シートの幅方向中央部に被介護者の後側が位置し、被介護者の前側にファスナが位置するように筒状にされる
との構成を採用することができる。
【0009】
また、本発明に係る被介護者用着衣の他態様として、
ファスナは、
一方のエレメントをスライドするスライダに他方のエレメントの端部のピンを係入してファスナを閉じるオープンタイプのファスナであり、
ピンが本体部の上側となるように設けられることにより、上側から下側に向かって閉操作され、下側から上側に向かって開操作される
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る被介護者用着衣の別の態様として、
防水性シートは、左右側部が本体部の左右側部から左右に突出するように本体部よりも幅広である
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係る被介護者用着衣のさらに別の態様として、
本体部の上端部に取り付けられる肩掛け部をさらに備え、
肩掛け部は、本体部の上端部の後側部分から延びる後側長尺部と、本体部の上端部の前側部分から伸びる前側長尺部とを備え、
後側長尺部又は前側長尺部のいずれか一方は、被介護者の肩に掛けられる長さを有して帯状に形成され、
後側長尺部又は前側長尺部のいずれか他方は、後側長尺部又は前側長尺部のいずれか一方と長さ調整可能に連結される
との構成を採用することができる。
【0012】
この場合、
後側長尺部又は前側長尺部のいずれか他方は、一部又は全部に伸縮性を有する
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の如く、本発明に係る被介護者用着衣は、ファスナを開閉するだけで簡単に着脱することができ、また、ファスナを開くだけでおむつを簡単に交換することができる。このため、本発明に係る被介護者用着衣によれば、介護者の介護負担を大きく軽減することができる。
【0014】
また、本発明に係る被介護者用着衣は、被介護者の胴体部及び大腿部に巻くだけの構成であり、身体拘束衣に該当しない。このため、本発明に係る被介護者用着衣によれば、被介護者に与えるストレスを最小限に抑えることができる。また、本発明に係る被介護者用着衣は、身体拘束衣に該当しないため、使用につき承認が不要となる。このため、本発明に係る被介護者用着衣によれば、気軽に使用することができ、この点でも、介護者の介護負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る被介護者用着衣の正面図である。
図2図2は、同被介護者用着衣の展開図である。
図3図3(a)は、同被介護者用着衣のファスナの上端部の拡大図である。図3(b)は、同ファスナの下端部の拡大図である。
図4図4は、同被介護者用着衣の肩掛け部の拡大図である。
図5図5は、同被介護者用着衣を寝具上で着用する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る被介護者用着衣の一実施形態について、図1ないし図5を参酌して説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る被介護者用着衣1は、本体部2と、防水性シート4と、肩掛け部5とを備える。本体部2は、展開状態において矩形状のシートで構成され、両側縁に設けられるファスナ3を閉じると、被介護者の胴体部及び大腿部を包むことができる大きさの筒状になる。防水性シート4は、本体部2の内面に本体部2とは別体に設けられる。肩掛け部5は、本体部2の上端部に取り付けられ、被介護者に対して本体部2を適切な位置に固定する。
【0018】
本体部2のシートは、布、プラスチックシート、不織布等、多少の力では破れない強度を有するものが用いられる。また、本体部2のシートは、被介護者や介護者に不快感を与えないよう、カサカサといった雑音が生じないものが用いられる。
【0019】
本体部2は、シートの幅方向中央部に被介護者の後側が位置し、被介護者の前側にファスナ3が位置するように筒状にされる。これにより、被介護者の前側において、ファスナが開閉操作される。
【0020】
図3に示すように、ファスナ3は、一方のエレメント3aをスライドするスライダ3cに他方のエレメント3bの端部のピン(蝶棒)3dを係入してファスナ3を閉じるオープンタイプのファスナである。ファスナ3は、本体部2の両側縁の上端から下端の全長に亘って設けられる。ファスナ3は、ピン3d及びボックス(箱)3eが本体部2の上側となるように設けられる。これにより、ファスナ3は、本体部2の上側から下側に向かって閉操作され、本体部2の下側から上側に向かって開操作される。したがって、被介護者が被介護者用着衣1を着用した状態において、ファスナ3の開閉操作手段としてのスライダ3cは、本体部2の下端部に位置する。
【0021】
図1及び図2に示すように、防水性シート4は、被介護者の排泄物によって本体部2や寝具(布団やベットのシーツ等)が汚れるのを防止するためのものである。防水性シート4は、矩形状であり、左右側部が本体部2の左右側部から左右に突出するように本体部2よりも幅広である。このため、防水性シート4は、左右側部が重ね合わせられた状態で被介護者の胴体部及び大腿部を包む大きさの筒状になる。なお、防水性シート4が本体部2に対して左右均等に配置される場合、防水性シート4の左右側部の重ね合わせ部は、幅方向中心にてファスナ3と一致する。言い換えれば、ファスナ3は、防水性シート4の左右側部の重ね合わせ部によって覆われる。
【0022】
防水性シート4は、面ファスナや両面テープ等の止着手段2aによって本体部2に止着される。これにより、防水性シート4が本体部2からずれるのが防止される。止着手段2aは、本体部2の縁部と防水性シート4の縁部との重なり部に設けられるのが好ましく、本体部2の縁部及び防水性シート4の縁部の少なくとも一方の適所に複数設けられるのがより好ましい。
【0023】
図4に示すように、肩掛け部5は、本体部2の上端部の後側部分から延びる後側長尺部6と、本体部2の上端部の前側部分から伸びる前側長尺部8とを備える。
【0024】
後側長尺部6は、被介護者の肩に掛けられる長さを有して帯状に形成される。後側長尺部6の先端部には、留め具7が設けられる。本実施形態においては、留め具7は、リボンの形態を有し、中央部にて後側長尺部6の先端部に取り付けられたものである。
【0025】
前側長尺部8は、後側長尺部6と長さ調整可能に連結される。より詳しくは、前側長尺部8は、本体部2の上端部の前側部分から延びる帯状に形成される基部9と、基部9の先端部から延びる掛止部10とを備える。掛止部10は、後側長尺部6の留め具7を掛止する箇所を長手方向に複数有する。これにより、前側長尺部8は、後側長尺部6と長さ調整可能に連結される。本実施形態においては、掛止部10は、伸縮性を有するゴム紐で構成される。2本のゴム紐(あるいは1本のゴム紐を半切して2本となるゴム紐)の適宜の箇所10a,…が接続されることにより、複数の掛止箇所(穴)10b,…が形成される。
【0026】
図2に示すように、本体部2は、下端部の中央部に、一対の紐11,11を有する。また、本体部2は、下端部の左右端部のそれぞれに、環12を有する。本体部2が筒状にされた状態で、紐11,11を二つの環12,12に通して結ぶことにより、筒状となった本体部2の下端部がまくれ上がるのが防止されるとともに、ファスナ3が不用意に開くのが防止される。すなわち、一対の紐11,11及び一対の環1,12は、筒状にされた本体部2の下端部の前側部分の中央部と本体部2の下端部の後側部分の中央部とを連結する手段である。なお、紐11,11の代わりに環12とし、環12を3つ設け、別の紐で結ぶようにしてもよい。
【0027】
本実施形態に係る被介護者用着衣1は、以上の構成からなる。着用するときは、図5に示すように、展開された状態の被介護者用着衣1を寝具(布団やベットのシーツ等)の上に敷き、この上に被介護者を寝かせた後、ファスナ3を閉じる。そして、紐11,11を二つの環12,12に通して結ぶ。なお、被介護者は、おむつを着用するが、パジャマ等の衣服は着用しない。被介護者用着衣1は、パジャマ等の衣服の代わりの簡単着となる。ただし、被介護者がおむつを着用し、この上にパジャマ等の衣服を着用した上で、被介護者用着衣1を着用するようにしてもよい。
【0028】
このように、本実施形態に係る被介護者用着衣1は、ファスナ3を開閉するだけで簡単に着脱することができ、また、ファスナ3を開くだけでおむつを簡単に交換することができる。このため、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、介護者の介護負担を軽減することができる。しかも、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、被介護者の前側にファスナが位置することにより、被介護者用着衣1の着脱作業やおむつの交換作業がさらに簡単になり、介護者の介護負担をより一層軽減することができる。
【0029】
そして、本実施形態に係る被介護者用着衣1は、被介護者の胴体部及び大腿部に巻くだけの構成であり、上肢は自由に動かすことができ、身体拘束衣に該当しない。このため、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、被介護者に与えるストレスを最小限に抑えることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る被介護者用着衣1は、身体拘束衣に該当しないため、使用につき承認が不要となる。このため、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、気軽に使用することができ、この点でも、介護者の介護負担を軽減することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、着用状態において、ファスナ3のスライダ3cは、本体部2の下端部、すなわち、被介護者の手が届かないところに位置する。このため、被介護者が不用意にファスナ3を開操作し、おむつを取り外すといった等の行為に及ぶのを効果的に防止することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、本体部2の内側に防水性シート4が設けられる。このため、被介護者の排泄物によって本体部2や寝具(布団やベットのシーツ等)が汚れるのを効果的に防止することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る被介護者用着衣1によれば、被介護者の肩には、肩掛け部5の帯状部(後側長尺部6)が掛かる。帯状部ということで、ある程度の幅があるため、肩掛け部5が肩に食い込むという事態が発生するのを防止することができ、被介護者に対する不快感を解消することができる。
【0034】
なお、本発明に係る被介護者用着衣は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
たとえば、ファスナ3は、本体部2の両側縁の上端から下端の全長に亘って設けられることは必須ではない。
【0036】
防水性シートは、本体部2とは別体ではなく、本体部2の内面に一体に設けられるものであってもよい。
【0037】
また、肩掛け部5の長さ調整手段は、上記したものに限定されず、公知となっている各種の長さ調整手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…被介護者用着衣、2…本体部、2a…止着手段、3…ファスナ、3a…一方のエレメント、3b…他方のエレメント、3c…スライダ、3d…ピン、4…防水性シート、5…肩掛け部、6…後側長尺部、7…留め具、8…前側長尺部、9…基部、10…掛止部、11…紐、12…環
図1
図2
図3
図4
図5