(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195753(P2021-195753A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】ゴム支承の切断撤去方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20211129BHJP
E01D 19/04 20060101ALI20211129BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20211129BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20211129BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20211129BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20211129BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
E01D22/00 Z
E01D19/04 B
E04H9/02 331A
F16F1/40
F16F15/04 P
B24B27/06 D
B24B55/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-101295(P2020-101295)
(22)【出願日】2020年6月10日
(11)【特許番号】特許第6747740号(P6747740)
(45)【特許公報発行日】2020年8月26日
(71)【出願人】
【識別番号】320003404
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】福島 由美子
【テーマコード(参考)】
2D059
2E139
3C047
3C158
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
2D059AA37
2D059GG39
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC20
2E139AD00
2E139CA02
2E139CC17
3C047FF09
3C047FF17
3C158AA05
3C158AB04
3C158AC04
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB05
3C158DA03
3J048AA01
3J048BA08
3J059AE10
3J059BA43
3J059BC01
3J059BC06
3J059EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴム支承をダイヤモンドワイヤソーで切断するにあたり、切断に伴う発熱によってゴム支承が溶融してダイヤモンドワイヤソーに付着して切断能力を低下させ、また、切断時に発生する熱によってゴム支承が発火することを防止する。
【解決手段】切断対象のゴム支承1にダイヤモンドワイヤソー2を巻き付け、切断部位にボルテックスチューブ4を近接させて配設して冷気を切断部に供給して切断時の摩擦熱による温度上昇を抑制し、ダイヤモンドワイヤソーへのゴムの付着を防止すると共にゴムが高温となって発火するのを防止して切断作業を円滑に行えるようにする。ゴム支承1の上下2カ所の鋼板をダイヤモンドワイヤソーによって切断することによってゴム支承を円滑に撤去することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドワイヤソーをゴム支承の鋼板に位置させ、切断切り込み口及び抜け出し口にボルテックスチューブを近接設置して冷気を噴出させてダイヤモンドワイヤソーで切削し、ダイヤモンドワイヤソーによる切削の進行に伴って移動する切り込み口及び抜け出し口に冷気を噴射できるようにボルテックスチューブを移動させながら切断するゴム支承の切断撤去方法。
【請求項2】
請求項1において、ゴム支承の側面両側にレールを設置し、このレールに沿ってボルテックスチューブを移動可能にしてあるゴム支承の切断撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や高速道路の高架橋等の積層ゴム支承の切断撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下部構造物と上部構造物との間に設置されたゴム支承の老朽化に伴う交換作業が必要となり、既存のゴム支承を撤去し、代わりに新たなゴム支承を設置することが求められている。
【0003】
ゴム支承1は、
図3に示すように、ゴム層12と硬質板(金属製板)13が交互に積層された積層体であって、この積層体の周囲はゴム等の保護層14で包囲されており、上下には上部構造物及び下部構造物に固定するための鋼板10、11が設けてある。
ゴム支承1のゴム層には各種のゴム、例えば天然ゴム、クロロプレンゴムなどが使用されている。 硬質板13としては、一般的には鋼板などの金属製板が使用さており、その他の硬質板の材質としては、セラミックス、硬質合成樹脂等の材料が使用されている。
ゴム層12の厚さは、4〜15mm程度であり、鋼板などの硬質板13の厚さはゴム層12と同等または薄いものとしてあり、2〜10mm程度である。
また、側面の保護層14は、硬質板13の金属製板を腐食損傷から保護するものであってこの保護層として、耐候性に優れるクロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴムなどが使用されている。
【0004】
ゴム支承の撤去方法としては、支承が設置してある橋台・橋脚等のコンクリートを斫り、ゴム支承を固定しているアンカーボルトを露出させ、アンカーボルトを切断して撤去する方法、ダイヤモンドワイヤソーによって橋台・橋脚のコンクリートを切断撤去してアンカーボルトを露出させる切断撤去方法、また、橋台コンクリートをウォータージェットで切断撤去してアンカーボルトを切断撤去する方法などが提案されている。
コンクリートを斫ると騒音や塵埃が発生するので都市高速道路などのように道路に近接して住居や事務所ビルがある場合、静穏な環境を破壊することになるので好ましくなく、また、騒音伝播の防止、塵埃の拡散の防止が必要であり、コストがかかると共に施工時間が長引くという問題がある。
更に、橋台・橋脚等の構造物本体を切断する方法は、構造物を部分的であっても破壊することになるので構造物に欠陥部が発生することになり、ゴム支承を撤去した後、これを修復して構造物を元の状態に戻す必要があり、時間と費用を要するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−115323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ゴム支承が設置されている橋台・橋脚等の構造物に手を加えることなくゴム支承本体のみをダイヤモンドワイヤソーで切断撤去できるようにするものであり、また、ゴム支承の内部には複数枚の鋼板がゴム支承内に存在するため、これをダイヤモンドワイヤソーで切断すると熱が発生し、この熱がゴムを軟化させ、更に軟化したゴムがワイヤソーに付着してワイヤソーの切断機能を低下させると共に付着したゴムが冷却されて固化してダイヤモンドワイヤソーの走行を案内するために設置されているプーリを破損したりしてダイヤモンドワイヤソーが稼働不可能となる場合がある。
また、ゴム支承を構成する上下の鋼板をダイヤモンドワイヤソーで切断すると高温となる。ゴム支承を構成するゴムは炭素製品であるので、高温になると発火してしまうので切断速度を低下させることなくゴムが発火することがないようにしなければならない。
冷却水による冷却は、水タンクの準備が必要であり、更に切断後の切粉を含む泥水が産業廃棄物であるので、水処理設備を必要とするなどコストがかかることになる。
本発明は、ダイヤモンドワイヤソーによるゴム支承の切断撤去において、ゴムがダイヤモンドワイヤソーに付着することがなく、また、ゴムが高熱となって発火することがないダイヤモンドワイヤソーによるゴム支承の切断撤去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、切断対象のゴム支承にダイヤモンドワイヤソーを巻き付けて切断撤去するにあたり、ゴム支承の上下に設けてある上部・下部の鋼板を切断するものであって、切断によって生ずる熱による発火を防止し、ダイヤモンドワイヤソーが切断対象物のゴム支承に切り込む切り込み口と、ダイヤモンドワイヤソーがゴム支承から抜け出す抜け出し口の2カ所にボルテックスチューブを近接させて配設して冷気を切り込み口と抜け出し口に供給して温度上昇を抑制することによってダイヤモンドワイヤソーによるゴム支承の無水切断を可能としたものである。
更に、ボルテックスチューブをゴム支承の切断の進行に伴って移動することができるようにゴム支承にレールを設置し、このレールに沿ってボルテックスチューブを移動可能に設置するものである。
【発明の効果】
【0008】
ボルテックスチューブは、圧縮空気を供給することによってマイナス30℃以下の冷気を得るものであり、切断撤去の施工現場にコンプレッサーを搬入することができれば容易にマイナス30℃以下の冷気を得ることができ、高架橋や橋梁等の施工現場においても切断箇所に集中的に冷気を吹き付けることが可能であるので切断部位およびダイヤモンドワイヤソーが高温になることを防止でき、ダイヤモンドワイヤソーへのゴムの付着を防止すると共に切断時の摩擦熱によってゴムが高温になるのを抑制してゴムが発火するのを防止することが可能であり、円滑にゴム支承を切断撤去することが可能である。
ボルテックスチューブから吐出される冷気は、吐出口から30cm程度までしか到達しないので、ボルテックスチューブの冷気出口にホースを取付け、切断の進行に従ってゴム支承の切断部位に冷気を吹き付けて冷却することによって、ゴムが発火したり、また、ゴムが熱で溶融されてダイヤモンドワイヤソーに付着して切断能力を阻害することもないので、ゴム支承を円滑に切断撤去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ゴム支承切断におけるダイヤモンドワイヤソーの配置平面図。
【
図2】ボルテックスチューブ(冷却装置)の配置概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を切断施工の実施例の
図1及びダイヤモンドワイヤソーとボルテックスチューブの概略配置概念を示す
図2に基づいて説明する。
図1のダイヤモンドワイヤソー2の配置平面図に示すようにダイヤモンドワイヤソー2とダイヤモンドワイヤソー駆動装置3及びボルテックスチューブ4をセットする。
図3のゴム支承1の断面図の矢印で示すゴム支承1の上下に設けてある鋼板10、11の位置にダイヤモンドワイヤソー2を巻き付け、ダイヤモンドワイヤソー駆動装置3によって走行させることによってゴム支承1の鋼板10、11の位置においてゴム支承1を上下2カ所で切断する。上下の鋼板10、11はどちらを先に切断しても構わない。
ボルテックスチューブ4は、ダイヤモンドワイヤソー2がゴム支承1に切り込んでいく切り込み口1aとダイヤモンドワイヤソー2がゴム支承1から抜け出してくる抜け出し口1bに冷気が吹き込まれるように配置する。ボルテックスチューブ4は、図示しないコンプレッサーに高圧ホースによって接続され、コンプレッサーからボルテックスチューブ4に供給される圧縮空気が冷気に変換されて切り込み口1aと抜け出し口1bに向かって噴出される。
ボルテックスチューブ4の冷気の吐出口にホース(図示しない)を接続し、ゴム支承1の切断切り込み口1aにボルテックスチューブ4からの冷気を直接噴射し、ダイヤモンドワイヤソー2及び切断されている鋼板10、11を冷却する。
【0011】
ダイヤモンドワイヤソー2がゴム支承1の鋼板10、11の切断の進行に伴って切り込み口1a及びダイヤモンドワイヤソー2の抜け出し口1bがダイヤモンドワイヤソー駆動装置3の方向へ移動するので、ボルテックスチューブ4を切り込み口1a及び抜け出し口1bの移動に同期させて移動させ、冷気が切り込み口1a及びダイヤモンドワイヤソー2がゴム支承1から外部に抜け出す抜け出し口1bに十分供給されるようにする。
その結果、ゴム支承1の切断は円滑に行なわれ、ゴム支承1のゴムの温度が発火点以下に抑制され、また、ゴムが溶融してダイヤモンドワイヤソー2に付着することがないので切断能力の劣化もなく、更に、付着したゴムによる駆動プーリ3a、方向転換プーリ3bの破損も生ずることがなく、ゴム支承1の上下の鋼板を切断することができた。
【0012】
ボルテックスチューブ4をダイヤモンドワイヤソー2の切断位置の移動に同期して移動させやすいように、ゴム支承1の両側に移動用のレールを設置し、このレールにガイドさせてボルテックスチューブ4を自動的に、または、人力によって移動させることによって施工を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0013】
1 ゴム支承
2 ダイヤモンドワイヤソー
13 硬質板(金属製板)
14 保護層
1a 切り込み口
1b 抜け出し口
3 ダイヤモンドワイヤソー駆動装置
3a 駆動プーリ
3b 方向変換プーリ
4 ボルテックスチューブ