【解決手段】実施形態に係るエンジン制御装置は、検出部と、判定部とを備える。検出部は、エンジン回転数が所定値未満である場合に燃料供給を遮断してエンジンを停止させてからエンジンの再始動を開始するまでの期間におけるエンジン回転数の変化量と、期間の終期におけるエンジン回転数とを検出する。判定部は、検出部によって検出されたエンジン回転数およびエンジン回転数の変化量に基づいて、再始動としてエンジンへの燃料供給による着火始動を実行するか否かを判定する。
エンジン回転数が所定値未満である場合に燃料供給を遮断してエンジンを停止させてから前記エンジンの再始動を開始するまでの期間における前記エンジン回転数の変化量と、前記期間の終期における前記エンジン回転数とを検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記エンジン回転数および前記エンジン回転数の変化量に基づいて、前記再始動として前記エンジンへの燃料供給による着火始動を実行するか否かを判定する判定部と
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
エンジン制御に関わる運転操作の履歴情報、前記エンジンの経過年数に関する経年情報および前記エンジンの周囲環境に関する環境情報に基づく学習結果により前記変化量閾値を設定する設定部をさらに備えること
を特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のエンジン制御装置。
エンジン回転数が所定値未満である場合に燃料供給を遮断してエンジンを停止させてから前記エンジンの再始動を開始するまでの期間における前記エンジン回転数の変化量と、前記期間の終期における前記エンジン回転数とを検出する検出工程と、
前記検出工程によって検出された前記エンジン回転数および前記エンジン回転数の変化量に基づいて、前記再始動として前記エンジンへの燃料供給による着火始動を実行するか否かを判定する判定工程と
を含むことを特徴とするエンジン制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するエンジン制御装置およびエンジン制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るエンジン制御方法の概要について説明する。
図1は、実施形態に係るエンジン制御方法の概要を説明する説明図である。実施形態に係るエンジン制御方法は、車両のエンジンを制御するエンジン制御装置によって実行される。
【0011】
ここで、車両は、低速時にエンジンを一時的に停止させるとともに、所定の始動操作(ブレーキペダルを離す等)を受け付けた場合には、エンジンを再始動することが可能な車両である。
【0012】
エンジンの再始動は、スタータにより再始動する方法(以下、スタータ始動と称する)と、スタータによらず、エンジンへの燃料供給によりエンジンを着火して再始動する方法(以下、着火始動と称する)とに大別される。
【0013】
ここで、従来は、エンジンへの燃料供給を遮断後、再始動時におけるエンジン回転数の瞬時値に基づいて、スタータ始動による方法と着火始動による方法とのいずれの方法により再始動を実行するかを決定していた。
【0014】
しかしながら、燃料供給遮断後にエンジン回転数がどの程度低下するかの低下特性は、エンジン毎に異なる。そして、従来は、エンジン毎の低下特性については考慮されていないため、着火始動を実行すると決定してから実際に着火始動を行うまで(
図1に示す時刻t3から時刻t4まで)にエンジン回転数が想定以上に落ち込むことで、再始動時に生じる振動が大きくなるおそれがあった。
【0015】
そこで、実施形態に係るエンジン制御方法では、エンジン回転数の瞬時値だけでなく、所定期間におけるエンジン回転数の変化量を加味して、着火始動を行うか否かを判定することとした。
【0016】
図1では、エンジン回転数の低下特性が異なる2つのエンジンA、Bを示している。実施形態に係るエンジン制御方法では、まず、エンジン回転数が所定値未満である場合に燃料供給を遮断してエンジンを停止させてからエンジンの再始動を開始するまでの期間(変化量算出期間)におけるエンジン回転数の変化量と、期間(変化量算出期間)の終期におけるエンジン回転数とを検出する。
【0017】
図1に示す例では、エンジン制御装置は、エンジン回転数が所定値未満である時刻t1において、エンジンへの燃料供給を遮断してエンジンを停止する。つづいて、時刻t2において、エンジン制御装置は、エンジンを再始動する始動操作を運転者から受け付ける。
【0018】
かかる始動操作は、例えば、シフト位置を走行レンジ(例えば、ドライブ)に移行させる操作や、アクセルペダルの踏み込み操作、ブレーキを非制動側に変化させる操作、クラッチの踏み込み操作等である。
【0019】
つづいて、時刻t3において、エンジン制御装置は、変化量算出期間である時刻t1から時刻t3までの期間におけるエンジン回転数の変化量を算出(検出)する。
【0020】
そして、時刻t3において、エンジン制御装置は、算出した変化量と、変化量算出期間の終期である時刻t3におけるエンジン回転数とに基づいて、着火始動を実行するか否かを判定する。
【0021】
図1に示す「エンジンA」について、エンジン制御装置は、エンジンAの変化量が小さく(所定の変化量閾値未満)、かつ、時刻t3におけるエンジン回転数が所定の回転数閾値以上である場合、着火始動を実行すると判定する。
【0022】
そして、エンジン制御装置は、着火始動を実行すると判定した場合、エンジンのクランク位置が点火タイミングとなる時刻t4において、燃料を供給し着火始動を実行する。
【0023】
一方、
図1に示す「エンジンB」について、エンジン制御装置は、エンジンBの変化量が大きい(所定の変化量閾値以上)場合、着火始動を実行しないと判定する。つまり、エンジン制御装置は、エンジンBの変化量が大きい(所定の変化量閾値以上)場合には、時刻t3におけるエンジン回転数が回転数閾値以上であっても、着火始動を実行しない。
【0024】
そして、エンジン制御装置は、着火始動を実行しないと判定した場合、時刻t4以降のタイミングにおいて、スタータ始動を実行するが、かかる点の詳細については
図3で後述する。
【0025】
つまり、実施形態に係るエンジン制御方法では、エンジン回転数の変化量を加味することで、エンジン回転数の時刻t3以降の落ち込みを予測できる。これにより、たとえ時刻t3においてエンジン回転数が回転数閾値以上であったとしても、再始動実行時(時刻t4)にエンジン回転数が落ち込むことが変化量から予想される場合には、着火始動を実行しないようにできる。
【0026】
従って、実施形態に係るエンジン制御方法によれば、エンジン回転数の変化量が大きく、再始動時に生じる振動が大きくなると予想される場合には、着火始動を実行しないようにすることで、エンジンの再始動時に生じる振動を抑制することができる。
【0027】
次に、
図2を用いて、実施形態に係るエンジン制御装置1の構成について説明する。
図2は、実施形態に係るエンジン制御装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【0028】
図2に示すように、実施形態に係るエンジン制御装置1は、各種センサ100と、EFI−ECU(Electronic Fuel Injection-Electronic Control Unit)200と、エコランECU300とに接続される。
【0029】
各種センサ100は、車両に関する情報を検出するセンサ群で構成される。例えば、各種センサ100には、エンジン回転数を検出するセンサや、車両の運転操作(アクセルペダル操作や、ブレーキペダル操作、シフト操作等)を検出するセンサ、エンジンの周囲環境を検出するセンサ(温度センサ等)等が含まれる。各種センサ100は、センサの検出結果をエンジン制御装置1へ出力する。
【0030】
EFI−ECU200は、エンジンへの燃料供給量を電子的に制御する制御装置である。エコランECU300は、スタータの駆動を制御する制御装置である。
【0031】
また、エンジン制御装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。制御部2は、取得部21と、検出部22と、設定部23と、判定部24と、実行部25とを備える。記憶部3は、閾値情報31を記憶する。
【0032】
ここで、エンジン制御装置1は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0033】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部2の取得部21、検出部22、設定部23、判定部24および実行部25として機能する。
【0034】
また、制御部2の取得部21、検出部22、設定部23、判定部24および実行部25の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0035】
また、記憶部3は、たとえば、RAMやフラッシュメモリに対応する。RAMやフラッシュメモリは、閾値情報31や、各種プログラムの情報等を記憶することができる。なお、エンジン制御装置1は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0036】
記憶部3に記憶される閾値情報31は、後述する判定部24の判定処理に用いられる閾値を含む情報である。例えば、閾値情報31には、上述した回転数閾値や、変化量閾値の情報が含まれる。閾値情報31は、例えば、予め実験等で設定される。なお、閾値情報31のうち変化量閾値は、後述する設定部23による学習結果により設定される。
【0037】
次に、制御部2の各機能(取得部21、検出部22、設定部23、判定部24および実行部25)について説明する。
【0038】
取得部21は、各種情報を取得する。例えば、取得部21は、各種センサからエンジン回転数の情報や、車両のエンジン制御に関わる運転操作の履歴情報、エンジンの周囲環境に関する環境情報を取得する。
【0039】
また、取得部21は、エンジンの経過年数に関する経年情報を取得する。経年情報は、製造日(もしくは、走行開始日)から現在までに経過した年数の情報である。取得部21は、取得した各種情報を検出部22や設定部23へ出力する。
【0040】
検出部22は、取得部21によって取得されたエンジン回転数に基づいて、変化量算出期間におけるエンジン回転数の変化量および変化量算出期間の終期におけるエンジン回転数を検出する。なお、検出部22が検出するエンジン回転数の変化量およびエンジン回転数の詳細については、
図3で後述する。
【0041】
検出部22は、検出結果であるエンジン回転数の変化量およびエンジン回転数の情報を判定部24へ通知する。
【0042】
設定部23は、取得部21が取得した情報に基づいて閾値情報31を設定する。具体的には、設定部23は、エンジン制御に関わる運転操作の履歴情報、エンジンの経過年数に関する経年情報およびエンジンの周囲環境に関する環境情報に基づく学習結果により閾値情報31における変化量閾値を設定する。
【0043】
設定部23による変化量閾値の学習処理は、既知の機械学習のアルゴリズムを採用可能である。例えば、かかるアルゴリズムとして、決定木や、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、ナイーブベイズ分類器、k近傍法、k平均法、アダブースト、ニューラルネットワーク、マルコフ連鎖等の既知のアルゴリズムを採用可能である。
【0044】
このように、設定部23は、学習処理により変化量閾値を学習することで、後段の判定部24のよる判定処理の精度を高めることができる。
【0045】
判定部24は、検出部22によって検出されたエンジン回転数およびエンジン回転数の変化量に基づいて、エンジンの再始動として着火始動を実行するか否かを判定する。具体的には、判定部24は、記憶部3に記憶された閾値情報31を参照して判定処理を行う。
【0046】
例えば、判定部24は、エンジン回転数が所定の回転数閾値以上で、かつ、エンジン回転数の変化量が所定の変化量閾値未満である場合に、着火始動を実行すると判定する。
【0047】
一方、判定部24は、エンジン回転数の変化量が変化量閾値以上である場合、着火始動を実行しないと判定する。つまり、判定部24は、エンジン回転数が回転数閾値以上であっても、エンジン回転数の変化量が変化量閾値以上である場合、着火始動を実行しないと判定する。
【0048】
このように、判定部24は、閾値情報31を用いることで、着火始動の実行可否を高精度に判定することができる。
【0049】
実行部25は、判定部24の判定結果に基づいてエンジンの再始動を実行する。例えば、実行部25は、判定部24によって着火始動を実行すると判定された場合、着火始動によりエンジンの再始動を実行する。
【0050】
具体的には、実行部25は、判定部24によって着火始動を実行すると判定された後、クランク位置が点火タイミングとなった場合に、エンジンへ燃料を供給することで着火始動を実行する。
【0051】
より具体的には、実行部25は、EFI−ECU200に対してエンジンへの燃料供給を指示することで、着火始動を実行する。
【0052】
また、実行部25は、判定部24によって着火始動を実行しないと判定された場合、スタータによる再始動を実行する。具体的には、実行部25は、エンジンへの燃料供給の遮断後、エンジン回転数が所定値(略ゼロ)で安定した場合に、スタータにより再始動を実行する。
【0053】
より具体的には、実行部25は、エコランECU300に対してスタータを駆動する指示を行うことで、スタータ始動を実行する。
【0054】
このように、実行部25は、判定部24によって着火始動を実行しないと判定された場合、スタータによる再始動を実行することで、着火始動とスタータ始動とを高精度に切り分けて再始動を実行することができる。
【0055】
次に、
図3を用いて、制御部2によるエンジンの再始動までの処理について具体的に説明する。
図3は、制御部2による再始動処理を示す図である。
図3では、エンジン回転数の低下特性が異なる2つのエンジンA,Bを示している。
【0056】
図3に示すように、時刻t1において、実行部25は、エンジン回転数が所定値未満となった場合に、エンジンへの燃料供給を遮断してエンジンを停止させる。この結果、時刻t1以降において、エンジン回転数が上記した低下特性に従って徐々に低下する。
【0057】
そして、時刻t2において、取得部21は、エンジンの再始動条件となる再始動操作の情報を取得したとする。かかる場合、検出部22は、時刻t2から所定期間後の時刻t3におけるエンジン回転数を検出するとともに、変化量算出期間である時刻t1から時刻t3までの期間におけるエンジン回転数の変化量を算出(検出)する。なお、時刻t2において、再始動操作が行われなかった場合には、時刻t3以降の再始動のための制御は行われない。
【0058】
そして、時刻t3において、判定部24は、時刻t3におけるエンジン回転数および変化量算出期間におけるエンジン回転数の変化量に基づいて、着火始動の実行可否を判定する。
【0059】
例えば、エンジンAの場合、判定部24は、時刻t3におけるエンジン回転数が回転数閾値以上で、かつ、エンジン回転数の変化量が変化量閾値未満であるため、着火始動を実行すると判定する。この場合、実行部25は、エンジンのクランク位置が点火タイミングとなる時刻t4において、エンジンへ燃料を供給することで着火始動を実行する。
【0060】
また、エンジンBの場合、判定部24は、エンジン回転数の変化量が変化量閾値以上であるため、着火始動を実行しないと判定する。この場合、実行部25は、時刻t4において着火始動を行わず、エンジン回転数が略ゼロに復帰する時刻t6においてスタータ始動により再始動を実行する。
【0061】
また、
図3では、変化量算出期間は、時刻t1から時刻t3の期間としたが、例えば、時刻t1から時刻t2の期間や、時刻t2から時刻t3の期間であってもよい。なお、時刻t3は、時刻t2から予め定められた期間経過後の時刻であり、任意に設定可能である。
【0062】
次に、
図4を用いて、実施形態に係るエンジン制御装置1が実行する再始動処理の処理手順について説明する。
図4は、実施形態に係るエンジン制御装置1が実行する再始動処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
図4に示すように、まず、実行部25は、エンジン回転数が所定値未満である場合に燃料供給を遮断してエンジンを停止させる(ステップS101)。
【0064】
つづいて、判定部24は、再始動要求があったか否かを判定する(ステップS102)。判定部24は、再始動要求が無かった場合(ステップS102:No)、処理を終了する。
【0065】
また、判定部24は、再始動要求があった場合(ステップS102:Yes)、所定の期間におけるエンジン回転数の変化量が変化量閾値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0066】
判定部24は、エンジン回転数の変化量が変化量閾値以上である場合(ステップS103:Yes)、着火始動を実行しないと判定し、実行部25は、スタータによる始動を実行し(ステップS104)、処理を終了する。
【0067】
一方、判定部24は、エンジン回転数の変化量が変化量閾値未満である場合(ステップS103:No)、所定の期間の終期におけるエンジン回転数が回転数閾値以上であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0068】
判定部24は、エンジン回転数が回転数閾値以上である場合(ステップS105:Yes)、着火始動を実行すると判定し、実行部25は、着火始動を実行し(ステップS106)、処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS105において、判定部24は、エンジン回転数が回転数閾値未満である場合(ステップS105:No)、着火始動を実行しないと判定し、実行部25は、スタータによる始動を実行し(ステップS104)、処理を終了する。
【0070】
上述してきたように、実施形態に係るエンジン制御装置1は、検出部22と、判定部24とを備える。検出部22は、エンジン回転数が所定値未満である場合に燃料供給を遮断してエンジンを停止させてからエンジンの再始動を開始するまでの期間におけるエンジン回転数の変化量と、上記期間の終期におけるエンジン回転数とを検出する。判定部24は、検出部22によって検出されたエンジン回転数およびエンジン回転数の変化量に基づいて、再始動としてエンジンへの燃料供給による着火始動を実行するか否かを判定する。これにより、エンジンの再始動時に生じる振動を抑制することができる。
【0071】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。