【課題】弁体を変位させるための閾値(所定圧)を自動的に調整することが可能であると共に、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストンのスムーズな到達とピストンに対する衝撃の緩和とを実現する。
【解決手段】ガスシリンダ10は、第2ポートに供給されるガスの一部を収容室96に供給するための供給通路120、132を備える。第1圧力室の圧力が所定圧以下である場合、弁体92は、バネ部材94の付勢力と収容室96の圧力とによって、排出流路90を遮断する。第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、弁体92は、第1圧力室の圧力によって、該付勢力及び収容室96の圧力に抗して変位することで、排出流路90を連通させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同じ構造のガスシリンダが複数台設置される生産設備を取り扱う場合、それぞれのガスシリンダに対して絞り弁の手動調整を行う必要があるため、担当者の負担が大きくなる。
【0005】
また、絞り弁に対する手動調整は、担当者の手感に委ねられている。しかも、ねじ式の調整機構によって絞り弁の開度を手動調整するため、生産設備の振動等によるねじの緩みの有無の確認等、日々のメンテナンスが必要である。この結果、手動調整を繰り返し行う必要がある。
【0006】
さらに、シリンダ速度が高速仕様である場合、絞り弁の開度を手動調整してガスの排出量を絞ることで、ストローク端側でのシリンダ速度を減速させることができる。しかしながら、ガスの排出量を絞ると、クッション室の圧力が大きく圧縮されて急激に上昇し、ピストンが進行方向とは逆方向に押し戻されるバウンド現象が発生する。この結果、タクトタイムが長くなって、生産設備のロスが発生する。
【0007】
このような問題に対して、クッション室のガスを排出するオリフィス部と、オリフィス部と共働してクッション室のガスを排出する排出流路と、排出流路を連通又は遮断する弁体と、弁体の基端部を付勢して該弁体を変位させることにより、弁体の先端部で排出流路を遮断させる弾性体とを設けることが考えられる。
【0008】
この構成では、クッション室の圧力が所定の閾値(所定圧)以下の場合、弾性体の付勢力によって、弁体は、排出流路を遮断する。これにより、クッション室のガスは、オリフィス部のみを介して排出される。
【0009】
また、クッション室の圧力が所定圧を超える場合、該圧力によって弁体が付勢力に抗して変位し、排出流路を連通させる。これにより、クッション室のガスは、オリフィス部を介して排出されると共に、排出流路を介して排出される。
【0010】
この構成では、弁体を変位させるための閾値である所定圧が一定の場合、所定の付勢力の弾性体をガスシリンダに設ければよい。しかしながら、ユーザが要求する仕様に応じて所定圧を調整する必要がある場合、付勢力の異なる複数の弾性体を予め用意しておき、複数の弾性体の中から、当該仕様に応じた最適な付勢力を有する弾性体を選定し、選定した弾性体に交換する必要がある。この結果、所定圧を変更するための調整作業が面倒であると共に、コストがかかる。
【0011】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、弁体を変位させるための閾値(所定圧)を自動的に調整可能であると共に、弁体に対する手動調整が不要であり、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストンのスムーズな到達とピストンに対する衝撃の緩和とを実現することができるガスシリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様は、内部にシリンダ室が形成されたシリンダチューブと、前記シリンダチューブの一端を閉塞する第1カバーと、前記シリンダチューブの他端を閉塞する第2カバーと、前記シリンダ室を前記第1カバー側の第1圧力室と前記第2カバー側の第2圧力室とに区画し、前記シリンダ室を摺動するピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドと、前記第1圧力室にガスを給排する第1ポートと、前記第2圧力室にガスを給排する第2ポートと、少なくとも前記第1カバー側のストローク端に前記ピストンが停止する際に該ピストンの動きを制動するクッション機構とを備えるガスシリンダに関する。
【0013】
前記クッション機構は、前記ピストンが前記ストローク端に近接する際に、前記第1圧力室と前記第1ポートとの連通状態を遮断する連通遮断部と、前記第1圧力室のガスを排出するオリフィス部と、前記オリフィス部と共働して前記第1圧力室からガスを排出する排出流量調整部とを有する。
【0014】
前記排出流量調整部は、前記第1圧力室のガスを排出するための排出流路と、前記排出流路を連通又は遮断する弁体と、前記弁体の基端部に付勢して前記弁体を変位させることにより、前記弁体の先端部で前記排出流路を遮断させる弾性体と、ガス収容部とを有する。
【0015】
そして、前記ガスシリンダは、前記第2ポートに供給されるガスの一部を前記ガス収容部に供給するための供給通路をさらに備える。ここで、前記第1圧力室の圧力が、前記弾性体の付勢力と前記ガス収容部の圧力とに基づく所定圧以下である場合、前記弁体は、前記付勢力と前記ガス収容部の圧力とによって、前記排出流路を遮断する。一方、前記第1圧力室の圧力が前記所定圧を超える場合、前記弁体は、前記第1圧力室の圧力によって、前記付勢力及び前記ガス収容部の圧力に抗して変位することで、前記排出流路を連通させる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、バウンド現象は、ピストンが第1カバー側のストローク端に向かって変位する際、第1圧力室(クッション室)の圧力が大きく圧縮され、急激に上昇することで発生する。すなわち、バウンド現象は、クッション室の圧力によるピストンの推力と、第2圧力室の圧力によるピストンの推力とのバランスが崩れた際に発生する。
【0017】
そこで、本発明では、第2ポートから第2圧力室に供給されるガスの一部を、供給通路を介してガス収容部に供給する。これにより、弁体を変位させるための閾値である所定圧は、ガス収容部の圧力、すなわち、第2ポートから第2圧力室に供給されるガスの圧力(ピストンの作動圧力)に応じて変化する。つまり、弾性体の付勢力が一定であっても、所定圧は、クッション室の圧力と加圧室の圧力との差圧に応じて変化する。
【0018】
このように、本発明では、ガス収容部の圧力を利用して所定圧を調整する。これにより、第1圧力室の圧力と第2圧力室の圧力との差圧を考慮して、最適な付勢力の弾性体を設けておけば、第2圧力室の圧力が変動しても、所定圧を自動的に調整することが可能となる。すなわち、所定圧を調整するための弾性体の交換作業が不要となる。
【0019】
また、本発明では、第1圧力室の圧力が所定圧以下である場合、弾性体からの付勢力とガス収容部の圧力とによって、弁体の先端部が排出流路を遮断するので、クッション室のガスは、オリフィス部のみを介して排出される。一方、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、該圧力によって弁体が付勢力及びガス収容部の圧力に抗して変位し、排出流路を連通させるので、第1圧力室のガスは、オリフィス部を介して排出されると共に、排出流路を介して排出される。
【0020】
このように、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、2つのルートで第1圧力室のガスが排出される。これにより、第1圧力室のガスが短時間で排出され、ピストンをストローク端に速やか且つスムーズに到達させることができる。この結果、バウンド現象の発生を回避しつつ、ガスシリンダの応答性を向上させることができる。
【0021】
さらに、弾性体の付勢力及びガス収容部の圧力と第1圧力室の圧力とのバランス(差圧)で弁体が変位することにより、排出流路が連通状態又は遮断状態に切り替わる。これにより、弁体に対する手動調整が不要になる。この結果、排出流路が連通状態である場合、第1圧力室の圧力の大きさに応じて、弁体の開度を徐々に変化させることが可能となる。
【0022】
従って、本発明では、所定圧を自動的に調整することが可能になると共に、弁体に対する手動調整が不要になり、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストンのスムーズな到達とピストンに対する衝撃の緩和とを実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るガスシリンダについて好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
[1.本実施形態の構成]
図1〜
図3に示すように、本実施形態に係るガスシリンダ10は、円筒のシリンダチューブ12と、シリンダチューブ12の一端を封止(閉塞)するヘッドカバー14と、シリンダチューブ12の他端を封止(閉塞)するロッドカバー16とを備える。シリンダチューブ12、ヘッドカバー14及びロッドカバー16は、ガスシリンダ10のシリンダ本体18を構成する。
【0026】
シリンダ本体18は、外観上、ヘッドカバー14からロッドカバー16に向かう方向を長手方向とする直方体状に形成されている。なお、該長手方向は、後述するピストンロッド20の延出方向であり、ガスシリンダ10の軸方向である。また、シリンダ本体18において、長手方向(延出方向、軸方向)に直交する断面の四隅部は、外方に膨出している。
【0027】
シリンダチューブ12の四隅部には、長手方向に延びる貫通孔22がそれぞれ形成されている(
図3参照)。また、ヘッドカバー14の四隅部には、貫通孔22と同軸に、段差状の貫通孔24がそれぞれ形成されている。各貫通孔24は、貫通孔22に連通する小径部分と、貫通孔22から離間するように小径部分に連通する大径部分とから構成される。各貫通孔24の大径部分には、内壁にネジが形成された筒状の連結部材26がそれぞれ嵌め込まれている。さらに、ロッドカバー16の四隅部には、貫通孔22と同軸に、ネジ孔28がそれぞれ形成されている。
【0028】
各貫通孔22には、両端にネジが形成された連結ロッド30がそれぞれ挿通している。各連結ロッド30の一端側のネジは、各連結部材26のネジに螺合している。また、各連結ロッド30の他端側のネジは、ネジ孔28に螺合している。従って、ヘッドカバー14及びロッドカバー16は、複数の連結ロッド30と、ヘッドカバー14側の複数の連結部材26と、ロッドカバー16に形成された複数のネジ孔28とによって、ガスシリンダ10の軸方向に連結される。なお、
図3では、代表的に、1つの隅部における連結部材26、ネジ孔28及び連結ロッド30の連結状態を図示している。
【0029】
図1〜
図3に示すように、ヘッドカバー14の上面には、ヘッド側ポート32が設けられている。また、
図1〜
図7に示すように、ロッドカバー16の上面には、ロッド側ポート34が設けられている。ロッドカバー16からは、ピストンロッド20が突出して延出している。
【0030】
シリンダチューブ12の内部には、シリンダ室36が形成されている(
図3〜
図8参照)。シリンダ室36には、ヘッドカバー14側のストローク始端(ストローク端)と、ロッドカバー16側のストローク終端(ストローク端)との間を軸方向に摺動するピストン38が配置されている。ピストン38は、シリンダ室36をヘッドカバー14側のヘッド側圧力室40とロッドカバー16側のロッド側圧力室42とに区画する。
【0031】
ピストン38には、ピストンロッド20が連結されている(
図1〜
図3及び
図8参照)。ピストンロッド20の一端は、ピストン38に連結されている。ピストンロッド20の他端は、ロッドカバー16を貫通して外部に突出している。ピストン38のヘッドカバー14側には、ヘッド側クッションピン44が連結されている(
図3参照)。ピストン38のロッドカバー16側には、ロッド側クッションピン46がピストンロッド20の外周面に取り付けられている。
【0032】
ヘッドカバー14には、ピストン38がストローク始端に近接した際に、ヘッド側クッションピン44が挿入される凹部状のヘッドカバー室48が形成されている。ヘッドカバー室48の奥側には、ヘッドカバー14内を上方に貫通する貫通孔50が形成されている。貫通孔50は、ヘッド側ポート32に連通している。従って、ヘッド側ポート32は、貫通孔50及びヘッドカバー室48を介して、ヘッド側圧力室40に対するガスの給排を行う。ヘッドカバー室48のピストン38側には、ヘッドカバー室48に挿入されるヘッド側クッションピン44に摺接するOリング等のクッションパッキン52が設けられている。
【0033】
ロッドカバー16には、ピストン38がストローク終端に近接した際に、ロッド側クッションピン46が挿入される凹部状のロッドカバー室54が形成されている。ロッドカバー室54の奥側には、ロッドカバー16内を上方に貫通する貫通孔56が形成されている。貫通孔56は、ロッド側ポート34に連通している。従って、ロッド側ポート34は、貫通孔56及びロッドカバー室54を介して、ロッド側圧力室42に対するガスの給排を行う。ロッドカバー室54のピストン38側には、ロッドカバー室54に挿入されるロッド側クッションピン46に摺接するOリング等のクッションパッキン58が設けられている。
【0034】
なお、ヘッド側圧力室40及びロッド側圧力室42に給排されるガスは、例えば、エアである。従って、本実施形態に係るガスシリンダ10は、例えば、エアシリンダに適用される。
【0035】
ガスシリンダ10のヘッドカバー14側には、ピストン38がストローク始端で停止する際に該ピストン38の動きを制動するヘッド側クッション機構60が設けられている(
図3、
図4及び
図8参照)。また、ガスシリンダ10のロッドカバー16側には、ピストン38がストローク終端で停止する際に該ピストン38の動きを制動するロッド側クッション機構62が設けられている(
図3〜
図8参照)。
【0036】
なお、ガスシリンダ10では、クッション機構は、ヘッドカバー14側及びロッドカバー16側のうち、少なくとも一方に設けられていればよい。また、ストローク端(ストローク始端又はストローク終端)にピストン38が停止する際、該ピストン38とストローク端との間の空間(ヘッド側圧力室40又はロッド側圧力室42)がクッション室となる。
【0037】
ヘッド側クッション機構60は、ピストン38がストローク始端に近接する際に、ヘッド側圧力室40とヘッド側ポート32との連通状態を遮断する連通遮断部64と、ヘッドカバー14に設けられ、ヘッド側圧力室40のガスを排出するオリフィス部66と、ヘッドカバー14に設けられ、オリフィス部66と共働してヘッド側圧力室40からガスを排出する排出流量調整部68とを有する。オリフィス部66及び排出流量調整部68は、ヘッドカバー14内において、ピストンロッド20に対して上側(一方の側部)に設けられている。
【0038】
ヘッド側クッション機構60において、連通遮断部64は、ヘッド側クッションピン44及びクッションパッキン52である。ヘッド側クッションピン44とクッションパッキン52とが摺接することにより、ヘッド側圧力室40とヘッド側ポート32との連通状態が遮断される。また、ヘッド側クッション機構60において、オリフィス部66は、ヘッド側圧力室40に連通し、ヘッドカバー14内を軸方向に延在する上流側の流路70(第1流路)と、該流路70の下流側に連結され、ヘッドカバー14内を上下方向に延在する下流側の流路72(第2流路)と、該流路72の下側とヘッドカバー室48とを連通させ、流路72よりも小径のオリフィス74とから構成される。従って、ヘッド側圧力室40とヘッド側ポート32との連通状態が遮断された場合、ヘッド側圧力室40のガスは、各流路70、72及びオリフィス74からヘッドカバー室48、貫通孔50及びヘッド側ポート32を介して排出される。
【0039】
ロッド側クッション機構62は、ピストン38がストローク終端に近接する際に、ロッド側圧力室42とロッド側ポート34との連通状態を遮断する連通遮断部76と、ロッドカバー16に設けられ、ロッド側圧力室42のガスを排出するオリフィス部78と、ロッドカバー16に設けられ、オリフィス部78と共働してロッド側圧力室42からガスを排出する排出流量調整部80とを有する。オリフィス部78及び排出流量調整部80は、ロッドカバー16内において、ピストンロッド20に対して上側(一方の側部)に設けられている。
【0040】
ロッド側クッション機構62において、連通遮断部76は、ロッド側クッションピン46とクッションパッキン58とである。ロッド側クッションピン46とクッションパッキン58とが摺接することにより、ロッド側圧力室42とロッド側ポート34との連通状態が遮断される。また、ロッド側クッション機構62において、オリフィス部78は、ロッド側圧力室42に連通し、ロッドカバー16内を軸方向に延在する上流側の流路82(第1流路)と、該流路82の下流側に連結され、ロッドカバー16内を上下方向に延在する下流側の流路84(第2流路)と、該流路84の下側とロッドカバー室54とを連通させ、流路84よりも小径のオリフィス86とから構成される。従って、ロッド側圧力室42とロッド側ポート34との連通状態が遮断された場合、ロッド側圧力室42のガスは、各流路82、84及びオリフィス86からロッドカバー室54、貫通孔56及びロッド側ポート34を介して外部に排出される。
【0041】
ヘッド側クッション機構60及びロッド側クッション機構62において、オリフィス部66、78及び排出流量調整部68、80の構成は、概ね同じ構成である。そのため、以下の説明では、主として、ロッド側クッション機構62のオリフィス部78及び排出流量調整部80について、
図4〜
図8を参照しながら説明する。従って、ヘッド側クッション機構60及びロッド側クッション機構62について、オリフィス部66及び排出流量調整部68と、オリフィス部78及び排出流量調整部80との間で、同じ構成要素に対しては、同じ参照符号を付けて説明する場合があることに留意する。
【0042】
排出流量調整部80は、ロッドカバー16内に形成され、ロッド側圧力室42のガスを外部に排出するための排出流路90と、排出流路90の途中に配置されたスプール式の弁体92と、弁体92の一端部を排出流路90の上流側に付勢するバネ部材94(弾性体)と、ロッドカバー16内に形成され、弁体92の他端部を収容可能な収容室96(ガス収容部)とを有する。
【0043】
排出流路90は、第1流路としての流路82と、第2流路としての流路84と、流路84の下流側から上方向に延び、流路84よりも大径の流路98(第3流路)と、流路98に接続され、軸方向に延びて貫通孔56に連通する流路100(第4流路)とから構成される。従って、流路84と流路98との連結部分は、段差状に形成されている。また、流路100は、貫通孔56を介してロッド側ポート34に連通している。
【0044】
なお、ロッドカバー16内には、流路100と略同軸に、ロッド側圧力室42から流路98に向かって延びる通路102が形成されている。通路102は、ドリル等で流路100を形成するための捨て穴であり、鋼球104で封止されている。
【0045】
流路98は、ロッドカバー16で上下方向に延びる穴106によって形成される。すなわち、穴106は、下端(一端)が流路84に連通し、上端(他端)がロッドカバー16の上面に開口して外部に連通している。穴106には、複数のスリーブ107、108が挿入されている。
【0046】
一方のスリーブ107は、穴106の奥側(流路84側)に挿入されている。すなわち、スリーブ107は、穴106における流路100及び通路102の箇所と流路84との間に配置されている。他方のスリーブ108は、穴106の手前側に挿入されている。すなわち、スリーブ108は、穴106における流路100及び通路102の箇所よりも開口側に配置されている。
【0047】
そして、スリーブ107、108の内側には、弁体92が上下方向に摺動可能に配置されている。穴106の上端は、蓋部110によって閉塞されている。これにより、穴106における蓋部110とスリーブ108との間が収容室96として形成される。また、穴106におけるスリーブ108よりも流路84側の部分が流路98として形成される。
【0048】
図4〜
図7では、穴106に2つのスリーブ107、108を挿入する場合を図示している。本実施形態では、2つのスリーブ107、108に代えて、流路100及び通路102に連通する孔を有する1つのスリーブを穴106に挿入することも可能である。
【0049】
弁体92は、流路84から収容室96にかけて配置された円柱状のスプール弁である。弁体92の外周面には、スリーブ107、108の内周面に摺接するOリング等のシール部材112が設けられている。
図4〜
図7には、一例として、弁体92の外周面の2箇所にシール部材112をそれぞれ設けた場合を図示している。
【0050】
バネ部材94は、収容室96において、蓋部110の底面の中心部に形成された凹部114と、弁体92の他端部の中心部に形成された凹部116との間に介挿される。バネ部材94は、弁体92を下方向(流路84側)に付勢する。なお、弁体92の一端部の外周面には、上方向(流路98側)から下方向(流路84側)に向かって縮径するテーパ118が形成されている。
【0051】
また、ガスシリンダ10は、ヘッド側ポート32からヘッド側圧力室40に供給されるガスの一部を収容室96に供給するための供給通路120をさらに備える(
図2及び
図4〜
図8参照)。供給通路120は、ヘッドカバー室48から上方向に延びる第1内部通路122と、第1内部通路122から上方向に延び、該第1内部通路122よりも大径の第2内部通路124と、軸方向に沿って延び、一端が第2内部通路124に連通し、他端が収容室96に連通する第3内部通路126とを有する。
【0052】
第1内部通路122は、流路72、84と略同じ内径を有する。また、第2内部通路124は、ヘッドカバー14で上下方向に延びる穴128によって形成される。すなわち、穴128は、前述した穴106と略同じ内径を有し、下端(一端)が第1内部通路122に連通し、上端(他端)がヘッドカバー14の上面に開口して外部に連通している。穴128の上端は、蓋部110と同じ形状の蓋部130によって閉塞されている。これにより、穴128における蓋部130と第1内部通路122との間が第2内部通路124として形成される。
【0053】
第3内部通路126は、ヘッドカバー14内で第2内部通路124に連通し、軸方向に延びる通路と、シリンダチューブ12内で軸方向に延びる通路と、ロッドカバー16内で軸方向に延びて収容室96に連通する通路とによって構成される。
【0054】
なお、上記の説明では、加工コストの削減や、同じ蓋部110、130を共通部品として使用することを念頭に、穴106と同じ形状の穴128を形成し、第1内部通路122及び第2内部通路124を形成している。そのため、本実施形態において、穴128は、穴106と異なる形状であってもよいし、穴128が1つの内部通路を形成してもよい。すなわち、ヘッドカバー室48と収容室96とを連結することができるのであれば、供給通路120(第1〜第3内部通路122〜126)はどのような形状であってもよい。
【0055】
以上、ロッド側クッション機構62のオリフィス部78及び排出流量調整部80と、供給通路120とについて説明した。ヘッド側クッション機構60のオリフィス部66及び排出流量調整部68については、「ロッド」の文言を「ヘッド」に変更等することで、オリフィス部66及び排出流量調整部68に対する説明となる。
【0056】
また、ヘッド側クッション機構60の排出流量調整部68についても、
図2に示すように、ロッド側ポート34からロッド側圧力室42に供給されるガスの一部を、排出流量調整部68の収容室96に供給するための供給通路132がさらに設けられる。前述のように、各穴106、128は、略同じ内径を有すると共に、蓋部110、130は、同じ形状である。つまり、ガスシリンダ10では、ロッドカバー16をピストンロッド20が貫通する点を除いては、ヘッドカバー14とロッドカバー16とを概ね同じ形状としている。
【0057】
供給通路132は、ロッドカバー16側の穴128に形成された第1内部通路134及び第2内部通路136と、軸方向に沿って延び、一端が第2内部通路136に連通し、他端が排出流量調整部68の収容室96に連通する第3内部通路138とを有する。この場合、第1〜第3内部通路134〜138は、供給通路120を構成する第1〜第3内部通路122〜126に対応する。これにより、ガスシリンダ10の製造の容易化及び製造コストの削減が実現される。
【0058】
[2.本実施形態の動作]
以上のように構成される本実施形態に係るガスシリンダ10の動作について説明する。ここでは、
図8に示すように、ガス供給源140から電磁弁142及びヘッド側ポート32を介してヘッド側圧力室40にガスを供給し、一方で、ロッド側圧力室42からロッド側ポート34及び電磁弁142を介してガスを排出することで、ロッドカバー16(第1カバー)側のストローク終端(ストローク端)にピストン38を到達させる場合のロッド側クッション機構62(クッション機構)の動作について説明する。なお、電磁弁142は、例えば、4方向5ポートの単動型の電磁弁であり、排出側のポートには、サイレンサ144が接続されている。
【0059】
本実施形態に係るガスシリンダ10の動作の説明に先立ち、比較例のガスシリンダの動作について簡単に説明する。比較例のガスシリンダは、収容室96及び供給通路120、132(
図2及び
図4〜
図8参照)を有しないガスシリンダである。比較例のガスシリンダの動作説明では、必要に応じて、ガスシリンダ10の構成要素を用いて説明する。
【0060】
比較例のガスシリンダでも、先ずは、ヘッド側ポート32(第2ポート)から貫通孔50及びヘッドカバー室48を介してヘッド側圧力室40(第2圧力室)へのガスの供給を開始すると共に、ロッド側圧力室42(第1圧力室)からロッドカバー室54、貫通孔56及びロッド側ポート34(第1ポート)を介したガスの排出を開始する。これにより、ピストン38は、ロッドカバー16側に向けて軸方向に変位し、ピストンロッド20は、ロッドカバー16から軸方向に突出する。
【0061】
次に、ロッド側クッションピン46がロッドカバー室54に進入すると、ロッド側クッションピン46とロッドカバー室54のクッションパッキン58とが摺接する。これにより、ロッドカバー室54を介したロッド側ポート34とロッド側圧力室42との連通状態が遮断される。この結果、ロッド側圧力室42の圧力が上昇する。そして、比較例のガスシリンダでは、以下の説明のように、メータアウト回路を用いた手法で、ロッド側圧力室42からガスを排出する。
【0062】
この場合、ロッド側圧力室42のガスは、オリフィス部78(2つの流路82、84及びオリフィス86)、ロッドカバー室54及び貫通孔56を介して、ロッド側ポート34から排出される。ここで、ロッド側圧力室42の圧力が所定の閾値(所定圧)以下の場合、弁体92の一端部は、バネ部材94の付勢力によって、2つの流路84、98の段差部分に当接している。これにより、流路84と流路98との連結部分は閉塞され、流路84と流路98との連通状態は遮断される。
【0063】
次に、ロッド側圧力室42の圧力が所定圧を超える場合、弁体92は、該圧力によって、バネ部材94の付勢力に抗して上方向(流路98側)に変位する。弁体92は、スプール式の弁体であるため、ロッド側圧力室42の圧力の大きさに応じて、上方向に変位する。これにより、弁体92の一端部は、流路84と流路98との連結部分から離間し、弁体92の一端部のテーパ118と連結部分との間に僅かな隙間が形成される。この結果、2つの流路84、98が連通し、ロッド側圧力室42のガスは、オリフィス部78、ロッドカバー室54及び貫通孔56を介してロッド側ポート34から外部に排出されると共に、各流路98、100及び貫通孔56を介して、ロッド側ポート34から排出される。つまり、ロッド側圧力室42の圧力が所定圧を超える場合、2つのルートを介して、ロッド側圧力室42のガスが排出される。なお、弁体92が上方向に変位することで、バネ部材94は収縮する。その後、ピストン38は、ストローク終端に到達する。
【0064】
ところで、従来より、ガスシリンダでは、ピストン38の変位(ストローク)が一時的にヘッドカバー14側に押し戻されるバウンド現象が発生する。バウンド現象は、ピストン38がストローク終端に向かって変位する際、クッション室であるロッド側圧力室42の圧力が大きく圧縮され、急激に上昇することで発生する。すなわち、バウンド現象は、クッション室の圧力(ロッド側圧力室42の圧力)によるピストン38の推力と、ヘッド側圧力室40の圧力によるピストン38の推力とのバランスが崩れたときに発生する。バウンド現象が発生すれば、ガスシリンダのタクトタイムが長くなり、該ガスシリンダを適用する生産設備のロスが発生する。
【0065】
そこで、比較例のガスシリンダでは、上記のように、ロッド側圧力室42の圧力が所定圧を超える場合、弁体92がバネ部材94の付勢力に抗して上方向(流路98側)に変位し、2つのルートでロッド側圧力室42のガスを排出させることにより、バウンド現象の発生を回避する。しかしながら、比較例のガスシリンダでは、所定圧は、バネ部材94の付勢力のみに依存する一定値である。そのため、ユーザが要求する仕様に応じて所定圧を調整する場合、付勢力の異なる複数のバネ部材94を予め用意しておき、複数のバネ部材94の中から、当該仕様に応じた最適な付勢力を有するバネ部材94を選定し、選定したバネ部材94に交換する必要がある。この結果、所定圧を変更するための調整作業が面倒であると共に、コストがかかる。
【0066】
そこで、本実施形態に係るガスシリンダ10では、ヘッド側ポート32(第2ポート)から貫通孔50及びヘッドカバー室48を介してヘッド側圧力室40(第2圧力室)に供給されるガスの一部を、供給通路120を介して収容室96に供給する点で、比較例のガスシリンダとは異なる(
図2及び
図4〜
図8参照)。これにより、弁体92を変位させるための閾値である所定圧は、収容室96の圧力、すなわち、ヘッド側ポート32からヘッド側圧力室40に供給されるガスの圧力(ピストン38の作動圧力)に応じて変化する。つまり、バネ部材94の付勢力が一定であっても、所定圧は、クッション室であるロッド側圧力室42の圧力と、加圧室であるヘッド側圧力室40の圧力との差圧に応じて変化する。
【0067】
図9〜
図11は、本実施形態に係るガスシリンダ10の動作(実施例)を示すタイミングチャートである。Pcは、ロッド側圧力室42の圧力(クッション圧力)である。また、Phは、ヘッド側圧力室40のガスの圧力(ヘッド側圧力、作動圧力)である。なお、バネ部材94の付勢力は、所定圧と作動圧力との差圧(
図9〜
図11の各実施例では、例えば、0.1MPa)に応じた付勢力に設定されている。
【0068】
図9の実施例は、所定圧を0.5MPaに設定した場合のタイミングチャートを示す。この場合、該所定圧に対応する作動圧力は、0.4MPaである。また、この実施例では、クッション圧力(圧力Pc)が0.6MPa程度に到達するとバウンド現象が発生する。
【0069】
図9の時点t1において、ヘッド側ポート32(第2ポート)からヘッドカバー室48を介してヘッド側圧力室40(第2圧力室)へのガスの供給を開始すると共に、ロッド側圧力室42(第1圧力室)からロッドカバー室54及びロッド側ポート34(第1ポート)を介したガスの排出を開始する。この場合、ヘッドカバー室48に供給されるガスの一部は、供給通路120を介して収容室96に供給される。
【0070】
これにより、時点t1から時間経過に伴ってPhが上昇する。また、Pcは、一時的に減少するが、概ね所定の圧力を維持する。これにより、ピストン38は、ロッドカバー16側に向けて軸方向に変位し、ピストンロッド20は、ロッドカバー16から軸方向に突出する。
【0071】
次に、ロッド側クッションピン46がロッドカバー室54に進入し、ロッド側クッションピン46とロッドカバー室54のクッションパッキン58とが摺接すると、ロッドカバー室54を介したロッド側ポート34とロッド側圧力室42との連通状態が遮断される。これにより、ロッド側圧力室42の圧力が上昇する。この場合、ロッド側圧力室42のガスは、
図6のように、オリフィス部78(2つの流路82、84及びオリフィス86)、ロッドカバー室54及び貫通孔56を介して、ロッド側ポート34から排出される。
【0072】
実施例において、所定圧は、バネ部材94の付勢力と、収容室96の圧力、すなわち、ヘッド側圧力室40の圧力(作動圧力)とに基づく圧力値となる。なお、
図9の実施例では、前述のように、所定圧は、0.5MPaである。そのため、ロッド側圧力室42の圧力が所定圧以下の場合、弁体92は、バネ部材94の付勢力と収容室96の圧力とによって、流路84側に変位し、流路98と流路84との連結部分を閉塞する。この結果、流路84と流路98との連通状態が遮断される。
【0073】
一方、ロッド側圧力室42の圧力が急激に上昇し、時点t2で所定の作動圧力(0.4MPa)を超え、時点t3で所定圧(0.5MPa)を超えると、弁体92は、バネ部材94の付勢力に抗して上方向(流路98側)に変位する。
【0074】
これにより、弁体92は、ロッド側圧力室42の圧力の大きさに応じて上方向に変位し、弁体92の一端部は、流路84と流路98との連結部分から離間することで、弁体92の一端部のテーパ118と連結部分との間に僅かな隙間が形成される。この結果、2つの流路84、98が連通し、ロッド側圧力室42のガスは、オリフィス部78、ロッドカバー室54及び貫通孔56を介してロッド側ポート34から外部に排出されると共に、各流路98、100及び貫通孔56を介して、ロッド側ポート34から排出される。
【0075】
このように、所定圧を超えると、ロッド側圧力室42のガスは、2つのルートを介して排出される。この結果、時点t3以降、ロッド側圧力室42の圧力は、バウンド現象が発生する圧力(0.6MPa程度)に到達することが回避される。この場合も、弁体92が上方向に変位することで、バネ部材94は収縮する。
【0076】
なお、ロッド側圧力室42の圧力がさらに上昇することで、弁体92が上方向にさらに変位し、弁体92とテーパ118との隙間が大きくなり、バネ部材94は一層収縮する。
【0077】
この結果、実施例では、時点t2から時点t4までの時間帯において、バウンド現象を発生させることなく、ピストン38をストローク終端側に速やかに近づけることができる。その後、時点t4で、ピストン38がストローク終端に到達する。
【0078】
図10の実施例は、所定圧を0.3MPaに設定した場合のタイミングチャートを示す。この場合、該所定圧に対応する作動圧力は、0.2MPaである。また、この実施例では、クッション圧力(圧力Pc)が0.4MPa程度に到達するとバウンド現象が発生する。
【0079】
図11の実施例は、所定圧を0.7MPaに設定した場合のタイミングチャートを示す。この場合、該所定圧に対応する作動圧力は、0.6MPaである。また、この実施例では、クッション圧力(圧力Pc)が0.8MPa程度に到達するとバウンド現象が発生する。
【0080】
図10及び
図11の実施例でも、
図9の実施例と同様に、時点t2でクッション圧力(圧力Pc)が急激に上昇し始め、時点t3で所定圧に到達した際に、弁体92が変位して、流路84と流路98とを連通させる。これにより、バウンド現象を発生させることなく、ピストン38をストローク終端に到達させることができる。
【0081】
[3.変形例]
上記の説明では、オリフィス部78及び排出流量調整部80をロッドカバー16に設けると共に、オリフィス部66及び排出流量調整部68をヘッドカバー14に設ける場合について説明した。本実施形態に係るガスシリンダ10は、オリフィス部78及び排出流量調整部80をシリンダ本体18に対して外付けに設けることも可能である。
【0082】
また、本実施形態に係るガスシリンダ10では、供給通路120、132をシリンダ本体18に対して外付けに設けることも可能である。
【0083】
さらに、上記の説明では、スプール式の弁体92について説明した。本実施形態に係るガスシリンダ10では、スプール式の弁体92に代えて、ダイヤフラム式、ピボット式又はニードル式の弁体であってもよい。要は、流路84(流路72)と流路98との連通又は遮断が可能な弁体であれば、どのような方式の弁体でも採用可能である。
【0084】
[4.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るガスシリンダ10は、内部にシリンダ室36が形成されたシリンダチューブ12と、シリンダチューブ12の一端を閉塞する第1カバー(ヘッドカバー14及びロッドカバー16のうち、一方のカバー)と、シリンダチューブ12の他端を閉塞する第2カバー(ヘッドカバー14及びロッドカバー16のうち、他方のカバー)と、シリンダ室36を第1カバー側の第1圧力室(ヘッド側圧力室40及びロッド側圧力室42のうち、一方の圧力室)と第2カバー側の第2圧力室(ヘッド側圧力室40及びロッド側圧力室42のうち、他方の圧力室)とに区画し、シリンダ室36を摺動するピストン38と、ピストン38に連結されたピストンロッド20と、第1圧力室にガスを給排する第1ポート(ヘッド側ポート32及びロッド側ポート34のうち、一方のポート)と、第2圧力室にガスを給排する第2ポート(ヘッド側ポート32及びロッド側ポート34のうち、他方のポート)と、少なくとも第1カバー側のストローク端(ストローク始端又はストローク終端)にピストン38が停止する際に該ピストン38の動きを制動するクッション機構(ヘッド側クッション機構60、ロッド側クッション機構62)とを備える。
【0085】
クッション機構は、ピストン38がストローク端に近接する際に、第1圧力室と第1ポートとの連通状態を遮断する連通遮断部64、76と、第1圧力室のガスを排出するオリフィス部66、78と、オリフィス部66、78と共働して第1圧力室からガスを排出する排出流量調整部68、80とを有する。
【0086】
排出流量調整部68、80は、第1圧力室のガスを排出するための排出流路90と、排出流路90を連通又は遮断する弁体92と、弁体92の基端部(他端部)に付勢して弁体92を変位させることにより、弁体92の先端部(一端部)で排出流路90を遮断させるバネ部材94(弾性体)と、収容室96(ガス収容部)とを有する。
【0087】
そして、ガスシリンダ10は、第2ポートに供給されるガスの一部を収容室96に供給するための供給通路120、132をさらに備える。ここで、第1圧力室の圧力が、バネ部材94の付勢力と収容室96の圧力とに基づく所定圧以下である場合、弁体92は、該付勢力と収容室96の圧力とによって、排出流路90を遮断する。一方、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、弁体92は、第1圧力室の圧力によって、該付勢力及び収容室96の圧力に抗して変位することで、排出流路90を連通させる。
【0088】
前述のように、バウンド現象は、ピストン38が第1カバー側のストローク端に向かって変位する際、第1圧力室(クッション室)の圧力が大きく圧縮され、急激に上昇することで発生する。すなわち、バウンド現象は、クッション室の圧力によるピストン38の推力と、第2圧力室の圧力によるピストン38の推力とのバランスが崩れた際に発生する。
【0089】
そこで、本実施形態に係るガスシリンダ10では、第2ポートから第2圧力室に供給されるガスの一部を、供給通路120を介して収容室96に供給する。これにより、弁体92を変位させるための閾値である所定圧は、収容室96の圧力、すなわち、第2ポートから第2圧力室に供給されるガスの圧力(ピストン38の作動圧力)に応じて変化する。つまり、バネ部材94の付勢力が一定であっても、所定圧は、クッション室の圧力と加圧室の圧力との差圧に応じて変化する。
【0090】
このように、本実施形態に係るガスシリンダ10では、収容室96の圧力を利用して所定圧を調整する。これにより、第1圧力室の圧力と第2圧力室の圧力との差圧を考慮して、最適な付勢力のバネ部材94を設けておけば、第2圧力室の圧力が変動しても、所定圧を自動的に調整することが可能となる。すなわち、所定圧を調整するためのバネ部材94の交換作業が不要となる。
【0091】
また、本実施形態に係るガスシリンダ10では、第1圧力室の圧力が所定圧以下である場合、バネ部材94からの付勢力と収容室96の圧力とによって、弁体92の一端部が排出流路90を遮断する。これにより、クッション室のガスは、オリフィス部66、78のみを介して排出される。
【0092】
一方、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、該圧力によって弁体92が付勢力及び収容室96の圧力に抗して変位し、排出流路90を連通させる。これにより、第1圧力室のガスは、オリフィス部66、78を介して排出されると共に、排出流路90を介して排出される。
【0093】
このように、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、2つのルートで第1圧力室のガスが排出される。これにより、第1圧力室のガスが短時間で排出され、ピストン38をストローク端に速やか且つスムーズに到達させることができる。この結果、バウンド現象の発生を回避しつつ、ガスシリンダの応答性を向上させることができる。
【0094】
さらに、バネ部材94の付勢力及び収容室96の圧力と第1圧力室の圧力とのバランス(差圧)で弁体92が変位することにより、排出流路90が連通状態又は遮断状態に切り替わる。これにより、弁体92に対する手動調整が不要になる。この結果、排出流路90が連通状態である場合、第1圧力室の圧力の大きさに応じて、弁体92の開度を徐々に変化させることが可能となる。
【0095】
従って、本実施形態に係るガスシリンダ10では、所定圧を自動的に調整することが可能になると共に、弁体92に対する手動調整が不要になり、バウンド現象の発生を抑制しつつ、ストローク端へのピストン38のスムーズな到達とピストン38に対する衝撃の緩和とを実現することが可能となる。
【0096】
この場合、オリフィス部66、78及び排出流量調整部68、80は、第1カバー(ヘッドカバー14又はロッドカバー16)に設けられるので、ガスシリンダ10の構成要素を限られたスペース内に集約して配置することができる。
【0097】
また、供給通路120、132は、シリンダチューブ12内でシリンダ室36に沿って延び、一端が第2ポートに連通し、他端が収容室96に連通する第1〜第3内部通路122〜126、134〜138(内部通路)を有する。これにより、第2ポートから収容室96にガスを容易に供給することができる。また、第1〜第3内部通路122〜126、134〜138がガスシリンダ10内に形成されるので、供給通路を外付けにする必要がない。
【0098】
また、ガスシリンダ10において、第1ポートは、第1カバーに設けられ、第2ポートは、第2カバーに設けられている。この場合、排出流路90は、第1圧力室に連通する流路70、82(第1流路)と、流路70、82の下流側に接続される流路72、84(第2流路)と、流路72、84の下流側に接続され、流路72、84よりも大径の流路98(第3流路)と、流路98に接続され、第1ポートに連通する流路100(第4流路)とから構成される。弁体92は、流路72、84よりも大径であり、一端部が流路98に配置される。
【0099】
そして、第1圧力室の圧力が所定圧以下である場合、バネ部材94の付勢力及び収容室96の圧力によって弁体92が流路98側に変位し、流路72、84と流路98との連結部分を弁体92の一端部が閉塞することにより、流路72、84と流路98との連通状態が遮断される。一方、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、弁体92が第1圧力室の圧力によって付勢力及び収容室96の圧力に抗して流路98側に変位することで、弁体92の一端部が連結部分から離間し、流路72、84と流路98とが連通する。
【0100】
これにより、バウンド現象の発生を効果的に抑制することができると共に、ストローク端へのピストン38のスムーズな到達を容易に実現することができる。
【0101】
また、弁体92の一端部における該連結部分の箇所には、流路98から流路72、84に向かって縮径するテーパ118が形成されている。これにより、ガスの圧力に応じて弁体92が変位する際、弁体92の開度を徐々に変化させることができる。
【0102】
また、オリフィス部66、78は、第1圧力室から流路70、82及び流路72、84を介して流れるガスを第1ポートに排出するオリフィス74、86を有する。これにより、第1カバー(ヘッドカバー14又はロッドカバー16)内の流路の数を少なくしつつ、該第1カバーの加工を容易にすることができる。
【0103】
また、弁体92をスプール式の弁体とし、弁体92の他端部を収容室96に収容可能とすることで、排出流路90の連通又は遮断を効率よく行うことが可能となる。
【0104】
また、収容室96は、外部に連通すると共に、蓋部110によって閉塞され、蓋部110と弁体92との間にバネ部材94が介挿されている。これにより、 第1カバー内にバネ部材94を容易に配置することができる。
【0105】
また、第1カバーには、一端が流路72、84に連通し、他端が外部に連通する穴106が形成されている。穴106には、スリーブ107、108が挿入され、スリーブ107、108の内側には、弁体92が摺動可能に配置されている。この場合、穴106が蓋部110によって閉塞されることで、穴106における蓋部110側の部分が収容室96として形成される。そして、穴106における流路72、84側の部分が流路98として形成される。
【0106】
これにより、流路98及び収容室96を容易に形成することができる。また、穴106にスリーブ107、108を挿入することで、穴106の加工精度をスリーブ107、108で吸収することが可能となる。この結果、スリーブ107、108の内側に沿って、弁体92をスムーズに摺動させることができる。
【0107】
また、弁体92の外周面には、スリーブ107、108の内周面に摺接するシール部材112が設けられている。これにより、流路98と収容室96との間を確実にシールすると共に、弁体92を含むガスシリンダ10の長寿命化を図ることができる。
【0108】
また、オリフィス部66、78及び排出流量調整部68、80は、第1カバー内で、ピストンロッド20に対する一方の側部にまとめて配置されている。これにより、第1カバーの4つの面のうち、3つの面をガスシリンダ10の取り付け面とすることができる。この結果、限られたスペースに複数台のガスシリンダ10を集約して配置することが可能となる。また、ガスシリンダ10の製造が容易になる。さらに、現行製品との間で、外観寸法の互換性を保つガスシリンダ10を実現することができる。
【0109】
さらに、バネ部材94は、弁体92の一端部を付勢するバネ部材である。これにより、ガスシリンダ10の低コスト化を図ることができる。
【0110】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
では、穴106に2つのスリーブ107、108を挿入する場合を図示している。本実施形態では、2つのスリーブ107、108に代えて、流路100及び通路102に連通する孔を有する1つのスリーブを穴106に挿入することも可能である。
弁体92は、流路84から収容室96にかけて配置された円柱状のスプール弁である。弁体92の外周面には、スリーブ107、108の内周面に摺接するOリング等のシール部材112が設けられている。図
側に変位し、流路72、84と流路98との連結部分を弁体92の一端部が閉塞することにより、流路72、84と流路98との連通状態が遮断される。一方、第1圧力室の圧力が所定圧を超える場合、弁体92が第1圧力室の圧力によって付勢力及び収容室96の圧力に抗して流路98側に変位することで、弁体92の一端部が連結部分から離間し、流路72、84と流路98とが連通する。