特開2021-195984(P2021-195984A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2021195984-制振装置 図000008
  • 特開2021195984-制振装置 図000009
  • 特開2021195984-制振装置 図000010
  • 特開2021195984-制振装置 図000011
  • 特開2021195984-制振装置 図000012
  • 特開2021195984-制振装置 図000013
  • 特開2021195984-制振装置 図000014
  • 特開2021195984-制振装置 図000015
  • 特開2021195984-制振装置 図000016
  • 特開2021195984-制振装置 図000017
  • 特開2021195984-制振装置 図000018
  • 特開2021195984-制振装置 図000019
  • 特開2021195984-制振装置 図000020
  • 特開2021195984-制振装置 図000021
  • 特開2021195984-制振装置 図000022
  • 特開2021195984-制振装置 図000023
  • 特開2021195984-制振装置 図000024
  • 特開2021195984-制振装置 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-195984(P2021-195984A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20211129BHJP
【FI】
   F16F15/02 L
   F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-102000(P2020-102000)
(22)【出願日】2020年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】劉 銘崇
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA07
3J048AD07
3J048BF09
3J048BG04
3J048CB05
3J048CB23
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】可動質量が過大変位し、可動質量の変位量が設計値を超えることを防止できる制振装置を提供する。
【解決手段】構造物2に設置される滑り支承3と、滑り支承3に支持される可動質量と、を有し、滑り支承3は、構造物2の上に設置される下沓部31と、下沓部31の上方に配置され可動質量を支持する上沓部32と、下沓部31と上沓部32との間に設けられる摺動子33と、を有し、下沓部31と上沓部32とは、水平方向に相対変位可能に構成され、摺動子33は、下面36が下沓部31の上面34と接触した状態で下沓部31と水平方向に相対変位可能であるとともに、上面37が上沓部32の下面35と接触した状態で上沓部32と水平方向に相対変位可能に構成され、下沓部31の上面34は、下側に窪んだ曲面であり、上沓部32の下面35は、上側に窪んだ曲面である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設置される滑り支承と、
前記滑り支承に支持される可動質量と、を有し、
前記滑り支承は、前記構造物の上に設置される下沓部と、
前記下沓部の上方に配置され可動質量を支持する上沓部と、
前記下沓部と前記上沓部との間に設けられる摺動子と、を有し、
前記下沓部と前記上沓部とは、水平方向に相対変位可能に構成され、
前記摺動子は、下面が前記下沓部の上面と接触した状態で前記下沓部と水平方向に相対変位可能であるとともに、上面が前記上沓部の下面と接触した状態で前記上沓部と水平方向に相対変位可能に構成され、
前記下沓部の上面は、下側に窪んだ曲面であり、
前記上沓部の下面は、上側に窪んだ曲面であることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記摺動子の下面は、下側に突出した曲面であり、
前記摺動子の上面は、上側に突出した曲面であり、
前記下沓部の上面、前記上沓部の下面、前記摺動子の下面および上面の曲率半径は、同一であることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記可動質量と前記構造物との間に減衰機構を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震構造物の地震時の加速度低減策として制振構造や免震構造にすることが一般である。制振構造の構造物に設置される制振装置として、TMD(Tuned Mass Damper)が知られている(例えば、特許文献1参照)。TMDは、例えば、可動質量と、減衰装置(オイルダンパー、粘弾性ゴムなど)と、コイルばね、スライダーと、を有し、可動質量を減衰装置、コイルばねおよびスライダーを介して構造物に設置する構成である。TMDは、その固有周期が構造物の固有周期と同調するように、可動質量やコイルばねの剛性が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−131317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震に対応するTMDの場合、想定外の地震で可動質量が過大変位し、その変位量が設計値を超えると、可動質量の変位がロックされTMDとしての機能を果たさなくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、可動質量の変位量が設計値を超え、可動質量が過大変位することを防止できる制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る制振装置は、構造物に設置される滑り支承と、前記滑り支承に支持される可動質量と、を有し、前記滑り支承は、前記構造物の上に設置される下沓部と、前記下沓部の上方に配置され可動質量を支持する上沓部と、前記下沓部と前記上沓部との間に設けられる摺動子と、を有し、前記下沓部と前記上沓部とは、水平方向に相対変位可能に構成され、前記摺動子は、下面が前記下沓部の上面と接触した状態で前記下沓部と水平方向に相対変位可能であるとともに、上面が前記上沓部の下面と接触した状態で前記上沓部と水平方向に相対変位可能に構成され、前記下沓部の上面は、下側に窪んだ曲面であり、前記上沓部の下面は、上側に窪んだ曲面であることを特徴とする。
【0007】
本発明では、摺動子が下沓部の上面および上沓部の下面に接触した状態で変位する。これにより、摺動子と下沓部および上沓部との間に生じる摩擦力によって下沓部と上沓部との相対変位を減衰させることができる。これにより、構造物に対する可動質量の変位を小さくすることができる。また、本発明では、摺動子が曲面となる下沓部の上面および上沓部の下面に沿って変位する。これにより、下沓部の上面および上沓部の下面の曲率半径を大きくすることで、可動質量の可動範囲を大きくすることができる。このため、可動質量の変位量が設計値を超え、可動質量が過大変位することを防止できる。また、可動質量の変位量が設計値を超えた際に可動質量の変位がロックされて制振装置がTMDとしての機能を果たさなくなることを防止できる。
【0008】
また、本発明に係る制振装置では、前記摺動子の下面は、下側に突出した曲面であり、前記摺動子の上面は、上側に突出した曲面であり、前記下沓部の上面、前記上沓部の下面、前記摺動子の下面および上面の曲率半径は、同一であることが望ましい。
このような構成とすることにより、摺動子がどの位置に移動しても下沓部および上沓部と面接触するため、摺動子と下沓部および上沓部との相対変位の際に生じる摩擦力を大きく設定することができ、構造物に対する可動質量の変位を抑えることができる。
【0009】
また、本発明に係る制振装置では、前記可動質量と前記構造物との間に減衰機構を設けてもよい。
このような構成とすることにより、構造物に対する可動質量の変位を更に抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動質量の変位量が設計値を超え、可動質量が過大変位することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による制振装置の一例を示す図である。
図2図1のA部分の拡大図である。
図3】(a)は従来のTMDの履歴特性を示す図、(b)は従来のTMDのモデルを示す図である。
図4】(a)は第1実施形態の制振装置の履歴特性を示す図、(b)は第1実施形態の制振装置のモデルを示す図である。
図5】第2実施形態の制振装置のモデルを示す図である。
図6】地震波をCH1原波とした場合の従来の制振装置の結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図7】地震波をCH1原波とした場合の本発明の制振装置Aの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図8】地震波をCH1原波とした場合の本発明の制振装置Bの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図9】地震波をCH1表面波とした場合の従来の制振装置の結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図10】地震波をCH1表面波とした場合の本発明の制振装置Aの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図11】地震波をCH1表面波とした場合の本発明の制振装置Bの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図12】地震波をOS1原波とした場合の従来の制振装置の結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図13】地震波をOS1原波とした場合の本発明の制振装置Aの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図14】地震波をOS1原波とした場合の本発明の制振装置Bの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図15】地震波をOS1表面波とした場合の従来の制振装置の結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図16】地震波をOS1表面波とした場合の本発明の制振装置Aの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図17】地震波をOS1表面波とした場合の本発明の制振装置Bの結果を示し、(a)は固有周期と構造物の最大加速度との関係を示すグラフ、(b)は固有周期と構造物の最大変位との関係を示すグラフ、(c)は固有周期と制振装置−構造物間の相対変位との関係を示すグラフである。
図18】(a)はOS1表面波を示す図、(b)はOS1原波を示す図、(c)はCH1表面波を示す図、(d)はCH1原波を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による制振装置について、図1図4に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態による制振装置1は、制振のために建物などの構造物2の最頂部にTMDとして設置される。本実施形態の建物は、鉄骨造の高さ100m以上で固有周期が3秒以上の建物を想定している。
制振装置1は、構造物2の上に設置される滑り支承3と、滑り支承3の上に設置され滑り支承3に支持される可動質量4と、を有している。
【0013】
図1および図2に示すように、滑り支承3は、構造物2の上に固定される下沓部31と、下沓部31の上方に配置され可動質量4(図1参照)を支持する上沓部32と、下沓部31と上沓部32との間に設けられる摺動子33と、を有している。
下沓部31と上沓部32とは、水平方向に相対変位可能に構成されている。
下沓部31の上面34は、下側に窪んだ曲面となっている。上沓部32の下面35は、上側に窪んだ曲面となっている。
下沓部31の上面34の曲率半径と、上沓部32の下面35の曲率半径は、同じ値となっている。下沓部31の上面34と上沓部32の下面35とは、同じ平面視形状(例えば円形)に形成され、鉛直方向に対向している。下沓部31と上沓部32とは、摺動子33を介して配置されており、直接接触していない。
【0014】
下沓部31の上面34の縁部には、上側に突出する下沓部突起38が全周にわたって設けられている。
上沓部32の下面35の縁部には、下側に突出する上沓部突起39が全周にわたって設けられている。
下沓部突起38と上沓部突起39とは、鉛直方向に間隔をあけて対向して配置されている。
【0015】
摺動子33は、下沓部31と上沓部32との間に挟まれた状態で、下沓部31および上沓部32それぞれと水平方向に相対変位可能に構成されている。
摺動子33の下面36は、下側に突出した曲面となっている。摺動子33の上面37は、上側に突出した曲面となっている。
摺動子33の下面36の曲率半径と上面37の曲率半径とは、同じ値であるとともに、下沓部31の上面34の曲率半径および上沓部32の下面35の曲率半径とも同じ値となっている。すなわち、下沓部31の上面34、上沓部32の下面35、摺動子33の下面36および上面37の曲率半径は、同一である。本実施形態では、下沓部31の上面34、上沓部32の下面35、摺動子33の下面36および上面37は、球面の一部を形成する面となっている。
摺動子33は、下面36が下沓部31の上面34と面接触し、上面37が上沓部32の下面35と面接触している。滑り支承3は、摺動子33と下沓部31とが水平方向に相対変位すると、摺動子33の下面36と下沓部31の上面34との間に摩擦力が生じ、摺動子33と上沓部32とが水平方向に相対変位すると、摺動子33の上面37と上沓部32の下面35との間に摩擦力が生じるように構成されている。
【0016】
摺動子33と下沓部31とが相対変位し、摺動子33が下沓部31の側方に変位しようとすると、摺動子33は、下沓部突起38に衝突するため、下沓部31の側方に変位して下沓部31から離れることが防止される。また、摺動子33と上沓部32とが相対変位し、摺動子33が上沓部32の側方に変位しようとすると、摺動子33は、上沓部突起39に衝突するため、上沓部32の側方に変位して上沓部32から離れることが防止される。
【0017】
地震が生じ構造物2が水平方向に変位すると、下沓部31は構造物2とともに変位する。そして、滑り支承3の水平変位−荷重が摺動子33と下沓部31および上沓部32との間の摩擦力を越えると、下沓部31と上沓部32とが水平方向に相対変位する。これにより、下沓部31が固定された構造物2と、上沓部32に支持される可動質量4とは、水平方向に相対変位する。なお、下沓部31の上面34および上沓部32の下面35に曲率があるため、滑り支承3の水平変位−荷重は、水平変位の増加に伴って増加する。
【0018】
制振装置1は、その固有周期Ttmdを構造物2の固有周期Tと同調させること(Ttmd=T)で制振効果を発揮する。構造物2の固有周期Tは、下式で示される。kは構造物2の剛性(N/m)、Mは構造物2の質量(kg)である。固有周期Tの単位は秒である。
【0019】
【数1】
【0020】
図3に示すように、従来の制振装置101は、例えば、可動質量m、減衰装置C(オイルダンパー、粘弾性ゴムなど)、コイルばねKdおよびスライダーによって構成されている。可動質量mとスライダーとの間の摩擦係数はとても小さいので、無視することができる。
従来の制振装置では、コイルばねの剛性K、固有周期Ttmdは下式で示される。式中のmは可動質量を示す。制振装置の固有周期Ttmdは、構造物の固有周期Tと合うように設定される。
【0021】
【数2】
【0022】
図4に示すように、本実施形態の制振装置1は、滑り支承3および可動質量4によって構成されている。本実施形態の制振装置1では、相対変位によって生じる摺動子33と下沓部31および上沓部32との間の摩擦力を減衰機構としている。摩擦力Fおよび制振装置1の固有周期Ttmdは、下式で示される。μは摩擦係数、gは重力加速度(9.8m/sec)、mは可動質量、Rは曲率半径である。
【0023】
【数3】
【0024】
制振装置1の固有周期Ttmdは、構造物2の固有周期Tと合うように設定される。
よって、下式に構造物2の固有周期Tを代入すると、制振装置1の固有周期Ttmdが構造物2の固有周期Tに同調するために必要な制振装置1の2次剛性Kを求めることができる。
【0025】
【数4】
【0026】
また、最適な曲率半径Rは、下式となる。
【0027】
【数5】
【0028】
本実施形態の制振装置1では、2次剛性Kおよび可動質量mを調整し、その固有周期Ttmdを構造物2の固有周期Tに同調させる。
【0029】
次に、第1実施形態による制振装置1の作用・効果について説明する。
本実施形態による制振装置1では、摺動子33が下沓部31の上面34および上沓部32の下面35に接触した状態で変位する。これにより、摺動子33と下沓部31および上沓部32との間に生じる摩擦力によって下沓部31と上沓部32との相対変位を減衰させることができる。これにより、構造物2に対する可動質量4の変位を小さくすることができる。また、本実施形態による制振装置1では、摺動子33が曲面となる下沓部31の上面34および上沓部32の下面35に沿って変位する。これにより、下沓部31の上面34および上沓部32の下面35の曲率半径を大きくすることで、可動質量4の可動範囲を大きくすることができる。このため、可動質量4の変位量が設計値を超え、可動質量4が過大変位することを防止できる。特に、本実施形態のような固有周期が3秒以上の建物の場合に、建物に対する可動質量4の相対変位を小さくすることができ、過大変位を生じる虞を小さくすることができる。
また、可動質量4の変位量が設計値を超えた際に、可動質量4の変位がロックされて制振装置1がTMDとしての機能を果たさなくなることを防止できる。
【0030】
また、本実施形態では、下沓部31の上面34の縁部には、上側に突出する下沓部突起38が全周にわたって設けられ、上沓部32の下面35の縁部には、下側に突出する上沓部突起39が全周にわたって設けられている。これにより、摺動子33が下沓部31および上沓部32の側方に向かって過大変位しようとした場合に、摺動子33が下沓部突起38および上沓部突起39に衝突するため、摺動子33が過大変位することを防止することができる。また、摺動子33が過大変位しないため、可動質量4の変位がロックされて制振装置1がTMDとしての機能を果たさなくなることを防止できる。下沓部突起38および上沓部突起39は、摺動子33が下沓部31および上沓部32に対して過大変位しないためのストッパーとなっている。
【0031】
また、本実施形態による制振装置1では、摺動子33が下沓部31および上沓部32と面接触するため、摺動子33と下沓部31および上沓部32との相対変位の際に生じる摩擦力を大きく設定することができ、構造物2に対する可動質量4の変位を抑えることができる。
【0032】
また、本実施形態の制振装置1では、すべり支承は、摺動子33が曲面となる下沓部31の上面34および上沓部32の下面35に沿って2次元を移動するため、X方向およびY方向のそれぞれに対して制振装置1を設置する場合と比べて、設置スペースを縮小でき、設置や管理に係るコストや手間を軽減させることができる。なお、構造物2の固有周期が2方向(例えば、X方向、Y方向)で異なる場合には、短周期側にせん断抵抗できるコイルばねやゴムなどを追加設置することで対応できる。
【0033】
また、本実施形態では、下沓部31の上面34、上沓部32の下面35、摺動子33の下面36および上面37の曲率半径が同一の球面である。これにより、摺動子33と下沓部31との相対すべり量と、摺動子33上沓部32との相対滑り量とが同じになる。すなわち、各沓部(下沓部31、上沓部32)と摺動子33との相対滑り量は、可動質量4の変位の1/2だけでよくなり、摺動子33の片側だけが滑る場合と比べ、各沓部の面積を小さくすることができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図5に示すように、第2実施形態による制振装置1Bは、可動質量4Bと構造物2との間にオイルダンパーなどの減衰機構5を設けている。
第2実施形態による制振装置1では、減衰機構5が設けられていることにより、第1実施形態と比べて構造物2に対する可動質量4の変位を更に抑えることができる。
【0035】
次に、第1実施形態による制振装置および第2実施形態による制振装置の制振効果について説明する。
第1実施形態による制振装置および第2実施形態による制振装置の制振効果と従来の制振装置の制振効果とを比較した。
従来の制振装置は、可動質量、減衰装置、ばねを有するTMDである。第1実施形態による制振装置(制振装置Aとする)は、可動質量、下沓部および上沓部に曲面が形成された滑り支承を有するTMDである。第2実施形態による制振装置(制振装置Bとする)は、可動質量、下沓部および上沓部に曲面が形成された滑り支承および減衰装置(ダンパー)を有するTMDである。
【0036】
比較対象となる構造物の条件は以下である。
構造物の質量M:200000kg
構造物の剛性k:M(2π/T)
構造減衰は、初期剛性比例型減衰2%とする。Tは、構造物の固有周期(sec)を示す。
【0037】
従来の制振装置の条件は以下である。
バネ剛性K=m(2π/Ttmd
減衰定数は、10%とする。Ttmdは、制振装置の固有周期(sec)を示す。制振装置の固有周期Ttmdは、構造物の固有周期Tと同値である。
【0038】
制振装置A、制振装置Bの条件は以下である。
剛性Ks=m(2π/Ttmd
滑り支承の摩擦係数をμとする。Ttmdは、制振装置Aおよび制振装置Bの固有周期(sec)を示す。制振装置Aおよび制振装置Bそれぞれの固有周期Ttmdは、構造物の固有周期Tと同値である。
【0039】
パラメータは、以下とする。
(1)固有周期は1、2、3、4、5、6秒
(2)質量比(可動質量/構造物の質量)=0.03、0.05、0.07、0.1
(3)制振装置Aの摩擦係数μ=0.1
制振装置Bの滑り支承の摩擦係数μ=0.043
(4)地震波は、以下の4つとする(図18参照)。
国土交通省「長周期地震動への対策」における基整促波CH1(原波)
国土交通省「長周期地震動への対策」における基整促波CH1(表面波)
国土交通省「長周期地震動への対策」における基整促波OS1(原波)
国土交通省「長周期地震動への対策」における基整促波OS1(表面波)
(5)制振装置Bの減衰装置の減衰は、10パーセントとする。制振装置Aは、減衰装置なし。
【0040】
図6図17に示すように、制振装置Aおよび制振装置Bを設置した構造物の最大加速度と最大絶対変位は、制振装置なしの構造物の最大加速度と最大絶対変位より小さいことから、本発明の制振装置の制振効果が確認できる。
質量比(可動質量/構造物の質量)と最大加速度および最大絶対変位の低減との関係は、質量比が大きいほど、構造物の最大加速度と最大絶対変位の低減が大きくなる。これらのことにより、本発明の制振装置では、構造物の質量に対する可動質量の質量比を0.05以上とし、制振装置(ダンパー)を設けない場合は、摩擦係数を0.1以上とし、とする。減衰係数10%の制振装置を設置する場合は、摩擦係数を0.05未満とすることが好ましい。
また、制振装置と構造物間の相対変位量は、固有周期が1〜3秒では制振装置Aおよび制振装置Bと、従来の制振装置とで著しい差異はないが、固有周期が3秒を超えると、制振装置Aおよび制振装置Bのほうが従来の制振装置よりも小さいことが確認できる。
【0041】
以上、本発明による制振装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、制振装置1,1Bは、構造物2の最頂部に設置されているが、最頂部以外の高さに設置されていてもよい。
上記の実施形態では、摺動子33の下面36は、下側に突出した曲面であり、摺動子33の上面37は、上側に突出した曲面であるが、摺動子33と、下沓部31の上面34および上沓部32の下面35との間に所定の摩擦力が生じるように構成されていれば、摺動子33の下面36や上面37の形状は曲面以外であってもよい。
また、摺動子33の下面36と下沓部31の上面34とは、曲率半径が同じであるが、異なっていてもよい。摺動子33の上面37と上沓部32の下面35とは、曲率半径が同じであるが、異なっていてもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、下沓部31の上面34の縁部には、上側に突出する下沓部突起38が全周にわたって設けられ、上沓部32の下面35の縁部には、下側に突出する上沓部突起39が全周にわたって設けられているが、下沓部突起38および上沓部突起39が設けられていなくてもよい。また、下沓部突起38および上沓部突起39は、下沓部31の上面34または上沓部32の下面35の縁部の全周ではなく、縁部に部分的に設けられていてもよい。
また、下沓部31、上沓部32の平面視形状は、円形以外であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1,1B 制振装置
2 構造物
3 滑り支承
4,4B 可動質量
5 減衰機構
31 下沓部
32 上沓部
33 摺動子
34 上面
35 下面
36 下面
37 上面
38 下沓部突起(ストッパー)
39 上沓部突起(ストッパー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18