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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-196000(P2021-196000A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】スラストころ軸受用保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/54 20060101AFI20211129BHJP
   F16C 19/30 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   F16C33/54
   F16C19/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-103227(P2020-103227)
(22)【出願日】2020年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 紘一郎
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA53
3J701AA62
3J701BA35
3J701BA46
3J701BA47
3J701DA09
3J701FA15
3J701FA60
3J701GA01
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】フランジ部の高さばらつきを抑制でき、かつ、十分な機械的強度及び耐久性を有するスラストころ軸受用保持器を提供する。
【解決手段】複数のころ11を保持する複数の保持穴4の径方向外側及び内側に形成された一対の円環部5,6と、円環部5,6を径方向に連結する複数の柱部7と、を有する第1及び第2の保持器部材2,3を備え、円環部5,6は、保持穴4と反対側の縁部から中心軸と平行な軸方向に延設されたフランジ部52,62を有し、両フランジ部52,62は、径方向に対向して形成された複数の分割溝53,63によって周方向に複数に分割されており、両フランジ部52,62の分割溝53,63は、隣り合う保持穴4の中間となる周方向位置に形成されており、分割溝53,63が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う保持穴4の周方向間隔が、他の隣り合う保持穴4の周方向間隔よりも広い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のころを転動可能に保持する複数の保持穴が形成された環状のスラストころ軸受用保持器であって、
径方向における前記複数の保持穴の外側及び内側に形成された一対の円環部と、前記一対の円環部を径方向に連結し、軸方向における前記ころの移動を規制する複数の柱部と、を有し、互いに同形状に形成された第1及び第2の保持器部材を備え、
前記第1及び第2の保持器部材の前記一対の円環部は、前記保持穴と反対側の縁部から中心軸と平行な軸方向に延設されたフランジ部をそれぞれ有し、
前記一対の円環部の前記フランジ部は、当該両フランジ部に径方向に対向して形成された切欠き状の複数の分割溝によって周方向に複数にそれぞれ分割され、複数の内郭部と前記内郭部よりも前記保持穴からの径方向に沿った距離が長い複数の外郭部とが周方向に交互に形成されており、
前記第1の保持器部材と前記第2の保持器部材とが、前記第1の保持器部材の前記両フランジ部の前記内郭部と前記第2の保持器部材の前記両フランジ部の前記外郭部とを重ね合わせ、かつ、前記第1の保持器部材の前記両フランジ部の前記外郭部と前記第2の保持器部材の前記両フランジ部の前記内郭部とを重ね合わせた状態で互いに固定されており、
前記両フランジ部の前記分割溝は、隣り合う前記保持穴の中間となる周方向位置に形成されており、
前記分割溝が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う前記保持穴の周方向間隔が、他の隣り合う前記保持穴の周方向間隔よりも広い、
スラストころ軸受用保持器。
【請求項2】
前記一対の円環部は、中心軸と平行な軸方向に対して垂直に延設された板状かつ円環状の垂直部と、前記垂直部の前記保持穴と反対側の縁部から中心軸と平行な軸方向に延設された前記フランジ部と、をそれぞれ有し、前記垂直部と前記フランジ部との連結部が丸みを帯びた形状に形成されており、
前記分割溝は、前記フランジ部における前記垂直部と反対側へと開口するように形成されると共に、前記フランジ部を軸方向に横断し、前記連結部を通って前記垂直部の一部まで径方向に沿って延びるように形成されている、
請求項1に記載のスラストころ軸受用保持器。
【請求項3】
前記両フランジ部の前記内郭部同士、及び前記外郭部同士が径方向に対向するように形成されており、
前記第1の保持器部材の前記両フランジ部の前記内郭部を前記第2の保持器部材の前記両フランジ部の前記外郭部内に収容し、かつ、前記第2の保持器部材の前記両フランジ部の前記内郭部を前記第1の保持器部材の前記両フランジ部の前記外郭部内に収容した状態で、前記第1の保持器部材と前記第2の保持器部材とが互いに固定されている、
請求項1または2に記載のスラストころ軸受用保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラストころ軸受用保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向配置された2つのレースの間に複数のころを転動可能に介在させたスラストころ軸受が知られている。スラストころ軸受は、例えば、車両のトランスミッションにおいて非回転部材と回転部材との間に介挿され、回転軸方向のスラスト力を受けながら回転部材の回転を円滑にするために用いられている。
【0003】
スラストころ軸受では、複数のころが2つのレースの間に配置された保持器に転動可能に保持されている。スラストころ軸受に用いられるスラストころ軸受用保持器として、板材を加工して形成された一対の保持器部材を組み合わせたもの(以下、2枚保持器という)が知られている。2枚保持器に用いられる一対の保持器部材は、複数のころを保持する複数の保持穴の外側に形成された外側円環部と、保持穴の内側に形成された内側円環部と、外側円環部と内側円環部とを径方向に連結し、軸方向における前記ころの移動を規制する複数の柱部と、をそれぞれ有している。内側円環部及び外側円環部は、その径方向外方の端部に軸方向に伸びる筒状のフランジ部をそれぞれ有しており、一方の保持器部材のフランジ部を他方の保持器部材のフランジ部内へと収容し、他方の保持器部材のフランジ部を加締め固定することにより、両保持器部材が互いに固定される。
【0004】
本出願人は、製造工程の簡素化及び低コスト化を図るため、同じ形状の保持器部材を組み合わせたスラストころ軸受用保持器を提案している(特許文献1参照)。特許文献1のスラストころ軸受用保持器では、フランジ部を周方向において複数に分割し、中心軸からの距離が異なる内郭部と外郭部とを周方向に交互に形成している。このスラストころ軸受状保持器では、両保持器部材を位相をずらして重ね合わせることで、一方の保持器部材の内郭部と他方の保持器部材の外郭部とを重ね合わせた状態として、両保持器部材を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−136025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スラストころ軸受用保持器に用いられる保持器部材は、プレス加工により形成される。具体的には、鋼板を打ち抜き加工した後、当該打ち抜き加工により打ち抜かれた基材に絞り加工を行いフランジ部を形成することで、保持器部材が形成される。
【0007】
フランジ部に内郭部と外郭部とを形成する場合、絞り加工では、内郭部と外郭部とを別々に曲げ成形することになるが、この曲げ成形を容易とするために、フランジ部における内郭部と外郭部との境界には、切欠き状の分割溝が形成される。この分割溝が浅すぎる場合には、内郭部や外郭部に高さばらつきが生じるおそれがあり、加工時にフランジ部の周辺が変形してしまうおそれも生じるため、分割溝は十分に深くすることが望まれる。しかし、分割溝を深くすると、分割溝と保持穴との距離が近くなり過ぎ、機械的強度及び耐久性が不足してしまうおそれが生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、フランジ部の高さばらつきを抑制でき、かつ、十分な機械的強度及び耐久性を有するスラストころ軸受用保持器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、複数のころを転動可能に保持する複数の保持穴が形成された環状のスラストころ軸受用保持器であって、径方向における前記複数の保持穴の外側及び内側に形成された一対の円環部と、前記一対の円環部を径方向に連結し、軸方向における前記ころの移動を規制する複数の柱部と、を有し、互いに同形状に形成された第1及び第2の保持器部材を備え、前記第1及び第2の保持器部材の前記一対の円環部は、前記保持穴と反対側の縁部から中心軸と平行な軸方向に延設されたフランジ部をそれぞれ有し、前記一対の円環部の前記フランジ部は、当該両フランジ部に径方向に対向して形成された切欠き状の複数の分割溝によって周方向に複数にそれぞれ分割され、複数の内郭部と前記内郭部よりも前記保持穴からの径方向に沿った距離が長い複数の外郭部とが周方向に交互に形成されており、前記第1の保持器部材と前記第2の保持器部材とが、前記第1の保持器部材の前記両フランジ部の前記内郭部と前記第2の保持器部材の前記両フランジ部の前記外郭部とを重ね合わせ、かつ、前記第1の保持器部材の前記両フランジ部の前記外郭部と前記第2の保持器部材の前記両フランジ部の前記内郭部とを重ね合わせた状態で互いに固定されており、前記両フランジ部の前記分割溝は、隣り合う前記保持穴の中間となる周方向位置に形成されており、前記分割溝が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う前記保持穴の周方向間隔が、他の隣り合う前記保持穴の周方向間隔よりも広い、スラストころ軸受用保持器を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フランジ部の高さばらつきを抑制でき、かつ、十分な機械的強度及び耐久性を有するスラストころ軸受用保持器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るスラストころ軸受の平面図である。
図2図1のA−A線断面におけるスラストころ軸受の断面図である。
図3】(a)は、第1の保持器部材の平面図であり、(b)は第2の保持部材の平面図である。
図4】(a)は、図3(a)のB部を拡大した斜視図であり、(b)はその平面図である。
図5】本発明の一変形例に係るスラストころ軸受の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るスラストころ軸受の平面図であり、図2は、図1のA−A線断面におけるスラストころ軸受の断面図である。図1及び図2に示すように、スラストころ軸受10は、複数の円柱状のころ11と、複数のころ11を転動可能に保持する環状のスラストころ軸受用保持器1と、を備えている。また、図示していないが、スラストころ軸受10は、スラストころ軸受用保持器1を挟み込むように対向して配置され、複数のころ11が転動する軌道面を有する一対のレースを有している。
【0014】
スラストころ軸受10は、例えば車両のトランスミッションに用いられ、軸状の回転部材と、トランスミッションハウジング等の非回転部材との間に介挿され、スラストころ軸受用保持器1に保持された複数のころ11の転動により、軸方向のスラスト力を受けながら回転部材の回転を円滑にするものである。
【0015】
(スラストころ軸受用保持器1の説明)
図3(a)は、第1保持器部材の平面図であり、図3(b)は、第2保持部材の平面図である。図4(a)は、図3(a)のB部を拡大した斜視図であり、図4(b)はその平面図である。図1〜4に示すように、本実施の形態に係るスラストころ軸受用保持器1は、第1の保持器部材2と第2の保持器部材3とを組み合わせてなる2枚保持器である。
【0016】
第1の保持器部材2と第2の保持器部材3とは、共に金属からなり、鋼板をプレス加工(打ち抜き加工及び絞り加工)して形成される。第1の保持器部材2及び第2の保持器部材3は、複数のころ11を保持する複数の保持穴4の外側に形成された外側円環部5と、保持穴4の内側に形成された内側円環部6と、外側円環部5と内側円環部6とを径方向に連結し、軸方向におけるころ11の移動を規制する複数の柱部7と、をそれぞれ有している。
【0017】
保持穴4は、第1及び第2の保持器部材2,3の径方向に沿って長辺が延び、第1及び第2の保持器部材2,3を厚さ方向(軸方向)に貫通する略長方形状の貫通孔である。第1及び第2の保持器部材2,3には、放射状に配置された複数のころ11を転動可能に保持するように、複数のころ11と同数(本実施の形態では36個)の複数の保持穴4が放射状に形成されている。保持穴4の短辺方向の幅は、ころ11の直径よりも小さく形成されており、これにより保持穴4からのころ11の離脱が抑止されている。なお、周方向における柱部7の両側に保持穴4内に突出する突起を設け、これらの突起によってころ11の抜け止めをしてもよい。この場合、周方向に向かい合う突起の間隔はころ11の直径よりも小さくされる。このように、保持穴4の短辺方向の幅は、少なくとも一部においてころ11の直径よりも小さく形成されていればよい。
【0018】
内側円環部6は、中心軸Oと平行な軸方向に対して垂直に延設された板状かつ円環状の内側垂直部61と、内側垂直部61の径方向内方の端部から軸方向に延設された内側フランジ部62と、を一体に有する。内側垂直部61と内側フランジ部62との連結部である内側連結部64は、丸みを帯びた形状に形成されている。
【0019】
本実施の形態では、第1及び第2の保持器部材2,3の内側フランジ部62は、周方向に沿って複数の円弧状に分割されており、中心軸Oからの距離が等しい円弧状の複数の内側内郭部621と、中心軸Oからの距離が内側内郭部621よりも短い複数の内側外郭部622と、を周方向に交互に有している。内側内郭部621及び内側外郭部622は、それぞれ中心軸Oを軸心とする仮想の同軸の円筒体に沿った形状とされている。以下、第1の保持器部材2の内側内郭部621及び内側外郭部622を、内側内郭部621a及び内側外郭部622aといい、第2の保持器部材3の内側内郭部621及び内側外郭部622を、内側内郭部621b及び内側外郭部622bという場合がある。
【0020】
外側円環部5は、中心軸と平行な軸方向に対して垂直に延設された板状かつ円環状の外側垂直部51と、外側垂直部51の径方向外方の端部から軸方向に延設された外側フランジ部52と、を一体に有している。外側垂直部51と外側フランジ部52との連結部である外側連結部54は、丸みを帯びた形状に形成されている。
【0021】
本実施の形態では、第1及び第2の保持器部材2,3の外側フランジ部52は、内側フランジ部62と同様に、周方向に沿って複数の円弧状に分割されている。外側フランジ部52は、中心軸Oからの距離が等しい円弧状に形成された複数の外側内郭部521と、中心軸Oからの距離が外側内郭部521よりも長い複数の外側外郭部522と、を周方向に交互に有している。外側内郭部521及び外側外郭部522は、それぞれ中心軸Oを軸心とする仮想の同軸の円筒体に沿った形状とされている。以下、第1の保持器部材2の外側内郭部521及び外側外郭部522を、外側内郭部521a及び外側外郭部522aといい、第2の保持器部材3の外側内郭部521及び外側外郭部522を、外側内郭部521b及び外側外郭部522bという場合がある。
【0022】
本実施の形態では、第1の保持器部材2と第2の保持器部材3を同じ形状とすることにより、部品を共通化して製造工程の簡素化及び低コスト化を図っている。そして、両保持器部材2,3を同じ形状とするために、両保持器部材2,3の内側フランジ部62及び外側フランジ部52に内郭部621,521及び外郭部622,522をそれぞれ形成し、第1の保持器部材2の両フランジ部62,52の内郭部621a,521aと第2の保持器部材3の両フランジ部62,52の外郭部622b,522bとを重ね合わせ、かつ、第1の保持器部材2の両フランジ部62,52の外郭部622a,522aと第2の保持器部材3の両フランジ部62,52の内郭部621b,521bとを重ね合わせた状態で、両保持器2,3を互いに位置決めしている。
【0023】
さらに、本実施の形態では、両フランジ部62,52の内郭部621,521同士、及び外郭部622,522同士が径方向に対向するように形成されている。そのため、第1の保持器部材2の両フランジ部62,52の内郭部621a,521aを第2の保持器部材3の両フランジ部62,52の外郭部622b,522b内に収容し、かつ、第2の保持器部材3の両フランジ部62,52の内郭部621b,521bを第1の保持器部材2の両フランジ部62,52の外郭部622a,522a内に収容した状態で、第1の保持器部材2と第2の保持器部材3とが互いに固定されている。
【0024】
図2に示されるように、両保持器部材2,3は、外郭部622,522の先端部を内側(保持穴4側)に変形させることで加締め固定されている。より具体的には、両保持器部材2,3は、内側外郭部622及び外側外郭部522の先端部を内側(保持穴4側)に変形させ、当該先端部を内側内郭部621及び外側内郭部521の基端部(曲げにより湾曲している部分)に係止させることで互いに固定されている。内側外郭部622及び外側外郭部522の先端部は、加締め対象となる相手側の保持器部材2,3(柱部7、内側垂直部61、及び外側垂直部51)よりも軸方向外方に突出しないようにするのが望ましい。本実施の形態では、内側外郭部622及び外側外郭部522の両方を加締め固定する両面加締めとしているが、内側外郭部622及び外側外郭部522の一方のみを加締め固定する片面かしめとしてもよい。両面加締めとするか片面加締めとするかは、スラストころ軸受10の用途(要求される両保持器部材2,3の保持力)等に応じて適宜選択可能である。
【0025】
また、両保持器部材2,3を組み合わせた状態においては、内側内郭部621及び外側内郭部521の先端部が、内側垂直部61または外側垂直部51に接触している。内側内郭部621及び外側内郭部521は、その先端部を内側垂直部61または外側垂直部51に当接させることにより、両保持器部材2,3の軸方向における位置関係を定める役割を果たしている。内側外郭部622及び外側外郭部522は、内側内郭部621及び外側内郭部521の全体を覆う必要がある(上述の加締め固定を行うために内側外郭部622及び外側外郭部522の先端部が内側内郭部621及び外側内郭部521の基端部まで延びている必要がある)ため、内側外郭部622及び外側外郭部522の内側垂直部61または外側垂直部51からの軸方向延出長は、内側内郭部621及び外側内郭部521の内側垂直部61または外側垂直部51からの軸方向延出長よりも長くなっている。
【0026】
(分割溝の説明)
フランジ部62,52は、当該両フランジ部62,52に径方向に対向して形成された切欠き状の複数の分割溝63,53によって周方向に複数にそれぞれ分割されている。分割溝63は、周方向に隣り合う内側内郭部621と内側外郭部622との間に形成され、分割溝53は、周方向に隣り合う外側内郭部521と外側外郭部522との間に形成されている。また、両フランジ部62,52の分割溝63,53は、径方向に対向して形成されている。本実施の形態では、両フランジ部62,52に、それぞれ4つの分割溝63,53を周方向に等間隔に形成している。
【0027】
これら分割溝63,53は、内側内郭部621及び外側内郭部521、及び、内側外郭部622及び外側外郭部522を形成する際の曲げ加工(絞り加工)を容易にし、内郭部621,521や外郭部622,522に高さばらつきが生じることを抑制すると共に、加工に伴う変形が近傍の形状(内側垂直部61や外側垂直部51の形状)に影響を及ぼさないようにする役割を果たす。このような役割を十分に果たすためには、分割溝63,53の深さを十分に確保する必要がある。
【0028】
そこで、本実施の形態では、分割溝63,53は、フランジ部62,52における垂直部61,51と反対側へと開口するように形成されると共に、フランジ部62,51を軸方向に横断し、丸みを帯びた連結部64,54を通って垂直部61,51の一部まで(垂直部61,51の途中まで)径方向に沿って延びるように形成されている。つまり、分割溝63,53は、フランジ部62,52の基端部に存在する丸みを帯びた連結部64,54よりも、対向するフランジ部52,62側(分割溝63は径方向外方、分割溝53は径方向内方)へと延び、平坦な垂直部61,51の一部まで切り欠くように形成されている。これにより、分割溝63,53の深さを十分に確保し、内郭部621,521や外郭部622,522の高さばらつきを抑制することが可能になると共に、曲げ加工時に垂直部61,51が変形してしまうことを抑制することが可能になる。なお、分割溝63,53は、垂直部61,51の一部のみに形成されており、垂直部61,51は分割溝63,53によって周方向に分割されていない。また、分割溝63,53の垂直部61,51側の端部は、丸みを帯びた形状に形成されている。
【0029】
ところで、分割溝63,53が周方向における保持穴4と重なる位置(つまり保持穴4の径方向外方の位置) に形成された場合、分割溝63,53と保持穴4間の内側垂直部61や外側垂直部51が狭くなって機械的強度が低下し、上述の曲げ加工の際等に保持穴4に歪みが発生してころ11に干渉する等の不具合が発生するおそれが生じる。よって、このような歪みを抑制するために、内側フランジ部62及び外側フランジ部52は、周方向における柱部7と重なる位置にて分割される。なお、ここでいう「周方向における柱部7と重なる位置」とは、柱部7が配置されている周方向位置であり、すなわち柱部7の径方向内方及び径方向外方の位置を意味している。本実施の形態では、両フランジ部62,52の分割溝63,53は、隣り合う保持穴4の中間となる周方向位置に形成されている。
【0030】
しかし、隣り合う保持穴4の中間となる周方向位置に分割溝63,53を形成した場合であっても、分割溝63,53の深さを十分に確保すると、分割溝63,53と保持穴4との距離を十分に確保できず、機械的強度が低下してしまうおそれが生じる。そこで、本実施の形態では、分割溝63,53が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う保持穴4の周方向間隔を、他の隣り合う保持穴4の周方向間隔よりも広くしている。すなわち、本実施の形態では、分割溝63,53と周方向に重なる柱部7の幅(周方向に沿った幅)を、他の柱部7の幅(周方向に沿った幅)よりも広くしている。以下、幅が広い柱部7を拡幅柱部71と呼称する。
【0031】
より詳細には、本実施の形態では、基本的に44個の保持穴4を周方向に等間隔で配置した場合の位置に保持穴4を形成すると共に、4対の分割溝63,53を挟んで隣り合う4対(8個)の保持穴4を省略することで、分割溝63,53が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う保持穴4の周方向間隔を広げて、拡幅柱部71を形成している。図4(b)では、省略した保持穴4を破線にて示している。これにより、分割溝63,53の深さを十分に確保しつつも、分割溝63,53と保持穴4との距離を大きくし、十分な機械的強度及び耐久性を有するスラストころ軸受用保持器1を実現できる。
【0032】
本実施の形態では、分割溝63,53を挟んで隣り合う8つの保持穴4を省略したが、これに限らず、例えば、図5に示すように、分割溝63,53毎に1つの保持穴4を省略するようにし、省略した保持穴4を挟んで隣り合う保持穴4の中間の周方向位置に分割溝63,53を形成するようにしてもよい。図5では、省略する保持穴4を破線にて示している。これにより、図1の場合と比較して、保持穴4の数、すなわち、ころ11の数を増やすことが可能になり、より大きなスラスト力に耐えられるスラストころ軸受10を実現できる。なお、拡幅柱部71の幅は、他の保持穴4の周方向間隔によらず、適宜設定することも可能である。拡幅柱部71の幅(保持穴4を省略する数)については、使用するころ11の数や、要求されるスラスト力への耐力等に応じて適宜決定するとよい。
【0033】
なお、内側フランジ部62及び外側フランジ部52の分割位置(周方向位置)を柱部7の位置(周方向位置) と一致させるために、内側フランジ部62及び外側フランジ部52の分割数、すなわち分割溝63,53の数は、柱部7の数、すなわち保持穴4の数以下とすることが望ましい。また、ここでは保持穴4が周方向に沿って1 列に形成されている場合を説明したが、保持穴4は、径方向に複数列形成されていてもよい。
【0034】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るスラストころ軸受用保持器1では、両フランジ部62,52の分割溝63,53が、隣り合う保持穴4の中間となる周方向位置に形成されており、分割溝63,53が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う保持穴4の周方向間隔が、他の隣り合う保持穴4の周方向間隔よりも広い。
【0035】
これにより、分割溝63,53の深さを十分に確保した場合であっても、分割溝63,53と保持穴4との距離を広く確保することが可能になり、フランジ部62,52の高さばらつきを抑制しつつも、十分な機械的強度及び耐久性を有するスラストころ軸受用保持器1を実現できる。また、分割溝63,53の深さと幅(周方向に沿った幅)の寸法設定の自由度を高めることも可能になる。
【0036】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、全ての分割溝63,53に対して、当該分割溝63,53が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う保持穴4の周方向間隔を、他の隣り合う保持穴4の周方向間隔よりも広くしたが、これに限らず、一部の分割溝63,53に対して、当該分割溝63,53が形成されている周方向位置を挟んで隣り合う保持穴4の周方向間隔を、他の隣り合う保持穴4の周方向間隔よりも広くしてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、両フランジ部62,52の内郭部621,521同士、及び外郭部622,522同士が径方向に対向するように形成される場合について説明したが、内側フランジ部62の内側内郭部621と外側フランジ部52の外側外郭部522とが径方向に対向し、内側フランジ部62の内側外郭部622と外側フランジ部52の外側内郭部521とが径方向に対向していてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…スラストころ軸受用保持器 2…第1の保持器部材
3…第2の保持器部材 4…保持穴
5…外側円環部(円環部) 51…外側垂直部(垂直部)
52…外側フランジ部(フランジ部)
521,521a,521b…外側内郭部(内郭部)
522,522a,522b…外側外郭部(外郭部)
53…分割溝 54…外側連結部(連結部)
6…内側円環部(円環部) 61…内側垂直部(垂直部)
62…内側フランジ部(フランジ部)
621,621a,621b…内側内郭部(内郭部)
622,622a,622b…内側外郭部(外郭部)
63…分割溝 64…内側連結部(連結部)
7…柱部 71…拡幅柱部
10…軸受 11…ころ
図1
図2
図3
図4
図5