【課題】作業車両が前進する複数の前進変速段と作業車両が後進する後進変速段とを有する所定の変速機構を備える作業車両の変速装置であって、前進変速段と後進変速段との切り替える際の操作性を向上できる作業車両の変速装置を提供することを目的とする。
作業車両1の変速装置30は、作業車両1が前進する複数の前進変速段と前記作業車両が後進する後進変速段とを有する副変速機構50を備える。複数の前進変速段は、複数の前進変速段のうちで変速比が最も大きい低速変速段と、複数の前進変速段のうちで変速比が後進変速段の変速比に最も近い中速変速段と、を有する。
前記複数の前進変速段は、前記低速変速段と、前記所定の変速段と、前記複数の前進変速段のうちで変速比が最も小さい高速変速段と、からなる請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両の変速装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
一実施形態に係る作業車両の変速装置は、作業車両が前進する複数の前進変速段と前記作業車両が後進する後進変速段とを有する所定の変速機構(実施形態では、副変速機構50)を備える。前記作業車両の変速装置は、前記複数の前進変速段は、前記複数の前進変速段のうちで変速比が最も大きい低速変速段と、前記複数の前進変速段のうちで変速比が前記後進変速段の変速比に最も近い所定の変速段(実施形態では、中速変速段)と、を有する。
【0009】
これにより、所定の変速段の変速比は、後進変速段の変速比に最も近いため、作業者は、前進と後進とを切り替える際に、所定の変速段と後進変速段とを切り替えることで、他の前進変速段へ切り替える場合と比較して、前進と後進との速度差を小さくすることができる。このため、作業者が、前進と後進との速度差を低減するための煩雑な操作を省略し易くなり、前進変速段と後進変速段との切り替える際の操作性を向上できる。加えて、所定の変速段の変速比は、低速変速段の変速比よりも小さいため、低速変速段よりも前進速度を速くすることができ、低速変速段で作業車両が前進する場合と比較して作業時間を短縮できる。
【0010】
前記作業車両の変速装置は、変速比が互いに異なる複数の変速段を有する他の変速機構(実施形態では、主変速機構)を備えてよい。他の変速機構により変速比を変更することで、前進と後進との速度差を小さくしたままで、作業車両の速度を変更することができる。これにより、作業内容に応じて作業車両の速度を調整できるため、作業効率を向上できる。
【0011】
前記後進変速段の前記変速比に対する前記所定の変速段の前記変速比の割合は、0.8以上、かつ1.2以下であってよい。これにより、前進と後進との速度差を小さくできるため、作業者が、前進と後進との速度差を低減するための煩雑な操作を省略し易くなる。
【0012】
前記複数の前進変速段は、前記低速変速段と、前記所定の変速段と、前記複数の前進変速段のうちで変速比が最も小さい高速変速段と、からなってよい。所定の変速段の変速比は、高速変速段の変速比よりも小さいため、前進速度が大きくなり過ぎず、作業者は、前進と後進とを切り替えながらの作業を安定して行うことができる。加えて、前進変速段の数を3つに絞ることで、作業者の操作を容易にできる。
【0013】
前記所定の変速機構は、前記所定の変速機構の変速段を切り替えるために作業者により操作される所定の変速レバー(実施形態では、副変速レバー)を有してよい。前記所定の変速レバーの操作位置は、前記変速段が前記後進変速段に切り替わる後進操作位置と、前記変速段が前記所定の変速段に切り替わる所定操作位置(実施形態では、中速操作位置)と、を有してよい。前記後進操作位置から前記所定操作位置への経路は、直線状であってよい。これにより、作業者は、操作レバーを直線状に移動させることで、所定の変速機構により前進と後進とを切り替えることができ、前進変速段と後進変速段との切り替える際の操作性を向上できる。
【0014】
前記所定の変速機構は、前記所定の変速機構の変速段を切り替えるために作業者により操作される所定の変速レバーと、前記所定の変速レバーの操作により前記作業車両の前後方向に揺動するレバーアームと、前記作業車両の運転座席に座する作業者の足が置かれるステップ部と前記レバーアームとの間で、前記ステップ部よりも上方に延びるレバー保護部と、を有してよい。前記レバー保護部は、前記レバーアームとの接触によって前記レバーアームが所定位置よりも前方へ揺動することを止めてよい。レバー保護部は、ステップ部とレバーアームとの間でステップ部よりも上方へ延びるため、作業者の足が、レバーアームに接触する前に、レバー保護部に接触するため、レバーアームを保護することができる。これにより、作業者の足がレバーアームに接触することによる誤操作を防止できる。加えて、レバー保護部は、接触によってレバーアームが所定位置よりも前方へ揺動することを止めるため、レバーアームが前方に過度に揺動することで、所定の変速機構が損傷することを抑制できる。以上より、レバー保護部が、作業者の足の接触による誤操作の防止機能と、過度な揺動の防止機能とを有することで、部品点数を低減でき、製造コストを節約できる。
【0015】
前記レバー保護部の上端部は、前記レバーアームと接触し、かつ面取りされてよい。これにより、レバー保護部の上端角部にレバーアームが接触する場合と比較して、レバーアームが損傷することを低減できる。
【0016】
前記レバーアームは、第1レバーアームと、前記第1レバーアームよりも前記作業車両の幅方向の外側に配置される第2レバーアームと、を有してよい。前記レバー保護部は、前記第1レバーアームとの接触によって前記第1レバーアームが前記所定位置よりも前方へ揺動することを止める第1レバー保護部と、前記第1レバー保護部から前記幅方向に間隔を空けて配置され、かつ前記第2レバーアームとの接触によって前記第2レバーアームが前記所定位置よりも前方へ揺動することを止める第2レバー保護部と、を有してよい。これにより、レバー保護部が、第1レバーアームから第2レバーアームまで幅方向に延びる壁状の部材である場合と比較して、レバー保護部のコストを低減でき、製造コストを節約できる。
【0017】
以下では、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(1)作業車両の概略構成
作業車両1の概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。以下では、図中の矢印X、矢印Y、矢印Zで示した方向を、それぞれ走行車両の前後方向、走行車両の幅方向、走行車両の高さ方向と定義して説明を行う。また、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0019】
図1に、作業車両1を示す。本実施形態に係る作業車両1は、トラクタである。作業車両1は、左右一対の前輪2Fと及び左右一対の後輪2Bとを有する。原動部に位置するエンジン3からの駆動力によって前輪2F及び後輪2Bが駆動し、作業車両1は走行する。
【0020】
作業車両1は、運転部4と、ミッションケース5と、ステップ部6と、リンク機構10と、変速装置30と、を備えてよい。を備えてよい。運転部4は、原動部の後方に位置する運転座席4Sを有する。ミッションケース5は、車体フレームの後部を構成する。ステップ部6は、作業車両1の運転座席4Sに座する作業者の足が置かれる。作業車両1の車体後部にリンク機構10を介して作業装置を連結する。作業装置は、耕耘作業を行うための耕耘装置(例えば、ロータリ耕耘装置、牽引装置など)である。作業車両1では、車体フレームの後部に設けられた動力取り出し軸から取り出されたエンジン3の駆動力を作業装置に伝達する。
【0021】
変速装置30は、作業車両1の変速段を切り替える装置である。変速装置30は、主変速機構40と、副変速機構50と、を備えてよい。主変速機構40は、特許請求の範囲に記載の「他の変速機構」に対応する。副変速機構50は、特許請求の範囲に記載の「所定の変速機構」に対応する。
【0022】
主変速機構40は、変速比が互いに異なる複数の主変速段を有する。本実施形態では、複数の主変速段は、第1速と、第2速と、第3速と、第4速と、中立段を有する。第1速は、複数の主変速段のうちで変速比が最も大きい主変速段である。第2速は、第1速よりも変速比が小さい主変速段である。第3速は、第2速よりも変速比が小さい主変速段である。第4速は、第3速よりも変速比が小さく、複数の主変速段のうちで変速比が最も小さい主変速段である。主変速段の変速比は、エンジン3の回転数に対する主変速機構40で変速された回転数の比率である。中立段は、車軸に駆動力が伝わらない状態である。中立変速段では、作業車両1が前進方向にも後進方向にも動力伝達しない。
【0023】
副変速機構50は、複数の副変速段を有する。副変速機構50(複数の副変速段)は、作業車両1が前進する複数の前進変速段と、作業車両1が後進する後進変速段と、中立変速段と、を有する。本実施形態では、複数の前進変速段は、低速変速段と、中速変速段と、高速変速段と、からなる。
【0024】
低速変速段は、複数の前進変速段のうちで変速比が最も大きい。中速変速段は、低速変速段よりも変速比が小さい。また、中速変速段は、複数の前進変速段のうちで変速比が後進変速段の変速比に最も近い所定の副変速段である。高速変速段は、中速変速段よりも変速比が小さい。また、高速変速段は、複数の前進変速段のうちで変速比が最も小さい。副変速段の変速比は、エンジン3の回転数に対する副変速機構50で変速された回転数の比率である。中立変速段は、車軸に駆動力が伝わらない状態である。中立変速段では、作業車両1が前進方向にも後進方向にも動力伝達しない。
【0025】
後進変速段の変速比に対する中速変速段の変速比の割合(中速変速段の変速比/後進変速段の変速比)は、0.8以上、かつ1.2以下であってよい。運転者は、前進よりも後進の方が、速く感じ易い。このため、後進変速段の変速比に対する中速変速段の変速比の割合は、1.0より大きく1.2以下であってよい。なお、トラクタ1が、例えば、後進が前進よりも速いことが好まれる作業用のトラクタである場合、後進変速段の変速比に対する中速変速段の変速比の割合は、1.0より大きく1.4以下であってよい。エンジンの定格回転数(例えば、2300rpm)において、後進変速段の後進速度と、中速変速段の前進速度との差は、1km/hであってよい。
【0026】
(2)変速装置の詳細構成
変速装置30の詳細構成について、
図1から
図8を用いて説明する。変速装置30は、主変速機構40と副変速機構50とを有する。主変速機構40は、機械式の変速機構であってよい。すなわち、主変速機構40は、電気的な制御ではなく、物理的なリンクによって変速状態が切り替わる。主変速機構40は、主変速レバー43と、主変速ギア部48と、主変速リンク(不図示)と、を有する。主変速レバー43は、主変速機構40の主変速段を切り替えるために作業者により操作される。主変速レバー43の操作が、主変速リンクを介して、主変速ギア部48へ伝動される。
【0027】
主変速ギア部48は、第1速ギア列481、第2速ギア列482、第3速ギア列483、第4速ギア列484、第1主スリーブS11、及び第2主スリーブS12、を有する。第1速ギア列481は、第1軸C1に装着される伝動ギア481Aと、第2軸C2に装着され、伝動ギア481Aを介して第1軸C1から入力された駆動力を第2軸C2へ伝える受動ギア481Bと、を有する。同様に、第2速ギア列482は、伝動ギア482A及び受動ギア482Bを有し、第3速ギア列483は、伝動ギア483A及び受動ギア483Bを有し、第4速ギア列484は、伝動ギア484A及び受動ギア484Bを有する。第1主スリーブS11は、第1軸C1に沿ってシフト可能であり、第1速ギア列481の伝動ギア481A又は第2速ギア列482の伝動ギア482Aに噛み合い連動する。第2主スリーブS12は、第1軸C1に沿ってシフト可能であり、第3速ギア列483の伝動ギア483A又は第4速ギア列484の伝動ギア484Aに噛み合い連動する。
【0028】
図7Aに示すように、主変速レバー43の操作位置は、主変速段が第1速に切り替わる第1速操作位置と、主変速段が第2速に切り替わる第2速操作位置と、主変速段が第3速に切り替わる第3速操作位置と、主変速段が第4速に切り替わる第4速操作位置と、を有する。主変速レバー43の操作位置を第1操作位置に移動させることで、第1主スリーブS11が第1速ギア列481の伝動ギア481Aに噛み合う。これにより、主変速機構40の主変速段が第1速に切り替わる。同様に、主変速レバー43の操作位置を第2操作位置に移動させることで、第1主スリーブS11が第2速ギア列482の伝動ギア482Aに噛み合い、主変速機構40の主変速段が第2速に切り替わる。また、主変速レバー43の操作位置を第3操作位置に移動させることで、第2主スリーブS12が第3速ギア列483の伝動ギア483Aに噛み合う。これにより、主変速機構40の主変速段が第3速に切り替わる。同様に、主変速レバー43の操作位置を第4操作位置に移動させることで、第2主スリーブS12が第4速ギア列484の伝動ギア484Aに噛み合い、主変速機構40の主変速段が第4速に切り替わる。
【0029】
副変速機構50は、機械式の変速機構であってよい。すなわち、副変速機構50は、電気的な制御ではなく、物理的なリンクによって変速状態が切り替わる。
図3に示すように、副変速機構50は、第1リンク部51、第2リンク部52、副変速レバー53、レバーアーム54、変速選択具55、前後揺動軸56X、幅揺動軸56Y、副変速ギア部58、及び、レバー保護部59を有する。第1リンク部51及び第2リンク部52については後述する。副変速レバー53は、請求の範囲に記載の「所定の変速レバー」に対応する。
【0030】
副変速レバー53は、副変速機構50の変速段を切り替えるために作業者により操作される。副変速レバー53は、前後方向X及び幅方向Yに揺動可能であるレバー本体53Bと、レバー本体53Bの上端部に固定されるグリップ部53Gと、を有する。レバー本体53Bは、前後方向Xに延びる前後揺動軸56Xを揺動軸として幅方向Yに揺動する。また、レバー本体53Bは、幅方向Yに延びる幅揺動軸56Yを揺動軸として前後方向Xに揺動する。グリップ部53Gは、副変速機構50を操作するために作業者に把持される部分である。
【0031】
レバーアーム54は、副変速レバー53の操作により作業車両1の前後方向Xに揺動する。レバーアーム54は、第1レバーアーム541と第2レバーアーム542とを有する。第2レバーアーム542は、第1レバーアームよりも幅方向Yの外側に配置される。
【0032】
変速選択具55は、レバーアーム54に係合し、副変速レバー53の操作によりレバーアーム54を前後方向Xに揺動させる。変速選択具55は、副変速レバー53、具体的には、レバー本体53Bに固定される。変速選択具55は、変速選択具55の右側部から幅方向Yの外側へ向かって凹む第1凹部551と、変速選択具55の左側部から幅方向Yの内側へ向かって凹む第2凹部552と、を有する。
図3及び
図5に示すように、副変速レバー53を幅方向Yの内側(右方向R)へ揺動することで、第1凹部551に第1レバーアーム541が係合する。また、
図2に示すように、副変速レバー53を幅方向Yの外側(左方向L)へ揺動することで、第2凹部552に第2レバーアーム542が係合する。
【0033】
副変速ギア部58は、低速前進ギア列58L、中速前進ギア列58M、高速前進ギア列58H、後進ギア列58R、第1副スリーブS21、及び、第2副スリーブS22を有する。低速前進ギア列58Lは、第2軸C2に装着される伝動ギア58LAと、第3軸C3に装着され、伝動ギア58LAを介して第2軸C2から入力された駆動力を第3軸C3へ伝える受動ギア58LBと、を有する。中速前進ギア列58Mは、第2軸C2に装着される伝動ギア58MAと、第3軸C3に装着され、伝動ギア58MAを介して第2軸C2から入力された駆動力を第3軸C3へ伝える受動ギア58MBと、を有する。高速前進ギア列58Hは、第2軸C2に装着される伝動ギア58HAと、第3軸C3に装着され、伝動ギア58HAを介して第2軸C2から入力された駆動力を第3軸C3へ伝える受動ギア58HBと、を有する。後進ギア列58Rは、第2軸C2に装着される第1アイドリングギア58RAと、他の軸に装着されて第1アイドリングギア58RAに噛み合う第2アイドリングギア(不図示)と、第3軸C3に装着され、第1アイドリングギア58RA及び第2アイドリングギアを介して第2軸C2から入力された駆動力を第3軸C3へ伝える受動ギア58RBと、を有する。第1副スリーブS21は、第3軸C3に沿ってシフト可能であり、低速前進ギア列58Lの受動ギア58LB又は高速前進ギア列58Hの受動ギア58HBに噛み合い連動する。第2副スリーブS22は、第3軸C3に沿ってシフト可能であり、中速前進ギア列58Mの受動ギア58MB又後進ギア列58Rの受動ギア58RBに噛み合い連動する。
【0034】
第1リンク部51は、第1筒部51A、第1アーム部51B、第1ロッド部51C、第3アーム部51D、第1揺動軸51E、第1係合部51F、第1シフトフォーク51G、及び第1フォークロッド51Hを有する。第1筒部51Aは、幅揺動軸56Yに回動可能に装着され、第1レバーアーム541が固定される。第1アーム部51Bは、第1筒部51Aに固定される。第1アーム部51Bは、第1レバーアーム541の揺動に応じて第1筒部51Aを介して前後方向Xに揺動する。第1ロッド部51Cは、第1アーム部51Bの揺動に応じて前後方向Xに摺動する。第1ロッド部51Cの一方の端部は、第1アーム部51Bに連結されており、第1ロッド部51Cの他方の端部は、第3アーム部51Dに連結されている。第3アーム部51Dは、第1揺動軸51Eに固定される。第3アーム部51Dは、第1ロッド部51Cの摺動に応じて、第1揺動軸51Eを揺動軸として前後方向Xに揺動する。第1揺動軸51Eは、幅方向Yに延びる。第1揺動軸51Eの一方の端部には、第3アーム部51Dが固定されている。第1揺動軸51Eの他方の端部には、第1係合部51Fが揺動可能に連結されている。第1係合部51Fは、第1シフトフォーク51Gに係合する。第1シフトフォーク51Gは、前後方向Xに延びる第1フォークロッド51Hに挿入されており、第1フォークロッド51Hに沿ってシフト可能である。第1シフトフォーク51Gは、第1係合部51Fの揺動に応じて、前後方向Xにシフトする。第1シフトフォーク51Gは、第1副スリーブS21に連結されており、第1シフトフォーク51Gのシフトに応じて、第1副スリーブS21がシフトする。
【0035】
第2リンク部52は、第2筒部52A、第2アーム部52B、第2ロッド部52C、第4アーム部52D、第2揺動軸52E、第2係合部52F、第2シフトフォーク52G、及び、第2フォークロッド52Hを有する。第2筒部52Aは、幅揺動軸56Yに回動可能に装着され、第2レバーアーム542が固定される。第2アーム部52Bは、第2筒部52Aに固定される。第2アーム部52Bは、第2レバーアーム542の揺動に応じて第2筒部52Aを介して前後方向Xに揺動する。第2ロッド部52Cは、第2アーム部52Bの揺動に応じて前後方向Xに摺動する。第2ロッド部52Cの一方の端部は、第2アーム部52Bに連結されており、第2ロッド部52Cの他方の端部は、第4アーム部52Dに連結されている。第4アーム部52Dは、第2揺動軸52Eに固定される。第4アーム部52Dは、第2ロッド部52Cの摺動に応じて、第2揺動軸52Eを揺動軸として前後方向Xに揺動する。第2揺動軸52Eは、幅方向Yに延びる。第2揺動軸52Eの一方の端部には、第4アーム部52Dが固定されている。第2揺動軸52Eの他方の端部には、第2係合部52Fが揺動可能に連結されている。第2係合部52Fは、第2シフトフォーク52Gに係合する。第2シフトフォーク52Gは、前後方向Xに延びる第2フォークロッド52Hに挿入されており、第2フォークロッド52Hに沿ってシフト可能である。第2シフトフォーク52Gは、第2係合部52Fの揺動に応じて、前後方向Xにシフトする。
【0036】
レバー保護部59は、ステップ部6とレバーアーム54との間で、ステップ部6よりも上方へ延びる。レバー保護部59は、レバーアーム54との接触によってレバーアーム54が所定位置よりも前方へ揺動することを止める。レバー保護部59の上端部は、レバーアーム54と接触し、かつ面取りされている。実施形態では、レバー保護部59の上端部の後端は、面取りされている。レバー保護部59は、板状の部材である。レバー保護部59の高さは、レバーアーム54の高さより低くてよい。レバー保護部59の幅は、レバーアーム54の幅よりも狭くてよい。
【0037】
レバー保護部59は、第1レバー保護部591と第2レバー保護部592とを有する。第1レバー保護部591は、第1レバーアーム541との接触によって第1レバーアーム541が所定位置よりも前方へ揺動することを止める。第2レバー保護部592は、第2レバーアーム542との接触によって第2レバーアーム542が所定位置よりも前方へ揺動することを止める。第2レバー保護部592は、第1レバー保護部591から幅方向Yに間隔を空けて配置される。
【0038】
図7Bに示すように、本実施形態では、副変速レバー53の操作位置は、副変速段が低速変速段に切り替わる低速操作位置Lと、副変速段が中速変速段に切り替わる中速操作位置Mと、副変速段が高速変速段に切り替わる高速操作位置Hと、副変速段が後進変速段に切り替わる後進操作位置Rと、副変速段が中立変速段に切り替わる中立操作位置Nと、を有する。後進操作位置Rが、特許請求の範囲に記載の「所定操作位置」に対応する。
【0039】
低速操作位置Lから高速操作位置Hへの経路は、直線状である。低速操作位置Lの後方に高速操作位置Hが配置されている。中速操作位置Mから後進操作位置Rへの経路は、直線状である。なお、後進操作位置Rから中速操作位置Mへの経路は、直線状である。実施形態では、中速操作位置Mの後方に後進操作位置Rが配置されている。中速操作位置M及び後進操作位置Rは、低速操作位置L及び高速操作位置Hよりも幅方向Yの外側に配置されている。中立操作位置Nは、中速操作位置Mと後進操作位置Rとの間に位置する。中立操作位置Nを経由して、中速操作位置M及び後進操作位置Rと低速操作位置L及び高速操作位置Hとへと副変速レバー53を移動できる。上面視において、副変速レバー53の移動経路は、H状である。
【0040】
副変速レバー53の操作位置を低速操作位置Lから高速操作位置Hへ移動させるために、作業者は、副変速レバー53を後方へ移動させる。これにより、変速選択具55に係合する第1レバーアーム541が後方へ揺動する。第1レバーアーム541の揺動により、第1筒部51Aが、幅揺動軸56Yを揺動軸として回動し、第1アーム部51Bが前方へ揺動する。これにより、第1ロッド部51Cが前方へ摺動し、第3アーム部51Dが第1揺動軸51Eを揺動軸として前方へ揺動する。第3アーム部51Dの揺動によって、第1揺動軸51Eの回動と共に第1係合部51Fが前方へ揺動する。第1係合部51Fに係合する第1シフトフォーク51Gは、第1フォークロッド51Hに沿って前方へシフトし、第1副スリーブS21がシフトする。これにより、第1副スリーブS21が高速前進ギア列58Hの受動ギア58HBに噛み合い、副変速機構50の副変速段が高速変速段に切り替わる。
【0041】
また、副変速レバー53の操作位置を高速操作位置Hへ移動させるために、作業者は、副変速レバー53を、高速操作位置Hより前方の中立操作位置Nに移動させて、副変速レバー53を幅方向Yの外側(左方向L)へ向けて移動させる。これにより、変速選択具55と第1レバーアーム541との係合が外れて、変速選択具55が第2レバーアーム542に係合する。これにより、第1副スリーブS21が高速前進ギア列58Hの受動ギア58HBから離れて、副変速段が、高速変速段から中立変速段に切り替わる。
【0042】
その後、副変速レバー53を前方へ移動させることで、副変速レバー53が中立操作位置Nから中速操作位置Mに移動する。これにより、変速選択具55に係合する第2レバーアーム542が前方へ揺動する。第2レバーアーム542の揺動により、第2筒部52Aが、幅揺動軸56Yを揺動軸として回動し、第2アーム部52Bが後方へ揺動する。これにより、第2ロッド部52Cが後方へ摺動し、第4アーム部52Dが第2揺動軸52Eを揺動軸として後方へ揺動する。第4アーム部52Dの揺動によって、第2揺動軸52Eの回動と共に第2係合部52Fが後方へ揺動する。第2係合部52Fに係合する第2シフトフォーク52Gは、第2フォークロッド52Hに沿って後方へシフトし、第2副スリーブS22がシフトする。これにより、第2副スリーブS22が中速前進ギア列58Mの受動ギア58MBに噛み合い、副変速機構50の副変速段が中速変速段に切り替わる。
【0043】
作業者は、前進(中速変速段)から後進(後進変速段)へ切り替える場合、
図8に示すように、副変速レバー53を後方へ移動させる。副変速レバー53の操作位置が中速操作位置Mから後進操作位置Rへ移動する。これにより、変速選択具55に係合する第2レバーアーム542が後方へ揺動する。第2レバーアーム542の揺動により、第2筒部52Aが、幅揺動軸56Yを揺動軸として回動し、第2アーム部52Bが前方へ揺動する。これにより、第2ロッド部52Cが前方へ摺動し、第4アーム部52Dが第2揺動軸52Eを揺動軸として前方へ揺動する。第4アーム部52Dの揺動によって、第2揺動軸52Eの回動と共に第2係合部52Fが前方へ揺動する。第2係合部52Fに係合する第2シフトフォーク52Gは、第2フォークロッド52Hに沿って前方へシフトし、第2副スリーブS22がシフトする。これにより、第2副スリーブS22が後進ギア列58Rの受動ギア58RBに噛み合い、副変速機構50の副変速段が、中速変速段から後進変速段に切り替わる。これにより、作業車両1の進行方向が、前進から後進へ切り替わる。
【0044】
同様に、作業者は、後進(後進変速段)から前進(中速変速段)へ切り替える場合、副変速レバー53を前方へ移動させる。副変速レバー53の操作位置が後進操作位置Rから中速操作位置Mへ移動して、第2副スリーブS22が中速前進ギア列58Mの受動ギア58MBに噛み合い、副変速機構50の副変速段が、後進変速段から中速変速段に切り替わる。これにより、作業車両1の進行方向が、後進から前進へ切り替わる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、複数の前進変速段は、複数の前進変速段のうちで変速比が最も大きい低速変速段と、複数の前進変速段のうちで変速比が後進変速段の変速比に最も近い中速変速段と、を有する。これにより、中速変速段の変速比は、後進変速段の変速比に最も近いため、作業者は、前進と後進とを切り替える際に、中速変速段と後進変速段とを切り替えることで、他の前進変速段へ切り替える場合と比較して、前進と後進との速度差を小さくすることができる。このため、作業者が、前進と後進との速度差を低減するための煩雑な操作を省略し易くなり、前進変速段と後進変速段との切り替える際の操作性を向上できる。加えて、中速変速段の変速比は、低速変速段の変速比よりも小さいため、低速変速段よりも前進速度を速くすることができ、低速変速段で作業車両1が前進する場合と比較して作業時間を短縮できる。
【0046】
また、本実施形態では、変速装置30は、主変速機構40を備える。主変速機構40により変速比を変更することで、前進と後進との速度差を小さくしたままで、作業車両1の速度を変更することができる。これにより、作業内容に応じて作業車両1の速度を調整できるため、作業効率を向上できる。
【0047】
また、本実施形態では、後進変速段の変速比に対する中速変速段の変速比の割合は、0.8以上、かつ1.2以下であってよい。これにより、前進と後進との速度差を小さくできるため、作業者が、前進と後進との速度差を低減するための煩雑な操作を省略し易くなる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の前進変速段は、低速変速段と、中速変速段と、高速変速段と、からなる。中速変速段の変速比は、高速変速段の変速比よりも小さいため、前進速度が大きくなり過ぎず、作業者は、前進と後進とを切り替えながらの作業を安定して行うことができる。加えて、前進変速段の数を3つに絞ることで、作業者の操作を容易にできる。
【0049】
また、本実施形態では、後進操作位置から中立操作位置への経路は、直線状である。これにより、作業者は、副変速レバー53を直線状に移動させることで、副変速機構50により前進と後進とを切り替えることができ、前進変速段と後進変速段との切り替える際の操作性を向上できる。
【0050】
また、本実施形態では、レバー保護部59は、ステップ部6とレバーアーム54との間で、ステップ部6よりも上方へ延びる。作業者の足が、レバーアームに接触する前に、レバー保護部に接触するため、レバーアームを保護することができる。これにより、作業者の足がレバーアーム54に接触することによる誤操作を防止できる。加えて、レバー保護部59は、レバーアーム54との接触によってレバーアーム54が所定位置よりも前方へ揺動することを止める。これにより、レバーアーム54が前方に過度に揺動することで、副変速機構50が損傷することを抑制できる。以上より、レバー保護部59が、作業者の足の接触による誤操作の防止機能と、過度な揺動の防止機能とを有することで、部品点数を低減でき、製造コストを節約できる。
【0051】
また、本実施形態では、レバー保護部59の上端部は、レバーアーム54と接触し、かつ面取りされている。レバー保護部59は、板状の部材である。これにより、レバー保護部59の上端角部にレバーアーム54が接触する場合と比較して、レバーアーム54が損傷することを低減できる。
【0052】
また、本実施形態では、レバー保護部59は、第1レバー保護部591と、第1レバー保護部591から幅方向Yに間隔を空けて配置される第2レバー保護部592と、を有する。これにより、レバー保護部59が、第1レバーアーム541から第2レバーアーム542まで幅方向Yに延びる壁状の部材である場合と比較して、レバー保護部59のコストを低減でき、製造コストを節約できる。
【0053】
(3)その他実施形態
上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、変速装置30は、主変速機構40と副変速機構50とを備えていたが、これに限られない。変速装置30は、副変速機構50に対応して前進と後進とを切り替える1つの変速機構を備えていてもよい。また、副変速機構50において、複数の前進前速段は、4つ以上の前進前速段を有していてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態において、レバー保護部54の上端縁は、トラクタ1の側面視において円弧状に形成されてよい。これにより、レバー保護部54の上端縁が、レバーアーム54と接触する際に、角部が当たらないため、レバー保護部59の上端角部にレバーアーム54が接触する場合と比較して、レバーアーム54が損傷することを低減できる。