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特開2021-196036ガス弁及びプロパンガスの流量制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-196036(P2021-196036A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】ガス弁及びプロパンガスの流量制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/14 20060101AFI20211129BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   F16K3/14
   F16J15/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-104586(P2020-104586)
(22)【出願日】2020年6月17日
(11)【特許番号】特許第6793866号(P6793866)
(45)【特許公報発行日】2020年12月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 誠貴
(72)【発明者】
【氏名】森 向平
【テーマコード(参考)】
3H053
3J043
【Fターム(参考)】
3H053AA02
3H053AA23
3H053BA23
3H053BA35
3H053DA01
3J043AA04
3J043CA08
3J043CB20
3J043DA02
(57)【要約】
【課題】より長い寿命を有するガス弁を提供する。
【解決手段】ディスクシートリング50a,50bのリングベース部材51は、ボルト55を用いて弁ディスク44a,44bに固定されている。弁ディスク44a,44bは、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材51は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスが流れる流路が形成されている本体と、前記本体に固定されている本体シートリングとを含む弁箱と、
前記流路を開放または閉鎖し得る可動弁とを備え、
前記可動弁は、弁棒と、前記弁棒に連結されている弁ディスクと、ディスクシートリングとを含み、
前記ディスクシートリングは、ボルトを用いて前記弁ディスクに固定されているリングベース部材と、前記リングベース部材上に設けられておりかつ前記リングベース部材より高い硬度を有する材料で形成されている第1オーバーレイ層とを含み、
前記可動弁が前記流路を閉鎖する際に、前記第1オーバーレイ層は前記本体シートリングに気密に接触し、
前記弁ディスクは、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、
前記リングベース部材は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている、ガス弁。
【請求項2】
前記リングベース部材は、前記弁ディスクに溶接されている、請求項1に記載のガス弁。
【請求項3】
前記弁箱は、前記弁ディスクをガイドするガイド部材をさらに含み、
前記ガイド部材は、前記本体に溶接されているガイドベース部材と、前記ガイドベース部材上に設けられており、前記弁ディスクに対向し、かつ前記ガイドベース部材より高い硬度を有する材料で形成されている第2オーバーレイ層とを含み、
前記本体は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第3のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、
前記ガイドベース部材は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第4のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている、請求項1または請求項2に記載のガス弁。
【請求項4】
前記ガイド部材は、複数のガイド部分を含み、
前記複数のガイド部分は、各々、前記ガイドベース部材と、前記第2オーバーレイ層とを含み、
前記複数のガイド部分は、互いに隙間を空けて前記可動弁の移動方向に配列されている、請求項3に記載のガス弁。
【請求項5】
前記本体は、前記流路を規定する前記本体の内表面に溶接されている第3オーバーレイ層をさらに含み、
前記第3オーバーレイ層は、前記本体より多くのCrと前記本体より多くのNiとを含む材料で形成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガス弁。
【請求項6】
前記第3オーバーレイ層は、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている、請求項5に記載のガス弁。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記ガス弁を用いた、プロパンガスの流量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス弁及びプロパンガスの流量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロパン脱水素プラントが知られている(非特許文献1を参照)。プロパン脱水素プラントでは、プロパンガスが脱水素反応器に導入される。脱水素反応器において、プロパンガスが脱水素化されて、プロピレンガスが得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Hisham A. Maddah、「A Comparative Study between Propane Dehydrogenation (PDH) Technologies and Plants in Saudi Arabia」、American Scientific Research Journal for Engineering, Technology, and Science、2018年7月24日、Vol.45 No.1、p.49-63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロパン脱水素プラントにおいては、脱水素反応器に接続される複数の配管に流れる複数のガスの流量を制御するために、複数の配管に弁が配置される。これら配置される弁のうち、プロパンガスが流れる配管に配置される弁の寿命が特に短い。プロパン脱水素プラントを長期間にわたって連続運転することができない。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、より長い寿命を有するガス弁、及び、より長い期間にわたってプロパンガスの流量を制御することが可能なプロパンガスの流量制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のガス弁は、弁箱と、可動弁とを備える。弁箱は、500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスが流れる流路が形成されている本体と、本体に固定されている本体シートリングとを含む。可動弁は、流路を開放または閉鎖し得る。可動弁は、弁棒と、弁棒に連結されている弁ディスクと、ディスクシートリングとを含む。ディスクシートリングは、リングベース部材と、第1オーバーレイ層とを含む。リングベース部材は、ボルトを用いて弁ディスクに固定されている。第1オーバーレイ層は、リングベース部材上に設けられており、かつ、リングベース部材より高い硬度を有する材料で形成されている。可動弁が流路を閉鎖する際に、ディスクシートリングの第1オーバーレイ層は、本体シートリングに気密に接触する。弁ディスクは、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0006】
本開示のプロパンガスの流量制御方法では、本開示のガス弁が用いられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のガス弁は、より長い寿命を有する。また、本開示のプロパンガスの流量制御方法では本開示のガス弁が用いられているため、本開示のプロパンガスの流量制御方法は、より長い期間にわたってプロパンガスの流量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態のプロパン脱水素システムの概略ブロック図である。
図2】実施の形態のガス弁の概略部分拡大断面図である。
図3】実施の形態のガス弁(全閉状態)の概略部分拡大断面図である。
図4】実施の形態のガス弁(全開状態)の概略部分拡大断面図である。
図5】実施の形態のガス弁の、図3に示される領域Vの概略部分拡大断面図である。
図6】実施の形態のガス弁の、図5に示される領域VIの概略部分拡大断面図である。
図7】実施の形態のガス弁の、図2に示される断面線VII−VIIにおける概略部分拡大断面図である。
図8】実施の形態のガス弁の概略部分拡大側面図である。
図9】実施の形態のプロパンガスの流量制御方法のフローチャートを示す図である。
図10】実施例のガス弁と比較例のガス弁の、ボンネット内の圧力の経時変化を示すグラフを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
図1を参照して、実施の形態のプロパン脱水素システム1を説明する。プロパン脱水素システム1は、脱水素反応器2と、配管3,5,8,11,13,15と、ガス弁6と、弁4とを備える。
【0011】
配管3は、脱水素反応器2に接続されている。ホットエアは、配管3を通って、脱水素反応器2に流れる。ホットエアは、例えば、800℃以上1000℃以下の温度を有している。弁4は、配管3に設けられている。弁4は、配管3の流路を開放または閉鎖して、ホットエアの流量を制御する。配管5は、配管3に接続されている。プロパンガスは、配管3,5を通って、脱水素反応器2に流れる。プロパンガスは、例えば、500℃以上800℃以下の温度を有している。ガス弁6は、配管5に設けられている。ガス弁6は、配管5の流路を開放または閉鎖して、プロパンガスの流量を制御する。配管8は、配管3に接続されている。水蒸気または還元ガスのようなガスは、配管3,8を通って、脱水素反応器2に流れる。
【0012】
脱水素反応器2は、Cr23/Al23のような触媒を含む。脱水素反応器2において、脱水素反応器2に流れ込んだプロパン(C38)ガスは脱水素されて、プロピレン(C36)ガスが生成される。脱水素反応器2内では、例えば、CATOFIN(登録商標)プロセスが行われる。脱水素反応器2は、例えば、CATOFIN(登録商標)反応器である。
【0013】
配管11は、脱水素反応器2に接続されている。排出空気は、配管11を通って、脱水素反応器2から排出される。配管13は、脱水素反応器2に接続されている。プロピレンガスは、配管13を通って、脱水素反応器2から排出される。配管15は、配管11に接続されている。脱水素反応器2を真空排気する際に、脱水素反応器2内のガスが配管11,15を通って、脱水素反応器2から排出される。
【0014】
図2から図8を参照して、本実施の形態のガス弁6を説明する。ガス弁6は、弁箱20と、可動弁40と、不活性ガス供給器36と、配管37と、弁38と、圧力計39とを備える。
【0015】
弁箱20は、本体21と、本体シートリング26a,26bと、弁座33と、ボンネット35とを含む。
【0016】
本体21には、500℃以上800℃以下の温度を有するプロパンガスが流れる流路22が形成されている。具体的には、本体21の内表面は、流路22を規定する。流路22は、第1方向(x方向)に沿って延在している。プロパンガスは、第1方向(x方向)に沿って流路22を流れる。流路22の直径は、例えば、1.0m以上3.0m以下である。本体21には、筒部材21bが形成されている。筒部材21bは、例えば、第1方向(x方向)に垂直な第2方向(y方向)に延在している。筒部材21bは、可動弁40の移動方向(第2方向(y方向))に延在している。図4に示されるように、筒部材21bの空洞は、流路22に連通している。
【0017】
本体21は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。本体21を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、鋳鋼である。本体21を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、ASTM A351のグレード CF3、CF3A、CF8、CF8A、CF3M、CF3MA、CF8M、CF3MN、CF8C、CF10またはCF10Mである。
【0018】
本体21は、オーバーレイ層23を含む。オーバーレイ層23は、本体21の内表面上に設けられている。具体的には、オーバーレイ層23は、本体21の内表面に溶接されている。オーバーレイ層23は、本体21より多くのCrと本体21より多くのNiとを含む材料で形成されている。オーバーレイ層23は、例えば、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0019】
図2から図6に示されるように、弁座33は、本体21に固定されている。可動弁40が流路22を閉塞する際に、可動弁40の弁ディスク44a,44bは、弁座33に当接して、弁座33に押しつけられる。
【0020】
図2から図4に示されるように、ボンネット35は、本体21の筒部材21bに接続されている。ボンネット35は、例えば、ボルトを用いて、筒部材21bに固定されている。可動弁40が流路22を開放または閉鎖する際に、弁ディスク44a,44bは、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内を移動する。可動弁40が流路22を開放する際に、弁ディスク44a,44bの少なくとも一部は、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内に収容される。
【0021】
図3及び図4を参照して、不活性ガス供給器36は、例えば、タンク(図示せず)と、ポンプ(図示せず)とを含む。タンクは、窒素ガスのような不活性ガスを貯蔵する。ポンプは、不活性ガスを、タンクから配管37に流す。こうして、不活性ガスは、不活性ガス供給器36から、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞に供給される。筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内の不活性ガスの圧力は、流路22を流れるプロパンガスの圧力より高い。そのため、プロパンガスが、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞に侵入することが防止され得る。プロパンガスが、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞を迂回して、ガス弁6の上流側からガス弁6の下流側に流れることが防止され得る。
【0022】
弁38は、配管37に設けられている。弁38を用いて、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内の不活性ガスの圧力は調整され得る。圧力計39は、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内の不活性ガスの圧力を計測する。
【0023】
図3から図6に示されるように、本体シートリング26a,26bは、本体21に固定されている。本体シートリング26aは、第1方向(x方向)において、可動弁40に対して流路22の上流側に配置されている。本体シートリング26bは、第1方向(x方向)において、可動弁40に対して流路22の下流側に配置されている。可動弁40が流路22を閉塞する際、本体シートリング26aは弁ディスク44aのディスクシートリング50aに気密に接触し、かつ、本体シートリング26bは弁ディスク44bのディスクシートリング50bに気密に接触する。
【0024】
本体シートリング26a,26bは、治具(図示せず)を用いて、本体21から取り外すことができる。本体シートリング26a,26bは、交換可能部品である。ガス弁6の補修の際に、使用されてきた本体シートリング26a,26bは、新しい本体シートリング26a,26bに交換され得る。
【0025】
本体シートリング26bは、本体シートリング26aと同じ構成を備えている。以下、本体シートリング26aの構成を説明する。本体シートリング26aは、リングベース部材27と、オーバーレイ層28と、オーバーレイ層29とを含む。
【0026】
リングベース部材27は、本体21に固定されている。例えば、リングベース部材27は、溶接部30,31において、本体21に溶接されている。リングベース部材27は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材27を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、鍛造鋼である。リングベース部材27を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、ASTM A182のグレード F304N、F304LN、F317、F317L、F321、F321H、F347またはF347Hである。
【0027】
オーバーレイ層29は、リングベース部材27上に設けられている。オーバーレイ層29は、オーバーレイ層28を介して、リングベース部材27上に設けられてもよい。オーバーレイ層29は、リングベース部材27より高い硬度を有する材料で形成されている。オーバーレイ層29は、例えば、トリバロイ(登録商標)T−800のような、コバルト−モリブデン−クロム系合金で形成されている。可動弁40が流路22を閉鎖する際に、オーバーレイ層29は、ディスクシートリング(オーバーレイ層53)に気密に接触する。
【0028】
オーバーレイ層28は、本体21の内表面に接続されている本体シートリング26aの内表面上に設けられている。具体的には、オーバーレイ層28は、本体シートリング26aの内表面に溶接されている。オーバーレイ層28は、本体21とオーバーレイ層29との間にも設けられてもよい。オーバーレイ層28は、リングベース部材27より多くのCrとリングベース部材27より多くのNiとを含む材料で形成されている。オーバーレイ層28は、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0029】
図2から図7に示されるように、可動弁40は、流路22を開放または閉鎖し得る。可動弁40は、弁棒41と、楔部材42と、弁ディスク44a,44bと、オーバーレイ層45と、ディスクシートリング50a,50bと、突出部47a,47bとを含む。
【0030】
弁棒41は、駆動機構(図示せず)を用いて、第2方向(y方向)に移動し得る。流路22に近位する弁棒41の端部に、楔部材42が取り付けられている。楔部材42は、弁座33に近づくにつれて先細となる形状を有している。楔部材42は、一対の傾斜面を含む。弁ディスク44a,44bは、弁棒41に連結されている。可動弁40が流路22を閉塞する際に、楔部材42の一対の傾斜面は弁ディスク44a,44bに接触して、楔部材42は弁ディスク44a,44bを押圧する。弁ディスク44a,44bに取り付けられているディスクシートリング50a,50bは、本体シートリング26a,26bに気密に接触する。
【0031】
弁ディスク44a,44bは、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。弁ディスク44a,44bを形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、鋳鋼である。弁ディスク44a,44bを形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、ASTM A351のグレード CF3、CF3A、CF8、CF8A、CF3M、CF3MA、CF8M、CF3MN、CF8C、CF10またはCF10Mである。
【0032】
オーバーレイ層45は、流路22に面する弁ディスク44a,44bの表面に設けられている。オーバーレイ層45は、弁ディスク44a,44bより多くのCrと弁ディスク44a,44bより多くのNiとを含む材料で形成されている。オーバーレイ層45は、例えば、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0033】
図3から図6に示されるように、ディスクシートリング50a,50bは、弁ディスク44a,44bに固定されている。ディスクシートリング50aは、第1方向(x方向)において、弁ディスク44a,44bに対して流路22の上流側に配置されている。ディスクシートリング50bは、第1方向(x方向)において、弁ディスク44a,44bに対して流路22の下流側に配置されている。可動弁40が流路22を閉塞する際、ディスクシートリング50aは本体シートリング26aに気密に接触し、かつ、ディスクシートリング50bは本体シートリング26bに気密に接触する。
【0034】
ディスクシートリング50a,50bは、治具(図示せず)を用いて、弁ディスク44a,44bから取り外すことができる。ディスクシートリング50a,50bは、交換可能部品である。ガス弁6の補修の際に、使用されてきたディスクシートリング50a,50bは、新しいディスクシートリング50a,50bに交換され得る。
【0035】
ディスクシートリング50bは、ディスクシートリング50aと同じ構成を備えている。以下、ディスクシートリング50aの構成を説明する。ディスクシートリング50aは、リングベース部材51と、オーバーレイ層53とを含む。ディスクシートリング50aは、オーバーレイ層52をさらに含んでもよい。
【0036】
リングベース部材51は、弁ディスク44aに固定されている。例えば、弁ディスク44aとリングベース部材51とにねじ穴46が形成されており、リングベース部材51は、ねじ穴46に螺合されるボルト55を用いて弁ディスク44aに固定されている。リングベース部材51は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材51を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、鍛造鋼である。リングベース部材51を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、ASTM A182のグレード F304N、F304LN、F317、F317L、F321、F321H、F347またはF347Hである。リングベース部材51は、さらに、溶接部57,58において、弁ディスク44aに溶接されてもよい。
【0037】
オーバーレイ層53は、リングベース部材51上に設けられている。オーバーレイ層53は、オーバーレイ層52を介して、リングベース部材51上に設けられてもよい。オーバーレイ層53は、リングベース部材51より高い硬度を有する材料で形成されている。オーバーレイ層53は、例えば、トリバロイ(登録商標)T−800のような、コバルト−モリブデン−クロム系合金で形成されている。可動弁40が流路22を閉鎖する際に、オーバーレイ層53は、本体シートリング26a(オーバーレイ層29)に気密に接触する。
【0038】
オーバーレイ層52は、リングベース部材51とオーバーレイ層53との間に設けられている。オーバーレイ層52は、リングベース部材51より多くのCrとリングベース部材51より多くのNiとを含む材料で形成されている。オーバーレイ層52は、例えば、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0039】
図7に示されるように、突出部47aは、弁ディスク44aに設けられている。突出部47bは、弁ディスク44bに設けられている。突出部47aは、ガイド部材70aに摺動可能である。突出部47bは、ガイド部材70bに摺動可能である。突出部47bは、突出部47aと同じ構成を有している。以下、突出部47aの構成を説明する。
【0040】
突出部47aは、弁ディスク44aから、第1方向(x方向)及び第2方向(y方向)に垂直な第3方向(z方向)に突出している。突出部47aは、突出ベース60と、ブロック61と、オーバーレイ層62とを含む。
【0041】
突出ベース60は、例えば、弁ディスク44aと同じ材料で形成されている。突出ベース60は、例えば、弁ディスク44aと一体に形成されている。
【0042】
ブロック61は、突出ベース60に固定されている。具体的には、突出ベース60とブロック61とにねじ穴63が形成されており、ブロック61は、ねじ穴63に螺合されるボルト64を用いて突出ベース60に固定されている。ブロック61は、突出ベース60(弁ディスク44a)から取り外すことができる。ブロック61は、交換可能部品である。ガス弁6の補修の際に、使用されてきたブロック61は、新しいブロック61に交換され得る。
【0043】
ブロック61は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ブロック61を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、鍛造鋼である。ブロック61を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、ASTM A182のグレード F304N、F304LN、F317、F317L、F321、F321H、F347またはF347Hである。
【0044】
オーバーレイ層62は、ブロック61上に設けられている。オーバーレイ層62は、ブロック61及び弁ディスク44aより高い硬度を有する材料で形成されている。オーバーレイ層62は、例えば、トリバロイ(登録商標)T−800のような、コバルト−モリブデン−クロム系合金で形成されている。オーバーレイ層62は、ガイド部材70aに接触している。
【0045】
図2から図4図7及び図8を参照して、弁箱20は、ガイド部材70a,70bをさらに含む。ガイド部材70a,70bは、弁ディスク44a,44bをガイドする。具体的には、可動弁40が第2方向(y方向)に移動する際、可動弁40の突出部47a,47bがガイド部材70a,70bに摺動して、弁ディスク44a,44bは、ガイド部材70a,70bによってガイドされる。ガイド部材70aは、可動弁40の突出部47aに対向している。ガイド部材70bは、可動弁40の突出部47bに対向している。ガイド部材70a,70bの各々の一方端は、流路22に延在している。ガイド部材70a,70bの各々の他方端は、本体21の筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内まで延在している。
【0046】
ガイド部材70a,70bは、本体21に固定されている。ガイド部材70a,70bは、治具(図示せず)を用いて、本体21から取り外すことができる。ガイド部材70a,70bは、交換可能部品である。ガス弁6の補修の際に、使用されてきたガイド部材70a,70bは、新しいガイド部材70a,70bに交換され得る。
【0047】
ガイド部材70bは、ガイド部材70aと同じ構成を有している。以下、ガイド部材70aの構成を説明する。ガイド部材70aは、ガイドベース部材72と、オーバーレイ層73とを含む。
【0048】
ガイドベース部材72は、本体21に固定されている。例えば、ガイドベース部材72は、溶接部74において、本体21に溶接されている。ガイドベース部材72は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ガイドベース部材72を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、鍛造鋼である。ガイドベース部材72を形成するオーステナイト系ステンレス鋼は、例えば、ASTM A182のグレード F304N、F304LN、F317、F317L、F321、F321H、F347またはF347Hである。
【0049】
オーバーレイ層73は、ガイドベース部材72上に設けられている。ガイド部材70aのオーバーレイ層73は、突出部47aのオーバーレイ層62に対向している。オーバーレイ層73は、ガイドベース部材72より高い硬度を有する材料で形成されている。オーバーレイ層73は、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。オーバーレイ層73は、例えば、トリバロイ(登録商標)T−800のような、コバルト−モリブデン−クロム系合金で形成されている。ガイド部材70aのオーバーレイ層29は、突出部47aのオーバーレイ層62に接触する。
【0050】
ガイド部材70a,70bは、各々、複数のガイド部分71を含む。複数のガイド部分71は、各々、ガイドベース部材72と、オーバーレイ層73とを含む。複数のガイド部分71は、互いに隙間を空けて可動弁40の移動方向である第2方向(y方向)に配列されている。溶接部74は、複数の溶接部分75を含む。複数のガイド部分71は、対応する溶接部分75において、本体21に溶接されている。複数の溶接部分75は、互いに離間されている。
【0051】
図9を参照して、ガス弁6を用いた本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法を説明する。
【0052】
本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法は、ガス弁6の弁箱20の本体21に形成されている流路22に、500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスを流すこと(S1)を備える。具体的には、配管5(図1を参照)に、500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスを流す。500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスが、ガス弁6の弁箱20の本体21に形成されている流路22を流れる。本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法は、ガス弁6の可動弁40を動かして、流路22を開放または閉鎖すること(S2)を備える。可動弁40(弁ディスク44a,44b)が流路22を開放または閉鎖することによって、プロパンガスの流量が制御され得る。
【0053】
図10を参照して、本実施の形態の一例である実施例のガス弁6と比較例のガス弁と対比しながら、本実施の形態のガス弁6の作用を説明する。
【0054】
実施例のガス弁6では、本体21、ボンネット35及び弁ディスク44a,44bが、ASTM 351のグレード CF8Cのオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ASTM 351のグレード CF8Cのオーステナイト系ステンレス鋼は、18.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、9.0質量%以上12.0質量%以下のNiとを含む。実施例のガス弁6では、本体シートリング26a,26b、ディスクシートリング50a,50b、ブロック61及びガイドベース部材72が、ASTM A182のグレード F321Hのオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ASTM A182のグレード F321Hのオーステナイト系ステンレス鋼は、17.0質量%以上19.0質量%以下のCrと、9.5質量%以上12.0質量%以下のNiとを含む。
【0055】
比較例のガス弁は、本実施の形態のガス弁6と同様の構成を備えているが、以下の点で異なる。比較例のガス弁では、本体21、ボンネット35及び弁ディスク44a,44bが、ASTM 217のグレード C5の低合金鋼で形成されている。ASTM 217のグレード C5の低合金鋼は、4.0質量%以上6.5質量%以下のCrと、0.5質量%以下のNiとを含む。比較例のガス弁では、本体シートリング26a,26b、ディスクシートリング50a,50b、ブロック61及びガイドベース部材72が、ASTM A182のグレード F5aの低合金鋼で形成されている。ASTM A182のグレード F5aの低合金鋼は、4.0質量%以上6.0質量%以下のCrと、0.50質量%以下のNiとを含む。
【0056】
図10に示されるように、実施例のガス弁6は、比較例のガス弁よりも、長い寿命を有している。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁よりも、長い期間にわたって、2.0barより高いボンネット圧力を有している。ボンネット圧力は、本体21の筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞内の不活性ガスの圧力である。ボンネット圧力は、圧力計39を用いて測定される。
【0057】
具体的には、比較例のガス弁におけるボンネット圧力は、比較例のガス弁の使用開始から約28月後までの間は2.0barより高いが、比較例のガス弁の使用開始から約34月後に急落している。これは、比較例のガス弁の使用開始から約28月後の時点と比較例のガス弁の使用開始から約34月後の時点との間に、比較例のガス弁から不活性ガスが漏れ出していることを意味する。比較例のガス弁は、遅くとも比較例のガス弁の使用開始から約34月後までの間に交換する必要がある。これに対し、実施例のガス弁6は、実施例のガス弁6の使用開始から38月経過後もなお、2.0barより高いボンネット圧力を有している。実施例のガス弁6は、少なくとも38月以上の間、新しいガス弁6に交換することなく、使用し続けることができる。
【0058】
本発明者は、実施例のガス弁6と比較例のガス弁とを分析した。その結果、本発明者は、比較例のガス弁にコーキングが発生していたために、比較例のガス弁の寿命が短くなっていることを発見した。コーキングは、炭化水素の熱分解により炭素が生成して、金属の表面に析出し、堆積する現象である。本発明者は、プロパン脱水素反応器に接続されておりかつプロパンガスが流れる配管に設けられるガス弁にコーキングが発生し、このコーキングが弁内部の部材の損傷に影響していることを初めて見出した。
【0059】
具体的には、コーキングは、主に、ねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)、本体21とガイド部材70a,70bとの間のすき間、並びに、本体21とオーバーレイ層23との間のすき間に発生した。
【0060】
ねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)に発生するコーキングのため、ボルト55が緩む、あるいは、ボルト55が脱落する。ディスクシートリング50a,50bは、本体シートリング26a,26bに対して傾く。ディスクシートリング50a,50bと本体シートリング26a,26bとの間にすき間が発生する。不活性ガスは、このすき間を通って、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞から漏れ出す。
【0061】
比較例のガス弁の使用開始時には、本体21とガイド部材70a,70b(ガイドベース部材72)との間にすき間はない。しかし、比較例のガス弁を使用している間に、本体21とガイド部材70a,70b(ガイドベース部材72)とに繰り返し熱応力が印加される。そのため、比較例のガス弁を使用している間に、本体21とガイド部材70a,70b(ガイドベース部材72)との間にある溶接部74に、亀裂のようなすき間が発生する。このすき間にコーキングが発生する。このコーキングのため、ガイド部材70a,70bは、本体21に対して傾く、あるいは、本体21から脱落する。ガイド部材70a,70bは、弁ディスク44a,44bをガイドする。弁ディスク44a,44bに固定されているディスクシートリング50a,50bは、本体シートリング26a,26bに対して傾く。ディスクシートリング50a,50bと本体シートリング26a,26bとの間にすき間が発生する。不活性ガスは、このすき間を通って、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞から漏れ出す。
【0062】
比較例のガス弁の使用開始時には、本体21とオーバーレイ層23との間にすき間はない。しかし、比較例のガス弁を使用している間に、本体21とオーバーレイ層23とに繰り返し熱応力が印加される。そのため、比較例のガス弁を使用している間に、本体21とオーバーレイ層23との間の溶接部に、亀裂のようなすき間が発生する。これらのすき間にコーキングが発生する。コーキングのため、溶接部30,31に割れが発生して、コーキングのため、本体21と本体シートリング26a,26bとが歪む。本体シートリング26a,26bが、ディスクシートリング50a,50bに対して傾く。ディスクシートリング50a,50bと本体シートリング26a,26bとの間にすき間が発生する。不活性ガスは、このすき間を通って、筒部材21bとボンネット35とによって形成される内部空洞から漏れ出す。
【0063】
実施例では、弁ディスク44a,44bは、17.0質量%以上のCrと、8.0質量%以上のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材51は、17.0質量%以上のCrと、8.0質量%以上のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。実施例の弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51は、比較例の弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51より、多くの割合のCrを含む。そのため、ねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。また、実施例の弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51は、比較例の弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51より、多くの割合のNiを含む。そのため、弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51のCr含有量を増加させても、弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51を形成するステンレス鋼のオーステナイト組織を安定化させることができる。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁より長い寿命を有する。
【0064】
流路22を流れる炭化水素ガスがプロパンガスである場合に、ねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)に単位時間当たりに発生するコーキングの量は少ない。そのため、弁ディスク44a,44bが、21.0質量%以下のCrを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、かつ、リングベース部材51が、20.0質量%以下のCrを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されていても、ねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。また、弁ディスク44a,44bを形成するステンレス鋼のCrの含有量は21.0質量%以下であり、リングベース部材51を形成するステンレス鋼のCrの20.0質量%以下であるため、弁ディスク44a,44bを形成するステンレス鋼のNiの含有量が13.0質量%以下であり、リングベース部材51を形成するステンレス鋼のNiの含有量が15.0質量%以下であっても、弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51を形成するステンレス鋼のオーステナイト組織を安定化させることができる。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁より長い寿命を有する。
【0065】
また、弁ディスク44a,44bが、21.0質量%以下のCrと、13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、かつ、リングベース部材51が、20.0質量%以下のCrと、15.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているため、弁ディスク44a,44b及びリングベース部材51のコストが低減される。弁ディスク44a,44bが、21.0質量%以下のCrと、13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているため、弁ディスク44a,44bは、鋳造によって製造され得る。
【0066】
実施例では、本体21は、17.0質量%以上のCrと、8.0質量%以上のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ガイドベース部材72は、17.0質量%以上のCrと、8.0質量%以上のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。実施例の本体21及びガイドベース部材72は、比較例の本体21及びガイドベース部材72より、多くの割合のCrと多くの割合のNiとを含む。そのため、本体21とガイド部材70a,70bとの間のすき間(例えば、本体21とガイドベース部材72との間の溶接部74の亀裂)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。また、実施例の本体21及びガイドベース部材72は、比較例の本体21及びガイドベース部材72より、多くの割合のNiを含む。そのため、本体21及びガイドベース部材72のCr含有量を増加させても、本体21及びガイドベース部材72を形成するステンレス鋼のオーステナイト組織を安定化させることができる。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁より長い寿命を有する。
【0067】
流路22を流れる炭化水素ガスがプロパンガスである場合に、本体21とガイド部材70a,70bとの間のすき間(例えば、本体21とガイドベース部材72との間の溶接部74の亀裂)に単位時間当たりに発生するコーキングの量は少ない。そのため、本体21が、21.0質量%以下のCrを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、かつ、ガイドベース部材72が、20.0質量%以下のCrを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されていても、本体21とガイド部材70a,70bとの間のすき間(例えば、本体21とガイドベース部材72との間の溶接部74の亀裂)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。また、本体21を形成するステンレス鋼のCrの含有量は21.0質量%以下であり、ガイドベース部材72を形成するステンレス鋼のCrの20.0質量%以下であるため、本体21を形成するステンレス鋼のNiの含有量が13.0質量%以下であり、ガイドベース部材72を形成するステンレス鋼のNiの含有量が15.0質量%以下であっても、本体21及びガイドベース部材72を形成するステンレス鋼のオーステナイト組織を安定化させることができる。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁より長い寿命を有する。
【0068】
また、本体21が、21.0質量%以下のCrと、13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されており、かつ、ガイドベース部材72が、20.0質量%以下のCrと、15.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているため、本体21及びガイドベース部材72のコストが低減される。本体21が21.0質量%以下のCrと、13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているため、本体21は、鋳造によって製造され得る。
【0069】
実施例では、本体21は、17.0質量%以上のCrと、8.0質量%以上のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。オーバーレイ層23は、本体21より多くのCrと本体21より多くのNiとを含む材料で形成されている。実施例の本体21及びオーバーレイ層23は、比較例の本体21及びオーバーレイ層23より、多くの割合のCrと多くの割合のNiとを含む。そのため、本体21とオーバーレイ層23との間のすき間(例えば、本体21とオーバーレイ層23との間の溶接部の亀裂)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。また、実施例の本体21及びオーバーレイ層23は、比較例の本体21及びオーバーレイ層23より、多くの割合のNiを含む。そのため、本体21及びオーバーレイ層23のCr含有量を増加させても、本体21及びオーバーレイ層23を形成するステンレス鋼のオーステナイト組織を安定化させることができる。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁より長い寿命を有する。
【0070】
流路22を流れる炭化水素ガスがプロパンガスである場合に、比較例のガス弁の本体21とオーバーレイ層23との間のすき間(例えば、本体21とオーバーレイ層23との間の溶接部の亀裂)に単位時間当たりに発生するコーキングの量は少ない。そのため、本体21が、21.0質量%以下のCrを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されていても、本体21とオーバーレイ層23との間のすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。また、本体21を形成するステンレス鋼のCrの含有量は21.0質量%以下であるため、本体21を形成するステンレス鋼のNiの含有量が13.0質量%以下であっても、本体21を形成するステンレス鋼のオーステナイト組織を安定化させることができる。実施例のガス弁6は、比較例のガス弁より長い寿命を有する。
【0071】
また、本体21が、21.0質量%以下のCrと、13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているため、本体21のコストが低減される。本体21が、21.0質量%以下のCrと、13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されているため、本体21は、鋳造によって製造され得る。
【0072】
本実施の形態のガス弁6及びプロパンガスの流量制御方法の効果を説明する。
本実施の形態のガス弁6は、弁箱20と、可動弁40とを備える。弁箱20は、500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスが流れる流路22が形成されている本体21と、本体21に固定されている本体シートリング26a,26bとを含む。可動弁40は、流路22を開放または閉鎖し得る。可動弁40は、弁棒41と、弁棒41に連結されている弁ディスク44a,44bと、ディスクシートリング50a,50bとを含む。ディスクシートリング50a,50bは、リングベース部材51と、第1オーバーレイ層(オーバーレイ層53)とを含む。リングベース部材51は、ボルト55を用いて弁ディスク44a,44bに固定されている。第1オーバーレイ層(オーバーレイ層53)は、リングベース部材51上に設けられており、かつ、リングベース部材51より高い硬度を有する材料で形成されている。可動弁40が流路22を閉鎖する際に、第1オーバーレイ層(オーバーレイ層53)は、本体シートリング26a,26bに気密に接触する。弁ディスク44a,44bは、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材51は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0073】
そのため、ボルト55が挿入されるねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。本実施の形態のガス弁6は、より長い寿命を有する。弁ディスク44a,44bは、安価かつ製造が容易な鋳造で形成され得る。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0074】
本実施の形態のガス弁6では、第1のオーステナイト系ステンレス鋼は、鋳鋼である。第2のオーステナイト系ステンレス鋼は、鍛造鋼である。そのため、本実施の形態のガス弁6は、より長い寿命を有する。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0075】
本実施の形態のガス弁6では、リングベース部材51は、弁ディスク44a,44bに溶接されている。リングベース部材51は、より強固に弁ディスク44a,44bに固定される。ガス弁6の使用中に、リングベース部材51が、弁ディスク44a,44bに対して傾きにくくなるとともに、弁ディスク44a,44bから脱落し難くなる。ガス弁6は、より長い寿命を有する。
【0076】
本実施の形態のガス弁6では、弁箱20は、弁ディスク44a,44bをガイドするガイド部材70a,70bをさらに含む。ガイド部材70a,70bは、ガイドベース部材72と、第2オーバーレイ層(オーバーレイ層73)とを含む。ガイドベース部材72は、本体21に溶接されている。第2オーバーレイ層(オーバーレイ層73)は、ガイドベース部材72上に設けられており、弁ディスク44a,44bに対向し、かつ、ガイドベース部材72より高い硬度を有する材料で形成されている。本体21は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第3のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ガイドベース部材72は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第4のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0077】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21とガイド部材70a,70bとの間にすき間(例えば、本体21とガイドベース部材72との間の溶接部74の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。ガス弁6は、より長い寿命を有する。本体21は、安価かつ製造が容易な鋳造で形成され得る。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0078】
本実施の形態のガス弁6では、第3のオーステナイト系ステンレス鋼は、鋳鋼である。第4のオーステナイト系ステンレス鋼は、鍛造鋼である。そのため、ガス弁6は、より長い寿命を有する。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0079】
本実施の形態のガス弁6では、ガイド部材70a,70bは、複数のガイド部分71を含む。複数のガイド部分71は、各々、ガイドベース部材72と、第2オーバーレイ層(オーバーレイ層73)とを含む。複数のガイド部分71は、互いに隙間を空けて可動弁40の移動方向に配列されている。
【0080】
そのため、ガス弁6の使用中に、本体21とガイド部材70a,70b(ガイドベース部材72)とに繰り返し熱応力が印加されても、本体21とガイド部材70a,70b(ガイドベース部材72)との間に溶接部に印加される応力歪が低減され得る。ガイド部材70a,70b(ガイドベース部材72)は、本体21に対して傾きにくくなるとともに、本体21から脱落し難くなる。より長い期間にわたって、ガイド部材70a,70bは、弁ディスク44a,44bをガイドし得る。ガス弁6は、より長い寿命を有する。
【0081】
本実施の形態のガス弁6では、本体21は、流路22を規定する本体21の内表面に溶接されている第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)を含む。第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)は、本体21より多くのCrと本体21より多くのNiとを含む材料で形成されている。
【0082】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21と第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)との間にすき間(例えば、本体21と第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)との間の溶接部の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。ガス弁6は、より長い寿命を有する。本体21は、安価かつ製造が容易な鋳造で形成され得る。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0083】
本実施の形態のガス弁6では、第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)は、24.0質量%以上26.0質量%以下のCrと、19.0質量%以上22.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0084】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21と第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)との間にすき間(例えば、本体21と第3オーバーレイ層(オーバーレイ層23)との間の溶接部の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。ガス弁6は、より長い寿命を有する。
【0085】
本実施の形態のガス弁6は、弁箱20と、可動弁40とを備える。弁箱20は、500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスが流れる流路22が形成されている本体21と、ガイド部材70a,70bとを含む。可動弁40は、流路22を開放または閉鎖し得る。可動弁40は、弁棒41と、弁棒41に連結されている弁ディスク44a,44bとを含む。ガイド部材70a,70bは、弁ディスク44a,44bをガイドする。ガイド部材70a,70bは、ガイドベース部材72と、オーバーレイ層73とを含む。ガイドベース部材72は、本体21に溶接されている。オーバーレイ層73は、ガイドベース部材72上に設けられており、弁ディスク44a,44bに対向し、かつ、ガイドベース部材72より高い硬度を有する材料で形成されている。本体21は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ガイドベース部材72は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0086】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21とガイド部材70a,70bとの間にすき間(例えば、本体21とガイドベース部材72との間の溶接部74の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。ガス弁6は、より長い寿命を有する。本体21は、安価かつ製造が容易な鋳造で形成され得る。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0087】
本実施の形態のガス弁6は、弁箱20と、可動弁40とを備える。弁箱20は、500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスが流れる流路22が形成されている本体21と、本体21に固定されている本体シートリング26a,26bとを含む。可動弁40は、流路22を開放または閉鎖し得る。本体21は、流路22を規定する本体21の内表面に溶接されているオーバーレイ層23を含む。可動弁40は、弁棒41と、弁棒41に連結されている弁ディスク44a,44bと、弁ディスク44a,44bに固定されているディスクシートリング50a,50bとを含む。可動弁40が流路22を閉鎖する際に、ディスクシートリング50a,50bは本体シートリング26a,26bに気密に接触する。本体21は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。オーバーレイ層23は、本体21より多くのCrと本体21より多くのNiとを含む材料で形成されている。
【0088】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21とオーバーレイ層23との間にすき間(例えば、本体21とオーバーレイ層23との間の溶接部の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。ガス弁6は、より長い寿命を有する。本体21は、安価かつ製造が容易な鋳造で形成され得る。ガス弁6は、安価かつ高い生産性で生産され得る。
【0089】
本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法では、本実施の形態のガス弁6が用いられている。そのため、より長い期間にわたってプロパンガスの流量を制御することができる。
【0090】
本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法は、ガス弁6の弁箱20の本体21に形成されている流路22に500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスを流すこと(S1)と、ガス弁6の可動弁40を動かして、流路22を開放または閉鎖すること(S2)とを備える。弁箱20は、本体21と、本体21に固定されている本体シートリング26a,26bとを含む。可動弁40は、弁棒41と、弁棒41に連結されている弁ディスク44a,44bと、ディスクシートリング50a,50bとを含む。ディスクシートリング50a,50bは、リングベース部材51と、オーバーレイ層53とを含む。リングベース部材51は、ボルト55を用いて弁ディスク44a,44bに固定されている。オーバーレイ層53は、リングベース部材51上に設けられており、かつ、リングベース部材51より高い硬度を有する材料で形成されている。可動弁40が流路22を閉鎖する際に、オーバーレイ層53は、本体シートリング26a,26bに気密に接触する。弁ディスク44a,44bは、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。リングベース部材51は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0091】
そのため、ボルト55が挿入されるねじ穴46の中(ボルト55と弁ディスク44a,44bとの間のすき間、及び、ボルト55とリングベース部材51との間のすき間)に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法によれば、より長い期間にわたってプロパンガスの流量を制御することができる。
【0092】
本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法は、ガス弁6の弁箱20の本体21に形成されている流路22に500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスを流すこと(S1)と、ガス弁6の可動弁40を動かして、流路22を開放または閉鎖すること(S2)とを備える。弁箱20は、本体21と、ガイド部材70a,70bとを含む。可動弁40は、弁棒41と、弁棒41に連結されている弁ディスク44a,44bとを含む。ガイド部材70a,70bは、弁ディスク44a,44bをガイドする。ガイド部材70a,70bは、ガイドベース部材72と、オーバーレイ層73とを含む。ガイドベース部材72は、本体21に溶接されている。オーバーレイ層73は、ガイドベース部材72上に設けられており、弁ディスク44a,44bに対向し、かつ、ガイドベース部材72より高い硬度を有する材料で形成されている。本体21は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含む第1のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。ガイドベース部材72は、17.0質量%以上20.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上15.0質量%以下のNiとを含む第2のオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。
【0093】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21とガイド部材70a,70bとの間にすき間(例えば、本体21とガイドベース部材72との間の溶接部74の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法によれば、より長い期間にわたってプロパンガスの流量を制御することができる。
【0094】
本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法は、ガス弁6の弁箱20の本体21に形成されている流路22に500℃以上の800℃以下の温度を有するプロパンガスを流すこと(S1)と、ガス弁6の可動弁40を動かして、流路22を開放または閉鎖すること(S2)とを備える。弁箱20は、本体21と、本体21に固定されている本体シートリング26a,26bとを含む。本体21は、流路22を規定する本体21の内表面に溶接されているオーバーレイ層23を含む。可動弁40は、弁棒41と、弁棒41に連結されている弁ディスク44a,44bと、弁ディスク44a,44bに固定されているディスクシートリング50a,50bとを含む。可動弁40が流路22を閉鎖する際に、ディスクシートリング50a,50bは本体シートリング26a,26bに気密に接触する。本体21は、17.0質量%以上21.0質量%以下のCrと、8.0質量%以上13.0質量%以下のNiとを含むオーステナイト系ステンレス鋼で形成されている。オーバーレイ層23は、本体21より多くのCrと本体21より多くのNiとを含む材料で形成されている。
【0095】
そのため、ガス弁6の使用中に本体21と第1オーバーレイ層(オーバーレイ層23)との間にすき間(例えば、本体21と第1オーバーレイ層(オーバーレイ層23)との間の溶接部の亀裂)が発生しても、このすき間に発生するコーキングを無くすまたは大幅に減少させることができる。本実施の形態のプロパンガスの流量制御方法によれば、より長い期間にわたってプロパンガスの流量を制御することができる。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 脱水素システム、2 脱水素反応器、3,5,8,11,13,15 配管、4 弁、6 ガス弁、20 弁箱、21 本体、21b 筒部材、22 流路、23 オーバーレイ層、26a,26b 本体シートリング、27 リングベース部材、28,29 オーバーレイ層、30,31,57,58,74 溶接部、33 弁座、35 ボンネット、36 不活性ガス供給器、37 配管、38 弁、39 圧力計、40 可動弁、41 弁棒、42 楔部材、44a,44b 弁ディスク、45 オーバーレイ層、46 ねじ穴、47a,47b 突出部、50a,50b ディスクシートリング、51 リングベース部材、52,53 オーバーレイ層、55 ボルト、60 突出ベース、61 ブロック、62 オーバーレイ層、63 ねじ穴、64 ボルト、70a,70b ガイド部材、71 ガイド部分、72 ガイドベース部材、73 オーバーレイ層、75 溶接部分。
図1
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図10