【実施例】
【0072】
<実施例1> 物理的刺激による細胞内への環境流入の証明実験
この実施例は、物理的刺激による細胞内への環境流入に対する証明実験であり、このために、細胞はinvitrogenから購入したプライマリー(初代)HDF細胞を10%FBS(Gibco)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が添加されたDMEMにおいて培養し、培養液に対する超音波処理は、5W/cm
2で10分間行い、細胞処理は、1x10
6細胞に1W/cm
2で5秒間処理した後、処理された培養液とともに35mmの培養ディッシュに2x10
5細胞を培養した。
【0073】
SEM画像の分析のために、何らの処理もされていないHDF細胞と、前記のようにして処理された直後と、37℃、5%CO
2インキュベーターにおいて2時間培養した細胞を4℃において4%パラホルムアルデヒドで12時間固定した後、0.1%タンニン酸溶液に1時間、1%四酸化オスミウム溶液において2時間処理した後、濃度段階ごとにアセトンで脱水させた後、液体CO
2で細胞を乾燥させ、金−パラジウムでコーティングされた表面に固定して電子顕微鏡(1555VP−FESEM、CarlZeiss)で細胞を観察した。
【0074】
Live/dead画像分析のために、細胞は、何らの処理もされていないHDFと、超音波処理直後と、37℃、5%CO
2インキュベーターにおいて2時間培養した細胞にLive/dead viability/cvtotoxicity assay kit(Molecular Probes、Eugene、OR、USA)を用いて染色した。染色過程は、生きている細胞に2μMカルセイン(live cell staining dye)および4μMエチジウムホモダイマー−l(EthD−l、dead cell staining dye)を細胞培養液に添加した後、37℃、5%CO
2インキュベーターにおいて30分間培養した後、蛍光顕微鏡(IX3−ZDC、Olympus)で赤色(EthD−1染色、死ぬかまたは損傷された細胞、excitation/emission、528/617nm)と緑色蛍光(カルセイン染色、生きている細胞、excitation/emission、494/517nm)を分析した。
【0075】
図2aに示されたように、超音波により細胞膜が損傷されて外部環境が流入し得る孔が形成され、このような損傷は、2時間後に修復された。
【0076】
また、超音波刺激を与えた後、損傷された細胞および細胞の修復を確認するために、細胞死滅を分析するのに用いられるLive/dead kitを用いて細胞を染色した。
【0077】
図2bから明らかなように、超音波を細胞に処理した後、処理直後に染色し、2時間が経過した後に染色した結果、処理直後に緑色蛍光と赤色蛍光が共存する細胞が観察され、2時間後に赤色蛍光を示す細胞の数が格段に減って、
図2aに示されたように、細胞膜が修復されることによって赤色蛍光が減ることが分かった。
【0078】
これは、超音波刺激によって細胞損傷が起きるとはいえ、修復可能であり、このように刺激による細胞膜損傷によって培地環境の流入が可能であるものと考え、細胞内物質の流入により現れる現象を分析した。
【0079】
一方、
図2において、usMC(ultrasound−exposed medium and cells)は、細胞および培養培地のそれぞれに超音波を処理した場合をいい、usMC−Sは、浮遊培養されたusMCを意味する。
【0080】
<実施例2> 物理的刺激による細胞内への外部物質の流入に対する証明実験
細胞内への外部物質の流入に敏感な細胞内カルシウム濃度の変化を測定し、超音波によるATPの発生に伴う物質の流入可能性を確認するために、細胞内ATP測定とATP反応により細胞膜内受容体が細胞膜外部物質の流入通路を開放すると知られているATP受容体の発現をRT−PCRで分析した。
【0081】
カルシウム濃度分析は、Fluo−4 NW Calsium Assay Kit(Molecular Probes)を用いて行った。何らの処理もされていないHDF細胞と、超音波(lW/cm
2、5秒)で直接処理された後、超音波処理された培地(5W/cm
2、10分)に露出された細胞(usMC−S)をそれぞれキット内構成品のうち分析バッファーと混ぜ、96−ウェルプレートのウェル当たりに3xl0
4細胞を分注した後、ウェル当たりに50μlのFluo−4NW試薬と混ぜた後、Varioskan Flash Fluorescent Microplate Fluorometer(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)で励起波長494nm/放出波長516nmの範囲の蛍光を10秒おきに15分間測定した。
【0082】
ATPは、アデノシン5’−三リン酸(ATP)Bioluminescent assay kitを用いて測定した。細胞は、何らの処理もされていない細胞と、超音波(1W/cm
2、5秒)で直接処理された後、超音波処理された培地(5W/cm
2、10分)に露出された細胞(usMC−S)を96−ウェルプレートのウェル当たりに3xl0
4細胞を分注した後、ウェル当たりに100μlのATP分析ミックスとATP標準物質を分注して室温において3分間培養した後、Varioskan Flash Fluorescent Microplate Fluorometer(Thermo Fisher Scientific)で発光強度を測定した。
【0083】
ATP受容体発現の分析のためのRT−PCRは、処理された細胞をRNeasy plus mini kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いてRNAを抽出し、SuperScripII kit(Invitrogen、Carlsbad CA、USA)でcDNAを合成した。PCRは、PCRプレミックス(Bioneer、Daejeon、Korea)にcDNAとプライマーを混ぜた後、Thermal cycler dice PCR machine(TP600、TAKARA、Otsu、Japan)を用いて95℃5分変性、95℃で30秒、gradient(50−65℃)30秒および72℃で1分を35サイクル、および72℃で15分の条件で行われた。
【0084】
【表1】
【0085】
図3に示されたように、超音波刺激を与えた後、細胞内へのカルシウムの流入が60秒まで増加し、60分で細胞内のATP濃度が最大に増加し、細胞膜内ATP受容体もまた、1時間および4時間で発現が増加した。このことは、超音波刺激により初期に細胞内に外部物質が流入することがカルシウムの濃度増加により確認され、超音波によりATPが発生し、これにより、ATP受容体が反応して細胞膜通路が開放されて外部物質の流入が可能であることが分かった。
【0086】
<実施例3> QD605を用いた物理的刺激による細胞内への外部物質の流入に対する証明実験
QD605を外部物質とし、QD605が超音波により細胞内に流入するか否かを確認した。QD605は、蛍光を帯びるナノ物質であり、生きている細胞における浸透性に劣ることが知られているため、QD605を用いた超音波による細胞内への外部物質の流入を確認した。
【0087】
このために、HDFに実施例1の方法と同様にして超音波刺激を与えた後、QD605 l00pmolを処理し、24時間後に単一細胞とスフェロイド内のQD605の存在を確認した。
【0088】
図4に示されたように、超音波刺激を受けなかったHDFからは蛍光が認められなかった。しかしながら、超音波刺激を受けたHDFからは蛍光が観察された。
【0089】
また、外部物質の流入に伴う細胞変化に対する可能性を確認するために、それぞれの培地環境(ES、Neuroprogenitor、Hepatocyte、muscle)において超音波を処理した後、QD605 l00pmolを入れ、24時間後にそれぞれの分化過程上の転写因子(ES:Oct4、Neuroprogenitor:Pax6、Hepatocyte:HNFla、Muscle:Pax3)の発現をICCから確認した。
【0090】
図4bおよび
図4cに示されたように、外部物質(QD605)が流入した細胞およびスフェロイドのそれぞれにおいて転写因子が観察された。このことは、外部物質の流入に伴う細胞のリプログラミングの可能性を示唆する結果である。
【0091】
実験過程において、四つの種類の環境流入サンプルのうち、es/ENTERとn/ENTERにのみスフェロイドを形成した。しかしながら、m/ENTERとh/ENTERはスフェロイドを形成しなかった。これは、細胞の特性と培地造成による。ESと神経前駆細胞の場合、浮遊培養過程においてスフェロイドやスフィアの形成が行われる細胞であるが、筋肉細胞と肝細胞の場合にはスフェロイドを形成しない。これは、分化誘導過程においてコーティングされた培養ディッシュにおいて付着させて培養したからであり、特に、筋肉細胞の培地にFBSが入っているが、FBSは、細胞付着力を高めるため、スフェロイドが形成できないものと認められる。
【0092】
<実施例4> 物理的刺激を受けた細胞培養液内のエキソソーム分析
超音波による細胞刺激は、全ての細胞に一様に刺激されるわけではないため、細胞のリプログラミングは、一部の細胞において行われることがあり、このようにして変化された細胞とそうではない細胞の細胞交流の可能性を考えてみた。近年、エキソソームによる細胞間の物質交流に対する可能性を参考にし、超音波処理された細胞から排出された培養培地内のエキソソームが遺伝物質を含んでいる可能性があり、これは、リプログラミングされた細胞から分泌される物質中に、リプログラミングに重要な役割を果たす遺伝物質が含まれている可能性を有しているため、超音波処理後に培養された培養培地内のエキソソームを培養時間別の培地の交換の際に回収して培養液内のエキソソームのRNAをAmicon Ultra−0.5 kit(Millipore)で抽出し、cDNAの合成は、Super ScripII kit(Invitrogen、Carlsbad CA、USA)で行った。PCRは、PCRプレミックス(Bioneer、Daejeon、Korea)にcDNAとプライマーを混ぜた後、Thermal cycler dice PCR machine(TP600、TAKARA、Otsu、Japan)を用いて95℃で5分変性、95℃で30秒、gradient 30秒および72℃で1分を35サイクル、72℃で15分の条件でRT−PCR分析を行った(表2)。
【0093】
図5に示されたように、エキソソームのRNAのうち、多能性RNAの発現が確認された。
【0094】
一方、
図5において、usMCは、細胞および培養培地のそれぞれに超音波を処理した場合をいい、usMC−Aは、付着培養されたusMCを意味する。
【0095】
【表2】
【0096】
<実施例5> エキソソームによる物質伝達に対する証明実験
前記実施例4において超音波処理された細胞の培養液内エキソソームにおいて多能性マーカーの発現が確認されたため、このようなエキソソームにより遺伝物質およびタンパク質が伝達されるか否かを確認した。
【0097】
超音波処理後にQD605を添加し、生きている細胞の画像を撮影した結果、
図6aに示されたように、7時間45分頃にQD605の流入した細胞のQD605が細胞質の一部とともに脱落して他の細胞に移動する現象を確認することができた。
【0098】
このようにして脱落した細胞質の一部がエキソソームであると予想し、usMC処理された細胞を様々な培地環境に露出させた後、4%パラホルムアルデヒドに10分間固定し、0.1%トリトンX−100を含むPBSに40分間染み込ませた。5%(v/v)ヤギ血清を含むPBS溶液で1時間ブロッキングし、1次抗体でエキソソームマーカーであるCD63(1:100、Santa Cruz Biotechnology)とそれぞれの分化誘導培地により誘導されるべき細胞の初期発現マーカーである胚芽幹細胞(Oct41:200;Nanog1:200;abeam)、神経幹細胞(Pax6、1:200;abeam)、筋肉細胞(Pax3、1:200;abeam)および肝細胞(HNFla、1:200;Cell Signaling Technology)などを4℃において一晩中染色した。そして、0.03%トリトンX−100を含むPBSバッファーで洗浄し、2次抗体、Alexa−488または−594が結合された抗−ウサギ、抗−マウス抗体(1:1000、Thermo、excitation/emission、495/519nm、excitation/emission、590/617nm)を室温において1時間半くらい染色した後、0.03%トリトンX−100を含むPBSバッファーで洗浄し、DAPI入りマウンティングゾル(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame、CA、excitation/emission、420/480nm)でマウンティングして、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(LSM700;CarlZeiss)で画像を分析した。
【0099】
図6bに示されたように、細胞の周りに出ていた細胞質の一部分であると推測されるものがCD63により染色され、es/ENTERの誘導の際にエキソソームマーカーであるCD63が染色された細胞外小胞(EVs)においてOct4、Nanogなどの多能性細胞マーカーの発現が確認され、n/ENTERの誘導の際にエキソソームマーカーであるCD63が染色された細胞外小胞(EVs)においてPax6などの神経幹細胞のマーカーの発現が確認され、m/ENTERの誘導の際にエキソソームマーカーであるCD63が染色された細胞外小胞(EVs)においてPax3などの筋肉細胞マーカーの発現が確認され、h/ENTERの誘導の際にエキソソームマーカーであるCD63が染色された細胞外小胞(EVs)においてHnflaなどの肝細胞マーカーの発現が確認された。
【0100】
前記結果から、エキソソームが細胞質から脱落し、それは、遺伝物質とタンパク質を含んでいるため、周辺細胞に伝達して周辺細胞の変化を誘導することができるという仮設を立てた。これを立証するために、エキソソームを抽出してエキソソームをCD63で染色(培養中の細胞中にもエキソソームが存在するため、新たに注入するエキソソームであることを区別するために染色する)した後、そのエキソソーム内にpoly(A)
27−Cy5.5を修飾した遺伝物質をエキソソームに流入させた後、処理されていないHDFとともに培養すれば、エキソソームによりpoly(A)
27−Cy5.5が伝達されるのではないかと考えた。
【0101】
図6cに示されたように、CD63が染色されたエキソソームが細胞内において発見され、CD63とともにcy5.5が発現されることが確認された。これは、エキソソームにより注入した遺伝子(poly−A)が伝達されたことを意味する。
【0102】
<実施例7> 物理的刺激を受けた細胞と正常細胞の共同培養
エキソソームにより遺伝物質が伝達され得るので、ヒトES培地において培養された細胞から分泌されるエキソソームが周りの細胞や、それとも、何らの処理もされていない細胞の属性も変化させ得るという仮設を立て、これを証明するために、ヒトES培地環境において培養された超音波処理された細胞の2日間培養された培地からエキソソームを抽出し、ヒトES培地と線維芽細胞培養培地であるDMEMで何らの処理もされていない細胞を培養する過程においてエキソソーム抽出物を混ぜて6日間培養した。
【0103】
その結果、エキソソームが添加されたグループにおいてスフェロイドが生成され(
図7a)、この細胞におけるOct4の発現を確認した結果、多能性マーカーであるOct4の発現が観察された(
図7b)。このことは、エキソソームによる遺伝物質伝達が細胞リプログラミングを誘導できることを意味する。
【0104】
<実施例8> 線維芽細胞の直接リプログラミング
前記実施例1〜7において、培地環境の変化による細胞リプログラミングの可能性と周辺細胞までリプログラミングできることが立証されたため、これを基づいて、様々な培地環境を適用して細胞のリプログラミングを確認してみた。
【0105】
そのために、
図8のように、ヒト線維芽細胞をlmLの分化誘導培地にlxl0
6細胞の密度で集めた後、超音波をlW/cm
2の強度で5秒間処理した後、35mm培養ディッシュまたは6−ウェルプレートに2xl0
5/Wellで分注した後、超音波を10W/cm
2の強度で10分間処理した2mLの分化誘導培地において培養した。
【0106】
分化誘導培地の種類によって違いがあるが、培養後約2日〜6日でスフェロイドが形成された。
【0107】
また、脂肪細胞分化誘導培地を用いてusMC処理した後、20日間培養した結果、細胞内気泡が生成されることが観察され、この気泡に対する分析を行ったところ、脂肪細胞の判別のための脂質染色試薬であるオイルレッドOが染色されることが分かった。これは、細胞が脂肪を生産することを示す指標である(
図9a)。
【0108】
また、細胞のRNAを抽出してRT−PCRを用いて脂肪細胞マーカー遺伝子、Pparc2、C/ebpa、aP2、Fabp4の発現を確認した結果、分化誘導後に発現が増加することが示された(
図9b)。
【0109】
さらに、神経幹細胞(神経前駆細胞)分化誘導培地と超音波によるHDFの神経前駆細胞への分化を確認するために、分化誘導後3日目に生成されたスフェロイドと付着した細胞において神経前駆細胞マーカー、Oct4、Sox2、Pax6、Nestinの発現を免疫細胞化学的方法で染色して確認した。
【0110】
図10aは、分化誘導された細胞の様子であり、
図10bは、スフェロイドにおける神経前駆細胞マーカーを示すものであり、分化誘導されると、Oct4の発現が減少し、Sox2とPax6、並びにNestinの発現が高く現われることを確認した。
図10cは、付着した細胞における発現を調べてみた結果であり、同様に、前記と同じ発現パターンを示した。このとき、神経前駆細胞や神経幹細胞のマーカーは、Sox2、Pax6、Nestinであり、Oct4は、多能性マーカーで成体幹細胞や前駆細胞である場合、Oct4の発現能が低下する。
【0111】
【表3】
【0112】
図11は、分化誘導後、7日間分化誘導された細胞におけるPax6/Nestinの発現パターンをフローサイトメトリーによって分析した結果であり、処理後1日目のPax6とNestinが相対的に50%以上発現され、3日目にPax6、Nestinの発現が最も高く現われた。
【0113】
図12は、分化誘導後3日目に、細胞のうち神経前駆細胞マーカー(Pax6/nestin)が発現される細胞において増殖有無を確認すべく、ki67の発現を確認した結果であり、白抜き矢印が指し示す細胞を見ると、Nestinが発現される細胞におけるki67の発現を確認することができた。このような結果は、分化誘導された細胞が増殖能力を有することを意味する。
図12において、矢印は、Nestinが染色された細胞が増殖していることを示す標識である。
【0114】
図13は、分化誘導された細胞(n/ENTER cells)の自己再生(self−renewal)を確認した実験結果であり、
図13aは、動画で一つのスフェロイドから増殖されて出た細胞がPax6とnestinを発現することを確認することにより、その後に増殖された細胞に神経前駆細胞属性がそのまま伝わることが分かった。
【0115】
次いで、5週齢のマウスの脳に分化誘導された細胞(n/ENTER cells)を注入して4週後に脳を回収した後、注入された細胞の周辺細胞への分化を確認し、分化した細胞の機能を確認した。
【0116】
図14aに示されたように、脳に注入された細胞(n/ENTER cells)をHuman Nuclear antigen(HNA)で染色して表示した後、表示された細胞をGfap抗体で染色した結果、注入された細胞におけるGfapが発現されることを確認した。
【0117】
また、Gfapが発現される細胞が正常的な機能をするか否かを確認するために、シナプシンを分泌するか否かをシナプシン1抗体(1:500、R&D system)で染色した。その結果、HNAが発現される細胞のうち、Gfapが発現される細胞においてシナプシン1の発現が観察された(
図14b)。
【0118】
次いで、分化誘導後3日目に生成されたスフェロイドにおける神経前駆細胞マーカー(Oct4、Sox2、Pax6、Nestin)の発現を免疫細胞化学方法で染色して確認した。
【0119】
このために、スフェロイドと付着した細胞は4%パラホルムアルデヒドに10分間固定し、0.1%トリトンX−100を含むPBSに40分間染み込ませた。5%(v/v)ヤギ血清を含むPBSで1時間ブロッキングし、1次抗体でOct4(1:200)、Sox2(1:200)、Pax6(l;200)、Nestin(1:200、Cell Signaling Technology)などを4℃において一晩中染色した。また、0.03%トリトンX−100を含むPBSバッファーで洗浄し、2次抗体、Alexa−488または−594が結合された抗−ウサギ、抗−マウス抗体(1:1000、Thermo、excitation/emission、495/519nm、excitation/emission、590/617nm)を室温において1時間半くらい染色した後、0.03%トリトンX−100を含むPBSバッファーで洗浄し、DAPI入りマウンティングゾル(Vector Laboratories,Inc.,excitation/emission、420/480nm)でマウンティングし、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(LSM700;CarlZeiss)で画像を分析した。
【0120】
図15aにおいてスフェロイドの形成を確認し、スフェロイドにおいて神経前駆細胞マーカーであるPax6およびNestinの発現が高く現われることを確認した(
図15b)。
【0121】
図15cは、分化誘導後3日間分化誘導された細胞におけるPax6/Nestinの発現パターンをフローサイトメトリーによって分析した結果であり、処理後1日目にPax6とNestinが70%以上発現され、3日目にPax6、Nestinの発現が最も高く現われた。
【0122】
図16は、分化誘導後20日目の細胞における神経前駆細胞マーカー(Sox2、Pax6、Nestin)の発現を免疫細胞化学方法で染色して確認した結果であり、上段および中間の写真は、Sox2とPax6、並びにNestinの発現が高く現われることが示され、下段の写真は、希突起膠細胞マーカーの発現を調べてみた結果であり、同様に前記と同じ発現パターンを示した。
【0123】
この結果は、分化誘導された細胞が神経前駆細胞分化能力と類似の分化能力を有しているという意味である。
【0124】
<実施例9> 直接肝細胞分化
図17に図式化して示すように、HDF、HeLa細胞およびHep3B細胞をlmLの分化誘導培地にlxl0
6細胞の密度で集めた後、超音波をlW/cm
2の強度で5秒間処理した後、35mmのラミニンコーティング培養ディッシュに2xl0
5で分注した後、超音波を10W/cm
2の強度で10分間処理した2mLの肝細胞分化誘導培地において培養した。肝細胞分化誘導培地を用いて分化誘導された細胞をh/ENTERと命名した。
【0125】
図18は、肝細胞分化誘導培地と超音波処理されたHDFの肝細胞(h/ENTER)への分化を誘導し、HDFを分化誘導してから20日後の細胞の外形の変化を示すものであり、HDF分化誘導20日後に、免疫細胞化学方法によって肝細胞マーカー(AFP、HNF4a、CK18、ALB)を確認した結果、h/ENTER細胞において肝細胞マーカーの発現が確認された。
【0126】
次いで、肝細胞分化誘導培地と超音波処理されたHeLa細胞の肝細胞(HeLa h/ENTER)への分化を誘導した。HeLa細胞を分化誘導してから19日後の細胞(HeLa h/ENTER)の外形の変化を示すものであり、HeLa細胞分化誘導20日後に(HeLa h/ENTER)qPCRによって肝細胞マーカー(ALB、HNF4a、CYP3A4F、CYP3A7F、AIAT、SOX7、GATA6)を確認した。
【0127】
図19aのように、HeLa細胞と比較し、分化誘導したHeLa細胞において肝細胞マーカーのほとんどが増加したことを確認した。
【0128】
また、HeLa細胞分化誘導3週後に、免疫細胞化学法によって肝細胞マーカー(HNF4a、CK18、ALB)を確認した結果、HeLa細胞と比較し、分化させたHeLa細胞(HeLa h/ENTER)において肝細胞マーカーの発現が増加することを確認した(
図19b)。
【0129】
HeLa細胞分化誘導3週後に、免疫細胞化学法によって肝細胞マーカー(HNF4a、CK18、ALB)を確認した結果、HeLa細胞と比較して、分化させたHeLa細胞(HeLa h/ENTER)において肝細胞マーカーの発現が増加することを確認した(
図19c)。
【0130】
次いで、肝細胞分化誘導培地と超音波処理されたHep3B細胞の肝細胞(Hep3B h/ENTER cell)への分化を誘導した。Hep3B細胞を分化誘導してから19日後の細胞の外形の変化と、Hep3B細胞分化誘導3週後の免疫細胞化学による肝細胞マーカー(HNF4a、CK18、ALB)の発現有無を確認した。
【0131】
図20bに示されたように、Hep3B細胞と比較し、分化させたHep3B細胞(Hep3B h/ENTER)において肝細胞マーカーの発現が増加することを確認した。
【0132】
次いで、ヒトES培養培地と超音波処理されたHDFのes/ENTER細胞への分化を誘導した。
図21aは、培養時間に伴う細胞形態の変化を、
図21bは、培養時間に伴うOct4発現の違いを示す結果であり、ヒトES培地で分化誘導されてから1日目にスフェロイドが形成され、多能性マーカーであるOct4の発現が培養時間に伴い増加した。
【0133】
6日間培養されて形成されたスフェロイドを回収し、多能性マーカーの発現をRT−PCRとICCを通じて確認した。その結果、es/ENTER細胞において多能性マーカー遺伝子(a)およびタンパク質(b)の発現が確認された。
【0134】
前記es/ENTER細胞において多能性属性を分析した結果、フローサイトメトリーを用いてes/ENTER細胞のSSEA4とTRA−1−60の発現を確認し(
図23a)、多能性遺伝子発現のパターンをマイクロアレイ(affymetrix chip)で分析した結果、HDFに比べて、ES細胞に類似のパターンを示した(
図23b)。なお、バイサルファイトシーケンシングを通じて発現されるDNA遺伝子における合成が始まるプロモーター部分のメチル化が消去されているか否かを確認した結果、重要な多能性遺伝子Oct4とNanogが開放されていることを確認した。これらの結果から、ヒトES培地で分化誘導されたes/ENTERは、多能性属性を有するということが分かる(
図23c)。
【0135】
【表4】
【0136】
次いで、es/ENTER細胞において分化マーカーを確認した。
図24は、es/ENTER細胞における三胚葉マーカー遺伝子の発現(a)とタンパク質発現(b)を示すものであり、
図25は、培養時間別es/ENTER細胞におけるOct4と三胚葉マーカー遺伝子発現の変化を示すものであり、
図26は、付着培養されたes/ENTER細胞における三胚葉マーカータンパク質の発現(a)およびバイサルファイトシーケンシングを用いたes/ENTER細胞の三胚葉マーカーDNAメチル化の分析(b)結果である。
【0137】
【表5】
【0138】
es/ENTERスフェロイドにおける三胚葉マーカーの発現がRT−PCRとICCによって確認され、このような結果は、es/ENTER細胞が多分化分化属性を有することを示す指標である。
【0139】
したがって、培養時間に伴う多能性マーカーであるOct4の発現パターンを確認した結果、6日後に多能性属性であるOct4の発現が減少し、三胚葉マーカーの発現が増加することを確認した。このような結果は、es/ENTER細胞の分化が、多能性属性において進められることを示す。そのことから、es/ENTERスフェロイドを付着して2日間培養したスフェロイドから出た細胞が、三胚葉マーカーを発現することが確認され、代表的な三胚葉マーカー遺伝子のDNAメチル化を分析した結果、三胚葉マーカー遺伝子は開放されていることが確認された。
【0140】
図27は、es/ENTER細胞の神経細胞(a)、心筋細胞(b)および肝細胞(c)へのインビトロ分化実験結果であり、es/ENTER細胞をそれぞれの三種類の胚葉から分化する細胞に分化誘導する培地を用いて4週間分化誘導した結果、神経細胞(外胚葉)、心筋細胞(中胚葉)、肝細胞(内胚葉)に分化誘導され、それぞれの分化マーカーが発現された。
【0141】
図28は、HDFにおける神経細胞(a)、心筋細胞(b)および肝細胞(c)の分化マーカーの発現を確認した結果であり、HDFにおいては分化マーカーが発現されなかった。
【0142】
図29は、分化誘導されたes/ENTER細胞の神経細胞(a)、心筋細胞(b)および肝細胞(c)の分化マーカー遺伝子の発現を示すRT−PCR分析結果であり、分化誘導されたes/ENTERにおける分化マーカー遺伝子の発現が増加した。これらの結果は、es/ENTERの多分化能を証明する結果である。
【0143】
図30は、es/ENTER細胞の染色体G−バンド分析による核型を示す結果であり、es/ENTERの生成に当たって超音波刺激による細胞染色体の突然変異の有無を分析した結果、正常であることが分かった。
【0144】
次いで、es/ENTER細胞を5週齢のSCIDマウスの脚筋肉に移植した後、4週後にHNAを用いて移植した細胞を確認した。
【0145】
図31に示されたように、es/ENTER細胞は、骨格筋肉に分化したことが確認された。なお、移植された細胞におけるOct4が発現および増殖されなかったことを確認した。
【0146】
次いで、es/ENTER細胞をマウスの脳に移植して、インビボ分化を確認した。
【0147】
そのために、es/ENTER細胞を5週齢のSCIDマウスの脳に移植した後、4週後にHNAを用いて移植した細胞を確認した。
【0148】
その結果、es/ENTER細胞は、星状細胞(Gfap)に分化したことが確認され、シナプシンと小胞グルタミン酸輸送体が分泌されることを確認した。このことは、移植された細胞が正常的に分化して機能を果たしていることを意味する。なお、移植された細胞におけるOct4が発現されておらず、増殖されていないことを確認した(
図32)。
【0149】
次いで、MEF(マウス胎児線維芽細胞)も、HDFと同じ方法であるhES培地でmouse es/ENTER細胞に分化誘導した。今回の実験に用いられたMEFは、OG2−MEFであり、Oct4プロモーターをベクターで形質転換させたマウスの胎児線維芽細胞をもって行った。この細胞の場合、Oct4が発現されると、GFP蛍光が発現される細胞であり、Oct4の発現を観察するために使用した。
【0150】
図33に示されたように、超音波処理によって誘導された細胞は、時間が経過するに伴い、スフェロイドの数とサイズ並びにGFP発現が増加された。
【0151】
次いで、前記mouse es/ENTER細胞における多能性属性を分析した。
【0152】
図34に示されたように、mouse es/ENTERのICC、RT−PCR、フローサイトメトリー、AP染色を行った結果、マウスESと類似の傾向を示した。
【0153】
次いで、前記mouse es/ENTER細胞における三胚葉の特性を分析した。
【0154】
実験の結果、ヒトes/ENTERにおいて現われた三胚葉属性がmouse es/ENTER細胞においても現われ、培養時間別RT−PCRとICC分析により、時間が経過するに伴い、その発現の差が現われた。このような結果は、ヒトes/ENTERの結果と同様であった(
図35)。
【0155】
図36は、mouse es/ENTERの神経細胞(a)と心筋細胞(b)へのインビトロ分化を示し、
図36cは、mouse es/ENTERの染色体Gバンド分析による核型分析結果を示す。核型分析は、GTG banding chromosome analysis(GenDix,Inc.;Seoul、Korea)を用いて行った。
【0156】
実験の結果、mouse es/ENTER細胞において神経細胞および心筋細胞分化マーカーをチェックして分化したことが確認され、超音波による染色体変異を核型分析した結果、変異が起きなかったことを確認した。
【0157】
<実施例10> 他の細胞を用いたes/ENTERの分化誘導実験
このような結果から、HDFのみならず、他の個体の細胞にもこの方法が適用可能であるという結論を出し、様々な細胞(L132、MSC、患者皮膚線維芽細胞)に適用してみた。
【0158】
L132(肺上皮細胞)、MSC(mesenchymal stem cell;間葉系幹細胞)およびSkin fibroblast(患者由来の皮膚線維芽細胞)などを用い、es/ENTERと同じ方法で分化を誘導した結果、細胞スフェロイドが形成され、es/ENTERと略同様に、多能性マーカーおよび三胚葉マーカーが発現されることが分かった。
【0159】
図37は、ヒトES培養培地と超音波刺激によるL132細胞のL132 es/ENTER細胞への分化を示す結果であり、
図37aは、培養時間に伴う細胞形態の変化、
図37bおよび
図37cは、L132 es/ENTER細胞の多能性(b)および三胚葉(c)属性を示す。
【0160】
図38は、ヒトES培養培地と超音波刺激によるMSCのMSC es/ENTER細胞への分化を示す結果であり、
図38aは、培養時間に伴う細胞形態の変化、
図38bおよび
図38cは、MSC es/ENTER細胞の多能性(b)および三胚葉(c)属性を示す。
【0161】
図39は、ヒトES培養培地と超音波刺激によるヒト皮膚線維芽細胞のSF es/ENTER細胞への分化を示す結果であり、
図39aは、培養時間に伴う細胞形態の変化、
図39bおよび
図39cは、SF es/ENTER細胞の多能性(b)および三胚葉(c)属性を示す。
【0162】
<実施例11> 他の物理的刺激を用いたes/ENTER細胞への分化誘導
ヒトES培養液という同じ培地環境に、今回は分化誘導のための物理的刺激として熱処理(Heat shock)とレーザーを使用した。
【0163】
まず、熱処理(Heat shock)とhES培地を用い、HDFのes/ENTER細胞の分化を誘導した。熱処理のために、HDFを42℃で2分間露出させた後、アイスにおいて約5秒間静置した。
図40aは、分化誘導されたHDFスフェロイド、
図40bおよび
図40cは、es/ENTER細胞の多能性(b)および三胚葉(c)属性を示す。
【0164】
次いで、レーザー刺激とhES培地を用いたHDFのes/ENTER細胞の分化を誘導した。レーザー処理条件は、Ocla治療用レーザー(Ndlux)を用い、808nmのレーザーを5秒間照射した後に培養した。
図41aは、分化誘導されたHDFスフェロイド、
図41bおよび
図41cは、es/ENTER細胞の多能性(b)および三胚葉(c)属性を示す。
【0165】
図40および
図41に示されたように、二種類の刺激は両方とも、超音波による効果と類似するように細胞スフェロイドが形成され、多能性および三胚葉マーカーが発現されることを確認した。これらの結果は、培地環境の流入による細胞リプログラミングが様々な細胞に適用可能であり、培地環境と併せて、環境流入のための物理的な刺激もまた、様々な方法が採用可能であることを示し、以前の結果でのように、環境により細胞の属性が変わることがある。
【0166】
<実施例12> 細胞外小胞(extracellular vesicles;EVs)を用いた細胞のリプログラミング
細胞は、invitrogenから購入したプライマリーHDFを10%FBS(Gibco)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)が添加されたDMEMにおいて培養し、培養培地に対する超音波処理は、5W/cm
2、10分間行い、細胞処理は、lx10
6のHDFに1W/cm
2、5秒間処理した後、前記において超音波処理された培養培地とともに35mmの培養ディッシュに2xl0
5細胞を1日間37℃、5%CO
2の条件で培養した。培養液を回収してアミコンウルトラ遠心式ろ過フィルター(Millipore)に入れ、14000rpm、20分間遠心分離して培養液内のEVsをフィルターでろ過して回収した。
【0167】
次いで、HDFを培養ディッシュに約70〜80%満たされるように培養した後、培養液を回収してD−PBSで2回洗浄した後、胚芽幹細胞培地または神経幹細胞分化培地(Gibco)にそれぞれes/ENTERとn/ENTERの1日目の培養培地から回収された10μl/mL(v/v)の濃縮EVsを添加した後、前記において洗浄したHDFと混合して3日間培養した。
【0168】
<実施例13> 正常体細胞(HDF)におけるEVsの伝達実験
EVsを用いた体細胞のリプログラミングを確認するために、前記実施例12と同様に、物理的刺激を受けた細胞の1日培養後に得たEVsを濃縮した後、Did dyeを用いてEVsを標識し、正常体細胞に前記EVsが伝達され、伝達された細胞においてそれぞれの多能性マーカーであるOct4と神経幹細胞マーカーであるPax6の発現を確認した。
【0169】
そのために、前記実施例12において得たEVs 50μlをD−PBS450μlと混合して希釈し、ここに2.5μlのVybrant DiD cell−labelling solution(molecular probe、excitation/emission、644/667nm)を添加して37℃において30分間エキソソームを染色した。染色後に、再びアミコンウルトラ遠心式ろ過フィルター(Millipore)で14000rpm、20分間遠心分離してDid染色されたEVsを濃縮した後、D−PBSで希釈することを2回繰り返し行った後、3mLのHDF培養液(5%FBS入りDMEM(Gibco)培養液)に添加した後、37℃、5%CO
2において24時間培養した。24時間培養されたHDFを4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、0.2%トリトンX100 in PBSバッファーで10分間透過させた。次いで、3%BSA in PBSバッファーで1時間ブロッキングした後、1次抗体であるウサギ−抗−Oct4(1:250、abeam)とPax6(l:200、abeam)で4℃において一晩中染色した後、2次抗体である抗−ウサギ共役Alexa−488(1:1000、Thermo、excitation/emission、495/519nm)を1時間かけて染色した。2次抗体が染色されたサンプルをDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩)(Vector Laboratories、excitation/emission、420/480nm)入りマウンティング溶液を用いて共焦点レーザー顕微鏡(Confocallaserscanningmicroscope、LSM700;Carl Zeiss)画像を分析し、
図42にその結果を示した。同図において、緑色は、Oct4であり、赤色は、Did dyeで染色されたEVsである。
【0170】
図42に示されたように、物理的刺激を与えた後に細胞から分泌されるEVsは、細胞培地環境に応じて様々な多能性マーカーの遺伝子およびタンパク質を含んでいることが確認され、これらの因子は、EVsにより隣り合う細胞に伝達され得ることが確認された。前記結果は、様々な培地環境において物理的刺激を受けた細胞から分泌されたEVsは、正常体細胞のリプログラミングを誘導する可能性があることを示唆する。
【0171】
<実施例14> EVsによるヒト線維芽細胞のリプログラミング効果
前記実施例13において様々な培地環境において物理的刺激を受けた細胞から分泌されたEVsは、正常体細胞のリプログラミングを誘導する可能性があるため、これを検証するために、ヒト線維芽細胞培養培地であるDMEM培地とヒト胚芽幹細胞またはiPS細胞の培養培地であるhESC培地とを用いて実験した。対照群は、EVsが添加されていない各培地において3日間培養し、処理群は、各培地に10μl/mL(v/v)のEVsを添加して3日間培養した。
【0172】
培養された細胞は、前記実施例13と同様に、1次抗体としてウサギ−抗−Oct4(1:250、abeam)、2次抗体として抗−ウサギ共役Alexa−488(1:1000、Thermo、excitation/emission、495/519nm)を用いて染色し、DAPI入りマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点レーザー顕微鏡で画像を分析して
図43に示した。同図において、hESCは、human ESC培地を示し、DMEMは、線維芽細胞培養培地を示し、EVsは、es/ENTERの誘導の際に回収したEVsを示す。
【0173】
図43に示されたように、対照群においてはOct4の発現が観察されなかったが、処理群においてはOct4の発現および細胞がスフェロイドを形成する現象が観察された。前記結果は、細胞リプログラミングが培養培地による影響ではなく、単にEVsにより誘導されたことを示す。
【0174】
<実施例15> EVs処理されたヒト線維芽細胞の培養時間別の細胞形態の変化
es/ENTERの誘導の際に回収した10μl/mL(v/v)のEVsをヒト線維芽細胞に処理した後、6日間培養して細胞形態の変化を観察した。
【0175】
図44に示されたように、培養時間の経過に伴い細胞の形態が変化しており、3日目にスフェロイドが形成されることを観察した。
【0176】
<実施例16> es/ENTERの誘導の際に回収したEVsの添加量に応じた6日間培養されたHDFの多能性マーカーの発現に対する確認実験
細胞リプログラミングのための適正なEVsの濃度を調べるために、EVsの添加量を相違させてHDFに処理し、6日間培養した。また、es/ENTERの誘導の際に回収したEVsを用いるため、多能性マーカーであるOct4が発現される細胞をフローサイトメトリーで分析した。
【0177】
そのために、es/ENTERの誘導の際に回収したEVsを線維芽細胞の培養に際してそれぞれ0、5、12.5、25、50および100μl/mL(v/v)の濃度で添加し、37℃、5%CO
2の条件下で6日間培養した。培養された細胞は、前記実施例13と同様に、1次抗体としてウサギ−抗−Oct4(1:250、abeam)、2次抗体として抗−ウサギ共役Alexa−488(1:1000、Thermo、excitation/emission、495/519nm)を用いて染色し、BDA ccuriTM C6フローサイトメトリー(BD biosciences)を用いて分析した。
【0178】
図45に示されたように、12.5μl/mL(v/v)のEVsを処理したときに、最も多い84.6%の細胞においてOct4の発現が確認された。
【0179】
<実施例17> es/ENTERの誘導の際に回収した、EVs処理された3日間培養HDFにおける多能性マーカーの発現に対する確認実験
es/ENTERの誘導の際に回収した10μl/mL(v/v)のEVsをヒト線維芽細胞に処理した後、3日間培養して細胞リプログラミング効果を確認した。培養された細胞は、ICC分析のために、前記実施例13と同様に、1次抗体としてウサギ−抗−Oct4(1:250、abeam)、Sox2(1:250、abeam)およびNanog(1:250、abeam)、2次抗体として抗−ウサギ共役Alexa−488(1:1000、Thermo、excitation/emission、495/519nm)を用い、DAPI入りマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点レーザー顕微鏡で画像を分析した。qPCR分析は、3日間培養された細胞からトリゾール(Takara)を用いてすべてのRNAを回収した後、Superscrip 2 kit(Invitrogen)でcDNAを合成して行った。PCR分析は、多能性マーカーであるOct4、Sox2およびNanogに対してリアルタイムPCR機器(ab step one plus、AB)で分析した。
【0180】
図46に示されたように、ICC分析を行った結果、ヒト線維芽細胞核において多能性マーカーであるOct4、Sox2およびNanogの発現が観察され、遺伝子発現をリアルタイムPCRでqPCR分析した結果、Oct4、Sox2およびNanog遺伝子は、EVs処理されていない正常線維芽細胞に比べて約50倍程度過発現された。
【0181】
<実施例18> n/ENTERの誘導の際に回収した、EVs処理された3日間培養HDFにおける神経幹細胞マーカーの発現に対する確認実験
n/ENTERの誘導の際に回収した10μl/mL(v/v)のEVsをヒト線維芽細胞に処理した後、3日間培養して細胞リプログラミング効果を確認した。培養された細胞は、ICC分析のために、前記実施例13と同様に、1次抗体としてウサギ−抗−Sox1(l:200、abeam)、Sox2(1:250、abeam)、Pax6(1:200、abeam)およびマウス−抗−Nestin(1:250、Thermo Scientific)、2次抗体として抗−ウサギ共役Alexa−488(1:1000、Thermo excitation/emission、495/519nm)および抗−マウス共役Alexa−594(1:1000、Thermo、alexa488 excitation/emission、495/519nm;alexa594 excitation/emission、590/617nm)を用い、DAPI入りマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点レーザー顕微鏡で画像を分析した。qPCR分析は、3日間培養された細胞からトリゾール(Takara)を用いてすべてのRNAを回収した後、Superscrip 2 kit(Invitrogen)でcDNAを合成して行った。PCR分析は、神経幹細胞マーカーであるSox1、Sox2およびNestinに対してリアルタイムPCR機器(ab step one plus、AB)で分析した。
【0182】
図47に示されたように、ICC分析により、ヒト線維芽細胞核において神経幹細胞マーカーであるSox1、Sox2およびPax6の発現が観察され、細胞質においてNestinの発現が観察された。遺伝子発現をリアルタイムPCRでqPCR分析した結果、Sox1、Sox2、Pax6およびNestin遺伝子は、EVs処理されていない正常線維芽細胞に比べて約200倍程度過発現された。
【0183】
【表6】