【解決手段】傷病推定システムは、ユーザの運動時の血糖値と、ユーザの傷病との関係を学習した学習モデルを記憶する記憶部と、対象ユーザの運動時の血糖値に関する血糖値情報の入力を受け付ける受付部と、受付部が受け付けた血糖値情報と、学習モデルとを用いて、対象ユーザが、傷病を負う可能性を推定する推定部と、推定部が推定した可能性に関する情報を出力する出力部と、を備える。
前記アドレナリン分泌量は、前記ユーザの運動時に測定した血糖値を、所定の演算によりアドレナリンに変換した結果得られた値を示すものであることを特徴とする請求項4に記載の傷病推定システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る傷病推定システムの概要を示すシステム図である。
図1に示すように傷病推定システムは、傷病推定サーバ100と、アドレナリン推定サーバ200とを含み、センサ300と、ユーザ端末500とを含んでもよい。傷病推定サーバ100と、アドレナリン推定サーバ200と、センサ300と、ユーザ端末500とは、ネットワーク400を介して互いに通信可能に接続されていてよい。なお、
図1に示す各装置について1台ずつ示しているが、各端末、サーバは、1台に限定されるものではなく複数台あってよい。
【0024】
傷病推定サーバ100は、ユーザ30が傷病を負う可能性を、ユーザ30の運動時のアドレナリン分泌量から推定するサーバ装置(情報処理装置)である。アドレナリン推定サーバ200は、ユーザ30のアドレナリン分泌量を、ユーザ30の運動時の血糖値(グルコース分泌量)から推定するサーバ装置(情報処理装置)である。センサ300は、ユーザ30の体液からグルコース分泌量を検知して出力するセンサである。ユーザ端末500は、ユーザ30が保持する情報処理端末であり、所謂スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、PC等により実現されてよい。
【0025】
図1に示す傷病推定システムは、ユーザ30の運動時のアドレナリン分泌量に基づいて、ユーザ30が傷病に罹っている可能性あるいは傷病を負う可能性を推定する推定システムである。
図1に示すように、ユーザ30は、運動時の血糖値をセンサ300により測定する。センサ300は、測定したセンシングデータ31をアドレナリン推定サーバ200に送信する。アドレナリン推定サーバ200は、受信したユーザ30の血糖値を示すセンシングデータ31に基づいて、ユーザ30のアドレナリン分泌量を推定する。アドレナリン推定サーバ200は、推定したアドレナリン分泌量を示すアドレナリン情報21を傷病推定サーバ100に送信する。傷病推定サーバ100は、受信したアドレナリン情報21に基づいて、ユーザ30が傷病を負う(または負っている)可能性を推定する。そして、傷病推定サーバ100は、推定した傷病を負う可能性を示す傷病推定情報11を、ユーザ30のユーザ端末500に送信する。ユーザ端末500は受信した傷病推定情報11を表示する。これによって、ユーザ30は自信が傷病を負う可能性を認識することができる。
【0026】
以下、詳細に説明する。なお、ネットワーク400は、各種の機器との間を相互に接続させるためのネットワークであり、例えば、無線ネットワークや有線ネットワークである。具体的には、ネットワークは、ワイヤレスLAN(wireless LAN:WLAN)や広域ネットワーク(wide area network:WAN)、ISDNs(integrated service digital networks)、無線LANs、LTE(long term evolution)、LTE−Advanced、第4世代(4G)、第5世代(5G)、CDMA(code division multiple access)、WCDMA(登録商標)、イーサネット(登録商標)などである。また、ネットワークは、これらの例に限られず、例えば、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network:PSTN)やブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、ブルートゥースローエナジー(Bluetooth Low Energy)、光回線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線、衛星通信網などであってもよく、どのようなネットワークであってもよい。ネットワークは、ユーザの住居に備えられる場合には、ホームネットワークと呼称されることもある。また、ネットワークは、例えば、NB−IoT(Narrow Band IoT)や、eMTC(enhanced Machine Type Communication)であってもよい。なお、NB−IoTやeMTCは、IoT向けの無線通信方式であり、低コスト、低消費電力で長距離通信が可能なネットワークである。また、ネットワークは、これらの組み合わせであってもよい。また、ネットワークは、これらの例を組み合わせた複数の異なるネットワークを含むものであってもよい。例えば、ネットワークは、LTEによる無線ネットワークと、閉域網であるイントラネットなどの有線ネットワークとを含むものであってもよい。
【0027】
<傷病推定サーバ100の構成例>
図2は、傷病推定サーバ100の構成例を示すブロック図である。前述の通り、傷病推定サーバ100は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量に基づいて、ユーザが傷病を負う可能性を推定するサーバ装置(情報処理装置)である。
【0028】
図2に示すように、傷病推定サーバ100は、通信部110と、入力部120と、制御部130と、記憶部140と、出力部150と、を備える。通信部110と、入力部120と、制御部130と、記憶部140と、出力部150とは、バス160を介して互いに通信可能に構成されてよい。
【0029】
通信部110は、他の装置と通信を実行するための機能を有する通信インターフェースである。通信部110は、他の装置と通信可能であれば、いずれの通信プロトコルにより通信を行ってもよく、有線、無線のいずれでの通信であってよい。通信部110は制御部130からの指示にしたがって、アドレナリン推定サーバ200やユーザ端末500と通信を行う。通信部110は、例えば、アドレナリン推定サーバ200から送信されたアドレナリン情報21を、ネットワーク400を介して受信する。また、通信部110は、例えば、傷病推定サーバ100により推定されたユーザ30が傷病を負う可能性を示す傷病推定情報11を、ネットワーク400を介してユーザ端末500に送信する。
【0030】
入力部120は、傷病推定サーバ100のオペレータ等からの入力を受け付けて、制御部130に伝達する機能を有する入力インターフェースである。入力部120は、タッチパネル等のソフトキーにより実現されてもよいし、ハードキーにより実現されてもよい。また、あるいは、入力部120は、音声入力を受け付けるためのマイクであってもよい。また、入力部120は、フラッシュメモリ等の記憶媒体からの入力を受け付けるポートであってもよい。入力部120は、例えば、アドレナリン情報(例えば、時間毎の、アドレナリン分泌量の数値)の直接入力を受け付けて制御部130に伝達する。
【0031】
記憶部140は、傷病推定サーバ100が動作上必要とする各種のプログラム及びデータを記憶する機能を有する。記憶部140は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現することができる。記憶部140は、傷病推定学習モデル141を記憶している。傷病推定学習モデル141は、傷病推定サーバ100により生成されたモデルであってもよいし、他の装置により生成されたものを記憶していることとしてもよい。
【0032】
傷病推定学習モデル141は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量の推移と、そのユーザが罹患した傷病との関係を学習した学習した学習モデルであり、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量を取得して当該ユーザが傷病に罹患する可能性(あるいは、ユーザが傷病に罹患している可能性)を推定するためのモデルである。傷病推定学習モデル141は、ユーザが負う可能性のある傷病名を出力するものであってもよいし、ユーザが負う可能性が所定以上ある傷病名を出力するものであってもよいし、傷病それぞれについてユーザが負う可能性を示す数値(例えば、パーセンテージ)や評価(例えば、大中小等の評価)を出力するものであってもよい。
【0033】
図3は、傷病推定学習モデル141を生成するための教師データの一例を示すデータ概念図である。
図3に示すように、教師データ1410は、被験者ID1411と、性別1412と、体重1413と、アドレナリンデータ1414と、疾患情報1415とが対応付けられた情報である。教師データ1410は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量と、そのユーザが罹患した傷病を示す疾患情報とが対応付けられた情報の集合である。
【0034】
被験者ID1411は、傷病推定システム上で傷病推定サーバ100が、一つ一つの教師データを識別するための情報であり、ユーザ(被験者)を識別するための情報である。
性別1412は、対応する被験者ID1411で示されるユーザの性別を示す情報である。
体重1413は、対応する被験者ID1411で示されるユーザの体重を示す情報である。
【0035】
アドレナリンデータ1414は、対応する被験者ID1411で示されるユーザの運動時のアドレナリン分泌量を示す情報である。このアドレナリン分泌量は、アドレナリン推定サーバ200によりユーザの血糖値から推定された情報である。
図3では、便宜的に、アドレナリンデータを保持する情報を示す識別情報を示している。
【0036】
疾患情報1415は、対応する被験者ID1411で示されるユーザが罹患したことがある、もしくは、罹患している傷病を示す情報である。疾患情報1415は、複数の傷病に関する情報を含んでもよい。また、疾患情報1415として一つの傷病についてのみ登録する場合には、同じユーザの他の傷病については、別のデータとして登録することとしてもよい。疾患情報1415には、更に、当該疾患、傷病に罹った日付の情報が含まれてもよい。疾患情報1415として、現在対応するユーザが負っている傷病が対応付けられていれば、傷病推定サーバ100は、現在、ユーザが傷病を負っている可能性を推定することができるようになる。また、疾患情報1415として、対応するアドレナリンデータ1414の元となる血糖値情報を測定した日付から数年後(例えば、10年後)に負った傷病の情報を用いる場合には、傷病推定サーバ100は、ユーザが将来的に負う可能性のある傷病を推定することができる。
【0037】
教師データ1410は、少なくともアドレナリンデータ1414と疾患情報1415とがあれば、よく、その他の情報についてはなくてもよい。また、逆に、アドレナリンデータ1414に対応する被験者に関する情報として、性別や体重以外の情報が含まれてもよく、例えば、ユーザの身長、体格、BMI(Body Mass Index)などの情報が対応付けられていてもよい。
【0038】
図2に戻って、出力部150は、制御部130からの指示にしたがって、指定された情報を出力する機能を有する。出力部150による出力は、画像信号、音声信号のいずれでの出力であってもよい。画像信号による出力の場合、傷病推定サーバ100に接続された(又は傷病推定サーバ100が備える)モニタへの出力であってよい。また、音声信号による出力の場合、傷病推定サーバ100に接続された(又は傷病推定サーバ100が備える)スピーカーへの出力であってよい。出力部150は、例えば、ユーザが傷病を負う可能性を示す情報を出力する。
【0039】
制御部130は、傷病推定サーバ100の各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部130は、シングルコアにより実現されてもよいし、マルチコアにより実現されてもよい。制御部130は、記憶部140に記憶される各種プログラムを実行することで、傷病推定サーバ100としての機能を実現する。
【0040】
制御部130は、制御部130が実現する機能として、受付部131と、推定部132と、を備える。また、制御部130は、学習部133を備えてもよい。
【0041】
受付部131は、傷病を負う可能性があるか否かを推定する対象となるユーザのアドレナリン情報を受け付けて、推定部132に伝達する。受付部131は、通信部110から伝達される、または、入力部120から伝達されることによってユーザのアドレナリン情報を受け付ける。受付部131は、受け付けたアドレナリン情報を推定部132に伝達する。
【0042】
推定部132は、受付部131から伝達されたアドレナリン情報を入力として、記憶部140に記憶されている傷病推定学習モデル141を用いて、入力したアドレナリン情報に対応するユーザが、何らかの傷病を負う可能性があるかを推定する。推定部132は、ユーザが罹患する可能性のある傷病名を推定することとしてよく、推定する傷病名は、一つであってもよいし、複数であってもよい。傷病を負う可能性がない場合には、推定部132は、傷病を負う可能性はないと推定してよい。また、推定部132は、ユーザが負う可能性が最も高い傷病を推定してもよいし、負う可能性(例えば、30%以上)が所定以上ある傷病を推定することとしてもよい。
【0043】
学習部133は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量と、ユーザが罹患する傷病との関係を学習する。具体的には、
図3に示すような教師データの入力を受け付けて、疾患情報1415を所謂ラベルとした学習を行い、傷病推定学習モデル141を生成する。学習部133が用いる学習のためのアルゴリズムとしては既存のものを用いることとしてよい。学習部133は、生成した傷病推定学習モデル141を記憶部140に記憶する。学習部133は、記憶部140に記憶されている傷病推定学習モデル141と、新たに入力された教師データを用いて、再学習を行うこととしてもよい。また、ユーザに提供した傷病推定情報による推定の真偽に関する情報をフィードバック情報として受け付けて再学習を行うこととしてもよい。
以上が傷病推定サーバ100の構成例の説明である。
【0044】
<アドレナリン推定サーバ200>
図4は、アドレナリン推定サーバ200の構成例を示すブロック図である。前述の通り、アドレナリン推定サーバ200は、ユーザの血糖値情報に基づいて、アドレナリン分泌量を推定するサーバ装置(情報処理装置)である。一般的に人間は、アドレナリンが分泌されると、血糖値が上昇することが知られている。つまり、血糖値とアドレナリンとの間には密接な関係があるといえる。したがって、逆を言えば、血糖値からアドレナリンの分泌量を推定することも可能となる。
【0045】
図4に示すように、アドレナリン推定サーバ200は、通信部210と、入力部220と、制御部230と、記憶部240と、出力部250と、を備える。通信部210と、入力部220と、制御部230と、記憶部240と、出力部250とは、バス260を介して互いに通信可能に構成されてよい。
【0046】
通信部210は、他の装置と通信を実行するための機能を有する通信インターフェースである。通信部210は、他の装置と通信可能であれば、いずれの通信プロトコルにより通信を行ってもよく、有線、無線のいずれでの通信であってよい。通信部210は制御部230からの指示にしたがって、傷病推定サーバ100と通信を行う。通信部210は、センサ300と通信を行ってもよい。
【0047】
入力部220は、アドレナリン推定サーバ200のオペレータからの入力を受け付けて、制御部230に伝達する機能を有する入力インターフェースである。入力部220は、タッチパネル等のソフトキーにより実現されてもよいし、ハードキーにより実現されてもよい。また、あるいは、入力部220は、音声入力を受け付けるためのマイクであってもよい。入力部220は、オペレータから入力された入力内容を、制御部230に伝達する。入力部220は、例えば、血糖値情報(例えば、時間毎の、血糖値の数値)の直接入力を受け付けて制御部230に伝達する。
【0048】
記憶部240は、アドレナリン推定サーバ200が動作上必要とする各種のプログラム及びデータを記憶する機能を有する。記憶部240は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現することができる。記憶部240は、アドレナリン推定学習モデル241を記憶している。アドレナリン推定学習モデル241は、アドレナリン推定サーバ200により生成されたものであってもよいし、他の装置により生成されたものを記憶していることとしてもよい。
【0049】
アドレナリン推定学習モデル241は、ユーザの運動時の血糖値と、アドレナリン分泌量との関係を学習した学習した学習モデルであり、ユーザの運動時の血糖値を取得して当該ユーザが分泌していると思われるアドレナリンの分泌量を推定するためのモデルである。アドレナリン推定学習モデル241は、アドレナリンの定性的な分泌量を推定する。
【0050】
図5は、アドレナリン推定学習モデル241を生成するための教師データの一例を示すデータ概念図である。
図5に示すように、教師データ2410は、被験者ID2411と、性別2412と、体重2413と、血糖値データ2414と、アドレナリンデータ2415とが対応付けられた情報である。教師データ2410は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量と、そのユーザが罹患した傷病を示す疾患情報とが対応付けられた情報の集合である。
【0051】
被験者ID2411は、傷病推定システム上でアドレナリン推定サーバ200が、一つ一つの教師データを識別するための情報であり、ユーザ(被験者)を識別するための情報である。
【0052】
性別2412は、対応する被験者ID2411で示されるユーザの性別を示す情報である。
体重2413は、対応する被験者ID2411で示されるユーザの体重を示す情報である。
【0053】
血糖値データ2414は、対応する被験者ID2411で示されるユーザの運動時の血糖値を示す情報である。この血糖値は、センサ300により測定されたものであってもよいし、他のセンサにより測定されたものであってもよい。
図5では、便宜的に、血糖値の値を保持する情報を示す識別情報を示している。
【0054】
アドレナリンデータ2415は、対応する被験者ID2411で示されるユーザの運動時のアドレナリン分泌量を示す情報である。このアドレナリン分泌量は、アドレナリン推定サーバ200によりユーザの血糖値から推定された情報である。
図5では、便宜的に、アドレナリンデータを保持する情報を示す識別情報を示している。
【0055】
教師データ2410は、少なくとも血糖値データ2414とアドレナリンデータ2415とがあれば、よく、その他の情報についてはなくてもよい。また、逆に、血糖値データ2414に対応する被験者に関する情報として、性別や体重以外の情報が含まれてもよく、例えば、ユーザの身長、体格、BMI(Body Mass Index)などの情報が対応付けられていてもよい。このとき、教師データとして用いるアドレナリンデータ2415は、対応する血糖値データ2414が示す時系列上での変化からアドレナリンが分泌されていると推定できる状態や感情の発露があったタイミングにおいて、血糖値の量に応じた値のデータであってよく、アドレナリンが分泌されていないと推定できるタイミングでは血糖値が高くてもアドレナリンの分泌量としては低くなるように設定された情報であってよい。
【0056】
図4に戻って、出力部250は、制御部230からの指示にしたがって、指定された情報を出力する機能を有する。出力部250による出力は、画像信号、音声信号のいずれでの出力であってもよい。画像信号による出力の場合、アドレナリン推定サーバ200に接続された(又はアドレナリン推定サーバ200が備える)モニタへの出力であってよい。また、音声信号による出力の場合、アドレナリン推定サーバ200に接続された(又はアドレナリン推定サーバ200が備える)スピーカーへの出力であってよい。出力部250は、例えば、ユーザの血糖値から推定したアドレナリンの分泌量を示すアドレナリン情報を出力する。
【0057】
制御部230は、アドレナリン推定サーバ200の各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部230は、シングルコアにより実現されてもよいし、マルチコアにより実現されてもよい。制御部230は、記憶部240に記憶される各種プログラムを実行することで、アドレナリン推定サーバ200としての機能を実現する。
【0058】
制御部230は、制御部230が実現する機能として、受付部231と、推定部232と、を備える。また、制御部230は、学習部233を備えてもよい。
【0059】
受付部231は、傷病を負う可能性があるか否かを推定する対象となるユーザの血糖値情報を受け付けて、推定部232に伝達する。受付部231は、通信部210から伝達される、または、入力部220から伝達されることによってユーザの血糖値情報を受け付ける。受付部231は、受け付けたアドレナリン情報を推定部232に伝達する。
【0060】
推定部232は、受付部231から伝達された血糖値情報を入力として、記憶部240に記憶されているアドレナリン推定学習モデル241を用いて、入力した血糖値情報に対応するユーザのアドレナリン分泌量を推定する。
【0061】
学習部233は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量と、ユーザが罹患する傷病との関係を学習する。具体的には、
図3に示すような教師データの入力を受け付けて、アドレナリンデータ2415を所謂ラベルとした学習を行い、アドレナリン推定学習モデル241を生成する。学習部233が用いる学習のためのアルゴリズムとしては既存のものを用いることとしてよい。学習部233は、生成したアドレナリン推定学習モデル241を記憶部240に記憶する。学習部233は、記憶部240に記憶されているアドレナリン推定学習モデル241と、新たに入力された教師データを用いて、再学習を行うこととしてもよい。
以上が、アドレナリン推定サーバ200の構成例の説明である。
【0062】
<センサ300の構成例>
図6は、センサ300の構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、センサ300は、通信部310と、検出部320と、記憶部340と、出力部350とを備える。
【0063】
通信部310は、他の装置と通信を実行するための機能を有する通信インターフェースである。通信部310は、他の装置と通信可能であれば、いずれの通信プロトコルにより通信を行ってもよく、有線、無線のいずれでの通信であってよい。通信部310はアドレナリン推定サーバ200と通信を行う。通信部310は、ユーザ端末500と通信を行ってもよい。
検出部320は、センサ300を装着したユーザの体液(血液)を用いて、ユーザの血糖値を検出する。
図7は、検出部320の具体構成の一例を示す図である。
【0064】
図7は第1応用形態の検出部320の主要部構成の概略図である。検出部320は所定の容器形状の検出素子321を備え、同検出素子321は計測素子700と配線接続される。検出素子321には体液採取部330が形成される。体液採取部330は公知のニードル形状であり、表面張力により血液、汗、唾液等の生体液322は採取され検出素子321内に誘導される。
【0065】
検出素子321内には、少なくとも検出対象物質としてのグルコースを識別子、体液採取部330から採取された体液中のグルコース濃度を検出するために受容体が含まれる。受容体は、識別物質と、阻害物質とを含む自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayers:SAM)で形成されている。SAMとは、通常、固体と液体の界面又は固体と気体の界面で、有機分子同士が自発的に集合して、自発的に単分子膜を形作っていく有機薄膜をいう。
【0066】
識別物質は、試料中に含まれるグルコースと結合する機能を有する。識別物質は、フェニルボロン酸を用いることができ、特にフェニルボロン酸誘導体が好ましい。このフェニルボロン酸誘導体は、同フェニルボロン酸の芳香環部分に、F(フッ素)、Cl(塩素)等のハロゲン基、または、NO
2(ニトロ基)を有する。芳香環部分にニトロ基を有するフェニルボロン酸誘導体を用いる方が、グルコースとの反応性は顕著であり、ハロゲン基を用いるよりも、好ましい。
【0067】
阻害物質は、非検出対象物質であるアルブミン等のタンパク質が、フェニルボロン酸誘導体と結合したり、酸化還元電位測定電極326表面に付着したりすることを抑制する。本実施形態の場合、阻害物質は、高分子化合物で形成される。高分子化合物は、分子鎖が識別物質より長いオリゴエチレングリコールを用いることができるほか、例えばポリエチレングリコールなども用いることができる。
【0068】
検出素子321内には、酸化還元電位測定電極326、参照電極329が装着されている。酸化還元電位測定電極326には、検出対象物質としてグルコース323を捕捉するためのグルコース捕捉分子327(フェニルボロン酸誘導体)が固定される。生体液322は血液(汗、唾液等であってもよい)であることから、検出対象物質としてのグルコース323の他に、酸化還元電位変動因子324、夾雑物325も存在する。酸化還元電位変動因子324、夾雑物325は、タンパク質、ごみ等である。なお、検出部320においては、グルコース以外の物質も酸化還元電位測定電極326を通じて検出するようにしてもよい。これには、検出対象物質を捕捉する抗体、アプタマーが捕捉分子327として用いられる。
【0069】
グルコース捕捉分子327は、一端が、電極328に電気的に接続される。計測素子700は、一例として、FETによって実現される。試料中のグルコースは、識別物質としてのグルコース捕捉分子327(フェニルボロン酸誘導体)と結合する。これにより、グルコース捕捉分子327は、負電荷を生じる。この負電荷は、電極328に帯電する。計測素子700は、FETである場合には、電極328の帯電に伴って変化するゲート電圧の変化を計測する。これによって、検出部320は、試料に含まれるグルコース濃度を検出する。また、あるいは、計測素子700は、参照電極329と、電極328との電位差に基づいて、グルコース濃度を検出する構成であってもよい。なお、
図7に示した検出部320の構成は、あくまで一例であり、グルコース濃度を検出できるのであれば、その他の構成をとってもよい。
【0070】
図6に戻って、記憶部340は、検出部320が検出した血糖値情報であるセンシングデータ341を記憶する。
【0071】
出力部350は、記憶部340に記憶されたセンシングデータ341または検出部が検出した血糖値情報を出力する。出力部350は、例えば、USB端子等の出力端子として実現することができる。
【0072】
なお、センサ300は、検出した血糖値を出力できればよく、通信部310を備えなくともよい。例えば、出力部350をUSBポートとして実現し、検出した血糖値情報を、ユーザ端末500等に接続して出力することとしてもよい。このような場合には、アドレナリン推定サーバ200に送信される血糖値情報は、ユーザ端末500から送信されることとしてもよい。また、検出部320が測定した血糖値をそのまま通信部310あるいは出力部350から出力するのであれば、記憶部340を備えないこととしてもよい。
以上が、センサ300の構成例の説明である。
【0073】
<動作>
図8は、傷病推定システムによる傷病推定の流れであって、傷病推定システムに係る各装置間のやり取りの例を示すシーケンス図である、
【0074】
図8に示すように、センサ300は、ユーザ30に装着されて、ユーザの血液から、ユーザの血糖値(血液内のグルコース濃度)を検出する(ステップS801)。センサ300は、検出した血糖値を血糖値情報として、アドレナリン推定サーバ200に送信する(ステップS802)。
【0075】
アドレナリン推定サーバ200は、受信した血糖値情報から、ユーザ30が分泌したアドレナリンの量を推定する(ステップS803)。アドレナリン推定サーバ200は、推定したユーザ30のアドレナリン分泌量を示すアドレナリン情報を、傷病推定サーバ100に送信する(ステップS804)。
【0076】
傷病推定サーバ100は、アドレナリン情報を受信すると、受信したアドレナリン情報に基づいて、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定する(ステップS805)。傷病推定サーバ100は、推定した傷病を負う可能性を示す傷病推定情報をユーザ端末500に送信する(ステップS806)。
【0077】
ユーザ30のユーザ端末500は、受信した傷病推定情報を表示する(ステップS807)。これにより、ユーザ30は、自身が傷病を負う可能性、あるいは、傷病を負っている可能性を認識することができる。
図9は、
図8に示すやり取りを実現するためのセンサ300の動作例を示すフローチャートである。
【0078】
図9に示すように、センサ300の検出部320は、ユーザ30(被験者)のグルコース値を測定する(ステップS901)。検出部320は、測定したグルコース値を記憶部340に記憶する。
【0079】
通信部310は、記憶部340に記憶されたセンシングデータを、アドレナリン推定サーバに送信する(ステップS902)。なお、このセンシングデータには、センサ300を示す識別情報(センサID)またはセンサ300を使用しているユーザ30を示す識別情報(被験者ID)が含まれる。
センサ300は、ユーザ30から取り外される、または、センサ300の起動スイッチがOFFされるまで
図9に示す処理を実行し続ける。
図10は、
図8に示すやり取りを実現するためのアドレナリン推定サーバ200の動作例を示すフローチャートである。
【0080】
図10に示すように、アドレナリン推定サーバ200の通信部210は、センサ300から送信されたユーザ30の血糖値を示す血糖値情報を受信する(ステップS1001)。通信部210は、受信した血糖値情報を制御部230に伝達する。制御部230の受付部231は、通信部210から伝達された血糖値情報を、傷病を負う可能性を推定する被験者の情報として受け付けて、推定部232に伝達する。
【0081】
推定部232は、血糖値情報を伝達されると、伝達された血糖値情報を入力として、記憶部240に記憶されているアドレナリン推定学習モデル241を用いて、ユーザ30のアドレナリン分泌量を推定する(ステップS1002)。
【0082】
そして、推定部232は、推定したアドレナリン分泌量を示すアドレナリン情報を、通信部210を介して、傷病推定サーバ100に送信し(ステップS1003)、処理を終了する。アドレナリン推定サーバ200から傷病推定サーバ100に送信されるアドレナリン情報には、どのユーザの情報であるかを識別するための識別情報が含まれる。アドレナリン推定サーバ200は、
図10に示す処理を、血糖値情報を受信するごとに実行する。
図11は、
図8に示すやり取りを実現するための傷病推定サーバ100の動作例を示すフローチャートである。
【0083】
図11に示すように、傷病推定サーバ100の通信部110は、アドレナリン推定サーバ200から送信されたユーザ30の血糖値に基づいて推定されたアドレナリン分泌量を示すアドレナリン情報を受信する(ステップS1101)。通信部110は、受信したアドレナリン情報を制御部130に伝達する。制御部130の受付部131は、通信部110から伝達されたアドレナリン情報を、傷病を負う可能性を推定する被験者の情報として受け付けて、推定部132に伝達する。
【0084】
推定部132は、アドレナリン情報を伝達されると、伝達されたアドレナリン情報を入力として、記憶部140に記憶されている傷病推定学習モデル141を用いて、ユーザ30が傷病を負う可能性、もしくは、傷病を負っている可能性を推定する(ステップS1102)。
【0085】
そして、推定部132は、推定したユーザ30が傷病を負う可能性を示す傷病推定情報を、通信部110を介して、ユーザ端末500に送信し(ステップS1103)、処理を終了する。傷病推定サーバ100からユーザ端末500に送信される傷病推定情報には、どのユーザの情報であるかを識別するための識別情報が含まれてもよい。傷病推定サーバ100は、
図10に示す処理を、アドレナリン情報を受信するごとに実行する。
以上が、傷病推定システムにおけるユーザの運動時のアドレナリン分泌量に基づく傷病を負う可能性の推定の手法である。
【0086】
図12は、ユーザ端末500等に表示されるユーザ30の傷病推定情報の表示例を示す図である。
図12は、ユーザ端末500をスマートフォンと想定した場合の表示例を示している。
【0087】
図12に示すように、ユーザ端末500は、傷病推定情報として、ユーザ端末500の保持者であるユーザ30が負う可能性がある傷病情報1212を表示する。
図12では、傷病情報1212として、傷病名と、その傷病名を負う確率を表示する例を示しており、ここでは、肥満になる可能性が80%あること、糖尿になる可能性が40%ある例を示している。また、ユーザ端末500は、傷病推定情報として、傷病情報1212の元となった、ユーザのアドレナリンの分泌量を示すアドレナリン情報1211を表示してもよい。
図12では、アドレナリン情報1211として、時間毎のアドレナリンの分泌量の推移をグラフで表す例を示している。
【0088】
<第1実施形態まとめ>
上記第1実施形態に示したように、傷病推定サーバ100は、ユーザ30の運動時のアドレナリン分泌量に基づいて、ユーザ30が傷病を負う可能性、傷病を負っている可能性を推定することができる。ユーザ30が運動時において、特に、緊迫した場面などにおいては多量のアドレナリンが分泌されていると推定され、それに応じて血糖値の値を高くなる。また、アドレナリンはユーザの血糖値上昇に関与することから、ユーザの健康状態を左右する可能性があり、アドレナリンの分泌量とユーザが負った傷病の履歴とから、他のユーザの運動時のアドレナリンの分泌量を用いて、他のユーザが傷病を負う可能性を推定することができる。したがって、何らかの傷病を負う可能性があると推定されたユーザは、その傷病を負わないための善後策を講じることができる。
【0089】
<第2実施形態>
上記第1実施形態においては、ユーザ30が傷病を負う可能性を、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量に基づいて推定することとしたが、これは、その限りではない。傷病推定サーバ100は、ユーザ30のアドレナリン分泌量ではなく、血糖値(グルコース分泌量)から、直接傷病を推定することとしてもよい。
【0090】
図13は、第2実施形態に係る傷病推定システムの構成例を示すシステム図である。
図13に示すように、傷病推定システムは、傷病推定サーバ100を含み、センサ300やユーザ端末500を含んでもよい。
図13に示すように、第1実施形態と異なり、傷病推定システムには、アドレナリン推定サーバ200が含まれていない。
【0091】
図13に示す傷病推定システムでは、センサ300は、測定したセンシングデータ(血糖値情報)を、直接、傷病推定サーバ100に送信する。そして、傷病推定サーバ100は、受信した血糖値情報から、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定する。そして、傷病推定サーバ100は、血糖値に基づいて推定した傷病推定情報を、ユーザ30のユーザ端末500に送信する。このように、第2実施形態では、傷病推定システムは、アドレナリン分泌量に変換することなく、ユーザ30の運動時の血糖値から、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定する。以下、具体的に説明するが、第2実施形態においては、第1実施形態との差異についてのみ説明する。
傷病推定サーバ100の構成としては、
図2に示す構成と同様である。一方で、各機能部が実現する機能において差異が存在する。
まず、受付部131は、ユーザ30の運動時のアドレナリン情報に代えて、ユーザ30の運動時の血糖値情報を受け付け、推定部132に伝達する。
【0092】
また、推定部132は、アドレナリン情報ではなく、血糖値情報と、傷病推定学習モデルとから、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定する。ここで、第2実施形態に係る傷病推定学習モデルについて説明する。
【0093】
第2実施形態に係る傷病推定学習モデルは、ユーザの運動時の血糖値情報と、そのユーザが負った傷病との関係を学習したモデルであり、ユーザ30の運動時の血糖値情報の入力を受け付けて、そのユーザ30が傷病を負う可能性(または負っている可能性)を推定するために用いるモデルである。
【0094】
図14は、第2実施形態に係る傷病推定学習モデルを生成するために用いる教師データ3410のデータ構成例を示すデータ概念図である。
図14に示す教師データ3410のデータ構成例は、おおよそ、
図3に示す教師データ1410と同様であるが、第1実施形態に示す教師データ1410が、アドレナリンデータ1414を保持していたのに対して、本第2実施形態においては、アドレナリンデータ1414に代えて血糖値データ2414を保持している点において相違する。したがって、
図14に示す教師データ3410を用いて学習した場合に生成されるモデルは、血糖値と、傷病を負う可能性との関係を学習したモデルとなる。教師データ3410は、少なくとも血糖値データ2414と、疾患情報1415とが、対応付けられていればよく、必要に応じて、他の情報は削除してもよいし、対応するユーザに関する他の情報が追加されてもよい。
【0095】
図15は、第2実施形態に係る傷病推定サーバ100の動作例を示すフローチャートである。
【0096】
図15に示すように、傷病推定サーバ100の通信部110は、センサ300からユーザ30(被験者)の血糖値情報を受信する(ステップS1501)。通信部110は、受信した血糖値情報を、制御部130に伝達する。
【0097】
制御部130の受付部131は、伝達された血糖値情報を、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定するための情報として受け付ける。受付部131は、受け付けた血糖値情報を制御部130に伝達する。制御部130の推定部132は、受け付けた血糖値情報を入力として、傷病推定学習モデル141を用いて、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定する(ステップS1502)。
【0098】
推定部132は、推定した傷病を負う可能性を示す傷病推定情報を生成し、生成した傷病推定情報を、通信部110を介して、ユーザ端末500に送信し(ステップS1503)、処理を終了する。
【0099】
このように、傷病推定サーバ100は、ユーザのアドレナリン分泌量ではなく、血糖値情報に基づいて、ユーザ30が傷病を負う可能性を推定することができる。
【0100】
なお、ユーザ端末500は、一般的なスマートフォンやタブレット端末と同様であり、少なくとも通信機能とデータを表示する表示機能とを有していれば従来の端末と同様であるので、詳細な構成の説明については省略する。
【0101】
<第2実施形態のまとめ>
第2実施形態に係る傷病推定システムによれば、ユーザの運動時の血糖値から直接、ユーザが傷病を負う可能性を推定することができる。
【0102】
<補足>
上記実施形態に係る傷病推定システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、各構成は、他の手法により実現されてもよい。以下、各種変形例について説明する。
【0103】
(1)上記第1実施形態においては、血糖値からアドレナリンを推定するために、血糖値とアドレナリンとの関係を学習した学習モデルを用いて推定することとしたが、これはその限りではない。血糖値を入力とし、アドレナリン値を出力する予め定められた関数により算出することとしてよい。このとき、時系列のデータとなる血糖値のデータに対してアドレナリンを分泌していると推定されるタイミング(または、分泌していないと推定されるタイミング)に対して重み付けを行ってアドレナリン値を推定することとしてもよい。
【0104】
(2)上記実施形態に示した検出部320の構成は、
図7の構成に限定するものではない。他の構成により実現されてもよい。
【0105】
図16は他の検出部320(他項目生体分子計測器)の主要部構成の概略図である。検出部320は所定の容器形状の検出素子321を備え、同検出素子321は計測素子700と配線接続される。検出素子321には体液採取部330が形成される。体液採取部330は公知のニードル形状であり、表面張力により皮膚表面の汗、唾液等の生体液322は採取され検出素子321内に誘導される。
【0106】
検出素子321内には、酸化還元電位測定電極326、参照電極329が装着されている。酸化還元電位測定電極326には、検出対象物質としてグルコース323を捕捉するためのグルコース捕捉分子327(フェニルボロン酸誘導体)が固定される。生体液322は血液、汗、唾液等であることから、検出対象物質としてのグルコース323の他に、タンパク質、ごみ等の酸化還元電位変動因子324、夾雑物325も存在する。なお、検出部320においては、グルコース以外の物質も酸化還元電位測定電極326を通じて検出するようにしてもよい。これには、検出対象物質を捕捉する抗体、アプタマーが捕捉分子327として用いられる。
【0107】
検出部320(他項目生体分子計測器)にあっては、計測素子700は、グルコース323の酸化還元電位測定電極326と、参照電極329との電位差を測定する構成である。そこで、電圧の変化からグルコースの量が推定される。
また、検出部320は、
図17に示す態様で実現されてもよい。
【0108】
図17は他の検出部320(他項目生体分子計測器)の主要部構成の概略図である。検出部320は所定の容器形状の検出素子321を備え、同検出素子321は計測素子700と配線接続される。検出素子321には体液採取部330が形成される。体液採取部330は公知のニードル形状であり、表面張力により皮膚表面の汗、唾液等の生体液322は採取され検出素子321内に誘導される。
【0109】
検出素子321内には、酸化還元電位測定電極326、参照電極329、対電極331が装着されている。酸化還元電位測定電極326には、検出対象物質としてグルコース323を捕捉するためのグルコース捕捉分子(フェニルボロン酸誘導体)が固定される。生体液322は汗、唾液等であることから、検出対象物質としてのグルコース323の他に、タンパク質、ごみ等の酸化還元電位変動因子324、夾雑物325も存在する。なお、検出部320においても、グルコース以外の物質も酸化還元電位測定電極326を通じて検出するようにしてもよい。これには、検出対象物質を捕捉する抗体、アプタマーが捕捉分子として用いられる。
【0110】
検出部320(他項目生体分子計測器)にあっては、計測素子700は、グルコース323の酸化還元電位測定電極326について、参照電極329と対電極331を通じて電流量の変化が計測される構成である。そこで、電流の変化からグルコースの量が推定される。検出部320はこのように構成されてもよい。
【0111】
(3)上記実施の形態においては、ユーザの運動時の血糖値から推定されたアドレナリン分泌量、あるいは、血糖値に基づいて、ユーザが傷病を負う可能性を推定する傷病推定システムについて説明した。また、その血糖値を測定するセンサとしては、
図7、
図16、
図17に一例を示した。
【0112】
ところで、上述のセンサは、血糖値の値だけでなく、酸化還元電位の測定も行うことができる。そこで、上記傷病推定システムにおいて、更に、酸化還元電位を利用しての傷病推定も行ってもよい。本補足においては、その酸化還元電位も利用しての傷病を負う可能性の推定を行うことができる傷病推定システムについて説明する。
【0113】
図19は、本補足における教師データのデータ構成例を示すデータ概念図である。
図19に示すように、本補足における教師データ1410は、被験者ID1411と、性別1412と、体重1413と、アドレナリンデータ1414と、酸化還元電位データ1801と、疾患情報1415とが対応付けられた情報である。教師データ1410は、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量と、ユーザの運動時の酸化還元電位の推移と、そのユーザが罹患した傷病を示す疾患情報とが対応付けられた情報の集合である。これらの情報のうち、上記実施の形態に示した情報と同じ内容の情報については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0114】
図19に示す教師データ1410における酸化還元電位データ1801は、対応する被験者ID1411で示されるユーザの運動時の酸化還元電位の推移を示す情報である。酸化還元電位は、体液の状態が酸化状態にあるか還元状態にあるかを測定することができる。外因的なストレスや、傷病によって、活性酸素を中心とするフリーラジカルなどが過剰に生じることで、体液は酸化状態となる。高脂肪体や高血糖状態が長期間続くことで、血管内にはフリーラジカルが生じ、血管内皮にダメージを与え、腎障害、網膜症、歯周病など様々な生活習慣病を引き起こすことが知られている(Wells-Knecht, K.J. et al. Biochem. 34, 3702-3709 (1995)など)。さらに、近年、健常者と、メタボリックシンドローム患者および2型糖尿病患者での血液の酸化還元電位を測定した報告があり(Spanidis, Y. et al. Exp. Therap. Med. 11, 895-903 (2016))、健常者の血中酸化還元電位に対して、メタボリックシンドローム患者および2型糖尿病患者のそれは、酸化還元電位が高く、血中が酸化状態にあることが明らかとなっているしたがって、酸化還元電位の推移は、傷病の推定の参考とすることができる。酸化還元電位データ1801は、対応するアドレナリンデータ1414と同じ時系列で測定された情報である。酸化還元電位データ1801とアドレナリンデータ1414とのその変化の推移に係るタイムスタンプは互いに同期していることが望ましいが、共に運動時の測定データであれば、異なるタイミングで測定されたデータであってもよい。
【0115】
図19に示した教師データ1410を用いて学習モデルを生成することで、この学習モデルは、ユーザの運動時の酸化還元電位の推移と、同ユーザの運動時のアドレナリン分泌量の推移とから、ユーザが傷病を負う可能性を推定することができるモデルとなる。なお、このモデルは、酸化還元電位の推移と、アドレナリン分泌量の推移のいずれかだけの入力で、ユーザが傷病を負う可能性を推定することができるが、双方の入力があることが望ましい。
【0116】
図20は、本補足における傷病推定システムによるユーザが傷病を負う可能性を推定する手順を示したシーケンス図であり、傷病推定システムに係る各装置間のやり取りの例を示す図である。
図20は、上記実施形態1に示した傷病推定システムに準拠した構成のシステムでの推定を行う例を示している。
【0117】
図20に示すように、センサ300は、センサ300を装着しているユーザの運動時の血糖値と、酸化還元電位を検出する(ステップS1901)。センサ300は、測定したデータのうち、血糖値の推移を示す血統情報はアドレナリン推定サーバ200に送信し(ステップS802)、酸化還元電位の推移を示す酸化還元電位情報は、傷病推定サーバ100に送信する(ステップS1902)。このとき送信される血糖値情報及び酸化還元電位情報には、共に、どのユーザの情報であるかを一意に特定できるユーザの識別情報といつ測定されたものであるかを示す日時情報とを含んでよい。このユーザの識別情報及び日時情報は、傷病推定サーバ100が、酸化還元電位情報と、アドレナリン推定サーバ200が推定するアドレナリン分泌量とについて同じユーザのものであることを特定するための情報である。ここでの識別情報及び日時情報の付与は、酸化還元電位情報及び血糖値情報それぞれにシステム上で固有となる同じ識別情報を付与することによっても実現することができる。
【0118】
アドレナリン推定サーバ200は、上記実施形態1に示したように、血糖値情報から、アドレナリン分泌量を推定し、その推移を示すアドレナリン情報を傷病推定サーバ100に送信する(ステップS803、S804)。このアドレナリン情報には、推定されたアドレナリン分泌量の推移を示す情報の他、血糖値情報に含まれていたユーザの識別情報と日時情報とが含まれる。
【0119】
傷病推定サーバ100は、センサ300から酸化還元電位情報を受信する。また、傷病推定サーバ100は、アドレナリン推定サーバ200から、アドレナリン情報を受信する。傷病推定サーバ100は、受信した酸化還元電位情報とアドレナリン情報とが同じユーザのものであるかを、それぞれに含まれるユーザの識別情報と日時情報とを照合して確かめたうえで、酸化還元電位情報とアドレナリン情報とを学習モデルに入力する。そして、当該入力にしたがって、傷病推定サーバ100の推定部132は、ユーザが傷病を負う可能性を推定する(ステップS1903)。そして、傷病推定サーバ100は、推定した結果を示す傷病推定情報をユーザ端末500に送信する(ステップS806)。
【0120】
ユーザ端末500は、傷病推定情報を受信すると、その内容を表示する(ステップS807)。これにより、ユーザは、ユーザの運動時の酸化還元電位の推移およびアドレナリン分泌量の推移から、自身が傷病を負う可能性がどの程度あるのか、どのような傷病を負う可能性があるのかを認識することができる。
【0121】
なお、本補足における傷病推定システムにおいては、教師データとして、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量の推移と、酸化還元電位の推移と、を含む情報を学習することで、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量の推移と酸化還元電位の推移とに基づく傷病を負う可能性の推定を行うことができているが、酸化還元電位の推移を用いた推定はこれに限定するものではない。本補足で示した態様以外の例をとってもよいことはいうまでもない。
【0122】
例えば、
図18に示した教師データにおいて、アドレナリン分泌量の推移に代えて、血糖値の推移を用いてもよい。この場合には、ユーザの運動時の血糖値の推移と、酸化還元電位の推移との入力を受け付けて、ユーザが傷病を負う可能性を示す情報を出力する傷病推定システムを提供することができる。
【0123】
また、上記実施形態1、実施形態2において、アドレナリン分泌量の推移や血糖値の推移に基づくユーザの傷病の可能性の推定とは個別に、ユーザの運動時の酸化還元電位の推移に基づいてユーザが傷病を負う可能性を推定することとしてもよい。即ち、傷病推定システムは、ユーザの運動時のアドレナリン分泌量の推移に基づいて、ユーザが傷病を負う可能性を推定し、ユーザの運動時の酸化還元電位の推移に基づいて、ユーザが傷病を負う可能性を推定し、双方の推定結果を出力することとしてもよい。また、双方の推定結果を出力するのではなく、双方の推定結果において、双方において共に同種の傷病を負う可能性が高いと推定した、その傷病の情報を出力することとしてもよい。また、双方の推定結果それぞれで傷病を負う可能性が高いと推定した傷病のうち、傷病を負う可能性が所定の閾値以上となった傷病の情報を出力することとしてもよい。
【0124】
本補足に示したように、血糖値あるいは血糖値に基づくアドレナリン分泌量以外の情報としてユーザの運動時の酸化還元電位の推移を用いてユーザが傷病を負う可能性を推定することで、血糖値あるいはアドレナリン分泌量からだけでは推定することができない傷病を負う可能性を推定することができたり、ユーザの運動時の血糖値あるいはアドレナリン分泌量から推定した傷病を負う可能性の確度を高めたりすることができる。
【0125】
(4)上記実施の形態においては、傷病推定システムにおける傷病を負う可能性を推定する手法として、傷病推定サーバのプロセッサが傷病推定プログラム等を実行することにより、推定することとしているが、これは装置に集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよい。また、これらの回路は、1または複数の集積回路により実現されてよく、上記実施の形態に示した複数の機能部の機能は1つの集積回路により実現されることとしてもよい。LSIは、集積度の違いにより、VLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIなどと呼称されることもある。
【0126】
上記傷病推定プログラムは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体に記録されていてよく、記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記傷病推定プログラムは、当該傷病推定プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記プロセッサに供給されてもよい。つまり、例えば、スマートフォン等の情報処理機器を利用して、ネットワーク上から傷病推定プログラムをダウンロードして実行する構成としてもよい。本発明は、上記傷病推定プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0127】
なお、上記傷病推定プログラムは、例えば、ActionScript、JavaScript(登録商標)などのスクリプト言語、Objective-C、Java(登録商標)、C++、Python、Rなどのオブジェクト指向プログラミング言語などを用いて実装できる。
【0128】
(4)上記実施形態および補足に示す各種の構成は適宜組み合わせることとしてよい。