(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-19707(P2021-19707A)
(43)【公開日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】移乗支援装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/053 20060101AFI20210122BHJP
【FI】
A61G7/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-136820(P2019-136820)
(22)【出願日】2019年7月25日
(71)【出願人】
【識別番号】519271517
【氏名又は名称】株式会社大紘技健
(74)【代理人】
【識別番号】100153268
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 朋重
(72)【発明者】
【氏名】大平 紘一
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040EE04
4C040HH02
4C040JJ01
4C040JJ08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】介護従事者が介護設備間において病人・被介護者を移乗させるとき、介護従事者による支援の労力を大幅に軽減する移乗支援装置を提供する。
【解決手段】長方形様の外形状を成し、上表面が滑り易く加工される板状体2と、前記板状体に連結され、レバーを上下操作することによって前記板状体の高さを変更する高さ調整部4と、コの字型形状を成し、前記コの字の開口部8を前記板状体の方に向け、前記板状体の上面であって、長手方向端部に配置されるハンドル部6と、前記高さ調整部に連結されると共に、床面に接地し、前記床面上の移動を容易にする静止機能付キャスター部10と、前記板状体と該板状体上に座る前記病人・被介護者との間に敷く布状体12であって、引っ張ることによって前記座る病人・被介護者の移動を容易にする、表面が滑り易く加工される布状体と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病人・被介護者の介護設備間における移乗を支援する移乗支援装置であって、
長方形様の外形状を成し、上表面が滑り易く加工される板状体と、
前記板状体に連結され、レバーを上下操作することによって前記板状体の高さを変更する高さ調整部と、
コの字型形状を成し、前記コの字の開口部を前記板状体の方に向け、前記板状体の上面であって、長手方向端部に配置されるハンドル部と、
前記高さ調整部に連結されると共に、床面に接地し、前記床面上の移動を容易にする静止機能付キャスター部と、
前記板状体と該板状体上に座る前記病人・被介護者との間に敷く布状体であって、引っ張ることによって前記座る病人・被介護者を移動させ、移動を容易にするために表面が滑り易く加工される布状体と、を有することを特徴とする移乗支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前記移乗支援装置を利用し、前記病人・被介護者の介護設備間における移乗を支援する移乗支援方法であって、
前記高さ調整部を操作し、前記板状体の高さを一の前記介護設備の高さに合わせるステップと、
前記一の介護設備の上に前記布状体を敷き、前記病人・被介護者を前記布状体の上に移動させた後、前記布状体を引っ張ることによって前記病人・被介護者を前記一の介護設備及び前記板状体の上を滑らせ、前記板状体上に導くステップと、
前記板状体上の前記病人・被介護者に前記ハンドル部を握らせ、前記病人・被介護者のバランスを安定化させるステップと、
前記キャスター部を利用し、前記病人・被介護者を乗せた前記移乗支援装置を他の前記介護設備の近傍へ移動させるステップと、
前記高さ調整部を操作し、前記板状体の高さを前記他の介護設備の高さに合わせるステップと、
前記布状体を引っ張ることによって前記病人・被介護者を前記板状体及び前記他の介護設備の上で滑らせ、前記他の介護設備上に導くステップと、を含むことを特徴とする移乗支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベッド、車椅子、ストレッチャー、便座等の介護設備間における病人・被介護者の移乗を支援する装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病人・被介護者など他人の介護が必要な者は、ベッドから車椅子や車椅子から便座へ移動するとき(これらの逆も含む)、介護者の支援が必要なときが有る。
【0003】
そういった場合、病人・被介護者の体重が重いときや病人・被介護者が体に十分に力を入れることができず姿勢を保ち難いときなどは、病人・被介護者の移乗を支援する介護者の労力は大きく、腰痛を引き起こすなど介護者の健康を害する恐れがあるという問題がある。また、介護業務が重労働であることを背景に、介護従事者が減少してしまうおそれがあるという問題もある。
【0004】
そういった背景下、介護従事者の負担を軽減するための技術の開発が盛んに行われており、例えば特許文献1では、寝たきり病人などを、看護人などの大きな力を要せずして目的場所へ乗り移らせることを可能とする装置の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−068740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術は、介護設備間を移乗させる病人・被介護者が座る位置の高さ調節を介護者が行い難く、また、介護設備及び支援装置上の摩擦によって移乗動作が難しいという問題点がある。
【0007】
そこで本発明では、上記問題点に鑑み、介護従事者が介護設備間において病人・被介護者を移乗させるとき、介護従事者による支援の労力を大幅に軽減させる移乗支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示する移乗支援装置の一形態は、病人・被介護者の介護設備間における移乗を支援する移乗支援装置であって、長方形様の外形状を成し、上表面が滑り易く加工される板状体と、前記板状体に連結され、レバーを上下操作することによって前記板状体の高さを変更する高さ調整部と、コの字型形状を成し、前記コの字の開口部を前記板状体の方に向け、前記板状体の上面であって、長手方向端部に配置されるハンドル部と、前記高さ調整部に連結されると共に、床面に接地し、前記床面上の移動を容易にする静止機能付キャスター部と、前記板状体と該板状体上に座る前記病人・被介護者との間に敷く布状体であって、引っ張ることによって前記座る病人・被介護者の移動を容易にする、表面が滑り易く加工される布状体と、を有することを特徴とする。
【0009】
開示する移乗支援方法の一形態は、上記の移乗支援装置を利用し、前記病人・被介護者の介護設備間における移乗を支援する移乗支援方法であって、前記高さ調整部を操作し、前記板状体の高さを一の前記介護設備の高さに合わせるステップと、前記一の介護設備の上に前記布状体を敷き、前記病人・被介護者を前記布状体の上に移動させた後、前記布状体を引っ張ることによって前記病人・被介護者を前記一の介護設備及び前記板状体の上を滑らせ、前記板状体上に導くステップと、前記板状体上の前記病人・被介護者に前記ハンドル部を握らせ、前記病人・被介護者のバランスを安定化させるステップと、前記キャスター部を利用し、前記病人・被介護者を乗せた前記移乗支援装置を他の前記介護設備の近傍へ移動させるステップと、前記高さ調整部を操作し、前記板状体の高さを前記他の介護設備の高さに合わせるステップと、前記布状体を引っ張ることによって前記病人・被介護者を前記板状体及び前記他の介護設備の上で滑らせ、前記他の介護設備上に導くステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
開示する移乗支援装置は、介護従事者が介護設備間において病人・被介護者を移乗させるとき、介護従事者による支援の労力を大幅に軽減させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係る移乗支援装置の全体図(布状体を除く)である。
【
図2】本実施の形態に係る移乗支援装置の全体図(布状体を含む)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
(本実施の形態に係る移乗支援装置の構造)
【0013】
図1及び2を用いて、本実施の形態に係る移乗支援装置(以下、単に「本装置」という。)1の構造について説明する。
図1は、本装置1の全体構造を分り易く説明するために、本装置1から布状体12を省略した図であり、
図2は、布状体12を含む本装置1の全体構成を示す図である。
【0014】
本装置1は、板状体2、高さ調整部4、ハンドル部6、キャスター部10、布状体12を有する。本装置1は、一の介護設備16から他の介護設備16へ病人・被介護者14を移乗させる介護従事者の作業を支援するためのものである。病人・被介護者14とは、一の介護設備16から他の介護設備16への移動において、他人の支援が必要な人を指す。介護設備16とは、ベッド、ストレッチャー、車椅子、便器(便器の便座)等を指す。
【0015】
板状体2は、所謂座面であって、長方形様の外形状を成し、上表面が滑り易く加工されている板状の部位である。板状体2は、板状体2上における病人・被介護者14の移動を容易にするために、上表面が滑り易く加工されている。本装置1では、板状体2の上面に病人・被介護者14を乗せて使用する。
【0016】
高さ調整部4は、板状体2の下方に連結される部位である。高さ調整部4は、レバーを上下操作することによって、板状体2の高さを自在に変更させることが可能である。板状体2の高さを自在に変更させることによって、異なる高さの介護設備16間の病人・被介護者14の移動を容易にする。高さ調整部4は、例えば、レバーの操作を行わないときは、板状体2の高さが固定され、レバーを上下に反復操作するときは、板状体2の高さが増し、レバーを最下位位置にしかつ板状体2に下向きの力を加えると、板状体2が下降する。
【0017】
ハンドル部6は、板状体2上に座る病人・被介護者14に掴まらせ、病人・被介護者14のバランス(姿勢)を保たせるための部位である。ハンドル部6は、コの字型形状を成し、当該コの字の開口部8を板状体2の方に向けて、板状体2の上面に配置される。さらに、ハンドル部6は、板状体2の長手方向端部に配置される。病人・被介護者14が板状体2上に座るスペースを確保するためである。
【0018】
キャスター部10は、高さ調整部4の下方に連結されると共に、床面に接地し、床面上の移動を容易にするための部位である。キャスター部10は、本装置1を現在位置に静止させるストッパー機能を備えている。病人・被介護者14を介護設備16の上に移動させ、また、病人・被介護者14を介護設備16から降ろす作業の負担を軽減させるためである。
【0019】
布状体12は、板状体2と板状体2上に座る病人・被介護者14との間に敷く布であり、引っ張ることによって病人・被介護者14を移動させ、病人・被介護者14の移動を容易にするために表面が滑り易く加工される。
【0020】
上記のような構造に基づいて、本装置1は、介護従事者が介護設備16間において病人・被介護者14を移乗させるとき、介護従事者による支援の労力を大幅に軽減させる。
(本実施の形態に係る移乗支援装置の使用方法)
【0021】
図1及び2を用いて、本装置1を利用して、病人・被介護者14を一の介護設備16から他の介護設備16へ移乗させるときの流れを説明する。本装置1は、病人・被介護者14の介護設備16間における移乗を支援する装置である。
【0022】
はじめに、介護従事者は、高さ調整部4を操作し、板状体(座面)2の高さを一の介護設備16の高さに合わせる。そして、介護従事者は、一の介護設備16の上に布状体12を敷き、病人・被介護者14を布状体12の上に移動させた後、布状体12を引っ張って、布状体12ごと病人・被介護者14を一の介護設備16及び板状体2の上を滑らせ、板状体2上に移動させる。そのとき、病人・被介護者14は、板状体2を跨いだ状態で、かつ、ハンドル部6の方を向いた姿勢になっている。
また、介護従事者は、板状体2上の病人・被介護者14にハンドル部6を握らせ、病人・被介護者14の姿勢・バランスを安定化させる。
【0023】
次に、介護従事者は、キャスター部10を利用し、病人・被介護者14を乗せた本装置1を他の介護設備16の近傍へ移動させる。その後、介護従事者は、高さ調整部4を操作し、板状体2の高さを他の介護設備16の高さに合わせる。
【0024】
最後に、介護従事者は、布状体12を引っ張ることによって、布状体12ごと病人・被介護者14を板状体2及び他の介護設備14の上で滑らせ、病人・被介護者14を他の介護設備16上に移動させる。
【0025】
上記のような使用方法によって、本装置1は、介護従事者が介護設備16間において病人・被介護者14を移乗させるとき、介護従事者による支援の労力を大幅に軽減させることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 移乗支援装置
2 板状体(座面)
4 高さ調整部
6 ハンドル部
8 コの字の開口部
10 キャスター部
12 布状体
14 病人・被介護者
16 介護設備