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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-197200(P2021-197200A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】トーンアームの横回転ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 3/085 20060101AFI20211129BHJP
   G11B 3/10 20060101ALI20211129BHJP
   G11B 3/06 20060101ALI20211129BHJP
   G11B 3/32 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   G11B3/085 S
   G11B3/10
   G11B3/06
   G11B3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-87340(P2021-87340)
(22)【出願日】2021年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2020-100341(P2020-100341)
(32)【優先日】2020年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515206920
【氏名又は名称】株式会社由紀精密
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】高田 翔丸
(57)【要約】
【課題】表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームの横回転を制動して、音の再現度を高める。
【解決手段】トーンアーム5の回転軸9に、回転軸9に直交する円盤状の強磁性体20を固定し、この強磁性体20に回転軸9の軸方向に隣接して対向する面上に、複数の磁石を回転軸9の同心円上にN極とS極が交互に並ぶように配設してなる磁石ブロック21を設け、トーンアーム5の回転に伴って回転する強磁性体20の回転を磁気ヒステリシスによる磁気摩擦力で制動することにより、カンチレバー8の動きがトーンアーム5に横回転を起こして音の再現度を下げることを防止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
前記トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
前記回転軸と直交する一面を有し該回転軸に固定された強磁性体と、
該強磁性体の前記一面に前記回転軸方向に隣接して対向する面を有し、該面上に複数の磁石が前記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックであって、前記強磁性体に機械的に干渉することなく磁力が作用し得る位置に、前記回転軸を囲むように該回転軸から離間して固設された磁石ブロックと、
を備えてなるトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項2】
前記強磁性体が、前記回転軸と直交するように該回転軸に固定された円盤状の強磁性体である請求項1記載のトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項3】
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
前記トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
複数の磁石が前記回転軸と直交する面上の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる、前記回転軸に固定された磁石ブロックと、
前記磁石ブロックに機械的に干渉することなく該磁石ブロックからの磁力が作用し得る位置において、一表面が前記回転軸と直交する向きにして、かつ該一表面が前記磁石ブロックと前記回転軸の軸方向に隣接して向かい合う状態で前記回転軸を囲むように該回転軸から離間して配設された強磁性体と、
を備えてなるトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項4】
前記磁気ブロックにおいて前記複数の磁石は、N極とS極との間隔を1mm以下にして配置されている請求項1から3いずれか1項記載のトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項5】
前記回転軸の軸方向に隣接した前記強磁性体と前記磁石ブロックとの組が、前記軸方向に亘って複数組設けられている請求項1から4いずれか1項記載のトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項6】
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
前記トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
前記回転軸と同心状の外周面を有し該回転軸に固定された強磁性体と、
該強磁性体の前記外周面に前記回転軸の径外方から隣接して対向する複数の磁石が、前記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックであって、前記強磁性体に機械的に干渉することなく磁力が作用し得る位置に配設された磁石ブロックと、
を備えてなるトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項7】
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
前記トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
該回転軸に固定された磁石ブロックであって、複数の磁石が前記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックと、
前記磁石ブロックに機械的に干渉することなく該磁石ブロックからの磁力が作用し得る位置において、前記回転軸と同心状の内周面が前記複数の磁石に前記回転軸の径外方から隣接して対向するように配設された強磁性体と、
を備えてなるトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項8】
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
前記トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
前記回転軸と同心状の外周面を有し、該回転軸から離して固定された強磁性体と、
該強磁性体の前記外周面に前記回転軸の径外方から隣接して対向する複数の磁石が、前記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックであって、前記強磁性体に機械的に干渉することなく磁力が作用し得る位置において前記回転軸に固定された磁石ブロックと、
を備えてなるトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項9】
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
前記トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
該回転軸から離して固定された磁石ブロックであって、複数の磁石が前記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックと、
前記磁石ブロックに機械的に干渉することなく該磁石ブロックからの磁力が作用し得る位置において前記回転軸に固定され、該回転軸と同心状の内周面が前記複数の磁石に前記回転軸の径外方から隣接して対向するように配設された強磁性体と、
を備えてなるトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【請求項10】
前記回転軸の径方向に隣接した前記強磁性体と前記磁石ブロックとの組が、前記回転軸の軸方向に亘って複数組設けられている請求項6から9いずれか1項記載のトーンアームの横回転ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトーンアームの横回転ブレーキ装置、詳細には、再生装置におけるトーンアームの望ましくない横回転に制動力を作用させて音の再現度を高める横回転ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レコード盤から音楽等の情報を再生するレコードプレーヤ等の再生装置が広く実用に供されている。その種の再生装置においては、情報再生のために多くの場合、レコード盤の音溝に追随する針を固定したカンチレバーを保持したカートリッジが用いられる。そしてそのカートリッジは、一般にトーンアームに保持して使用される。カンチレバーは、レコード盤の音溝の形状に対応した針の動きを発電機構に伝達し、それにより発電機構から、音溝の形状つまり記録情報に対応した電圧の再生信号が得られる。
【0003】
したがって、記録情報を精度良く再生する再生信号を得るためには、カンチレバーの動きが正確に発電機構に伝達されることが必要である。しかし本発明者の研究によると、カンチレバーの動きの一部が、トーンアームを横回転させる方向に作用し、そのために再生信号の精度が損なわれ得ることが解った。なお上記の横回転とは、情報再生のために回転されているレコード盤の回転軸と平行なトーンアームの回転軸を中心とする回転のことである。この問題を防止するためには、トーンアームがカンチレバーの動き程度で横回転の方向へ動くことがないようにして、音溝に追随するカンチレバーの動きだけを許容するように、トーンアームに一定の制動力を作用させることが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、再生装置のトーンアームの望ましくない横回転にブレーキをかけ、音の再現度を高めて高性能な再生装置を実現することができる、トーンアームの横回転ブレーキ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による第1のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
この回転軸と直交する一面を有し該回転軸に固定された強磁性体と、
この強磁性体の上記一面に上記回転軸方向に隣接して対向する面を有し、該面上に複数の磁石が上記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックであって、上記強磁性体に機械的に干渉することなく磁力が作用し得る位置に、上記回転軸を囲むように該回転軸から離間して固設された磁石ブロックと、
を備えてなるものである。
【0006】
なお上記の強磁性体は、上記回転軸と直交するように該回転軸に固定された円盤状の強磁性体であることが望ましい。また、磁石は永久磁石と電磁石のいずれもが適用可能である。各個の磁石の形状は特定形状に限られるものではなく、丸型のものや、円形である並設形状の中心側では互いに近接し、円の外側に向かって次第に広くなる放射状(中心角が小さい扇型)のものなどが適宜利用可能である。また磁石ブロックは、強磁性体に対して強磁性体の片面側から向き合うだけでなく、両面側から向き合うように配置されてもよい。さらには、強磁性体が、磁石ブロックに対して磁石ブロックの両面側から向き合うように配置されてもよい。つまり、回転軸の軸方向に隣接した強磁性体と磁石ブロックとの組は、軸方向に亘って複数組設けられてもよい。以上は、下に説明する第2のトーンアームの横回転ブレーキ装置においても同様である。
【0007】
また、本発明による第2のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
複数の磁石が上記回転軸と直交する面上の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる、上記回転軸に固定された磁石ブロックと、
上記磁石ブロックに機械的に干渉することなく該磁石ブロックからの磁力が作用し得る位置において、一表面が上記回転軸と直交する向きにして、かつ該一表面が上記磁石ブロックと上記回転軸の軸方向に隣接して向かい合う状態で上記回転軸を囲むように該回転軸から離間して所定位置に配設された強磁性体と、
を備えてなるものである。
【0008】
なお本発明による第1および第2のトーンアームの横回転ブレーキ装置において、上記磁気ブロックは、上記回転軸の軸方向にN極とS極が並んだ複数の磁石が、強磁性体に対向する側において同心円上に等間隔でN極とS極が交互になるように、回転軸を囲む孔を中心に備えた例えば円環状の支持体に埋設されてなるものであることが望ましい。N極とS極との間隔は、一例として1mm以下程度とするのが望ましい。この間隔がより小さいほど、以下で説明する磁気ヒステリシスブレーキ力を強いものとすることができる。なお上記の孔は、上述した本発明による一つのトーンアームの横回転ブレーキ装置においては、当然、回転軸との間に空隙が生じる大きさとされ、上述した本発明による別のトーンアームの横回転ブレーキ装置においては、一般に、回転軸に嵌着する大きさとされる。
【0009】
さらに、本発明による第3のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
この回転軸と同心状の外周面を有し該回転軸に固定された強磁性体と、
この強磁性体の上記外周面に上記回転軸の径外方から隣接して対向する複数の磁石が、上記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックであって、上記強磁性体に機械的に干渉することなく磁力が作用し得る位置に配設された磁石ブロックと、
を備えてなるものである。
【0010】
また、本発明による第4のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
この回転軸に固定された磁石ブロックであって、複数の磁石が上記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックと、
この磁石ブロックに機械的に干渉することなく該磁石ブロックからの磁力が作用し得る位置において、上記回転軸と同心状の内周面が上記複数の磁石に上記回転軸の径外方から隣接して対向するように配設された強磁性体と、
を備えてなるものである。
【0011】
また、本発明による第5のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
この回転軸と同心状の外周面を有し、該回転軸から離して固定された強磁性体と、
この強磁性体の上記外周面に上記回転軸の径外方から隣接して対向する複数の磁石が、上記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックであって、上記強磁性体に機械的に干渉することなく磁力が作用し得る位置において上記回転軸に固定された磁石ブロックと、
を備えてなるものである。
【0012】
また、本発明による第6のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、
表面に音溝が刻設されたレコード盤から針およびカンチレバーを介して情報を読み取るカートリッジを保持したトーンアームに、横回転を制動する力を作用させるブレーキ装置であって、
トーンアームを保持し、該トーンアームと一体的に横回転可能である回転軸と、
この回転軸から離して固定された磁石ブロックであって、複数の磁石が上記回転軸の同心円上にN極とS極が交互に並んだ状態で固定されてなる磁石ブロックと、
この磁石ブロックに機械的に干渉することなく該磁石ブロックからの磁力が作用し得る位置において上記回転軸に固定され、該回転軸と同心状の内周面が上記複数の磁石に回転軸の径外方から隣接して対向するように配設された強磁性体と、
を備えてなるものである。
【0013】
上述した本発明による第3〜第6のトーンアームの横回転ブレーキ装置において、
回転軸の径方向に隣接した強磁性体と磁石ブロックとの組は、回転軸の軸方向に亘って複数組設けられるのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による第1および第2のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、トーンアームの回転軸が延びる方向に円盤状強磁性体と、上記構成の磁石ブロックとを隣接させて配置したものであるので、回転軸が回転しようとすると、強磁性体と磁石ブロックとの間に磁気ヒステリシスブレーキ力(磁気摩擦力)が作用して、回転軸に、つまりはトーンアームに横回転を制動する力を作用させることができる。そして強磁性体と磁石ブロックとを、回転軸が延びる方向に隣接させて配置しているので、本発明による第1および第2のトーンアームの横回転ブレーキ装置はトーンアームの軸回りにコンパクトに構成されるため、水平方向にスペースを要することなく、装置として小型に形成することができる。
【0015】
一方、本発明による第3〜第6のトーンアームの横回転ブレーキ装置は、上述のような強磁性体と磁石ブロックとを、回転軸の径方向に隣接させて配置したものであり、このように配置した場合も、強磁性体と磁石ブロックとの間に磁気ヒステリシスブレーキ力が作用するので、トーンアームに横回転を制動する力を作用させることができる。
【0016】
なお、レコード盤が回転するにつれてレコード盤の音溝に沿ってトーンアームの先端にある針がレコード盤の半径方向に移動することによるトーンアームの横回転は、針の位置がレコード盤の中心に近くなっても、極めて低速で僅かずつであるので、磁気摩擦力によるブレーキは殆ど影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態によるトーンアームの横回転ブレーキ装置を示す概略側面図
図2】上記トーンアームの横回転ブレーキ装置の一部を示す平面図
図3】本発明の第2実施形態によるトーンアームの横回転ブレーキ装置を示す概略側面図
図4】本発明の第3実施形態によるトーンアームの横回転ブレーキ装置を示す概略側面図
図5図4に示したトーンアームの横回転ブレーキ装置の一部を示す平面図
図6】本発明の第4実施形態によるトーンアームの横回転ブレーキ装置を示す概略側面図
図7図6に示したトーンアームの横回転ブレーキ装置の一部を示す平面図
図8】本発明の第5実施形態によるトーンアームの横回転ブレーキ装置を示す概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるトーンアームの横回転ブレーキ装置(以下、単に横回転ブレーキ装置という)1の構成を示す概略側面図である。この横回転ブレーキ装置1は、アナログディスクと称されることもあるレコード盤2から音楽等の情報を再生するレコードプレーヤ等の再生装置10に適用されたものである。まず、この再生装置10の概略を説明する。再生装置10は、図示外の駆動手段によって中心軸C1の周りに回転されるターンテーブル3を有する。ターンテーブル3の上面には、中心軸C1と同軸にしてスピンドル4が突設されている。
【0019】
レコード盤2から音楽等の情報を再生する際には、レコード盤2が、その中心に設けられた貫通孔にスピンドル4が挿通する状態にして、ターンテーブル3の上面に載置される。多くの場合レコード盤2は、いわゆる「A面」、「B面」として両表面が記録面とされているが、再生に供される面が上面となる状態にしてレコード盤2が載置される。
【0020】
例えば中空管状の部材からなるトーンアーム5は、先端部つまり図中の右端部にカートリッジ6を保持している。カートリッジ6には、針7を固定したカンチレバー8が保持されている。トーンアーム5は、基端つまり図中の左端に近い位置において、上下方向に延びる回転軸9の上端に保持されている。またトーンアーム5の基端部には、針圧つまり針7のレコード盤2に対する圧力を調整するためのバランスウェイト11が取り付けられている。
【0021】
上記回転軸9は、例えば再生装置10の底部に固定された基盤12の上に固定された円柱状の保持部材13に、上下1対のベアリング14、14を介して回転可能に保持されている。また回転軸9の下端部も、スラストベアリング15を介して円滑に回転可能に基盤12上に保持されている。
【0022】
なお、トーンアーム5の回転軸9への保持は、支持機構16を介してなされている。従来の多くのトーンアーム5において、この支持機構16にはジンバル機構等が適用されて、トーンアーム5は、回転軸9に対して矢印A方向および矢印B方向(回転軸9の長軸C2周り方向)に相対回転可能とされるが、本実施形態においては矢印B方向の相対回転は不可能とされている。つまりこの矢印B方向にトーンアーム5が回転すると、それと一体的に回転軸9が回転する。この矢印B方向のトーンアーム5の回転、つまりレコード盤2を回転させるターンテーブル3の回転軸と平行なトーンアームの回転軸を中心とする回転を、本開示では横回転と称する。
【0023】
ターンテーブル3の上面に載置されたレコード盤2から音楽等の情報を再生する際には、図1に示されるようにレコード盤2の表面に、より詳しくはこの表面に刻設された音溝に針7がゆっくりと落とされ、その状態でターンテーブル3が回転される。それによりレコード盤2が回転すると、針7は音溝の形状に従って動き、この動きがカンチレバー8を介してカートリッジ6内の発電機構に伝達される。そこでこの発電機構から、音溝の形状に対応したつまり記録情報に対応した電圧信号が得られる。
【0024】
レコード盤2に刻設された音溝は、周知の通り、レコード盤2の内周側端部と外周側端部との間で連なる1本の螺旋状の溝である。したがって、レコード盤2から情報再生が連続的になされると、音溝に沿った針7の動きに応動して、トーンアーム5は横回転する。一方、カンチレバー8の動きも音溝に沿った針7の動きに対応するので、レコード盤2の表面においてレコード盤の半径方向の成分を含むことになる。カンチレバー8のこの方向の動きは、トーンアーム5を横回転させ得るものである。しかし、こうして実際にトーンアーム5が横回転してしまうと、カンチレバー8の動きは本来すべて前記電圧信号に変換されるべきであるのに、トーンアーム5の横回転にも使われてしまうので、記録情報の再生精度が損なわれる。
【0025】
横回転ブレーキ装置1は、上記不具合の発生を防止するために設けられたものである。以下、この横回転ブレーキ装置1について詳しく説明する。本実施形態の横回転ブレーキ装置1は、上述した回転軸9に加えて、回転軸9と直交するように該回転軸9に固定された円盤状の強磁性体20と、装置内の所定の位置にも設けられた保持部材13に固定された磁石ブロック21とを設けて構成されている。上記強磁性体20は、一例としてフェライトを用いて円盤状に形成されている。
【0026】
一方磁石ブロック21は、平面形状を図2に示すように、円環状の支持体22に複数の永久磁石23が、好ましくは埋設されて、固定されてなるものである。支持体22は中心部に貫通した円孔22aを有し、外周面22bが円孔22aと同軸の円形とされたものである。一例として8個の永久磁石23は、強磁性体20の下面と向かい合う上端面が面一となるようにして、回転軸9の同心円上に沿ってN極とS極が交互に入れ替わる状態に固定されている。磁石ブロック21は、支持体22の円孔22a内を回転軸9が挿通する状態にして、支持体22の外周面22bを保持部材13に固定することにより再生装置10に取り付けられている。
【0027】
なお、このように磁石ブロック21が再生装置10に取り付けられた状態下では、磁石ブロック21は強磁性体20に機械的に干渉することなく、該強磁性体20が回転軸9と共に回転することを許容する。またこの状態下では、磁石ブロック21の各永久磁石23からの磁力が、強磁性体20に作用し得る。
【0028】
上記構成の再生装置10においてトーンアーム5が横回転すると、トーンアーム5と回転軸9を介して一体化している強磁性体20も回転する。磁石ブロック21と向かい合うように配置された強磁性体20は磁石ブロック21によって磁化されるが、各磁化部分は強磁性体20の回転に伴って、8個の永久磁石23の磁極に対応して磁化方向が反転する。それにより強磁性体20に磁気摩擦力(ヒステリシスブレーキ力)が作用し、回転軸9およびトーンアーム5の横回転が制動される。こうしてトーンアーム5は、カンチレバー8の動きで横回転することは抑制され、音溝に追随するカンチレバー8の横方向への移動だけが許容される。つまりカンチレバー8の動きは、トーンアーム5を横回転させることなく、基本的に前述の発電のみに利用されるようになるので、情報の再生精度が向上する。また、横回転ブレーキ装置1が作用することにより、トーンアーム5の不要な振動も抑えられるので、この点からも情報の再生精度が向上する。
【0029】
なお、本実施形態におけるのとは反対に、磁石ブロック21を回転軸9に固定させる一方、強磁性体20を再生装置10の本体側に固定させておいても、上記と同様にしてトーンアーム5の横回転を制動することができる。すなわち、どのような強磁性体を選択するかによって、磁石より軽いパターン、重いパターンが考えられる。また、磁力線を外に出さないようにする防磁の設置次第で、設計上どちらを磁石にした方がよいか変わる可能性がある。また、トーンアームが重い方が良いという思想に基づいて磁気ブロックをトーンアーム側に固定することも可能である。
【0030】
次に図3を参照して、本発明の第2実施形態による横回転ブレーキ装置31について説明する。なおこの図3において、先に説明した図1および図2中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。図3に概略側面形状を示す横回転ブレーキ装置31は、前述した再生装置10と同様の再生装置30に適用されたものである。
【0031】
本実施形態の横回転ブレーキ装置31は、図1に示した横回転ブレーキ装置1と対比すると基本的に、強磁性体20と磁石ブロック21との組が、軸方向に亘って2組設けられている点で異なる。このように強磁性体20と磁石ブロック21との組を複数設けることにより、1組だけ設ける場合と比べてより強いブレーキ力を発生させることができる。
【0032】
なお本実施形態では、1つの強磁性体20と1つの磁石ブロック21とからなる組を2組設けているが、1つの強磁性体20を上下から挟むように2つの磁石ブロック21を配することにより、強磁性体20と磁石ブロック21との組を2組構成することも可能である。それとは反対に、1つの磁石ブロック21を上下から挟むように2つの強磁性体20を配することにより、強磁性体20と磁石ブロック21との組を2組構成することも可能である。以上のような構成は、強磁性体20と磁石ブロック21との組を3組以上設ける場合においても適宜採用可能である。
【0033】
次に図4を参照して、本発明の第3実施形態による横回転ブレーキ装置41について説明する。図4に概略側面形状を示すこの横回転ブレーキ装置41は、前述した再生装置10と同様の再生装置40に適用されたものである。第1および第2の実施形態では互いに隣接する強磁性体20と磁石ブロック21とが回転軸9の軸方向に向かい合わせて配設されているのに対し、本実施形態の横回転ブレーキ装置41は、強磁性体と磁石ブロックとが回転軸9の径方向に向かい合わせて配設されている点で基本的に相違するものである。
【0034】
すなわち本実施形態の横回転ブレーキ装置41では、回転軸9に前述した強磁性体20と同様の強磁性体50が固定され、この強磁性体20を回転軸9の径方向外側から取り囲むようにして磁石ブロック51が配置されている。図5に平面形状を示すように、円板状の強磁性体50は回転軸9と同心状の外周面50aを有し、磁石ブロック51には、この外周面50aを取り囲むようにして、一例として16個の永久磁石53が固定されている。永久磁石53はそれぞれ、一端が、強磁性体50の外周面50aに回転軸9の径外方から隣接して対向し、他端が、この一端よりもさらに上記径外方に位置する状態に配置されている。そして16個の永久磁石53は、上記一端側において(つまり回転軸9の同心円上に)N極とS極が交互に並ぶ状態に固定されている。
【0035】
上記のように配置された磁石ブロック51は、強磁性体50に機械的に干渉することなく、該強磁性体50が回転軸9と共に回転することを許容する。またこの状態下では、磁石ブロック51の各永久磁石53からの磁力が、強磁性体50に作用し得る。
【0036】
再生装置40においてトーンアーム5が横回転すると、トーンアーム5と回転軸9を介して一体化している強磁性体50も回転する。磁石ブロック51と向かい合うように配置された強磁性体50は磁石ブロック51によって磁化されるが、各磁化部分は強磁性体50の回転に伴って、16個の永久磁石53の磁極に対応して磁化方向が反転する。それにより強磁性体50に磁気摩擦力(ヒステリシスブレーキ力)が作用し、回転軸9およびトーンアーム5の横回転が制動される。
【0037】
こうしてトーンアーム5は、カンチレバー8の動きで横回転することは抑制され、音溝に追随するカンチレバー8の横方向への移動だけが許容される。つまりカンチレバー8の動きは、トーンアーム5を横回転させることなく、基本的に前述した発電のみに利用されるようになるので、情報の再生精度が向上する。また、横回転ブレーキ装置41が作用することにより、トーンアーム5の不要な振動も抑えられるので、この点からも情報の再生精度が向上する。
【0038】
なお、本実施形態におけるのとは反対に、磁石ブロックを回転軸9に固定させる一方、強磁性体を再生装置40の本体側に固定させておいても、上記と同様にしてトーンアーム5の横回転を制動することができる。その場合は強磁性体を、回転軸9と同心状の内周面を有する形状とする一方、磁石ブロックにおいて複数の永久磁石を、上記強磁性体の内周面に沿ってN極とS極が交互に並ぶ状態に固定しておけばよい。
【0039】
次に図6を参照して、本発明の第4実施形態による横回転ブレーキ装置61について説明する。図6に概略側面形状を示すこの横回転ブレーキ装置61は、図4に示した再生装置40と同様の再生装置60に適用されたものである。上記再生装置40に適用された第3実施形態の横回転ブレーキ装置41と同様に、本実施形態の横回転ブレーキ装置61でも、強磁性体と磁石ブロックとが回転軸9の径方向に向かい合わせて配設されている。しかし、第3実施形態では強磁性体を回転させているのに対し、本実施形態では磁石ブロックを回転させている点で基本的に相違する。
【0040】
すなわち本実施形態の横回転ブレーキ装置61では、回転軸9に例えば円環板状の回転連結部材72の中心部が固定され、この回転連結部材72に磁石ブロック71が固定されている。磁石ブロック71は図7に平面形状を示す通り、図4および図5に示した磁石ブロック51と同様に、一例として16個の永久磁石73が固定されてなるものである。他方、円柱状の保持部材13には、例えば円環板状の静止連結部材74の外周部が固定され、この静止連結部材74に、図4および図5に示した強磁性体50と同様の強磁性体70が、回転軸9から離して固定されている。
【0041】
図7は、上述した回転連結部材72および静止連結部材74は省略して、強磁性体70と磁石ブロック71との平面的な位置関係を示している。この図7に示されるように、円環状の強磁性体70は回転軸9と同心状の外周面70aを有し、磁石ブロック71の16個の永久磁石73はそれぞれ、一端が、強磁性体70の外周面70aに回転軸9の径外方から隣接して対向し、他端が、この一端よりもさらに上記径外方に位置する状態に配置されている。そして16個の永久磁石73は、上記一端側において(つまり回転軸9の同心円上に)N極とS極が交互に並ぶ状態に固定されている。
【0042】
上記のように配置され、そして回転連結部材72を介して回転軸9に固定された磁石ブロック71は、強磁性体70に機械的に干渉することなく、回転軸9と共に回転し得る。またこの状態下では、磁石ブロック71の各永久磁石73からの磁力が、強磁性体70に作用し得る。
【0043】
再生装置60においてトーンアーム5が横回転すると、回転軸9および回転連結部材72を介してトーンアーム5と一体化している磁石ブロック71も回転する。磁石ブロック71と向かい合うように配置された強磁性体70は磁石ブロック71によって磁化されるが、各磁化部分は磁石ブロック71の回転に伴って、16個の永久磁石73の磁極に対応して磁化方向が反転する。それにより強磁性体70に磁気摩擦力(ヒステリシスブレーキ力)が作用し、回転軸9およびトーンアーム5の横回転が制動される。それにより、再生装置60による情報の再生精度が向上するのは、第3実施形態におけるのと同様である。
【0044】
なお、本実施形態におけるのとは反対に、磁石ブロック71を静止させておく一方、強磁性体70を回転軸9と共に回転可能としておいても、上記と同様にしてトーンアーム5の横回転を制動することができる。そのように構成されて、再生装置80に適用された本発明の第5実施形態による横回転ブレーキ装置81の概略側面形状を、図8に示す。なおこの図8において、強磁性体70の内周面を70bとして示す。
【符号の説明】
【0045】
1、31、41、61、81 トーンアームの横回転ブレーキ装置
2 レコード盤
3 ターンテーブル
4 スピンドル
5 トーンアーム
6 カートリッジ
7 針
8 カンチレバー
9 回転軸
10、30、40、60、80 再生装置
13 保持部材
20、50、70 強磁性体
21、51、71 磁石ブロック
22 支持体
23、53、73 永久磁石
50a、70a 強磁性体の外周面
70b 強磁性体の内周面
72 回転連結部材
74 静止連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8