【解決手段】半導体装置1は、金属製のフレーム10と、フレーム10のフレーム本体11の主面11sに実装された半導体素子40と、フレーム本体11の裏面11rに設けられた絶縁体60と、z方向において絶縁体60が露出した状態で、絶縁体60ごとフレーム本体11と半導体素子40とを封止するモールド樹脂50と、を備えている。そして、絶縁体60の熱伝導率は、モールド樹脂50の熱伝導率よりも高い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、半導体装置の実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであり、各構成部品の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに限定するものではない。以下の実施形態は、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(半導体装置の構成)
図1〜
図5を参照して、本実施形態の半導体装置1の構成について説明する。
図1に示すように、半導体装置1は、フレーム10と、駆動リード20と、制御リード30と、半導体素子40と、モールド樹脂50と、絶縁体60と、を備えている。本実施形態では、フレーム10、駆動リード20および制御リード30は、同一の金属製の母材をプレス加工することによって形成されている。半導体素子40は、フレーム10に実装されており、駆動リード20および制御リード30の双方と電気的に接続されている。モールド樹脂50は、絶縁体60ごとフレーム10および半導体素子40を封止するように形成されている。
【0016】
モールド樹脂50は、電気絶縁性の樹脂材料からなり、本実施形態では黒色のエポキシ樹脂からなる。モールド樹脂50は、たとえばトランスファー成型によって、絶縁体60ごとフレーム10の一部、駆動リード20の一部、制御リード30の一部、および半導体素子40を封止している。
【0017】
図1に示すとおり、モールド樹脂50は、樹脂主面50s、樹脂裏面50r、および4つの樹脂側面51〜54を有する略直方体状に形成されている。
図2に示すように、樹脂主面50sは、長手方向および短手方向を有する矩形状に形成されている。なお、以降の説明において、樹脂主面50sの長手方向に沿う方向をx方向とし、樹脂主面50sの短手方向に沿う方向をy方向とし、x方向およびy方向の双方に直交する方向をz方向とする。
【0018】
図1から分かるとおり、本実施形態の半導体装置1は、パッケージ外形規格(JEITA規格)がTO(Transistor Outline)−247のパッケージである。このため、モールド樹脂50のx方向の寸法は15.64mm以上16.24mm以下であり、モールド樹脂50のy方向の寸法は20.65mm以上21.25mm以下であり、モールド樹脂50のz方向の寸法は4.82mm以上5.22mm以下である。なお、半導体装置1は、TO−247に限られず、TO−252等の他のパッケージであってもよい。
【0019】
図1に示すように、樹脂主面50sおよび樹脂裏面50rは、z方向において互いに反対側を向く面である。樹脂主面50sの大部分は、z方向と直交する方向に沿う平面によって形成されている。樹脂裏面50rの全体は、z方向と直交する方向に沿う平面によって形成されている。本実施形態では、
図1に示すとおり、z方向から視た樹脂主面50sと樹脂裏面50rとの形状が互いに異なるが、z方向から視た樹脂主面50sと樹脂裏面50rとの形状が同一であってもよい。
【0020】
図1に示すように、樹脂側面51〜54は、z方向において樹脂主面50sおよび樹脂裏面50rを繋ぐ面である。
図2に示すように、樹脂側面51および樹脂側面52は、x方向において互いに反対側を向く面であり、z方向から視てx方向に沿って延びている。樹脂側面53および樹脂側面54は、y方向において互いに反対側を向く面であり、z方向から視てy方向に沿って延びている。
【0021】
図1および
図2に示すように、モールド樹脂50のy方向の中央よりも樹脂側面51の近くであって、モールド樹脂50のx方向の両端部には、半円状の凹部55が設けられている。凹部55は、フレーム10の一部を露出している。
【0022】
図2に示すように、モールド樹脂50のy方向の中央よりも樹脂側面51の近くであって、モールド樹脂50のx方向の中央には、円形の貫通孔56が設けられている。貫通孔56は、z方向においてモールド樹脂50を貫通している。本実施形態では、z方向から視て、両凹部55と貫通孔56とは、y方向において揃った位置に設けられている。
【0023】
フレーム10、駆動リード20および制御リード30はそれぞれ、たとえばCu(銅)からなる。
図1に示すように、フレーム10は、フレーム本体11および第1端子16を有している。本実施形態のフレーム10は、フレーム本体11および第1端子16が一体に形成された単一部品である。フレーム本体11は、主面11s、裏面11r、および4つの側面12〜15を有する略平板状に形成されている。
【0024】
主面11sおよび裏面11rは、z方向において互いに反対側を向く面である。つまり、z方向は、フレーム10の厚さ方向ともいえる。主面11sは樹脂主面50sと同じ側を向き、裏面11rは樹脂裏面50rと同じ側を向く面である。z方向から視た主面11sの形状は、y方向が長手方向となり、x方向が短手方向となる矩形状である。本実施形態では、z方向から視た主面11sと裏面11rとの形状は同一であるが、z方向から視た主面11sと裏面11rとの形状は異なってもよい。
【0025】
図1に示すように、側面12〜15は、z方向において主面11sおよび裏面11rを繋ぐ面である。
図2に示すように、側面12および側面13は、x方向において互いに反対側を向く面である。側面12は樹脂側面51と同じ側を向いており、側面13は樹脂側面52と同じ側を向いている。側面14および側面15は、y方向において互いに反対側を向く面であり、y方向に沿って延びている。側面14は樹脂側面53と同じ側を向く面であり、側面15は樹脂側面54と同じ側を向く面である。
【0026】
図4および
図5に示すように、フレーム本体11は、モールド樹脂50内に設けられている。具体的には、フレーム本体11の主面11sおよび裏面11rはモールド樹脂50の樹脂主面50sと樹脂裏面50rとのz方向の間に位置しており、フレーム本体11の側面12,13はモールド樹脂50の樹脂側面51,52のy方向の間に位置しており、フレーム本体11の側面14、15はモールド樹脂50の樹脂側面53,54のx方向の間に位置している。特に、フレーム本体11の裏面11rは、モールド樹脂50の樹脂裏面50rよりも樹脂主面50sの近くに配置されている。つまり、裏面11rは、樹脂裏面50rから露出していない。
【0027】
フレーム本体11のy方向の中央よりも側面12の近くであって、フレーム本体11のx方向の中央には、円形の貫通孔11pが設けられている。貫通孔11pは、フレーム本体11をz方向に貫通している。z方向から視て、貫通孔11pは、モールド樹脂50の貫通孔56と重なる位置に設けられている。貫通孔11pの内径は、貫通孔56の内径よりも大きい。本実施形態では、貫通孔11pの中心は、貫通孔56の中心と一致している。
【0028】
第1端子16は、フレーム本体11の側面13のx方向の中央に接続されており、樹脂側面52に向けてy方向に沿って延びている。第1端子16は、樹脂側面52からy方向に突出している。
図4に示すように、z方向において、第1端子16は、フレーム本体11に対して樹脂主面50s寄りに配置されている。
【0029】
駆動リード20は、接続部21と第2端子22とを有している。本実施形態の駆動リード20は、接続部21と第2端子22とが一体に形成された単一部品である。
接続部21は、モールド樹脂50内に配置されており、フレーム本体11の主面11sよりも樹脂主面50sの近くに配置されている。
図2に示すように、接続部21は、x方向において第1端子16よりも樹脂側面54の近くに配置されており、y方向においてフレーム本体11よりも樹脂側面52の近くに配置されている。z方向から視た接続部21の形状は、x方向が長手方向となり、y方向が短手方向となる矩形状である。
【0030】
第2端子22は、接続部21から樹脂側面52に向かってy方向に沿って延び、樹脂側面52からy方向に突出している。つまり、第2端子22は、モールド樹脂50内の部分と、モールド樹脂50外の部分とを有している。
【0031】
制御リード30は、接続部31と第3端子32とを有している。本実施形態の制御リード30は、接続部31と第3端子32とが一体に形成された単一部品である。
接続部31は、モールド樹脂50内に配置されており、フレーム本体11の主面11sよりも樹脂主面50sの近くに配置されている。
図2に示すように、接続部31は、x方向において第1端子16よりも樹脂側面53の近くに配置されており、y方向においてフレーム本体11よりも樹脂側面52の近くに配置されている。z方向から視て、接続部31および駆動リード20の接続部21は、y方向において互いに揃った状態で、x方向において互いに離間して配置されている。z方向から視た接続部31の形状は、x方向が長手方向となり、y方向が短手方向となる矩形状である。
【0032】
第3端子32は、接続部31から樹脂側面52に向かってy方向に沿って延び、樹脂側面52からy方向に突出している。つまり、第3端子32は、第2端子22と同様に、モールド樹脂50内の部分と、モールド樹脂50外の部分とを有している。
【0033】
半導体素子40は、フレーム本体11の主面11sに実装されている。より詳細には、
図4に示すように、半導体素子40は、Ag(銀)ペーストやはんだ等の導電性接合材SDを介してフレーム本体11の主面11sに接合されている。
【0034】
半導体素子40は、z方向において互いに反対側を向く素子主面40sおよび素子裏面40rを有する平板状に形成されている。半導体素子40は、素子主面40sがフレーム本体11の主面11sと同じ側を向き、素子裏面40rがフレーム本体11の裏面11rと同じ側を向くようにフレーム本体11に配置されている。
【0035】
半導体素子40としては、たとえばSiC(炭化シリコン)を含むSiCMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられている。SiCMOSFETは、1kHz以上かつ数百kHz以下の周波数の駆動信号に応答した高速スイッチングが可能な素子である。好ましくは、半導体素子40は、1kHz以上かつ100kHz以下の周波数の駆動信号に応答した高速スイッチングが可能な素子である。本実施形態では、半導体素子40は、100kHzの周波数の駆動信号に応じて高速スイッチングを行う。
【0036】
なお、半導体素子40は、SiCMOSFEに限られず、Si(シリコン)を含むMOSFETであってもよいし、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やサイリスタ等の他のトランジスタであってもよい。また、半導体素子40は、トランジスタに限られず、ダイオード等の他の半導体素子であってもよい。
【0037】
半導体素子40は、第1駆動電極41、第2駆動電極42および制御電極43(
図2参照)を有している。第1駆動電極41は素子裏面40rに形成されており、第2駆動電極42および制御電極43の双方は素子主面40sに形成されている。本実施形態のように半導体素子40がMOSFETである場合、第1駆動電極41はドレイン電極であり、第2駆動電極42はソース電極であり、制御電極43はゲート電極である。
【0038】
第1駆動電極41は、素子裏面40rの全体にわたり形成されており、導電性接合材SDを介してフレーム本体11(フレーム10)と電気的に接続されている。
図2に示すように、第2駆動電極42は、第1ワイヤW1を介して駆動リード20の第2端子22と電気的に接続されている。より詳細には、第1ワイヤW1は、第2駆動電極42と駆動リード20の接続部21とに接続されている。接続部21は第2端子22に繋がっているため、第1ワイヤW1は、第2駆動電極42と第2端子22とを電気的に接続している。
【0039】
制御電極43は、第2ワイヤW2を介して制御リード30の第3端子32と電気的に接続されている。より詳細には、第2ワイヤW2は、制御電極43と制御リード30の接続部31とに接続されている。接続部31は第3端子32に繋がっているため、第2ワイヤW2は、制御電極43と第3端子32とを電気的に接している。
【0040】
各ワイヤW1,W2は、Cu,Au(金),Al(アルミニウム)等からなるボンディングワイヤである。本実施形態では、第1ワイヤW1の線径は、第2ワイヤW2の線径よりも大きい。なお、第1ワイヤW1の線径は第2ワイヤW2と等しくてもよい。この場合、第1ワイヤW1の本数は第2ワイヤW2の本数よりも多いことが好ましい。
【0041】
絶縁体60は、電気絶縁性を有する材料からなり、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に高熱伝導性フィラーを含有させて構成されている。高熱伝導性フィラーとしては、たとえばBN(窒化ホウ素)、Si
3N
4(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)が挙げられる。高熱伝導性フィラーの含有率は、50%以上であることが好ましい。
【0042】
絶縁体60の熱伝導率は、モールド樹脂50の熱伝導率よりも高い。絶縁体60の熱伝導率は、1W/(m・K)以上であることが好ましい。より好ましくは、絶縁体60の熱伝導率は、3W/(m・K)以上5W/(m・K)以下である。
【0043】
絶縁体60の熱伝導率は、フレーム10の熱伝導率よりも低い。このため、絶縁体60のz方向の長さは、フレーム本体11のz方向の長さよりも短くなるように設定されている。つまり、絶縁体60の厚さは、フレーム本体11の厚さよりも薄くなるように設定されている。
【0044】
本実施形態では、絶縁体60は、シート状に形成されている。絶縁体60は、フレーム本体11の裏面11rの全体にわたり貼り付けられている。より詳細には、絶縁体60は、z方向において互いに反対側を向く絶縁主面60sおよび絶縁裏面60rを有する。絶縁主面60sはフレーム本体11の主面11sと同じ側を向き、絶縁裏面60rはフレーム本体11の裏面11rと同じ側を向いている。絶縁主面60sは、フレーム本体11の裏面11rと対面している。絶縁主面60sは、接合層70を介してフレーム本体11の裏面11rに接合されている。接合層70は、絶縁主面60sとフレーム本体11の裏面11rとを分子接合する層である。
【0045】
図3に示すように、絶縁裏面60rは、z方向においてモールド樹脂50の樹脂裏面50rから露出している。
図4および
図5に示すように、本実施形態では、絶縁裏面60rと樹脂裏面50rとは面一となっている。
【0046】
図3に示すように、絶縁裏面60rは、絶縁側面61〜64を有している。絶縁側面61および絶縁側面62は、x方向において互いに反対側を向き、z方向から視てx方向に沿って延びている。絶縁側面61はモールド樹脂50の樹脂側面51と同じ側を向き、絶縁側面62は樹脂側面52と同じ側を向いている。絶縁側面63および絶縁側面64は、y方向において互いに反対側を向き、z方向から視てy方向に沿って延びている。絶縁側面63はモールド樹脂50の樹脂側面53と同じ側を向き、絶縁側面64は樹脂側面54と同じ側を向いている。各絶縁側面61〜64は、モールド樹脂50によって覆われている。より詳細には、各絶縁側面61〜64は、モールド樹脂50と接している。
【0047】
絶縁体60は、z方向において絶縁体60を貫通する貫通孔65を有している。z方向から視て、貫通孔65は、モールド樹脂50の貫通孔56と重なる位置に設けられている。貫通孔65の内径は、貫通孔56の内径よりも大きい。また貫通孔65の内径は、貫通孔11pの内径と等しい。本実施形態では、貫通孔65の中心は、貫通孔56の中心と一致している。つまり、貫通孔65の中心は、貫通孔11pの中心と一致している。
図4に示すように、貫通孔65,11p内には、モールド樹脂50が設けられている。貫通孔65,11p内に貫通孔56が形成されることから、z方向から視て貫通孔65,11pの外周側であって貫通孔65,11pの内周面に接するようにモールド樹脂50が設けられている。
【0048】
(半導体装置の製造方法)
図6〜
図10を参照して、本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明する。
図6に示すように、半導体装置1の製造方法は、フレームユニット800を準備する工程を備えている。フレームユニット800は、フレーム10に対応するフレーム体810と、駆動リード20に対応する駆動リード体820と、制御リード30に対応する制御リード体830と、を有している。フレーム体810、駆動リード体820および制御リード体830は互いに繋がっている。
【0049】
図7に示すように、半導体装置1の製造方法は、半導体素子40をフレームユニット800に実装する工程を備えている。半導体素子40は、フレームユニット800のフレーム体810に実装される。より具体的には、まず、フレーム体810のフレーム本体811の主面811sには、導電性接合材SDが塗布される。続いて、導電性接合材SD上に半導体素子40が載置される。そして、たとえばリフロー処理によって導電性接合材SDを溶融した後、冷却して導電性接合材SDを固化することによって導電性接合材SDに半導体素子40が接合される。これにより、半導体素子40の第1駆動電極41(
図7では図示略)がフレーム体810と電気的に接続される。
【0050】
図8に示すように、半導体装置1の製造方法は、第1ワイヤW1および第2ワイヤW2を形成する工程を備えている。たとえばワイヤボンディング装置を用いて、半導体素子40の第2駆動電極42と駆動リード体820とを接続するように第1ワイヤW1が形成され、半導体素子40の制御電極43と制御リード体830とを接続するように第2ワイヤW2が形成される。これにより、第2駆動電極42と駆動リード体820とが電気的に接続され、制御電極43と制御リード体830とが電気的に接続される。
【0051】
図9に示すように、半導体装置1の製造方法は、絶縁体60をフレームユニット800に貼り付ける工程を備えている。絶縁体60は、分子接合によってフレーム本体811の裏面811rに接合される。つまり、絶縁体60の絶縁主面60sとフレーム本体811の裏面811rとは、化学結合によって接合されている。一例では、分子接合として、まず、コロナ放電処理(プラズマ処理)によってフレーム本体811の裏面811rを粗化させ、かつOH基(ヒドロキシ基)を生成させる。そしてたとえばフレーム本体11の裏面811rに、トリアジンジチオールを含む分子接合剤を塗布する。この分子接合剤は、たとえば、6−(3−トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールモノナトリウム塩の水溶液である。次に、分子接合剤が塗布された裏面811rを加熱処理することによって、裏面811rに生成されたOH基と分子接合剤に含有された有機化合物が化学結合する。その結果、フレーム本体811の裏面811rには、裏面811rと化学結合されたトリアジンジチオールが生成される。最後に、トリアジンジチオールが生成された裏面811rと絶縁体60の絶縁主面60sを密着させた状態で加熱および加圧処理を行うことによって、トリアジンジチオールに含まれるチオール基と、絶縁体60に含まれるエポキシ基とが化学結合する。フレーム本体811の裏面811rと絶縁体60の絶縁主面60sとの間に介在し、かつ裏面811rと絶縁主面60sとの双方に化学結合された有機化合物が接合層70となる。接合層70の厚さは、数nm〜数十nm程度の厚さである。本実施形態では、接合層70の厚さは10nm程度である。
【0052】
本実施形態では、絶縁体60をフレームユニット800に貼り付ける工程では、フレーム本体811の裏面811rと同一形状の絶縁主面60sを有する絶縁体60を予め用意し、その用意した絶縁体60を裏面811rに分子接合している。このため、絶縁体60には、フレーム本体811の貫通孔811pと同一形状の貫通孔65(
図9では図示略)が既に形成されている。
【0053】
なお、絶縁体60は、フレーム本体811の裏面811rよりも大きい絶縁主面60sを有するものを用意してもよい。この場合、半導体装置1の製造方法は、絶縁体60を裏面811rに分子接合した後、フレーム本体811の形状に合わせて絶縁体60を切断する工程を備える。
【0054】
図10に示すように、半導体装置1の製造方法は、モールド樹脂850を形成する工程を備えている。この工程は、絶縁体60をフレームユニット800に貼り付ける工程よりも後に実施される。つまり、モールド樹脂850は、絶縁体60ごとフレームユニット800の一部、半導体素子40および各ワイヤW1,W2を封止する。本実施形態では、モールド樹脂850は、トランスファー成型によって形成される。これにより、絶縁体60の各絶縁側面61〜64(
図3参照)がモールド樹脂850によって覆われる。より詳細には、絶縁体60の各絶縁側面61〜64とモールド樹脂850とが密着する。
【0055】
モールド樹脂850は、モールド樹脂50の一対の凹部55に対応する一対の開口穴855と、モールド樹脂50の貫通孔56に対応する貫通孔856と、を有している。各開口穴855および貫通孔856は、金型によってモールド樹脂850の成型時に一体に形成される。各開口穴855は、モールド樹脂850の厚さ方向においてモールド樹脂850を貫通していない。各開口穴855は、フレーム本体811のy方向の両端部の一部を露出している。貫通孔856は、モールド樹脂850の厚さ方向においてモールド樹脂850を貫通している。
【0056】
図示していないが、半導体装置1の製造方法は、モールド樹脂850およびフレームユニット800を切断することによって半導体装置1を個片化する工程を備えている。一例では、たとえばダイシングブレードを用いてモールド樹脂850を切断することによってモールド樹脂50を形成する。またプレス加工機によってフレームユニット800を切断することによって、各端子16,22,32を形成する。これにより、フレーム10、駆動リード20および制御リード30が形成される。以上の工程を経て、半導体装置1が製造される。
【0057】
(作用)
図11を参照して、本実施形態の半導体装置1の作用について説明する。
図11に示すように、半導体装置1は、第1端子16が配線基板200の貫通孔201に挿入された状態で、配線基板200のランド部202と第1端子16とがAgペーストやはんだ等の導電性接合材SDによって接合されることによって、配線基板200に実装される。なお図示していないが、第2端子22および第3端子32も同様に配線基板200の貫通孔に挿入された状態で導電性接合材によって接合される。
【0058】
この場合、半導体装置1は、ボルトBによってヒートシンク210に取り付けられる。具体的には、ボルトBがモールド樹脂50の貫通孔56に挿入されてヒートシンク210のねじ穴212に取り付けられる。これにより、ヒートシンク210の取付面211にモールド樹脂50の樹脂裏面50rおよび絶縁体60の絶縁裏面60rの全面が接触した状態で、ボルトBのボルト頭B1と取付面211とによってモールド樹脂50と絶縁体60を挟み込まれる。
【0059】
半導体装置1の使用時、つまり半導体素子40が駆動することによって発熱する場合、半導体素子40の熱は、導電性接合材SD、フレーム本体11および絶縁体60を介してヒートシンク210に移動する。絶縁体60の熱伝導率はモールド樹脂50の熱伝導率よりも高いため、フレーム本体11の裏面11r側がモールド樹脂50によって覆われた構成と比較して、半導体素子40の熱がヒートシンク210に移動しやすくなる。
【0060】
(効果)
本実施形態の半導体装置1によれば、以下の効果が得られる。
(1)半導体装置1は、半導体素子40が実装されたフレーム本体11と、フレーム本体11の裏面に設けられた絶縁体60と、z方向において絶縁体60の絶縁裏面60rが露出した状態で絶縁体60ごとフレーム本体11と半導体素子40とを封止するモールド樹脂50と、を備えている。そして、絶縁体60の熱伝導率は、モールド樹脂50の熱伝導率よりも高い。
【0061】
この構成によれば、半導体素子40の熱はフレーム本体11および絶縁体60の順に移動して半導体装置1の外部に放出される。このため、フレーム本体11の裏面11rがモールド樹脂50に覆われた構成と比較して、半導体素子40の熱を半導体装置1の外部に放出しやすくなる。したがって、半導体素子40の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0062】
加えて、フレーム本体11の裏面11rが電気絶縁性を有する絶縁体60によって覆われているため、フレーム本体11の裏面11rがモールド樹脂50の樹脂裏面50rからz方向に露出する構成と比較して、半導体装置1の電気絶縁性を確保できる。
【0063】
(2)フレーム本体11の裏面11rと絶縁体60の絶縁主面60sとは接合層70を介した分子接合によって接合されている。この構成によれば、フレーム本体11の裏面11rと絶縁体60の絶縁主面60sを、接着剤等を用いた分子間力接合と比較して、接合強度が高く、かつ熱に強いものとなる。したがって、フレーム本体11の裏面11rと絶縁体60の絶縁主面60sとの接合信頼性の向上を図ることができる。
【0064】
加えて、熱伝導性の低い接着剤がフレーム本体11の裏面11rと絶縁体60の絶縁主面60sとの間に介在しないため、フレーム本体11から絶縁体60に熱が移動しやすくなる。したがって、半導体素子40を半導体装置1の外部に放熱しやすくなるため、半導体素子40の温度が過度に高くなることを抑制できる。
【0065】
(3)絶縁体60の熱伝導率はフレーム本体11の熱伝導率よりも低く、絶縁体60のz方向の長さはフレーム本体11のz方向の長さよりも短い。この構成によれば、絶縁体60のz方向の長さがフレーム本体11のz方向の長さ以上の場合と比較して、半導体素子40の熱がフレーム本体11および絶縁体60を介して半導体装置1の外部に放出しやすくなる。
【0066】
(4)絶縁体60は、フレーム本体11の裏面11rの全体にわたり設けられている。この構成によれば、フレーム本体11と絶縁体60との接触面積が大きくなることによって、フレーム本体11から絶縁体60に熱が移動しやすくなる。したがって、半導体素子40の熱がフレーム本体11および絶縁体60を介して半導体装置1の外部に放出しやすくなる。
【0067】
(5)絶縁体60の絶縁裏面60rは、モールド樹脂50の樹脂裏面50rと面一となるように形成されている。この構成によれば、ヒートシンク210の取付面211(
図11参照)に絶縁体60の絶縁裏面60rが接しやすくなる。したがって、絶縁体60からヒートシンク210への熱の移動がスムーズになるため、半導体素子40の熱がヒートシンク210に移動しやすくなる。
【0068】
(6)絶縁体60は、高熱伝導フィラーが50%以上含有されている。この構成によれば、高熱伝導フィラーが含有されていない絶縁体と比較して、絶縁体60が硬くなる。つまり、絶縁体60が外力によって変形しにくくなっている。このため、たとえばトランスファー成型によってモールド樹脂850を形成する場合において、モールド樹脂850の圧力によって絶縁体60が変形することを抑制できる。したがって、絶縁体60の変形に起因してフレーム本体811の裏面811rから絶縁体60が剥がれることを抑制できる。
【0069】
(7)絶縁体60の熱伝導率は、1W/(m・K)以上である。この構成によれば、半導体素子40の熱をフレーム本体11および絶縁体60を介して半導体装置1の外部に効果的に放出できる。
【0070】
(8)絶縁体60の熱伝導率は、3W/(m・K)以上かつ5W/(m・K)以下である。この構成によれば、半導体素子40の熱をフレーム本体11および絶縁体60を介して半導体装置1の外部に一層効果的に放出できる。
【0071】
(変更例)
上記実施形態は本開示に関する半導体装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に関する半導体装置は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、上記実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または上記実施形態に新たな構成を付加した形態である。また、以下の各変更例は、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下の各変更例において、上記実施形態に共通する部分については、上記実施形態と同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
・上記実施形態において、
図12に示すように、フレーム本体11の側面14,15には、側面14,15からx方向に延びるフランジ18が設けられてもよい。フランジ18は、フレーム本体11の主面11sと面一に形成されている。フランジ18のz方向の長さ(厚さ)は、フレーム本体11のz方向の長さ(厚さ)よりも短い(薄い)。フランジ18は、モールド樹脂50によってz方向に挟み込まれている。
【0073】
この構成によれば、モールド樹脂50によってフランジ18のz方向の移動が抑制されるため、フレーム本体11がモールド樹脂50からz方向に剥がれることを抑制できる。このため、フレーム本体11に接合された絶縁体60がモールド樹脂50からz方向に剥がれることを抑制できる。
【0074】
・上記実施形態では、絶縁体60がフレーム本体11の裏面11rの全面にわたり形成されていたが、これに限られない。たとえば
図13に示すように、絶縁体60は、フレーム本体11の裏面11rよりも一回り小さく形成されてもよい。つまり、絶縁体60の各絶縁側面61〜64は、フレーム本体11の各側面12〜15よりも内方に位置するように形成されてもよい。この場合、フレーム本体11の裏面11rの外周部において、モールド樹脂50が介在する。モールド樹脂50は、絶縁体60の各絶縁側面61〜64に密着している。
【0075】
この構成によれば、モールド樹脂50がフレーム本体11の裏面11rに接しているため、すなわちモールド樹脂50によってフレーム本体11がz方向に挟み込まれているため、フレーム本体11がモールド樹脂50からz方向に剥がれることを抑制できる。
【0076】
・
図13の変更例において、絶縁体60のx方向のサイズおよびy方向のサイズはそれぞれ任意に変更可能である。一例では、z方向から視て、絶縁体60は、フレーム本体11の裏面11rのうち半導体素子40と重なる領域に設けられてもよい。要するに、絶縁体60は、フレーム本体11の裏面11rのうち、z方向から視て半導体素子40と重なる部分に少なくとも設けられていればよい。
【0077】
・上記実施形態では、絶縁体60の絶縁裏面60rとモールド樹脂50の樹脂裏面50rとが面一であったが、これに限られない。たとえば
図14に示すように、絶縁体60の絶縁裏面60rがモールド樹脂50の樹脂裏面50rよりもz方向に突出してもよい。
【0078】
この構成によれば、たとえばヒートシンク210の取付面211(
図11参照)に絶縁体60の絶縁裏面60rが密着しやすくなる。これにより、絶縁体60からヒートシンク210に熱が移動しやすくなるため、半導体素子40の熱がヒートシンク210に移動しやすくなる。
【0079】
加えて、モールド樹脂50の成型時にモールド樹脂50の樹脂裏面50rと絶縁体60の絶縁裏面60rとの境界においてモールド樹脂50にバリが形成されたとしても、そのバリが絶縁体60の絶縁裏面60rよりも突出しにくい。このため、モールド樹脂50のバリを除去する必要がなくなる。したがって、半導体装置1の製造工程を簡素化できる。
【0080】
なお、
図14に示す絶縁体60の絶縁裏面60rがモールド樹脂50の樹脂裏面50rよりもz方向に突出する構成は、
図13に示す変更例の絶縁体60についても適用することができる。
【0081】
・絶縁体60の形状は任意に変更可能である。一例では、
図15に示すように、絶縁体60の絶縁側面63,64に段差部66を設けてもよい。段差部66には、モールド樹脂50が入り込んでいる。
【0082】
この構成によれば、絶縁体60とモールド樹脂50とがz方向に密着する部分を有している。つまり、モールド樹脂50によって絶縁体60およびフレーム本体11が挟み込まれている。したがって、モールド樹脂50からフレーム本体11および絶縁体60が剥がれることを抑制できる。
【0083】
また別の一例では、
図16に示すように、絶縁体60の絶縁側面63,64を絶縁主面60sから絶縁裏面60rに向かうにつれて互いに接近するようなテーパ面によって構成されてもよい。これらテーパ面に密着するようにモールド樹脂50が形成されている。
【0084】
この構成によれば、絶縁体60とモールド樹脂50とがz方向に密着する部分を有している。つまり、モールド樹脂50によって絶縁体60およびフレーム本体11が挟み込まれている。したがって、モールド樹脂50からフレーム本体11および絶縁体60が剥がれることを抑制できる。
【0085】
なお、
図15および
図16に示す変更例の絶縁体60において、
図14に示す変更例の絶縁体60のように、絶縁裏面60rがモールド樹脂50の樹脂裏面50rよりもz方向に突出する構成としてもよい。
図15に示す変更例の絶縁体60では、絶縁体60のうちたとえば段差部66よりも内方部分が樹脂裏面50rよりもz方向に突出していてもよい。
図16に示す変更例の絶縁体60では、絶縁体60のうちたとえばテーパ面よりも内方部分が樹脂裏面50rよりもz方向に突出していてもよい。
【0086】
・上記実施形態において、絶縁体60の熱伝導率は、高熱伝導フィラーの配向を工夫することによって、5W/(m・K)よりも高くしてもよい。
・上記実施形態において、絶縁体60のz方向の長さ(厚さ)は、任意に変更可能である。一例では、絶縁体60のz方向の長さ(厚さ)は、フレーム本体11のz方向の長さ(厚さ)と等しくてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、絶縁体60は、セラミックス材料から構成されていてもよい。絶縁体60がセラミックス材料から構成された場合、モールド樹脂50との密着性が向上する。これにより、絶縁体60がフレーム本体11から剥がれるおそれを低減できる。また、半導体装置1の設定された電気絶縁性を確保できる範囲内において、絶縁体60のz方向の長さ(厚さ)を短く(薄く)してもよい。
【0088】
・上記実施形態において、フレーム本体11と絶縁体60との接合は、分子接合に限られず、接着等の他の接合方法であってもよい。
・上記実施形態において、絶縁体60は、単結晶グラファイトを含む材料から構成されてもよい。単結晶グラファイトの面内方向がz方向に平行となるように絶縁体60を形成することが好ましい。単結晶グラファイトの面内方向の熱伝導率は、Cuの熱伝導率、換言すると、フレーム本体11の熱伝導率よりも高い。一例では、単結晶グラファイトの面内方向の熱伝導率は、Cuの熱伝導率の約4倍である。この場合、絶縁体60のz方向の長さ(厚さ)は、フレーム本体11のz方向の長さ(厚さ)よりも長い(厚い)ことが好ましい。
【0089】
この構成によれば、絶縁体60によって半導体素子40の熱を半導体装置1の外部に効率よく放出することができる。したがって、半導体素子40の温度が過度に上昇することを抑制できる。
【0090】
・上記実施形態の半導体装置1は、第1端子16、第2端子22および第3端子32の3つの端子を備えていたが、これに限られない。端子の個数は任意に変更可能である。一例では、半導体装置1は、各端子16,22,32とは別の端子を備えていてもよい。この別の端子は、たとえば半導体素子40の第2駆動電極42と電気的に接続されている。これにより、別の端子は、たとえば第2駆動電極42に流れる電流を検出するための端子となる。