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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-197586(P2021-197586A)
(43)【公開日】2021年12月27日
(54)【発明の名称】電力増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20211129BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20211129BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20211129BHJP
【FI】
   H03F1/02
   H03F3/24
   H03F3/68 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-101104(P2020-101104)
(22)【出願日】2020年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】数野 将史
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC36
5J500AF09
5J500AF15
5J500AH06
5J500AH29
5J500AH32
5J500AH35
5J500AH37
5J500AH38
5J500AS14
5J500AT03
5J500WU10
(57)【要約】
【課題】差動構成により電力を増幅する高効率な電力増幅回路を提供する。
【解決手段】電力増幅回路10は、入力信号RFinを増幅する増幅器101と、増幅器101の出力に接続された一次コイル1041と、一次コイル1041と電磁界結合された二次コイル1042とを有するトランス104と、二次コイル1042の一端に接続された増幅器102と、二次コイル1042の他端に接続された増幅器103と、一端が増幅器102の出力に接続され、他端が増幅器103の出力に接続された一次コイル1051と、一次コイル1051と電磁界結合された二次コイル1052とを有するトランス105と、二次コイル1052と接地との間に設けられる容量素子106と、一端が二次コイル1052の一端に接続され、他端が二次コイル1052の他端に接続された容量素子108と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する第1増幅器と、
前記第1増幅器の出力に接続された第1一次コイルと、前記第1一次コイルと電磁界結合された第1二次コイルとを有する第1トランスと、
前記第1二次コイルの一端に接続された第2増幅器と、
前記第1二次コイルの他端に接続された第3増幅器と、
一端が前記第2増幅器の出力に接続され、他端が前記第3増幅器の出力に接続された第2一次コイルと、前記第2一次コイルと電磁界結合された第2二次コイルとを有する第2トランスと、
前記第2二次コイルと接地との間に設けられる第1容量素子と、
一端が前記第2二次コイルの一端に接続され、他端が前記第2二次コイルの他端に接続された第2容量素子と、を備える、電力増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力増幅回路であって、
前記第1一次コイルと接地との間に設けられる第3容量素子と、
一端が前記第1一次コイルの一端に接続され、他端が前記第1一次コイルの他端に接続された第4容量素子と、をさらに備える、電力増幅回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力増幅回路であって、
前記第2トランスは、前記電力増幅回路が設けられる基板の配線によって、前記第2一次コイル及び前記第2二次コイルが構成される、電力増幅回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記第2容量素子は、前記電力増幅回路が設けられる基板の配線によって構成される、電力増幅回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記第1増幅器は、複数の増幅器が直列に結合されて構成される、電力増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体での通信においては、無線周波数(Radio Frequency:RF)信号を増幅する電力増幅回路が用いられる。電力増幅回路では、高効率化が求められる。電力増幅回路の高効率化のために、差動信号を用いて増幅を行う電力増幅回路がある。
【0003】
特許文献1には、差動信号を用いて電力を増幅し、出力側にある容量素子の接続をスイッチにより切り替えることで、周波数帯域に応じて良好なインピーダンス整合を得る電力増幅回路が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2020/0099348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電力増幅回路では、入力されたRF信号をトランスにより不平衡平衡変換を行うことで、入力信号を2つの増幅器への差動信号として分配する。差動信号がトランスによって変換された場合、理想的には一方の信号に対する他方の信号の位相は180度異なり、振幅は等しくなる。しかし実際のトランスでは、トランスを構成するコイルの間に生じる寄生容量により、差動信号の理想的な位相差及び振幅差からのずれが発生する。差動信号が理想的な状態からずれることによって、差動信号を合成した出力信号の電力効率が低下する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、差動構成により電力を増幅する高効率な電力増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電力増幅回路は、入力信号を増幅する第1増幅器と、第1増幅器の出力に接続された第1一次コイルと、第1一次コイルと電磁界結合された第1二次コイルとを有する第1トランスと、第1二次コイルの一端に接続された第2増幅器と、第1二次コイルの他端に接続された第3増幅器と、一端が第2増幅器の出力に接続され、他端が第3増幅器の出力に接続された第2一次コイルと、第2一次コイルと電磁界結合された第2二次コイルとを有する第2トランスと、第2二次コイルと接地との間に設けられる第1容量素子と、一端が第2二次コイルの一端に接続され、他端が第2二次コイルの他端に接続された第2容量素子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、差動構成により電力を増幅する高効率な電力増幅回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る電力増幅回路の回路図である。
図2】本実施形態に係る電力増幅回路における差動信号の振幅差及び位相差を説明する図である。
図3】本実施形態に係る電力増幅回路の他の回路図である。
図4】比較例に係る電力増幅回路の回路図である。
図5】比較例に係る電力増幅回路における差動信号の振幅差及び位相差を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を極力省略する。
【0011】
図1には、本実施形態に係る電力増幅回路10の回路図が示される。電力増幅回路10は、増幅器101,102,103、トランス104,105、容量素子106,107,108,109及びスイッチ110を有する。
【0012】
増幅器101(第1増幅器)には、入力信号RFinが入力される。増幅器101は、出力が一次コイル1041の一端及び容量素子109の一端に接続される。増幅器101には電源電圧Vcc1が供給される。増幅器101は、入力信号RFinを増幅した信号をトランス104に出力する。
【0013】
増幅器102(第2増幅器)は、入力が二次コイル1042の一端に接続され、出力が一次コイル1051の一端に接続される。増幅器102はトランス104からの信号を増幅して信号RF1を出力する。
【0014】
増幅器103(第3増幅器)は、入力が二次コイル1042の他端に接続され、出力が一次コイル1051の他端に接続される。増幅器102はトランス104からの信号を増幅して信号RF2を出力する。
【0015】
増幅器102,103には、後述する一次コイル1051を通じて、電源電圧Vcc2が供給される。
【0016】
増幅器101,102,103は、例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)等のトランジスタを含んで構成される。
【0017】
トランス104(第1トランス)は、一次コイル1041(第1一次コイル)と二次コイル1042(第1二次コイル)を有する。一次コイル1041は二次コイル1042と電磁界結合している。一次コイル1041は、一端が増幅器101の出力に接続され、他端が容量素子107を通じて接地に接続される。
【0018】
一次コイル1041には、増幅器101にて増幅された信号が入力される。トランス104は、増幅器101から入力された信号に対して不平衡平衡変換を行う。一次コイル1041に入力された信号に応じて、二次コイル1042の両端から信号が出力される。二次コイル1042の両端から出力される信号は、互いにほぼ逆相の信号である。
【0019】
トランス105(第2トランス)は、一次コイル1051(第2一次コイル)と二次コイル1052(第2二次コイル)を有する。トランス105は、増幅器102,103から入力された信号に対して平衡不平衡変換を行う。トランス105は、例えば、電力増幅回路10が設けられる基板の配線によって、一次コイル1051と二次コイル1052が構成されるように設けられてもよい。
【0020】
一次コイル1051は、増幅器102,103に接続され、二次コイル1052と電磁界結合している。二次コイル1052は、一端が容量素子108の一端と接続し、さらにスイッチ110の入力に接続される。二次コイル1052は、他端が容量素子108の他端に接続される。二次コイル1052は、二次コイル1052の他端に接続される容量素子106を通じて接地に接続される。言い換えると、交流的に接地されている状態である。
【0021】
トランス105は、一次コイル1051に入力される信号に応じた出力信号RFoutを二次コイル1052から出力する。一次コイル1051には、増幅器102にて増幅された信号RF1及び増幅器103にて増幅された信号RF2が入力される。信号RF1と信号RF2に基づいて、二次コイル1052から出力信号RFoutが出力される。トランス104によって不平衡平衡変換された入力信号RFinを、信号RF1と信号RF2として増幅した後に、トランス105によって平衡不平衡変換を行うことで、入力信号RFinを増幅した出力信号RFoutが得られる。
【0022】
容量素子106(第1容量素子)は、二次コイル1052と接地との間に設けられる。容量素子106は、増幅器102の出力又は増幅器103の出力から見た二次コイル1052のインピーダンスを調整する。容量素子106の容量値は、例えば2.5pFである。
【0023】
容量素子107(第3容量素子)は、一次コイル1041と接地との間に設けられる。容量素子107は、増幅器101の出力から見た一次コイル1041のインピーダンスを調整する。増幅器102の入力及び増幅器103の入力から、不平衡側にある一次コイル1041を見た場合のインピーダンスを容量素子106と同様に調整することができる。容量素子107の容量値は、例えば1.1pFである。
【0024】
容量素子108(第2容量素子)は、一端が二次コイル1052の一端に接続され、他端が二次コイル1052の他端に接続される。容量素子108は、増幅器102の出力又は増幅器103の出力から見た二次コイル1052のインピーダンスを調整する。容量素子108の容量値は、例えば0.2pFである。容量素子108は、例えば、電力増幅回路10が設けられる基板の配線によって、平板コンデンサのように設けられてもよい。あるいは、容量素子108は表面実装部品として設けられてもよい。
【0025】
容量素子109(第4容量素子)は、一端が一次コイル1041の一端に接続され、他端が一次コイル1041の他端に接続される。容量素子109は、増幅器101の出力から見た一次コイル1041のインピーダンスを調整する。109の容量値は、例えば0.2pFである。
【0026】
スイッチ110は、外部から入力される制御信号(不図示)によって、周波数帯域に応じて出力信号RFoutの出力先を切り替えるバンドセレクトスイッチである。スイッチ110のそれぞれの出力には容量素子1101,1102のように容量素子が接続されている。容量素子1101,1102などの容量素子の容量値を調整することで、周波数帯域毎に適切なインピーダンスの調整を行うことができる。
【0027】
図2には、電力増幅回路10において、入力信号RFinの周波数を4.0GHzから5.4GHzまで変化させた場合の、信号RF1と信号RF2との位相差[度(deg)]及び振幅差[dB]のシミュレーション結果が示される。ここでは、信号RF1を基準として信号RF2との差分を示す。なお、ここでの位相差とは、信号RF1の位相をθとした場合の、信号RF2の位相の絶対値である180度―θとの差である。
【0028】
図2の結果について比較例を参照して説明する。図4には、比較例としての電力増幅回路40の回路図が示される。電力増幅回路40は、電力増幅回路10と比較して容量素子108,109を有しない点が異なる。また、増幅器102からの信号はRF3、増幅器103からの信号はRF4である。
【0029】
図5には、電力増幅回路40において、入力信号RFinの周波数を4.0GHzから5.4GHzまで変化させた場合の、信号RF3と信号RF4との位相差[deg]及び振幅差[dB]のシミュレーション結果が示される。ここでは、信号RF3を基準として信号RF4との差分を示す。位相差については図2と同様の算出方法である。
【0030】
図5に示される位相差[deg]は、例えば、4.4GHzでは0.75度、4.7GHzでは0.1度、5.0GHzでは1.4度である。振幅差[dB]は、4.4GHzでは1.05dB、4.7GHzでは1.11dB、5.0GHzでは0.94dBである。
【0031】
電力増幅回路40では、シミュレーションを行った帯域において、位相差の発生は抑制されている。一方で振幅差がこの帯域にわたって発生している。
【0032】
図2に示される位相差[deg]は、例えば、4.4GHzでは−1.23度、4.7GHzでは0.88度、5.0GHzでは2.69度である。振幅差[dB]は、4.4GHzでは0.09dB、4.7GHzでは0.22dB、5.0GHzでは0.28dBである。
【0033】
電力増幅回路10では、シミュレーションを行った帯域において、振幅差の発生を抑制できている。また、位相差について、4.4GHzから5.0GHzの帯域においては、位相差は0度の近くの値となっている。電力増幅回路10は、電力増幅回路40に比べて、位相差の発生を抑制しつつ、振幅差も抑制することができる周波数帯域を有する。よって、電力増幅回路10は、差動信号の位相差及び振幅差を抑制可能である。
【0034】
図3には、電力増幅回路30の回路図が示される。電力増幅回路30は容量素子109を有しない点で電力増幅回路10と異なる。しかし、容量素子106,108によって増幅器102の出力及び増幅器103の出力から出力側を見たインピーダンスを調整することで、電力増幅回路10と同様に差動信号の位相差及び振幅差を抑制することが可能である。
【0035】
なお、電力増幅回路10,30において増幅器101は一つの増幅器によるものとして説明したが、複数の増幅器が直列に結合されて構成される構成であってもよい。この場合、トランス104によって差動信号を発生させた後に出力信号の増幅を行うことによって、出力信号の帰還による電力増幅回路の発振を抑制することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。電力増幅回路10は、入力信号RFinを増幅する増幅器101と、増幅器101の出力に接続された一次コイル1041と、一次コイル1041と電磁界結合された二次コイル1042とを有するトランス104と、二次コイル1042の一端に接続された増幅器102と、二次コイル1042の他端に接続された増幅器103と、一端が増幅器102の出力に接続され、他端が増幅器103の出力に接続された一次コイル1051と、一次コイル1051と電磁界結合された二次コイル1052とを有するトランス105と、二次コイル1052と接地との間に設けられる容量素子106と、一端が二次コイル1052の一端に接続され、他端が二次コイル1052の他端に接続された容量素子108と、を備える。
【0037】
電力増幅回路10では、容量素子106と108によって増幅器102の出力及び増幅器103の出力から、電力増幅回路10の出力側を見たインピーダンスを調整することで、差動信号の位相差及び振幅差の発生を抑制することが可能である。位相差及び振幅差の発生を抑制することによって、差動信号を合成した出力信号の電力効率を向上させることができる。
【0038】
電力増幅回路10は、一次コイル1041と接地との間に設けられる容量素子107と、一端が一次コイル1041の一端に接続され、他端が一次コイル1041の他端に接続された容量素子109と、をさらに備える。これにより、差動信号の位相差及び振幅差の発生より抑制することが可能である。
【0039】
電力増幅回路10では、トランス105は電力増幅回路10が設けられる基板の配線によって一次コイル1051及び二次コイル1052が構成されてもよい。これにより、部品としてトランス105を実装する場合に比べて、実装部品の部品点数を削減することが可能となる。
【0040】
電力増幅回路10では、容量素子108は、電力増幅回路10が設けられる基板の配線によって構成されてもよい。これにより、実装部品の部品点数を削減することが可能となる。
【0041】
電力増幅回路10では、増幅器101は、複数の増幅器が直列に結合されて構成されてもよい。
【0042】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、条件などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0043】
10,30,40…電力増幅回路、101,102,103…増幅器、104,105…トランス、1041,1051…一次コイル、1042,1052…二次コイル、106,107,108,109…容量素子
図1
図2
図3
図4
図5