【課題】OTA環境下で移動端末の角度を変更させながら測定を行う項目について、測定中の呼切断によるデータ損失のない正確な測定を可能とする移動端末試験装置及び移動端末試験方法を提供する。
【解決手段】測定装置(移動端末測定装置)において、OTAチャンバ内でDUT走査機構56により回転させられるDUTが所望の方位に向く測定ポジションで、試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUTから送信される被測定信号を受信させる測定動作を既定回数実施させて特定の測定項目を測定させるように制御する統合制御装置(測定制御手段)10であって、測定ポジションでの呼接続切断を検出する切断検出部18aと、呼接続切断が検出された場合、呼接続の再接続を行う再接続制御部18bと、再接続後に呼接続の切断が検出された測定ポジションから後の測定ポジションでの測定に復帰させる測定復帰制御部18cと、を有する。
電波暗箱(50)の内部空間内に設けられ、被試験用アンテナ(110)を有する被試験対象(100)を、球座標系の予め設定された全ての方位を順次向くように当該球座標系の中心を基準点として回転させる走査を行う走査手段(16、56)と、
前記内部空間内の試験用アンテナ(5)に接続される測定装置(20)と、
前記被試験対象が所望の方位に向く測定ポジションで、前記試験用アンテナから前記被試験対象に対して試験信号を送信し、該試験信号を受信した前記被試験対象の前記被試験用アンテナから送信される被測定信号を前記試験用アンテナで受信させる測定動作を既定回数実施させ、前記被試験対象アンテナが使用する周波数帯域の無線信号に関する特定の測定項目を測定させるように前記測定装置を制御する測定制御手段(10)と、
前記測定ポジションでの測定時の呼接続切断を検出する切断検出手段(18a)と、
前記切断検出手段により前記呼接続切断が検出された場合、呼接続の再接続を行う再接続制御手段(18b)と、
前記呼接続の再接続後に、呼接続が切断された測定ポジション以降の測定ポジションからの前記測定項目の測定に復帰させる測定復帰制御手段(18c)と、
を有することを特徴とする移動端末試験装置。
前記測定制御手段は、前記試験用アンテナで受信した被測定信号に基づいて前記全ての方位についてのEIRP(等価等方性放射電力)累積分布関数、またはEIS累積分布回数を測定するとともに、前記全ての方位の前記EIRPの総和であるTRP(全球面放射電力)を測定することを特徴とする請求項1に記載の移動端末測定装置。
前記測定制御手段は、前記TRP測定実行中、前記呼接続切断が検出された場合、前記呼接続の再接続後に、前記呼接続切断が検出された測定ポジション以降の測定ポジションから当該測定項目の測定を開始する前に、前記呼接続切断が検出された測定ポジションに戻って前記被測定対象のビームを特定のビーム方向にピークを持つ状態にビームロックするビームロック制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の移動端末測定装置。
電波暗箱(50)の内部空間内に設けられ、被試験用アンテナ(110)を有する被試験対象(100)を、球座標系の予め設定された全ての方位を順次向くように当該球座標系の中心を基準点として回転させる走査を行う走査手段(16、56)と、前記内部空間内の試験用アンテナ(5)に接続される測定装置(20)と、を有する移動端末試験装置を用いて前記被測定対象の試験を行う移動端末試験方法であって、
前記被試験対象が所望の方位に向く測定ポジションで、前記試験用アンテナから前記被試験対象に対して試験信号を送信し、該試験信号を受信した前記被試験対象の前記被試験用アンテナから送信される被測定信号を前記試験用アンテナで受信させる測定動作を既定回数実施させ、前記被試験対象アンテナが使用する周波数帯域の無線信号に関する特定の測定項目を測定させるように前記測定装置を制御する測定制御ステップ(S1、S2)と、
前記測定ポジションでの測定時の呼接続切断を検出する切断検出ステップ(S3、S5)と、
前記切断検出ステップにより前記呼接続切断が検出された場合、呼接続の再接続を行う再接続制御ステップ(S8、S9)と、
前記呼接続の再接続後に、呼接続が切断された測定ポジション以降の測定ポジションからの前記測定項目の測定に復帰させる測定復帰制御ステップ(S13、S2)と、
を有することを特徴とする移動端末試験方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る測定装置及び測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0025】
まず、本発明の一実施形態に係る測定装置1の構成について、
図1〜
図4を参照して説明する。測定装置1は、本発明の移動端末試験装置を構成する。本実施形態に係る測定装置1は、全体として
図1に示すような外観構造を有し、かつ、
図2に示すような機能ブロックにより構成されている。
図1、
図2において、OTAチャンバ50についてはその側面から透視した状態における各構成要素の配置態様を示している。
【0026】
測定装置1は、例えば、
図1に示す構造を有するラック構造体90の各ラック90aに前述したそれぞれの構成要素を載置した態様で運用される。
図1においては、ラック構造体90の各ラック90aに、それぞれ、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、LTE用測定器25、OTAチャンバ50を載置した例を示している。
【0027】
図2に示すように、本実施形態に係る測定装置1は、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、信号処理部23、LTE用測定器25、信号処理部27、OTAチャンバ50を有している。
【0028】
これらの構成について、ここでは、便宜的に、OTAチャンバ50から先に説明する。
図1、
図2に示すように、OTAチャンバ50は、例えば、長方体形状の内部空間51を有する金属製の筐体本体部52により構成され、内部空間51に、アンテナ110を有するDUT100、試験用アンテナ5、LTE試験用アンテナ6a、6b、リフレクタ7、DUT走査機構56を収容している。
【0029】
OTAチャンバ50の内面全域、つまり、筐体本体部52の底面52a、側面52b及び上面52c全面には、電波吸収体55が貼り付けられている。これにより、OTAチャンバ50は、内部空間51内に配置される各要素(DUT100、試験用アンテナ5、LTE試験用アンテナ6a、6b、リフレクタ7、DUT走査機構56)が外部からの電波の侵入及び外部への電波の放射を規制する機能が強化されている。このように、OTAチャンバ50は、周囲の電波環境に影響されない内部空間51を有する電波暗箱を実現している。本実施形態で用いる電波暗箱は、例えば、Anechoic型のものである。
【0030】
OTAチャンバ50の内部空間51に収容されるもののうち、DUT100は、例えばスマートフォンなどの無線端末である。DUT100の通信規格としては、セルラ(LTE、LTE−A、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV−DO、TD−SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びデジタル放送(DVB−H、ISDB−T等)が挙げられる。また、DUT100は、IEEE802.11adや5Gセルラ等に対応したミリ波帯の無線信号を送受信する無線端末であってもよい。
【0031】
本実施形態において、DUT100のアンテナ110は、例えば、LTE、あるいは5G NRの通信規格に準拠したそれぞれの規定の周波数帯の無線信号を使用するものである。DUT100、アンテナ110は、それぞれ、本発明における被試験対象、被試験対象アンテナを構成する。
【0032】
OTAチャンバ50の内部空間51において、DUT100は、DUT走査機構56の一部機構により保持されている。DUT走査機構56は、OTAチャンバ50の内部空間51における筐体本体部52の底面52aに、鉛直方向に延在して設けられている。DUT走査機構56は、性能試験を行うDUT100を保持しつつ、該DUT100に対する後述の全球面走査(
図5、
図6参照)を実施するものである。
【0033】
DUT走査機構56は、
図1に示すように、ターンテーブル56a、支柱部材56b、DUT載置部56c、駆動部56eを有している。ターンテーブル56aは、円盤形状を有する板部材で構成され、アジマス軸(鉛直方向の回転軸)を中心に回転する構成(
図3参照)を有する。支柱部材56bは、ターンテーブル56aの板面上に垂直方向に延びるように配置される柱状部材により構成されている。
【0034】
DUT載置部56cは、支柱部材56bの上端近傍にターンテーブル56aと平行に配置され、DUT100を載置する載置トレイ56dを有している。DUT載置部56cは、ロール軸(水平方向の回転軸)を中心に回転可能な構成(
図3参照)を有している。
【0035】
駆動部56eは、例えば、
図3に示すように、アジマス軸を回転駆動する駆動モータ56fと、ロール軸を回転駆動する駆動モータ56gと、を有する。駆動部56eは、駆動モータ56fと駆動モータ56gとによって、アジマス軸とロール軸とをそれぞれの回転方向に回転させる機構を備えた2軸ポジショナにより構成されている。このように、駆動部56eは、載置トレイ56dに載置されたDUT100を、載置トレイ56dごと2軸(アジマス軸とロール軸)方向に回転させることができるものである。以下、駆動部56eを含むDUT走査機構56全体を2軸ポジショナと称することもある(
図3参照)。駆動部56e、駆動モータ56f、56gは、それぞれ、本発明における駆動手段、第1の回転駆動手段、第2の回転駆動手段を構成する。載置トレイ56dは、本発明における被試験対象載置部を構成する。
【0036】
DUT走査機構56では、載置トレイ56dに載置(保持)されているDUT100を、例えば、球体(
図5の球体B参照)の中心O1に配置したと仮定し、球体表面の全ての方位に対してアンテナ110が向く状態にDUT100の姿勢を順次変化させる全球面走査を行うものである。DUT走査機構56におけるDUT走査の制御は、後述するDUT走査制御部16よって行われる。DUT走査機構56、及びDUT走査制御部16は、本発明における走査手段を構成する。
【0037】
試験用アンテナ5は、OTAチャンバ50の筐体本体部52の底面52aの所要位置に、適宜な保持具(図示せず)を用いて取り付けられている。試験用アンテナ5の取り付け位置は、底面52aに設けられた開口67aを介してリフレクタ7から見透しが確保できる位置となっている。試験用アンテナ5は、DUT100のアンテナ110と同じ規定(NR規格)の周波数帯の無線信号を使用するものである。
【0038】
試験用アンテナ5は、OTAチャンバ50内でのDUT100のNRに関連する測定に際し、NRシステムシミュレータ20からDUT100に対する試験信号の送信、及び該試験信号を受信したDUT100から送信される被測定信号の受信を行う。試験用アンテナ5は、その受光面がリフレクタ7の焦点位置Fとなるように配置されている。なお、試験用アンテナ5をその受光面がDUT100に向き適切な受光ができるように配置できる場合には、リフレクタ7は必ずしも必要ない。
【0039】
LTE試験用アンテナ6a、6bは、OTAチャンバ50内でのDUT100のLTEに関連する測定に際し、LTE用測定器25からDUT100に対するLTE試験信号の送信、及び該LTE試験信号を受信したDUT100から送信されるLTE被測定信号の受信を行う。2つのLTE試験用アンテナ6a、6bを設けるのは、LTEに関連する測定においてDUT100との間で常に品質良好な無線信号の送受信を可能にすべく、いずれか一方を選択的に使用できるようにするためである。
【0040】
リフレクタ7は、OTAチャンバ50の側面52bの所要位置にリフレクタ保持具58を用いて取り付けられている。リフレクタ7は、DUT100のアンテナ110により送受信される無線信号(試験信号、及び被測定信号)を、試験用アンテナ5の受光面へと折り返す電波経路を実現する。
【0041】
次に、統合制御装置10、NRシステムシミュレータ20、LTE用測定器25の構成について説明する。
【0042】
図2に示すように、統合制御装置10は、NRシステムシミュレータ20、LTE用測定器25に対して、例えばイーサネット(登録商標)等のネットワーク19を介して相互に通信可能に接続されている。また、統合制御装置10は、OTAチャンバ50における被制御系要素、例えば、DUT走査制御部16にもネットワーク19を介して接続されている。
【0043】
統合制御装置10は、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20、LTE用測定器25、及びDUT走査制御部16を統括的に制御するものであり、例えば、パーソナル・コンピュータ(PC)により構成される。なお、DUT走査制御部16は、OTAチャンバ50に付随して独立に設けられる(
図2参照)他、
図3に示すように、統合制御装置10に設けられていてもよい。以下では、統合制御装置10が
図3に示す構成を有するものとして説明する。
【0044】
図3に示すように、統合制御装置10は、制御部11、操作部12、表示部13を有している。制御部11は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、測定装置1の機能を実現するための所定の情報処理や、NRシステムシミュレータ20、及びLTE用測定器25を対象とする統括的な制御を行うCPU(Central Processing Unit)11aと、CPU11aを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)11bと、CPU11aが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)11c、外部I/F部11d、入出力ポート(図示せず)等を有する。
【0045】
外部I/F部11dは、ネットワーク19を介して、NRシステムシミュレータ20、LTE用測定器25、及びDUT走査機構(2軸ポジショナ)56の駆動部56eとそれぞれ通信可能に接続されている。入出力ポートには、操作部12、表示部13が接続されている。操作部12は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部13は、上記各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
【0046】
上述したコンピュータ装置は、CPU11aがRAM11cを作業領域としてROM11bに格納されたプログラムを実行することにより制御部11として機能する。制御部11は、
図3に示すように、呼接続制御部14、信号送受信制御部15、DUT走査制御部16、信号解析制御部17、切断検出部18a、再接続制御部18b、測定復帰制御部18cを有している。呼接続制御部14、信号送受信制御部15、DUT走査制御部16、信号解析制御部17、切断検出部18a、再接続制御部18b、測定復帰制御部18cも、CPU11aがRAM11cの作業領域でROM11bに格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0047】
呼接続制御部14は、NRシステムシミュレータ20、信号処理部23を介して試験用アンテナ5を駆動してDUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信させることにより、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間に呼(無線信号を送受信可能な状態)を確立する制御を行う。呼接続制御部14はまた、LTE用測定器25、信号処理部27を介してLTE試験用アンテナ6a、6bを駆動してDUT100との間で制御信号(無線信号)を送受信させることにより、LTE用測定器25とDUT100との間に呼(無線信号を送受信可能な状態)を確立する制御を行う。
【0048】
信号送受信制御部15は、操作部12におけるユーザ操作を監視し、ユーザによりDUT100の送信及び受信特性の測定に係る所定の測定開始操作が行われことを契機に、呼接続制御による呼の確立後のNRシステムシミュレータ20に対して信号送信指令を送信し、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ5を介して試験信号を送信させる制御、及び信号受信指令を送信し、試験用アンテナ5を介して被測定信号を受信させる制御を行う。同様に、信号送受信制御部15は、呼接続制御による呼の確立後のLTE用測定器25に対して信号送信指令を送信し、LTE用測定器25からLTE試験用アンテナ6a、6bを介してLTE試験信号を送信させる制御、及び信号受信指令を送信し、LTE試験用アンテナ6a、6bを介してLTE被測定信号を受信させる制御を行う。
【0049】
DUT走査制御部16は、DUT走査機構56の駆動モータ56f及び56gを駆動制御することにより、DUT載置部56cの載置トレイ56dに載置されているDUT100の全球面走査を行わせるものである。この制御を実現するために、例えば、ROM11bには、予め、DUT走査制御テーブル16aが用意されている。DUT走査制御テーブル16aは、例えば、DUT100の全球面走査に係る球座標系(
図5(a)参照)における各角度標本点PS(
図5(b)参照)の座標、各角度標本点PSの座標に対応付けられた駆動モータ56f及び56gの駆動データ、及び各角度標本点PSでの停止時間(測定時間)などが関係付けられた制御データを格納している。駆動モータ56f及び56gが例えばステッピングモータの場合には、上記駆動データとして例えば駆動パルス数が格納される。
【0050】
DUT走査制御部16は、DUT走査制御テーブル16aをRAM11cの作業領域に展開し、該DUT走査制御テーブル16aに記憶されている制御データに基づき、DUT走査機構56の駆動モータ56f及び56gを駆動制御する。これにより、DUT載置部56cに載置されるDUT100の全球面走査が行われる。全球面走査では、球座標系における角度標本点PSごとにDUT100のアンテナ110のアンテナ面が該角度標本点PSに向いて規定の時間(上記停止時間)だけ停止し、その後、次の角度標本点PSに移動する動作(DUT100の走査)が、全ての角度標本点PSを対象にして順次実施される。
【0051】
信号解析制御部17は、DUT100の全球面走査時に、試験用アンテナ5、LTE試験用アンテナ6a、6bがそれぞれ受信したNR、LTEに関連する無線信号を、NRシステムシミュレータ20、LTE用測定器25を介して取り込み、指定測定項目の信号として解析処理(測定処理)するものである。
【0052】
切断検出部18aは、DUT100の全球面走査に係る各角度標本点PS(測定ポジション)での指定測定項目の測定中、NRシステムシミュレータ20とDUT100間、LTE用測定器25とDUT100間の呼接続が切断されたことを検出するものである。
【0053】
再接続制御部18bは、切断検出部18aにより呼接続の切断が検出された場合、当該呼接続が切断されたNRシステムシミュレータ20とDUT100間、またはLTE用測定器25とDUT100間の呼接続を再接続するものである。
【0054】
測定復帰制御部18cは、再接続制御部18bによりNRシステムシミュレータ20とDUT100間、またはLTE用測定器25とDUT100間の呼接続が再接続された後、呼接続が切断された測定ポジションからの残りの回数の指定測定項目の測定に復帰させる制御を行うものである。
【0055】
NRシステムシミュレータ20は、
図4(a)に示すように、信号発生部21a、送受信部21f、信号測定部21b、制御部21c、操作部21d、表示部21eを有している。NRシステムシミュレータ20は、本発明の信号発生器を構成する。
【0056】
信号発生部21aは、試験信号の元となる信号(ベースバンド信号)を発生する。送受信部21fは、信号発生部21aが発生した信号から各通信規格の周波数に対応した試験信号を生成して信号処理部25に送出するとともに、信号処理部25から送られてくる被測定信号からベースバンド信号を復元するRF部の機能を果たす。信号測定部21bは、送受信部21fで復元されたベースバンド信号に基づいて被測定信号の測定処理を行う。
【0057】
制御部21cは、信号発生部21a、信号測定部21b、操作部21d、表示部21eの各機能部を統括的に制御する。操作部21dは、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部21eは、各種情報の入力画面や測定結果など、各種情報を表示する機能部である。
【0058】
LTE用測定器25は、
図4(b)に示すように、信号発生部26a、信号測定部26b、LTE制御部26cを有している。信号発生部26aは、信号処理部27、LTE試験用アンテナ6a、6bを介してDUT100に送信するためのLTE試験信号を発生し、信号測定部26bは、LTE試験信号を受信したDUT100が送信するLTE被試験信号を、LTE試験用アンテナ6a、6b、信号処理部27を介して受信し、その測定処理を行う。LTE制御部26cは、統合制御装置10の制御部11の制御下で、信号発生部26a、信号測定部26b、操作部21dを統括的に制御する。
【0059】
上述した構成を有する測定装置1では、OTAチャンバ50の内部空間51内で、DUT走査機構56(2軸ポジショナ)の載置トレイ56dにDUT100を載置し、該DUT100を、載置トレイ56dごと2軸(アジマス軸とロール軸)方向に回転させながら(ポジショナの角度を変更しながら)、DUT100の無線信号に関するEIRP−CDF、EIS−CDF、TRP等の測定項目の測定を行うことができる。
【0060】
ここで、上述した各測定項目を測定する際に必要とされる、2軸ポジショナの角度変更によるDUT100の角度制御(全球面走査)について
図5、
図6を参照して説明する。
【0061】
一般に、DUT100を対象とする放射電力測定に関しては、等価等方輻射電力(EIRP)を測定する方法と、全放射電力(TRP)を測定する方法が知られている。EIRPは、例えば、
図5(a)に示す球座標系(r,θ,φ)の各測定点(θ,φ)で測定した電力値である。これに対し、TRPは、上記球座標系(r,θ,φ)の全ての方位、すなわち、DUT100の全球面走査の中心O1(以下、基準点)から等距離にある球面上の予め規定した複数の角度標本点PS(
図5(b)参照)でのEIRPを測定し、その総和を求めたものである。
【0062】
本実施形態において、全放射電力(TRP)を算出するための分割数Nθ及びNφは、それぞれ、例えば、12に設定されている。これにより、本実施形態においては、角度標本数(N)は、N=132(=(12−1)×12)として求められる。こうして求められた132個の角度標本点PSは、球体Bの表面上に表すと
図5(b)に示すような位置となる。
【0063】
本実施形態に係る測定装置1では、
図5(b)に示すように、球座標系(r,θ,φ)の基準点から等距離の132ポイントの位置でそれぞれEIRPが測定され、さらに全てのポイント位置でのEIRPが加算される。そして、上記各EIRPの加算結果、すなわち、132ポイントの全ての角度標本点PSでのEIRPの総和に基づいて、DUT100の全放射電力(TRP)が求められる。
【0064】
TRP測定に際し、統合制御装置10は、DUT走査機構56を駆動制御することでDUT100の全球面走査を実施する。DUT100の全球面走査において、統合制御装置10は、駆動モータ56fの駆動/非駆動を繰り返しつつターンテーブル56aをアジマス軸中心に回転駆動する一方で、駆動モータ56gの駆動/非駆動を繰り返しつつ載置トレイ56dをロール軸中心に回転駆動させる。その際、統合制御装置10は、アンテナ110のアンテナ面が1つの角度標本点PSを向くタイミングごとに駆動モータ56f及び駆動モータ56gを非駆動とするように制御する。このDUT100の全球面走査制御により、載置トレイ56dに載置されているDUT100は、アンテナ110が球座標系(r,θ,φ)を規定する球体Bの中心である基準点の位置に保たれたまま、アンテナ110のアンテナ面が球体Bの全ての角度標本点PSを順次向く(指向する)ように、基準点を中心に回転駆動される。
【0065】
図6に示すように、上記球座標系(r,θ,φ)系における特定の角度標本点PS(1点)の位置には、試験用アンテナ5が配置されている。上述した全球面走査において、DUT100は、アンテナ110のアンテナ面が試験用アンテナ5の受光面に順次に向くように駆動(走査)される。これにより、試験用アンテナ5は、全球面走査が行われるDUT100のアンテナ110との間でTRP測定のための信号の送受信を行うことが可能となる。ここで送受信される信号は、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ5を介して送信される試験信号と、該試験信号を受信したDUT100がアンテナ110より送信する信号であって、試験用アンテナ5を介して受信される被測定信号である。
【0066】
統合制御装置10では、
図5(b)に示す球座標系(r,θ,φ)系において、DUT100があるθの角度を保ったままφ方向の各角度標本点PSを通過するように走査されるのに合わせて、NRシステムシミュレータ20を駆動して信号発生部21a、送受信部21fより上記試験信号を発生させ、該試験信号を、信号処理部23を介して試験用アンテナ5から送信させる。ここでDUT100は、アンテナ110で上記試験信号を受信すると、当該試験信号の受信に対応した応答信号を送出する。
【0067】
統合制御装置10は、NRシステムシミュレータ20をさらに駆動し、DUT100が上記試験信号の受信に応答して送信し、試験用アンテナ5で受信された信号を、信号処理部25から送受信部21fを介して信号測定部21bに被測定信号として受信させる。さらに統合制御装置10は、受信した被測定信号に基づいてEIRPの測定に係る信号処理を行わせるように信号測定部21bを駆動制御する。こうしたEIRPの測定制御を、θの角度を変えて全ての角度標本点PSを通過するDUT100の全球面走査に合わせ実施することで、NRシステムシミュレータ20では、NRに対応して球座標系(r,θ,φ)系の全ての角度標本点PSについてのEIRPを測定することができる。また、統合制御装置10は、全ての角度標本点PSについてのEIRP測定値の総和であるTRPを求めることができる。
【0068】
また、統合制御装置10は、NRに対応するEIRP、TRPを測定するためのNRシステムシミュレータ20の駆動制御に合わせて、NRとともにノンスタンドアローンを構成するLTEに対応するEIRP、TRPを測定するためのLTE用測定器25の駆動制御を実施する。
【0069】
この場合におけるLTE用測定器25の駆動制御に関し、統合制御装置10では、LTE用測定器25の信号発生部26aからLTEに対応する測定を行うためのLTE試験信号を発生させ、該LTE試験信号を、信号処理部27を介してLTE試験用アンテナ6a又は6bから送信させる。ここでDUT100は、アンテナ110でLTE試験信号を受信すると、当該LTE試験信号の受信に対応した応答信号を送出する。
【0070】
統合制御装置10は、LTE用測定器25をさらに駆動し、DUT100がLTE試験信号の受信に応答して送信し、LTE試験用アンテナ6a又は6bで受信された信号を、信号処理部27を介して信号測定部26bにLTE被測定信号として受信させる。さらに統合制御装置10は、受信したLTE被測定信号に基づき、NRに対応するEIRP、TRPの測定に係る信号処理を行わせるように信号測定部26bを駆動制御する。
【0071】
また、統合制御装置10は、上述した、2軸ポジショナ(DUT走査機構56)の角度を変更しながら行うEIRP−CDF、EIS−CDF、TRP等の測定項目の測定中、NRシステムシミュレータ20、あるいはLTE用測定器25とDUT100間の呼接続が切断されることにより測定の継続が困難となることを回避するための制御機能を有している。この制御機能は、統合制御装置10の制御部11に設けられる切断検出部18a、再接続制御部18b、測定復帰制御部18c(
図3参照)により実現される。
【0072】
この点を踏まえ、以下、本実施形態に係る測定装置1のOTAチャンバ50内におけるDUT100の全球面走査に合わせて実施される統合制御装置10による測定制御動作について
図7に示すフローチャートを参照して説明する。
図7に示すフローチャートは、呼接続の切断を検出し、再接続を行うことにより、呼切断が発生した測定ポジション以降からの測定に復帰する処理手順(
図7におけるステップS3〜S6、S8〜S13)を含んでいる。
【0073】
測定装置1において、OTAチャンバ50のDUT走査機構56のDUT載置部56cに試験対象となるDUT100をセットした後、所定の測定項目の測定開始操作が行われると、統合制御装置10の呼接続制御部14は、NRシステムシミュレータ20を駆動し、DUT100との間で試験用アンテナ5を介して制御信号(無線信号)を送受信させることによりNRシステムシミュレータ20とDUT100との間のリンク(呼)を確立するための呼接続制御を実施する。
【0074】
ここでNRシステムシミュレータ20は、DUT100に対して試験用アンテナ5を介して制御信号(呼接続要求信号)を無線送信させる一方で、該呼接続要求信号を受信したDUT100が接続要求された周波数を設定したうえで送信してくる制御信号(呼接続応答信号)を受信する呼接続制御を行う。この呼接続制御により、NRシステムシミュレータ20とDUT100との間には、リフレクタ7の焦点位置Fに配置された試験用アンテナ5、及びリフレクタ7を介して規定の周波数帯の無線信号を送受信可能な状態が確立される。これ以後、NRシステムシミュレータ20とDUT100とは、測定開始操作で指定された指定測定項目の測定に必要な無線信号を送受信できるようになる。
【0075】
なお、上記測定に係る無線信号の送受信については、DUT100側から見た場合に、NRシステムシミュレータ20から試験用アンテナ5及びリフレクタ7を介して送られてくる無線信号を受信する処理がダウンリンク(DL)処理とされ、逆に、リフレクタ7及び試験用アンテナ5を介してNRシステムシミュレータ20に対して無線信号を送信する処理がアップリンク(UL)処理とされる。試験用アンテナ5は、NRシステムシミュレータ20とDUT100間のリンク(呼)を確立する処理、ならびにリンク確立後のダウンリンク(DL)及びアップリンク(UL)の処理を実行するために用いられるものであり、リンクアンテナと称されることもある。
【0076】
同様に、呼接続制御部14は、LTE用測定器25とDUT100との間でLTE試験用アンテナ6a、6bを介して制御信号を送受信させることにより、LTE用測定器25とDUT100との間のリンク(呼)を確立するための呼接続制御を実施する。これ以後、LTE用測定器25とDUT100とは、LTE試験用アンテナ6a、6bを介して上記指定測定項目の測定に必要な無線信号を送受信可能となる。
【0077】
測定装置1は、NRシステムシミュレータ20とDUT100間、LTE用測定器25とDUT100間で呼接続が確立されることにより、
図7に示すフローチャートに沿った測定が開始される。
【0078】
測定が開始されると、統合制御装置10の制御部11の制御下のDUT走査制御部16は、予め設定された測定条件に従って、2軸ポジショナを、
図5(a)に示す球座標系(r,θ,φ)における初期測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転させるように駆動する(ステップS1)。
【0079】
引き続き、制御部11は、NRシステムシミュレータ20、及びLTE用測定器25を駆動制御し、ステップS1における2軸ポジショナの角度位置に対応する測定ポジション(初回の測定は、初期測定ポジション)での予め設定(指定)されている測定項目(指定測定項目:EIRP−CDF、EIS−CDF、TRPなど)の測定を行わせるように制御する(ステップS2)。
【0080】
なお、ステップS2での測定処理を行うには、呼接続制御部14の制御によって、事前に、NRシステムシミュレータ20とDUT100間、あるいはLTE用測定器25とDUT100間の呼接続がなされていることが前提となる。呼接続状態において、信号送受信制御部15は、NRシステムシミュレータ20とLTE用測定器25とからそれぞれ試験信号とLTE試験信号を送信させ、信号解析制御部17が、試験信号とLTE試験信号の受信に応答してDUT100がそれぞれ応答送信する被測定信号とLTE被測定信号を受信して、指定測定項目の測定処理(解析処理)を実施する。
【0081】
ステップS2における現在の測定ポジションでの指定測定項目の測定動作中、切断検出部18aは、LTE用測定器25とDUT100間でのLTE試験用アンテナ6a、6bを介したLTE試験信号とLTE被測定信号の交信状況を監視し、その監視結果に基づいてLTEの呼接続が切断されたか否かを検出する(ステップS3)処理を実行する。
【0082】
ここでLTEの呼接続が切断されていないことが検出された場合(ステップS3でNO)、次いで切断検出部18aは、上述したLTE試験信号とLTE被測定信号の交信状況に加えて、NRシステムシミュレータ20とDUT100間での試験用アンテナ5を介した試験信号と被測定信号の交信状況をさらに監視し、それらの監視結果に基づいてNRの呼接続が切断されているか否かを検出する(ステップS5)処理を実行する。
【0083】
ここでも、NRの呼接続が切断されていないことが検出された場合(ステップS5でNO)、DUT走査制御部16は、残りの測定ポジションが存在するか否かを判定する(ステップS7)。
【0084】
ここで残りの測定ポジションが存在すると判定された場合(ステップS7でYES)、DUT走査制御部16は、2軸ポジショナを、球座標系(r,θ,φ)における次の測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転させるように駆動する(ステップS1)。
【0085】
次いで、制御部11は、NRシステムシミュレータ20、及びLTE用測定器25を駆動制御し、ステップS1における2軸ポジショナの角度位置に対応する2回目の測定ポジションでの指定測定項目の測定を行わせるように制御する(ステップS2)。
【0086】
その後、制御部11は、ステップS3、S5の処理を継続し、ステップS3、S5のいずれにおいても呼接続の切断が検出されず、かつ、ステップS7で残りの測定ポジションが存在すると判定される間は、ステップS1で2軸ポジショナを次の測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転させ、かつステップS2でその測定ポジションでの指定測定項目を測定させる制御を、測定ポジションを更新させつつ繰り返し実施する。
【0087】
この間、すなわち、測定ポジションを更新させつつ指定測定項目を測定させる制御を繰り返し実施している間、例えば、ステップS3でLTEの呼接続が切断されていることが検出された場合(ステップS3でYES)、次いで再接続制御部18bは、事前に設定されている再接続設定の設定内容をチェックし、当該再接続のパラメータがオン(On)であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0088】
ここで再接続のパラメータがオンであると判定された場合(ステップS4でYES)、再接続制御部18bは、呼接続制御部14によってLTE用測定器25とDUT100間の呼接続を再び確立させるように制御する(ステップS8)。さらに再接続制御部18bは、呼接続制御部14によってNRシステムシミュレータ20とDUT100間の呼接続を再び確立させるように制御する(ステップS9)。
【0089】
また、測定ポジションを更新させつつ指定測定項目を測定させる制御を繰り返し実施している間、例えば、ステップS5でNRの呼接続が切断されていることが検出された場合(ステップS5でYES)、再接続制御部18bは、事前に設定されている再接続設定の設定内容をチェックし、当該再接続のパラメータがオン(On)であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0090】
ここで再接続のパラメータがオンであると判定された場合(ステップS6でYES)、再接続制御部18bは、呼接続制御部14によってNRシステムシミュレータ20とDUT100間の呼接続を再び確立させるように制御する(ステップS9)。
【0091】
なお、上記ステップS4で再接続のパラメータがオフ(Off)の場合(ステップS4でNO)、及び上記ステップS6で再接続のパラメータがオフ(Off)の場合(ステップS6でNO)、制御部11では、それぞれ、ステップS7、S1を経て次の測定ポジションに移動させる制御を継続するようになっている。
【0092】
上記ステップS8、S9での再接続制御によりLTE、NRの呼接続が再接続された場合、あるいは、上記ステップS9での再接続制御によりNRの呼接続が再接続された場合、次いで測定復帰制御部18cは、指定測定項目がTRPであるか否かを判定する(ステップS10)。
【0093】
ここで指定測定項目がTRPではないと判定された場合(ステップS10でNO)、測定復帰制御部18cは、ステップS2に戻り、1回前のステップS3、S5のいずれかで呼接続の切断が検出された測定ポジション(前回呼接続切断測定ポイント)での指定測定項目(ここではTRP以外)の測定を再開させるように制御する。
【0094】
引き続き、制御部11では、前回呼接続切断測定ポイントについてのステップS3、S5、S7の処理を実施させる。この間、ステップS7で残りの測定ポジションが存在すると判定された場合(ステップS7でYES)、それ以後、DUT走査制御部16は、2軸ポジショナを順次次の測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転させながら、各測定ポジションでの指定測定項目に関する測定に係るS1〜S3、S5、S7までの処理を繰り返し実施させるように制御する。各測定ポジションにおけるS1〜S3、S5、S7の処理は、最後の測定ポジションに達するまで実施される。
【0095】
これに対し、上記ステップS10で指定測定項目がTRPであると判定された場合(ステップS10でYES)、引き続き測定復帰制御部18cは、TRP測定において不可欠なルーチンである、DUT100のビーム(送出電力)をビームピーク方向でロックさせるビームロックの制御を実行させる。
【0096】
ビームロックの制御について、測定復帰制御部18cは、上記ステップS8若しくはステップS9の呼接続の再接続後、DUT走査制御部16により、2軸ポジショナを、DUT100がビームピーク方向の測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転させる(ステップS11)。
【0097】
引き続き測定復帰制御部18cは、DUT100のビーム方向を、再度、ビームピーク方向の測定ポジションに向くようにロックするビームロック復帰処理を実行する(ステップS12)。
【0098】
ステップS12でのビームロック復帰処理が終了すると、測定復帰制御部18cは、測定ポジション復帰処理(ステップS13)を経てステップS2に戻り、1回前のステップS3、S5のいずれかで呼接続の切断が検出された測定ポジション(前回呼接続切断測定ポイント)での指定測定項目(ここではTRP)の測定を再開させるように制御する。
【0099】
その後、DUT走査制御部16は、2軸ポジショナを順次次の測定ポジションに対応する(θ,φ)の角度位置まで回転させながら、各測定ポジションでのTRP測定に係るS1〜S3、S5、S7までの処理を繰り返し実施させるように制御する。各測定ポジションにおけるS1〜S3、S5、S7の処理は、最後の測定ポジションに達するまで実施され、最初の測定ポジションから最後の測定ポジションまでの全測定ポジションの測定結果の総和が算出され、一連のTRP測定が終了する。
【0100】
図7に示す一連の処理中、ステップS3、S5における呼接続切断判定処理は、
図8に示すコールステータス確認処理シーケンスにより実現可能である。
図8に示すように、統合制御装置10の再接続制御部18bは、NRシステムシミュレータ20の制御部21c、及びLTE用測定器25のLTE制御部26cとネットワーク19によりアクセス可能に接続されている。
【0101】
図7のステップS3、S5において、再接続制御部18bは、NRシステムシミュレータ20の制御部21c、及びLTE用測定器25のLTE制御部26cとの間でコールステータス(通信状況)確認処理シーケンスを実行する(ステップS20)。具体的に、再接続制御部18bは、ステップS3ではLTE用測定器25のLTE制御部26cにアクセスしてLTEコールステータス(LTE Call Status)を確認する処理を行う(ステップS22)。ここで、LTEコールステータスが通信中であればLTEに関して呼接続が維持されていると判定し、不通状態であれば同じく呼接続が切断されていると判断する。
【0102】
これに対し、ステップS5では、再接続制御部18bは、NRシステムシミュレータ20の制御部21cにアクセスしてNRコールステータス(NR Call Status)を確認する処理を行う(ステップS21)。ここで、NRコールステータスが通信中であればNRに関して呼接続が維持されていると判定し、不通状態であれば同じく呼接続が切断されていると判断する。
【0103】
図7に示す一連の処理中、ステップS3、S5、並びにステップS8及びS9における呼切断の検出、並びに再接続に係る処理は、
図9に示す制御シーケンスにより実現可能である。
図9に示すように、NRシステムシミュレータ20の制御部21c、及びLTE用測定器25のLTE制御部26cとネットワーク19を介してアクセス可能に接続されている環境下で、統合制御装置10の再接続制御部18bは、コールステータス確認処理を実行する(ステップS20)。ステップS20の処理は、
図8に示すコールステータス確認処理シーケンスと同様のシーケンスにより実現可能である。
【0104】
ステップS20において、LTE、NRのいずれも呼接続が切断されていることが検出されなかった場合は再接続ループに入らず、次の処理へと移行する(ステップS30)。
【0105】
これに対し、ステップS20において、LTE、NRの少なくとも一方について呼接続が切断されていることが検出された場合、再接続制御部18bは、再接続処理を実行する(ステップS40)。
【0106】
ステップS40での再接続処理において、再接続制御部18bは、LTEの呼接続の切断が検出されている場合には当該LTEの呼接続を再接続する処理を実施し(ステップS43)、他方、NRの呼接続の切断が検出されている場合には当該NRの呼接続を再接続する処理を実施する(ステップS45)。
【0107】
ステップS43、ステップS45のいずれの処理を行う場合でも、再接続制御部18bは、再接続実行回数をインクリメントする処理をまず実行する。その後、ステップS43に移行した場合、再接続制御部18bは、LTE用測定器25のLTE制御部26cに対して呼び出し(Call SA)を送り、次いでLTEコールステータス確認処理を所定の時間間隔ごとに実施するとともに、これらの処理を、LTEコールステータスが通信可能状態を示していることの確認が取れるまで、設定された再接続実行回数の範囲内で繰り返し実施する。
【0108】
これに対し、ステップS45に移行した場合、再接続制御部18bは、NRシステムシミュレータ20の制御部21cにアクセスしてコールステータス処理を行う。コールステータス処理を実行した後、再接続制御部18bは、NRコールステータス確認処理を所定の時間間隔で実施するとともに、これらの処理を、NRコールステータスが通信可能状態を示していることの確認が取れるまで、設定された再接続実行回数の範囲内で繰り返し実施する。
【0109】
そして、ステップS43でLTEの再接続が確認された場合、あるいはステップS45でNRの再接続が確認された場合、再接続制御部18bは、ステップS40の再接続処理を抜け出し(ステップS50)、
図7のステップS10以降の処理を続行する。
【0110】
図7に示すDUT100の全球面走査に合わせた一連の測定制御動作によれば、NRシステムシミュレータ20、及びLTE用測定器25を用いたDUT100のEIRP−CDF、EIS−CDF、TRP等の項目の測定中に、呼接続が切断されても、直ちに再接続してその後の測定ポジション以降でも正確な測定データを得ることができ、結果として、各項目の正確な測定が可能となる。NRシステムシミュレータ20、及びLTE用測定器25を用いたDUT100の測定を行うため、ノンスタンドアローンNR運用での測定にも対応可能となる。
【0111】
以上説明したように、本実施形態に係る測定装置1は、OTAチャンバ50の内部空間51内に設けられ、アンテナ110を有するDUT100を、球座標系の予め設定された全ての方位を順次向くように当該球座標系の中心を基準点として回転させる走査を行うDUT走査機構56と、内部空間51内の試験用アンテナ5に接続されるNRシステムシミュレータ20と、DUT100が所望の方位に向く測定ポジションで、試験用アンテナ5からDUT100に対して試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUT100のアンテナ110から送信される被測定信号を試験用アンテナ5で受信させる測定動作を既定回数実施させ、アンテナ110が使用する周波数帯域の無線信号に関する特定の測定項目を測定させるようにNRシステムシミュレータ20を制御する統合制御装置10と、測定ポジションでの測定時の呼接続切断を検出する切断検出部18aと、切断検出部18aにより呼接続切断が検出された場合、呼接続の再接続を行う再接続制御部18bと、呼接続の再接続後に、呼接続が切断された測定ポジション以降の測定ポジションからの測定項目の測定に復帰させる測定復帰制御部18cと、を有する構成である。
【0112】
また、本実施形態に係る移動端末測定方法は、OTAチャンバ50の内部空間51内に設けられ、アンテナ110を有するDUT100を、球座標系の予め設定された全ての方位を順次向くように当該球座標系の中心を基準点として回転させる走査を行うDUT走査機構56と、内部空間51内の試験用アンテナ5に接続されるNRシステムシミュレータ20と、を有する測定装置1を用いてDUT100の試験を行う移動端末試験方法であって、DUT100が所望の方位に向く測定ポジションで、試験用アンテナ5からDUT100に対して試験信号を送信し、該試験信号を受信したDUT100のアンテナ110から送信される被測定信号を試験用アンテナ5で受信させる測定動作を既定回数実施させ、アンテナ110が使用する周波数帯域の無線信号に関する特定の測定項目を測定させるようにNRシステムシミュレータ20を制御する測定制御ステップ(S1、S2)と、測定ポジションでの測定時の呼接続切断を検出する切断検出ステップ(S3、S5)と、切断検出ステップにより呼接続切断が検出された場合、呼接続の再接続を行う再接続制御ステップ(S8、S9)と、呼接続の再接続後に、呼接続が切断された測定ポジション以降の測定ポジションからの測定項目の測定に復帰させる測定復帰制御ステップ(S13、S2)と、を有する構成である。
【0113】
この構成により、本実施形態では、DUT100が所望の方位に向く測定ポジションでの規定回数の測定中に呼接続が切断しても、呼接続の再接続を行って当該測定ポジションでの残りの各回の測定に復帰することができ、呼接続の切断後の測定データを失わずに済み、呼接続の切断前の測定データも加えて当該測定ポジションでの所定の測定項目の精度の高い測定が可能となる。
【0114】
また、本実施形態に係る測定装置1、統合制御装置10は、試験用アンテナ5で受信した被測定信号に基づいて全ての方位についてのEIRP(等価等方性放射電力)累積分布関数、またはEIS累積分布回数を測定するとともに、全ての方位のEIRPの総和であるTRP(全球面放射電力)を測定する構成である。
【0115】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、測定項目として、EIRP−CDF(累積分布関数)、EIS−CDFの他、TRPについても高精度の測定が可能となる。
【0116】
また、本実施形態に係る測定装置1において、統合制御装置10は、TRP測定実行中、呼接続切断が検出された場合、呼接続の再接続後に、呼接続切断が検出された測定ポジション以降の測定ポジションから当該測定項目の測定を開始する前に、呼接続切断が検出された測定ポジションに戻ってDUT100の出力光(ビーム)を特定のビーム方向にピークを持つ状態にビームロックするビームロック制御を行う構成を有している。
【0117】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、TRP測定時に呼接続の切断が発生しても、呼接続切断は発生した測定ポイントからの残りの測定ポイントの測定への復帰に際して、TRP測定に不可欠なビームピーク方向でビームロックした状態を維持でき、TRP全体の測定精度を低下させずに済む。
【0118】
また、本実施形態に係る測定装置1は、NRの通信規格に対応するNRシステムシミュレータ20の他に、LTEの通信規格に対応するLTE用測定器25を有し、呼接続切断の検出、呼接続の再接続、及び特定の測定項目の測定は、NR及びLTEの各通信規格に対応して行われるように構成されている。
【0119】
この構成により、本実施形態に係る測定装置1は、NR及びLTEの各基地局を模擬したDUT100の試験にも適用でき、ノンスタンドアローンNR運用段階でのEIRP−CDF、EIS−CDF、TRPなどの測定項目を高精度に測定できるようになる。