【解決手段】実施形態の一態様に係る電源システムの制御装置においては、検出部と、電流余裕度算出部と、電流値算出部と、電源制御部とを備える。検出部は、補機バッテリの電圧および電流を検出する。電流余裕度算出部は、補機バッテリの電圧および電流に基づいて、充電中の補機バッテリに供給可能な電流値を示す電流余裕度を算出する。電流値算出部は、第2DC−DCコンバータに対する前回の電圧指令値と補機バッテリの電圧との電圧差と、補機バッテリの電流とに基づいて、単位電圧差あたりの電流値を算出する。電源制御部は、電流余裕度と単位電圧差あたりの電流値とに基づいて算出される今回の電圧指令値を用いた電圧制御により、補機バッテリに供給される電流を制限する。
第1バッテリと、前記第1バッテリより出力電圧が低い第2バッテリと、前記第1バッテリから出力される電力の電圧を昇降圧可能な第1DC−DCコンバータと、前記第1DC−DCコンバータから出力される電力を降圧させて前記第2バッテリを充電可能であり、かつ、前記第2バッテリから出力される電力を昇圧可能な第2DC−DCコンバータとを含む電源システムの制御装置であって、
前記第1DC−DCコンバータから前記第2DC−DCコンバータを介して出力された電力で充電される前記第2バッテリの電圧および電流を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記第2バッテリの電圧および電流に基づいて、充電中の前記第2バッテリに供給可能な電流値を示す電流余裕度を算出する電流余裕度算出部と、
前記第2DC−DCコンバータに対する前回の電圧指令値と前記検出部によって検出された前記第2バッテリの電圧との差を電圧差として算出し、算出された前記電圧差と前記検出部によって検出された前記第2バッテリの電流とに基づいて単位電圧差あたりの電流値を算出する電流値算出部と、
前記電流余裕度算出部によって算出された前記電流余裕度と前記電流値算出部によって算出された前記単位電圧差あたりの電流値とに基づいて、前記第2DC−DCコンバータに対する今回の電圧指令値を算出し、算出された前記今回の電圧指令値を用いた電圧制御により前記第2バッテリに供給される電流を制限する電源制御部と
を備えることを特徴とする電源システムの制御装置。
第1バッテリと、前記第1バッテリより出力電圧が低い第2バッテリと、前記第1バッテリから出力される電力の電圧を昇降圧可能な第1DC−DCコンバータと、前記第1DC−DCコンバータから出力される電力を降圧させて前記第2バッテリを充電可能であり、かつ、前記第2バッテリから出力される電力を昇圧可能な第2DC−DCコンバータとを含む電源システムの制御方法であって、
前記第1DC−DCコンバータから前記第2DC−DCコンバータを介して出力された電力で充電される前記第2バッテリの電圧および電流を検出する検出工程と、
前記検出工程によって検出された前記第2バッテリの電圧および電流に基づいて、充電中の前記第2バッテリに供給可能な電流値を示す電流余裕度を算出する電流余裕度算出工程と、
前記第2DC−DCコンバータに対する前回の電圧指令値と前記検出工程によって検出された前記第2バッテリの電圧との差を電圧差として算出し、算出された前記電圧差と前記検出工程によって検出された前記第2バッテリの電流とに基づいて単位電圧差あたりの電流値を算出する電流値算出工程と、
前記電流余裕度算出工程によって算出された前記電流余裕度と前記電流値算出工程によって算出された前記単位電圧差あたりの電流値とに基づいて、前記第2DC−DCコンバータに対する今回の電圧指令値を算出し、算出された前記今回の電圧指令値を用いた電圧制御により前記第2バッテリに供給される電流を制限する電源制御工程と
を含むことを特徴とする電源システムの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電源システムの制御装置および制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
また、以下では、制御装置が、HEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の車両に搭載される電源システムを制御する場合を一例に挙げて説明する。なお、制御装置の制御対象は、車両に搭載される電源システムに限定されず、任意の機器に搭載される電源システムであってもよい。
【0013】
(制御装置を含む電源システムの全体構成)
まず、
図1を用いて、実施形態に係る制御装置を含む電源システムについて説明する。
図1は、実施形態に係る制御装置を含む電源システムの構成例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、電源システム1は、メインバッテリ10と、補機バッテリ20と、第1DC−DCコンバータ30と、第2DC−DCコンバータ40と、保護リレー50と、ダイオード60と、充放電スイッチ70と、制御装置100とを備える。
【0015】
このように、電源システム1は、メインバッテリ10および補機バッテリ20の2つの電池を備える2電源システムである。なお、電源システム1は、電池を二重化した2電源システムに限定されるものではなく、電池の数は1つ、あるいは3つ以上であってもよい。
【0016】
また、電源システム1は、負荷200に対して電力を供給することができる。負荷200は、車両に搭載される電気機器(補機)である。例えば、負荷200は、電動パワーステアリング装置やエアコン、ナビゲーション装置、オーディオ機器等であるが、これらは例示であって限定されるものではない。
【0017】
電源システム1のメインバッテリ10は、定格電圧が比較的高い高圧系のバッテリである。メインバッテリ10は、充電または放電を行う二次電池であって、例えばリチウムイオン二次電池(LIB:Lithium-Ion rechargeable Battery)であるが、これに限られず、鉛バッテリなどその他の種類の二次電池であってもよい。
【0018】
メインバッテリ10は、例えば走行用モータ(図示略)を動力源として用いている間、高電圧の電力をインバータ(図示略)を介して走行用モータへ供給する。また、メインバッテリ10は、車両の制動時や減速時に走行用モータが発電機として機能する場合、発電された電力がインバータを介して入力され、蓄電する。また、メインバッテリ10は、後述するように、第1DC−DCコンバータ30を介して電力を負荷(補機)200に供給する。
【0019】
補機バッテリ20は、定格電圧が比較的低い低圧系のバッテリである。すなわち、補機バッテリ20は、メインバッテリ10より出力電圧が低いバッテリである。補機バッテリ20は、充電または放電を行う二次電池であって、例えばリチウムイオン二次電池(LIB)である。
【0020】
補機バッテリ20は、後述するように、第2DC−DCコンバータ40等を介して電力を負荷(補機)200に供給する。また、補機バッテリ20は、例えばメインバッテリ10の補助電源となる。なお、メインバッテリ10は、第1バッテリの一例であり、補機バッテリ20は、第2バッテリの一例である。
【0021】
メインバッテリ10と補機バッテリ20との間には、メインバッテリ10側から順に、第1DC−DCコンバータ30、第2DC−DCコンバータ40および保護リレー50が直列に接続される。また、上記した負荷200は、第1DC−DCコンバータ30と第2DC−DCコンバータ40との間に接続される。
【0022】
第1DC−DCコンバータ30は、メインバッテリ10や、発電機として機能する走行用モータから出力される電力の電圧を昇圧または降圧する。第1DC−DCコンバータ30によって昇圧または降圧された電力は、負荷200の作動時には負荷200に供給され、また、補機バッテリ20の充電時には第2DC−DCコンバータ40へ出力される。
【0023】
第2DC−DCコンバータ40は、入力された電力を変圧することが可能であり、詳しくは双方向に昇圧または降圧することが可能である。例えば、第2DC−DCコンバータ40は、第1DC−DCコンバータ30から出力される電力を降圧させて補機バッテリ20へ出力し、補機バッテリ20を充電することができる。また、第2DC−DCコンバータ40は、補機バッテリ20から出力される電力を昇圧して負荷200へ出力(供給)することができる。
【0024】
具体的には、第2DC−DCコンバータ40は、第1〜第4スイッチング素子41〜44、コイル45、および、第1、第2コンデンサ46,47を含む。なお、第2DC−DCコンバータ40は、いわゆるフルブリッジ型の双方向DC-DCコンバータである。
【0025】
第1〜第4スイッチング素子41〜44としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(例えばNチャネルMOSFET)を用いることができる。第1〜第4スイッチング素子41〜44のソース・ドレイン間には、寄生ダイオードがそれぞれ接続される。なお、第1〜第4スイッチング素子41〜44は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の電荷効果トランジスタであってもよい。
【0026】
第1スイッチング素子41、コイル45および第3スイッチング素子43は、第1DC−DCコンバータ30と補機バッテリ20(正確には保護リレー50)とを結ぶ電力線上に直列に接続される。
【0027】
詳しくは、第1スイッチング素子41は、ドレインが第1DC−DCコンバータ30に接続され、ソースがコイル45の一端に接続される。第3スイッチング素子43は、ソースがコイル45の他端に接続され、ドレインが補機バッテリ20側に接続される。
【0028】
第2スイッチング素子42は、ドレインが第1スイッチング素子41とコイル45の一端とを結ぶ電力線に接続され、ソースが接地される。第4スイッチング素子44は、ドレインがコイル45の他端と第3スイッチング素子43とを結ぶ電力線に接続され、ソースが接地される。上記した第1〜第4スイッチング素子41〜44のゲートは、制御装置100に接続される。
【0029】
第1コンデンサ46は、一端が第1DC−DCコンバータ30と第1スイッチング素子41とを結ぶ電力線に接続され、他端が接地される。第2コンデンサ47は、一端が第3スイッチング素子43と補機バッテリ20(正確には保護リレー50)とを結ぶ電力線に接続され、他端が接地される。
【0030】
上記のように構成された第2DC−DCコンバータ40は、制御装置100により駆動されることで、入力された電力の電圧を昇圧または降圧することができる。例えば、制御装置100は、第1スイッチング素子41と第2スイッチング素子42とを交互にオン/オフすることで、第1DC−DCコンバータ30から入力された電力を降圧させて補機バッテリ20へ出力することができる。なお、このときの第3スイッチング素子43はオン、第4スイッチング素子44はオフされる。
【0031】
詳しくは、補機バッテリ20を充電する場合、第1スイッチング素子41がオンになると、第1DC−DCコンバータ30側から電流がコイル45に流れることでコイル45にエネルギーが蓄積され、第2スイッチング素子42がオンになると、コイル45に蓄積されたエネルギーが第2コンデンサ47に出力されて蓄電される。これにより、入力された電圧より低い電圧の電力が平滑されて補機バッテリ20へ出力され、補機バッテリ20を充電する。なお、制御装置100は、第2DC−DCコンバータ40から出力される電力の電圧が電圧指令値となるように、第1、第2スイッチング素子41,42のオン/オフ時間を調整するが、かかる電圧指令値については後に詳説する。
【0032】
また、例えば、制御装置100は、第1スイッチング素子41と第2スイッチング素子42とを交互にオン/オフすることで、補機バッテリ20から出力される電力を昇圧させて負荷200へ出力(放電)することができる。なお、このときの第3スイッチング素子43はオン、第4スイッチング素子44はオフされる。
【0033】
詳しくは、補機バッテリ20を放電する場合、第2スイッチング素子42がオンになると、補機バッテリ20側から電流がコイル45に流れることでコイル45にエネルギーが蓄積され、第1スイッチング素子41がオンになると、コイル45に蓄積されたエネルギーが第1コンデンサ46に出力されて蓄電される。これにより、入力された電圧より高い電圧の電力が平滑されて負荷200へ出力(放電)される。
【0034】
なお、制御装置100は、例えば第3スイッチング素子43と第4スイッチング素子44とを交互にオン/オフすることで、第1DC−DCコンバータ30から入力された電力を昇圧させたり、補機バッテリ20から入力された電力を降圧させたりすることもできる。
【0035】
保護リレー50は、第2DC−DCコンバータ40と補機バッテリ20との間に直列に接続される。かかる保護リレー50は、補機バッテリ20等を含む電源システム1に異常が発生した場合に、補機バッテリ20を保護するリレーである。保護リレー50は、制御装置100により動作が制御される。
【0036】
具体的には、制御装置100は、補機バッテリ20等に異常が発生していない通常時、保護リレー50をオンする。制御装置100は、例えば補機バッテリ20の電流や電圧などを監視し、補機バッテリ20に過電流や過電圧が生じたと判定された場合など、補機バッテリ20等に異常が発生すると、保護リレー50をオフする。これにより、補機バッテリ20を保護することができる。
【0037】
ダイオード60は、第2DC−DCコンバータ40に並列に接続される。ダイオード60は、カソードが第1DC−DCコンバータ30と第2DC−DCコンバータ40とを結ぶ電力線に接続され、アノードが第2DC−DCコンバータ40と補機バッテリ20(正確には保護リレー50)とを結ぶ電力線に接続される。
【0038】
ダイオード60は、負荷200への暗電流を供給する。すなわち、例えば車両のイグニションオフ時などにおいて、第1DC−DCコンバータ30および第2DC−DCコンバータ40は停止される。このとき、補機バッテリ20に蓄電された電力は、ダイオード60を介して暗電流として負荷200へ供給される。
【0039】
充放電スイッチ70は、ダイオード60および第2DC−DCコンバータ40に並列に接続される。具体的には、充放電スイッチ70は、一端が第1DC−DCコンバータ30と第2DC−DCコンバータ40とを結ぶ電力線に接続され、他端が第2DC−DCコンバータ40と補機バッテリ20(正確には保護リレー50)とを結ぶ電力線に接続される。
【0040】
充放電スイッチ70は、制御装置100により動作が制御される。例えば、制御装置100は、第2DC−DCコンバータ40の両端電圧を監視する、詳しくは第2DC−DCコンバータ40の第1DC−DCコンバータ30側の電圧と補機バッテリ20側の電圧とを監視する。制御装置100は、第2DC−DCコンバータ40の両端電圧の差(正確には差の絶対値)が所定値未満の場合に充放電スイッチ70をオフし、両端電圧の差(正確には差の絶対値)が所定値以上の場合に充放電スイッチ70をオンする。これにより、補機バッテリ20の充放電を適切に行うことができる。
【0041】
すなわち、例えば負荷200における電力消費が急激に増加した場合、第1DC−DCコンバータ30から負荷200への電力供給に加え、補機バッテリ20から電力を負荷200に供給(放電)する必要がある。このとき、制御装置100は、第2DC−DCコンバータ40に対し、補機バッテリ20からの電力を昇圧させて負荷200に供給する制御を行うが、第2DC−DCコンバータ40の応答が遅れることがある。
【0042】
そこで、制御装置100は、充放電スイッチ70をオンし、補機バッテリ20からの電力が充放電スイッチ70を介して負荷200に供給されるようにする。詳しくは、負荷200の電力消費が急激に増加すると、第2DC−DCコンバータ40の第1DC−DCコンバータ30側の電圧は比較的大きく低下する。そのため、第2DC−DCコンバータ40の両端電圧の差が所定値以上となり、制御装置100は、充放電スイッチ70をオンする。これにより、第2DC−DCコンバータ40の応答が遅れた場合であっても、補機バッテリ20の電力を充放電スイッチ70を介して負荷200へ供給することができ、よって補機バッテリ20の充放電を適切に行うことができる。
【0043】
また、例えばサージが発生した場合にも、充放電スイッチ70がオンされ、かかるサージが補機バッテリ20で吸収される。詳しくは、例えば負荷200である電動パワーステアリング装置は、ハンドルが急激に操作されると、車両の状態によっては意図しない回生電流が生じてサージが発生することがある。
【0044】
サージの発生により、第2DC−DCコンバータ40の第1DC−DCコンバータ30側の電圧は比較的大きく増加する。そのため、第2DC−DCコンバータ40の両端電圧の差が所定値以上となり、制御装置100は、充放電スイッチ70をオンする。これにより、負荷200と補機バッテリ20とが充放電スイッチ70を介して電気的に接続され、上記したサージを補機バッテリ20で吸収することができる。
【0045】
なお、上記した所定値は、例えば補機バッテリ20から電力を負荷200に供給する必要があると判定できるような値、かつ、サージが発生して補機バッテリ20で吸収する必要があると判定できるような値に設定されるが、これに限定されるものではない。すなわち、所定値は、補機バッテリ20から電力を負荷200に供給する必要があると判定できるような値、または、サージが発生して補機バッテリ20で吸収する必要があると判定できるような値に設定されてもよいし、任意の値に設定されてもよい。
【0046】
制御装置100は、上記したように、第2DC−DCコンバータ40を制御することで、補機バッテリ20の充電および放電を制御する。
【0047】
ところで、従来技術には、補機バッテリ20の充電の際、電源システム1における過電流の発生を抑制するという点で改善の余地があった。すなわち、従来技術に係る制御装置は、補機バッテリ20充電時、補機バッテリ20の電圧が電圧指令値となるように第2DC−DCコンバータ40を制御するが、かかる電圧指令値の算出の際、補機バッテリ20に対して供給可能な電流の制限(上限)が考慮されていなかった。そのため、従来技術では、補機バッテリ20充電時に、補機バッテリ20の電流が過電流になるおそれがあり、また、過電流になった場合であっても、補機バッテリ20の電圧が電圧指令値に到達するまで充電が継続されるおそれがあった。
【0048】
そこで、本実施形態に係る制御装置100にあっては、補機バッテリ20の充電時、電源システム1における過電流の発生を抑制することができるような構成とした。
【0049】
(制御装置の構成)
次に、
図2を参照して、実施形態に係る制御装置100を含む電源システム1の構成について詳しく説明する。
図2は、実施形態に係る制御装置100を含む電源システム1の構成例を示すブロック図である。なお、
図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0050】
換言すれば、
図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0051】
図2に示すように、電源システム1は、各種センサ80、上記した第1DC−DCコンバータ30、第2DC−DCコンバータ40、保護リレー50、充放電スイッチ70および制御装置100などを備える。
【0052】
各種センサ80は、メインバッテリ10や補機バッテリ20の状態、第2DC−DCコンバータ40の入力側および出力側(言い換えると第2DC−DCコンバータ40の両端側)の状態を計測するセンサ群である。例えば、各種センサ80には、メインバッテリ10の電圧および電流を計測するセンサ、補機バッテリ20の電圧および電流を計測するセンサが含まれる。また、例えば各種センサ80には、第2DC−DCコンバータ40の両端側の電圧および電流を計測するセンサ(詳しくは、第2DC−DCコンバータ40の第1DC−DCコンバータ30側の電圧および電流を計測するセンサ、第2DC−DCコンバータ40の補機バッテリ20側の電圧および電流を計測するセンサ)などが含まれる。
【0053】
なお、上記では、各種センサ80を具体的に説明したが、これら全てを備える必要はなく、一部を備えるようにしてもよい。また、各種センサ80は、その他の種類のセンサを含んでもよい。
【0054】
電源システム1の制御装置100は、制御部110と、記憶部120とを備える。記憶部120は、例えば、データフラッシュや不揮発性メモリ、レジスタといった記憶デバイスであり、各種のプログラムや情報などを記憶する。
【0055】
制御部110は、検出部111と、電流余裕度算出部112と、電流値算出部113と、電源制御部114とを備える。制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0056】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部110の検出部111、電流余裕度算出部112、電流値算出部113および電源制御部114として機能する。
【0057】
また、制御部110の検出部111、電流余裕度算出部112、電流値算出部113および電源制御部114の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0058】
本実施形態に係る制御部110は、第2DC−DCコンバータ40に対して電圧指令値を出力し、第2DC−DCコンバータ40から出力される電力の電圧が電圧指令値となるような電圧制御を実行する。以下では、かかる電圧指令値の算出を中心に詳しく説明する。
【0059】
検出部111は、各種センサ80からの出力に基づいて、メインバッテリ10や補機バッテリ20の状態、第2DC−DCコンバータ40の両端側の状態を検出することができる。例えば、検出部111は、各種センサ80の出力に基づいて、メインバッテリ10の電圧および電流を検出する。
【0060】
また、例えば、検出部111は、各種センサ80の出力に基づいて、補機バッテリ20の電圧および電流を検出する。すなわち、検出部111は、第1DC−DCコンバータ30から第2DC−DCコンバータ40を介して出力された電力で充電される補機バッテリ20の電圧および電流を検出することができる。また、検出部111は、第2DC−DCコンバータ40を介して負荷200へ放電する補機バッテリ20の電圧および電流を検出することができる。
【0061】
また、例えば、検出部111は、各種センサ80の出力に基づいて、第2DC−DCコンバータ40の両端側の電圧および電流を検出する。詳しくは、検出部111は、第2DC−DCコンバータ40の第1DC−DCコンバータ30側の電圧および電流、第2DC−DCコンバータ40の補機バッテリ20側の電圧および電流を検出することができる。
【0062】
検出部111は、検出された補機バッテリ20の電圧および電流など各種の値を示す信号を、電流余裕度算出部112、電流値算出部113および電源制御部114などへ出力する。
【0063】
電流余裕度算出部112は、電圧指令値の算出に用いられる「電流余裕度」を算出する。電流余裕度は、充電中の補機バッテリ20に供給可能な電流値を示す。例えば、電流余裕度算出部112は、検出部111によって検出された補機バッテリ20の電圧および電流などに基づいて、電流余裕度を算出する。
【0064】
なお、以下では、検出部111によって検出された補機バッテリ20の電圧を「検出電圧」、検出された補機バッテリ20の電流を「検出電流」と記載する場合がある。また、検出電圧は、補機バッテリ20の電池総電圧であるともいえる。
【0065】
具体的には、電流余裕度算出部112は、下記の式(1)を用いて電流余裕度を算出する。
電流余裕度=((電力制限値÷検出電圧)−電流マージン)−検出電流
・・・式(1)
【0066】
ここで、式(1)中の電流余裕度や電流マージン、後述する単位電圧差あたりの電流値などについて、
図3および
図4を参照しつつ説明する。
図3および
図4は、電流余裕度などを説明するための図である。なお、
図3は、補機バッテリ20の検出電圧を実線で示すグラフである。
図4は、補機バッテリ20の検出電流を実線で示すグラフである。
【0067】
電流余裕度算出部112は、先ず、充電中の補機バッテリ20に供給可能な電流の上限を示す電流制限値[A]を算出する。なお、
図4では、電流制限値を一点鎖線で示している。具体的には、電流余裕度算出部112は、式(1)に示すように、電力制限値[W]を検出電圧[V](
図3参照)で除算することで、電流制限値を算出することができる。
【0068】
ここで、式(1)中の電力制限値は、充電中の補機バッテリ20に供給可能な電力の上限を示す値である。かかる電力制限値は、補機バッテリ20の状態や特性に応じて変化する。例えば、電力制限値は、補機バッテリ20の電圧、電流、温度、残容量、満充電容量などに応じて変化する。従って、本実施形態においては、例えば、電力制限値に関するマップ情報を記憶部120に記憶させておき、電流余裕度算出部112が、マップ情報と補機バッテリ20の電圧等とに基づいて電力制限値を求めてもよいし、実験等を通じて得られる所定の計算式に補機バッテリ20の電圧等を代入して電力制限値を求めてもよい。なお、上記した電力制限値を求める手法は、あくまでも例示であって限定されるものではない。
【0069】
電流制限値は、上記のように電力制限値を検出電圧で除算して得られる値である。そのため、例えば仮に、第2DC−DCコンバータ40から出力される電力の電流が電流制限値を超えた場合、言い換えると、補機バッテリ20の電流が電流制限値を超えた場合、補機バッテリ20は過電流の状態であると推定される。そのため、本実施形態にあっては、第2DC−DCコンバータ40から出力される電力の電流が電流制限値を超えないような電圧指令値を算出する。
【0070】
具体的には、電流余裕度算出部112は、式(1)に示すように、電力制限値を検出電圧で除算して得た電流制限値から、電流マージン[A](
図4参照)を減算して、目標電流値[A]を算出する。なお、
図4では、目標電流値を破線で示している。目標電流値は、補機バッテリ20充電時における電圧制御の際に目標となる電流値である。
【0071】
そして、電流余裕度算出部112は、目標電流値から検出電流を減算して電流余裕度[A](
図4参照)を算出する。このように、電流余裕度は、現在の補機バッテリ20の状態から得られる電力制限値、検出電圧等に基づいて算出された目標電流値から現在の補機バッテリ20の電流(すなわち検出電流)を減算することで算出される。そのため、電流余裕度は、充電中の補機バッテリ20に対してどの程度の電流を供給することが可能かを示す余裕の度合いであるともいえる。そして、電流余裕度算出部112は、算出された電流余裕度を示す信号を電源制御部114へ出力する。
【0072】
図2の説明を続けると、電流値算出部113は、電圧指令値の算出に用いられる「単位電圧差あたりの電流値」[A/V]を算出する。単位電圧差あたりの電流値は、第2DC−DCコンバータ40に出力されている電圧指令値と、現在の補機バッテリ20の電圧(すなわち検出電圧)との差に対して、補機バッテリ20に電流がどの程度流れているかを示す値(換算値)である。
【0073】
具体的には、電流値算出部113は、下記の式(2)を用いて単位電圧差あたりの電流値を算出する。
単位電圧差あたりの電流値=検出電流÷(前回電圧指令値−検出電圧)
・・・式(2)
【0074】
詳説すると、電流値算出部113は、前回電圧指令値[V]を、後述する電源制御部114から取得する。上記した前回電圧指令値は、前回の電圧制御処理で算出され、第2DC−DCコンバータ40に対して出力されている電圧指令値である。
【0075】
電流値算出部113は、式(2)に示すように、取得された前回電圧指令値と検出電圧との差を電圧差(
図3参照)として算出する。電流値算出部113は、算出された電圧差と検出電流とに基づいて単位電圧差あたりの電流値を算出する。具体的には、電流値算出部113は、検出電流を電圧差で除算することで、単位電圧差あたりの電流値を算出する。そして、電流値算出部113は、算出された単位電圧差あたりの電流値を示す信号を電源制御部114へ出力する。
【0076】
電源制御部114は、今回の電圧制御処理で第2DC−DCコンバータ40に対して出力する電圧指令値[V](以下、「今回電圧指令値」と記載する場合がある)を算出する。具体的には、電源制御部114は、下記の式(3)を用いて今回電圧指令値を算出する。
今回電圧指令値=前回電圧指令値+(電流余裕度÷単位電圧差あたりの電流値)
・・・式(3)
【0077】
詳しくは、電源制御部114は、電流余裕度と単位電圧差あたりの電流値とに基づいて、今回の電圧制御処理で制御したい電圧量[V]を算出する。具体的には、電源制御部114は、式(3)に示すように、電流余裕度を単位電圧差あたりの電流値で除算することで、電圧量を算出する。続いて、電源制御部114は、前回電圧指令値に、算出された電圧量を加算することで、今回電圧指令値を算出する。これにより、現在の補機バッテリ20の状態に即した今回電圧指令値を算出することができる。
【0078】
そして、電源制御部114は、算出された今回電圧指令値を用いた電圧制御を第2DC−DCコンバータ40に対して実行し、補機バッテリ20に供給される電流を制限する。
【0079】
詳しくは、電源制御部114は、補機バッテリ20の電圧が今回電圧指令値となるような電圧制御を、第2DC−DCコンバータ40に対して実行する。このとき、今回電圧指令値は、上記した電流余裕度や単位電圧差あたりの電流値などに基づいて算出されることから、第2DC−DCコンバータ40の出力電流、言い換えると、補機バッテリ20の電流が電流制限値(
図4参照)を超えないようにすることができる。
【0080】
かかる電流制限値は、上記したように、補機バッテリ20が過電流の状態であると推定されるしきい値である。従って、本実施形態にあっては、第2DC−DCコンバータ40の出力電流が電流制限値を超えないような今回電圧指令値で電圧制御を行うことで、補機バッテリ20に供給される電流を制限し、これにより補機バッテリ20の充電時、電源システム1の補機バッテリ20における過電流の発生を抑制することができる。
【0081】
また、電源制御部114は、今回電圧指令値を、第2DC−DCコンバータ40の一次側の電圧、すなわち第2DC−DCコンバータ40の第1DC−DCコンバータ30側の電圧未満となるように算出してもよい。これにより、補機バッテリ20の充電時に、第2DC−DCコンバータ40の出力電圧(二次側の電圧)が、第2DC−DCコンバータ40の一次側の電圧より高くなることを抑制することができる。そのため、例えば第2DC−DCコンバータ40から補機バッテリ20へ出力される充電電流が、ダイオード60や充放電スイッチ70を経由して第2DC−DCコンバータ40の一次側へ流れる回り込みを防止することができる。
【0082】
電源制御部114は、保護リレー50を制御することができる。例えば、電源制御部114は、検出電流や検出電圧などに基づいて補機バッテリ20等に異常が発生しているか否かを判定する。電源制御部114は、例えば何らかの理由で補機バッテリ20に過電流や過電圧などの異常が発生していると判定された場合、保護リレー50をオフし、補機バッテリ20を保護する。
【0083】
電源制御部114は、充放電スイッチ70を制御することができる。例えば、電源制御部114は、第2DC−DCコンバータ40の両端電圧の差が所定値未満の場合に充放電スイッチ70をオフし、差が所定値以上の場合に充放電スイッチ70をオンする。これにより、補機バッテリ20の電力を充放電スイッチ70を介して負荷200へ供給したり、サージを補機バッテリ20で吸収したりすることができることは、既に述べた通りである。
【0084】
(制御装置の処理手順)
次に、
図5を用いて実施形態に係る制御装置100が実行する処理手順について説明する。
図5は、制御装置100が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0085】
図5に示すように、制御装置100の制御部110は、補機バッテリ20の電圧および電流を検出する(ステップS10)。続いて、制御部110は、検出された補機バッテリ20の電圧および電流、電力制限値、電流マージンなどに基づいて電流余裕度を算出する(ステップS11)。
【0086】
次いで、制御部110は、前回電圧指令値と補機バッテリ20の電圧との電圧差と、補機バッテリ20の電流とに基づいて単位電圧差あたりの電流値を算出する(ステップS12)。次いで、制御部110は、電流余裕度と、単位電圧差あたりの電流値と、前回電圧指令値とに基づいて、今回電圧指令値を算出する(ステップS13)。そして、制御部110は、算出された今回電圧指令値を用いた電圧制御を第2DC−DCコンバータ40に対して実行する(ステップS14)。
【0087】
上述してきたように、実施形態は、メインバッテリ10(第1バッテリの一例)と、メインバッテリ10より出力電圧が低い補機バッテリ20(第2バッテリの一例)と、メインバッテリ10から出力される電力の電圧を昇降圧可能な第1DC−DCコンバータ30と、第1DC−DCコンバータ30から出力される電力を降圧させて補機バッテリ20を充電可能であり、かつ、補機バッテリ20から出力される電力を昇圧可能な第2DC−DCコンバータ40とを含む電源システム1の制御装置100であって、検出部111と、電流余裕度算出部112と、電流値算出部113と、電源制御部114とを備える。
【0088】
検出部111は、第1DC−DCコンバータ30から第2DC−DCコンバータ40を介して出力された電力で充電される補機バッテリ20の電圧および電流を検出する。電流余裕度算出部112は、検出部111によって検出された補機バッテリ20の電圧および電流に基づいて、充電中の補機バッテリ20に供給可能な電流値を示す電流余裕度を算出する。
【0089】
電流値算出部113は、第2DC−DCコンバータ40に対する前回の電圧指令値と検出部111によって検出された補機バッテリ20の電圧との差を電圧差として算出し、算出された電圧差と検出部によって検出された補機バッテリ20の電流とに基づいて単位電圧差あたりの電流値を算出する。電源制御部114は、電流余裕度算出部112によって算出された電流余裕度と電流値算出部113によって算出された単位電圧差あたりの電流値とに基づいて、第2DC−DCコンバータ40に対する今回の電圧指令値を算出し、算出された今回の電圧指令値を用いた電圧制御により補機バッテリ20に供給される電流を制限する。これにより、制御装置100にあっては、補機バッテリ20充電時、電源システム1における過電流の発生を抑制することができる。
【0090】
また、電流余裕度算出部112は、充電中の補機バッテリ20に供給可能な電力の上限を示す電力制限値を補機バッテリ20の電圧で除算して電流制限値を算出し、算出された電流制限値から補機バッテリ20の電流を減算して電流余裕度を算出する。これにより、現在の補機バッテリ20の状態に即した電流余裕度を精度良く算出することが可能になる。
【0091】
また、式(1)や
図4に示した電流マージンは、例えば第2DC−DCコンバータ40の特性に応じて設定されてもよい。例えば、第2DC−DCコンバータ40において出力電流が早期に上昇する特性である場合、言い換えると、立ち上がりが早く出力電流の上昇に関する応答性が比較的高い特性である場合、電流マージンは、比較的大きい値に設定されてもよい。これにより、例えば第2DC−DCコンバータ40の出力電流が、何らかの理由で目標電流値を超えた場合であっても、電流制限値は超えないようにすることができ、よって補機バッテリ20における過電流の発生をより一層抑制することができる。
【0092】
また、例えば、第2DC−DCコンバータ40において出力電流がゆっくり上昇する特性である場合、言い換えると、立ち上がりが遅く出力電流の上昇に関する応答性が比較的低い特性である場合、電流マージンは、比較的小さい値に設定されてもよい。これにより、目標電流値を、充電中の補機バッテリ20に供給可能な電流の上限を示す電流制限値に対して可能な限り近い値で追従させることができ、よって現在の補機バッテリ20の状態により即した電流余裕度を算出することが可能になる。
【0093】
このように、電流値算出部113は、電流制限値から、補機バッテリ20の特性に応じて設定される電流マージンおよび補機バッテリ20の電流を減算して電流余裕度を算出してもよい。これにより、補機バッテリ20における過電流の発生をより一層抑制したり、現在の補機バッテリ20の状態により即した電流余裕度を算出したりすることが可能になる。
【0094】
なお、
図4では、電流マージンが一定値である例を示したが、これに限られず、可変の値に設定されてもよい。また、上記した電流マージンの設定は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、電流マージンは任意の値に設定可能である。
【0095】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。