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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-20025(P2021-20025A)
(43)【公開日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】インスリン投与キット収納ケース
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/00 20060101AFI20210122BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20210122BHJP
   A61K 38/28 20060101ALN20210122BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20210122BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20210122BHJP
【FI】
   A45C11/00 Q
   A61M5/00 500
   A61K38/28
   A61P3/10
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-140356(P2019-140356)
(22)【出願日】2019年7月30日
(71)【出願人】
【識別番号】516229520
【氏名又は名称】株式会社ケーツー
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】下田 清美
【テーマコード(参考)】
3B045
4C066
4C084
【Fターム(参考)】
3B045AA41
3B045CE07
3B045CE08
3B045CE09
3B045DA00
4C066GG20
4C066LL30
4C084BA44
4C084DB34
4C084NA20
4C084ZC031
4C084ZC032
4C084ZC351
4C084ZC352
(57)【要約】
【課題】何らかの血管病変も併せて発症してしまった糖尿病患者が、インスリン投与を自己注射にて行う際、たとえ、脳梗塞後遺症のため右片麻痺を有していたとしても、片手でも一連の作業ができる程度に工夫された、使い勝手の良いインスリン投与キット収納ケースを提供する。
【解決手段】収納ケース1は、空間が仕切られた本体ケース2と、本体ケース2とヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体3と、本体ケース蓋体3の内側に貼設するインナーポケット4と、本体ケース2の仕切られた空間に設置する複数の貫通穴を備えた本体トレイ5と、本体トレイ5の貫通穴に嵌めることができる形状を有する仕切り板部材6を備えている。そして、本体ケース蓋体3の内側、およびインナーポケット4の本体ケース蓋体3に対面する側にはインナーポケット4を仮止めするための仮止め部材7,8が設置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン投与キットを使い勝手が良いように整然と収納するためのインスリン投与キット収納ケースであって、
空間が仕切られた本体ケースと、
前記本体ケースとヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体と、
前記本体ケース蓋体の内側に貼設するインナーポケットと、
前記本体ケースの仕切られた空間に設置する複数の貫通穴を備えた本体トレイと、
前記本体トレイの前記貫通穴に嵌めることができる形状を有する仕切り板部材を備えており、
前記本体ケース蓋体の内側、および前記インナーポケットの前記本体ケース蓋体に対面する側には前記インナーポケットを仮止めするための仮止め部材が設置されていることを特徴とするインスリン投与キット収納ケース。
【請求項2】
前記本体ケースは、本体トレイ支持部材が設置されていることを特徴とする請求項1に記載のインスリン投与キット収納ケース。
【請求項3】
前記仕切り板部材は、耐倒補強部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインスリン投与キット収納ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン製剤等のインスリン投与キットを纏めて収納できるプラスチック製の軽量で強度あるインスリン収納ケースに関する。詳しくは、片手でも自己注射に関する一連の作業ができる様に工夫された、使い勝手の良いインスリン投与キット収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病とは血液中の血糖が慢性的に多い状態となる病気(すなわち、血糖値が高くなる病気)であり、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの作用不足によって発症する。このため糖尿病患者は、定期的にインスリン製剤を注射器等で体内に投与(自己注射)することで血糖値の調整を行う必要があり、糖尿病患者にとってインスリン製剤投与は生きていくために不可欠である。
【0003】
インスリン製剤を投与する際に必要なアイテム(インスリン投与キット収納ケースの被収納物)を揃えたインスリン製剤投与キットに含まれるアイテムは、インスリン製剤カートリッジ(ペン型注入器に含まれる形態が多い)、注射針(使い捨て)、血糖値測定器、穿刺器具、穿刺針(使い捨て)、専用センサー(血糖値測定時に使用:使い捨て)、アルコール消毒綿、絆創膏等がある。また、それら以外にも、インスリン製剤を投与した時間、血糖値等を記録してくための血糖値記入メモ、糖尿病IDカード等がある。さらに、医療ゴミ(注射針等)、使用後の消毒綿等を収納するスペースも必要である。すなわち、様々なアイテムを整理して収納できるようにして、自己注射時においても使い勝手が良いように収納されていることが重要である。
【0004】
一方、糖尿病の合併症として発症する糖尿病神経障害は、高血糖により、手足の神経に異常をきたし、手の指に痛みや痺れ等の感覚異常を引き起こすことが多くある。さらに、糖尿病は動脈硬化疾患の危険因子の一つであり、何らかの血管病変(たとえば、脳梗塞後遺症)も併せて発症してしまうことも多い。すなわち、両手あるいは片手が自由に使えない状態にある糖尿病患者がインスリン治療を受けているという現状がある。
【0005】
より具体的には、脳梗塞後遺症のため片麻痺(体の片側、右左どちらかの半身で麻痺が発生するという症状であり、脳梗塞等で特に多く見られる症状を有しているため、たとえば、右手しか使えない場合も多いという現状がある。かかる場合には、インスリン投与のための注射を家族等にして貰わなければならず、家族等の協力が必要になってしまうが、“注射針を他人に刺すのは怖い”、“できれば自分で注射して欲しい”という要望もある。かかる現状を踏まえて、右片麻痺を有していても、左手の残存機能のみでインスリン自己注射を行うことができれば良いと考えられている。
【0006】
特許文献1には、糖尿病患者がインスリン投与時に必要な種々のアイテムを持ち運びできるように小さく一つに纏めてあり、内側にそれぞれのアイテムが、バラバラにならないように固定、収納できるようにしてあり、ポーチバック全体が閉じたり、開いたり、収納部自体が取り替え可能になっており、中に入れるアイテムに変更があれば、収納部自体の配置を変更できるので、日常の管理、インスリン投与作業がし易く、閉じた状態では中が見えない状態になり、開いた状態では平らな状態、内側全体が見渡せる状態になり、平らなところに開いた状態で置いて必要な物を取り出して作業ができるようになっており、さらに、外から他人が見て中身が想像し難いポーチバック(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−67910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係るポーチバックは、確かに、種々のアイテムを持ち運びできるように小さく一つに纏めてあり、インスリン製剤カートリッジ(ペン型注入器)、血糖値測定器、穿刺器具等のアイテムが、帯状のゴム等でバラバラにならないように固定、収納できるようになっている(特許文献1:図6参照)。しかしながら、特許文献1に係るポーチバックは、両手が自由に使える人しか考慮されておらず、片手が健康な人との比較において、自由に使えない糖尿病患者がインスリンを投与する場合には、インスリン製剤カートリッジ(万年筆型注射器)、血糖値測定器、注射針(穿刺機器)、採血器、消毒綿、絆創膏等のアイテムをバッグの中から片方の手で取り出す際に、もう片方の手でポーチバッグ全体を押さえていなければならないため、片手が健康な人との比較において、自由に使えない糖尿病患者の視点から見た作業性が考慮されているとは言えない。
【0009】
本発明の目的は、何らかの血管病変(たとえば、脳梗塞後遺症)も併せて発症してしまった糖尿病患者が、インスリン投与を自己注射にて行う際、たとえば、脳梗塞後遺症のため右片麻痺を有していたとしても、片手でも一連の作業ができる様に工夫された、使い勝手の良いインスリン投与キット収納ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、インスリン投与キットを使い勝手が良いように整然と収納するためのインスリン投与キット収納ケースであって、空間が仕切られた本体ケースと、前記本体ケースとヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体と、前記本体ケース蓋体の内側に貼設するインナーポケットと、前記本体ケースの仕切られた空間に設置する複数の貫通穴を備えた本体トレイと、前記本体トレイの前記貫通穴に嵌めることができる形状を有する仕切り板部材を備えており、前記本体ケース蓋体の内側、および前記インナーポケットの前記本体ケース蓋体に対面する側には前記インナーポケットを仮止めするための仮止め部材が設置されているインスリン投与キット収納ケースであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記本体ケースは、本体トレイ支持部材が設置されているインスリン投与キット収納ケースであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記仕切り板部材は、耐倒補強部を備えているインスリン投与キット収納ケースであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインスリン投与キット収納ケースは、合併症等の影響で片手しか自由に使えない糖尿病患者であっても、使い勝手が良いように工夫されたインスリン投与キット収納ケースである。インスリン投与キット収納ケースは、空間が仕切られた本体ケースと、本体ケースとヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体と、本体ケース蓋体の内側に貼設する(布製の)インナーポケットと、複数の貫通穴を備えた本体トレイと、本体トレイの貫通穴に嵌めることができる形状を有する仕切り板部材を備えている。
【0014】
本体ケースと本体ケース蓋体がヒンジ構造により連結されているので、片手でも容易に本体ケース蓋体を掴んでインスリン投与キット収納ケースを開け閉めすることができる。そして、本体トレイには貫通穴が一定の間隔を置いて規則的に並んで形成されており、貫通穴に嵌めることができる形状を底部に有する仕切り板部材を備えている。したがって、本体トレイ上を、取り外し自在、および組み換え自在の(複数の)仕切り板部材で仕切ることができるので、インスリン投与キットの被収納物(血糖値測定器、万年筆型注射器、採取器等)の形状や大きさ等に合わせて仕切ることができるので、個人の都合や好み等に合わせて被収納物(血糖値測定器、万年筆型注射器、採取器等)を収納することができる(図3参照)。
【0015】
本体ケース蓋体の内側に貼設する布製のインナーポケットを備えているので、インスリン摂取時間の記録、測定した血糖値の記録を行うための手帳や筆記具等を収納することができる。そして、本体ケース蓋体の内側、および前記インナーポケットの本体ケース蓋体に対面する側には、本体ケース蓋体を開いた状態であっても、インナーポケットが落ちないようにするための仮止め部材が設置されている。さらに、本体ケースには、本体トレイ支持部材が設置されているので、本体トレイを本体ケースの底面から本体トレイ支持部材の高さ分、浮かすことができる。したがって、これにより生じた空間にインスリン製剤を投与する際に必要なアイテム等を収納することができる。
【0016】
仕切り板部材は、底面(本体トレイと接する面)の片側のみに耐倒補強部を備えているので、仕切り板部材が形成する面に対して垂直な方向の一方側から掛かる力に対して耐力を有している。したがって、被収納物を本体トレイ上に固定させる目的で、被収納物を仕切り板部材で両側から挟み込む場合(すなわち、被収納品から両側に向かって掛かる応力に対して補強したい場合)は、仕切り板部材の耐倒補強部が、被収納物に対して外側になるように仕切り板部材を設置することで実現できる。
【0017】
耐倒補強部を備えた仕切り板部材を本体トレイから取り外す際は、耐倒補強部のある側から仕切り板部材が形成する面に対して垂直に力を加えれば良い。すなわち、仕切り板部材の耐倒補強部が、被収納物に対して外側になるように仕切り板部材を設置した場合は、仕切り板部材を片手で両側から摘まむようにして、取り外すことができる。なお、本発明に係るインスリン投与キット収納ケースの仕切り板部材は、耐倒補強部が設置されていない部材も併せて用意しており、かかる場合は力を加える方向等を考慮することなく片手で仕切り板部材を摘まむようにして簡単に取り外すことができるので、必要な状況や用途に合わせて、仕切り板部材の耐倒補強部の有無を選択することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】インスリン投与キット収納ケースの分解図、および全体図である。
図2】本体トレイに仕切り板部材を設置した状態を示す斜視図、仕切り板部材の上面図、および下面図である。
図3】インスリン投与キット収納ケースに各アイテムを収納した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<インスリン投与キット収納ケースの構造>
以下、本発明に係るインスリン投与キット収納ケース1の一実施形態について、図1図3に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係るインスリン投与キット収納ケース1の分解図(a)、および全体斜視図(b)である。
【0020】
本発明は、糖尿病患者であってインスリン自己注射療養者向けに開発された、インスリン投与時に必要なアイテムを使い勝手良く整然と収納するためのケースである。すなわち、インスリン製剤を自己注射によって投与する際に必要なインスリン投与キットを収納できるインスリン投与キット収納ケース1であり、約一週間分のインスリン投与キットを簡単に分別して収納することができるので日々の管理がし易いという特徴がある。
【0021】
すなわち、本発明に係るインスリン投与キット収納ケース1は、インスリン自己注射療養者がインスリン製剤を日々の生活の様々な場面に応じて投与するために必要な、血糖値測定器、注射器、採取器、センサー(血糖値測定用)、消毒綿、血糖値の測定値や投与の状況を記録するための手帳や筆記具等を収納することができるのみならず、実際にインスリン製剤を自己注射により投与することを考慮に入れ、片手が不自由であっても自分でインスリン投与ができるように工夫されている。すなわち、片手でインスリン注射を打つことを前提にして作業性、持ち運び性、ケース強度等を考慮して開発された、インスリン投与キットを使い勝手良く収納するためのインスリン投与キット収納ケース1である。
【0022】
インスリン投与キット収納ケース1は、図1(a)に記載したように基本構成として空間が仕切られた本体ケース2と、本体ケース2とヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体3から構成されている。本体ケース2と、本体ケース蓋体3の材質としては、プラスチック製の軽量で強度あるABS樹脂等が採用されている。その他の付属部材として、図1(a)に記載したように、本体ケース蓋体3の内側に貼設する布製のインナーポケット4(棉、ポリエステル)と、本体ケース2側に設置する一定の間隔を置いて規則的に配置された複数の貫通穴11を備えた本体トレイ5(ポリプロピレン)と、本体トレイ5の貫通穴11に嵌めることができる形状を有する仕切り板部材6(ポリプロピレン)を備えており、本体ケース蓋体3の内側には仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)が貼設されている。
【0023】
インナーポケット4には仮止め部材8(面ファスナー:B面フック:点線で記載)が、インナーポケット4を本体ケース蓋体3に貼設する際に、本体ケース蓋体3の内側に貼設した仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)と合致する位置に貼設されている。インスリン投与キット収納ケース1は、構造的には、図1(b)に記載したように、本体ケース2に本体トレイ5を載置し、本体ケース2とヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体3に、インナーポケット4を貼設したものである。
【0024】
本体ケース蓋体3の内側には、本体ケース2とヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体3を開いて、本体ケース2に対して略垂直に立てた状態であっても、インナーポケット4が落ちないようにするための仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)が貼設されている。インナーポケット4の本体ケース蓋体3に対面する側にもインナーポケット4を仮止めするための仮止め部材8(面ファスナー:B面フック)が貼設されている。なお、本体ケース蓋体3の内側に仮止め部材8(面ファスナー:B面フック)が、インナーポケット4の本体ケース蓋体3に対面する側に仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)が貼設されていても良い。
【0025】
仮止め部材7は、本体ケース蓋体3の内側に、帯状に間隔を空けて並列に並んだ状態で設置されている(図1(a)参照)。インナーポケット4側にも、本体ケース蓋体3に貼設された仮止め部材7の位置に合致するように、仮止め部材8が貼設されている(図1(a)に点線で記載)。
【0026】
なお、仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)、および仮止め部材8(面ファスナー:B面フック)の本体ケース蓋体3、およびインナーポケット4の面積に対して占める割合は、10%〜30%であることが本発明の趣旨(インスリン投与を自己注射にて行う際、片手でも一連の作業ができること)に鑑みて好ましいが、5%〜10%であれば、インナーポケット4が本体ケース蓋体3から自重で剥がれる程度の粘着力にすることができるので、糖尿病患者の症状がより重い状態であったとしても取り外しが可能であり、本発明の趣旨に鑑みてさらに好ましい。
【0027】
インスリン投与キット収納ケース1の仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)、仮止め部材8(面ファスナー:B面フック)として採用されている面ファスナーについて補足して説明する。面ファスナーは、面的に着脱できるファスナーである。布に対して、フック状に起毛された側(B面)と、ループ状に密集して起毛された側(A面)から構成されている。主に衣類用に、再び脱着可能な状態で結合したい場合に用いられる。よく知られたものとしてマジックテープ(登録商標)、ベルクロ(登録商標)等がある。フック状に起毛された側(B面)とループ状に密集して起毛された側(A面)を押し付けるとそれだけで貼り付くようになっており、貼り付けたり剥がしたりすることが自在にできる。
【0028】
なお、インスリン投与キット収納ケース1の仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)、および仮止め部材8(面ファスナー:B面フック)としての面ファスナーは、JIS規格(JIS L 3416:2000)で、規定された面ファスナー1種、1号相当程度の剥離強さ(ファスナーの接着面の一辺に引張荷重を加えたときに生じる引張応力によって二面間の結合が順次解けていき、分離に至るまでの間の平均剥離荷重を荷重方向と垂直な一辺の距離で除した値)が、0.3(N/cm)〜0.4(N/cm)のものを限定して使用することができる。
【0029】
図2(a)は、本体トレイ5に仕切り板部材6を設置した状態を示す斜視図である。図2(a)に記載したように、本体トレイ5には、径の大きさが全て同じである複数の貫通穴11が一定の間隔を置いて規則的に配置されており、嵌め込み自在、取り換え自在な(複数の)仕切り板部材6を、インスリン投与キットのアイテムの構成やサイズ等に合わせて、適宜仕切り板部材6を取り外し(配置を換えることを含む)ができるようになっている。
【0030】
図2(b)は、仕切り板部材6の上面図、および下面図(b)である。図2(b)の左側は耐倒補強部10(点線で囲った部分)が設置された仕切り板部材6であり、図3(b)の右側は耐倒補強部10が設置されていない仕切り板部材6である。底面底部に耐倒補強部10(点線で囲った部分)が設置された仕切り板部材6(左側)は、仕切り板部材6の仕切り面を形成する方向と垂直な方向から掛かる力であって、耐倒補強部10(点線で囲った部分)が設置されて無い側からの応力(図2に→で記載)に対して耐力(倒れないようになっている)を有していることになる。
【0031】
<インスリン投与キット収納ケースの使用方法>
図3は、本発明に係るインスリン投与キット収納ケース1に各アイテムを収納した状態を示す説明図である。インスリン投与キット収納ケース1には、図3に記載したように、自己注射に必要な、インスリン製剤カートリッジ、注射針(使い捨て)、血糖値測定器、穿刺器具、穿刺針(使い捨て)、専用センサー(使い捨て)、アルコール消毒綿、絆創膏等が収納されており管理が容易になっている。以下に、インスリン自己注射方法の手順に沿って、インスリン投与キット収納ケース1の使用方法について説明する。なお、インスリン治療の効果、投与量の調節を確認する場合に、血糖値測定を行うことにあるが、血糖値測定の一連の作業については、ここでは記載を省略し、インスリン自己注射方法の手順に絞って説明する。
【0032】
インスリン自己注射方法の大まかな手順としては、1.注射針の取り付け、2.空うち、3.薬剤投与量の設定、4.注射という流れになっている。インスリン投与キット収納ケース1は、1.注射針の取り付けに関する作業において、何らかの血管病変(たとえば、脳梗塞後遺症)も併せて発症してしまった糖尿病患者であっても、自己注射し易いように工夫されている。以下に説明する。
【0033】
すなわち、注射針の取り付けでは、あらかじめインスリン製剤が注入器にセットされている(使い捨てタイプの)ペン型のインスリン製剤カートリッジと、注射針(使い捨て)を取り出すことになるが、実際に自己注射をする際は、本体ケース2とヒンジ構造により連結されている本体ケース蓋体3を片手で上方向に開き、そして、仕切り板部材6で仕切られた本体トレイ5からインスリン製剤カートリッジを片手で上方向に取り出し、さらに、仕切り板部材6の上部を片手(の指先)で掴み、仕切り板部材6ごと本体トレイ5を片手で上方向に持ち上げて、仕切り板部材6ごと本体トレイ5を脇においてから、本体ケース5内部に収納された注射針(使い捨て)を片手で上方向に取り出すことができる。
【0034】
なお、実際に注射針の取り付けを行う際は、ペン型のインスリン製剤カートリッジに対して片手で注射針の取り付けができるように考案された、「注射針を保持する機能を備えた補助具(自助具)」を使用して行うことになる。以上のことより、薬剤投与量の設定、即ち、片手でインスリンの単位合わせができれば、インスリン投与のための自己注射は可能である。
【0035】
<インスリン投与キット収納ケースの効果>
糖尿病患者は、高齢者が多く、手指が不自由であったり、片手しか自由が利かなかったりする。それに加えて、合併症により、視力が低下し、極端なケースでは失明していることもあり得る。かかる状態であっても本発明に係るインスリン投与キット収納ケース1は、インスリン自己注射ができるように人間工学に基づいた工夫がなされている。このことについては、<インスリン投与キット収納ケースの使用方法>で詳細を記載しているので、ここではそれ以外の効果について記載する。
【0036】
インスリン投与キット収納ケース1は、インスリン注射剤、採血器、血糖値測定器等の種類(サイズ、形状)や構成(何を選択するか)に併せて、トレイ構造によりカスタマイズでき、しかも、インスリン投与時に発生するゴミを一般ゴミ、医療ゴミ等として分別して携帯することができる。すなわち、取り外し自在、および組み換え自在の仕切り板部材6で本体トレイ5を仕切ることができるし、本体トレイ支持部材9により、本体トレイ5を本体ケース2の底面から本体トレイ支持部材9の高さ分、浮かすことができる。したがって、インスリン投与キットの被収納物(血糖値測定器、万年筆型注射器、採取器等)の形状や大きさに合わせて、本体トレイ5を仕切ることができ、個人の都合や好み等に合わせて被収納物(血糖値測定器、万年筆型注射器、採取器等)を収納することができる(図3参照)。すなわち、本体トレイ5に設置する仕切り板部材6の配置を変えることによりインスリン注射剤、採血器、血糖測定器の種類や構成に併せてカスタマイズできる。
【0037】
インスリン投与キット収納ケース1は、本体ケース蓋体3の内側に貼設する布製のインナーポケット4を備えているので、インスリン摂取時間の記録、測定した血糖値の記録を行うための手帳や筆記具等を収納することができるし、本体ケース蓋体3の内側には、仮止め部材7(面ファスナー:A面ループ)が、インナーポケット4の本体ケース蓋体3に対面する側にもインナーポケット4を仮止めするための仮止め部材8(面ファスナー:B面フック)が貼設されているので、本体ケース蓋体3を開いた状態であっても、インナーポケット4(インナーポケット4に収納された被収納物)が落ちることはない。
【0038】
仕切り板部材6は、底面(本体トレイと接する面)の片側のみに耐倒補強部10を備えている場合、仕切り板部材6が形成する仕切り面に対して垂直な方向の一方側から掛かる力(耐倒補強部10が無い側からの応力:図2参照)に対して耐力を有している。したがって、被収納物を本体トレイ5上に固定させる目的で、被収納物を仕切り板部材6で両側から挟み込む場合(すなわち、被収納品から両側に向かって掛かる応力に対して補強したい場合)は、仕切り板部材6の耐倒補強部10が、被収納物に対して外側になるように仕切り板部材6を設置することで実現できる。たとえば、インスリン製剤カートリッジ(万年筆型注射器)を本体トレイ5上に固定させる目的で、仕切り板部材6でインスリン製剤カートリッジ(万年筆型注射器)を両側から挟み込む場合は、仕切り板部材6の耐倒補強部10が、インスリン製剤カートリッジ(万年筆型注射器)がある側ではなく、インスリン製剤カートリッジ(万年筆型注射器)がない側になるように仕切り板部材6を設置することになる。
【0039】
本体トレイ5と仕切り板部材6を形成する素材は、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンは、耐薬品性にも優れ、酸やアルカリ、沸騰水、鉱物油など、多くの薬品に耐えることができる。さらに、ポリプロピレンの素材の柔軟性から、本体トレイ5に仕切り板部材6を取り外しする作業は日常的に何度も繰り返されることを前提にしているのであるが、長きに亘る使用に対しても破損することが少なくなっており、耐久性を備えている。
【0040】
<インスリン投与キット収納ケースの変更例>
本発明に係るインスリン投与キット収納ケースは、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、本体ケース、本体ケース蓋体、インナーポケット、本体トレイ、仕切り板部材、仮止め部材(面ファスナー:A面ループ)、仮止め部材(面ファスナー:B面フック)、本体トレイ支持部材、耐倒補強部等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0041】
たとえば、本体ケース蓋体の内側、およびインナーポケットの本体ケース蓋体に対面する側にインナーポケットを仮止めするための仮止め部材を貼設する代わりに、インナーポケット側、あるいは、本体ケース蓋体の内側に粘着テープ(両面テープ)を貼設しても良い。粘着テープとしては、従来の代表的なシール材である「ブチルテープ」に比べ、初期接着力、耐熱性、耐候性が格段に向上した「アクリル系接着/シールテープ」を採用することもできる。
【0042】
さらに、本体ケースの一部に設置された薬保管スペースは、日毎、かつ、朝、昼、夜等の時間毎に区分けされており、インスリン製剤投与の状況を一目で分かるようにするために(すなわち、投薬日時管理用に)、一週間分の朝、昼、夜の決められた時間に決められた量、および種類のインスリン製剤を投与する時に必要な薬品等を日毎、かつ、朝、昼、夜等の時間毎に区分けして収納することができるように区分けしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るインスリン投与キット収納ケースは、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、糖尿病患者が、定期的にインスリン製剤を注射器等で投与することで血糖値の調整等を行うために必要なインスリン投与キットを纏めて保管することができるインスリン投与キット収納ケースとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・インスリン投与キット収納ケース
2・・本体ケース
3・・本体ケース蓋体
4・・インナーポケット
5・・本体トレイ
6・・仕切り板部材
7・・仮止め部材(面ファスナー:A面ループ)
8・・仮止め部材(面ファスナー:B面フック)
9・・本体トレイ支持部材
10・・耐倒補強部
11・・貫通穴
図1
図2
図3