【解決手段】第1ポート20と第2ポート30との間に、負圧側フィルタ4を有する負圧側流路40及び正圧側フィルタ5を有する正圧側流路50を並列に接続し、負圧側流路及び正圧側流路と第1ポートとの間にシャトル弁7を介在させることにより、第1ポートに負圧が供給されたときには、第1ポートを負圧側流路を通じて第2ポートに連通させ、第1ポートに正圧が供給されたときには、第1ポートを正圧側流路を通じて第2ポートに連通させるようにした。
【背景技術】
【0002】
ワークを吸着パッドに吸着させて所定位置に搬送する吸着搬送装置は、例えば、半導体チップ等の電子部品を吸着して基板上に搭載する場合などに広く用いられている。このような吸着搬送装置においては、真空圧(負圧)が供給された吸着パッドにワークを吸着させて所定位置まで搬送し、その所定位置で、吸着パッドに供給する流体圧を真空破壊圧(正圧)に切り換えることにより、ワークを吸着パッドから離脱させるようになっている。
【0003】
通常、このような吸着搬送装置の吸着パッドに接続された流路には、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているようなフィルタ装置が設けられている。このフィルタ装置は、真空圧供給時(負圧供給時)及び真空破壊時(正圧供給時)に、その流路を流れる気体(空気)に混入した塵埃等の異物を除去するものである。このようなフィルタ装置を設けることにより、負圧供給時には、吸着パッドから吸引した空気に混入した異物が負圧源に侵入するのを防止して、該負圧源がその異物で損傷してしまうのを防止することができる。また、逆に、正圧供給時には、正圧源からの空気に混入した異物が吸着パッドから放出されるのを防止して、ワーク及びその周囲が放出された異物で汚染されるのを防止することができる。
【0004】
ところで、上記吸着搬送装置において、前記負圧供給時と正圧供給時とでは、前記流路内を流れる空気の流れ方向が逆方向となる。そこで、特許文献1及び特許文献2に開示されたフィルタ装置においては、該フィルタ装置内に、負圧源からの負圧が供給される負圧用流路と正圧源からの正圧が供給される正圧用流路とが並列に形成されている。そして、前記負圧用流路においては、負圧用フィルタと、吸着パッド側から負圧源側に向けての空気の流れを許容する逆止弁とが直列に接続され、前記正圧用流路においては、正圧用フィルタと、正圧源側から吸着パッド側に向けての空気の流れを許容する逆止弁とが直列に接続されている。
【0005】
前記フィルタ装置をこのような構成とすることにより、負圧供給時にフィルタで捕捉された異物が、正圧供給時に真空破壊用の空気に混入して前記真空パッドから放出されてしまったり、正圧供給時にフィルタで捕捉された異物が、負圧供給時に真空パッドから吸引された空気に混入して負圧源に吸入されてしまったりするのを防止することができる。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されたフィルタ装置においては、複数の弁体(逆止弁)を必要とすることなどから、内部の流路構造が複雑なものとなりがちであり、圧力効率が低下したり各種コストが嵩んだりすること等が懸念される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るフィルタ装置1は、例えば、
図1に示すように、ワークを吸着パッド10に吸着させて所定位置に搬送する吸着搬送装置等に用いられるものであって、負圧源13及び正圧源14を、電磁パイロット式切換弁11,12によって選択的に切り換えて連通させる流路15に設け、該流路15を流れる空気等の気体をろ過するためのものである。ここで、前記負圧源13としては、大気圧よりも低い圧力を供給する真空圧発生装置(エジェクタ装置等)を用いることができ、正圧源14としては、大気圧よりも高い圧力を供給するコンプレッサ等を用いることができる。
【0017】
このように、負圧源13と正圧源14とから、負圧と正圧とが選択的に切り換られて供給される流路15にフィルタ装置1を介在させることにより、当該流路15に負圧源13から負圧が供給されているときには、前記吸着パッド10等の流体圧機器から吸引された空気等の気体から塵埃等の異物をろ過(除去)して、該負圧源13に該異物が侵入するのを防止することができる。その一方で、当該流路15に正圧源14から真空破壊用の正圧が供給されているときには、該正圧源14から供給される正圧の空気等の気体から塵埃等の異物をろ過(除去)して、ワーク及びその周囲が異物で汚染されるのを防止することができる。
【0018】
前記フィルタ装置1は、前記切換弁11,12によって、前記負圧源13及び正圧源14に対して選択的に切り換えて連通させるための第1ポート20と、該第1ポート20から入力された負圧及び正圧を、吸着パッド10等の外部の流体圧機器に対して出力するための第2ポート30とを有している。また、これら第1ポート20と第2ポート30との間には、負圧側フィルタ4を有する負圧側流路40及び正圧側フィルタ5を有する正圧側流路50が設けられており、これら負圧側流路40及び正圧側流路50は、前記第1及び第2ポート20,30に対して並列に接続されている。
【0019】
図2及び
図5に示すように、前記負圧側フィルタ4は、通気性の負圧側フィルタエレメント41を有しており、前記第1ポート20から負圧が入力されたときに、該フィルタエレメント41によって、前記第2ポート30から負圧側流路40を通じて第1ポート20へと流れる気体から異物が除去されるようになっている。その一方で、前記正圧側フィルタ5は、通気性の正圧側フィルタエレメント51を有しており、前記第1ポート20から正圧が入力されたときに、該フィルタエレメント51によって、該第1ポート20から正圧側流路50を通じて第2ポート30へと流れる気体から異物が除去されるようになっている。
【0020】
このような機能を実現するため、このフィルタ装置1においては、前記第1ポート20と前記負圧側流路40及び正圧側流路50との間にシャトル弁7が配されている。具体的には、負圧側流路40及び正圧側流路50の一端がシャトル弁7を通じて第1ポート20に接続され、これら流路40,50の他端が直接的に第2ポート30に接続されている。そうすることにより、第1ポート20に負圧が供給されたときには、該第1ポート20と前記負圧側流路40との間の連通が開放されて前記第2ポート30から該負圧が出力され、それと同時に、該第1ポート20と前記正圧側流路50との間の連通が遮断される。その際、第2ポート30からフィルタ装置1内に流入した気体が、負圧側フィルタ4のフィルタエレメント41でろ過された後に、第1ポート20から流出する。
【0021】
その一方で、前記第1ポート20に正圧が供給されたときには、該第1ポート20と前記正圧側流路50との間の連通が開放されて前記第2ポート30から該正圧が出力され、それと同時に、該第1ポート20と前記負圧側流路40との間の連通が遮断される。その際、第1ポート20からフィルタ装置1内に流入した気体が、正圧側フィルタ5のフィルタエレメント51でろ過された後に、第2ポート30から流出する。
【0022】
また、本実施形態に係るフィルタ装置1においては、正圧側流路50における前記正圧側フィルタエレメント51よりも第2ポート30側の流路部分に絞り部50aが設けられている。このような絞り部50aを正圧側流路50に設けることにより、特にフィルタ装置1の第1ポート20に供給する気体の圧力を負圧へと切り換えた際に、第1ポート20との連通を負圧側流路40へと切り換えるシャトル弁7の応答性を向上させることができる。また、絞り部50aを正圧側フィルタエレメント51よりも第2ポート30側に設けたことにより、第1ポート20に正圧を供給した際に該フィルタエレメント51で捕捉された異物が、再び第1ポート20側に送り戻されるのを可及的に抑制することができる。
【0023】
上記フィルタ装置1の構造について
図2及び
図3を用いてより具体的に説明すると、前記フィルタ装置1は、長手の第1軸L1方向に延びており、該軸L1方向の両端に第1端1a及び第2端1bを有している。そして、このフィルタ装置1は、前記負圧側及び正圧側フィルタ4,5を含んで軸L1方向に延びるフィルタ本体部6と、前記第1ポート20及び前記シャトル弁7を含んで該フィルタ本体部6における第1端1a側の端部に着脱可能に取り付けられた第1キャップ部2と、前記第2ポート30を含んで該フィルタ本体部6における第2端1b側の端部に着脱可能に取り付けられた第2キャップ部3とを有している。また、図中の符号9は、前記フィルタ装置1を所定位置に固定するためのブラケットを示しており、前記フィルタ本体部の側方から着脱自在に取り付けられる。
【0024】
前記フィルタ本体部6は、前記負圧側流路40を形成する前記負圧側フィルタ4と、前記正圧側流路50を形成する前記正圧側フィルタ5と、これら負圧側及び正圧側フィルタ4,5を第1軸L1方向において互いに平行に保持するホルダー8とを有している。すなわち、前記負圧側流路40と正圧側流路50とは第1軸L1方向において互いに平行に延びている。そして、第1軸L1方向における負圧側及び正圧側フィルタ4,5の両端部が前記第1キャップ部2及び第2キャップ部3に対して着脱可能に連結されている。その結果、前記負圧側流路40及び正圧側流路50における第1端1a側の端部が前記シャトル弁7に連通されると共に、前記負圧側流路40及び正圧側流路50における第2端1b側の端部が前記第2ポート30に連通されている。
【0025】
前記負圧側及び正圧側フィルタ4,5は、第1軸L1方向において互いに逆向きに配置されている点、及び、正圧側フィルタ5には前記絞り部50aが設けられているのに対して、負圧側フィルタ4には絞り部が設けられていない点を除けば、互いに同じ構造を備えている。これら負圧側及び正圧側フィルタ4,5は、中空の筒状に形成されて軸方向に延設された前記負圧側及び正圧側フィルタエレメント41,51と、中空の筒状に形成されて軸方向に延設され、該フィルタエレメント41,51を内部に収容する負圧側及び正圧側フィルタケース42,52とを有している。そして、これらフィルタエレメント41,51内には、第1軸L1方向に貫通する負圧側内部流路41a及び正圧側内部流路51aが形成されている。
【0026】
また、これらフィルタケース42,52の内径は前記フィルタエレメント41,51の外径よりも大きく形成されていて、該フィルタケース42,52内に、前記フィルタエレメント41,51全体が同軸に収容されている。そのため、前記負圧側フィルタエレメント41の外周面上(すなわち、該フィルタエレメント41の外周面と負圧側フィルタケース42の内周面との間)には、負圧側環状外流路43が形成されている。一方、前記正圧側フィルタエレメント51の外周面上(すなわち、該フィルタエレメント51の外周面と正圧側フィルタケース52の内周面との間)には、正圧側環状外流路53が形成されている。
【0027】
ここで、これらフィルタケース42,52は共に、透明な樹脂等の透明な材料によって形成されている。このようにフィルタケース42,52を透明なものとすることにより、フィルタエレメント41,51の外周面を外部から、該フィルタエレメント41,51の状態(汚れ具合等)を目視で確認することができるようになっている。また、負圧側のフィルタエレメント41及びフィルタケース42と、正圧側のフィルタエレメント51及びフィルタケース52とは、第1軸L1方向において互いに逆向きに配置されている点を除けば、互いに同じ構造を有している。
【0028】
前記負圧側フィルタ4は、前記負圧側フィルタケース42における第1端1a側の端部に、前記第1キャップ部2との連結に供される負圧側第1継手44を有しており、同じく第2端1b側の端部に、前記第2キャップ部3との連結に供される負圧側第2継手47を有している。
【0029】
前記負圧側第1継手44は、第1軸L1方向の中央部に配された大径の本体部44aと、該本体部44aの第1端1a側から突設された小径の接続部44bと、該本体部44aの第2端1b側から突設された小径の嵌合部44cとによって一体に形成されている。
【0030】
前記負圧側第1継手44には、前記第1キャップ部2に設けられたシャトル弁7の後述する第2弁開口71と、前記負圧側フィルタエレメント41の内部流路41aとを連通させる負圧側第1流路45が形成されている。この負圧側第1流路45は、前記接続部44bの端面から嵌合部44cの端面まで、第1軸L1に沿って前記負圧側第1継手44を直線状に貫通しており、前記負圧側流路40における第1端1a側の端部を形成している。
【0031】
また、前記接続部44b及び嵌合部44cの外周には、環状のシール部材Sがそれぞれ設けられている。そして、前記接続部44bは、前記第1キャップ部2における前記第2弁開口71が開設された負圧側嵌合凹部21に対して気密かつ着脱可能に嵌合されている。一方、前記嵌合部44cは、前記負圧側フィルタケース42における第1端1a側の端部に対して気密かつ着脱可能に嵌合されている。
【0032】
前記負圧側第2継手47は、第1軸L1方向の中央部に配された大径の本体部47aと、該本体部47aの第2端1b側から突設された小径の接続部47bと、該本体部47aの第1端1a側から突設された小径の嵌合部47cと、該嵌合部47cの第1端1a側から更に突設されて該嵌合部47cよりも小径に形成された嵌合凸部47dとによって一体に形成されている。
【0033】
前記負圧側第2継手47においては、前記第2キャップ部3の第2ポート30へと連なる後述の接続流路37と、前記負圧側環状外流路43とを連通させる負圧側第2流路48が形成されている。ここで、この負圧側第2流路48は、前記接続部47bの端面から嵌合部47cまで(具体的には、嵌合部47cと嵌合凸部47dとの境界部分まで)、第1軸L1に沿って直線状に開設された軸方向流路部48aと、該嵌合部47cを径方向に貫通して該軸方向流路部48aと直角に交わる径方向流路部48bとによって形成されている。そして、該径方向流路部48bによって、前記軸方向流路部48aと前記負圧側環状外流路43とが相互に接続されている。この負圧側第2流路48は、前記負圧側流路40における第2端1b側の端部を形成している。
【0034】
また、前記接続部47b及び嵌合部47cの外周にも、環状のシール部材Sがそれぞれ設けられている。そして、前記接続部47bは、前記第2キャップ部3における前記接続流路37に連通された負圧側嵌合凹部31に対して気密かつ着脱可能に嵌合されている。一方、前記嵌合部44cは、前記負圧側フィルタケース42における第2端1b側の端部に対して気密に嵌合され、さらに、前記嵌合凸部47dが、前記負圧側フィルタエレメント41の内部流路41aにおける第2端1b側の開口部に嵌合され、該開口部を閉塞している。ここで、前記嵌合部47cにおいて、前記シール部材Sは、前記径方向流路部48bよりも本体部47a寄りの位置に配されている。
【0035】
その一方で、前記正圧側フィルタ5は、前記正圧側フィルタケース52における第1端1a側の端部に、前記第1キャップ部2との連結に供される正圧側第1継手54を有しており、同じく第2端1b側の端部に、前記第2キャップ部3との連結に供される正圧側第2継手57を有している。
【0036】
前記正圧側第1継手54は、第1軸L1方向の中央部に配された大径の本体部54aと、該本体部54aの第1端1a側から突設された小径の接続部54bと、該本体部54aの第2端1b側から突設された小径の嵌合部54cと、該嵌合部54cの第2端1b側から更に突設されて該嵌合部54cよりも小径に形成された嵌合凸部54dとによって一体に形成されている。ここで、この正圧側第1継手54と前記負圧側第2継手47とは、第1軸L1方向において互いに逆向きに配置されている点を除けば、互いに同じ構造を有している。
【0037】
前記正圧側第1継手54においては、前記第1キャップ部2に設けられたシャトル弁7の後述する第3弁開口72と、前記正圧側環状外流路53とを連通させる正圧側第1流路55が形成されている。ここで、この正圧側第1流路55は、前記接続部54bの端面から嵌合部54cまで(具体的には、嵌合部54cと嵌合凸部54dとの境界部分まで)、第1軸L1に沿って直線状に開設された軸方向流路部55aと、該嵌合部54cを径方向に貫通して該軸方向流路部55aと直角に交わる径方向流路部55bとによって形成されている。そして、該径方向流路部55bによって、前記軸方向流路部55aと前記正圧側環状外流路53とが相互に接続されている。この正圧側第1流路55は、前記正圧側流路50における第1端1a側の端部を形成している。
【0038】
また、前記接続部54b及び嵌合部54cの外周には、環状のシール部材Sがそれぞれ設けられている。そして、前記接続部54bは、前記第1キャップ部2における前記第3弁開口72が開設された正圧側嵌合凹部22に対して気密かつ着脱可能に嵌合されている。一方、前記嵌合部54cは、前記正圧側フィルタケース52における第1端1a側の端部に対して気密に嵌合され、さらに、前記嵌合凸部54dが、前記正圧側フィルタエレメント51の内部流路51aにおける第1端1a側の開口部に嵌合され、該開口部を閉塞している。ここで、前記嵌合部54cにおいて、前記シール部材Sは、前記径方向流路部55bよりも本体部57a寄りの位置に配されている。
【0039】
前記正圧側第2継手57は、第1軸L1方向の中央部に配された大径の本体部57aと、該本体部57aの第2端1b側から突設された小径の接続部57bと、該本体部57aの第1端1a側から突設された小径の嵌合部57cとによって一体に形成されている。
【0040】
前記正圧側第2継手57には、前記第2キャップ部3の第2ポート30へと連なる前記接続流路37と、前記正圧側フィルタエレメント51の内部流路51aとを連通させる正圧側第2流路58が形成されている。この正圧側第2流路58は、前記接続部57bの端面から嵌合部57cの端面まで、第1軸L1に沿って前記正圧側第2継手57を直線状に貫通しており、前記正圧側流路50における第2端1b側の端部を形成している。
【0041】
また、前記接続部57b及び嵌合部57cの外周にも、環状のシール部材Sがそれぞれ設けられている。そして、前記接続部57bは、前記第2キャップ部3における前記接続流路37に連通された正圧側嵌合凹部32に対して気密かつ着脱可能に嵌合されている。一方、前記嵌合部57cは、前記正圧側フィルタケース52における第2端1b側の端部に対して気密に嵌合されている。
【0042】
ここで、この正圧側第2継手57と前記負圧側第1継手44とは、第1軸L1方向において互いに逆向きに配置されている点、及び、正圧側第2流路58の径が負圧側第1流路45の径よりも小さく形成されている点を除けば、互いに同じ構造を備えている。
【0043】
このように、本実施形態においては、正圧側第1流路55の有効断面積と負圧側第2流路48の有効断面積とを等しく形成し、且つ、前記正圧側第2流路58の径(有効断面積)を、負圧側第1流路45の径(有効断面積)よりも小さく形成している。その結果、前記正圧側第2流路58によって、前記絞り部50aが形成されている。換言すると、正圧側フィルタ5の合成有効断面積(すなわち、正圧側流路50の合成有効断面積)が、負圧側フィルタ4の合成有効断面積(すなわち、負圧側流路40の合成有効断面積)よりも小さく形成されている。
【0044】
前記ホルダー8は、第1軸L1方向に延びる円柱状に形成されており、前記負圧側フィルタ4及び正圧側フィルタ5を嵌合させて保持するための第1嵌合溝8a及び第2嵌合溝8bを有している。該第1及び第2嵌合溝8a,8bは、該ホルダー8の径方向の両端に開口部を有して、該ホルダー8における第1端1a側の端面と第2端1b側の端面との間を直線状に貫通している。このとき、これら嵌合溝8a,8bの横断面は、中心角が180度以上の扇形に形成されている。すなわち、ホルダー8の外周面に軸L1に沿って開設された第1及び第2嵌合溝8a,8bの開口幅は、それら嵌合溝8a,8bの直径よりも小さくなっている。
【0045】
また、該ホルダー8の軸L1方向の長さは、前記フィルタ4,5において、軸L1方向の両端部に設けられた接続部44b,47b,54b,57bを除いた長さと実質的に等しくなっている。そして、前記ホルダー8の外周面における第1端1a側及び第2端1b側の端部には、前記ブラケット9の後述する第1及び第2把持部91,92を係合させる第1及び第2係合溝8c,8dが、軸L1周りの周方向に凹設されている。
【0046】
前記第1キャップ部2は、第1軸L1方向に延びる円柱状のキャップ本体部23と、その第1端1a側の端面の中央部から軸L1方向に立設された筒状突部24とによって一体に形成されている。前記キャップ本体部23の第2端1b側の端面には、前記負圧側及び正圧側フィルタ4,5の第1端1a側の接続部44b,54bを着脱可能に嵌合させるための前記負圧側及び正圧側嵌合凹部21,22が開設されている。前記筒状突部24内には、クイック継手25が嵌合されて前記第1ポート20が形成されていると共に、該第1ポート20を前記キャップ本体部23内のシャトル弁7に対して接続する第1弁開口70が開設されている。
【0047】
図2及び
図4に示すように、前記シャトル弁7は、前記第1キャップ部2のキャップ本体部23に開設された弁取付穴73と、該弁取付穴73内に嵌合されて該弁取付穴73の内部に弁室74を形成する流路形成用ボディ75と、前記弁室74内に往復動自在に収容された単一の弁体76と、該シャトル弁7内に気体を出入りさせる前記第1弁開口70、第2弁開口71及び第3弁開口72とを有している。そして、これら弁開口に供給される気体の圧力差によって前記弁体76を動作させ、これら弁開口間の連通状態を切り換えることができるようになっている。
【0048】
前記弁取付穴73は、前記キャップ本体部23における第1軸L1周りの外周面に開口して、該第1軸L1と直交する第2軸L2方向に延びており、底部に向かって徐々に径が小さくなっていくように形成されている。
【0049】
前記流路形成用ボディ75は、第2軸L2方向において、前記弁取付穴73の深さよりも短い長さに形成されている。それより、該ボディ75の先端部と該弁取付穴73との間には、前記弁室74が形成されている。該弁室74の第2軸L2周りの側壁(内周面)は、弁取付穴73の底方向に向かって径が直線状に滑らかに縮小していく円錐面状に形成されており、その円錐状の側壁によって、前記弁体76が接離する環状の第1弁座74aが形成されている。そして、該弁室74の底(すなわち、弁取付穴73の底)には、前記第2弁開口71を備えた第1連通流路77が接続されている。すなわち、前記第1弁座74aは、前記弁室74における第1連通流路77の開口部周りの内周面に形成されている。
【0050】
該流路形成用ボディ75の内部には、前記弁室74と前記第3弁開口72とを連通させる第2連通流路78が形成されており、該ボディ75の先端部には、前記弁室74に対する該第2連通流路78の開口部を形成する筒状開口部75bが設けられている。そして、該筒状開口部75bの先端(すなわち、流路形成用ボディ75の先端)であって、前記第2連通流路78の開口部周りには、前記弁体76が接離する環状の第2弁座75aが形成されている。
【0051】
前記第2連通流路78は、前記流路形成用ボディ75の先端から基端側へと第2軸L2に沿って直線状に延びる軸方向流路部78aと、該ボディ75を径方向に貫通して該軸方向流路部78aと直角に交わる径方向流路部78bとから形成されている。また、該径方向流路部78bの両端は、前記流路形成用ボディ75と弁取付穴73との間に形成された環状流路79に開口しており、該環状流路部79を通じて前記第3弁開口72に連通されている。このとき、第2軸L2方向における前記環状流路79の両側にはシール部材S,Sが設けられていて、それにより、流路形成用ボディ75と弁取付穴73との間が気密にシールされている。
【0052】
前記弁体76は、前記弁室74における前記第1連通流路77の開口部と前記第2通流路78の開口部(すなわち、第2弁座75a)との間に、第2軸L2方向に対して往復動自在に配置されている。すなわち、該弁体76は、該弁室74を、前記第1連通流路77が接続された部分(第1室)74bと、前記第2弁座が配された部分(第2室)74cとに区画している。そして、該弁体76は、前記第1弁座74aに接離するリップ状に形成された環状の逆止弁部76aと、前記第2弁座75aに接離するポペット弁部76bとによって一体に形成されている。
【0053】
より具体的に説明すると、該弁体76は、ゴム弾性を有する樹脂材料によって一体成型されたもので、前記ポペット弁部76bは、第2軸L2上に配されており、該ポペット弁部76bにおける前記第2室74c側の面(すなわち、第2弁座75aに接離する面)の中央部分が、該第2室74c側に向けて隆起している。また、前記逆止弁部76aは、前記ポペット弁部76bにおける第2軸L2周りの外周部から前記第2室74c側に向けて、前記第1弁座74aに沿うように拡開する円錐筒状に形成されている。そして、該逆止弁部76aにより、第1室74b側から第2室74c側への気体の流れは許容される(
図4(a)参照)一方で、第2室74c側から第1室74b側への気体の流れは遮断される(
図4(b)参照)ようになっている。
【0054】
さらに、前記弁室74の第2室74cは、前記筒状開口部75bの外周面と前記弁取付穴73の側壁面との間に形成された環状の空隙74dを含んでいる。この環状の空隙74dには、前記第1弁開口70が接続されており、前記第1ポート20に入力された圧力が該空隙74dから弁室74に対して供給されるようになっている。また、
図4(a)に示すように、前記弁体76のポペット弁部76bが第2弁座75aに着座した状態においては、前記第1弁座74aから離間した逆止弁部76aがこの空隙74dに収容されるようになっている。
【0055】
前記第2キャップ部3も、第1キャップ部2と同様に、第1軸L1方向に延びる円柱状のキャップ本体部33と、その第2端1b側の端面の中央部から軸L1方向に立設された筒状突部34とによって一体に形成されている。前記キャップ本体部33の第1端1a側の端面には、前記負圧側及び正圧側フィルタ4,5の第2端1b側の接続部47b,57bを着脱可能に嵌合させるための前記負圧側及び正圧側嵌合凹部31,32が開設されている。前記筒状突部34内には、クイック継手35が嵌合されて前記第2ポート30が形成されている。
【0056】
この第2キャップ部3は、前記キャップ本体部33の内部に、前記第2軸L2と平行に延びる前記接続流路37を有している。該接続流路の一端部には前記負圧側フィルタ4が接続され、その他端部には前記正圧側フィルタ5が接続されている。そして、該接続流路の中央部には前記第2ポート30が接続されている。すなわち、前記負圧側フィルタ4及び正圧側フィルタ5は、前記第2ポート30に対して常時連通された状態にある。
【0057】
なお、フィルタ本体部6と第1キャップ部2及び第2キャップ部3とを互いに結合させるにあたっては、フィルタ本体部6のホルダー8に貫設された一対の固定穴8e,8e、第1キャップ部2に貫設された一対の固定穴26,26、及び第2キャップ部3に貫設された一対の固定穴36,36に対して、図示しない一対のタイロッドを挿通することにより着脱可能に共締めすれば良い。
【0058】
前記ブラケット9は、フィルタ装置1を所定の位置に対して着脱可能に取り付けるためのもので、
図3に示すように、該ブラケット9を前記所定の位置に固定するための固定用プレート90と、該固定用プレート90の片面から一体に立設されて前記ホルダー8を把持するための第1及び第2把持部91,92とを有している。前記固定用プレートは第1軸L1方向に長い矩形に形成されており、その第1端1a側の端部に第1把持部91が設けられ、第2端1b側の端部に第2把持部92が設けられている。
【0059】
前記第1把持部91は、固定用プレート90における短手の幅方向の両端部から立設された一対の第1把持アーム91a,91bを有しており、前記第2把持部92も同様にして一対の第2把持アーム92a,92bを有している。そして、前記一対の第1把持アーム91a,91bを前記ホルダー8の第1係合溝8cに係合させて、該第1把持部91で該ホルダー8における第1端1a側の端部を挟持し、また、同様にして前記把持アーム92a,92bを前記ホルダー8の第2係合溝8dに係合させて、該第2把持部92で該ホルダー8における第2端1b側の端部を挟持している。
【0060】
次に、上述の構造を有するフィルタ装置1の作用効果について説明する。
まず、
図1において、フィルタ装置1の第1ポート20に負圧源13から負圧が入力されたときには、
図4(a)のように、前記第1弁開口70を通じて弁室74の第2室74cに負圧が供給される。すると、第1室74b側の圧力が第2室74c側の圧力よりも高くなり、前記弁体76の逆止弁部76aが前記第1弁座74aから離間すると共に、前記ポペット弁部76bが前記第2弁座75aに着座する。その際、前記正圧側フィルタの正圧側第2流路によって前記絞り部が形成されているため、前記第2室における負圧の立上りが早くなり、前記シャトル弁7の応答性を向上させることができる。この状態においては、シャトル弁7の前記第1弁開口70と第2弁開口71とが連通されることにより、第1ポート20が負圧側フィルタ4を通じて第2ポート30に連通され、該第2ポート30から負圧が出力される。
【0061】
そうすると、
図1の吸着パッド10から吸引された気体(空気等)が、第2ポート30から第2キャップ部3内の接続流路37を通じて負圧側フィルタ4に流入し、
図5(a)に示すように、該負圧側フィルタ4内において、該気体は、負圧側第2継手47の負圧側第2流路48を通じて負圧側環状外流路43へと導かれ、次いで、負圧側フィルタエレメント41でろ過されて、その内部流路41aへと導かれる。さらに、そのろ過後の気体は、負圧側第1継手44の負圧側第1流路45、並びに、シャトル弁7の第2弁開口71及び第1弁開口70を順次経て、前記第1ポート20から前記負圧源13へと流出する。このように、吸着パッド10から吸引された気体に混入した塵埃等の異物を前記負圧側フィルタエレメント41で除去するため、該異物が負圧源13に侵入するのを防止することができる。
【0062】
逆に、
図1において、フィルタ装置1の第1ポート20に正圧源14から真空破壊用の正圧が入力されたとき、すなわち、圧縮気体(圧縮空気等)が導入されたときには、
図4(b)のように、前記第1弁開口70を通じて弁室74の第2室74cに圧縮気体が流入する。すると、第2室74c側の圧力が第1室74b側の圧力よりも高くなり、前記弁体76のポペット弁部76bが前記第2弁座75aから離間すると共に、前記逆止弁部76aが前記第1弁座74aに着座する。この状態においては、シャトル弁7の前記第1弁開口70と第3弁開口72とが連通されることにより、第1ポート20が正圧側フィルタ5を通じて第2ポート30に連通される。
【0063】
そうすると、前記第1ポート20から導入された圧縮気体が、シャトル弁7を通じて正圧側フィルタ5に流入し、
図5(b)に示すように、該正圧側フィルタ5内において、該気体は、正圧側第1継手54の正圧側第1流路55を通じて正圧側環状外流路53へと導かれ、次いで、正圧側フィルタエレメント51でろ過されて、その内部流路51aへと導かれる。さらに、そのろ過後の気体は、正圧側第2継手57の正圧側第2流路58、及び、前記第2キャップ部3内の接続流路37を順次経て、前記第2ポート30から前記吸着パッド10へと流出し、該吸着パッド10の真空を破壊する。このように、正圧源14からの圧縮気体に混入した塵埃等の異物を前記正圧側フィルタエレメント51で除去するため、真空破壊と共に該異物が吸着パッド10から放出されるのを防止することができる。
【0064】
以上のように、本発明の一実施形態に係るフィルタ装置1によれば、第1ポート20に入力される圧力が負圧又は正圧に選択的に切り換えられたときに、該フィルタ装置1に流入する気体から異物を除去する負圧側及び正圧側フィルタ4,5の切り換えを、単一の弁体76によって3つの弁開口70,71,72の連通状態を切り換えるシャトル弁7で行うようにしたため、より簡単で合理的な流路構造を備えたフィルタ装置1を提供することが可能となる。
【0065】
以上、本発明に係るフィルタ装置の一実施形態について詳細に説明してきたが、本実施形態においては、例えば、第1及び第2ポート20,30の継手を、クイック継手25.35に替えてネジによる継手にしてもよく、フィルタエレメント41,51についても、円筒状のものに替えて円柱状のものにしてもよい。