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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-20470(P2021-20470A)
(43)【公開日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】賦形成形型及び賦形成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/40 20060101AFI20210122BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20210122BHJP
【FI】
   B29C43/40
   B29C70/46
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-178599(P2020-178599)
(22)【出願日】2020年10月26日
(62)【分割の表示】特願2016-225610(P2016-225610)の分割
【原出願日】2016年11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】391006083
【氏名又は名称】三光合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】安田 満雄
(72)【発明者】
【氏名】小西 勉
【テーマコード(参考)】
4F202
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AC03
4F202AD16
4F202AD20
4F202AD29
4F202AH17
4F202AH31
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK35
4F202CK84
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN21
4F205AA34
4F205AB11
4F205AB18
4F205AC03
4F205AD16
4F205HA08
4F205HA22
4F205HA34
4F205HA35
4F205HA43
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】絞り工程とトリム工程と、圧縮成形を、1つの型で行うことができ、被成形材の乗せ変え工程を省略して被成形材の配置ズレを解消すると共に高効率に成形できる賦形成形型及び賦形成形方法を提供する。
【解決手段】上型10aと下型10bとにより形成される成形型9のキャビティより広い積層材料5を、被成形材絞り押え板10cに配置する。上型と下型とによる絞り工程によって積層材料は製品端面形成面10b−3まで達し、所望の製品の端面が形成される。その後に、キャビティ外の積層材料のトリム工程として被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1内側に下型のバリ押し切り面10b−4を貫通する。これによって製品端面形成面から外にはみ出た積層材料は切断される。トリム工程と連続して、キャビティ内の積層材料に対して加圧、加熱して織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する圧縮成形工程を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦形をする上型と下型とからなる成形型と、成形型を加熱、型締し加圧する手段と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する手段と、前記上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板とを有し、前記上型は型締方向に所定の押し切り勾配で延びる縦押し切り面と、その縦押し切り面に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる被成形材絞り押え面を有し、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部を形成する側面と前記縦押し切り面とに前記下型が嵌合可能にされたことを特徴とする賦形成形型。
【請求項2】
賦形をする上型と下型とからなる成形型と、成形型を加熱、型締し加圧する手段と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する手段と、前記上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板とを有し、前記上型は成形部内側面に型締方向と交差する方向に延出する横押し切り面と、その横押し切り面と連続して型締方向に所定の押し切り勾配で延びる縦押し切り面と、その縦押し切り面に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる被成形材絞り押え面を有し、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部を形成する側面と前記縦押し切り面とに前記下型が嵌合可能にされたことを特徴とする賦形成形型。
【請求項3】
前記下型は上型との対向面から連続して型締方向と一致する方向に延びる側壁面と、その側壁面に連続して型締方向と交差する方向に延出する製品端面形成面とを有し、前記製品端面形成面に連続して型締方向と一致する方向に延びるバリ押し切り面を形成してなる請求項1又は請求項2記載の賦形成形型。
【請求項4】
前記被成形材絞り押え板は前記貫通孔部を囲む薄肉部と前記薄肉部を囲む厚肉部とを有する請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の賦形成形型。
【請求項5】
複数本の強化繊維束を含む織物基材に熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料が付着された成形原反材を裁断し積層した積層成形材を成形型に投入配置し、加圧、加熱して複数本の強化繊維束を含む織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する賦形成形方法において、上型と下型とからなる成形型を溶融温度に昇温する工程と、積層成形材を成形型へ投入配置して予熱する予熱工程と、成形型を型締し加圧する工程と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する工程とを有し、前記成形型は上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板を有し、一方前記下型はバリ押し切り面を有し、前記上型と下型とにより形成される成形型のキャビティより広い積層材料を、前記被成形材絞り押え板に配置し、所定時間上下型で予熱し、前記積層材料を前記上型と下型により絞る絞り工程後に、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部内側面内側に前記下型のバリ押し切り面を嵌合して前記キャビティ外の前記積層材料を切断するトリム工程を行うことを特徴とする賦形成形方法。
【請求項6】
前記トリム工程後に前記キャビティ内の前記積層材料に対して加圧、加熱して複数本の強化繊維束を含む織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する圧縮成形工程を行う請求項5記載の賦形成形方法。
【請求項7】
前記トリム工程と連続して、圧縮成形工程を行う際に、型締力を付加した後に、前記上型と前記被成形材絞り押え板との接触が維持される範囲で一旦型締め力を落とし、その後再度型締力を増やす弛緩工程を行う請求項5又は請求項6記載の賦形成形方法。
【請求項8】
前記成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する工程を、所定時間加熱圧縮し、熱硬化後型開き離形する工程とする請求項5〜請求項7のいずれか一に記載の賦形成形方法。
【請求項9】
複数本の強化繊維束を含む織物基材に熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂材料が付着された成形原反材を裁断し積層した積層成形材を成形型に投入配置し、加圧、加熱して複数本の強化繊維束を含む織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する賦形成形方法において、上型と下型とからなる成形型を溶融温度に昇温する工程と、積層成形材を成形型へ投入配置して予熱する予熱工程と、成形型を型締し加圧する工程と、型を開き離型する工程とを有し、前記成形型は上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板を有し、一方前記下型はバリ押し切り面を有し、前記上型と下型とにより形成される成形型のキャビティより広い積層材料を、前記被成形材絞り押え板に配置し、所定時間上下型で予熱し、前記積層材料を前記上型と下型により絞る絞り工程後に、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部内側面内側に前記下型のバリ押し切り面を嵌合して前記キャビティ外の前記積層材料を切断するトリム工程を行うことを特徴とする賦形成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維とマトリクス樹脂とからなり、例えば、自動車や航空機などの繊維強化樹脂製部材を賦形型を使用して3次元形状に賦形する賦形成形型及び賦形成形方法に関する。
【0002】
本出願人は特許文献1に成形原反材を用い強度の強い成形品を形状自由度高くかつ効率よく3次元形状に賦形することができる賦形成形型及び賦形成形方法を開示した。
【0003】
しかしこの特許文献1に開示された賦形成形型及び賦形成形方法では深い製品の成形は、積層材絞り成形型のキャビティ以外を切断するトリム工程と、圧縮成形工程を分けて成形していた。この場合に積層材をトリムした後、同一の型で圧縮成形すると、トリム工程で未切断となった炭素繊維が干渉することによって型締抵抗力が大きく、完全型締めをすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5909062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、絞り工程とトリム工程と、圧縮成形を 、1つの型で行うことができ、被成形材の乗せ変え工程を省略して被成形材の配置ズレという不具合を解消すると共に高効率に成形でき、かつ被成形材のトリム工程における未切断炭素繊維を少なくして、必要型締め力を小さくして完全型締し易くした賦形成形型及び賦形成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明の賦形成形型は、賦形をする上型と下型とからなる成形型と、成形型を加熱、型締し加圧する手段と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する手段と、前記上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板とを有し、前記上型は型締方向に所定の押し切り勾配で延びる縦押し切り面と、その縦押し切り面に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる被成形材絞り押え面を有し、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部を形成する側面と前記縦押し切り面とに前記下型が嵌合可能にされたことを特徴とする。
【0007】
さらに本発明の賦形成形型は、賦形をする上型と下型とからなる成形型と、成形型を加熱、型締し加圧する手段と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する手段と、前記上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板とを有し、前記上型は成形部内側面に型締方向と交差する方向に延出する横押し切り面と、その横押し切り面と連続して型締方向に所定の押し切り勾配で延びる縦押し切り面と、その縦押し切り面に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる被成形材絞り押え面を有し、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部を形成する側面と前記縦押し切り面とに前記下型が嵌合可能にされたことを特徴とする。
【0008】
前記下型は上型との対向面から連続して型締方向と一致する方向に延びる側壁面と、その側壁面に連続して型締方向と交差する方向に延出する製品端面形成面とを有し、前記製品端面形成面に連続して型締方向と一致する方向に延びるバリ押し切り面を形成してなるようにすることによって製品端面形成面からはみ出したバリは縦押し切り面とバリ押し切り面間で押し切られるようにすることができる。
【0009】
前記被成形材絞り押え板は前記貫通孔部を囲む薄肉部と前記薄肉部を囲む厚肉部とを有するものとすることができる。
【0010】
また本発明の賦形成形方法は、複数本の強化繊維束を含む織物基材に熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料が付着された成形原反材を裁断し積層した積層成形材を成形型に投入配置し、加圧、加熱して複数本の強化繊維束を含む織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する賦形成形方法において、上型と下型とからなる成形型を溶融温度に昇温する工程と、積層成形材を成形型へ投入配置して予熱する予熱工程と、成形型を型締し加圧する工程と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する工程とを有し、前記成形型は上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板を有し、一方前記下型はバリ押し切り面を有し、前記上型と下型とにより形成される成形型のキャビティより広い積層材料を、前記被成形材絞り押え板に配置し、所定時間上下型で予熱し、前記積層材料を前記上型と下型により絞る絞り工程後に、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部内側面内側に前記下型のバリ押し切り面を嵌合して前記キャビティ外の前記積層材料を切断するトリム工程を行うことを特徴とする。
【0011】
前記トリム工程後に前記キャビティ内の前記積層材料に対して加圧、加熱して複数本の強化繊維束を含む織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する圧縮成形工程を行うことができる。
【0012】
前記トリム工程と連続して、圧縮成形工程を行う際に、型締力を付加した後に、前記上型と前記被成形材絞り押え板との接触が維持される範囲で一旦型締め力を落とし、その後再度型締力を増やす弛緩工程を行うことができる。
【0013】
前記成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する工程を、所定時間加熱圧縮し、熱硬化後型開き離形する工程とすることができる。
【0014】
さらに本発明の賦形成形方法は、複数本の強化繊維束を含む織物基材に熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂材料が付着された成形原反材を裁断し積層した積層成形材を成形型に投入配置し、加圧、加熱して複数本の強化繊維束を含む織物基材に付着している樹脂材料を溶融して繊維間及び成形原反材の層間を接着する賦形成形方法において、上型と下型とからなる成形型を溶融温度に昇温する工程と、積層成形材を成形型へ投入配置して予熱する予熱工程と、成形型を型締し加圧する工程と、型を開き離型する工程とを有し、前記成形型は上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板を有し、一方前記下型はバリ押し切り面を有し、前記上型と下型とにより形成される成形型のキャビティより広い積層材料を、前記被成形材絞り押え板に配置し、所定時間上下型で予熱し、前記積層材料を前記上型と下型により絞る絞り工程後に、前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部内側面内側に前記下型のバリ押し切り面を嵌合して前記キャビティ外の前記積層材料を切断するトリム工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る賦形成形型及び賦形成形方法によれば、絞り工程とトリム工程と、圧縮成形を 、1つの型で行うことができ、被成形材の乗せ変え工程を省略して被成形材の配置ズレという不具合を解消すると共に高効率に成形でき、かつ被成形材のトリム工程における未切断炭素繊維を少なくして、必要型締め力を小さくして完全型締し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)本発明の賦形成形方法で用いる成形原反材の概念図である。(b)図1(a)に示す成形原反材を構成する織物基材の概念図である。
図2】(a)本発明の第一の実施の形態の賦形成形型の説明図である。(b)図2(a)に示す賦形成形型の部分拡大図である。
図3図2(a)に示す賦形成形型の他の部分拡大図である。
図4図2に示す賦形成形型を用いて行われる本発明の第一の実施の形態の賦形成形方法の各工程を示し、図4(a)は材料投入予熱工程、図4(b)絞り工程、図4(c)はトリム工程、図4(d)は成形工程、図4(e)は離型工程を示す。
図5図2に示す賦形成形型のさらに他の説明図である。
図6】本発明の第二の実施の形態の賦形成形方法を示す説明図である。
図7】本発明の第二の実施の形態の賦形成形型の説明図である。
図8図7に示す賦形成形型の部分拡大図である。
図9図7に示す賦形成形型の他の説明図である。
図10】本発明の実施例で製造した製品の写真である。
図11】本発明の実施例で生じた残滓の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の賦形成形方法は、図1(a)に示す成形原反材1を用いて行う。図1(a)に示すように、成形原反材1は、複数本の強化繊維束2を含む織物基材3の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂材料4が付着してなる。
【0018】
織物基材3は、図1(b)に示すように互いに平行となるよう一方向に引き揃えられた複数本の強化繊維束2を直交する二方向に織成してなる二方向性織物である。二方向性織物は、強化繊維束2間の相対位置の変化による変形がしやすく立体形状に変形しやすいこと、少ない枚数で力学的に擬似等方性を有する積層成形材を得やすい利点がある。
強化繊維束2を用いることにより、最終製品である繊維強化樹脂成形品の力学特性を高いものとすることができる。
強化繊維束2は、炭素繊維束、黒鉛繊維束、ガラス繊維束、または、アラミド繊維束などを用いることができ、炭素繊維束であることが好ましい。炭素繊維束を用いることにより、最終製品である繊維強化樹脂成形品の力学特性を高いものとすることができる。
【0019】
織物基材3の表面に付着している樹脂材料4は、織物基材3の層間を接着する作用を得ることができる熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を主成分とする。熱可塑性樹脂を用いる場合には、用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、アクリル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリフェニレンサルファイドなどがある。
そのように特に樹脂材料4を熱可塑性樹脂を主成分とするものとすることによって成形原反材1を積層して、立体形状へと変形させた後に織物基材3の層間を接着させる場合の取り扱い性が向上し、生産性が向上する。なお、主成分とは樹脂材料4を構成する成分の中で、その割合が最も多い成分である。
【0020】
なお以上では、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂材料を用いる場合について用いられる熱可塑性樹脂の例を具体的に示したが本発明は、その実施の態様によっては熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂材料を用いることもできる。
【0021】
以下に本発明の第一の実施の形態の賦形成形型を図2図5を参照して詳述する。
図2図5に示す様に成形型9は上型10aと下型10bと、上型10aと下型10bとの間に配置されて被成形材である積層成形材5を載置する被成形材絞り押え板10cを有する。
上型10aはその内側面に型締方向の所定長さに設けた最低抜け勾配1度程度の側壁面10a−1と、その側壁面10a−1に連続する絞り用ガイドR10a−4と、その絞り用ガイドR10a−4に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる上型底面10a−5を有する。
【0022】
被成形材絞り押え板10cには下型10bが貫通可能な貫通孔部10c−1が設けられ、またその貫通孔部10c−1を囲む薄肉部10c−2と薄肉部10c−2を囲んで段差10c−3を介して連続する厚肉部10c−4を有する。
【0023】
下型10bは上型10aとの対向面10b−1から連続して型締方向と一致する方向若しくは製品形状に応じた所要の勾配を持って延びる側壁面10b−2と、その側壁面10b−2に連続して型締方向と交差する方向に延出する製品端面形成面10b−3とを有する。さらに下型10bは製品端面形成面10b−3に連続して型締方向と一致する方向に延びているバリ押し切り面10b−4を備える。係るバリ押し切り面10b−4は被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1に貫通可能な外径をもって形成される。
【0024】
以下に本発明の第一の実施の形態の賦形成形方法を図2図5を参照して詳述する。
(1)材料投入予熱工程(図4(a))
先ず材料投入予熱工程では上型10aと下型10bとにより形成される成形型9のキャビティ9aより広い積層材料5を、被成形材絞り押え板10cに配置し予熱する。積層材料5の外周縁部5aは被成形材絞り押え板10cの薄肉部10c−2の上面に載置され、収納される。
(2)絞り工程 (図4(b))
その後、上型10aと下型10bとを型合わせする絞り工程を行う。その上型10aと下型10bとが型合わせされる過程で、上型10aと下型10bとの型合わせ面から積層材料5に圧力が加わり、圧力が加えられた積層材料5は上型側壁面10a−1と下型側壁面10b−2によって絞られる。この積層材料5を上型10aと下型10bとによって絞る絞り工程によって積層材料5は製品端面形成面10b−3まで達し、所望の製品の端面が形成される。
(3)トリム工程(図4(c))
その後に、キャビティ9a外にはみ出た積層材料5のトリム工程として被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1内側に下型10bのバリ押し切り面10b−4を貫通させ、上型側壁面10a−1内側に嵌合させる。これによってキャビティ9a外の積層材料5であって、製品端面形成面10b−3から外にはみ出た積層材料5は切断される。
【0025】
(4)成形工程(図4(d))
次いで以上のトリム工程と連続して、トリム工程後にキャビティ9a内の積層材料5に対して加圧、加熱して複数本の強化繊維束2を含む織物基材3に付着している樹脂材料4を溶融して繊維間及び成形原反材1の層間を接着する圧縮成形工程を行う。
(5)離型工程(図4(e))
成形工程に引き続き離型工程を行い、製品5bの取り出しを行う。
【0026】
次に本発明の第二の実施の形態の賦形成形方法を図6を参照して詳述する。
本実施の形態では、他は上述の実施の形態と同様にして、圧縮成形工程を行う際に、被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1内側に下型10bのバリ押し切り面10b−4を貫通するトリム工程と連続して、圧縮成形工程を行う際に一旦、上型10aと下型10bとによる型締め力を落す、弛緩工程を行い、その後、再度型締めを再開し、再度型締力を増やす。これによって確実なトリムが行われる。この一旦型締め力を落す程度は例えば上型10aの上型底面10a−5と被成形材絞り押え板10cの厚肉部10c−4の上面との接触が維持される範囲とする。
この弛緩工程は図に示されるように、ポンプPによって加えられる油圧力を圧力SW1、圧力SW2で検知し、圧抜き弁によって圧抜きを行って圧力を下げることによって行うことができる。この様に型締圧を弛緩させると、積層材料5を構成する織物基材3の未剪断炭素繊維が剪断され、バリ押し切り面10b−4に付着する炭素繊維がバリとして流出し、完全型締が可能となる。
【0027】
以下に本発明の第二の実施の形態の賦形成形型を図7図9を参照して詳述する。
本実施の形態の賦形成形型では他は第一の実施の形態の賦形成形型と同様にして、上型10aの側壁面10a−1に連続する横押し切り面10a−2と、その横押し切り面10a−2と連続し型締方向の所定長さに設けた縦押し切り面10a−3とを有する点で異なる。
【0028】
その縦押し切り面10a−3に連続して絞り用ガイドR10a−4と、その絞り用ガイドR10a−4に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる上型底面10a−5が形成される。
【0029】
この第二の実施の形態の賦形成形型を用いる場合には、前述の本発明の第一、二の実施の形態の賦形成形方法と他は同様にして、キャビティ9a外にはみ出た積層材料5のトリム工程として被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1内側に下型10bのバリ押し切り面10b−4を貫通させ、さらに縦押し切り面10a−3内側に嵌合させ、横押し切り面10a−2に対し、下型10bの製品端面形成面10b−3の一部を当接させる。
これによってキャビティ9a外の積層材料5であって、製品端面形成面10b−3から外にはみ出た積層材料5が切断される。
【実施例1】
【0030】
二方向性織物基材3の一方の表面に、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を主成分とする樹脂材料4が表面に付着した100mm×100mmの大きさの正方形の成形原反材1を複数用意した。この各成形原反材1は正方形の辺の方向をそれぞれ0°、90°方向としたときに、繊維軸方向が概ね0°、90°方向となるものとした。
この各成形原反材1を、最上面の強化繊維織物のみ樹脂材料4が付着した面を下側にし、それ以外は樹脂材料4が付着した面を上側にして積層した積層成形材14を得た。
【0031】
その積層成形材5を熱盤上に配置し、上部より近赤外線放射装置によって近赤外線で積層成形材5を加熱した。遠赤外線温度センサ−で積層成形材5の温度を検知し、近赤外線放射装置による近赤外線の強度を調整し積層成形材5を昇温させ予熱した。
近赤外線の強度は、近赤外線放射装置への通電圧の連続降下で調整した。
【0032】
一方、製品部型10と、蓄熱盤とからなり、製品部型10に備えたヒ−タ−と蓄熱盤よりの熱伝導で成形型9の型温を昇温させて予熱した。次いでこの予熱された成形型9のキャビティ9aより広い積層材料5を、被成形材絞り押え板10cに配置した。
その状態で積層材料5を上型10aと下型10bとにより絞り、その後に、被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1内側に下型10bのバリ押し切り面10b−4を嵌合した。次いで以上のトリム工程と連続して、トリム工程後にキャビティ9a内の積層材料5に対して加圧、加熱して圧縮成形工程を行った。
その被成形材絞り押え板10cの貫通孔部10c−1内側に下型10bのバリ押し切り面10b−4を嵌合するトリム工程と連続して、圧縮成形工程を行う際に一旦型締め力を落し再度型締めを再開した。
得られた成型品を図10に、積層材料5からトリムされた残滓を図11に示す。
【符号の説明】
【0033】
1・・・成形原反材、2・・・強化繊維束、3・・・織物基材、4・・・樹脂材料、5・・・積層成形材、9・・・成形型、9a・・・キャビティ、10・・・製品部型、10a・・・上型、10b・・・下型、10c・・・被成形材絞り押え板、10a−1・・・側壁面、10a−2・・・横押し切り面、10a−3・・・縦押し切り面、10b−4・・・バリ押し切り面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020年10月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
賦形をする上型と下型とからなる成形型と、成形型を加熱、型締し加圧する手段と、成形型を固化温度に冷却して型を開き離型する手段と、前記上型と下型との間に配置されて前記下型が貫通可能な貫通孔部を有する被成形材絞り押え板とを有し、前記上型は成形部内側面に型締方向と交差する方向に延出する横押し切り面と、その横押し切り面と連続して型締方向に所定の押し切り勾配で延びる縦押し切り面とを有することを特徴とする賦形成形型。
【請求項2】
前記縦押し切り面に連続して型締方向と交差する方向に外側方向に延びる被成形材絞り押え面を有する請求項1に記載の賦形成形型。
【請求項3】
前記被成形材絞り押え板の前記貫通孔部を形成する側面と前記縦押し切り面とに前記下型が嵌合可能にされた請求項1に記載の賦形成形型。
【請求項4】
前記下型は上型との対向面から連続して型締方向と一致する方向に延びる側壁面と、その側壁面に連続して型締方向と交差する方向に延出する製品端面形成面とを有し、前記製品端面形成面に連続して型締方向と一致する方向に延びるバリ押し切り面を形成してなる請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の賦形成形型。
【請求項5】
前記被成形材絞り押え板は前記貫通孔部を囲む薄肉部と前記薄肉部を囲む厚肉部とを有する請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の賦形成形型。