【解決手段】移動体(探査測量装置10)は、空中飛行および水上航行が可能である。本体50と、本体50の下方に取り付けられ水上に浮遊するためのフロート58と、本体50の周辺に取り付けられ空中飛行および水上航行のための推力を発生する推力源(回転翼40)と、を含む。推力源(回転翼40)は、本体50の前後方向の一方側に配置される一方側回転翼(後方回転翼40b)を含み、一方側回転翼(後方回転翼40b)は、本体50の左右幅方向に伸びる軸を中心として回動し、その回転翼が上下方向を向く横方向と、前後方向を向く縦方向に設定可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。なお、以下においては、実施形態に係る、空中飛行および水上航行が可能な移動体を、陸域(水際)および水底等の探査測量を行う探査測量装置10として用いた例について説明する。
【0024】
「全体動作」
図1は、実施形態に係る移動体を用いた探査測量の全体動作を示す模式図である。
図1における左側は平地となっているが、右に行くにしたがって急に高くなり、その後崖のようにして下り、その右側が湖沼のような水域になっており、水域に接近することが容易でない。本実施形態では、空中ルートの飛行および水上ルートの航行が可能な移動体を用いて、水域およびその周辺の陸地についての探査測量を行う。すなわち、陸上の地表の3次元位置(陸上の地形)および水域の地表(水底)の3次元位置(水底の形状)を連続的、シームレスに計測するとともに、水のサンプリング、水量測定などを行う。
【0025】
まず、現地に到着した場合には、基地を設けここに移動体としての探査測量装置10を配置する。この基地の位置は、予め決定した位置とするのがよいが、現地にて決定してもよい。現地で決定した場合には、探査測量装置10に基地位置を登録する。
【0026】
探査測量装置10は、空中ルート及び水上ルートを含む移動ルートを予め記憶している。そこで、探査測量装置10に探査測量の開始を指示することで、自動的に空中ルートを飛行して、水域の着水点に着水し、その後、自動的に水上ルートを航行し、離水点から空中に飛び上がり、基地に戻ってくる。このような移動は探査測量装置10において自律的に行われる。
【0027】
また、空中ルート及び水上ルートの移動時に、探査測量装置10に搭載している各種の測定器を用いて、陸上の地表の3次元位置及び水域の水底の3次元位置の計測が行われるとともに、水のサンプリングや水量、流向、流速等の測定が適宜行われる。また、放射性物質や、魚群の計測なども行うことができる。
【0028】
このようにして、移動を終わって探査測量装置10が基地に帰って来た時点でデータおよびサンプルの収集は終了する。
【0029】
「探査測量装置の機能構成」
図2は、実施形態に係る移動体の一例である探査測量装置10の構成を示すブロック図である。通信装置20は、基地に設けられた管理端末と無線通信して、各種情報を送受信する。通信装置20には、制御装置22が接続されており、通信装置20において送受信する情報は、制御装置22によって処理される。制御装置22は、探査測量装置10の全体動作を制御する。
【0030】
制御装置22には、GNSS装置24、ジャイロ26、カメラ28が接続されている。GNSS装置24及びジャイロ26は、探査測量装置10の自位置を検出する位置検出器として機能するものである。制御装置22は、GNSS装置24により検出した3次元位置、ジャイロ26において得た方位などを含む自位置を用いて、探査測量装置10の移動を制御する。また、制御装置22は、カメラ28において得た映像から自位置を修正することもできる。また、カメラ28で得た映像は地表位置の検出にも利用される。なお、この例では、1つのカメラ28により画像を得たが、カメラを複数台設けてもよいし、レーザ光を用いて地表を検出してもよい。カメラを複数台設けた場合には、画角の異なる映像を利用しての測量を行うことが好適である。
【0031】
また、探査測量装置10による探査測量は、人や鳥が少ない、夜間に行うことが好ましい。この場合、カメラ28などに赤外線カメラを利用するとよい。
【0032】
さらに、制御装置22には、入力装置30が接続されている。この入力装置30は、各種の設定時などにおいて、データ、指令を入力するものでタッチパネルや、スイッチで構成される。入力装置30として通信ラインとのコネクタを設け、外部のコンピュータをここに接続して各種の入力を行うとよい。また、通信ラインは、無線でもよい。
【0033】
また、制御装置22には、ライト、スピーカ、ディスプレイなどを含む出力装置32が接続されており、必要な出力を行う。なお出力装置32として通信ラインとのコネクタを設け、外部のコンピュータをここに接続して各種の出力を行うとよい。
【0034】
また、探査測量装置10には、バッテリ34が搭載されており、探査測量装置10の各種部材に電力を供給する。また、バッテリ34には、駆動モータ36(36a,36b)、姿勢制御部38が接続されており、これらがバッテリ34の電力によって駆動される。駆動モータ36には、回転翼40(40a,40b)が接続されており、回転翼40が駆動モータ36によって回転される。駆動モータ36および回転翼40が推力を発生する推力源として機能する。後述するように、回転翼40は3つ設けられており、別々の駆動モータ36によって独立して駆動される。駆動モータ36による回転数などの駆動は制御装置22によって制御される。また、姿勢制御部38もモータで構成され、回転翼40の向きが調整される。3つの回転翼40について、それぞれ独立してその向きを調整してもよい。姿勢制御部38の駆動は制御装置22によって制御される。
【0035】
制御装置22には、測定器42が接続されており、各種測定を行う。測定器42は、水域の水底位置を検出する水底検出器を含む。水底検出器の構成については後述する。また、測定器42は、水質(濁度、pHなど)、水量、流向、流速などを計測する検出器を含んでいてもよい。測定器42による測定結果は制御装置22内の記憶部22aに記憶される。なお、空中ルート及び水上ルート等も記憶部22aに記憶される。また、測定結果を通信装置20から外部(例えば、基地に設けられた管理端末)に送信してもよい。また、サンプリング部44を有しており、このサンプリング部44による試料(サンプル)のサンプリングも制御装置22によって制御される。サンプリング部44については、水域内の水をサンプリングする採水器、水底の底質をサンプリングする底質採取器等が挙げられる。なお、底質採取器については、特許文献2の構成などが採用できる。採取したサンプルについては、探査項目に挙げられている水質の分析などに利用される。
【0036】
「探査測量装置の外観構成」
図3〜
図5は、探査測量装置10についての、3つの回転翼をもつ一例の外観を模式的に示す図であり、
図3は正面図、
図4は平面図、
図5は右側面図である。
【0037】
図示の例において、本体50は直方体状であり、内部に制御装置22などの各種部材が収容されている。本体50の形状は円筒型などでもよく、複数に分離されていてもよい。本体50の前方にはカメラ28が設けられており、前方および下方の映像を撮影する。なお、後方や上方の映像も取得してもよい。なお、探査測量装置10は、全方位に向けて移動可能であり、任意の方向を前方と定義してもよいが、この例ではフロート58の長手方向を前後方向とする。また、この例では、カメラ28の向いている方向を前方、後方回転翼40bが位置する方向を後方としているが、カメラ28は全方位を撮影できるようにしてもよく、後方回転翼40bが位置する方向を前進方向と定義してもよい。従って、後方回転翼40bを一方側回転翼とも呼ぶ。
【0038】
また、本体50の下方には、幅方向に伸びる台座56が設けられ、この下方に3つのフロート58が取り付けられている。なお、この3つのフロート58のうち、中央のフロート58は、他のフロート58と比べて前後方向に長い。この3つのフロート58の浮力によって、探査測量装置10が全体として水上に浮遊する。
【0039】
フロート58は、平面視では中央部の幅が大きく前方および後方に向けて先細り状(テーパ状)の前後方向で対称の疑似流線形であり、正面視では上面が直線で前端は下方に向けて後方に退避し、後端は下方に向けて前方に退避している疑似台形状である。言い換えれば、前方側と後方側が対称なボートのような形状をしており、従って水上において前方、後方のいずれにも同様の移動が可能となっている。
【0040】
また、フロート58には撥水加工が施されていることが望ましい。通常の塗装だけでなく、別途撥水処理することが好ましい。また、探査測量を行う前に撥水剤を所要部分にスプレーしたり、塗布することも好適である。さらに、フロート58だけでなく、回転翼40についても撥水処理するとよい。これにより、探査測量装置10の水上航行性能が向上する。また、着水及び離水時等に、フロート58、回転翼40などに水滴が付着し難くなるため、飛行時に探査測量装置が受ける抵抗が低減される。また、これらにより、バッテリ34の長寿命化が図られる。
【0041】
本体50の幅方向の左右両側には、腕52が伸びており、この腕52の先端部の上側には、それぞれ駆動モータ36aを介して、左右の前方回転翼40aが取り付けられている。また、本体50には、本体50の後方に伸びる腕54が設けられ、この腕54の先端部の上側には、駆動モータ36bを介して、後方回転翼40bが一方側回転翼として設けられている。ここで、2つの前方回転翼40aは、その回転軸が本体50の上下方向を向く横方向にある状態(前方回転翼40aの回転面が本体の横断面の方向(水平方向)に向いている状態)で、本体50の上方向(または下方向)への推力を出力する。また、後方回転翼40bは、その回転軸が、本体50の上下方向を向く横方向に設定された状態(後方回転翼40bの回転面が水平方向にある状態(回転翼が上下方向に向いている状態))で、上方向(または下方向)の推力を出力する。
【0042】
例えば、本体50の上下方向を向く横方向に設定された状態の前方および後方回転翼40a,40bを回転させれば、探査測量装置10は、水平状態で上昇・ホバリングすることができる。また、前方回転翼40aと、後方回転翼40bの推力差により
図5に黒丸で示すピッチ軸回りに、探査測量装置10が傾斜し、その状態での前後方向の推力によって前後方向に飛行する。なお、回転翼40の数は3つに限られず、4つ以上でもよい。また、回転翼40の大きさを個別に変更してもよい。
図3〜
図5の例では、後方回転翼40bを前方回転翼40aに比べて径の小さなものを採用している。後述するように、後方回転翼40bについてはその向きを変更するための回動機構が設けられる。後方回転翼40bを比較的小型にすることによって、向き変更のための機構を小型化することできる。
【0043】
「探査測量装置の傾き調整」
ここで、
図3〜
図5には、黒丸で探査測量装置10の重心を示してある。そして、
図3における重心を通る前後方向の軸が装置のローリングについてのロール軸、
図4における重心を通る上下方向の軸が装置のヨーイングについてのヨー軸、
図5における重心を通る左右幅方向の軸が装置のピッチングについてのピッチ軸となる。3つの回転翼40の発生する推力の各軸回りの推力差に応じて各軸回りの回転力を発生して探査測量装置10のピッチング、ローリング、ヨーイングを制御して、探査測量装置10の姿勢を制御することができる。また、飛行の際の姿勢制御と同じ機構を用いて、水上航行の際に後方回転翼40bの向きを360度変更することができ、これによって進行方向を制御することができる。
【0044】
図6には、後方回転翼40bについての幅方向の向きを変更する機構について示してある。このように、駆動モータ36bの下に、本体50の前後方向の軸38aが姿勢制御部38として設けられている。そして、駆動モータ36bを、前後方向の軸38aを中心に揺動させることで、後方回転翼40bは、本体50の左右幅方向(横方向)に対する傾きを調整することができる。後方回転翼40bの向きを変更することで、
図4に示すヨー軸回りの推力が発生する。従って、後方回転翼40bの前後方向軸38a回りの回動によって、ヨー軸回りのモーメントが発生し、ヨーイングを制御することができる。なお、
図6には、姿勢制御部38として回動可能な軸38aのみを示したが、軸38aを、ギアなどを介しモータで回動させることで、任意の傾きに制御することができる。なお、前方回転翼40aについても同様に横方向の傾きを変更できるようにしてもよい。
【0045】
図7には、後方回転翼40bの左右幅方向軸回りの回動について示してある。
図7に示すように、後方回転翼40bについては、腕54の中間部分に本体50の左右幅方向の軸38bが設けられている。そして、この軸38bを中心に、腕54の後方側を回動させることで、後方回転翼40bは、後方位置から前上方位置にまで旋回できる。これにより、後方回転翼40b(回転軸)が、本体50の上下方向を向く横方向と、本体50の前後方向を向く縦方向の両方に設定することができる。なお、
図7においては、後方回転翼40bが、後方位置において横方向、前上方位置において縦方向となるようにしたが、前上方位置において横方向、後方位置において縦方向としてもよい。
【0046】
ここで、探査測量装置10の空中における姿勢は、各回転翼40による探査測量装置10の重心に対するモーメントの和によって決定される。すなわち、3つの回転翼40の推力の和によるピッチ軸、ロール軸、ヨー軸回りのモーメントの和により探査測量装置10の姿勢が決定される。そして、この時の探査測量装置10における水平方向の並進推力の和、および鉛直方向の並進推力の和によって探査測量装置10の進行方向、速度が決定される。なお、実際には、空気の流れ(風)、雨などの気象条件の影響を受け、計算通りの姿勢、進行方向、速度が得られる訳ではない。このため、探査測量装置10の移動状態からフィードバック制御して、予定の経路の飛行を達成する。また、衝突回避なども自律的に行われる。
【0047】
また、探査測量装置10が水上を航行する際には、後方回転翼40bにより任意の方向に航行可能である。すなわち、探査測量装置10は、その重力と、フロート58の浮力が釣り合った位置に保持され、前方回転翼40aは、基本的に上方への推力を得るものであり、水上航行において推力を発生する必要はない。そこで、探査測量装置10が水上を航行する際には、軸38bにより、後方回転翼40bをその回転軸が本体50の前後方向を向く縦方向(回転翼が前後方向を向き前後方向の推力を出力する方向)に設定し、後方回転翼40bを回転させることで、探査測量装置10を前後方向に進行させることができる。また、軸38aによって後方回転翼40bの傾きを調整することで、探査測量装置10を前後方向に進行しながら、進行方位を制御することができる。このように、本実施形態では、後方回転翼40b(回転軸)が前後方向を向くように設定した状態(縦方向)で、軸38a回りに回動させることによって、進行方向を制御することができる。すなわち、空中を飛行する際にヨーイングを制御するために用いる後方回転翼40bの軸38a回りの回動機構と同一の機構を用いて、水上航行における進行方向(ヨーイング)を制御することができる。
【0048】
なお、縦方向において、後方回転翼40bを水面に垂直ではなく、若干傾斜させることで、探査測量装置10を前傾させたり、後傾させたりすることができる。また、前方回転翼40aにより上向きの推力を得ることで、全体を浮かせて、航行抵抗を減少したり、左右の前方回転翼40aの推力を調整することで、探査測量装置10の左右方向の傾きを調整することもできる。
【0049】
なお、探査測量装置10が水上を航行する際には、2つの前方回転翼40aを駆動する必要はない。しかし、前方回転翼40aにより、下方向の推力を付与すれば、探査測量装置は水上を移動しにくくなり、一方、上方向の推力を付与すれば、探査測量装置は水上を移動しやすくなる。従って、適宜前方回転翼40aを駆動するとよい。
【0050】
「測定器」
図10は、水底探査測量に用いる水底検出器としての測定器42の一例の構成を示す図である。測定器42の下端は、水中に位置するようにフロート58に対し位置決めされる。ここで、測定器42の水底位置の検出は、例えば超音波式や、レーザ式が採用できる。超音波式では、水中に配置した発振器からの超音波を下方に向けて送信し、水底からの反射波を受信することで水深(水底位置)を計測することができる。また、レーザ式では、水中の発光部からレーザを水底に向けて照射して水底による反射波を受信することで水深を計測することができる。超音波式の方が比較的水深が深い場合に適しており、探査範囲が広い。一方、レーザ式では探査範囲が比較的狭いが、水深が浅くても精度の良い測定が行える。また、放射線量の測定器を設けることも好適である。さらに、放射線式の測定器なども適宜採用することができる。
【0051】
そして、探査範囲内には、基準スケール60が配置される。すなわち、測定器42、フロート58に対し、所定位置に配置された基準スケール60の水深は予めわかっており、従ってこの基準スケール60の測定結果を用いて、測定器42により測定された水深をリアルタイムまたは随時校正することが可能となる。河川等の水域の探査測量では、水の濁り具合や、流速等によって、測定器42によって測定される水深が異なる。基準スケール60を設け、リアルタイムまたは任意の時に誤差を補正することによって、常に正しい測量を行うことが可能となる。なお、基準スケール60の測定結果による校正だけでなく、レーザ光や、超音波などの出力を変更してもよい。
【0052】
なお、この例においては、基準スケール60は、フロート58に取り付けられて、上方位置と、探査範囲内の位置に移動自在となっている。基準スケール60は、校正のときのみに下方位置とし、航行に邪魔にならない上方位置に退避するとよい。
【0053】
また、測定器42は、中央のフロート58を貫通するように配置し、上下動自在にするとよい。飛行中は測定器42をフロート58の底面と同一または底面より上方に位置させ、水底探査の際に水中に突出させるとよい。
【0054】
また、測定器42は、着脱式として、探査測量目的に応じて、適宜取り換えたり、保守点検の際に取り外したりしてもよい。
【0055】
「全体制御」
図8に示すように、探査測量装置10は、管理端末12に接続可能である。管理端末12には、地図情報や、調査についての詳細情報などが入力され、管理端末12が探査計画を策定する。そして、探査計画に基づく、探査測量装置10の移動、測量についての動作計画を策定し、これを探査測量装置10に供給する。このように、探査計画については、その大枠は、現地に行く前に決定される。従って、現地においての作業が大幅に低減される。
【0056】
探査測量装置10は、供給された計画を記憶し、これに基づいて自律的に飛行及び航行しながら測量を行う。この際、GNSS装置24などの自位置検出器の出力を用いて、飛行及び航行を制御するとともに、映像などの情報を逐次送信する。なお、GNSS装置24としては、GPS装置などが利用できる。管理端末12は無線でも探査測量装置10と接続されており、随時供給される情報を受信し、必要であれば計画を変更し、これを探査測量装置10に送信し、探査測量装置10における計画を変更することもできる。なお、管理端末12は、1つでなく、各所に配置される複数であってもよい。
【0057】
図9は、探査測量についての手順を示すフローチャートである。まず、探査計画を策定する(S11)。これは、管理端末12において、入力されてくる探査測量計画、地図情報に基づき、どのような探査を実行するかを決定する。空中の飛行経路(空中ルート)、水上における航行経路(水上ルート)などを決定するとともに、カメラ28による映像取得、測定器42による測定、サンプリング部44によるサンプリングなどについても計画に含まれる。
【0058】
次に、飛行航行可能な探査測量装置10および管理端末12を持参して探索の現場に赴き、基地を設定する(S12)。基地には、探査測量装置10の離発着場所を設置するとともに、管理端末12を探査測量装置10と接続し各種の設定、確認を行う。そして、探査測量装置10を離発着場所に設置して、スタートの指令を発することで探査測量装置10の移動が開始される(S13)。
【0059】
探査測量装置10は、GNSS装置24などの自位置検出器により検出される自位置を参照しながら、記憶している空中ルートを自律的に飛行し、その空中ルートの飛行の際に、カメラ28によって地上の画像を撮影することで空中からの探査測量を行う(S14)。すなわち、この例では、カメラ28が地表検出器として機能する。撮影した映像は、内部において記憶するとともに、通信機能を利用して管理端末12に送信する。また、必要に応じて、レーザなどの測定機によって、地表の位置を測定することもできる。また、カメラ28やレーザにより、所定水深までの水底位置の測定もできるため、このような水底の位置測定も行う。
【0060】
そして、探査測量装置10は、記憶している空中ルートの飛行を終えて着水する(S15)。
図11に、探査測量装置10が航行する水上ルートの一例を示す。着水した探査測量装置10は、GNSS装置24などにより検出される自位置を参照し、着水地点から予め記憶している探査開始位置に水上を移動する(S16)。探査測量装置10は、探査開始位置に至ったかを判定し(S17)、探査開始位置に至った場合には、GNSS装置24などの自位置検出器により検出される自位置を参照しながら、記憶している水上ルートを自律的に航行し、水上からの探査測量を開始する(S18)。例えば、探査測量装置10を水上で移動しながら、自位置を参照して、測定器42によって所定水深より深い水底位置を検出、記憶する。また、自位置、水底位置などの検出結果を逐次管理端末12に送信してもよい。
【0061】
探査測量装置10は、予め定められた探査終了位置に至ったかを判定し(S19)、探査終了位置に至った場合には、離水し、空中を飛行して基地に帰還する(S20)。
図11では、探査終了位置と離水地点は同一であるが、異なっていてもよい。なお、帰還の際に、空中からの探査測量を行ってもよい。
【0062】
ここで、
図11に示すように、探査は、基本的に水流に対し直角な方向に移動することによって行うとよい。なお、図においては、水流に対し直角な方向に移動するように記載したが、水底のデータがとれない領域が生じない範囲で水流に従って、斜めに走行してもよい。また、ジグザグの経路にしてもよい。
【0063】
探査測量装置10は、自位置を検出し、航行ルートと比較してフィードバック制御して航行ルート通りの航行を行う。しかし、河川などは水流もあり、また風や雨などの影響もある。このため、必ずしも計画通りの航行が行えない場合もある。その場合、例えば、ある範囲について、試験航行を行い、自律航行における位置誤差におけるフィードバックゲインを方位に応じて変更するなどの調整を行い、その後探査測量の航行を行うことができる。
【0064】
また、水の流れに応じて、一方向の航行は必要な推力が小さく、反対方向の航行は必要な推力が大きい場合もある。このような場合には、
図12に示すように、一部飛行してもよい。すなわち、下流に向かって航行し、折り返し点に来た場合は、ここから上流に飛行し、上流側に着水し、前回の開始点から幅方向に所定距離離れた開始点から下流に向かって航行する。これを繰り返すことによって、下流側の航行のみにより、所定領域の探査測量を行うことができる。
【0065】
このようにして、探査測量を終了した場合には、得られたデータを管理端末12に供給し、管理端末12によって各種処理を行うことで、測定対象となった場所(対象領域)の3次元の地形データ(すなわち、陸上の地形及び水底の形状のデータ)が得られ、その表示などの出力も可能となる。このように、リアルタイムで解析を行うことで、探査測量を適宜適切なものに変更ができ、また追加の探査測量などを行うこともできる。なお、データ処理は、必ずしも現場で行う必要はなく、別のコンピュータで行ってもよい。
【0066】
このように、本実施形態に係る探査測量装置10は、空中の飛行および水上の航行が行え、また、空中からの探査測量と水上からの探査測量の両方を行うことができる。したがって、測定対象となった水域及びその周辺の陸地についての探査測量を効果的に行うことができ、従来では困難であった水際などの地形も容易に得ることができる。また、探査測量装置10は、予め記憶している空中ルートおよび水上ルートの移動ルートに従って、自律的に移動することができる。すなわち、自位置を確認しながら、予め決定された経路に沿った移動ができる。従って、無線操縦などに比べ、確実な移動が行える。なお、無線操縦機能も備え、適宜無線操縦を行ってもよい。水域及びその周辺の陸地についての探査測量を効果的に行うことができる。
【0067】
探査測量装置10は自律航行するので、夜間でも飛行、航行に問題はない。なお、カメラ28に赤外線カメラなどを用いることで、夜間の撮影も可能となる。また、漂流物との衝突回避なども自律的に行われる。
【0068】
このように、本実施形態に係る探査測量方法は、探査測量装置10を使用して行われる。
【0069】
<学習>
本実施形態に係る探査測量装置10は、予め定められた経路を記憶しており、検出した自位置に基づいて空中飛行および水上航行を自律的に行う。また、必要な場合には、試験飛行および航行を行い、そのデータに基づいて、探査測量の際の飛行および航行を制御する。また、探査測量装置10の航行の際に気象条件などを含む各種の状況と、航行制御の関係を示すデータを蓄積することができる。従って、蓄積されたデータを解析することによって、その後の飛行および航行をより精度の高いものにすることができる。これは、1回の飛行および航行の際のデータを解析しその後の航行に役立ててもよいし、1つの探査測定対象についての航行の際のデータをその探査測定対象の次の探査測量の際に利用してもよいし、さらに探査測定対象によらず蓄積データから解析した事項を次の航行の際に役立ててもよい。例えば、1回の飛行および航行の際の前半の航行の際には十分な航行制御が行えなかったが後半は前半のデータを利用して適切な飛行および航行が行える場合も考えられる。このような場合には、後半の飛行および航行のみをやり直すこともできる。
【0070】
<ジャイロの校正>
図13には、ジャイロ26の設置例を示してある。この構成において、ジャイロ26は、3次元の移動が可能となる。すなわち、探査測量装置10の本体側の部材、例えば本体50には、第1モータM1が固定される。この第1モータM1の回転軸には、リンクL1が固定されており、第1モータM1の回転によって、ジャイロ26が上下方向の軸を中心に回転する。リンクL1には、リンクL2が固定されており、このリンクL2は第2モータM2によって、ジャイロ26の左右方向の軸を中心として回転する。リンクL2には、リンクL3が固定されている。このリンクL3は、ジャイロ26の前後方向の軸であり、この軸が第3モータM3によって、回転する。このように、この例によれば、ジャイロ26を互いに直交する3軸を中心に独立して回転でき、これによってジャイロ26に3次元の動きを付与できる。
【0071】
本実施形態では、探査測量の開始前に、ジャイロ26を予め定められた3次元軌跡に従って移動させ、その状態で得られた出力が制御装置22に供給される。制御装置22は、このデータに基づいて、ジャイロ26を校正して、正しい出力が得られるようにする。
【0072】
従来、ジャイロ26の校正は、ジャイロ26が取り付けられた装置全体を人が持って3次元移動することによって行われていた。本実施形態の探査測量装置10は、フロート58などを有し、比較的大型で重量も大きく、校正作業が大変な作業になる。本実施形態では、この校正作業を自動化できる。
【0073】
<編隊>
探査測量装置10を複数用意し、編隊を構成することも好適である。編隊飛行しながら、測量を行うことで、同一時点で得らえた複数の映像から地表の3次元位置をより容易にまた正確に計測することができる。また、編隊で水上を航行することで、同一時点での測量結果が得られ、水底の測量も正確になる。さらに、一部が空中、一部が水上に位置することで、複数の探査測量装置10の位置が正確に特定できる。例えば、空中に位置する探査測量装置10が水上の探査測量装置10の位置を特定して、水上の探査測量装置10の移動や探査を制御してもよい。探査測量装置10と同様に飛行はできるが、水上航行しないものを用意し、これを探査測量装置10の各種制御用とすることもできる。この場合、装備を省略することで、長時間の飛行が可能となるなどのメリットが得られる。
【0074】
「他の構成例」
<後方回転翼の構成>
図14は、後方回転翼40bの左右幅方向軸回りの回動の他の構成例について示してあり、(a)は後方回転翼40bが上下方向を向いている空中の状態を示し、(b)は後方回転翼40bが前後方向を向いている水上の状態を示す。この例では、
図7の例に比べ、後方回転翼40bの回動の際の旋回半径が小さくなっている。すなわち、中央のフロート58の後部に上方に向けて起立する起立部70が設けられ、この起立部70内に後方回転翼40bを回転させる駆動モータ36bが回動可能に支持されている。
【0075】
図15は、起立部70の斜視図であり、(a)は斜め後方、(b)はほぼ後方から見た図である。また
図16は起立部70を三方から見た図であり、(a)は前方、(b)は側方、(c)は上方(駆動モータ36bを便宜的に背面側に記載してある)から見た図である。なお、起立部70は、その下端がフロート58に取り付けられ、駆動モータ36bの軸は前方に突出しその先端に回転翼40bが取り付けられ、また
図6に示すように回転翼40bは、上下方向を向いている際には前後方向軸回りに、前後方向に向いている際には上下方向軸回りに回動するが、これらの構成については図示を省略している。
【0076】
図15,16は、回転翼40bを前後方向と上下方向に回動するための機構を示してある。駆動モータ36bは円筒状であり、回転軸72が前方側に伸び、先端に回転翼40bが取り付けられる。図においては、回転軸72の基部のみ示してある。駆動モータ36bの中間部分は、下方から伸びる首部74によって支持されている。首部74は、左右方向に伸びる軸38bに回動自在に支持されており、首部74の駆動モータ36bと反対側にはカウンターウェイト76が設けられている。首部74、カウンターウェイト76の左右方向両側には一対の起立板部78が設けられる。この起立板部78の下端がフロート58に固定される。
【0077】
一対の起立板部78のカウンターウェイト76の下方には、駆動モータ80が配置されている。駆動モータ80は上方に向けた回転軸を有し先端に歯付プーリー82が取り付けられている。歯付プーリー82には、歯付ベルトが掛け回され、この歯付ベルトが一対の起立板部78の外側に位置する一対の歯付プーリー84にかけ回されている。
【0078】
一対の歯付プーリー84には上方に向けて伸びる一対の回転軸86がそれぞれ取り付けられており、この一対の回転軸86の上端に一対のウォームギア88がそれぞれ取り付けられている。ウォームギア88は、軸38bの両端に固定されたウォームホイール90が噛み合わされている。
【0079】
従って、駆動モータ80を回転することで一対の歯付プーリー84と一対の回転軸86が回転し、一対のウォームギア88が回転してウォームホイール90が回転することで、軸38bが回動して、駆動モータ36b、回転翼40bが回動する。駆動モータ80には、産業用サーボモータを利用して回動量を制御する。また、ウォームギア88は一条であり、ウォームギア88の回転によりウォームホイール90が回転するが、ウォームホイール90の回転によりウォームギア88が回転することはない。従って、これが回転翼40aの回動についてのロック機構として機能する。また、ウォームギア88、ウォームホイール90を一対設けることでバックラッシュをなくして回転翼40bの回動、ロックについての遊びをなくすことができる。
【0080】
このような後方回転翼40bを用いることで、後方回転翼40bの回動の際のモーメントを抑制することができる。
【0081】
なお、カウンターウェイト76の内部にモータを設けこのモータの回転軸を、首部74を貫通させて駆動モータ36bに接続し、首部74の上端で駆動モータ36bを回動自在としてもよい。これによって、駆動モータ36bを、首部74を起点として左右方向に回動させることができる。
【0082】
<雪上などでの利用>
また、本出願において説明した移動体は、水上に代えて、雪上においても利用することができる。この場合、雪の状態などを測定してもよいが、測定はしなくてもよい。フロートを有するため、これによって雪上に確実に着陸することができ、また雪上の移動も可能となる。
【0083】
さらに、移動体において、携帯電話回線を利用した通信機能、特に携帯電話回線における中継機能を備えていれば、遭難者などと警察などとの電話通信をサポートすることもできる。山中の沢など水域に着陸することもできるので、雪のない場合にも利用可能である。
【0084】
特に、着陸していれば、基本的に動力を使用しなくてよいため、電池の消耗を抑えることができる。また、必要に応じて上空へ浮揚すれば、電波の送受信を確実に行うことができる。