【実施例】
【0032】
具体的な数値として、L=556mm、m=75mmとしたときのd2及びd3についていくつかの例を挙げることができる。式4で求めたSkの計算結果を表1に示す(単位:mm)。併せて、直立の状態からの転倒の有無と底面を接触させた状態からの転倒の有無を表1に示す。
また、このSkをxy平面上に点Pとしてプロットした例を
図8(b)に示す。このxy平面上では、x軸に沿った動きSd2と、y軸に沿った動きSd3を各要素としてSk(Sd2,Sd3)が示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
図8(a)の接地面Acとの交点Poは、
図8(b)のxy平面で考えると原点Oと同一になる。同図の斜線で表わした(±m/2、±m/2)の領域が、接触面Acになり、接触面Acは、一辺の大きさがmの原点Oを中心とする正方形になる。この領域内で重心Gkを通る鉛直線VLがxy平面と交わる交点を持てば静的には安定と考えられ、この領域外で交点を持つ場合は、静的な安定条件は満たされず、転倒することになる。前述のSd2とSd3を用いて表すと、包装容器Aを軸方向に立てようとしたときにその重心を通る鉛直線GLが底面の接触面から外れる条件は、
Sd2 < -L/2・d2/mまたはSd2 > L/2・d2/m (式5)
Sd3 < -L/2・d3/mまたはSd3 > L/2・d2/m (式6)
となる。Sd2またはSd3について、xy平面上でいずれかの条件が成立すればよい。d2>0、d3>0になる範囲で考えれば、m>0、L>0であるから、
Sd2 > L/2・d2/m または Sd3 > L/2・d2/m が成立すれば接触面から外れることになる。
表1と
図8が示すように、これらのサンプルでは、点P1〜3のxy平面上の位置は、サンプル1(9-16-25型)の交点P1では大きく接地面Acを外れることが分かり、また、サンプル2(6-12-18型)の交点P2では、サンプル1(9-16-25型)ほどではないが、接地面Acを外れることが分かる。サンプル3(9-9-18型)の交点P3では、接地面Acの内部となる。
これらについて、なるべく直立させた状態の場合と、底面を接触させた状態の場合の転倒の有無を調べたところ、サンプル1、2ではいずれの状態も転倒した。サンプル3では直立状態からは転倒したが、底面を接触した状態からは転倒しなかった。このように、動的に不安定な状態であると、静的には安定する場合でも転倒することが分かった。
なお、倒れ易さは接触面Acから遠いほど大きいと考えられるが、同じ大きさのSkであっても、xy平面上の位置によって、接触面Acとの位置関係が変わることがわかる。一例として、
図8(b)に、ほぼP2の大きさのSkの原点Oからの等距離の線(原点Oを中心とする4分の1の円)を示すが、接触面Acとの距離は、Sd2及びSd3の値により異なっている。
【0035】
(板材)
図9は、この包装容器Aを形成するための紙製板材aを示す。
図10は、その端部付近の拡大図である。板材は紙に限定するものではないが、紙製であることが好ましい。折曲げと貼付けが容易だからである。
この紙製板材aは、各折線bで等間隔幅をもって、幅方向に連設された左側面板14,背面板15,右側面板16,正面板17を有すると共に、幅方向一端部に位置する正面板17の端縁に、折線bを介して貼合せのための糊代板19が連設されている。そして、この糊代板19を、幅方向他端部に位置する左側面板14の端縁に貼着けることで、前記した四角筒状の胴部1を組み立てることができる。
なお、各板の長さ方向について紙面の上に向かって、上、前、または天といい、下に向かって下、後ろ、または底ということがあり、幅方向について紙面の左(右)に向かって左(右)ということがある。
【0036】
(天面側端部)
左側面板14は、その長さ方向前端縁に、折線14c1を備え、この折線14c1を介して、蓋フラップ14uが連設されている。
また、右側面板16は、その長さ方向前端縁に、折線16c1を備え、この折線16c1を介して、蓋フラップ16uが連設されている。
【0037】
背面板15は、その長さ方向前端縁に、折線15c1を備え、この折線15c1を介して、蓋面である蓋15uが連設されている。
また、正面板17は、その長さ方向前端縁17i1に、折線17c1を備え、この折線17c1を介して、係止片17uが連設されている。
【0038】
このようにして組立てた天面側端部2の天面側蓋部4を開けた状態を
図4に示す。天面側蓋部4は、閉鎖した状態では4つの頂点を含むひとつの平面による切断面上にある。
【0039】
蓋フラップ14u、16uは、図示するように平面視長方形状でその一角が四角形状に凹んでいる。これにより、内側に折った場合に胴部1の端部開口2をほぼ塞ぐことができ、また、係止片17uが蓋フラップ14u,17uと干渉することなく蓋15uの切込み15hに差し込むことができる。
【0040】
蓋15uは、その長さ方向のほぼ端部開口2を閉止できる位置に折線15a1を備え、この折線で、差込み15aを内側に折曲げ自在となっている。
そして、折線15c1と差込み15aを内側に折曲げて、係止片17uを折線17c1で折り曲げて切込み15eに差し込むと、蓋15uが係止片17uにより係止され、閉止状態が維持される。
【0041】
(底面側端部)
左側面板14の長さ方向底蓋縁には、折線14c2を介して台形形状の底蓋14fが連設されている。
背面板15の長さ方向底蓋縁には、折線15c2を介して台形形状の底蓋15fが連設されている。その底蓋15fの台形の一辺の縁には、折線15e1を介して糊代15eが連設されている。
【0042】
右側面板16の長さ方向底蓋縁には、折線16c2を介して台形形状の底蓋16fが連設されている。
正面板17の長さ方向底蓋縁には、折線17c2を介して台形形状の底蓋17fが連設されている。その底蓋17fの台形の一辺の縁には、折線17e1を介して糊代17eが連設されている。
【0043】
なお、本例では、底面側蓋部5を前記の構成としたが、これに代えて、底面側蓋部5を天面側蓋部4と同様の構成とすることもできる。この場合、長さ方向の両端を開閉自在にすることができる(図示省略)。
【0044】
(折線と頂点の位置関係)
折線14c1、15c1、16c1、17c1と頂点V1〜V4の位置関係について説明する。
図10は、板材aの端部の拡大図である。
図10(a)は、天面側端部、
図10(b)は底面側端部である。なお、天面側端部2と底面側端部3は、同様な考察が可能であるため、頂点については、同じV1〜V4を用いている。
(天面側端部)
図9、
図10(a)に示すように、天面側端部4では、折線14c1、15c1、16c1、17c1と折線bの交点が頂点V1、V2、V3、V4となることは明らかである。そして、板材を組み立てると、これらの頂点V1〜V4で作る平面が天面側端部4の端面2となり、この端面が底面になるように接触面となる。
板材aの天面側端部4の各頂点V1、V2、V3、V4を含み、各板14、15、16、17の前後方向に対して垂直となる基準線P12、P22、P32、DLを考える。これらの基準線は、板材を組立てた後の包装容器Aにおける各頂点を含む垂直横断面に対応するものである。
各折線14c1、15c1、16c1、17c1は、各頂点V1〜V4を結ぶ辺となることは明らかである。ここで、折線14c1は頂点V1から頂点V2に向けてd2だけ下がり、折線14c2は、頂点V1から頂点V3にd3だけ下がり、折線14c3は、頂点V2から頂点V4にd3でき下がり、折線14c4は、頂点V3から頂点V4にd2だけ下がるようにすると、組立て後は、四角筒の天面側の端面を構成することができる。すなわち、
図3で説明したように、頂点V1、V2、V3、V4は同一平面上にあって、向かい合う辺は平行である。
【0045】
(底面側端部)
図9、
図10(b)に示すように、底面側端部3では、折線14c2、15c2、16c2、17c2と各折線bの交点が頂点V1、V2、V3、V4となることは明らかである。そして、板材を組み立てると、これらの頂点V1〜V4で作る平面が底面側端部3の端面となり、この端面が接触面となる。
板材aの底面側端部の各頂点V1、V2、V3、V4を含み、各板14、15、16、17の前後方向に対して垂直となる基準線P12、P22、P32、DLを考える。これらの基準線は、天面側端部と同様い、板材を組立てた後の包装容器Aにおける各頂点を含む垂直横断面に対応するものである。
各折線14c2、15c2、16c2、17c2は、各頂点V1〜V4を結ぶ辺となることは明らかである。ここで、折線14c2は頂点V1から頂点V2に向けてd2だけ下がり、折線14c2は、頂点V1から頂点V3にd3だけ下がり、折線14c3は、頂点V2から頂点V4にd3でき下がり、折線14c4は、頂点V3から頂点V4にd2だけ下がるようにすると、組立て後は、胴部1の底面側の端面を構成することができる。すなわち、
図3で説明したように、頂点V1、V2、V3、V4は同一平面上にあって、向かい合う辺は平行である。
【0046】
(組立手順)
以下、前述した構成の紙製板材aを用いて、糊又は貼付け剤を用いて包装容器Aを組み立てる手順を説明する。
まず、
図10に示す板材aの折線14c2、15c2、16c2、17c2で各底蓋14f、15f、16f、17fを内側に折り曲げて各板14、15、16、17にそれぞれ重ねる。続けて、底蓋15、17の折線15e1、17e1をそれぞれ外側へ折り曲げて各底蓋15f、17fに重ねる。このようにすると、背面板15と正面板17に関しては三重に折り曲げた状態になる。また、左側面板14と右側面板16に関しては二重に折り曲げた状態になる。
次に、この状態のまま糊代15e、17eに糊を塗布し、次いで折線b1、b2で正面板17及び左側面板14を内側に折り曲げて糊代15eと底板14f、及び糊代17eと右側面板16fを貼り合わせる。このときに、糊代板部19にも糊を塗布しておき、折線b1を折り曲げた後に、折線b2を折り曲げて糊代板部19の上に左側面板14を貼り合わせれば、胴部1は平面状に折りたたまれた状態で張り合わされる。
最後に、貼り合わせが完了後、折り畳まれた各板14、15、16、17を展開すると、四角筒状の胴部1を形成することができ、底面側端部5は、底板14f、15f、16f、17fにより閉鎖された包装容器Aを組み立てることができる。このようにして組立てが完成した包装容器Aについて、各頂点V1〜V4がそれぞれ異なる垂直横断面に含まれることは明らかであろう。
なお、このような底蓋部5の閉止構造は、従来から知られたものである。
【0047】
(蓋の開閉:収納及び取出し)
この包装容器Aの内部に棒状物品を収納する場合は、天板側端部2の蓋部4の開口2bから送り込めばよい。その後、フラップ14u及び16uを内側に折り曲げ、さらに蓋15uを内側に重ねて折り曲げ、係止片17uを切込み15hに差し込むと、収納が完成する。
また、棒状物品を収納容器Aから取り出すには、天板側端部2の手かけ穴15gの個所から係止片17uを指で引っ掛けて手前に引き出し、差込み15aを引き出すと簡単に開けることができる。
図1に完成した包装容器Aの全体斜視図を示す。
図4に完成した開口状態の天面側端部2を示す。
図5に完成した底面側端部3を示す。
【0048】
以上、本発明の実施形態の一例について図面を参照しながら説明したが、本発明に係る包装容器は図示例に限定されず、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。