系母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を含み、上記プラセオジム(Pr)の含量が、上記母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たす誘電体磁器組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを提供する。
前記ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の総含量が、前記母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下である、請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つを含む酸化物または炭酸塩である0.1〜2.0モルの第2副成分を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、原子価固定アクセプタ(fixed−valence acceptor)元素Mgを含む酸化物または炭酸塩である0.001〜0.5モルの第3副成分を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.001〜4.0モルの第4副成分を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の誘電体磁器組成物。
前記ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の総含量が、前記母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下である、請求項7に記載の積層セラミックキャパシタ。
前記第1副成分は、Laを含む酸化物または炭酸塩をさらに含み、前記Laは、前記誘電体グレインにおいてグレイン粒界に配置される、請求項7または8に記載の積層セラミックキャパシタ。
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つを含む酸化物または炭酸塩である0.1〜2.0モルの第2副成分を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、原子価固定アクセプタ(fixed−valence acceptor)元素Mgを含む酸化物または炭酸塩である0.001〜0.5モルの第3副成分を含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
前記誘電体磁器組成物は、前記母材主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.001〜4.0モルの第4副成分を含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
前記積層セラミックキャパシタのサイズは1005(長さX幅、1.0mmX0.5mm)以下である、請求項7から13のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0014】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
【0015】
図2は
図1のI−I'の線に沿った断面図である。
【0016】
図1及び
図2を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含むセラミック本体110と、上記セラミック本体110の外側に配置されており、上記第1内部電極121と電気的に連結される第1外部電極131、及び上記第2内部電極122と電気的に連結される第2外部電極132と、を含む。
【0017】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100において、「長さ方向」は
図1の「L」方向、「幅方向」は「W」方向、「厚さ方向」は「T」方向と定義する。ここで、「厚さ方向」は、誘電体層を積み上げる方向、すなわち、「積層方向」と同一の概念で用いることができる。
【0018】
セラミック本体110の形状は特に制限されないが、図面に示すように、六面体形状であることができる。
【0019】
上記セラミック本体110の内部に形成された複数の内部電極121、122は、上記セラミック本体110の一面、または上記一面と向かい合う他面に一端が露出する。
【0020】
上記内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する第1内部電極121及び第2内部電極122を一対とすることができる。
【0021】
第1内部電極121の一端はセラミック本体の一面に露出し、第2内部電極122の一端は上記一面と向かい合う他面に露出することができる。
【0022】
上記セラミック本体110の一面及び上記一面と向かい合う他面には、第1及び第2外部電極131、132が形成され、上記内部電極と電気的に連結されることができる。
【0023】
上記第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、例えば、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、及び銅(Cu)のうち1つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成されることができる。
【0024】
上記第1及び第2外部電極131、132は、静電容量の形成のために上記第1及び第2内部電極121、122と電気的に連結されることができ、上記第2外部電極132は、上記第1外部電極131と異なる電位に連結されることができる。
【0025】
上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはこれらの合金を用いることができる。
【0026】
上記第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などに応じて適切に決定されることができ、特に制限されるものではないが、例えば、10〜50μmであることができる。
【0027】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末であってもよい。
【0028】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)などの粉末に、本発明の目的に応じて、種々の添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
上記誘電体層111は焼結された状態であって、隣接する誘電体層同士の境界は、確認ができないほど一体化されていることができる。
【0030】
上記誘電体層111上に第1及び第2内部電極121、122が形成されることができ、上記第1第2内部電極121、122は、焼結により、一誘電体層を間に挟んで上記セラミック本体110の内部に形成されることができる。
【0031】
誘電体層111の厚さは、キャパシタの容量設計に応じて任意に変更することができるが、本発明の一実施形態において、焼成後の誘電体層の厚さは1層当たり0.4μm以下であることが好ましい。
【0032】
また、焼成後の上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは、1層当たり0.4μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111は、誘電体磁器組成物を含む誘電体グレインを含む。上記誘電体磁器組成物は、BaTiO
3系母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を含み、上記プラセオジム(Pr)の含量が、上記母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たす。
【0034】
近年、超小型および高容量の積層セラミックキャパシタを開発するために、添加剤が固溶されたBaTiO
3系母材主成分において、同一のグレインサイズを形成する際に、磁壁移動度(Domain Wall Mobility)を向上させることで、高い誘電率が実現可能な誘電体組成物の組成の開発が必要な状況である。
【0035】
このために、ドナー型(Donor−type)ドーパント(Dopant)組成を適用した場合、格子中のピニングソース(Pinning Source)の濃度が下がり、磁壁間の移動が容易になるという研究結果がある。
【0036】
このために、公知の様々なドナー型(Donor−type)ドーパント(Dopant)のうち、Baとイオンサイズが最も類似の添加剤を適用することで、格子不整合を最小化し、高誘電特性を実現可能な誘電体組成を開発しようとした。
【0037】
また、一般に、ドナー型(Donor−type)添加剤は、その含量が増加する場合、絶縁抵抗(Insulation Resistance、IR)が低下し、耐還元性の確保が困難になるという問題があるため、適切な含量比を選定しようとした。
【0038】
従来の誘電率の向上及び積層セラミックキャパシタの信頼性の向上に影響を与えるものとして最も一般に用いられるドナー型(Donor−type)ドーパント(Dopant)としては、ジスプロシウム(Dy)が挙げられ、このドナー型(Donor−type)ドーパント(Dopant)とアクセプタ型(Acceptor type)ドーパント(Dopant)の含量を適切に調節することで、要求される誘電特性及び信頼性を実現することができる。
【0039】
本発明では、誘電体組成中の化学的欠陥である酸素空孔の生成を抑えたり、その濃度を下げたりすることができる+3価以上の原子価を有する希土類元素として、プラセオジム(Pr)を含む誘電体組成物を発明した。
【0040】
プラセオジム(Pr)元素は、主成分であるBa元素と、ドナー型(Donor−type)ドーパント(Dopant)であるジスプロシウム(Dy)元素との中間程度のイオン半径を有するため、Ba元素のサイトに効果的に置換されて固溶されることができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、安定した誘電特性を示すジスプロシウム(Dy)元素とともにプラセオジム(Pr)元素を適用し、高誘電率及び優れた信頼性を確保することができる最適の含量比を選定した。
【0042】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、BaTiO
3系母材主成分と副成分を含み、上記副成分は、第1副成分としてジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を含み、上記プラセオジム(Pr)の含量が、上記母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たす。
【0043】
上記プラセオジム(Pr)の含量が上記母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たすように調節することで、高誘電率を確保することができ、絶縁抵抗向上などの信頼性の改善が可能である。
【0044】
本発明の一実施形態によると、セラミック本体中の誘電体層に含まれる誘電体磁器組成物において、副成分として、希土類元素であるジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を含み、ジスプロシウム(Dy)とプラセオジム(Pr)の含量を制御することで、高い誘電特性を確保するとともに、絶縁抵抗向上などの信頼性の改善が可能である。
【0045】
上記プラセオジム(Pr)の含量が上記母材主成分100モル%に対して0.233モル%未満である場合、ジスプロシウム(Dy)のみを含む従来のものに比べて誘電率の増加効果が大きくない。
【0046】
上記プラセオジム(Pr)の含量が上記母材主成分100モル%に対して0.699モル%を超える場合、半導体化による絶縁抵抗の低下が発生し得る。
【0047】
本発明の一実施形態によると、上記ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の総含量は、上記母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下であることができる。
【0048】
通常、希土類の総含量が増加するほど、信頼性の点からは有利であるが、Tcが常温に移動しながら温度特性が著しく低下するため、上記ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の含量が上記母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下になるように調節することが好ましい。
【0049】
上記ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の含量が上記母材主成分100モル%に対して1.0モル%を超える場合には、容量温度係数(Temperature Coefficient of Capacitance、TCC)などの温度特性が低下する可能性がある。
【0050】
本発明の一実施形態によると、上記第1副成分は、ランタン(La)を含む酸化物または炭酸塩をさらに含み、上記ランタン(La)は、上記誘電体グレインのうちグレイン粒界に配置されることができる。
【0051】
一方、ジスプロシウム(Dy)よりもイオン半径が大きい希土類元素、例えば、ランタン(La)を用いる場合、Baサイトをより効果的に置換することができるため、酸素空孔欠陥の濃度減少においてさらに効果的である。
【0052】
したがって、信頼性を改善するために酸素空孔欠陥の濃度を最小化させ、且つ絶縁抵抗を確保するために、第1副成分としてランタン(La)をさらに含むことができる。
【0053】
但し、ランタン(La)の含量が多すぎる場合、過度な半導体化により、絶縁抵抗が急激に低下する問題があるため、その含量は、母材主成分100モル%に対して0.233モル%以上0.699モル%以下で含まれることが好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、上述のように、超小型及び高容量の製品であり、上記誘電体層111の厚さは0.4μm以下、上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは0.4μm以下であることを特徴とするが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0055】
また、上記積層セラミックキャパシタ100のサイズは、1005(長さX幅、1.0mmX0.5mm)以下とすることができる。
【0056】
すなわち、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、超小型及び高容量の製品であるため、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122の厚さが従来の製品に比べて薄い薄膜で構成されており、このように薄膜の誘電体層及び内部電極が適用された製品は、絶縁抵抗などの信頼性の向上のための研究は、非常に重要なイシューとなっている。
【0057】
つまり、従来の積層セラミックキャパシタは、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタに含まれる誘電体層及び内部電極よりも相対的に厚い厚さを有するため、誘電体磁器組成物の組成が従来と同一であっても、信頼性が大きく問題にならない。
【0058】
しかし、本発明の一実施形態のように、薄膜の誘電体層及び内部電極が適用される製品においては、積層セラミックキャパシタの信頼性が重要であり、そのために、誘電体磁器組成物の組成を調節する必要がある。
【0059】
すなわち、本発明の一実施形態では、第1副成分として、ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下で含み、上記プラセオジム(Pr)の含量が、母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たすように調節することで、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である薄膜の場合にも、絶縁抵抗向上などの信頼性の改善が可能である。
【0060】
但し、上記薄膜の意味は、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122の厚さが0.4μm以下であることを意味するものではなく、従来の製品に比べて薄い厚さの誘電体層と内部電極を含む概念で理解されることができる。
【0061】
以下では、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分について具体的に説明する。
【0062】
a)母材主成分
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、BaTiO
3で表される母材主成分を含むことができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、上記母材主成分は、BaTiO
3、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yCa
y)O
3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yZr
y)O
3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti
1−yZr
y)O
3(ここで、0<y≦0.5)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずこれに制限されるものではない。
【0064】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、常温誘電率が2000以上であることができる。
【0065】
上記母材主成分は、特に制限されるものではないが、主成分粉末の平均粒径が40nm以上150nm以下であることができる。
【0066】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第1副成分元素として、ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を必ず含み、これとともに、上記母材主成分100モル%に対して0.233モル%以上0.699モル%以下のランタン(La)酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。
【0067】
上記第1副成分は、本発明の一実施形態において、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの信頼性の低下を防止する役割を果たす。
【0068】
上記ランタン(La)の含量が0.233モル%未満である場合、誘電率の向上効果がなく、0.699モル%を超える場合には、絶縁抵抗が低下したり、誘電損失(Dissipation Factor、Df)が低下したりするという問題が発生する可能性がある。
【0069】
本発明の一実施形態によると、第1副成分として、ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)を母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下で含み、上記プラセオジム(Pr)の含量が、母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たすように調節することで、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である薄膜の場合にも、絶縁抵抗向上などの信頼性の改善が可能である。
【0070】
上記プラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して0.233モル%未満である場合、ジスプロシウム(Dy)のみを含む従来のものに比べて誘電率の増加効果が大きくない。
【0071】
上記プラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して0.699モル%を超える場合、半導体化による絶縁抵抗の低下が発生する可能性がある。
【0072】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つ以上を含む酸化物もしくは炭酸塩を含むことができる。
【0073】
上記第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つ以上を含む酸化物もしくは炭酸塩は、上記母材主成分100モルに対して0.1〜2.0モルの含量で含まれることができる。
【0074】
上記第2副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を下げ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0075】
上記第2副成分の含量と、後述の第3及び第4副成分の含量は、母材粉末100モルに対して含まれる量であって、特に、各副成分が含む金属イオンのモルとして定義されることができる。
【0076】
上記第2副成分の含量が0.1モル未満である場合には、焼成温度が高くなり、高温耐電圧特性がやや低下する可能性がある。
【0077】
上記第2副成分の含量が2.0モル以上である場合には、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下する可能性がある。
【0078】
特に、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、母材主成分100モルに対して0.1〜2.0モルの含量を有する第2副成分を含むことができ、これにより、低温焼成が可能であるとともに、高い高温耐電圧特性を得ることができる。
【0079】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、原子価固定アクセプタ(fixed−valence acceptor)元素Mgを含む酸化物または炭酸塩である第3副成分を含むことができる。
【0080】
上記原子価固定アクセプタ(fixed−valence acceptor)元素Mgは、上記母材主成分100モルに対して、0.001〜0.5モルの第3副成分を含むことができる。
【0081】
上記第3副成分は、原子価固定アクセプタ元素及びこれを含む化合物であって、アクセプタ(Acceptor)として作用することで、電子濃度を減らす役割を果たすことができる。上記第3副成分である原子価固定アクセプタ(fixed−valence acceptor)元素Mgを、上記母材主成分100モルに対して0.001〜0.5モル添加することにより、n型化による信頼性の改善効果を最大限にすることができる。
【0082】
上記第3副成分の含量が、上記母材主成分100モルに対して0.5モルを超える場合には、誘電率が低くなるという問題があるため好ましくない。
【0083】
但し、本発明の一実施形態によると、上記第3副成分は、n型化による信頼性の改善効果を最大限にするために、チタン(Ti)100モルに対して0.5モルを添加することが好ましいが、必ずしもこれに制限されるものではなく、0.5モル以下、もしくは0.5モルを少量超えて添加してもよい。
【0084】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第4副成分として、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物を含むことができる。
【0085】
上記誘電体磁器組成物は、上記母材主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物である、0.001〜4.0モルの第4副成分をさらに含むことができる。
【0086】
上記第4副成分の含量は、ガラス、酸化物、または炭酸塩のような添加形態を問わず、第4副成分に含まれているSi及びAlのうち少なくとも1つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0087】
上記第4副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を下げ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0088】
上記第4副成分の含量が、上記母材主成分100モルに対して4.0モルを超える場合には、焼結性及び緻密度の低下、二次相の生成などの問題があるため好ましくない。
【0089】
特に、本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物が、4.0モル以下の含量でAlを含むことで、粒成長を均一に制御することができ、耐電圧特性の向上及び信頼性の改善に効果があり、DC−bias特性も改善されることができる。
【0090】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解のためのものであって、本発明の範囲が実施例により限定されるものではない。
【0091】
(実施例)
本発明の実施例は、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉末を含む誘電体原料粉末に、Dy、Pr、La、Al、Mg、Mnなどの添加剤、バインダー、及びエタノールなどの有機溶媒を添加し、湿式混合して誘電体スラリーを準備した後、上記誘電体スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを準備した。これにより、誘電体層を形成することができる。
【0092】
この際、チタン酸バリウムに対する全ての元素の添加剤のサイズは、40%以下に単分散して投入した。
【0093】
特に、添加される希土類元素のうち、ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下になるように含ませた。
【0094】
上記実施例のうち、実施例1は、ジスプロシウム(Dy)0.699モル%及びプラセオジム(Pr)0.233モル%を添加して製作し、実施例2は、ジスプロシウム(Dy)0.466モル%及びプラセオジム(Pr)0.466モル%を添加して製作し、実施例3は、ジスプロシウム(Dy)0.233モル%及びプラセオジム(Pr)0.699モル%を添加して製作した。
【0095】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーを、ドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。
【0096】
次に、粒子の平均サイズが0.1〜0.2μmのニッケル粉末を40〜50重量部含む内部電極用導電性ペーストを準備することができる。
【0097】
上記グリーンシート上に、上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷法により塗布して内部電極を形成した後、内部電極パターンが配置されたグリーンシートを積層して積層体を形成してから、上記積層体を圧着及び切断した。
【0098】
その後、切断された積層体を加熱してバインダーを除去した後、高温の還元雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。
【0099】
上記焼成過程では、還元雰囲気(0.1% H
2/99.9% N
2、H
2O/H
2/N
2雰囲気)で、1100〜1200℃の温度で2時間焼成した後、1000℃の窒素(N
2)雰囲気下で再酸化を3時間行って熱処理した。
【0100】
次に、焼成されたセラミック本体に対して、銅(Cu)ペーストを用いてターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。
【0101】
また、セラミック本体110の内部の誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122は、焼成後の平均厚さが0.4μm以下になるように製作した。
【0102】
(比較例1)
比較例1は従来の場合であって、母材主成分100モル%に対して0.932モル%のジスプロシウム(Dy)を添加したものであり、その他の製作過程は上述の実施例と同様である。
【0103】
(比較例2)
比較例2は、母材主成分100モル%に対して0.932モル%のプラセオジム(Pr)を添加したものであり、その他の製作過程は上述の実施例と同様である。
【0104】
上記のように完成されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto−type MLCC)の試験片である実施例1〜3、比較例1、2に対して、誘電率、誘電損失(Dissipation Factor、DF)、及び絶縁抵抗(Insulation Resistance、IR)テストを行い、その結果を評価した。
【0105】
上記テストは3つの条件下でそれぞれ実施したものであり、各条件は、1140℃(平均1135℃)、1160℃(平均1157℃)、及び1180℃(平均1172℃)である。
【0106】
下記表1は、実験例(実施例1〜3及び比較例1、2)によるプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto−type MLCC)チップの誘電率、誘電損失(Dissipation Factor、DF)、及び絶縁抵抗(Insulation Resistance、IR)を示すものである。
【0108】
上記表1を参照すると、母材主成分100モル%に対して0.932モル%のジスプロシウム(Dy)を添加した比較例1は、誘電率及び絶縁抵抗(Insulation Resistance、IR)が低いことが分かる。
【0109】
次に、プラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して0.699モル%を超える比較例2は、半導体化の傾向を示し、誘電損失(Dissipation Factor、DF)に問題があり、絶縁抵抗(Insulation Resistance、IR)が低下する問題があることが分かる。
【0110】
これに対し、本発明の実施例1〜3は、ジスプロシウム(Dy)及びプラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して1.0モル%以下であり、プラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たす場合であって、高誘電率を確保することができ、絶縁抵抗向上などの信頼性の改善が可能であることが分かる。
【0111】
図3は本発明の実施例及び比較例による温度毎の誘電常数結果を示すグラフである。
【0112】
図3を参照すると、プラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して0.233モル%≦Pr≦0.699モル%を満たす実施例1〜3は、従来のジスプロシウム(Dy)のみを添加した比較例1に比べて温度毎の誘電率の上昇幅が大きいことが分かる。
【0113】
一方、プラセオジム(Pr)の含量が母材主成分100モル%に対して0.932モル%である比較例2は、誘電率は高いが、半導体化の傾向を示し、絶縁抵抗の低下が発生したため、信頼性に問題があった。
【0114】
本発明は、上述の実施形態及び添付図面によって限定されず、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。