(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-21280(P2021-21280A)
(43)【公開日】2021年2月18日
(54)【発明の名称】墓碑
(51)【国際特許分類】
E04H 13/00 20060101AFI20210122BHJP
【FI】
E04H13/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-139340(P2019-139340)
(22)【出願日】2019年7月30日
(71)【出願人】
【識別番号】519277542
【氏名又は名称】宗教法人法栄寺
(74)【代理人】
【識別番号】100111855
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 好昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 昭文
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡単に設置することが可能で容易に維持管理を行うことができる墓碑を提供することを目的とするものである
【解決手段】本発明に係る墓碑1は、筒状に形成されて上端が開口した一対の支柱部材10a及び10bと、支柱部材10a及び10bの間に架設されるとともに筒状に形成されて両端が開口した横架部材20と、支柱部材10a及び10bの上端部に横設されるとともに中空に形成された笠木部材30と、支柱部材10a及び10b、横架部材20及び笠木部材30に囲まれた領域に着脱可能に嵌め込まれるとともに少なくとも故人に関する墓誌情報が表記された板状の表示部材40とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されて上端が開口した一対の支柱部材と、前記支柱部材の間に架設されるとともに筒状に形成されて両端が開口した横架部材と、前記支柱部材の上端部に横設されるとともに中空に形成された笠木部材と、前記支柱部材、前記横架部材及び前記笠木部材に囲まれた領域に着脱可能に嵌め込まれるとともに少なくとも故人に関する墓誌情報が表記された板状の表示部材とを備え、前記支柱部材には、前記横架部材の両端開口にそれぞれ嵌合する横架接続部が設けられており、前記笠木部材には、前記支柱部材の上端開口にそれぞれ嵌合する一対の支柱接続部が設けられている墓碑。
【請求項2】
前記支柱部材及び前記横架部材には、前記表示部材に対向する側面に前記表示部材の縁部を嵌め込む嵌合部が設けられている請求項1に記載の墓碑。
【請求項3】
前記支柱部材は、下端部に基台部材が設けられている請求項1又は2に記載の墓碑。
【請求項4】
前記表示部材は、表記された前記墓誌情報を保護する透明な保護部材とともに嵌め込まれている請求項1から3のいずれかに記載の墓碑。
【請求項5】
前記支柱部材には、少なくとも家名及び建立年月日に関する情報が表示されている請求項1から4のいずれかに記載の墓碑。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墓石の近辺に設置され、故人の戒名、法名、俗名、没年等を記録する墓碑に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より先祖を供養する墓の標として墓石が用いられてきており、墓石は、家単位で建立される場合が多く、墓石の正面に家名が刻印されて側面又は背面に建立年月、建立者等が刻印されている。そして、これまでに亡くなられた先祖の戒名、法名、俗名、没年等を記録するために墓碑を墓石の近辺に設置することが行われている。
【0003】
こうした墓碑は、長期間にわたって記録を表示するために、耐久性を備えた台座石や石板といった石材を組み立てて構成されている。例えば、特許文献1では、台座石、柱石、石板、笠石を着脱可能に組み立てて構成された墓碑が記載されている。また、墓碑を石材を組み立てて構成する場合、重量物である石材を取り扱う必要があり、石板に記録を追加する場合に専門業者に依頼する必要がある。こうした課題に対して、特許文献2では、ステンレス鋼材からなる墓標本体に墓標プレートを着脱自在に装着するように構成し、墓標プレートを取り外して記録を追加するようにした点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3159340号公報
【特許文献2】特開2003−213969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、石材を組み合せて墓碑を設置する場合、重量物の取扱いのため業者に依頼することが必要となり、設置スペースを確保できる墓所でないと設置が難しいといった課題がある。特許文献2では、ステンレス鋼材を用いているため、石材よりも軽量化することができるが、接続部材を接続する部分や墓誌プレートの挿入開口から風雨が入り込むおそれがあり、長期間の設置により墓誌プレートに汚れや滲みが生じやすく維持管理が難しいといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、簡単に設置することが可能で容易に維持管理を行うことができる墓碑を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る墓碑は、筒状に形成されて上端が開口した一対の支柱部材と、前記支柱部材の間に架設されるとともに筒状に形成されて両端が開口した横架部材と、前記支柱部材の上端部に横設されるとともに中空に形成された笠木部材と、前記支柱部材、前記横架部材及び前記笠木部材に囲まれた領域に着脱可能に嵌め込まれるとともに少なくとも故人に関する墓誌情報が表記された板状の表示部材とを備え、前記支柱部材には、前記横架部材の両端開口にそれぞれ嵌合する横架接続部が設けられており、前記笠木部材には、前記支柱部材の上端開口にそれぞれ嵌合する一対の支柱接続部が設けられている。さらに、前記支柱部材及び前記横架部材には、前記表示部材に対向する側面に前記表示部材の縁部を嵌め込む嵌合部が設けられている。さらに、前記支柱部材は、下端部に基台部材が設けられている。さらに、前記表示部材は、表記された前記墓誌情報を保護する透明な保護部材とともに嵌め込まれている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記のような構成を有することで、簡単に設置することが可能で容易に維持管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態に関する正面図及び側面図である。
【
図2】各部材を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【
図3】墓碑の表側の表示例及び裏側の表示例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態に関する正面図(
図1(a))及び側面図(
図1(b))である。墓碑1は、筒状に形成されて上端が開口した一対の支柱部材10a及び10bと、支柱部材10a及び10bの間に架設されるとともに筒状に形成されて両端が開口した横架部材20と、支柱部材10aおよび10bの上端部に横設されるとともに中空に形成された笠木部材30と、支柱部材10a及び10b、横架部材20並びに笠木部材30に囲まれた領域に着脱可能に嵌め込まれるとともに墓誌が表記された板状の表示部材40とを備えている。
【0012】
支柱部材10a及び10b、横架部材20並びに笠木部材30は、筒状又は中空に形成されているので、軽量化が図られており、簡単に組立て及び取り外しを行うことができる。こうした部材は、構造材としての強度を備えているものであればよく特に限定されないが、例えば、アルミニウム等の金属製の押出形材で製造した部材が好ましい。
【0013】
図2は、各部材を取り外した状態を示す分解斜視図である。支柱部材10a及び10bは、断面矩形状の角筒状に形成されている。支柱部材10aには、上端開口11aが形成されており、表示部材40の縁部と対向する内側面には嵌合部12aが設けられている。嵌合部12aは、一対の細幅帯状部分が突設して形成されており、一対の細幅帯状部分の間の間隔が板状の表示部材40の厚さよりもわずかに広くなるように設定されている。嵌合部12aは、例えば、断面略コ字状に形成された部材を用い、中間部分を支柱部材10aにネジ等で固定することで、両側部分を細幅帯状部分として突設するように設定することができる。
【0014】
また、一対の細幅帯状部分の端縁部を内側に折り曲げて互いに対向するように形成することもでき、折り曲げる幅を調製することで対向する端縁の間隔を容易に調整することが可能となる。そして、表示部材40の両側にそれぞれの端縁が挟持するように当接することで、表示部材40を安定して保持することができる。
【0015】
支柱部材10aの中間部には、内側面に横架接続部13aが突設されており、横架接続部13aは横架部材20の一方の端部に形成された開口21aに嵌め込まれて接続固定されるようになっている。横架接続部13aは、断面形状の外形が開口21aの内周面の形状に合わせて形成されており、嵌め込まれた後に横架部材20の表面から横架接続部13aに向かって貫通するように形成されたネジ穴に固定ネジを螺着して固定することができる。
【0016】
なお、横架部材20を横架接続部13aに取り付ける方法としては、ネジによる固定以外の方法でも可能で、特に限定されない。例えば、横架接続部に係合部材を移動可能に取り付けておき、バネ等の弾性部材により挿着される横架部材に向かって突設するように付勢された状態となるように取り付ける。横架部材には、係合部材に対向する位置に係合穴を穿設しておく。そして、横架部材に横架接続部が挿入される際に係合部材が横架部材に当接して横架接続部内に押し込まれた状態となり、押し込まれた係合部材が係合穴に対向することで、係合穴内に嵌合するように突設するようになる。係合部材が係合穴に係合した状態では横架接続部が横架部材に嵌め込まれた状態が保持されるようになる。横架部材を横架接続部から取り外す際には、係合部材を横架接続部内に押し込んだ状態で横架部材を引き抜くことで簡単に取り外すことができる。
【0017】
支柱部材10bには、支柱部材10aと同様に、上端開口11aが形成されており、表示部材40の縁部と対向する内側面には、嵌合部12aと同様に嵌合部12bが設けられている。また、支柱部材10aの中間部には、横架接続部13aと同様に、内側面に横架接続部13bが突設されており、横架部材20の他方の端部に形成された開口21bに嵌め込まれて接続固定されるようになっている。
【0018】
横架部材20は、断面形状が支柱部材10a及び10bとほぼ同じサイズの矩形状の角筒状に形成されており、両端に開口21a及び21bが形成されている。また、表示部材40の縁部と対向する内側面には、嵌合部12aと同様に嵌合部22が設けられている。
【0019】
横架部材20の両端開口を支柱部材10a及び10bの横架接続部13a及び13bにそれぞれ嵌め込んで接続することで、嵌合部12a及び12bの下端が嵌合部22の両端部の上縁に当接して嵌合部12a及び12bの長手方向と嵌合部22の長手方向がほぼ直交するように設定されている。
【0020】
こうして支柱部材10a及び10b並びに横架部材20で囲まれた領域の内側に向かって突設された各嵌合部に表示部材40を挿入して嵌め込むことができる。表示部材40は、左右両側縁及び下縁側を各嵌合部に嵌め込まれることで安定した保持状態とすることができる。
【0021】
笠木部材30は、断面形状が支柱部材10a及び10bとほぼ同じサイズか横幅が広くなった矩形状の角筒状に形成されており、表示部材40の縁部と対向する下面には、嵌合部12aと同様の嵌合部31が設けられている。下面に設けられた嵌合部31の両側には、横架接続部13a及び13bと同様の、支柱接続部32a及び32bがそれぞれ突設されている。支柱接続部32a及び32bは、横架接続部13aと同様に、支柱部材10a及び10bの上端開口11a及び11bにそれぞれ嵌め込まれて接続固定されるようになっている。
【0022】
笠木部材30は、支柱部材10a及び10b並びに横架部材20を接続した組立構造に表示部材40を嵌め込んだ状態で上方から支柱部材10a及び10bに接続固定することで、嵌合部31が表示部材40の上縁部に嵌め込まれた状態となる。そのため、表示部材40の周縁部が全周にわたって各嵌合部に嵌め込まれた状態となって安定した保持状態となる。なお、嵌合部31の代わりに細幅の溝部を形成しておき、形成された溝部に表示部材40の上縁部を挿し込んで保持することもできる。
【0023】
笠木部材30の形状は、横幅を広くすることで両側部が屋根状に張り出すようにデザインすることができ、また全体の角部に丸みを持たせた形状にすることでデザイン性を高めることも可能となり、特に限定されない。笠木部材30には、
図1に示すように、墓碑であることを示す文字や宗教的な意味を有する梵字といった表示をすることもでき、利用者の要望に応じて様々なデザインにすることが可能である。
【0024】
表示部材40は、金属製又は樹脂製の板状体からなり、従来の墓碑と同様に亡くなられた故人の戒名、法名、俗名、没年等の墓誌を表記する。表記する文字は、例えば、印刷文字をカットした文字シールを表面に貼り付けて表記することができ、こうした文字シールで表記することで長期間にわたって劣化することなく表記を維持することが可能となる。また、こうした文字シールは、安価なカットシート及び印刷装置を用いて作製することができ、一般家庭でも簡単に作製することが可能である。そのため、従来の石碑のように、業者に依頼して文字を刻印する場合に比べて、簡単で安価に追記作業を行うことができるようになる。
【0025】
表示部材40を取り外す場合には、笠木部材30を支柱部材10a及び10bから取り外し、表示部材40を上方に引き出すことで簡単に取り外すことができる。また、表示部材40の表示面に透明な素材からなる保護部材を密着させて表示部材40とともに嵌合部に嵌め込むことで、表示した文字等の劣化を防止することが可能となる。
【0026】
また、表示部材40は、内側面に突設した各嵌合部に周縁部を嵌め込んで取り付けられており、上側が笠木部材により覆われているので、墓碑が屋外に設置された場合でも風雨等による破損や雨水の浸入が防止され、長期間にわたって部材の劣化が抑えられて維持管理が容易になる。
【0027】
図3は、墓碑の表側の表示例(
図3(a))及び裏側の表示例(
図3(b))に関する説明図である。この例では、支柱部材10aの表側に家名を含む情報を表示し、支柱部材10bの裏側に墓碑の建立年月日等の建立に関する情報を表示し、表示部材40に故人の法名等の情報を表示するようにしている。このように表示することで、将来追記が必要となる故人の情報のみを表示部材40に表示し、変更の必要がない家名や建立に関する情報を支柱部材に表示しているので、表示変更を効率よくおこなうことができる。また、表示部材40の表側のスペースが表示情報で埋められた場合には、裏側のスペースに表示情報を追記していくことが可能となっており、長期間にわたって墓碑に情報を表示することができる。
【0028】
図4及び
図5は、墓碑の設置例に関する説明図である。
図4に示す例では、左右の支柱部材10a及び10bの下端部に基台部材50a及び50bがそれぞれ取り付けられている。基台部材50a及び50bは、金属製材料を用いて直方体状の箱体に形成されており、支柱部材10a及び10bよりも広い設置面積となるように設定されている。そのため、設置場所がコンクリート等で覆われている場合や基礎工事が難しい狭いスペースの場合にも設置表面にそのまま配置することができる。
図5に示す例では、左右の支柱部材10a及び10bの下端部に横設するように1本の基台部材60が取り付けられている。基台部材60は、金属製材料を用いて直方体状の細長い箱体に形成されており、支柱部材10a及び10bよりも幅広に形成されている。こうした1本の基台部材を用いることで、墓碑の強度を高めるとともに様々な設置場所に臨機応変に対応して設置することができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・・墓碑、10・・・支柱部材、11・・・開口、12・・・嵌合部、13・・・横架接続部、20・・・横架部材、21・・・開口、22・・・嵌合部、30・・・笠木部材、31・・・嵌合部、40・・・表示部材、50・・・基台部材、60・・・基台部材