【実施例】
【0012】
図1には、更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同形状の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された同形状の端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0013】
セグメント1は、本実施例では、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した形状となっている。ただし、セグメントは円弧形ないし扇形に限定されず、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形等にすることもできる。
【0014】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板と同様な形状の複数、本実施例では4個の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。側板102、103、内部板106、107の管長方向板厚はそれぞれ等しくなっている。
【0015】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するための連結部材を通すための同一径の円形挿通穴102a、103aが周方向に等間隔に複数形成される。内部板106にも、挿通穴102a、103aより小径で同一径の円形挿通穴106aが等間隔に複数形成され、内部板107には、切り欠き107aが等間隔に複数形成される。これらの挿通穴102a、挿通穴103a、挿通穴106a、並びに切り欠き107aは、それぞれ周方向の位置が一致している。なお、連結部材は、後述するように、連結ピンあるいは連結ボルトである。
【0016】
端板104、105は、側板102と側板103の間に配置される部材で、端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルト等の連結部材を通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。
【0017】
内面板101、側板102、103、端板104、105、内部板106、107は、何れも透明、半透明あるいは不透明な同じプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0018】
図2に示したように、セグメントはその端板105と他のセグメントの端板104を当接させ、ボルト6とナット7を側板102と103に形成された作業穴102b、103bを介して挿入し、ボルト6、ナット7を螺合させることにより周方向に連結させることができる。
【0019】
セグメントを順次周方向に一周分連結させると、
図3に示すようなリング状の管ユニット10を組み立てることができる。管ユニット10は、円管を管長方向Xに垂直に所定幅Dで輪切りに切断したときに得られる形状となっており、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。セグメントは、この管ユニット10を、径方向Rに沿った切断面で周方向Cに複数個に分割(本実施例では6等分)したときに得られる部材に相当する。
【0020】
なお、
図3では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107等の補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0021】
図4a、
図4b、
図5a、
図5b、
図5cには、セグメント1あるいは管ユニット10を管長方向に連結するための連結具が図示されている。本実施例では、連結具はピン形状の連結ピン21として構成される。連結ピン21は、
図4aに示したように、同形状の連結ピン半体22、23を結合部21aを介して左右対称に連結した一体部材で、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など弾性のあるプラスチックで一体に成形される。
【0022】
連結ピン半体22は、突出部22aと、それに続く管状部22b、管状部22bに続く突出部22cを有し、管状部外周面上には、第1と第2突起部22d、22eが形成される。連結ピン半体23は、連結ピン半体22と同形状で左右対称になっており、突出部23a、それに続く管状部23b、管状部23bに続く突出部23cを有し、管状部外周面上には、第1と第2突起部23d、23eが形成される。
【0023】
図5aに示したように、連結ピン半体22、23が重ね合わされたときには、連結ピン21には、先端突出部22c、23c、管状部22b、23b、後端突出部22a、23aが形成され、
図5bに示したように、やや扁平で断面が楕円形状の管状の連結ピン21が得られる。なお、連結ピン21は、弾性(バネ性)があるので、
図5aで仮想線で示したように、端部が開いて拡径する性質がある。従って、連結ピン半体22、23を重ね合わせるときには、手あるいは治具で端部を押圧するようにする。
【0024】
連結ピン21の先端突出部22c、23cは、セグメント1の内部板106に形成された挿通穴106aを通過できる大きさに、また管状部22b、23bは、挿通穴106aを通過できない大きさに設定される。管状部22b、23bの外周面上に形成された第1突起部22d、23dと第2突起部22e、23eは、同形状で管状部から径方向に突出しており、
図5bに示しように、円形形状でその径d1はセグメント1の側板102、103の挿通穴102a、103aの径と同径かあるいはそれより僅かに小さく該挿通穴102a、103aを通過できる大きさになっている。
【0025】
連結ピン21の第1突起部22d、23dは、後述するように、セグメントに装着されたとき、セグメントの側板と当接する面が垂直面S1になっていて他面が傾斜して管状部に連続している。垂直面S1と管状部の先端突出部側の端部面S3までの距離w1は、セグメント1の側板102(103)とそれに隣接する内部板106間の距離t1に等しくなっている。第2突起部22e、23eも、側板と当接する面が垂直面S2になっていて他面が傾斜して管状部に連続し、該垂直面S2と後端突出部22a、23aの最終端までの距離w3は、セグメント1の側板102(103)とそれに隣接する内部板106間の距離t1より短くなっている。第1突起部22d、23dと第2突起部22e、23eはそれぞれの垂直面S1、S2が対向するようになっており、両垂直面S1、S2間の距離w2は、側板102(103)の厚さt2の2倍の距離に等しく、その間に側板2枚を緊密に嵌め込めることができる。
【0026】
連結ピン21の後端突出部22a、22bは、内部に穴21bが形成された断面が楕円形の形状をしており、その外周の垂直方向距離はd2、水平方向距離はd3で、後述するように、連結ピン21が拡径してセグメントが連結されたときには、d2、d3は内部板106の挿通穴106aの径より小さくなるように設定されている。
【0027】
次に、このように構成された連結ピン21を用いてセグメントを管長方向に連結する方法を説明する。
【0028】
図6の上段に示したように、連結ピン半体22、23を重ね合わせした状態にして、連結ピン21をセグメント1の側板103と内部板106の挿通穴103a、106aに挿通する。連結ピンの先端突出部22c、23cは、挿通穴106aを通過するが、管状部22b、23bは、挿通穴106aを通過できないので、連結ピン21は、図示した位置に保持される。
【0029】
この状態で、第1突起部22d、23dの垂直面S1と管状部の先端突出部側の端部面S3までの距離w1は側板103とそれに隣接する内部板106間の距離t1に等しくなっているので、第1突起部22d、23dの垂直面S1と側板103の内面はほぼ同一面になっている。なお、連結ピン21は弾性のあるプラスチックでできているので、連結ピン半体22、23が、
図5aで仮想線で示したように、弾性により拡径するので、矢印で示したように、端部を手であるいは治具で押圧して連結ピン半体22、23が重ね合わせした状態になるようにする。
【0030】
続いて、
図6の下段に示したように、セグメント1に連結するセグメント1’の側板102の挿通穴102aに連結ピン21を挿通する。第2突起部22e、23eの垂直面S2と反対側の面は傾斜しているので、弾性により連結ピンが拡径していても、セグメント1’を円滑に連結ピンに差し込むことができる。セグメント1、1’の側板103、102が当接したときには、それぞれの板厚をt2とすると、当接したときの両板厚2×t2は第1と第2突起部の垂直面S1、S2間の距離w2に等しくなっているので、連結ピン21は図示した位置になる。
【0031】
連結ピン21は、この位置で弾性により拡径し、
図7に示したように、両セグメント1、1’の側板103、102は第1と第2突起部間に嵌まり込む。第1突起部と第2突起部の互いに対向する垂直面S1、S2間の距離w2が側板102(103)の板厚の2倍となっており、セグメント1’の側板102とセグメント1の側板103は、両垂直面間に圧接した状態で固定されるので、両セグメント1と1’を管長方向に堅固に連結することができる。
【0032】
本実施例では、連結ピンを縮径することにより両セグメントの連結を簡単に解除することができる。この連結解除のために
図9に示した連結解除棒30が用いられる。
【0033】
図9の上部には、連結解除棒30とその左側面が図示されており、下部には、連結解除棒30とそのB−B線断面図が図示されている。連結解除棒30は、長さw4がセグメント1の管長方向の長さより長く、内部板106の挿通穴106aを通過できる大きさで、その一端に内側に湾曲した湾曲部30aが形成される。
【0034】
連結解除棒30は断面が径d4の円形で、湾曲部30aは断面が楕円形状になっている。湾曲部30aの連結解除棒30の先端面での大きさは、
図8の上段に示したように、連結ピン21が拡径して2つのセグメントが連結されたときの後端突出部22a、23aの大きさに相当している。また、湾曲部30aは、深くなるほど断面の楕円形状が小さくなり、例えば、連結解除棒30がΔd移動してB−B線に移動したときには、湾曲部30aの断面形状は、連結ピン半体22、23が重ね合わされて
図5b、
図6に示したような状態になったときの後端突出部22a、23aの短径d2、長径d3の楕円形状に相当している。
【0035】
図8には、このような連結解除棒30を用いてセグメント1、1’の連結を解除する状態が示されている。上段に示したように、拡径した連結ピン21の後端突出部22a、23aが連結解除棒30の湾曲部30a内に入るように、連結解除棒30がセグメント1’の内部板106の挿通穴106aに挿通される。連結解除棒30を、下段に示したように、Δd移動させると、後端突出部22a、23aは、
図5b、
図6に示したように、連結ピン半体22、23が重なり合う状態まで縮径される。この状態では、第2突起部22e、23eがセグメント1’の側板102の挿通穴102aを通過できるので、セグメント1’を、連結ピンから引き出し、両セグメントの連結を解除することができる。
【0036】
なお、
図10a、
図10bに示したように、後端突出部22a’、23a’を垂直方向(短径方向)に対向した位置に一部だけ形成するようにすると、連結ピン半体が重なり合った時も、あるいは拡径したときも、その外周がほぼ円弧となるので、連結解除棒の湾曲部を断面が円形の部材にすることができ、その製造を安価にできる、という利点が得られる。
【0037】
セグメントの連結具用の挿通穴は、
図1に示したように、側板と内部板の周方向に沿って複数形成されるので、複数の挿通穴のうち所定数の挿通穴に連結ピン21が挿入され、該連結ピン21によりセグメントの管長方向の連結が行われる。しかし、連結ピン21によるセグメントの連結は短いので、連結強度が弱い。そのため、特許文献1に記載されているように、長い連結棒を介してセグメントを管長方向に強固に連結する。この状態が
図11に示されている。
【0038】
図11において、セグメント1a、1b、1cは、一部で上述した連結ピン21を用いて連結されている。また、ナット12が一方のセグメントに取り付けられ、他方のセグメントから長ボルト11をナット12にねじ込んで両セグメントを連結している。このように、強度を要するところには、長ボルトを用いてセグメントを連結し、その他連結ピンを用いて強度を更に補強すると、強度のある更生管を構築することができる。
【0039】
セグメント1は、
図12に示したように、マンホール40を介して既設管41内に搬入され、周方向に順次連結して管ユニット10が組み立てられる。管ユニット10は、すでに組み立ててある管ユニット10と管長方向に連結され、更生管42が組み立てられる。管ユニット10の連結には、上述した連結ピンと長ボルトによるボルト締めにより行われる。更生管42が所定長さになると、更生管42の外周と既設管41の内壁面との間に充填材が充填され、更生管と既設管が一体化される。