【解決手段】金属が混入したワークWがコンベア12上の検査領域を通過するときにその金属を検出する通常運転モードと、テストピースTp1またはTp2を金属として正常に検出できるか否かを確認する動作確認モードとを有する金属検出装置であって、動作確認モードでの動作確認に使用した試験体の種別を判別する第2判定部36bと、動作確認モードで使用すべき種別の試験体があらかじめ登録され、登録種別の試験体が使用されたか否かの判定結果に基づいて動作確認モード終了信号を出力する第3判定部36cとを備えている。動作確認モードの終了と同時に通常運転モードに移行する構成とするのがよい。
金属が混入した被検査物が搬送ライン上の検査領域を通過するときに該金属を検出する通常運転モードと、試験体を金属として正常に検出できるか否かを確認する動作確認モードとを有する金属検出装置であって、
前記動作確認モードでの動作確認に使用した前記試験体の種別を判別する試験体種別判別手段と、
前記動作確認モードで使用すべき前記試験体の種別があらかじめ登録され、該登録された前記試験体が使用されたかを前記試験体種別判別手段の判別結果に基づいて判定し、動作確認モード終了信号を出力するモード終了判定手段と、
を備えたことを特徴とする金属検出装置。
前記モード終了判定手段には、前記試験体の種別ごとに使用すべき回数が登録され、各試験体がそれぞれ登録された回数使用されたかを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の金属検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1〜
図10は本発明の一実施形態に係る金属検出装置の概略構成を示す図である。
【0024】
図1および
図2に示すように、本実施形態の金属検出装置10には、被検査物であるワークWを搬送するコンベア12(搬送ライン)と、そのコンベア12の途中に位置する検査ヘッド14とが設けられている。
【0025】
ワークWは、例えば量産される食品を包装材で包装したものであり、箱入り製品のような定形のものでも、流動物等を封入した可撓性の袋入り製品のような不定形のものでよく、冷凍品でもよい。勿論、ワークWとなる物品は、食品に限定されるものではない。
【0026】
コンベア12は、例えば図示しないループ状のベルトおよびローラを有するベルトコンベアで構成されており、ワークWを検査ヘッド14内の開口14aを通して所定方向に搬送できるようになっている。
【0027】
検査ヘッド14は、コンベア12の所定長さのワーク搬送区間に対応する検査領域Z内に交流磁界を発生させることができるとともに、ワークWの通過に伴う検査領域Z内の磁界の変動を検出することができるようになっており、ワークW中の金属(混入異物でもあらかじめ封入された製品の一部でもよい)あるいは非金属の異物(金属または金属成分を含んだ異物、欠品検出の場合は異物でなく構成要素でもよい)を検出するようになっている。
【0028】
検査領域Zの入り口側(搬送方向上流側)には、ワークWの検査領域Zへの進入を検知する例えば光学式の物品検知センサ15が設置されている。
【0029】
また、金属検出装置10の上部側正面には、ユーザによる操作入力のための操作入力部16と、その操作用の表示や運転状態表示、異常の報知等を行なうための表示器17等が設けられている。
【0030】
金属検出装置10は、具体的には、検査ヘッド14に交流磁界を発生させる信号発生器21および送信コイル22と、検査ヘッド14に交流磁界の変動を検出させる一方および他方の受信コイル23a、23bと、検査ヘッド14の検出信号を直交検波処理する検波部24と、検波部24からの検波出力信号をA/D変換するA/D変換器27a、27bと、そのA/D変換後の検出データを基に金属検出が可能な所定の制御プログラムを実行する制御部30とを含んで構成されている。
【0031】
信号発生器21は、所定周波数の交流の送信信号を発生するもので、図示しない電流増幅器を介して送信コイル22を電流駆動する。
【0032】
また、送信コイル22は、コンベア12の搬送路近傍に配置され、信号発生器21からの電流駆動によって励磁されたとき、送信信号周波数に対応する所定強度の交流磁界(交番磁界)を検査領域Z内に発生させるようになっている。この送信コイル22は信号発生器21と共に磁界発生部を構成している。
【0033】
より具体的には、
図2に示すように、送信コイル22は、検査ヘッド14内に開口14aを取り囲むように配置されており、一方および他方の受信コイル23a、23bは、検査ヘッド14の開口14aを取り囲み、かつ、送信コイル22に対しワーク搬送方向の前後に略同一の中心軸を持つように配置されている。
【0034】
受信コイル23a、23bは、送信コイル22からの磁束が略等量に鎖交するよう配置されかつ互いに逆相に接続された少なくとも一対のコイルからなり、対向する一端側で接地されるとともに他端側で検波部24に接続されている。これら受信コイル23a、23bは、送信コイル22と協働して検査領域における磁界の変動を検出する差動検出器23(磁界検出部)を構成している。送信コイル22で発生する交流磁界の周波数は、後述する制御部30によって可変設定されるようになっており、差動検出器23は設定される各周波数の交流磁界についてその変動を検出可能である。
【0035】
具体的には、検査領域Z内に交流磁界が発生しているとき、受信コイル23a、23bには、それぞれ電圧が誘起されるが、送信コイル22からの交流磁界のみに対しては逆相接続された受信コイル23a、23bの電圧出力は等しく平衡し、両コイル23a、23bの誘起電圧の差(差動検出器23としての出力)がゼロとなるようになっている。そのため、例えば受信コイル23a、23bの他端側は例えば平衡調整用の可変抵抗器(図示していない)を介して結合され、その可変抵抗器の中点から検波部24に接続されている。
【0036】
検査領域Zの磁界中を通過する磁性金属には磁束密度の大きさに比例してより多くの磁束が引き寄せられる一方、その磁界中を通過する非磁性金属にはその移動による磁束密度の変化を打ち消すような向きでうず電流が生じ、ジュール熱が消費される。
【0037】
したがって、コンベア12上の製品に混入した何らかの磁性金属が検査領域Zの発生磁界中を通過する場合、例えば
図3(a)〜
図3(c)に示すように、磁束を引き寄せるその金属の位置に応じて受信コイル23a、23bの誘起電圧Va、Vbの大小関係が変化することになり、受信コイル23a、23b間の出力の平衡状態がくずれる。また、主として非磁性体である製品のみが送信コイル22の発生磁界中を通過する場合にも、その含有成分や水分、包装材等の影響により、金属を含んでいるときほど顕著ではないが受信コイル23a、23b間の出力の平衡状態がくずれる。
【0038】
受信コイル23a、23bは、このようにコンベア12上の製品の移動により両受信コイル23a、23b間の出力の平衡状態がくずれたとき、その磁界の変化に応じた差動検出信号Sd(磁界変動信号)を出力する。この差動検出信号Sdは、送信コイル22側からの交流磁界に対応して前記送信信号の周波数を有する高周波信号成分に、ワークWの移動に応じて振幅および位相が変化する低周波信号成分が重畳した変調信号形態となり、例えば
図4に示すような信号波形で表すことができる。
【0039】
検波部24は、各一対のミキサ24a、24b、バンドパスフィルタ25a、25bおよび移相器26a、26bからなる検出回路部を構成しており、ミキサ24a、24bには差動検出器23からの差動検出信号Sdがそれぞれに入力される。
【0040】
ミキサ24a、24bには、入力信号の位相を設定移相量だけシフトさせる移相器26a、26bがそれぞれ接続されており、移相器26aは、信号発生器21からの前記送信信号の位相を専ら検出感度を高めるよう可変設定される所定移相量だけ移相させて、ミキサ24aに供給する。また、移相器26bは、移相器26aで生成された信号の位相を更に90度移相させることで、差動検出器23から誘導出力される差動検出信号Sdの高周波信号成分に対して90度位相の異なる高周波信号を生成し、ミキサ24bに供給する。
【0041】
ミキサ24aは、移相器26aからの高周波信号と差動検出器23からの差動検出信号Sdとを合成してバンドパスフィルタ25aに出力する。同様に、ミキサ24bは、移相器26bからの高周波信号と差動検出器23からの差動検出信号Sdとを合成してバンドパスフィルタ25bに出力する。
【0042】
ここでのミキサ24a、24bによる入力の混合は、移相量により異なるが、移相器26a、26bからの入力信号に基づいて、磁束密度の変化が最大となる瞬間(位相0度)側において、磁束密度変化が大きいほどジュール熱を消費して外部磁界変化を引き起こす非磁性金属の影響が大きい第1の変動成分の検出信号Rxと、磁束密度自体がほぼ最大となる瞬間(磁界波形の振幅が最大となる瞬間;位相90度)側において、磁束密度が大きいほどより多くの磁束を引き付けて外部磁界変化を引き起こす磁性金属の影響の大きい第2の変動成分の検出信号Ryを生成することができる。
【0043】
バンドパスフィルタ25a、25bは、ミキサ24a、24bで合成された両検出信号Rx、RyのうちワークWの移動に対応して変化する低周波信号成分の検出信号を抽出し、併せて高周波成分のノイズを除去するフィルタ特性を有している。
【0044】
図4に示すように、バンドパスフィルタ25a、25bから出力される低周波成分の検出信号X、Yは、差動検出信号Sdの波形中で所定位相位置の瞬時値を結ぶ包絡線の波形、およびその所定位相位置から送信信号周期τの1/4周期分、つまり90度だけ位相がずれた瞬時値を結ぶ包絡線の波形を有するものとなる。
【0045】
両バンドパスフィルタ25a、25bから出力される検出信号X、Yは、A/D変換器27a、27bでそれぞれアナログ信号からディジタル信号である検出データDx、Dyに変換された後、物品検知センサ15からの物品検知信号に関連付けられた検出データDx、Dyとして、制御部30に取り込まれる。
【0046】
制御部30は、例えばCPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェースを含むマイクロコンピュータ構成のもので、ROM内に格納された制御プログラムをRAMとの間でデータの授受を行ないながら実行し、I/Oインターフェースを介して取り込んだ検出データDx、Dy等の各種信号を処理するようになっている。制御部30は、ディジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を併有するものでもよい。
【0047】
この制御部30は、前述の制御プログラムを実行することで、
図1に機能ブロック図で示すように、設定部31、検査データ記憶用の第1メモリ部32、位相判定用の第2メモリ部33、検査条件記憶用の第3メモリ部34、位相補正部35、判定部36およびモード切替部38の機能を発揮するものである。
【0048】
設定部31は、操作入力部16からの指示入力に応じて検査に必要な各種のパラメータを手動で初期設定する機能と、ワークWの良品サンプルやテストピース等の金属サンプルを磁界に通過させることで、検査や動作確認に必要なパラメータを半自動的に初期設定する機能(オート設定モード)とを有している。
【0049】
このような設定部31による初期設定や設定変更を行う機能は、操作入力部16からの指示入力に応じて、あるいは判定部36での所定の判定の結果に応じて、モード切替部38により「設定モード」が選択されたときに発揮されるようになっている。
【0050】
具体的には、設定部31は、例えば各品種のワークWのサイズ(例えば長さ)や搬送速度、信号発生器21の発生信号周波数、移相器26aによる位相補正量Δθ、バンドパスフィルタ25a、25bの通過帯域(周波数帯域)等、金属検出装置10の動作に関する各種設定パラメータを、ワークWの品種毎に設定するようになっている。
【0051】
ワークWの長さや搬送速度は、検出データDx、Dyの取り込み時間やその間隔、バンドパスフィルタ25a、25bの通過帯域等を決定する条件となる。また、信号発生器21の発生信号周波数は、検出対象金属の種別や大きさ、ワークWの構成材料(内容物および包装材等)の素材等に応じて選択され得るパラメータである。さらに、検出データDxが移相器26aの移相量に対応する所定位相位置の瞬時値で特定されることから明らかなように、検出データDx、Dyの波形振幅は、移相器26aの位相補正量Δθによって相違することになる。すなわち、移相器26aの移相量は、ワークWに混入した金属の検出感度を決定するパラメータとなる。
【0052】
位相補正部35は、検査対象の各ワークWが検査領域Zを通過する度に、A/D変換部27a、27bから取り込まれる一連の低周波信号成分の検出データDx、Dyを所定サンプリング数だけ取得し、取得した信号データを基に、
図5に示すように、検波時の位相0°(同相)側を横軸、位相90°(直交位相)側を縦軸とするX−Y平面上で、検出データDx、Dyの値を直交座標成分とする散布図として、リサージュ図形を作成できるようになっている。
【0053】
位相補正部35は、
図5に示すリサージュ図形中でワークWの製品影響による磁界変動成分の検出データが分布する中心の位相θdを基準位相とし、検波部24での検波時の位相に対する基準位相の位相差(散布図中の回帰直線の傾き角の差に相当)を補正可能な位相補正量Δθを算出し、検波位相を補正することができるようになっている。
【0054】
この場合、ワークWに金属(金属異物または製品中の金属成分)が含まれていると、
図5および
図6に示すように、検波時の位相に対し同相(In−phase)側とみなした基準位相Iを横軸とし、その直交位相(Quadrature)を縦軸QとするI−Q平面上においては、ワークW(良品)のみを磁界通過させた場合の検出データDx、Dy(以下、製品影響信号という)は、基準位相Iの近傍に分布するものとなり、金属を通過させた場合の検出データDx、Dy(以下、金属影響信号という)は、直交位相Q側に分布するものとなる。なお、検波位相と同相側では、交流磁界の磁束密度の変化量が大きくなり、直交位相側では、交流磁界の磁束密度が大きくなる。
【0055】
位相補正部35は、金属有無の判定位相となる直交位相Qでは製品影響の大きい同相I側での振幅レベルが最小レベルとなり、金属影響の大きい直交位相Q側では振幅レベルが大きく現れるよう、感度設定を行うようになっている。
【0056】
判定部36は、前述のI−Q平面上での金属有無判定位相(直交位相Q)における製品影響と金属影響の検出データの振幅Lg、Lnを比較し、その振幅の比(Ln/Lg)が所定のリミット値を超えるか否かによって、ワークW中における金属有無の判定処理を実行する第1判定部36a(金属有無判定手段)を有している。
【0057】
ところで、
図5中では、金属影響信号の散布図(リサージュ図形Hn)の形状は、ワークWの製品影響信号の散布図(リサージュ図形Hg)の形状に対して相対的に細くなっており、その検出位相θnが製品影響信号の検出位相θdに対して略直交位相となっているが、ワークWに入る金属やそのテストピースの影響信号の散布図形状(リサージュ図形の形状)は、その金属またはテストピースの材質や大きさによって変化し、その図形の傾きは、差動検出信号Sdから包絡線Xをとる前述の所定位相位置(前述の位相補正量Δθ)によって変化する。
【0058】
図5中に示す異物金属のリサージュ図形Hnは、材質が非磁性金属の場合を模式的に例示するものであるが、ステンレス鋼の鋼種(マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系等)によるフェライト量の相違や他の種別の金属(例えばアルミニウム(Al)、真鍮(Brass)等)、あるいは、非金属や金属含有の複合材等といった相違により、位相角は変化し、その金属の大きさ(例えば径)に応じて振幅が変化する傾向がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、制御部30の第1判定部36aにおいて、第1判定部36aで製品影響に対し金属影響による磁界変動成分の振幅の比(
図5中のLn/Lg)が最大となる位相θd、θnを算出する感度優先の処理を実行する一方で、第2判定部36bおよび第3判定部36cにおいて、金属の種別判定およびモード切替えのための処理を実行するようになっている。
【0060】
図6に示すのは、ノイズや振動による検出信号のばらつきレベルの範囲内に入るように位相調整された基準位相Iを横軸とし、それと直交する直交位相軸Qを縦軸とするI−Q平面上に、複数の金属(検出対象物)の種別およびサイズについて、その金属影響信号のリサージュ図形HnのピークPsの検出位相角θnを算出した結果をプロットした場合に、検出位相角θnが互いに相違する複数の種別群をそれらの位相角の分布範囲で区分する判定マップ(種別判定条件)の説明図である。
【0061】
図6において、「Fe」は、金属が鉄その他の磁性金属からなる場合の分布範囲を例示しており、磁性金属の種別および大きさ(直径Φ)に応じて、例えばI−Q平面の中心から離れるように金属径が大きくなるほど位相角も大きくなるというように位相角増大側に湾曲する境界線B1がその種別群の金属の位相角の上限となっている。
【0062】
また、
図6において、「SUS」は、例えば境界線B1に近いフェライト系のステンレス鋼や、境界線B2に近いオーステナイト系のステンレス鋼をはじめ、他の多くのステンレス鋼(マルテンサイト系等)を材質とする金属の種別判定に寄与し得るものである。この場合も、I−Q平面の中心から離れるように金属径が大きくなるほど位相角も大きくなり、境界線B2も位相角増大側に湾曲している。すなわち、境界線B2は、境界線B1と同様に、隣接する種別群の検出位相が金属の大きさ(直径Φ)に比例しない傾向を示している。
【0063】
図6において、Non Feは、アルミニウムや真鍮その他の非鉄金属や高耐食性の特殊金属、複合材等からなる他の種別群の場合の分布範囲を例示しており、金属の種別または大きさ(直径Φ)によって位相角が相違するとともに、基準位相Iに対し反転(180°相違)する位相角近傍のノイズや振動による検出信号のばらつきレベルの範囲がその種別群の金属の位相角の上限となっている。
【0064】
以後、差動検出信号Sdから検出信号X、Yを取り出す際の所定位相位置がより高位相角側になると、同様にFe、SUS、Non Feの順に、境界線B1、B2を挟んで、種別群ごとの分布が分かれる。
【0065】
図6においては、各種別群の金属の検出位相角θnの分布が、それぞれの種別群の分布確度θa、θb、θcの範囲内で、概ねI−Q直交座標面の中心点から離れるほど大きくなる傾向を示している。しかし、種別判定のための条件は、
図6に示すようなものに限定されるものではなく、生産ラインの装置構成等から想定される金属の材質を特定し、あらかじめその検出特性を記憶しておくようにする場合、境界線による分布範囲の区分でなく、特定種別の分布範囲に特定された複数の独立した分布エリアを設定しておき、そのいずれかに属するかを判定するようにしてもよい。
【0066】
位相判定用の第2メモリ部33には、
図6に示すような種別判定マップが種別判定条件データとして記憶されており、判定部36の第2判定部36bは、その種別判定条件データに基づいて、金属影響信号のリサージュ図形HnのピークPsの検出位相角θnが、
図6中の複数の種別群ごとの分布領域Fe、SUS、Non Feのいずれに入るかを判定するようになっている。ここで、第2メモリ部33に記憶され、第2判定部36bに使用される種別判定条件データは、検査ヘッド14に複数種の金属サンプルのうち各種の金属サンプル、例えばテストピースTp1またはTp2を通過させたときに検出された磁界変動信号を用いて、あらかじめ得られた種別ごとのサンプル信号位相データである。
【0067】
第3メモリ部34には、所定の複数の送信周波数および送信出力のうち各送信周波数および送信出力について、ワークWの搬送・通過に伴う検査領域Z内の磁界変動信号Sdを検波部24で検波し、バンドパスフィルタ処理する際の通過帯域である周波数帯域と、位相および振幅とをそれぞれ設定したデータが、記憶保存されている。このように設定したデータは、各送信周波数および送信出力について検査ヘッド14に複数種の金属サンプルのうち各種の金属サンプル、例えばテストピースTp1またはTp2を通過させ、その通過時に検出された磁界変動信号によりあらかじめ種別ごとに得られたものであり、本発明にいうサンプル信号位相データおよびサンプル信号振幅データを含んだものとなる。
【0068】
なお、複数の送信周波数および送信出力の各送信条件や、検出信号Rx、Ryをフィルタ処理する際の周波数帯域、位相および振幅の段階的な設定は、例えば複数種の金属サンプルの種別ごとに、大きさの異なる複数の同種別金属サンプルを準備し、それぞれに好適な検査条件を設定するのに有効である。
【0069】
判定部36の第2判定部36bは、複数種の金属のテストピースTp1、Tp2その他の金属サンプルのうち各種の金属サンプルが検査領域Z中を通過するとき、その通過による検査領域Z中の交流磁界の変動に伴ってX−Y座標系中に生じる低周波成分の金属影響信号のリサージュ図形Hnの位相θnを判定するようになっている。
【0070】
また、第2判定部36bは、テストピースTp1、Tp2等あるいはそのような金属が混入したワークWが検査ヘッド14を通過するとき、検出される磁界変動信号を基に得られる位相データ(被検査物信号位相データ)を前述のサンプル信号位相データと比較し、両データの差異を判定することで、テストピースTp1またはTp2の位相、あるいはワークWの位相および同ワークWに混入した金属の位相を判定することができるようになっている。
【0071】
さらに、第2判定部36bは、基準信号の周波数帯域ごとに、各種の金属サンプルが検査領域Z中を通過するときに生じる金属影響信号の位相θnを判定するための判定条件(例:判定マップまたは判定用の計算式)をサンプル信号位相データおよびサンプル信号振幅データ等として第2メモリ部33および第3メモリ部34に記憶し、その判定条件を基に、検査領域Z中を通過する金属の種別を判定する。
【0072】
判定部36の第3判定部36cは、第2判定部36bで金属サンプルごとに判定される金属影響信号の検出位相角θnの分布領域に基づき、金属として、鉄等の磁性金属群(
図6中でFeと表示)のいずれか、ステンレス鋼群等の非磁性金属群(
図6中でSUSと表示)のいずれか、あるいは、アルミニウムや真鍮その他の種別群(
図6中でNon Feと表示)のいずれかが検出されたか否かを判定することができ、テストピースTp1、Tp2等の金属成分を分析し、その種別を判定することができるようになっている。
【0073】
すなわち、判定部36は、第2判定部36bにより、前述の被検査物信号位相データとサンプル信号位相データとを比較し、その比較結果を基に位相に対応する金属成分を分析してその種別を判定し、更にはその金属のサイズをも判定することができ、第3判定部36cと協働して、動作確認モードでの動作確認に使用したテストピースTp1、Tp2等の種別を判別する試験体種別判別手段の機能を発揮できるようになっている。
【0074】
第3判定部36cは、さらに、金属種別の判定結果をその判定対象となったテストピースTp1、Tp2等のID等その他の種別表示と共に表示部17に出力する機能(
図10参照)を有している。
【0075】
モード切替部38は、金属が混入したワークWがコンベア12上の検査領域Zを通過するときにその金属を検出する通常の金属検出モード(通常運転モード)と、所定種別のテストピースTp1、Tp2等を金属サンプルとして正常な金属検出動作ができるか否かを確認する動作確認モードとを、操作入力部16からの指示入力により、あるいは金属検出装置10の運転状態の異常等を受けて、切り替えることができるようになっている。
【0076】
また、モード切替部38は、動作確認モード下で、判定部36の判定結果に応じてその動作確認モードを終了させることができるようになっている。
【0077】
具体的には、判定部36は、前述のような第2判定部36bおよび第3判定部36cの機能に加え、あらかじめ登録された動作確認モードで使用すべき種別および大きさのテストピースTp1またはTp2がそれぞれ所定回数使用されたことを条件に、動作確認モード終了信号を出力するモード終了判定手段の機能を併有している。
【0078】
そして、制御部30は、判定部36から動作確認モード終了信号を受けたとき、それまで進行してきた動作確認モードを設定部31によって終了させるのと同時に、通常運転モードに移行させることができるようになっている。
【0079】
また、制御部30は、操作入力部16からの指示入力あるいは運転状態の異常等によって動作確認モードを強制終了する場合に、その終了前までに動作確認モードで使用したテストピースTp1またはTp2等の試験体の検出状態を表示器17の画面171上に表示するようになっている。
【0080】
さらに、判定部36の第3判定部36cは、複数種の金属サンプルの種別ごとに、大きさの異なる複数の同種別金属サンプルについて、金属影響信号の振幅の差異を判定する振幅判定手段の機能を併有しており、その振幅判定結果に基づいて、検査領域Z中を通過する金属の種別および大きさを判定可能である。
【0081】
具体的には、第3判定部36cは、直交座標系中に生じる金属影響信号の位相θnのみならず振幅を含むデータに基づいて複数種のうちいずれの種別の金属サンプルに近似し他と相違するのかと、複数の同種別金属サンプルのうちいずれの大きさの金属サンプルに近似し他と相違するのかを、それぞれ直交座標上の複数の種別群(Fe、SUS、Non Fe)の分布領域の境界線B1、B2の情報を基に判別する。
【0082】
以下、上記構成の金属検出装置10の動作と共にその作用について説明する。
【0083】
金属検出装置10には、ユーザが操作入力部16のメニューキーを押す等して、オート設定、検出感度(レベル)変更、物品影響表示、統計メニューなどの選択項目を有するメニュー画面(詳細は図示していない)が表示される。そして、まず、例えばオート設定が選択され、実際に金属検出を実行する前に、ワークWの良品サンプルや複数種の金属のサンプルであるテストピースTp1、Tp2等について、検査ヘッド14に通す試験的な検査・測定(以下、サンプル検査ともいう)を行うことで、金属検出装置10を構成する各部の動作に必要な初期設定がなされる。なお、サンプル検査は、検査対象製品の品種登録時だけでなく、その登録情報に基づく動作の確認時等にも実行される。このようなサンプル検査は、例えば特開2018−200197号公報に記載されるテストピース影響信号相当のテスト変動成分を部分的にあるいは全部に用いるものとしてもよい。
【0084】
検査条件記憶用の第3メモリ部34に送信条件(送信周波数および送信出力レベル)である「周波数帯域、位相、振幅」等の情報を設定する際には、
図7に示すように、まず、最初の検査条件・出力(K=1)について、送信条件を読取り(ステップS11、S12)、対応する一種別のテストピースでの試験的な検査を実行するために、送信周波数設定および送信出力を設定する(ステップS13、S14)。
【0085】
次いで、金属検出装置10の検査領域Z内に交流磁界を発生させるとともに(ステップS15)、テストピースTp1、Tp2等やワークWを検査領域Z中を通過させるようにコンベア搬送させ(ステップS16)、その際に差動検出器23から出力される磁界変動信号Sdを基に検波部24から制御部30までの信号処理系に受信信号処理を実行させる(ステップS17)。そして、金属影響信号のリサージュ図形11nから、金属影響による磁界変動成分の振幅および位相θnを算出して、検査条件記憶用の第3メモリ部34に記憶させる(ステップS18)。
【0086】
次いで、送信条件(送信周波数および送信出力レベルの組合せ)nに達しているか否かが判定され、その判定結果に応じて、送信条件番号を順次繰り下げながら(ステップS20)、送信条件nに達するまで、一連の処理ステップS11〜S19を伴う試験的な検査・測定が繰り返され、検査条件記憶用の第3メモリ部34に対する記憶情報の設定作業が実行される。
【0087】
上述したオート設定の後、設定された検査条件により金属検出装置10を動作確認モードで運転し、例えばワークWについて管理基準となる複数種のテストピースのうちそれぞれ所定の大きさの磁性金属(例えば鉄)のテストピースと、非磁性金属(例えばステンレス)のテストピースを用いて、管理基準となる異物金属を確実に検出可能な検出条件に設定されたかの確認を行うといった手順があらかじめ定められている場合に、使用するテストピースの種類(磁性金属、非磁性金属の別や大きさの別)を間違ってしまったとしても、制御部30では、登録された種別のテストピースを使用しない限り動作確認モードが終了せず、不正な手順による動作確認が行われることがない。
【0088】
[試験体種別登録時]
本実施形態においては、金属検出装置10の動作確認において所定の複数種のテストピースTp1、Tp2等の金属サンプル(試験体)を用いるサンプル検査が要求されるので、前述した「周波数帯域、位相、振幅」等の情報設定と併せて、
図8に示すような試験体の種別登録処理が、あらかじめ実行される。
【0089】
まず、サンプル検査に使用するテストピースTp1、Tp2その他の金属サンプル、例えば
図8中に示す金属サンプルSp1、Sp2、Sp3が設定される(ステップS21)。
【0090】
次に、検査領域Z内に交流磁界を発生させた状態で金属サンプルSp1、Sp2、Sp3をコンベア12で検査領域Z中に順次搬入して、それぞれの金属影響信号のリサージュ図形HnのピークPsの検出位相角θnを含む動作確認の検出信号を読み取った後(ステップS22)、試験体種別が判定される(ステップS23)。
【0091】
この試験体種別の判定ステップは、金属影響信号の位相θnを
図6に示す判定マップ中にプロットした場合にどの位相角領域に入るかを判定し、その位相領域に対応する種別「Fe」、「SUS」または「Non Fe」等の種別を判定することで、可能である。
【0092】
ただし、初期設定時か初回の動作確認時に、その判定マップによる種別判定がなされ、サンプル位相データが登録されていれば、それ以降は、登録済みの全ての試験体種別についてのサンプル位相データと今回の試験体についての被検査体位相データとを比較し、一致する登録済みのサンプル位相データを特定できれば、種別判定が容易・迅速に可能である。
【0093】
種別判定の後、今回の試験体が登録済みのサンプル位相データに対応するいずれかの試験体であるか否かが判別され、登録済みの試験体に該当する場合(ステップS24でYesの場合)、全種別の試験体で動作確認済みとなるまで、ステップS22以降の処理が繰返し実行された後(ステップS22〜S25)、今回の処理が終了する。
【0094】
一方、今回の試験体が登録済みのサンプル位相データに対応するいずれかの試験体でなく、登録済みの試験体に該当しない場合(ステップS24でNoの場合)、所定内容および時間の警報出力(警告ランプ点灯、警告画面表示等)がなされた後、今回の処理が終了する(ステップS26)。
【0095】
[運転時]
通常運転モードあるいは動作確認モード下で金属検出装置10を運転する際には、あらかじめ記憶しているサンプル信号位相データやサンプル信号振幅データを適宜組み合わせて検査領域を通過した金属の種別を判定し、条件設定や動作確認に用いる金属サンプルが正しい種別であるかを照合することができる。
【0096】
例えば、
図9に示すように、まず、金属サンプルSp1、Sp2、Sp3のそれぞれについて検査条件記憶用の第3メモリ部34に保存された「周波数帯域、位相、振幅」等の設定情報が読み込まれる(ステップS31)。
【0097】
次いで、金属が混入したワークWが検査領域Z中に搬入されるか、テストピースTp1またはTp2等の金属サンプルが検査領域Z中に搬入され、第1判定部36aの判定結果に応じて金属が検出されると(ステップS32でYESの場合)、位相判定用の第2メモリ部33の記憶情報を基に、
図6に種別判定マップとして例示したような種別判定条件の下で、検出された金属についての成分分析がなされ、その金属種別が判定される(ステップS33)。
【0098】
次いで、今回の検出金属または金属サンプルについての判定種別が、登録済みの種別のいずれかと成分一致するか否かがチェックされ(ステップS34)、成分一致する場合には(ステップS34でYesの場合)、登録済みの試験体名が表示器17に表示される(ステップS35)。
【0099】
一方、今回の検出金属または金属サンプルについての判定種別が、登録済みの種別のいずれかと成分一致しない場合には(ステップS34でNoの場合)、今回の検出金属または金属サンプルについての成分分析の結果が表示器17に表示される(ステップS36)。
【0100】
図10(a)は、動作確認モード(動作確認中)で表示される画面の例である。同図に示すように、表示画面171は、その上方から下方へと順に、運転モード表示領域172と、動作状態表示領域173と、試験体表示領域174および動作確認状況表示領域175とを、配置したものとすることができる。
【0101】
図10(b)は、動作確認モード(動作確認終了時)で表示される画面の例である。同図に示すように、表示画面171は、その上方から下方へと順に、運転モード表示領域172と、動作状態表示領域173と、動作確認結果表示領域176と、試験体表示領域174および動作確認状況表示領域175とを、配置したものとすることができる。
【0102】
図10(c)は、動作確認モードを強制終了したときに表示される画面の一例であり、前述の検出金属または金属サンプルについての成分分析の結果の表示例となっている。同図に示すように、表示画面171は、その上方から下方へと順に、運転モード表示領域172と、動作状態表示領域173と、磁性の異なる金属種別を帯状のスケールとして配置し表示する種別表示スケール領域177と、金属検査の結果表示領域178とを配置したものとすることができる。
【0103】
より詳細に説明すると、
図10(a)に示す表示画面では、運転モード表示領域172および動作状態表示領域173に動作確認モードであることが表示され、試験体表示領域174には、動作確認で使用すべき試験体の種別が上下方向に並んで一覧表示され、その右隣りの動作確認状況表示領域175には、各試験体についての動作確認状況が表示されている。ここでの動作確認状況の表示は、試験体の種別が判定されると初期状態表示「−−−」から「OK」表示に切り換わる。使用回数が登録されている場合には、使用回数に応じた動作確認状況が画面の横方向に並ぶことになる。例えば、使用回数が2回の試験体であれば、動作確認状況表示領域175には、動作確認を開始した時点で「Fe1.0」の右側に初期状態表示「−−−」「−−−」が表示され、動作確認を進めていくにつれて「OK」「−−−」となり、さらに「OK」「OK」と表示されることにより、「Fe1.0」の試験体がそれぞれ1回、または2回判別されたことが表示される。
【0104】
次に、
図10(b)に示す表示画面について説明する。なお、以下に説明する各表示画面中で
図10(a)に示す表示画面と同様の表示内容となる運転モード表示領域172、動作状態表示領域173および試験体表示領域174については、説明を省略する。
【0105】
図10(b)に示す表示画面では、動作確認状況表示領域175の表示がすべての試験体(Fe1.0、Fe1.5、SUS1.5)について「OK」表示となり、動作確認結果表示領域176に「動作確認結果:成功」と表示されており、動作確認が正常に終了したことを示している。
【0106】
次に、
図10(c)に示す表示画面について説明する。この表示画面では、運転モード表示領域172中に動作確認モードを強制終了(すなわち、動作確認モードを中断して終了)しようとしている状態であることが表示されており、併せて、その終了直前までに動作確認モードで使用した試験体が種別表示スケール領域177上に表示されている。
【0107】
この種別表示スケール領域177においては、複数種の金属サンプルについての複数の種別表示領域177a、177b、177cおよび177dが所定方向に整列しかつ異なる色調を有しており、例えば「Noise」領域、「磁性体」領域、「非磁性体」領域および「OVF(オーバーフロー)」領域として表示されるようになっている。
【0108】
また、同図中の「非磁性体」領域177cには、ポインタ177fが、各種別表示領域177a−177dとは異なる色調で表示されている(ここでは図示の便宜上、色調の違いを網掛けの違いとしている)。このポインタ177fは、前記位相角θnの大きさに応じて種別表示スケール領域177の延在方向である同図中の左右に移動可能に表示され、種別表示スケール領域177上におけるその表示位置が種別表示領域177a、177b、177cまたは177dのいずれに入るかおよび色調の相違によって、検出された金属やテストピースの種別と、磁性の有無およびその磁性の程度とを識別可能に表示できるようになっている。
【0109】
このように、本実施形態の金属検出装置10においては、動作確認モードでの動作確認に使用した試験体の種別を判別するとともに、登録済み動作確認モードで使用すべき種別の試験体が動作確認に使用されたことを条件にその動作確認モードを終了可能か判定することができる。したがって、動作確認モードでの動作確認に使用した試験体の種別が動作確認モードで使用すべき登録済みの種別の試験体である場合に、その動作確認モードを終了できるか否かが確実に判定されることになる。その結果、動作確認の手順の間違いや漏れを防止することができる。
【0110】
また、本実施形態では、動作確認モードの終了と同時に通常運転モードに移行する構成となっているので、動作確認の手順の間違いや漏れを防止できることに加えて、その動作確認モードの終了に伴なう通常運転モードへの復帰処理を所要の手順で間違いなく自動的に実行することができる。
【0111】
さらに、本実施形態では、動作確認で使用すべき試験体の種別を一覧表示しつつ各試験体についての動作確認状況を表示したり、すべての試験体の動作確認の成否を表示したりすることができ、動作確認モードを強制終了する場合に、終了直前までの動作確認モードで使用した試験体を表示器17に表示することもできる。したがって、使用者は、試験体を使用する動作確認の手順や状態を的確に把握でき、さらに、表示された試験体で中断した動作確認の手順や状態をも的確に把握できるとともに、未だ必要な動作確認が済んでいない試験体を把握可能となる。
【0112】
加えて、本実施形態では、試験体の種別ごとに使用すべき回数が登録され、各試験体がそれぞれ登録された回数使用されたかを判定することができる。したがって、使用すべき試験体の種別とその使用すべき回数に基づいて動作確認モードの終了を制御させることができ、例えばそれぞれ2回ずつ使用するように登録したり、管理基準とする特定の試験体の種別についてその動作確認時の使用回数を多く設定し、それよりも一回り大きな試験体の使用回数を少なく設定するようにして、信頼性の高い動作確認を効率よく実施することも可能になる。
【0113】
なお、上述の一実施形態においては、金属検出装置10が検査領域Zに交流磁界を発生させ、その金属通過時の磁界変動を検出するものとなっていたので、動作確認に使用した試験体の種別は、予めの設定時等に試験体の検査領域通過時の検出信号から得られるサンプル信号データと、実際の動作確認モード下で試験体を用いる動作確認時の検出信号から得られる確認時信号データとを比較し、その比較結果を基に試験体の種別を判定することができるものとした。しかしながら、金属検出装置10の検出方式は、交流磁界を検出するものに限定されるものではなく、サンプル信号データは検出方式に応じて選択され得る。例えば、搬送ラインを挟んで対向配置されたマグネットにより被検査物中の金属を着磁させ、その着磁量を磁気センサで検出するような着磁方式の場合、サンプル信号データは、複数種別の磁性金属成分を含む金属サンプルについての着磁量の検出データとすることが考えられる。
【0114】
また、上述の一実施形態においては、直交座標上の分布領域の境界線B1、B2等の境界情報は、磁界変動信号Sdの特定検出位相での全変動領域を直交座標に対応させたマップ領域とするとき、そのマップ領域上の特定物品の検出信号の低振幅側より高振幅側(直交座標の二成分が大きくなる側)で位相角が大きくなるよう湾曲した曲線形状をなしていた。しかし、直交座標上の分布領域の境界情報は、磁界変動信号Sdの特定検出位相での全変動領域を直交座標に対応させたマップ領域とするとき、そのマップ領域上の特定物品の検出信号の低振幅側より高振幅側で位相角が大きくなるよう湾曲した境界線上の変動点を特定する境界計算式で特定されてもよい。
【0115】
以上説明したように、本発明は、動作確認の手順の間違いや漏れを防止することができる金属検出装置を提供することができるものであり、被検査物が交流磁界中を通過するときの磁界変動を基に被検査物中の金属または金属成分を検出する金属検出装置全般に有用である。