(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-23211(P2021-23211A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】植物の培地に使用される圧縮培地と植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 24/25 20180101AFI20210125BHJP
A01G 24/23 20180101ALI20210125BHJP
A01G 24/10 20180101ALI20210125BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20210125BHJP
【FI】
A01G24/25
A01G24/23
A01G24/10
A01G31/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-144006(P2019-144006)
(22)【出願日】2019年8月5日
(71)【出願人】
【識別番号】393019355
【氏名又は名称】渡辺 憲臣
(71)【出願人】
【識別番号】310012797
【氏名又は名称】渡辺 武
(71)【出願人】
【識別番号】508200090
【氏名又は名称】株式会社マテラ
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲臣
(72)【発明者】
【氏名】大野 照旺
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022BA02
2B022BA14
2B022BB01
2B022BB02
2B314MA46
(57)【要約】
【課題】培地に二酸化チタンを散布することなく、培地に水を供給することで、培地を二酸化チタンの光触媒作用で均等に効率よく殺菌する。
【解決手段】圧縮培地1は、ヤシガラ培地2Aと樹皮培地のいずれかを含む天然培地材2を圧縮して所定の形状に成形している圧縮培地1であって、天然培地材2に殺菌材3が分散して配置されており、殺菌材3は、固形粒4の状態で天然培地材2の隙間に配置され、殺菌材3の固形粒4は、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末が、供給される水分で分散される粒状に成形されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤシガラ培地と樹皮培地のいずれかを含む天然培地材を圧縮して所定の形状に成形している圧縮培地であって、
前記天然培地材に殺菌材が分散して配置されており、
前記殺菌材は、固形粒の状態で前記天然培地材の隙間に配置され、
前記殺菌材の固形粒は、
二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末が、
供給される水分で分散される粒状に成形されてなることを特徴とする圧縮培地。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮培地であって、
前記殺菌材の固形粒が、
前記焼成流紋岩の粉末を赤土で結合して粒状に成形してなることを特徴とする圧縮培地。
【請求項3】
請求項1に記載の圧縮培地であって、
前記殺菌材の固形粒が、
水溶性のバインダーで前記焼成流紋岩の粉末を粒状に成形してなることを特徴とする圧縮培地。
【請求項4】
請求項1に記載の圧縮培地であって、
前記殺菌材の固形粒が、
前記焼成流紋岩粉末を加圧成形して粒状に成形してなることを特徴とする圧縮培地。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の圧縮培地であって、
前記殺菌材を含む前記天然培地材が、加圧されて所定の形状に成形されてなることを特徴とする圧縮培地。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載される圧縮培地であって、
前記殺菌材の固形粒が、
外径を2mm以上であって2cm以下とする球形であることを特徴とする圧縮培地。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の圧縮培地であって、
前記殺菌材の固形粒が、
50mg以上であって20g以下であって、隅部を湾曲面とする粒状であることを特徴とする圧縮培地。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の圧縮培地であって、
前記焼成流紋岩の粉末が、
0.1重量%以上の二酸化チタンを含有することを特徴とする圧縮培地。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の圧縮培地であって、
前記殺菌材の固形粒が、
10重量%以上の前記成流紋岩粉末を含有することを特徴とする圧縮培地。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の圧縮培地であって、
前記天然培地材の成形体を被覆してなる非通水性のカバーを有することを特徴とする圧縮培地。
【請求項11】
天然培地材を所定の厚さに圧縮成形して圧縮培地とし、この圧縮培地に給水して天然培地材を分散し、分散された天然培地材を植物の養液培地とし、この養液培地に植物を植え付けて養液栽培する植物の栽培方法であって、
前記天然培地材に、殺菌材を添加混合して天然培地材と殺菌材の混合体とすると共に、
この殺菌材には、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末を、供給される水分で分散される粒状に成形してなる殺菌材の固形粒を使用し、
さらに、前記混合体を所定の厚さの板状に圧縮成形して殺菌材の固形粒を分散状態に混合してなる圧縮培地とし、前記圧縮培地に給水して天然培地材と前記固形粒の焼成流紋岩粉末を分散して、植物を養液栽培する養液培地とし、前記養液培地で植物を養液栽培することを特徴とする植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用の植物培地に使用される圧縮培地に関し、とくに、焼成流紋岩に含まれる二酸化チタンの光触媒作用で殺菌される圧縮培地とこの圧縮培地を使用する植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を生育させる培地の環境を好ましい状態とするために、二酸化チタンを含有する光触媒式の植物活性剤を散布して植物の成長を促進する技術は開発されている。(特許文献1参照)
この技術は、二酸化チタンの粉状、あるいは二酸化チタンを粒状の担体表面に担持したものを植物活性剤として培地に散布する。植物活性剤は、二酸化チタンの光触媒作用で培地を殺菌し、あるいは培地を活性化して植物の生育を活性化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001?95379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉末二酸化チタンの植物活性剤は、培地に散布されて光触媒作用で培地を殺菌するが、均一に散布するのに手間がかかる欠点があり、粒状の担体に二酸化チタンを担持した植物活性剤は、散布を簡単にできるが、培地を斑なく均等に殺菌するのが難しい。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、培地に二酸化チタンを散布することなく、培地に水を供給することで、培地を二酸化チタンの光触媒作用で均等に効率よく殺菌できる圧縮培地と植物の栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の圧縮培地は、ヤシガラ培地と樹皮培地のいずれかを含む天然培地材を圧縮して所定の形状に成形している圧縮培地であって、天然培地材に殺菌材を分散して配置しており、殺菌材は、固形粒の状態で天然培地材の隙間に配置され、殺菌材の固形粒は、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末を、供給される水分で分散される粒状に成形している。
【0007】
本発明のある態様の植物の栽培方法は、天然培地材を所定の厚さに圧縮成形して圧縮培地とし、この圧縮培地に給水して天然培地材を分散し、分散された天然培地材を植物の養液培地とし、この養液培地に植物を植え付けて養液栽培する。植物の栽培方法は、天然培地材に、殺菌材を添加混合して天然培地材と殺菌材の混合体とすると共に、この殺菌材には、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末を、供給される水分で分散される粒状に成形してなる殺菌材の固形粒を使用し、さらに、混合体を所定の厚さの板状に圧縮成形して殺菌材の固形粒を分散状態に混合してなる圧縮培地とし、圧縮培地に給水して天然培地材と固形粒の焼成流紋岩粉末を分散して、植物を養液栽培する養液培地として、養液培地で植物を養液栽培する。
【発明の効果】
【0008】
以上の圧縮培地は、ユーザーが培地に均等に殺菌材を散布することなく、天然培地材に分散状態に含まれる固形粒の焼成流紋岩粉末が培地に均等に分散し、分散された焼成流紋岩粉末の二酸化チタンが光触媒作用で培地を殺菌する。とくに、以上の圧縮培地は、固形粒の焼成流紋岩粉末の結合が解除されて培地に均等に分散し、分散して表面積が飛躍的に大きくなった焼成流紋岩粉末が効率よく培地を殺菌する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧縮培地の製造方法と使用方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0011】
本発明の第1の実施態様の圧縮培地は、ヤシガラ培地と樹皮培地のいずれかを含む天然培地材を圧縮して所定の形状に成形している圧縮培地であって、天然培地材に殺菌材を分散して配置しており、殺菌材は、固形粒の状態で天然培地材の隙間に配置され、殺菌材の固形粒は、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末を、供給される水分で分散される粒状に成形している。
【0012】
以上の圧縮培地は、ユーザーが培地に殺菌材を散布することなく、培地に散水して培地を均等に効率よく殺菌できる特徴がある。それは、以上の圧縮培地が、天然培地材の間に殺菌材の固形粒を分散して配置して、この殺菌材の固形粒を、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末が水分で分散される粒状に成形しているからである。さらに、水分で分散するように焼成流紋岩粉末を結合している固形粒は、天然培地材の隙間から漏れない粒径に造粒できるので、製造されて使用されるまでの保管状態や運搬工程において、殺菌材の固形粒が圧縮培地から漏れることがなく、培地として使用する状態では供給される水分で焼成流紋岩粉末が培地に均等に分散して殺菌効果を発揮する。さらに、圧縮培地は、植物を生育させる状態で供給される水で、焼成流紋岩の粉末が天然培地材の隙間から、あるいは浸透する水とともに天然培地材にくまなく均等拡散する。水分が供給されて天然培地材培地に均等に拡散した二酸化チタンの粉末は、光触媒作用で培地を効率よく殺菌する。とくに、天然培地材の間に均等に分散した焼成流紋岩の粉末は、粒状の焼成流紋岩に比較して表面積が飛躍的に増加して、光触媒作用で培地を効率よく殺菌する。さらに、焼成流紋岩は、高温で焼成される工程で流紋岩に含まれる焼失成分が失われて微細な空隙が発生しているので、焼成流紋岩粉末は、無数の空隙によって焼成されない流紋岩よりもさらに表面積が増加して光触媒による殺菌効果もさらに向上する。したがって、焼成流紋岩の粉末が水で分散する状態で造粒された固形粒を天然培地材に分散している圧縮培地は、植物を生育させる状態では、表面積が飛躍的に増加して、二酸化チタンの光触媒による殺菌効果が飛躍的に向上して、植物を最適な環境で生育できる。
【0013】
本発明の第2の実施態様の圧縮培地は、殺菌材の固形粒が、焼成流紋岩の粉末を赤土で結合して粒状に成形している。
【0014】
本発明の第3の実施態様の圧縮培地は、殺菌材の固形粒が、水溶性のバインダーで焼成流紋岩の粉末を粒状に成形している。
【0015】
本発明の第4の実施態様の圧縮培地は、殺菌材の固形粒が、焼成流紋岩粉末を加圧成形して粒状に成形している。
【0016】
本発明の第5の実施態様の圧縮培地は、殺菌材を含む天然培地材を、加圧して所定の形状に成形している。
【0017】
本発明の第6の実施態様の圧縮培地は、殺菌材の固形粒を、外径を2mm以上であって2cm以下とする球形としている。
【0018】
本発明の第7の実施態様の圧縮培地は、殺菌材の固形粒を、50mg以上、20g以下であって、隅部を湾曲面とする粒状としている。
【0019】
本発明の第8の実施態様の圧縮培地は、焼成流紋岩の粉末が、0.1重量%以上の二酸化チタンを含有している。
【0020】
本発明の第9の実施態様の圧縮培地は、殺菌材の固形粒が、10重量%以上の成流紋岩粉末を含有している。
【0021】
本発明の第10の実施態様の圧縮培地は、天然培地材の成形体を被覆してなる非通水性のカバーを有している。
【0022】
(実施の形態1)
圧縮培地1は、
図1に示すように、ヤシガラ繊維などの天然培地材2を圧縮して所定の形状としている。圧縮培地1は、内部に殺菌材3を分散して配置している。とくに、圧縮培地1は、好ましくは表面部分に多量の殺菌材3を配置している。殺菌材3は、固形粒4の状態で天然培地材2の隙間に配置されている。殺菌材3の固形粒4は、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末を、供給される水分で分散される粒状に成形している。天然培地材2は、好ましくはヤシガラ繊維を使用するが、木材の樹皮等も使用でき、さらにヤシガラ繊維に樹皮を混合して使用することもできる。
【0023】
圧縮培地1は、水分が供給されると、圧縮された天然培地材2が圧縮状態からもとの状態に復元して体積を増加させる。さらに、圧縮培地1に供給される水分は、焼成流紋岩粉末の結合を解除する。この状態で焼成流紋岩粉末5は、天然培地材2の隙間に分散する。以上の圧縮培地1は、供給される水分でヤシガラ繊維などの天然培地材2を復元して膨張し、さらに、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩粉末5を分散させて、焼成流紋岩が含有する二酸化チタンの光触媒作用で培地を殺菌する。圧縮培地1の内部に分散される殺菌材3は、焼成流紋岩を粉末状態でなくて、固形粒4の状態で分散される。殺菌材3の固形粒4は、焼成流紋岩の粉末を水分で分散できるように、水で結合が解除される状態で粒状に成形している。殺菌材3の固形粒4は、好ましくは球形に成形して天然培地材2に混合される。球形の固形粒4は、例えば外径を2mm以上であって2cm以下とし、好ましくは5mm以上であって1cm以下として圧縮培地1に分散される。ただ、殺菌材の固形粒は、直方体であって、隅部を湾曲面とする粒状に成形することもできる。この形状の殺菌材の固形粒は、1粒の重量を、例えば50mg以上であって20g以下、好ましくは0.5g以上であって10g以下の粒状とする。殺菌材の固形粒は、外形を球形や直方体に特定することなく、粒状とすることで散布機でスムーズに散布できるが、本発明は造粒された殺菌材を以上の形状に特定するものでなく、たとえば多面体、長手方向に切断して断面を楕円形とする形状等とすることもできる。
【0024】
殺菌材は、以上の大きさに造粒して、圧縮培地の内部に分散して配置される。小さ過ぎる殺菌材は、粉末に近くなって圧縮培地から分離して外部に漏れやすく、大き過ぎる殺菌材は、供給される水分で分散される状態で、分散性が低下して、焼成流紋岩粉末の分散斑が発生しやすくなる。したがって、殺菌材の固形粒の大きさは、天然培地材の種類や栽培する植物を考慮して最適な大きさに設定される。
【0025】
殺菌材の固形粒は、二酸化チタンを含有する焼成流紋岩の粉末を、水分が供給されて分散する状態で結合して粒状に成形される。殺菌材の固形粒は、焼成流紋岩粉末を圧縮成形して造粒し、あるいは赤土や、ポリビニールアルコールなどの水溶性のバインダー等の結合材と混合して粒状に造粒して製作される。焼成流紋岩の粉末は、原石を粒状に破砕した状態で焼成し、焼成した粒状の流紋岩を粉末に加工する。ただ、焼成流紋岩の粉末は、原石を粉末に加工して焼成して製造することもできる。焼成流紋岩の粉末は、好ましくは、原石を平均粒径が3mm〜5cmとする粒状に破砕して焼成し、焼成した後に粉砕して製造する。
【0026】
焼成流紋岩の粉末は、原石を破砕した状態で酸化雰囲気で焼成して能率よく焼成できる。破砕された粒状の流紋岩は、焼成する状態で、流紋岩の間に隙間ができて、各々の流紋岩が表面を広い面積で露出して焼成されるからである。焼成された粒状の流紋岩は、焼結されて硬化しているので、粉砕して能率よく粉末に加工できる。流紋岩の焼成温度は、低すぎると、内部まで均一に焼成できず、多孔質とならずに硬度が低くなる。反対に焼成温度を高すぎると焼成コストが高くなり、さらに溶融して多孔質な空隙が減少する。流紋岩は、700℃〜900℃で溶融するので、流紋岩の焼成温度は、たとえば600℃以上であって900℃以下、好ましくは800℃〜900℃とする。焼成は、破砕した流紋岩を下り勾配に配置している回転するトロンメルに供給し、トロンメルで撹拌しながら移送して能率よく均一に焼成できる。以上の温度で焼成された流紋岩は、融点の低い酸化カリウムを数%含有するので、焼成工程で低融点の酸化カリウム等が溶融され、さらに高温に加熱されて流紋岩に含まれる焼失成分が失われて微細な空隙が発生して多孔質に焼結される。したがって、焼成流紋岩は、焼成されない流紋岩に比較して表面積が増加して光触媒による殺菌効果が向上する。焼成工程では、溶融した低融点の酸化カリウム等が融材となって硬く焼結される。焼成された多孔質な流紋岩は、内部の微細な空隙が互いに連続する状態となって吸水特性も向上する。ちなみに、焼成されない流紋岩の表面を水滴を付着すると水は表面張力で内部に吸収されることなく水滴となって付着するが、焼成した流紋岩は、表面に水を付着すると表面に付着することなく速やかに内部に浸透して吸収される。
【0027】
焼成流紋岩は、好ましくは愛媛県の重信町で採取される流紋岩を焼成して製作する。この焼成流紋岩は、蛍光X線分析・EZスキャンにおいて、以下の成分を含有する。
二酸化珪素(SiO
2)………… 70.9%
酸化アルミニウム(Al
2O
3)…16.6%
酸化ナトリウム(Na
2O)……… 3.7%
酸化カリウム(K
2O)…………… 2.8%
三酸化第二鉄(Fe
2O
3)…………2.2%
酸化カルシウム(CaO)…………3.0%
酸化マグネシウム(MgO)………0.2%
二酸化チタン(TiO
2)………… 0.2%
【0028】
殺菌材の固形粒は、焼成流紋岩の粉末が含有する二酸化チタンの光触媒作用で培地を殺菌するので、二酸化チタンの含有量を0.1重量%以上とする焼成流紋岩を使用して造粒する。焼成された焼成流紋岩は、摩砕機や粉砕機を使用して、たとえば1μm以上であって200μm以下、好ましくは10μm以上であって100μm以下の粒径に粉砕する。焼成流紋岩の粉末は、培地において分散して表面積が飛躍的に大きくなり、二酸化チタンの光触媒作用で培地を極めて効果的に殺菌する。さらに、培地は、植物を生育させるために多量の光線が照射される環境にあって、二酸化チタンの光触媒作用による殺菌効果が極めて高くなる。さらに、このことに加えて、培地は表面から細菌汚染が発生しやすいが、培地の表層部は光線の照射強度が強く、二酸化チタンの光触媒作用による殺菌効果も高くなって、細菌汚染が発生しやすい培地の表層部分が、焼成流紋岩粉末で効果的に殺菌される特徴がある。さらに、二酸化チタンの光触媒作用による殺菌効果は、相当に弱い紫外線によっても実現されるので、培地にできるわずかな隙間から内部に侵入する紫外線によっても、培地の表層部も殺菌される特徴がある。とくに、ヤシガラ繊維や樹皮の培地は、無数の隙間ができるので、無数の隙間から内部に侵入する紫外線が、培地の内部に分散している焼成流紋岩粉末を照射して殺菌効果を実現する。
【0029】
ちなみに、焼成流紋岩が、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダを殺菌する効果を試験すると、これ等の細菌は、試験開始後、わずか1週間程度でほぼ完全に滅菌され、クロコウジカビは、約3週間経過後に、約90%が滅菌できた。以上の殺菌効果は、細菌やカビを培養して生理食塩水に懸濁して、菌数値を数十万個/gの菌液とし、この菌液を焼成流紋岩の粉末で殺菌して効果を測定した。この試験は、粒径を50μmとする焼成流紋岩粉末の殺菌効果を測定したが、粒径を1μm〜100μmとする焼成流紋岩の粉末は50μmの焼成流紋岩の粉末と同等の殺菌効果を実現する。
【0030】
殺菌材の固形粒は、焼成流紋岩の粉末と、バインダーの赤土を同量混合して原料粉末とし、原料粉末に水を添加して造粒できる。殺菌材の固形粒は、焼成流紋岩粉末の混合量を多くして、光触媒による殺菌効力を強くできる。殺菌材は、光触媒効果による殺菌力を強くするために、焼成流紋岩粉末の混合量を、例えば20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上とする。殺菌材は、焼成流紋岩粉末の混合率を高くして、赤土の混合量を少なくすると造粒の強度が低下する。造粒の強度が低すぎると、散布するまでに破砕される。この強度を実現するために、赤土を添加して造粒される殺菌材は、赤土の添加量を例えば10重量%以上、好ましくは20重量%以上とする。
【0031】
赤土で焼成流紋岩粉末を結合する殺菌材の固形粒は、焼成流紋岩粉末を50重量%、赤土を50重量%として、手で強く加圧して破砕する程度の強度にできる。この殺菌材の固形粒は、培地に供給される水分で、速やかに分散して殺菌効果を発揮する。焼成流紋岩粉末を赤土の結合力で造粒している殺菌材は、焼成流紋岩粉末が分散されやすく、培地に供給される水分で速やかに分散されて殺菌力を実現する。さらに、この殺菌材は、全体を無機粉末で構成するので、培地に散布される薬剤として理想的な材質となる。
【0032】
以上の殺菌材の固形粒は、赤土で焼成流紋岩粉末を結合して造粒しているが、殺菌材の固形粒は、赤土に代わって、ポリビニールアルコールなどの水溶性のバインダーを使用して造粒することもできる。水溶性のバインダーは、培地に供給される水に溶解されて、焼成流紋岩粉末を培地に分散させる。水溶性のバインダーは、赤土よりも強い結合作用があるので、焼成流紋岩粉末の添加量を多くできる。この殺菌材の固形粒は、たとえば、水溶性のバインダーの添加量を、5重量%〜10重量%と少なくして造粒できる。さらに、殺菌材の固形粒は、赤土と水溶性のバインダーの両方を添加して造粒することもできる。この殺菌材の固形粒は、赤土に対する水溶性のバインダーの添加量を少なくして、ほぼ全体を焼成無機粉末で構成して優れた殺菌力を実現できる。
【0033】
さらに、殺菌材の固形粒は、結合材を混合することなく、焼成流紋岩粉末を圧縮成形して造粒することもできる。この方法は、打錠機を使用して焼成流紋岩粉末を粒状に成形する。この固形粒は、杵と臼で焼成流紋岩粉末を加圧成形して粒状に成形する。打錠機は、臼に焼成流紋岩粉末を充填し、杵を挿入して焼成流紋岩粉末を圧縮して粒状に成形する。杵が焼成流紋岩粉末をプレスする打錠圧は、たとえば1〜30kN、好ましくは5〜30kN、さらに好ましくは約8〜25kNである。圧縮成形して造粒された殺菌材の固形粒は、結合材を添加することなく、全体を焼成流紋岩粉末とする固形粒として、殺菌効果を極めて有効にできる。ただ、焼成流紋岩粉末を圧縮成形して造粒する方法は、焼成流紋岩粉末に、たとえば0.2重量%以下の滑択剤を添加して造粒することができる。滑択剤を添加する殺菌材の固形粒は、滑択剤の添加量をコントロールして、水が供給されて分散する状態を調整できる。滑択剤が焼成流紋岩粉末の分散を遅らせるからである。
【0034】
天然培地材をヤシガラ繊維とする圧縮培地は、
図1に示す工程で製造できる。この図の圧縮培地1は、ヤシガラ繊維2Aを立体的に方向性なく集合して、所定の厚さの板状に圧縮成形したもので、殺菌材3の固形粒4を分散状態に混合している。この圧縮培地1は、ヤシガラ繊維2Aと殺菌材3の固形粒4とを乾式混合し、これを圧縮成形して製造される。
【0035】
圧縮培地1は、二酸化チタンの含有量を0.2重量%とする焼成流紋岩粉末を使用して、1平方メートルの培地面積に対して、例えば10gないし1kg、好ましくは20gないし500gの殺菌材3の固形粒4を混合する。圧縮培地1は、殺菌材3の固形粒4の添加量が多すぎると製造コストが高くなり、反対に、殺菌材3の固形粒4の添加量が少なすぎると、十分な殺菌効果が期待できない。したがって、圧縮培地1は、殺菌材3の固形粒4の添加量を、要求される殺菌力と、製造コストを考慮して最適値に調整される。
【0036】
天然培地材2をヤシガラ繊維2Aとする圧縮培地1は、使用状態において、
図1に示すように、植物を植え付けするのに先立って給水される。この状態で、圧縮培地1は、ヤシガラ繊維2Aを圧縮された状態からもとの状態に復元し、殺菌材3の固形粒4は、水で崩壊する。とくに、表層部分に多量の殺菌材3の固形粒4を配置している圧縮培地1は、水で崩壊された固形粒4が細かな焼成流紋岩粉末5となって、主に表層部分に分散され、一部は復元された培地の内部にも分散される。この状態で、栽培台(図示せず)の上に約10cm〜15cmの厚さに成形して載置して植物を養液栽培する養液培地6となる。このとき、養液培地6は、好ましくは、分散された焼成流紋岩粉末5が表面付近に多量に配置されるように成形される。これにより、光線の照射強度が強くなる養液培地6の表面付近をより効果的に殺菌できる。ただ、復元された培地は、ヤシガラ繊維2Aと殺菌材3の固形粒4を撹拌して、固形粒4が崩壊して分散された焼成流紋岩粉末5を、天然培地材2に均一に分散させてもよい。
【0037】
以上の圧縮培地1は、ヤシガラ繊維2Aに殺菌材3の固形粒4を混合して圧縮したものであるが、この圧縮培地1には、殺菌材3の固形粒4に加えて、たとえば有機物や無機物を単独であるいはこれ等を混合することもできる。以上の圧縮培地1は、栽培台に載せる前工程で、水を供給して攪拌するので、この工程においても、固形粒4から分離された焼成流紋岩粉末5がより均一に分散されて、養液培地6にできる。ただ、圧縮培地は、栽培台に載せた状態で水を供給し、この状態で、天然培地材を圧縮された状態から元の状態に復元すると共に、殺菌材の固形粒の焼成流紋岩粉末を分散して養液培地とすることもできる。
【0038】
以上の圧縮培地は、供給される水で培地に拡散した二酸化チタンが、粒状の焼成流紋岩に比較して表面積が飛躍的に増加する。焼成流紋岩に含有される二酸化チタンの光触媒作用は、表面積に比例して強くなる。したがって、微細な粉末の状態で培地に分散された焼成流紋岩は、光触媒の作用で極めて効率よく培地を殺菌する。さらに焼成流紋岩は、高温で焼成されて微細な空隙の多孔質状態となっている。多孔質な焼成流紋岩粉末は、表面から水分を速やかに吸水する。水分を吸収して保水した焼成流紋岩粉末は、表面の赤土との結合を低下させて速やかに分散する。このことから、焼成流紋岩粉末を造粒している以上の殺菌材は、焼成した流紋岩を破砕した殺菌材よりも優れた殺菌力を実現する。
【0039】
本発明者は、焼成流紋岩粉末と赤土を同じ重量比で混合して、粒径を5mmとする殺菌材の固形粒を製造し、この固形粒を天然培地材のヤシガラ繊維に混合して圧縮培地を試作し、この圧縮培地には、培地面積1m
2に100gの割合で添加して養液培地とし、この養液培地に大腸菌を添加して、大腸菌が殺菌される状態を観察すると、7日経過後に大腸菌はほぼ完全に殺菌された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の圧縮培地は、農業用の植物培地に使用される圧縮培地として、とくに、焼成流紋岩に含まれる二酸化チタンの光触媒作用で殺菌される圧縮培地として、植物の栽培に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0041】
1…圧縮培地
2…天然培地材
2A…ヤシガラ繊維
3…殺菌材
4…固形粒
5…焼成流紋岩粉末
6…養液培地