(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-23555(P2021-23555A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】コーヒードリッパー用の湯量無段階調整器
(51)【国際特許分類】
A47J 31/46 20060101AFI20210125BHJP
A47J 31/02 20060101ALI20210125BHJP
【FI】
A47J31/46
A47J31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-144130(P2019-144130)
(22)【出願日】2019年8月6日
(71)【出願人】
【識別番号】719005091
【氏名又は名称】大澤 広輔
(72)【発明者】
【氏名】大澤 広輔
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA02
4B104BA62
4B104CA26
4B104EA33
(57)【要約】
【課題】 習熟度に拘らず所望の流下速度を可能とする機能をコーヒードリッパーに付与する速度調整器を提供すること。
【解決手段】 抽出孔部品20を回転することで、液体の通過経路の面積を無段階で調整できるようにすることを特徴とした速度抽出装置1で、コーヒードリッパーに装着することで、無段階でお湯の流下速度が調整可能になり、コーヒーの濃さの調整や、浸漬式抽出、水出しコーヒーなど多様な抽出方法で淹れることができるようになる速度調整器1を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリッパーまたはその他のコーヒー抽出器の下部に装着し、液体の通過経路の面積を無段階で調整できるようにすることを特徴とした速度調整器。
【請求項2】
前記速度調整器は、速度調整孔を備えた抽出孔部品を有し、抽出孔部品を回転させることで、液体の通過経路の面積を無段階で調整できるようにすることを特徴とした速度調整器。
【請求項3】
前記速度調整器は、雌ネジを有し、雄ネジを有したコーヒードリッパーに装着することができる速度調整器。
【請求項4】
前記雌ネジは2重構造になっており、水漏れが起きないことを特徴とする速度調整器。
【請求項5】
前記速度調整器と前期抽出孔部品との間には、パッキンを有し、水漏れが起きないことを特徴とする速度調整器。
【請求項6】
前期抽出孔部品には、フラッパー部品を装着可能とし、フラッパー部品の回転操作によって、液体の通過経路の面積を無段階で調整できるようにすることを特徴とした速度調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリスタ等が湯を手で注ぐ際に用いるコーヒードリッパー用の湯量無段階調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、豆の種類、焙煎方法等により味や香りが異なる上に、同じ焙煎方法で焙煎された同じ種類の豆であっても、挽き目、豆量、蒸らし時間、抽出時間、湯温度、湯量等の抽出条件により、コーヒーの濃度が変化する。嗜好品であるコーヒーの濃度に対する好みは人それぞれ異なり、バリスタが利用者の好みに調節して抽出したコーヒーを提供する店舗がある。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるように、手ずからコーヒーを抽出するために使用されるドリッパーは、フィルタが設置される漏斗状の保持部の底部には孔が形成されており、保持部に設置されたペーパーフィルター内にコーヒー豆を挽いた挽き豆(被抽出物)を入れ、挽き豆へお湯(溶媒)を注ぐことで、挽き豆からお湯に成分が抽出されて生成されたコーヒーが孔から流下するようになっている。
【0004】
このようなドリッパーにあっては、保持部にお湯を注ぐ際に、注がれるお湯の総量が同じであっても、単位時間当たりに注がれる湯量を多くする(早く注ぐ)と、保持部内のお湯は孔から素早く流下し、お湯と挽き豆とが混在する時間が短時間となり、濃度の薄いコーヒーを抽出することができ、一方で、単位時間当たりに注がれる湯量を少なくする(ゆっくり注ぐ)と、保持部内のお湯は孔から時間をかけて流下し、お湯と挽き豆とが混在する時間が長時間となり、濃度の濃いコーヒーを抽出することができる。このように注がれるお湯の単位時間あたりの量を調節することで、バリスタはコーヒーの濃度を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−14641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、コーヒーを提供するチェーン店舗が増加するにつれ、これまで以上に外出先で手軽にコーヒーを楽しむことが人々の間に浸透し、より身近な嗜好品としてコーヒーの需要が高まっている。一方で、このようなチェーン店舗では同一品質のコーヒーの提供が主であるが、自分好みの濃度でコーヒーを楽しみたいという要望も高まってきており、バリスタが利用者の好みに調節して抽出したコーヒーを提供する往年のスタイルの店舗が再度注目されてきている。このような店舗の需要が増えつつあるものの、需要に応えられるだけの店舗数に必要なバリスタを確保することは容易でないことから、このような店舗においてバリスタでない従業員がコーヒーの抽出を行う場面も考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来のドリッパーでは、単位時間当たりに注がれる湯量に比例して単位時間当たりに孔から流出するコーヒー量が変化する構造であり、コーヒーの濃度を調整するためには、お湯を注ぐという技術に対する習熟度が必要であるため、習熟度の低い従業員には所望の濃度でコーヒーを抽出することが困難であった。また、近年では、浸漬式抽出方法や水出しコーヒー等が着目されているが、従来のコーヒードリッパーでは、このような抽出をすることは難しい。本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、習熟度に拘らず所望の流下速度を可能とする機能をコーヒードリッパーに付与する速度調整器を提供し、多様なコーヒーの抽出方法を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ドリッパーまたはその他のコーヒー抽出器の下部に装着し、液体の通過経路の面積を無段階で調整できるようにすることを特徴とした速度調整器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の速度調整器をドリッパーに装着することで、お湯の流下速度が無段階で調整できるようになり、コーヒーの多様な抽出方法が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】速度調整器を上方から見た分解斜視図である。
【
図4】速度調整器を下方から見た分解斜視図である。
【
図5】速度調整器を示す側断面図および平面図である。
【
図6】速度調整器での流路の変形例を示す側断面図および平面図である。
【
図7】速度調整器での流路の変形例を示す側断面図および平面図である。
【
図9】速度調整器をドリッパーに装着する前と、装着時の下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る抽出装置を実施するための形態を実施例に戻づいて以下に説明する。
【0012】
図1、
図2は速度調整器1を上方、下方から見た斜視図である。
図3、
図4は速度調整器1を上方、下方から見た分解斜視図である。速度調整器1は速度調整器本体10と、抽出孔部品20とフラップ部品30とからなる。速度調整器本体10には雌ネジ200があり、
図9のように雄ネジのあるドリッパーに装着することができる。雌ネジ200は平面に対して垂直なリブ800を雌ネジ200と速度調整器本体10中心部との間に円形状にもつ2重構造になっており、ドリッパー本体側の雄ネジに装着する際に、しなる構造になっているため圧着度が増し、水漏れを防ぐことができる。またドリッパーへの装着方法は、ネジ構造を用いたものでなくても構わない。速度調整器本体10には、挿入口910があり、抽出孔部品20を挿入することができる。速度調整器本体10には、出口孔400があり、ここからコーヒーの抽出液が流下する。
【0013】
抽出孔部品20の先端920の直径は速度調整器本体10の挿入口910の内円の直径と同様とし、挿入口910に挿入することができる。抽出孔部品20には、速度調整器本体10の奥まで挿入をした際に、出口孔400の位置と合う位置に円柱形の速度調整孔100を有する。速度調整孔100は、正面に対して垂直に突き抜ける形で貫通している。速度調整孔100と柄940の間には、パッキン500があるため、速度調整器本体10に抽出孔部品20を装着した際に、挿入口910から水漏れが発生しないようにする機能を有する。
【0014】
抽出孔部品20は、回転ツマミ600を有する。速度調整器本体10に抽出孔部品20を装着した際に、回転ツマミ600をつまむことで挿入口910に対して平面上に、抽出孔部品20全体を回転することができる。回転ツマミ600はつまんで回転することが可能であれば
図10のように変形してもよいものとする。抽出孔部品20には、鍵穴300があり、フラップ部品30の挿入端930を挿入することができる。
【0015】
フラップ部品30はフラップ700を有する。また挿入端930を抽出孔部品20の鍵穴300に挿入し、フラップ700をつまむことで挿入口910に対して平面上に抽出孔部品20およびフラップ部品30全体を回転することができる。フラップ700の形状は、つまんで回転することが可能であれば
図11のように変形してもよいものとする。また、フラップ700は、回転つまみ600よりも大きいため回転角度の調整が行いやすい。このため、液体の通過経路の面積を簡単に調整できる。更に、フラップ700の回転状態を目視で容易に確認できるので、液体の通過経路の面積の設定状態を容易に把握できる。更に、フラップ部品30は、抽出孔部品20に抜き差し可能であるから、液体の通過経路の面積の設定の後は引き抜いておくことで邪魔にならないようにできる。なお、図示しないが、挿入端930及び鍵穴300を必ず同じ位置関係で差し込む形状にすれば、速度調整孔100の位置とフラップ700との位置関係が固定されるので、フラップ700の回転位置と速度調整孔100の回転位置とが特定される。
【0016】
速度調整器本体10と、抽出孔部品20は、常時装着した状態で使うものとする。フラップ部品30は抽出孔部品20に装着することができるが、装着しなくても抽出孔部品20は独立して回転させることができるものとする。抽出孔部品20の鍵穴300とフラップ部品30の挿入端930の形状は図にあるものに限らない。また、速度調整器本体10と、抽出孔部品20と、フラップ部品30は分解をして洗浄をすることができる。
【0017】
抽出孔部品20は速度調整器本体10に装着した状態で、最大で90度の角度を回転させることができる。このとき、フラップ部品30を抽出孔部品20に装着した状態で、フラップ部品30を持ち回転させてもよい。
【0018】
抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転するとき、ドリッパーに装着されている速度調整器本体10は、回転による摩擦力がドリッパー本体を回すほどの力を有しないため、回転しないものとする。この回転時の摩擦力は、前記パッキン500の形状や素材により自在に変更できる。
【0019】
図5での状態から、半時計周りにフラップ部品30が水平となる
図7の状態まで、無段階に回転させることができる。回転に伴い、抽出孔部品20も回転する。速度調整孔100の位置も回転に伴って移動し、液体の通過経路の面積を変動させることができる。
【0020】
図5の状態では、液体の通過面積はゼロとなる。
図6の状態では液体の通過面積は半分となる。
図7の状態では全開放となり最大面積となる。回転方向の反転および、回転角度は調整ができるものとする。
【0021】
回転角度は、
図5、
図6、
図7で図示される角度とは限らない。つまり回転に伴って液体の通過経路の面積はゼロから最大まで、無段階で調整ができるものとする。また、一定角度の回転をするたびにクリック音を出したり、目盛表記をつけ現在の角度を明示したりすることもできる。
【0022】
速度調整器本体10の出口孔400の内側面と、抽出孔部品20との間には、円形のパッキン900があり、水漏れを起こさないようにする機能を有する。パッキン900は、出口孔400に圧着されているため、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転するときに回転しないものとする。
【0023】
パッキン900の内側の円の直径は、出口孔400の直径よりも大きいものとする。パッキン900の内側の円の直径は、速度調整孔100の直径よりも大きいものとする。その範囲内において速度調整孔100の直径は可能な限り大きいものとする。
【0024】
液体の通過経路の面積は速度調整孔100の直径の値を最大とし抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転するとき、最大値からゼロまで、無段階で調整ができる。そのため以下の実施例の取り扱いを可能とする。
【0025】
(実施例1)
コーヒードリッパーに速度調整器1を装着した状態で、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図7の状態にして、コーヒードリッパーに乗せた挽き豆にお湯をかける。この状態では、お湯は最速で流下するため、挽き豆とお湯の触れている抽出時間が短くなり、薄いコーヒーが下に落ちる。
【0026】
(実施例2)
コーヒードリッパーに速度調整器1を装着した状態で、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図6の状態にして、コーヒードリッパーに乗せた挽き豆にお湯をかける。この状態では、お湯はゆっくりと流下するため、挽き豆とお湯の触れている抽出時間が長くなり、濃いコーヒーが下に落ちる。
【0027】
(実施例3)
コーヒードリッパーに速度調整器1を装着した状態で、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図5の状態にして、コーヒードリッパーに乗せた挽き豆にお湯をかける。この状態では、お湯は流下しないため、ドリッパー内でお湯と挽き豆が浸漬される浸漬式の抽出が可能になる。時間を数分おいてから、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図7の状態にすることで一気にコーヒーが下に落ちる。
【0028】
(実施例4)
コーヒードリッパーに速度調整器1を装着した状態で、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図5と
図6の中間の角度にする。液体の通過経路の面積を小さくすることで、液体の流量を最小にする。コーヒードリッパーに乗せた挽き豆に常温の水をかける。5時間〜10時間で水が落ち切るように流下速度を調整することで水出しコーヒーの抽出が可能になる。
【0029】
(実施例5)
コーヒードリッパーに速度調整器1を装着した状態で、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図7の状態にして、コーヒードリッパーに乗せた挽き豆にお湯をかける。この状態では、お湯は最速で流下するため、挽き豆とお湯の触れている抽出時間が短くなり、薄いコーヒーが下に落ちる。コーヒーが途中で落ち切る前に、抽出孔部品20またはフラップ部品30を回転させ、
図6の状態にすることで、液体の通過経路の面積が変わり、コーヒーの落ちる速度が遅くなり、抽出時間の途中からの調整が可能になる。
【符号の説明】
【0030】
1 速度調整器
10 速度調整器本体
20 抽出孔部品
30 フラップ部品
100 速度調整孔
200 雌ネジ
300 鍵穴
400 出口孔
500 パッキン(1)
600 回転ツマミ
700 フラップ
800 リブ
900 パッキン(2)
910 挿入口
920 先端
930 挿入端
940 柄