(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-24074(P2021-24074A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】放電加工装置の放電加工ユニット
(51)【国際特許分類】
B23H 1/10 20060101AFI20210125BHJP
B23H 7/26 20060101ALI20210125BHJP
【FI】
B23H1/10 Z
B23H7/26 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-163003(P2019-163003)
(22)【出願日】2019年9月6日
(11)【特許番号】特許第6664028号(P6664028)
(45)【特許公報発行日】2020年3月13日
(31)【優先権主張番号】201910722318.3
(32)【優先日】2019年8月6日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】土肥 祐三
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB01
3C059AB07
3C059DA03
3C059EA02
3C059EA03
3C059EC05
(57)【要約】
【課題】加工箇所近傍に加工液を安定的に供給可能な放電加工ユニットを提供する。
【解決手段】本発明によれば、工具電極と、ハウジングと、電極ガイドと、加工液供給装置とを備える放電加工ユニットが提供される。工具電極は、電極ガイドに挿通される。ハウジングは、テーパ面を有する嵌合孔を備え、テーパ面には、第1供給路出口が設けられ、ハウジング内には、加工液供給装置と第1供給路出口とを接続する第1供給路が形成される。電極ガイドは、テーパ形状を有するテーパ部と、下面に形成された噴射口とを備え、テーパ部のテーパ面には、第1接続口が設けられ、電極ガイド内には、第1接続口と噴射口とを接続する第1流通経路が形成される。テーパ部が嵌合孔に嵌合することにより、第1流通経路は第1供給路と、第1接続口及び第1供給路出口を介して接続される。加工液供給装置から第1供給路及び第1流通経路に供給された加工液は、噴射口から噴射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具電極と、ハウジングと、電極ガイドと、加工液供給装置とを備える放電加工ユニットであって、
前記工具電極は、前記電極ガイドの中心軸に沿って前記電極ガイドに挿通されて被加工物との間で放電加工を行い、
前記ハウジングは、テーパ面を有する嵌合孔を備え、
前記テーパ面には、第1供給路出口が設けられ、
前記ハウジング内には、前記加工液供給装置と前記第1供給路出口とを接続する第1供給路が形成され、
前記電極ガイドは、上方に向かって先細るテーパ形状を有するテーパ部と、下面に形成された噴射口とを備え、
前記テーパ部のテーパ面には、第1接続口が設けられ、
前記電極ガイド内には、前記第1接続口と前記噴射口とを接続する第1流通経路が形成され、
前記テーパ部が前記嵌合孔に嵌合することにより、前記第1流通経路は前記第1供給路と、前記第1接続口及び前記第1供給路出口を介して接続され、
前記加工液供給装置は、前記第1供給路及び前記第1流通経路に加工液を供給し、
前記加工液は、前記噴射口から噴射される、放電加工装置の放電加工ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の放電加工ユニットであって、
前記第1流通経路は、前記工具電極と前記電極ガイドの内面との間に形成された加工液充填領域を備え、且つ前記加工液充填領域を介して前記噴射口に接続される、放電加工ユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の放電加工ユニットであって、
前記第1接続口は、第1環状凹部と、複数の第1開口部とを備え、
前記第1環状凹部は、前記テーパ部の周方向に沿って延び、
前記複数の第1開口部は、前記第1環状凹部の周方向において離間するように前記第1環状凹部の底面に形成され、
前記第1接続口は、前記第1開口部を介して前記第1流通経路に接続される、放電加工ユニット。
【請求項4】
請求項2又は請求項2を引用する請求項3に記載の放電加工ユニットであって、
圧縮気体供給装置をさらに備え、
前記ハウジングの前記テーパ面には、第2供給路出口が設けられ、
前記ハウジング内には、前記圧縮気体供給装置と前記第2供給路出口とを接続する第2供給路が形成され、
前記テーパ部の前記テーパ面には、第2接続口が設けられ、
前記電極ガイド内には、前記第2接続口と前記噴射口とを接続する第2流通経路が形成され、
前記第2流通経路は、圧縮気体供給空間と、前記圧縮気体供給空間よりも下流側に設けられたミスト生成空間とを備え、
前記加工液充填領域は、前記ミスト生成空間に連通し、前記ミスト生成空間を介して前記噴射口に接続され、
前記テーパ部が前記嵌合孔に嵌合することにより、前記第2流通経路は前記第2供給路と、前記第2接続口及び前記第2供給路出口を介して接続され、
前記圧縮気体供給装置は、前記第2供給路及び前記第2流通経路に圧縮気体を供給し、
前記加工液は、前記ミスト生成空間において前記圧縮気体と混合されることにより霧状に微粒子化し、前記噴射口からミストとして噴射される、放電加工ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の放電加工ユニットであって、
前記第2接続口は、前記第1接続口よりも前記電極ガイドの前記下面に近い位置に配置される、放電加工ユニット。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の放電加工ユニットであって、
前記第1接続口と前記第2接続口とは相互に異なる高さに設けられ、
前記テーパ部の前記テーパ面には、前記第1接続口及び前記第2接続口の間に前記テーパ部の周方向に沿って延びる少なくとも1つの環状溝が形成され、
前記環状溝には、Oリングが嵌入される、放電加工ユニット。
【請求項7】
請求項2を引用する請求項4〜請求項6の何れか1つに記載の放電加工ユニットであって、
前記第2流通経路の前記圧縮気体供給空間は、前記加工液充填領域に沿って設けられた一対の空間を備える、放電加工ユニット。
【請求項8】
請求項4〜請求項7の何れか1つに記載の放電加工ユニットであって、
前記第2接続口は、第2環状凹部と、複数の第2開口部とを備え、
前記第2環状凹部は、前記テーパ部の周方向に沿って延び、
前記複数の第2開口部は、前記第2環状凹部の周方向において離間するように前記第2環状凹部の底面に形成され、
前記第2接続口は、前記第2開口部を介して前記第2流通経路に接続される、放電加工ユニット。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1つに記載の放電加工ユニットであって、
前記工具電極を導通し且つ互いに離間して配置された複数のダイスをさらに備え、
前記工具電極と前記ダイスとの間には、間隙が設けられる、放電加工ユニット。
【請求項10】
請求項4を引用する請求項9に記載の放電加工ユニットであって、
前記電極ガイドは、前記テーパ部よりも下流側に設けられたダイス固定部をさらに備え、
前記ダイス固定部は、前記複数のダイスのうちの少なくとも1つであって、前記テーパ部よりも下流側に配置されるダイスを固定し、
前記ダイス固定部の内面上には、前記ダイス固定部の前記内面の周方向において離間された複数の加工液噴出溝が形成され、
前記加工液充填領域は、前記加工液噴出溝を介して前記ミスト生成空間に連通する、放電加工ユニット。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか1つに記載の放電加工ユニットであって、
前記工具電極は、前記中心軸の周りに回転可能である、放電加工ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具電極との間で被加工物を放電加工する放電加工装置の放電加工ユニットに関するものであり、特に、空気中において被加工物の加工箇所に加工液を噴射させながら放電加工を行う放電加工ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の工作機械に搭載される加工ユニットにおいて、空気中で被加工物を加工する際に、構成部品の冷却に用いられる加工液を噴射させ、加工中に生じる加工屑を除去しながら加工を行うことがある。加工液を加工箇所近傍に供給するために、加工用工具が収容されるハウジング等の構成部品に加工液等の流路を形成した加工ユニットが知られている。
【0003】
特許文献1には、空気中において被加工物と工具電極との間に放電を発生させながら被加工物を放電加工する放電加工装置が開示されている。この放電加工装置は、工具電極が収容されるエクステンドガイドと、エクステンドガイドを保持するハウジングとを備える。ハウジング及びエクステンドガイドそれぞれの内部には加工液の流路が形成され、流路同士が接続されると供給装置から加工液が流路中に供給され、工具電極の先端部近傍に噴射される。
【0004】
ところで、工具電極は、工具電極の消耗又は加工深さ等の加工条件を考慮して交換される。異なる外径の工具電極への交換が求められる場合は、工具電極のガイド部品等も共に交換される。特許文献2には、細穴放電加工において、多種の異径の工具電極を電極ホルダごと交換する自動交換装置を備える放電加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6495518号
【特許文献2】特許第4152602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の放電加工ユニットを導入する場合、工具電極と共にガイド部品を交換する度に、ハウジング及びガイド部品それぞれの内部に形成された流路同士を接続する必要がある。しかし、交換が頻回に行われる場合、特に、自動交換装置により交換が行われる場合には、ガイド部品の位置決めを確実に行うことが困難であり、上述のような放電加工ユニットを導入するうえでの障壁となっている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、放電加工装置への装着時における構成部品間の流路同士の接続が確実且つ容易であり、加工箇所近傍に加工液を安定的に供給可能な放電加工ユニットを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、工具電極と、ハウジングと、電極ガイドと、加工液供給装置とを備える放電加工ユニットであって、前記工具電極は、前記電極ガイドの中心軸に沿って前記電極ガイドに挿通されて被加工物との間で放電加工を行い、前記ハウジングは、テーパ面を有する嵌合孔を備え、前記テーパ面には、第1供給路出口が設けられ、前記ハウジング内には、前記加工液供給装置と前記第1供給路出口とを接続する第1供給路が形成され、前記電極ガイドは、上方に向かって先細るテーパ形状を有するテーパ部と、下面に形成された噴射口とを備え、前記テーパ部のテーパ面には、第1接続口が設けられ、前記電極ガイド内には、前記第1接続口と前記噴射口とを接続する第1流通経路が形成され、前記テーパ部が前記嵌合孔に嵌合することにより、前記第1流通経路は前記第1供給路と、前記第1接続口及び前記第1供給路出口を介して接続され、前記加工液供給装置は、前記第1供給路及び前記第1流通経路に加工液を供給し、前記加工液は、前記噴射口から噴射される、放電加工装置の放電加工ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る放電加工ユニットにおいては、テーパ部をハウジングに嵌合することにより、電極ガイドの中心軸方向におけるハウジングに対する電極ガイドの位置は一意的に決まるため、第1供給路と第1流通経路との接続が容易である。このように、電極ガイドを放電加工装置へ装着する際の構成部品間の流路同士の接続がより確実且つ容易であるため、電極ガイドが頻回に行われる工程や電極ガイドが自動交換される放電加工装置においても導入でき、加工液の安定的な供給が可能となる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0011】
好ましくは、前記第1流通経路は、前記工具電極と前記電極ガイドの内面との間に形成された加工液充填領域を備え、且つ前記加工液充填領域を介して前記噴射口に接続される。
【0012】
好ましくは、前記第1接続口は、第1環状凹部と、複数の第1開口部とを備え、前記第1環状凹部は、前記テーパ部の周方向に沿って延び、前記複数の第1開口部は、前記第1環状凹部の周方向において離間するように前記第1環状凹部の底面に形成され、前記第1接続口は、前記第1開口部を介して前記第1流通経路に接続される、
【0013】
好ましくは、前記放電加工ユニットは、圧縮気体供給装置をさらに備え、前記ハウジングの前記テーパ面には、第2供給路出口が設けられ、前記ハウジング内には、前記圧縮気体供給装置と前記第2供給路出口とを接続する第2供給路が形成され、前記テーパ部の前記テーパ面には、第2接続口が設けられ、前記電極ガイド内には、前記第2接続口と前記噴射口とを接続する第2流通経路が形成され、前記第2流通経路は、圧縮気体供給空間と、前記圧縮気体供給空間よりも下流側に設けられたミスト生成空間とを備え、前記加工液充填領域は、前記ミスト生成空間に連通し、前記ミスト生成空間を介して前記噴射口に接続され、前記テーパ部が前記嵌合孔に嵌合することにより、前記第2流通経路は前記第2供給路と、前記第2接続口及び前記第2供給路出口を介して接続され、前記圧縮気体供給装置は、前記第2供給路及び前記第2流通経路に圧縮気体を供給し、前記加工液は、前記ミスト生成空間において前記圧縮気体と混合されることにより霧状に微粒子化し、前記噴射口からミストとして噴射される。
【0014】
好ましくは、前記第2接続口は、前記第1接続口よりも前記電極ガイドの前記下面に近い位置に配置される。
【0015】
好ましくは、前記第1接続口と前記第2接続口とは相互に異なる高さに設けられ、前記テーパ部の前記テーパ面には、前記第1接続口及び前記第2接続口の間に前記テーパ部の周方向に沿って延びる少なくとも1つの環状溝が形成され、前記環状溝には、Oリングが嵌入される
【0016】
好ましくは、前記第2流通経路の前記圧縮気体供給空間は、前記加工液充填領域に沿って設けられた一対の空間を備える。
【0017】
好ましくは、前記第2接続口は、第2環状凹部と、複数の第2開口部とを備え、前記第2環状凹部は、前記テーパ部の周方向に沿って延び、前記複数の第2開口部は、前記第2環状凹部の周方向において離間するように前記第2環状凹部の底面に形成され、前記第2接続口は、前記第2開口部を介して前記第2流通経路に接続される。
【0018】
好ましくは、前記放電加工ユニットは、前記工具電極を導通し且つ互いに離間して配置された複数のダイスをさらに備え、前記工具電極と前記ダイスとの間には、間隙が設けられる。
【0019】
好ましくは、前記電極ガイドは、前記テーパ部よりも下流側に設けられたダイス固定部をさらに備え、前記ダイス固定部は、前記複数のダイスのうちの少なくとも1つであって、前記テーパ部よりも下流側に配置されるダイスを固定し、前記ダイス固定部の内面上には、前記ダイス固定部の前記内面の周方向において離間された複数の加工液噴出溝が形成され、前記加工液充填領域は、前記加工液噴出溝を介して前記ミスト生成空間に連通する。
【0020】
好ましくは、前記工具電極は、前記中心軸の周りに回転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る放電加工ユニットの、電極ガイドの中心軸を通る平面における正面断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る放電加工ユニットの分解図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電極ガイドの斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電極ガイドの正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る電極ガイドの断面図である。
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0023】
1.放電加工ユニットの構成
図1に示すように、本発明の一実施形態の放電加工ユニット100は、被加工物(不図示)の加工部分に加工液のミストを噴射しつつ、放電加工を行うためのものである。放電加工ユニット100は、工具電極1と、電極ガイド2と、ハウジング3と、加工液供給装置5と、圧縮気体供給装置6とを備える。尚、
図1における放電加工ユニット100の上方及び右側からの矢印(白色矢印)は、圧縮気体供給装置6から送られる圧縮気体を示し、加工液供給装置5からの矢印は、加工液供給装置5から送られる加圧加工液を示す。
【0024】
1.1.工具電極
工具電極1は、内部に中空孔が設けられた円筒型のパイプ電極であり、外径は、例えば、0.3〜3.0mmである。工具電極1は、電極ガイド2の中心軸に沿って少なくとも先端が突出するように電極ガイド2に挿通され、被加工物との間に電圧が印加されることにより放電を発生させる。放電加工中、工具電極1は、放電加工ユニット100の上方に存在する回転駆動部(不図示)により電極ガイド2の中心軸周りに回転可能である。また、工具電極1の中空孔内には、圧縮気体供給装置6から圧縮気体が供給され、被加工物の加工部分に噴射される。尚、本実施形態における工具電極1は、断面が円形の中空孔を有するパイプ電極であるが、任意の形状及び個数の中空孔を有するパイプ電極を使用可能であり、中空孔を有しない棒状電極を使用してもよい。また、電極ガイド2に挿通可能であれば、工具電極1の先端部分は任意の形状であってもよい。
【0025】
1.2.ハウジング
図1及び
図2に示すように、ハウジング3は、テーパ面3bを有する嵌合孔3aを備え、放電加工ユニット100の上方に存在する支持機構(不図示)により支持されている。ハウジング3のテーパ面3bには、第1供給路出口7a及び第2供給路出口8aが設けられる。ハウジング3内には、加工液供給装置5及び第1供給路出口7aを接続する第1供給路7と、圧縮気体供給装置6及び第2供給路出口8aを接続する第2供給路8とが形成される。第1供給路7は、加圧加工液を加工液供給装置5から電極ガイド2へと供給するための流路であり、第2供給路8は、圧縮気体を圧縮気体供給装置6から電極ガイド2へと供給するための流路である。
【0026】
1.3.加工液供給装置
加工液供給装置5は、加圧加工液を供給するためのものである。加工液としては、例えば、水、水溶性加工液、油性加工液等を用いることができる。本実施形態においては、加工液として水を用いる。
【0027】
1.4.圧縮気体供給装置
圧縮気体供給装置6は、圧縮気体を供給するためのものである。圧縮気体としては、例えば、空気、酸素、窒素、アルゴン等を用いることができる。本実施形態においては、圧縮気体として空気を用いる。
【0028】
1.5.電極ガイド
図3及び
図4に示すように、電極ガイド2は、上方に向かって先細るテーパ形状を有するテーパ部2aと、テーパ部2aよりも下方(圧縮気体の流れについて下流側)に設けられたダイス固定部2cと、下面に形成された噴射口2dとを備える。電極ガイド2は、放電加工ユニット100の上方に存在する引き上げ機構(不図示)に対して、引き上げ機構が備えるばね(不図示)により上方に向かって付勢された状態で、着脱可能に装着されている。テーパ部2aのテーパ面2bには、テーパ部2aの周方向に沿って延びる環状凹部を有する第1接続口9a及び第2接続口10aが、第2接続口10aが第1接続口9aよりも電極ガイド2の下面に近い位置に配置されるように設けられる。
【0029】
図1、
図2、及び
図5に示すように、電極ガイド2内には、第1接続口9aと噴射口2dとを接続する第1流通経路9が形成される。第1流通経路9は、後述のように第1供給路7と接続されて、加工液供給装置5から供給される加圧加工液の流路となる。第1流通経路9は、電極ガイド2の中心軸に沿って挿通される工具電極1と電極ガイド2の内面との間に形成された加工液充填領域9cを備える。つまり、第1流通経路9は、加工液充填領域9cを介して噴射口2dに接続される。加工液供給装置5が第1供給路7及び第1流通経路9に加圧加工液を供給すると、加工液が加工液充填領域9cに充填される。これにより、加工液充填領域9cに挿通される工具電極1を、加工液充填領域9c内を流通する加工液により効率的に冷却することが可能となり、放電加工時の工具電極1の消耗を抑制することができる。
【0030】
図3から
図6に示すように、第1接続口9aは、第1環状凹部9a1と、第1環状凹部9a1の周方向において離間するように第1環状凹部9a1の底面に形成された複数の第1開口部9a2とを備え、第1接続口9aは、複数の第1開口部9a2を介して第1流通経路9に接続される。本実施形態においては、第1環状凹部9a1の周方向において対向する位置に2つの第1開口部9a2が形成されている。加工液供給装置5が第1供給路7及び第1流通経路9に加圧加工液を供給すると、加工液は2つの第1開口部9a2を介して第1流通経路9へと送られる。これにより、加工液充填領域9cにおいて加工液を偏りなく安定的に流通させることができる。本実施形態においては第1開口部9a2の数は2つであるが、3つ以上の第1開口部9a2を設けてもよく、好ましくは、複数の第1開口部9a2は、第1環状凹部9a1の周方向において等角度毎に配置される。
【0031】
図3から
図5、及び
図7に示すように、電極ガイド2内には、第2接続口10aと噴射口2dとを接続する第2流通経路10がさらに形成される。第2流通経路10は、後述のように第2供給路8と接続されて、圧縮気体供給装置6から供給される圧縮気体の流路となる。第2流通経路10は、圧縮気体供給空間10cと、圧縮気体供給空間10cよりも下方(圧縮気体の流れについて下流側)に設けられたミスト生成空間10eとを備える。
【0032】
圧縮気体供給空間10cは、加工液充填領域9cに沿って設けられた一対の空間10dを備える。本実施形態においては、加工液充填領域9cを挟むように一対の空間10dが設けられている。圧縮気体供給装置6が第2供給路8及び第2流通経路10に圧縮気体を供給すると、圧縮空気は一対の空間10dを経由してミスト生成空間10eに送られる。これにより、ミスト生成空間10eに送られる空気の流れを均一化することができる。
【0033】
第2接続口10aは、第2環状凹部10a1と、第2環状凹部10a1の周方向において離間するように第2環状凹部10a1の底面に形成された複数の第2開口部10a2とを有し、第2接続口10aは、複数の第2開口部10a2を介して第2流通経路10に接続される。本実施形態においては、第2環状凹部10a1の周方向において対向する位置に2つの第2開口部10a2が形成されている。圧縮気体供給装置6が第2供給路8及び第2流通経路10に圧縮気体を供給すると、圧縮空気は2つの第2開口部10a2を介して第2流通経路10へと流入する。本実施形態においては、2つの第2開口部10a2が圧縮気体供給空間10cの一対の空間10dにそれぞれ接続されており、このような構成により、圧縮空気をミスト生成空間10eに偏りなく安定的に送ることができる。
【0034】
上述のように、本実施形態においては、第2接続口10aが第1接続口9aよりも電極ガイド2の下面に近い位置に配置されるように設けられる。電極ガイド2のテーパ部2aは下方に向かって広がるテーパ形状を有するため、上述のように各接続口を配置することで、電極ガイド2内に加圧加工液及び圧縮空気の流路を設けるうえで十分なスペースを確保することができる。
【0035】
図5に示すように、加工液充填領域9cには、工具電極1を導通し、且つ互いに離間して配置された複数のダイスが配置され、工具電極1とダイスとの間には、間隙が設けられる。本実施形態においては、3つのダイス17a,17b,17cが配置され、ダイス17aは加工液充填領域9cの上端に、ダイス17cは加工液充填領域9cの下端に、ダイス17bはダイス17aとダイス17cとの間に配置されている。また、ダイス17a,17b,17cと工具電極1との間には、間隙19a,19b,19cがそれぞれ設けられている。
【0036】
ダイス17a,17b,17cにより、放電加工中に生じる工具電極1の芯振れとそれに伴う加工位置のずれを防止し、高い精度で加工を行うことができる。また、工具電極1とダイス17a,17b,17cとの間隙19a,19b,19cを介して加圧加工液を流通させることで、ダイスからの流出点においてベンチュリ効果により負圧が生じる。この圧力差により、微小量の加工液を噴出させることができる。
【0037】
具体的には、加工液充填領域9cの上端部においては、工具電極1とダイス17aとの間の間隙19aから加工液充填領域9c内の加工液を噴出させることができ、これにより、加工液充填領域9cの上方に突出した加工用工具を冷却することができる。また、加工液充填領域9cの下端部においては、工具電極1とダイス17cとの間の間隙19cから加工液充填領域9c内の加工液をミスト生成空間10eへと補助的に噴出させることができる。尚、間隙の大きさは、好ましくは、0.0025〜0.010mmである。
【0038】
図5及び
図8に示すように、電極ガイド2のダイス固定部2cは、複数のダイスのうちテーパ部2aよりも下流側に設けられた少なくとも1つのダイスを固定する。本実施形態においては、ダイス17b,17cがダイス固定部2cの内面により固定されている。さらに、
図9に示すように、ダイス固定部2cの内面上には、ダイス固定部2cの内面の周方向において離間された複数の加工液噴出溝9dが形成される。本実施形態においては、ダイス固定部2cの内面の周方向において90度毎に、断面が同一径の略半円形状である4つの加工液噴出溝9dが、電極ガイド2の中心軸方向に延びるように形成されている。
【0039】
このような構成により、加工液充填領域9c内の加圧加工液を、加工液噴出溝9dを介してミスト生成空間10eに偏りなく供給し、ミスト生成空間10e内においてミストを生成して噴射口2dから安定的に噴射することができる。また、加工液噴出溝9dの数又はサイズを調整することで加工液の流量の調整が可能となり、一般にサファイア等の難削材を用いて作られるダイスに対して、流量の調整を目的としてさらなる加工を施す必要がない。
【0040】
加えて、加工液噴出溝9dを介して加圧加工液を流通させることで、加工液噴出溝9dからの流出点においてベンチュリ効果により負圧が生じる。この圧力差により、加工液を加工液噴出溝9dから噴出させることができ、ミスト生成空間10eにおけるミスト生成をより効率的に行うことができる。尚、加工液噴出溝9dの数、形状、配置等は上述の構成に限定されないが、同一の大きさ及び形状の加工液噴出溝9dをダイス固定部2cの内面の周方向において等角度毎に配置することが好ましく、断面が略半円形状の加工液噴出溝9dである場合の溝半径は、好ましくは、0.1〜0.4mmである。
【0041】
図3から
図5に示すように、テーパ部2aのテーパ面2bには、テーパ部2aの周方向に沿って延びる少なくとも1つの環状溝13が形成され、環状溝13にはOリング14が嵌入される。環状溝13のうちの少なくとも1つは、第1接続口9aと第2接続口10aとの間に形成される。本実施形態においては、第1接続口9aの上方、第1接続口9aと第2接続口10aとの間、第2接続口10aの下方の3箇所に環状溝13が形成され、Oリング14が嵌入されている。
【0042】
電極ガイド2は、ハウジング3に嵌合した状態で引き上げ機構により上方に向かって付勢されているため、
図1及び
図2に示すように、環状溝13に嵌入されたOリング14は、環状溝13の底面及びハウジング3のテーパ面3bに潰された状態となる。これにより、テーパ部2aのテーパ面2bに沿って第1接続口9a及び第2接続口10aそれぞれの両側がOリング14によりシールされる。これにより、各接続口から漏れ出した加工液及び圧縮気体が電極ガイド2の外部にさらに漏れ出すことを防止できる。
【0043】
2.電極ガイド及び工具電極の装着方法
図1及び
図2に示すように、電極ガイド2を取り付ける際には、テーパ部2aのテーパ面2bがハウジング3のテーパ面3bに密着するように、電極ガイド2のテーパ部2aをハウジング3の嵌合孔3aに対して下方から嵌合させて、第1流通経路9と第1供給路7とを第1接続口9a及び第1供給路出口7aを介して接続し、第2流通経路10と第2供給路8とを第2接続口10a及び第2供給路出口8aを介して接続する。これにより、電極ガイド2及びハウジング3内に形成された加工液流路同士及び圧縮空気の流路同士がそれぞれ接続される。
【0044】
このように、テーパ部2aの嵌合孔3aへの嵌合により、電極ガイド2の中心軸方向におけるハウジング3に対する電極ガイド2の位置は一意的に決まるため、流通経路と供給路との接続が容易である。加えて、本実施形態においては、第1接続口9a及び第2接続口10aがテーパ部2aの周方向に沿って延びる環状凹部を備えるため、周方向の任意の位置において第1供給路出口7a及び第2供給路出口8aとそれぞれ接続可能であり、流通経路と供給路との接続がより容易且つ確実となる。
【0045】
ハウジング3に嵌合された電極ガイド2は、放電加工ユニット100の上方に存在する引き上げ機構(不図示)に装着される。この状態で、工具電極1を、電極ガイド2の上方又は下方から電極ガイド2の中心軸に沿って挿通させて、放電加工ユニット100の上方に存在する回転駆動部(不図示)に装着する。
【0046】
3.放電加工時のミスト生成
次に、放電加工時のミスト生成について、より詳細に説明する。
【0047】
図1、
図5、
図8、及び
図9に示すように、本実施形態において、加工液充填領域9cは、間隙19c及び加工液噴出溝9dを介してミスト生成空間10eに連通する。従って、加工液供給装置5から供給された加圧加工液は、加工液充填領域9cから間隙19c及び加工液噴出溝9dを介してミスト生成空間10eへと噴出し、ミスト生成空間10eにおいて圧縮気体と混合されることにより霧状に微粒子化し、噴射口2dから工具電極1に沿うようにミストとして噴射される。これにより、加工箇所近傍の加工屑を効率的に除去できる。また、上述のように、工具電極1は、回転駆動部により回転可能である。これにより、噴射口2dから噴射されるミストをより均一に拡散させることができる。
【0048】
加工液をミスト状にして噴射する場合、加工箇所により近い放電加工ユニット100の下側でミストが生成されることが望ましい。加工箇所からより離れた位置で加工液が圧縮空気と混合すると、生成されたミストが加工箇所に移送される過程で凝集してミスト微粒子のサイズが大きくなり、加工屑の除去効果が低下する。本実施形態においては、第1接続口と第2接続口とを相互に異なる高さに設け、テーパ部2aのテーパ面2bに沿って第1接続口9a及び第2接続口10aそれぞれの両側をOリング14によりシールすることで、各接続口から漏れ出した加工液及び圧縮気体がミスト生成空間10eに至る前に混合することを防止できる。これにより、良質のミストを生成し、加工箇所近傍に安定的に送ることが可能となる。
【0049】
4.他の実施形態
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0050】
上述の実施形態においては、ハウジング3及び電極ガイド2それぞれに圧縮空気及び加圧加工液の2系統の流路を設け、加工液を圧縮空気との混合によりミストとして噴射している。他の実施形態として、例えば、加圧加工液の流路のみを設け、電極ガイド2の下面に形成された噴射口2dから加工液を噴射させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述のように、本発明によれば、放電加工装置への装着時における構成部品間の流路同士の接続が確実且つ容易であり、加工箇所近傍に加工液を安定的に供給可能な放電加工ユニットが提供される。本発明に係る放電加工ユニットは、具体的には、細穴放電加工装置、形彫放電加工装置、及びミスト放電加工装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 :工具電極
2 :電極ガイド
2a :テーパ部
2b :テーパ面
2c :ダイス固定部
2d :噴射口
3 :ハウジング
3a :嵌合孔
3b :テーパ面
5 :加工液供給装置
6 :圧縮気体供給装置
7 :第1供給路
7a :第1供給路出口
8 :第2供給路
8a :第2供給路出口
9 :第1流通経路
9a :第1接続口
9a1 :第1環状凹部
9a2 :第1開口部
9c :加工液充填領域
9d :加工液噴出溝
10 :第2流通経路
10a :第2接続口
10a1 :第2環状凹部
10a2 :第2開口部
10c :圧縮気体供給空間
10d :空間
10e :ミスト生成空間
13 :環状溝
14 :Oリング
17a :ダイス
17b :ダイス
17c :ダイス
19a :間隙
19b :間隙
19c :間隙
100 :放電加工ユニット