特開2021-24424(P2021-24424A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021024424-鉄道車両 図000003
  • 特開2021024424-鉄道車両 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-24424(P2021-24424A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 19/00 20060101AFI20210125BHJP
   B61D 17/06 20060101ALI20210125BHJP
   E05D 15/10 20060101ALI20210125BHJP
【FI】
   B61D19/00 A
   B61D17/06
   E05D15/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-143640(P2019-143640)
(22)【出願日】2019年8月5日
(11)【特許番号】特許第6784813号(P6784813)
(45)【特許公報発行日】2020年11月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大西 剛司
(72)【発明者】
【氏名】小畑 亮二
(72)【発明者】
【氏名】玉川 佑介
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝太
(72)【発明者】
【氏名】眞野 優太
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034FA01
2E034GA01
2E034GA08
2E034GB15
(57)【要約】
【課題】貫通扉の重心が貫通扉の開放方向前方側に位置する場合でも、貫通扉の開放動作を安定させることができる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】貫通扉7は、上部ローラ75が第1レール90に沿って転動する際に貫通扉7の前方側に向けた傾倒を規制する規制ローラ76を備える。規制ローラ76は、貫通扉7の閉鎖状態で天井面52に当接しているので、開放動作の初期段階で貫通扉7が前方側に向けて傾倒しようとしても、その傾倒を規制ローラ76で支えることができる。これにより、貫通扉7の重心Gが貫通扉7の前方側に位置する場合でも、貫通扉7の開放動作を安定させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向端面に形成される貫通口と、その貫通口を開閉する貫通扉と、その貫通扉の下端側をスライド可能に支持する下ガイドレールと、前記貫通扉の上端側に固定される上部ローラと、その上部ローラが転動可能に係合され前記車体に固定される上ガイドレールと、を備え、前記下ガイドレール及び前記上ガイドレールの各レールが、前後に延びる第1レールと、その第1レールの前後方向端部から左右に延びる第2レールと、を備える鉄道車両において、
前記貫通扉の重心は、前記貫通扉の開放方向前方側に位置し、
前記貫通扉は、前記上部ローラが前記第1レールに沿って転動する際に前記貫通扉の開放方向前方側に向けた傾倒を規制する規制ローラを備えることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記規制ローラは、前記貫通扉の内面側に固定されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
基端が前記車体に軸支され先端が前記上ガイドレールよりも下方側における前記貫通扉の内面に左右方向でスライド可能に接続されるガイドリンクを備え、
前記貫通扉が前記貫通口を閉鎖する閉鎖状態において、前記貫通扉における前記ガイドリンクの接続位置は、前記貫通扉の左右方向中央よりも前記ガイドリンクの軸側である一端側に位置し、前記貫通扉における前記規制ローラの固定位置は、前記貫通扉の左右方向中央よりも他端側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記規制ローラは、前記貫通扉における前記ガイドリンクの接続位置よりも上方側であって前記貫通扉の上端側に固定されることを特徴とする請求項3記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記規制ローラは、前記上ガイドレールが固定される前記車体の天井面で転動することを特徴とする請求項4記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記規制ローラは、前記上部ローラよりも前記貫通扉の開放方向後方側であって前記上部ローラよりも前記貫通扉の左右方向一端側に位置することを特徴とする請求項5記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記貫通扉は、前記規制ローラ及び前記上部ローラのそれぞれを支持する支持部材を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、貫通扉の重心が貫通扉の開放方向前方側に位置する場合でも、貫通扉の開放動作を安定させることができる鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の先頭車両の前端面や、最後尾となる車両の後端面に貫通口を形成し、その貫通口を貫通扉によって開閉可能に構成する技術が知られている。かかる貫通口は、災害や事故などの非常時に、乗客および乗務員を線路上に降車させたり、鉄道車両の先頭車両を他の鉄道車両の最後尾となる車両等に併結させて乗客および乗務員を列車間で移動させたりするための非常口である。例えば、特許文献1には、貫通扉(開戸)の下端側および上端側の開閉動作を下ガイドレール及び上ガイドレールによって案内し、下ガイドレール及び上ガイドレールの中間位置において貫通扉の開閉動作をガイドリンクによって案内する技術が記載されている。
【0003】
この技術では、貫通扉の上端側に設けられる上部ローラ(フローティングリンクのローラ)が上ガイドレールに転動可能に係合されるので、上部ローラと上ガイドレールとの係合によって貫通扉の傾倒を支えることができる。貫通扉の傾倒を抑制することにより、各レールに沿ったローラの転動がスムーズになるため、貫通扉の開閉動作を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−331928号公報(例えば、段落0021,0022,0028、図6〜9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した従来の技術のように、上ガイドレール(下ガイドレール)が、前後に延びる第1レールと、その第1レールの前後方向端部から左右に延びる第2レールと、から構成される場合、上部ローラが第2レールに沿って転動する間は、貫通扉の前後の傾倒を比較的抑制し易くできる。これは、貫通扉が傾倒しようとする方向と第2レールの延設方向とがほぼ直交しているため、貫通扉の傾倒が上部ローラと上ガイドレールとの引っ掛かりによって規制され易くなるためである。
【0006】
一方、上部ローラが第1レールに沿って転動する間は、貫通扉の前後の傾倒方向と第1レールの延設方向(上部ローラの転動方向)とがほぼ一致するため、貫通扉の開放動作の初期段階においては、上部ローラと上ガイドレールとの引っ掛かりによる傾倒の支持力が比較的小さくなる。この場合、上述した従来の技術にように、貫通扉の重心が後方側に位置する構成であれば、貫通扉が自重によって後傾しようとする力と、貫通扉が開放方向(前方側)に向けて押される力とが打ち消し合うため、開放動作の初期段階で貫通扉に後傾が生じることを抑制できる。
【0007】
しかしながら、貫通扉の重心が前方側に位置する場合、貫通扉が自重によって前傾しようとする力と、貫通扉が開放方向(前方側)に向けて押される力とが合成されるため、貫通扉の開放動作の初期段階で貫通扉に前傾が生じ易くなる。即ち、上述した従来の技術では、貫通扉の重心が貫通扉の開放方向前方側に位置する場合に、貫通扉の開放動作を安定させることができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、貫通扉の重心が貫通扉の開放方向前方側に位置する場合でも、貫通扉の開放動作を安定させることができる鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、車体の前後方向端面に形成される貫通口と、その貫通口を開閉する貫通扉と、その貫通扉の下端側をスライド可能に支持する下ガイドレールと、前記貫通扉の上端側に固定される上部ローラと、その上部ローラが転動可能に係合され前記車体に固定される上ガイドレールと、を備え、前記下ガイドレール及び前記上ガイドレールの各レールが、前後に延びる第1レールと、その第1レールの前後方向端部から左右に延びる第2レールと、を備えるものであり、前記貫通扉の重心は、前記貫通扉の開放方向前方側に位置し、前記貫通扉は、前記上部ローラが前記第1レールに沿って転動する際に前記貫通扉の開放方向前方側に向けた傾倒を規制する規制ローラを備える。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の鉄道車両によれば、貫通扉は、上部ローラが第1レールに沿って転動する際に貫通扉の開放方向前方側に向けた傾倒を規制する規制ローラを備えるので、開放動作の初期段階で貫通扉が開放方向前方側に向けて傾倒しようとしても、その傾倒を規制ローラで支えることができる。これにより、貫通扉の重心が貫通扉の開放方向前方側に位置する場合でも、貫通扉の開放動作を安定させることができるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。規制ローラは、貫通扉の内面側に固定されるので、規制ローラが貫通扉の外面側に固定される場合に比べ、鉄道車両の外観を向上させることができるという効果がある。
【0012】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項2記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。基端が車体に軸支され先端が上ガイドレールよりも下方側における貫通扉の内面に左右方向でスライド可能に接続されるガイドリンクを備えるので、下ガイドレール及び上ガイドレールの間の中間位置において貫通扉の開放動作をガイドリンクによって案内することができる。
【0013】
貫通扉が貫通口を閉鎖する閉鎖状態において、貫通扉におけるガイドリンクの接続位置は、貫通扉の左右方向中央よりもガイドリンクの軸側である一端側に位置し、貫通扉における規制ローラの固定位置は、貫通扉の左右方向中央よりも他端側に位置するので、ガイドリンク及び規制ローラにより、左右に離れた2箇所で貫通扉の傾倒を支えることができる。これにより、貫通扉の左右方向一端側(戸尻側)や他端側(戸先側)のいずれかが傾倒し易くなることを抑制できるので、貫通扉の開放動作をより安定させることができるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項3記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。規制ローラは、貫通扉におけるガイドリンクの接続位置よりも上方側であって貫通扉の上端側に固定されるので、貫通扉の傾倒の回転中心(貫通扉の下端側)から離れた位置で、貫通扉の傾倒を規制ローラによって支えることができる。これにより、例えば、貫通扉の下端側に規制ローラが固定される場合に比べ、貫通扉の傾倒を規制する際に規制ローラに加わる荷重を低減できるので、規制ローラの劣化を抑制できるという効果がある。
【0015】
請求項5記載の鉄道車両によれば、請求項4記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。規制ローラは、上ガイドレールが固定される車体の天井面で転動するので、規制ローラを転動させるための転動面を別途設けることを不要にできる。よって、かかる転動面を形成するための部材を車体に設ける必要が無いので、部品点数を低減させることができるという効果がある。
【0016】
請求項6記載の鉄道車両によれば、請求項5記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。規制ローラは、上部ローラよりも貫通扉の開放方向後方側であって上部ローラよりも貫通扉の左右方向一端側に位置するので、規制ローラを上部ローラに極力近接して配置しつつ、上ガイドレールを避けた位置で規制ローラを転動させることができる。よって、規制ローラや上部ローラを転動させるためのスペースを低減できるという効果がある。
【0017】
請求項7記載の鉄道車両によれば、請求項5又は6に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。貫通扉は、規制ローラ及び上部ローラのそれぞれを支持する支持部材を備えるので、規制ローラ及び上部ローラをそれぞれ別の支持部材で支持する場合に比べ、部品点数を低減させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本発明の一実施形態における鉄道車両の前面斜視図であり、(b)は、図1(a)の状態から貫通扉を開放させた状態を示す鉄道車両の前面斜視図である。
図2】(a)は、車内側から視た先頭構体および貫通扉の後面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における先頭構体の断面図である。
図3】(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線における先頭構体および貫通扉の断面図であり、(b)は、図2(a)のIIIb−IIIb線における先頭構体および貫通扉の断面図である。
図4】(a)は、図2(a)のIVa−IVa線における先頭構体および貫通扉の断面図であり、(b)は、図2(a)のIVb−IVb線における先頭構体および貫通扉の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照し、鉄道車両1の全体構成について説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態における鉄道車両1の前面斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の状態から貫通扉7を開放させた状態を示す鉄道車両1の前面斜視図である。なお、図1では、鉄道車両1の先頭車両が図示される。
【0020】
また、以下の説明においては、貫通扉7が貫通口50を閉鎖した状態(図1(a)の状態)を「閉鎖状態」、貫通口50が開放された状態(図1(b)の状態)を「開放状態」と定義して説明する。
【0021】
図1に示すように、鉄道車両1(先頭車両)は、複数の車輪(図示せず)を有する台車(図示せず)と、その台車に支持される台枠2と、その台枠2に支持され車体の側面を構成する左右一対の側構体3と、それら一対の側構体3の上端どうしを左右に接続する屋根構体4と、その屋根構体4及び側構体3の後端部に接続される妻構体(図示せず)と、屋根構体4及び側構体3の前端部に接続される先頭構体5と、その先頭構体5の貫通口50の下部に敷設される下ガイドレール6と、その下ガイドレール6にスライド可能に支持され先頭構体5の貫通口50を開閉可能に構成される貫通扉7と、を備える(なお、これらの構成は、鉄道車両1の最後尾となる車両も同様に備えるものである)。
【0022】
台枠2、一対の側構体3、屋根構体4、及び、先頭構体5(妻構体)によって取り囲まれることで車体の内部には乗務員室や客室等の空間が形成される。先頭構体5は、車体の前端面(妻面)を構成する構体であり、先頭構体5には矩形の貫通口50が開口形成される。
【0023】
貫通口50は、災害や事故などの非常時に、乗客および乗務員を線路上に降車させたり、鉄道車両1の先頭車両を他の鉄道車両の最後尾となる車両に併結させて乗客および乗務員を列車間で移動させたりするための開口である。
【0024】
よって、貫通口50を閉鎖する貫通扉7は、主に非常時に開放される扉であり、この貫通扉7の開閉動作(スライド変位)が下ガイドレール6によって案内される。詳細は後述するが、下ガイドレール6に沿った貫通扉7の開放動作は、閉鎖状態から前方側にスライド変位した後、左右方向に(先頭構体5の前面に沿って)スライド変位することで行われる。
【0025】
次いで、図2を参照して、貫通扉7の詳細構成について説明する。図2(a)は、車内側から視た先頭構体5及び貫通扉7の後面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における先頭構体5の断面図である。なお、図2(b)では、貫通扉7の左端側(図2(a)の左側)に位置する縦枠53の図示を省略している。また、車内側から視た後面とは、車内側の内面であり、以下の説明においては、「車内側の内面」及び「車外側の外面」を単に「内面」及び「外面」と記載して説明する。
【0026】
図2に示すように、先頭構体5は、車内の床面51から天井面52にかけて上下に延設され左右に所定間隔を隔てて配置される一対の縦枠53を備える。これら一対の縦枠53は、先頭構体5の貫通口50の側面を構成し、貫通扉7のドア枠となる部位である。
【0027】
一対の縦枠53(先頭構体5)は、下端側よりも上端側の部位が前方側(図2(b)の左側)にせり出すように湾曲して形成されており、貫通扉7も同様に、上端側が前方側にせり出す湾曲形状となっている。よって、貫通扉7の重心Gは、下ガイドレール6による貫通扉7の支持位置よりも前方側(図2(b)の左側)に位置している。
【0028】
貫通扉7の上下方向略中央の内面には2箇所に取っ手70,71が設けられる。一方の取っ手70は、貫通扉7の左端側の縁部に固定され、他方の取っ手71は、貫通扉7の左右方向略中央部分に固定される。
【0029】
縦枠53に対する貫通扉7の閉鎖状態をロックする掛金(図示せず)のロック状態を解除し、取っ手70,71を持って貫通扉7を前方側(図2(b)の左側)に押し込むことで貫通扉7が開放される。上述した通り、貫通扉7の下端部分は下ガイドレール6(図2(b)参照)によって開閉動作が案内される一方、それよりも上方側においては、ガイドリンク8及び上ガイドレール9によって貫通扉7の開閉動作が案内されるようになっている。
【0030】
ガイドリンク8は、上下に所定間隔を隔てて設けられる下アーム80及び上アーム81と、下アーム80及び上アーム81の回転軸82に連結される一対の自在継手83と、一対の自在継手83を連結する連結軸84と、を備える。
【0031】
一対の縦枠53のうちの一方(図2(a)の右側)の縦枠53の内面には上下一対に金具が連結されており、それら一対の金具のそれぞれに下アーム80及び上アーム81の回転軸82が軸支される。下アーム80及び上アーム81の回転軸82は、鉛直方向に沿って設けられており、下アーム80及び上アーム81の基端(図2(a)の右側の端部)が縦枠53周りに回転可能となっている。
【0032】
下アーム80の回転軸82の上端、及び、上アーム81の回転軸82の下端のそれぞれに自在継手83が連結され、それら上下一対の自在継手83は、上下に延びる連結軸84によって連結される。よって、下アーム80の回転軸82と上アーム81の回転軸82との前後位置がズレている(本実施形態では、下アーム80の回転軸82よりも上アーム81の回転軸82が前方側に位置する)場合であっても、縦枠53(回転軸82)周りの下アーム80及び上アーム81の回転を自在継手83及び連結軸84によって同期させることができる。
【0033】
下アーム80及び上アーム81の先端(図2(a)の左側の端部)には、下ローラ80a及び上ローラ81a(図3(b)及び図4(a)参照)が軸支される。下ローラ80a及び上ローラ81aは、鉛直方向(図2の上下方向)に沿った軸周りに回転可能に構成されており、それら下ローラ80a及び上ローラ81aが貫通扉7の下レール72及び上レール73に沿って転動可能に係合される。
【0034】
下レール72は、貫通扉7の下端側(取っ手70,71よりも下方側)の内面に固定され、上レール73は、貫通扉7の上端側(取っ手70,71よりも上方側)の内面に固定される。下レール72及び上レール73は、それぞれ下方が開放される断面コ字状(溝形鋼状)のレールであり、左右方向(水平方向)に沿って貫通扉7の略全長にわたって設けられる。よって、下アーム80及び上アーム81の先端は、貫通扉7の内面を左右にスライド可能な状態で支持している。
【0035】
ガイドリンク8よりも上方側の車体の天井面52には上ガイドレール9が固定される。上ガイドレール9は、下方が開放される断面コ字状(溝形鋼状)のレールであり、この上ガイドレール9によって貫通扉7の上端部分の開閉動作が案内される。
【0036】
貫通扉7の上端側(上レール73よりも上方側)の内面にはアーム状の支持アーム74が固定される。支持アーム74は、貫通扉7から後方側(図2(b)の右側)に向けて突出しており、支持アーム74の突出先端側に上部ローラ75(図4参照)及び規制ローラ76が固定される。上部ローラ75は、鉛直方向に沿った軸周りに回転可能に構成され、上ガイドレール9に沿って上部ローラ75が転動可能に係合される。規制ローラ76は、天井面52に沿って転動するボールキャスタであり、閉鎖状態において規制ローラ76のボールが天井面52に当接した状態で設けられる。
【0037】
次いで、図2から図4を参照して、貫通扉7の開閉動作について説明する。図3(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線における先頭構体5及び貫通扉7の断面図であり、図3(b)は、図2(a)のIIIb−IIIb線における先頭構体5及び貫通扉7の断面図である。図4(a)は、図2(a)のIVa−IVa線における先頭構体5及び貫通扉7の断面図であり、図4(b)は、図2(a)のIVb−IVb線における先頭構体5及び貫通扉7の断面図である。
【0038】
なお、図3及び図4では、図面を簡素化するために、鉄道車両1の要部のみを図示している。また、図3及び図4では、閉鎖状態における貫通扉7を実線で図示し、開放状態における貫通扉7を2点鎖線で図示している。
【0039】
図2から図4に示すように、下ガイドレール6(図3(a)参照)は、前後に延設され左右に所定の間隔を隔てて配置される一対の第1レール60と、それら一対の第1レール60の前端から左右(本実施形態では、右側)に延びる第2レール61と、から構成され、第1レール60及び第2レール61は、下方に凹む溝状に形成される。
【0040】
貫通扉7の下端部分には、左右に所定の間隔を隔てる一対の下部ローラ77が固定されており、それら一対の下部ローラ77は、閉鎖状態において左右一対の第1レール60に支持される。下部ローラ77は、溝状の第1レール60及び第2レール61に転動可能に支持されるボールキャスタである。よって、閉鎖状態の貫通扉7が車内側から押されると、下部ローラ77が第1レール60及び第2レール61に沿って転動することにより、下ガイドレール6によって貫通扉7の開放動作が案内される。
【0041】
第1レール60の後端部分(図3(a)の下側の部位)は、右前方側に傾斜した方向に直線状に延設される一方、第1レール60の前端部分は、左前方側に凸の湾曲形状とされ、第1レール60の前端部分は第2レール61に円弧状に滑らかに合流するように構成される。また、第2レール61は、右後方側に傾斜した方向に沿って略直線状に延設される。よって、下ガイドレール6に沿った貫通扉7の開放動作は、閉鎖状態から前方側にスライド変位した後、左右方向右側に向けて滑らかにスライド変位するようになっている。
【0042】
この下ガイドレール6に沿った貫通扉7のスライド変位に伴い、下アーム80が貫通扉7の変位に追従するようにして回転する。即ち、下アーム80は、その先端側に設けられる下ローラ80a(図3(b)参照)が貫通扉7の下レール72に転動可能に係合され、下アーム80の基端側が縦枠53に軸支されている。よって、貫通扉7が第1レール60(図3(a)参照)に沿ってスライド変位する際、下アーム80は、下レール72に対する下ローラ80aの係合位置をほぼ維持した状態で縦枠53周りに回転する。下アーム80の回転方向前方側の面にはストッパ80b(図3(b)参照)が設けられており、このストッパ80bが縦枠53に当接することで下アーム80の回転が規制される。
【0043】
貫通扉7の下レール72は、下ガイドレール6の第2レール61(図3(a)参照)に対応した形状(第2レール61の軌跡に沿う形状)で左右に延設されているため、下アーム80の回転が停止した後、貫通扉7が第2レール61に沿ってスライド変位する際には、下ローラ80aが下レール72に沿って転動することで貫通扉7のスライド変位が案内される。
【0044】
また、上アーム81も同様に、貫通扉7のスライド変位に追従するようにして回転するようになっている。即ち、上アーム81の先端側の上ローラ81a(図4(a)参照)が貫通扉7の上レール73に転動可能に係合され、上アーム81の基端側が縦枠53に軸支されている。よって、貫通扉7が第1レール60(図3(a)参照)に沿ってスライド変位する際、上アーム81は、上レール73と上ローラ81aとの係合位置をほぼ維持した状態で縦枠53周りに回転する。
【0045】
上アーム81の回転方向前方側の面にはストッパ81b(図4(a)参照)が設けられており、このストッパ81bが縦枠53に当接することで上アーム81の回転が規制される。貫通扉7の上レール73は、下ガイドレール6の第2レール61(図3(a)参照)に対応した形状(第2レール61の軌跡に沿う形状)で左右に延設されているため、上アーム81の回転が停止した後、貫通扉7が第2レール61に沿ってスライド変位する際には、上ローラ81aが上レール73に沿って転動することで貫通扉7のスライドが案内される。
【0046】
これら下アーム80及び上アーム81の回転は、自在継手83及び連結軸84によって同期されているため、下アーム80及び上アーム81のいずれか一方の回転量が他方の回転量よりも多くなる(回転速度が速くなる)ことを抑制できる。これにより、貫通扉7が前後に傾倒することを抑制できるので、貫通扉7のスライド変位を下アーム80及び上アーム81によって安定して案内することができる。
【0047】
このように、本実施形態では、互いに回転が同期する下アーム80及び上アーム81によって貫通扉7のスライド変位を案内しているが、それら下アーム80及び上アーム81が貫通扉7の下端側および上端側に接続されているため、貫通扉7のスライド変位を安定して案内することができる。
【0048】
具体的には、貫通扉7の上下方向略中央部分に取っ手70,71(図2参照)が設けられているため、貫通扉7を開放させる際には、貫通扉7の上下方向中央部分に貫通扉7を押す力が加わり易い。これに対し、下アーム80及び上アーム81による貫通扉7の支持位置を、取っ手70,71(貫通扉7を押す力が加わり易い部位)を挟んで上下に離れた2点に設定することにより、貫通扉7の前後の傾倒を下アーム80及び上アーム81によって効果的に抑制することができる。よって、貫通扉7のスライド変位を安定して案内することができる。
【0049】
この一方で、下アーム80及び上アーム81は、閉鎖状態において貫通扉7の戸尻側(左右方向一端側。図2(a)の右側)を支持しているため、下アーム80及び上アーム81のみで貫通扉7を支持する構成では、貫通扉7の戸先側(左右方向他端側)で傾倒が比較的起こり易くなる。これに対して本実施形態では、かかる戸先側での貫通扉7の傾倒を上部ローラ75及び規制ローラ76によって抑制している。
【0050】
上部ローラ75が係合される上ガイドレール9は、前後に延設される第1レール90(図4(b)参照)と、その第1レール90の前端から左右(本実施形態では、右側)に延びる第2レール91と、から構成される。
【0051】
第1レール90及び第2レール91は、下ガイドレール6(図3(a)参照)の第1レール60及び第2レール61に対応した形状(第1レール60及び第2レール61の軌跡に沿う形状)で延設される。閉鎖状態においては、上ガイドレール9の第1レール90の後端側(図4(b)の下側の端部)に貫通扉7の上部ローラ75が係合される。
【0052】
よって、下ガイドレール6(図3(a)参照)に沿って貫通扉7がスライド変位する際、貫通扉7の上部ローラ75は、上ガイドレール9に沿って転動する。上部ローラ75は、貫通扉7の上端部分に支持アーム74を介して固定されるので、上部ローラ75は、貫通扉7に対する相対位置を維持した状態で上ガイドレール9に沿って転動し、この上部ローラ75の転動によって貫通扉7の上端側のスライド変位が案内される。
【0053】
このように、貫通扉7の上部ローラ75が上ガイドレール9に係合される場合、上部ローラ75と第2レール91との係合によって貫通扉7の前後の傾倒を規制できる。しかしながら、第1レール90の延設方向は、貫通扉7の開放方向と一致しているため、貫通扉7の開放の初期段階においては、上部ローラ75と第1レール90との引っ掛かりによる傾倒の支持力が比較的小さくなる。
【0054】
また、貫通扉7の重心G(図2(b)参照)が前方側に位置することに加え、貫通扉7が前方側に向けて押されることで開放動作が開始されるため、貫通扉7が前傾し易くなっている。更に、貫通扉7を閉鎖状態から開放させる際には、各レールやローラ間の静止摩擦力に抗して貫通扉7を押す必要があるため、貫通扉7の開放動作の初期段階においては、前方側に向けた比較的大きな力が貫通扉7に加わる。よって、貫通扉7の重心Gが前方側に位置する場合、上部ローラ75(図4(b)参照)と上ガイドレール9との係合のみでは、貫通扉7の開放動作の初期段階における前傾を支えることが困難になる。
【0055】
これに対して本実施形態では、貫通扉7は、上部ローラ75が第1レール90に沿って転動する際に貫通扉7の前傾を支える(規制する)規制ローラ76を備えている。規制ローラ76は、閉鎖状態で天井面52(図2参照)に当接した状態で設けられ、開放状態となるまでの間、天井面52に沿って規制ローラ76が転動するように構成される。これにより、上部ローラ75が第1レール90に沿って転動する間に(貫通扉7の開放動作の初期段階で)貫通扉7が前傾しようとしても、その前傾を天井面52に当接する規制ローラ76によって支えることができる。即ち、貫通扉7の重心Gが前方側に位置する場合でも、貫通扉7の開放動作を安定させることができる。
【0056】
また、規制ローラ76を支持する支持アーム74は、貫通扉7の左右方向中央よりも戸先側(図2(a)の左側の端部)に固定される。よって、ガイドリンク8(下アーム80及び上アーム81)及び規制ローラ76により、左右に離れた2箇所で貫通扉7の前傾を支えることができる。従って、貫通扉7の戸尻側や戸先側のいずれかが前傾し易くなることを抑制できる(戸尻側および戸先側でバランスよく前傾を支えることができる)ので、貫通扉7の開放動作をより安定させることができる。
【0057】
このように、貫通扉7の前傾を規制ローラ76によって支える場合、例えば、規制ローラ76を貫通扉7の外面側の床面51に当接させる構成を採用することも可能である。しかしながら、そのような構成では、規制ローラ76や、その規制ローラ76を支持する支持アーム74を貫通扉7の外面に設ける必要があるので、鉄道車両1の外観が悪くなる。
【0058】
また、規制ローラ76を床面51に沿って転動させるために貫通扉7の下端側に規制ローラ76(支持アーム74)を固定すると、貫通扉7の前傾を支える際に規制ローラ76(支持アーム74)に加わる荷重が大きくなり易い。よって、規制ローラ76に劣化が生じ易くなるという問題点や、支持アーム74の剛性を高める(例えば、支持アーム74を太く形成する)必要があり貫通扉7の重量増につながるという問題点が生じる。
【0059】
これに対して本実施形態では、規制ローラ76が支持アーム74を介して貫通扉7の内面に固定され、貫通扉7の内面側の天井面52に沿って規制ローラ76を転動させる構成となっている。これにより、規制ローラ76を貫通扉7の外面に設ける場合に比べ、鉄道車両1の外観を向上させることができる。
【0060】
更に、天井面52に沿って規制ローラ76を転動させることにより、規制ローラ76を貫通扉7の上端側(本実施形態では、ガイドリンク8の上アーム81よりも上方側)に固定することができる。これにより、貫通扉7の前傾の回転中心(下ガイドレール6による貫通扉7の支持位置)から離れた位置で貫通扉7の前傾を規制ローラ76によって支えることができる。
【0061】
よって、例えば、貫通扉7の下端側に規制ローラ76が固定される場合に比べ、貫通扉7の前傾を支える際に規制ローラ76に加わる荷重を低減できる。よって、規制ローラ76の劣化を抑制できると共に、比較的剛性の低い支持アーム74で規制ローラ76を支持することができる(支持アーム74の剛性を高める必要がない)ので、貫通扉7を軽量化できる。
【0062】
また、上ガイドレール9が固定される車体の天井面52を利用して規制ローラ76を転動させることにより、規制ローラ76を転動させるための転動面を別途設けることを不要にできる。即ち、規制ローラ76の転動面を形成するため部材(例えば、溝を有するレール等)を車体に設ける必要が無いので、部品点数を低減させることができる。
【0063】
更に、上ガイドレール9が固定される車体の天井面52で規制ローラ76を転動させることにより、上部ローラ75(図4(b)参照)と規制ローラ76とを近接して配置できるので、それら上部ローラ75及び規制ローラ76を1つの支持アーム74で支持することができる。よって、例えば、上部ローラ75及び規制ローラ76をそれぞれ別の支持アームで支持する場合に比べ、部品点数を低減させることができる。
【0064】
また、上部ローラ75と規制ローラ76とを近接して配置することにより、それらの各ローラを転動させるためのスペースを低減させることや、上部ローラ75及び規制ローラ76を支持する支持アーム74を短く形成する(支持アーム74に加わる荷重を低減して支持アーム74を軽量化する)ことができる。この一方で、上部ローラ75と規制ローラ76とを近接して配置する場合、上ガイドレール9を避けた位置で規制ローラ76を転動させる必要がある。
【0065】
上部ローラ75と規制ローラ76とを近接して配置しつつ、上ガイドレール9を避けた位置で規制ローラ76を転動させるためには、閉鎖状態(図4(b)の実線で示す状態)において、上部ローラ75よりも左前方側か、若しくは、上部ローラ75よりも右後方側に規制ローラ76を配置すれば良い。言い換えると、本実施形態では、上部ローラ75よりも右後方側に規制ローラ76が配置されているが、上部ローラ75よりも左前方側に規制ローラ76を配置する構成でも良い。しかしながら、そのような構成では、上部ローラ75よりも規制ローラ76を貫通扉7に近付けて配置することになるため、貫通扉7の前傾を支えることができなくなるおそれがある。
【0066】
即ち、貫通扉7の開放動作の初期段階(上部ローラ75が第1レール90を転動する間)において前傾を確実に抑制するためには、閉鎖状態において天井面52(図2(b)参照)に規制ローラ76が当接した状態であることが好ましいが、各部材の寸法公差によって閉鎖状態で天井面52から規制ローラ76が離れてしまう場合がある。この場合、貫通扉7の前傾時に速やかに(貫通扉7の小さな前傾で)規制ローラ76を天井面52に当接させるためには、規制ローラ76と天井面52との当接位置が貫通扉7から離れている方が良い。
【0067】
よって、例えば、上部ローラ75(図4(b)参照)よりも左前方側に規制ローラ76を配置すると、貫通扉7から規制ローラ76までの距離が短くなるため、貫通扉7の前傾時に速やかに(貫通扉7の小さな前傾で)規制ローラ76を天井面52に当接させることができない。
【0068】
これに対して本実施形態では、上部ローラ75の右後方側(上部ローラ75よりも貫通扉7の後方側であって上部ローラ75よりも貫通扉7の右端側)に規制ローラ76が配置される。これにより、上部ローラ75と規制ローラ76とを近接して配置しつつ上ガイドレール9を避けた位置で規制ローラ76を転動させることができると共に、上部ローラ75よりも規制ローラ76を貫通扉7から遠ざけた位置に配置することができる。よって、「上部ローラ75及び規制ローラ76を転動させるためのスペースを低減させること」と、「閉鎖状態で天井面52から規制ローラ76が離れている場合でも、貫通扉7の前傾時に速やかに規制ローラ76を天井面52に当接させること」とを両立させることができる。
【0069】
なお、規制ローラ76を貫通扉7から遠ざけ過ぎると、規制ローラ76によって貫通扉7の前傾を支える際に規制ローラ76(支持アーム74)に加わる荷重が過剰に大きくなる。よって、前後方向における貫通扉7から規制ローラ76までの距離は、前後方向における貫通扉7から上部ローラ75までの距離の2倍以下にすることが好ましい。これにより、規制ローラ76によって貫通扉7の前傾を支える際に規制ローラ76(支持アーム74)に加わる荷重が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0070】
貫通扉7の閉鎖動作は、以上に説明した貫通扉7の開放動作の逆の動作となる。上部ローラ75が第2レール91に沿って転動する間は、上部ローラ75と第2レール91との引っ掛かりに加え、規制ローラ76によって貫通扉7の前傾が支えられるのは、貫通扉7の開放動作および閉鎖動作の双方において同様となる。
【0071】
また、貫通扉7の閉鎖動作において、上部ローラ75が第1レール90に沿って転動する間は、取っ手70,71(図2参照)を持って貫通扉7を車内側に引っ張ることになるが、その引っ張りによる力は、貫通扉7が自重によって前傾しようとする力と打ち消し合うため、貫通扉7の閉鎖動作時の後傾を抑制することができる。更に、閉鎖位置に向けて貫通扉7を車内側に引っ張る場合、閉鎖状態から開放させる時のように静止摩擦力に抗する必要がないため、貫通扉7を引っ張る力は比較的小さくて良い。この点からも、貫通扉7の閉鎖動作時の後傾を抑制することができる。
【0072】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0073】
上記実施形態では、貫通扉7を閉鎖状態から前方側にスライド変位させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通扉7を閉鎖状態から後方側(車内側)にスライド変位させる構成でも良い。かかる構成において、貫通扉7の重心Gが後方側に位置する場合には、貫通扉7の後傾を支える位置に規制ローラ76を設ければ良い(この場合には、貫通扉7の後傾が「開放方向前方側に向けた傾倒」に相当する)。
【0074】
上記実施形態では、貫通扉7が前方側にスライド変位した後、左右方向右側にスライド変位されることで開放状態となる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通扉7が前方側にスライド変位した後、左右方向左側にスライド変位することで開放状態となる構成でも良い。
【0075】
上記実施形態では、閉鎖状態で規制ローラ76が天井面52に当接した状態で設けられ、貫通扉7が閉鎖状態から開放状態となるまでの間、天井面52に沿って規制ローラ76が転動する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。閉鎖状態で規制ローラ76が天井面52から僅かに離れた状態で設けられる構成でも良く、貫通扉7が前傾した際に規制ローラ76が天井面52に当接する構成でも良い。即ち、少なくとも上部ローラ75が第1レール90に沿って転動している間に規制ローラ76が天井面52に当接可能な構成であれば良い。
【0076】
上記実施形態では、規制ローラ76が貫通扉7の内面側に設けられ、車体の天井面52で規制ローラ76が転動される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、規制ローラ76を貫通扉7の外面に設け、下ガイドレール6よりも前方側の床面51で規制ローラ76を転動させる構成でも良い。また、床面51や天井面52ではなく、規制ローラ76を転動させるための転動面を有する部材を床面51や天井面52に固定する構成でも良い。即ち、貫通扉7の開放方向前方側への傾倒を規制できる構成であれば、規制ローラ76が当接される部材(当接位置)は限定されない。
【0077】
上記実施形態では、規制ローラ76が貫通扉7の上端側(貫通扉7とガイドリンク8との接続位置よりも上方側)に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、規制ローラ76の固定位置は、貫通扉7の下端側(貫通扉7とガイドリンク8との接続位置よりも下方側)であっても良い。
【0078】
上記実施形態では、上部ローラ75の右後方側(上部ローラ75よりも貫通扉7の後方側であって上部ローラ75よりも貫通扉7の右端側)に規制ローラ76が配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。上ガイドレール9を避けた位置で規制ローラ76を転動させることができる構成であれば、規制ローラ76の配設位置は適宜設定できる。よって、例えば、上部ローラ75の左前方側(上部ローラ75よりも前方側であって上部ローラ75よりも貫通扉7の左端側)に規制ローラ76を配置する構成でも良い。
【0079】
上記実施形態では、上部ローラ75及び規制ローラ76のそれぞれが1つの支持アーム74に支持される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上部ローラ75及び規制ローラ76を支持する支持部材を別々に設けても良い。
【0080】
上記実施形態では、上部ローラ75及び規制ローラ76を支持する支持部材の一例として、支持アーム74を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。上部ローラ75及び規制ローラ76を貫通扉7に対して相対変位不能に支持(固定)できるものであれば、支持部材の形状等は限定されるものではない。
【0081】
上記実施形態では、貫通扉7におけるガイドリンク8(下アーム80及び上アーム81)の接続位置が貫通扉7の左右方向中央よりも回転軸82側である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通扉7におけるガイドリンク8(下アーム80及び上アーム81)の接続位置は、貫通扉7の左右方向中央よりも回転軸82とは反対側の端部であっても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 鉄道車両
50 貫通口
52 天井面
6 下ガイドレール
60 第1レール
61 第2レール
7 貫通扉
74 支持アーム(支持部材)
75 上部ローラ
76 規制ローラ
8 ガイドリンク
9 上ガイドレール
90 第1レール
91 第2レール
G 重心
図1
図2
図3
図4