【解決手段】金属積層造形用の材料粉体が、未使用の材料粉体であるバージン材の粒度分布と、バージン材を所定の回数だけ金属積層造形装置(1)においてリサイクルしたあとのリサイクル材の流動性と、に基づいて、流動性の所定の基準値以上の流動性に対応する粒度分布になるように製造されている。バージン材にシリカ粒子が添加されていてもよい。
前記所定の回数リサイクルしたあとの前記リサイクル材によって焼結体を積層造形し、前記焼結体の空隙率が前記空隙率の所定の基準値以上、および、前記焼結体の強度が前記強度の所定の基準値以上、のうちのいずれか一方またはそれらの両方になるように前記シリカ粒子の添加量を調整する、
請求項4の金属積層造形用の材料粉体。
前記所定の回数リサイクルしたあとの前記リサイクル材によって焼結体を積層造形し、前記焼結体の空隙率が前記空隙率の所定の基準値以上、および、前記焼結体の強度が前記強度の所定の基準値以上、のうちのいずれか一方またはそれらの両方になるように前記シリカ粒子の添加量を調整する、
請求項12の金属積層造形用の材料粉体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、積層造形中の金属積層造形装置の概略図である。
図2は、積層造形後の金属積層造形装置の概略図である。
図3は、耐久テスト中の金属積層造形装置の概略図である。
図4は、所定の粒度分布を決定するまでのフロー図である。
図5は、シリカ粒子の所定の添加量を決定するまでのフロー図である。
図6は、材料粉体の流動性を測定する漏斗の概略図である。ここで、
図1のX軸方向は、左右方向である。
図1のX軸方向に直交する水平一軸方向の不図示のY軸方向は、前後方向である。
図1のZ軸方向は、上下方向である。
図1および
図2に示す材料粉体層の厚み寸法および焼結層の厚み寸法は、説明のために実際のものに比べて大きく表示されている。
図1または
図2で示す焼結層の層数は、説明のために少なく表示されている。
【0014】
本発明の金属積層造形用の材料粉体M(以下、材料粉体Mと称する)は、
図1に示すように、金属積層造形装置1に供給される。金属積層造形装置1は、
図2に示すように、供給された材料粉体Mの一部を焼結して三次元形状の焼結体を形成し、未焼結の材料粉体Mを排出する。
【0015】
金属積層造形装置1は、例えば、ベース台2と、テーブル3と、チャンバ4と、レーザ光照射装置5と、材料供給装置6と、材料回収用バケット7と、不図示の制御装置と、を備えている。
【0016】
金属積層造形装置1は、材料回収用バケット7から材料供給装置6まで未焼結の材料粉体Mを搬送する材料搬送装置8を備えてもよい。金属積層造形装置1は、チャンバ4内に不図示の切削装置を備えてもよい。レーザ光照射装置5に替えて不図示の電子ビーム照射装置を備えてもよい。
【0017】
ベース台2は、テーブル3と、材料保持壁9と、材料回収用バケット7と、を内蔵している。ベース台2は、材料排出部2aを有する。
【0018】
テーブル3は、不図示の駆動装置によって材料保持壁9の中を上下方向(Z軸方向)に移動する。造形領域Rは、テーブル3上に形成されている。ベースプレート10は、テーブル3の上面に脱着可能に取り付けられている。
【0019】
材料保持壁9は、テーブル3の周りを囲んでいる。材料保持空間9aは、材料保持壁9とテーブル3によって囲まれた空間である。材料保持壁9は、材料排出部9bを有する。
【0020】
材料保持壁9の材料排出部9bは、例えば、材料保持壁9の下部に形成されている開口である。材料保持空間9aの中の材料粉体Mは、材料排出部9bを超えてテーブル3が下降すると、材料排出部9bから材料回収用バケット7に自重で落下する。
【0021】
ベース台2の材料排出部2aは、例えば、後述されるリコータヘッド11の退避位置の辺りに形成されている開口である。材料保持空間9aから溢れた材料粉体Mは、リコータヘッド11のブレード11b,11bによって材料保持壁9を超えて材料排出部2aまで押し出されて、材料排出部2aから材料回収用バケット7に自重で落下する。
【0022】
材料回収用バケット7は、材料保持空間9aから材料排出部9bを通して排出された材料粉体Mを収容する。また、材料回収用バケット7は、材料保持空間9aから溢れた材料粉体Mを材料排出部2aを介して収容する。
【0023】
チャンバ4は、造形領域Rを覆う。チャンバ4の内部は、不図示の不活性ガス供給装置から供給される所定濃度の不活性ガスで満たされている。不活性ガスは、材料粉体と反応しないガスである。不活性ガスは、例えば窒素ガスである。
【0024】
材料供給装置6は、リコータヘッド11と、材料補充装置12と、を備えている。ここで、未使用の材料粉体Mをバージン材と称する。金属積層造形装置1から排出され未焼結の材料粉体Mをリサイクル材と称する。
【0025】
リコータヘッド11は、材料収容タンク11aと、一対のブレード11b,11bと、を備えている。リコータヘッド11は、不図示の駆動装置によって、テーブル3の右側または左側のいずれか一方の退避位置からテーブル3の上方を通り他方の退避位置まで左右方向(X軸方向)に移動する。
【0026】
材料収容タンク11aは、材料粉体を収容する。材料収容タンク11aは、リコータヘッド11の内部に形成されてる。材料収容タンク11aは、リコータヘッド11の上部に形成されている材料供給口5cとリコータヘッド11の下部に形成されている材料排出口11dにそれぞれ連通している。
【0027】
材料供給口11cは、例えば、リコータヘッド11が退避位置に退避しているときに材料補充装置12と接続する。材料補充装置12から供給される材料粉体Mは、材料供給口11cを通して材料収容タンク11aに供給される。
【0028】
材料排出口11dは、リコータヘッド11の移動方向に直交する前後方向(Y軸方向)に細長く形成されている。材料粉体Mは、材料排出口11dからテーブル3上に排出される。材料粉体Mは、金属粉体である。金属粉体は、例えば鉄粉である。
【0029】
一対のブレード11b,11bは、リコータヘッド11の下部から突き出し、材料排出口11dを挟んで左右にそれぞれ設けられている。一対のブレード11b,11bは、材料排出口11dからテーブル3上に排出された材料粉体Mを平坦化する。
【0030】
材料補充装置12は、例えば、未使用の材料粉体Mであるバージン材を充填したバージン材用タンク12aと、材料回収用バケット7に排出された未焼結の材料粉体Mであるリサイクル材を搬送する材料搬送装置8と、が接続されている。
【0031】
材料補充装置12は、バージン材、リサイクル材、あるいはそれらを混合した材料粉体Mをリコータヘッド11に供給することができる。
【0032】
レーザ光照射装置5は、チャンバ4の上方に設けられている。レーザ光照射装置5から出力されるレーザ光Lは、チャンバ4に設けられた保護ウィンドウ4aを透過して造形領域Rに照射される。レーザ光照射装置5は、不図示のレーザ光源と、不図示の2軸のガルバノミラー、不図示のスポット径調整装置とを備えている。
【0033】
レーザ光源は、材料粉体Mを加熱溶融できるレーザ光Lを出力する。レーザ光Lは、例えばYAGレーザ、ファイバレーザまたは炭酸ガスレーザなどである。
【0034】
スポット径調整装置は、レーザ光源から出力されるレーザ光Lを集光して所望のスポット径に調整する。
【0035】
2軸のガルバノミラーは、レーザ光源から出力されるレーザ光Lを制御可能に2次元走査して、レーザ光Lを造形領域R内の所望の位置に照射する。
【0036】
保護ウィンドウ4aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成されている。保護ウィンドウ4aは、レーザ光LがYAGレーザ、ファイバレーザまたは炭酸ガスレーザであれば、例えば石英ガラスでも構成が可能である。
【0037】
制御装置は、金属積層造形装置1に備える各種装置を制御する。また制御装置は、金属積層造形装置1に接続されている各種周辺装置を制御するようにしてもよい。
【0038】
材料搬送装置8は、材料回収用搬送装置13と、材料供給用搬送装置14と、不純物除去装置15と、材料供給用バケット16と、を備えている。材料搬送装置8は、材料乾燥装置17を備えてもよい。材料乾燥装置17は、材料供給用バケット16から材料補充装置12に搬送する材料粉体Mを乾燥させる
【0039】
材料回収用搬送装置13は、材料回収用バケット7の中の材料粉体Mを不純物除去装置15まで配管を通して搬送する。材料回収用搬送装置13は、例えば、吸引装置13aと、フィルタ13bと、を備えている。
【0040】
材料供給用搬送装置14は、材料供給用バケット16の中の材料粉体Mを材料補充装置12まで配管を通して搬送する。材料回収用搬送装置13は、例えば、吸引装置14aと、フィルタ14bと、を備えている。
【0041】
各吸引装置13a,14aは、気体と一緒に固体も吸引可能な吸引力を有する。各吸引装置13a,14aは、切換弁18を備えることで、1つの吸引装置を共有するようにしてもよい。吸引装置13a,14aは、例えば、クリーナである。
【0042】
各フィルタ13b,14bは、例えば、サイクロン方式のフィルタである。サイクロン方式のフィルタは、気体と固体を分離して固体を各吸引装置13a,14aの中に吸引させないようにする。
【0043】
不純物除去装置15は、材料回収用バケット7に排出された材料粉体Mの中の不純物を除去する。不純物は、ふるい15aなどによって取り除かれる。不純物は、材料粉体Mをレーザ光で焼結した際に飛散するスパッタや焼結体の表面や不要部分を切削加工した際に切り出される切削屑などである。
【0044】
材料供給用バケット16は、不純物除去装置15によって不純物が除去されたあとの材料粉体Mを収容する。リサイクル材は、金属積層造形装置1から排出された未焼結の材料粉体Mであって、不純物を取り除いたあとの未焼結の材料粉体Mでもよい。
【0045】
材料乾燥装置17は、例えば、材料供給用バケット16の中に備えられたヒータである。リサイクル材は、金属積層造形装置1から排出された未焼結の材料粉体Mであって、乾燥させたあとの未焼結の材料粉体Mでもよい。
【0046】
これまで説明した金属積層造形装置1の基本的な動作は、次の通りである。
【0047】
まず準備工程を実施する。一般的にテーブル3上にベースプレート10が取り付けられる。ベースプレート10の上面の高さと、リコータヘッド11の一対のブレード11b,11bの先端の高さと、が同じ高さになるようにテーブル3を移動する。
【0048】
つぎにリコート工程を実施する。材料粉体層19の厚み分の高さだけテーブル3を下げる。退避位置からテーブル3の上方を通り反対側の退避位置までリコータヘッド11を移動させる。材料粉体Mがベースプレート10上に所定の高さに均一に撒布される。材料粉体層19がベースプレート10上に形成される。リコータヘッド11のブレード11b,11bによってベース台2の材料排出部2aまで押し出された材料粉体Mは、材料回収用バケット7に排出される。
【0049】
つぎに焼結工程を実施する。レーザ光照射装置5で材料粉体層19の所定の照射領域にレーザ光Lを照射する。ベースプレート10上に焼結層20が形成される。焼結層20とベースプレート10が固着する。最初の焼結層20のみで焼結体21が形成される。
【0050】
再びリコート工程を実施する。材料粉体層19の厚み分の高さだけテーブル3を下げる。退避位置からテーブル3の上方を通り反対側の退避位置までリコータヘッド11を移動する。前回の焼結層20上に新たな材料粉体層19が形成される。
【0051】
再び焼結工程を実施する。レーザ光照射装置5で材料粉体層19の所定の照射領域にレーザ光Lを照射する。前回の焼結層20上に新たな焼結層20が形成される。新たな焼結層20と前回の焼結層20が固着する。焼結層20が積層した焼結体21が形成される。
【0052】
金属積層造形装置1は、リコート工程と焼結工程を繰り返して、複数の焼結層20を積層して所望の三次元形状を有する焼結体21を形成し、所望の三次元形状の造形物22を造形する。
【0053】
さらに金属積層造形装置1は、切削装置を備えて、所定数の焼結層20を積層する毎に、焼結体21を切削する切削工程を実施するようにしてもよい。
【0054】
金属積層造形装置1は、焼結体21の積層造形を終えると、材料保持空間9aの中の未焼結の材料粉体Mを材料回収用バケット7に排出する。ベースプレート10に固着した焼結体21は、ベースプレート10と一緒にテーブル3から取り外される。
【0055】
金属積層造形装置1は、材料搬送装置8を備えて、材料回収用バケット7の中の材料粉体Mを材料供給装置6に搬送するようにしてもよい。
【0056】
材料回収用バケット7の中の材料粉体Mは、リサイクル材としてつぎの積層造形で使われる。
【0057】
ここからは、本発明の特有の材料粉体Mおよびその製造方法を説明する。
【0058】
材料粉体Mのバージン材は、所定の粒度分布になるように製造されている。粒度分布は、横軸を粒子径とし、縦軸を頻度とする。例えば、粒子径の単位は、μmである。また例えば、頻度は、%である。
【0059】
所定の粒度分布は、バージン材を所定の回数Nだけリサイクルしたあとのリサイクル材の流動性に基づき決定されている。所定の粒度分布は、
図4に示すように、試作したバージン材の耐久テストの結果から所定の基準値以上の値の流動性に対応する粒度分布になるように決定されている。流動性の所定の基準値は、例えば、厚みおよび密度が均一な材料粉体層を形成することが可能なときの流動性の値を示す。所定の回数Nは、所望するリサイクルの回数である。所定の回数Nは、例えば、20回以上40回以下、好ましくは、25回以上35回以下、さらに好ましくは30回であるとよい。
【0060】
まず、任意の粒度分布のバージン材を試作する(S1)。試作後にバージン材の粒度分布を測定してもよい(S2)。
【0061】
つぎに、試作したバージン材の耐久テストを実施する。リサイクルのカウントnをゼロにリセットする(n=0)(S3)。試作したバージン材を金属積層造形装置1に供給する(S4)。未焼結の材料粉体Mとして排出されるリサイクル材を金属積層造形装置1から回収する(S5)。カウントnが所定の回数Nに達したかどうかを判定する(S6)。
【0062】
カウントnが所定の回数Nに達していなければ(n<N)、カウントnを1つ増やす(n=n+1=1)(S7)。回収したリサイクル材を再び金属積層造形装置1に供給する(S8)。再び未焼結の材料粉体Mとして排出されるリサイクル材を金属積層造形装置1から回収する(S5)。再びカウントnが所定の回数Nに達したかどうかを判定する(S6)。カウントnが所定の回数Nに達していなければ(n<N)、再びカウントnを1つ増やす(n=n+1=2)(S7)。このようにして試作したバージン材をカウントnが所定の回数Nに達する(n=N)まで繰り返しリサイクルする。
【0063】
最後に、所定の回数Nだけリサイクルしたあとのリサイクル材の流動性を測定する(S9)。リサイクル材の流動性が所定の基準値以上かどうか判定する(S10)。
【0064】
リサイクル材の流動性が所定の基準値以上であれば、試作したバージン材の粒度分布を所定の粒度分布とする(S13)。
【0065】
リサイクル材の流動性が所定の基準値を下まわれば、異なる任意の粒度分布のバージン材を再び試作して(S12)、耐久テストをやり直すようにする。あるいは、リサイクル材の流動性が所定の基準値よりも低ければ、リサイクル材の流動性がバージン材の粒度分布を変更するだけで所定の基準値以上の流動性を得られる可能性があるのかどうかを判定するようにしてもよい(S11)。
【0066】
リサイクル材の流動性がバージン材の粒度分布を変更するだけで所定の基準値以上の流動性を得られる可能性があれば、異なる任意の粒度分布のバージン材を再び試作して(S12)、耐久テストをやり直すようにしもよい。
【0067】
リサイクル材の流動性がバージン材の粒度分布を変更するだけで所定の基準値以上の流動性を得られる可能性がなければ、これまでの耐久テストの結果から最良の粒度分布をバージン材の所定の粒度分布に決定し(S14)、
図5に示すように、決定した所定の粒度分布のバージン材を試作し(S101)、試作したバージン材に後述されるシリカ粒子を添加(S102)するようにしてもよい。最良の粒度分布とは、例えば、材料が同じで粒度分布が異なる複数種類のバージン材に対して行われたそれぞれの耐久テストの結果の中で、所定の回数リサイクルされたあとの流動性が最も高かったリサイクル材の元になっているバージン材の粒度分布を示している。
【0068】
耐久テストは、積層造形を行いながら実施されてもよい。耐久テストは、リコート工程のみを繰り返しながら実施されてもよい。耐久テストは、積層造形を行わずに実施されてもよい。耐久テストは、例えば、リコート工程および焼結工程を省略して実施されてもよい。耐久テストは、例えば
図3に示すように、ベース台2の材料排出部2aに材料補充装置12を予め接続部材30で接続して、材料補充装置12から材料回収用バケット7にバージン材またはリサイクル材が直接排出されるようにしてもよい。
【0069】
耐久テストは、金属積層造形装置1に材料搬送装置8を備えて、バージン材を供給してから所定の回数Nのリサイクルを完了するまで、金属積層造形装置1の制御装置によって自動で制御するようにしてもよい。
【0070】
耐久テストにおいて、バージン材は、例えば、材料補充装置12のバージン材用タンク12aの中に供給されてもよい。また耐久テストにおいて、バージン材は、材料搬送装置8の材料供給用バケット16の中に供給されてもよい。
【0071】
リサイクルのカウントnは、例えば、材料供給用バケット16から材料補充装置12に材料粉体Mを供給し、材料回収用バケット7から不純物除去装置15を通して材料供給用バケット16に材料粉体Mを回収するまでを1回としてもよい。
【0072】
リサイクル材の流動性は、
図6に示すように、材料粉体Mである所定量のリサイクル材を漏斗31に投入し、排出時間および安息角θをそれぞれ測定することで判明する。漏斗31は、開閉手段31が排出口31aを閉じることでリサイクル材を一時的に貯めて、開閉手段31bが排出口31aを開くことでリサイクル材を排出口31aから排出する。
【0073】
流動性を示す排出時間は、漏斗31の排出口31aからリサイクル材が自重で落下を開始してから落下が完了するまでの時間である。排出時間は、短い時間の方が長い時間よりも流動性が高い。
【0074】
流動性を示す安息角θは、漏斗31を用いて、所定の高さからリサイクル材を落下させて、自発的に崩れることなく安定している時のリサイクル材の山の斜面と水平面とのなす角度である。安息角θは、小さい角度の方が大きい角度よりも流動性が高い。
【0075】
所定の回数Nをリサイクルされたリサイクル材の流動性を示す排出時間および安息角θの基準値は、均一な材料粉体層19が形成可能なことが予め確認された値の閾値である。所定の流動性の基準値は、リサイクル材の排出時間が基準値よりも短い時間であり、かつ、リサイクル材の安息角θが基準値よりも小さい角度である。
【0076】
例えば、バージン材の粒度分布は、粒子径が17μm以下の粒子の頻度を4%以下とし、粒子径が53μm以上の粒子の頻度を8%以下とするとよい。このとき、リサイクルを25〜35回行っても流動性は、基準値以上の値を示す。リサイクルを行う所定の回数Nは、25〜35回であるとよい。
【0077】
また好ましく例えば、バージン材の粒度分布は、累積分布で累積が50%の粒子径を示すメジアン径が17μm以上53μm以下の範囲内にあり、頻度分布で頻度が最大値の粒子径を示すモード径が17μm以上53μm以下の範囲内にあり、粒子径が17μm以下の粒子の前記頻度を3%以下とし、粒子径が53μm以上の粒子の前記頻度を7%以下とするとよい。このとき、リサイクルを28〜32回行っても流動性は、基準値以上の値を示す。リサイクルを行う所定の回数Nは、28〜32回であるとよい。
【0078】
材料粉体Mのバージン材は、シリカ粒子が添加されていてもよい。シリカ粒子の粒子径は、5nm以上15nm以下、好ましくは10nmに形成されているとよい。
【0079】
シリカ粒子は、耐久テストにおいて、流動性の基準値以上の流動性を維持できたバージン材に添加されてもよい。シリカ粒子は、耐久テストにおいて流動性の基準値以上の流動性を維持できなかったバージン材に添加されてもよい。シリカ粒子が添加されたバージン材の耐久テストを実施してもよい。
【0080】
シリカ粒子は、材料粉体Mの表面に付着して材料粉体Mの流動性を高める効果がある。シリカ粒子は、材料粉体Mのバージン材と一緒に攪拌器に入れられて攪拌されることで、材料粉体Mのバージン材に添加される。
【0081】
シリカ粒子は、例えば、材料粉体Mのバージン材の全体量の0.01%以上0.09%以下の添加量で、好ましくは材料粉体Mのバージン材の全体量の0.05%の添加量で材料粉体Mの流動性を十分に高めることができる。
【0082】
シリカ粒子の添加量は、添加前後の焼結体21の空隙率および強度の比較によって決定されるとよい。シリカ粒子は、例えば、組成元素にケイ素(Si)が含まれている材料粉体Mのバージン材に添加されることで、焼結体21の品質をさらに維持することができる。
【0083】
シリカ粒子は、例えば
図4および
図5に示すように、耐久テストにおいてリサイクル材の流動性が基準値を下まわったバージン材に添加されるとよい。バージン材に添加するシリカ粒子の添加量は、
図5に示すように、耐久テストのあとのリサイクル材の流動性と、実際にリサイクル材によって造形された焼結体21の空隙率および強度と、に基づき決定されるとよい。またバージン材に添加するシリカ粒子の添加量は、耐久テストのあとのリサイクル材の流動性と、実際にリサイクル材によって造形された焼結体21の空隙率と、に基づき決定されてもよい。またバージン材に添加するシリカ粒子の添加量は、耐久テストのあとのリサイクル材の流動性と、実際にリサイクル材によって造形された焼結体21の強度と、に基づき決定されてもよい。
【0084】
流動性の所定の基準値は、例えば、厚みおよび密度が均一な材料粉体層を形成することが可能なときの流動性の値を示す。焼結体21の空隙率の所定の基準値および強度の所定の基準値は、シリカ粒子を添加していない材料粉体Mのバージン材またはリサイクル材によって造形された焼結体21の空隙率および強度、そして焼結体21の品質に基づいて決められるとよい。
【0085】
まず、
図4に示すように、リサイクル材の流動性がバージン材の粒度分布を変更するだけで所定の基準値以上の流動性を得られる可能性がなければ(S11)、これまでの耐久テストの結果から最良の粒度分布をバージン材の所定の粒度分布に決定する(S14)。そして、所定の粒度分布のバージン材を試作する(S101)。試作したバージン材に任意の添加量のシリカ粒子を添加する(S102)。
【0086】
つぎに、試作したバージン材の耐久テストを実施する。リサイクルのカウントnをゼロにリセットする(n=0)(S103)。試作したバージン材を金属積層造形装置1に供給する(S104)。未焼結の材料粉体Mとして排出されるリサイクル材を金属積層造形装置1から回収する(S105)。カウントnが所定の回数Nに達したかどうかを判定する(S106)。
【0087】
カウントnが所定の回数Nに達していなければ(n<N)、カウントnを1つ増やす(n=n+1=1)(S107)。回収したリサイクル材を再び金属積層造形装置1に供給する(S108)。再び未焼結の材料粉体Mとして排出されるリサイクル材を金属積層造形装置1から回収する(S105)。再びカウントnが所定の回数Nに達したかどうかを判定する(S106)。カウントnが所定の回数Nに達していなければ(n<N)、再びカウントnを1つ増やす(n=n+1=2)(S107)。このようにして試作したバージン材をカウントnが所定の回数Nに達する(n=N)まで繰り返しリサイクルする。
【0088】
最後に、所定の回数Nだけリサイクルしたあとのリサイクル材の流動性を測定する(S109)。リサイクル材の流動性が所定の基準値以上かどうか判定する(S110)。
【0089】
リサイクル材の流動性が所定の基準値を下まわれば、シリカ粒子の添加量を調整して、異なる任意の添加量に変更する(S112)。所定の粒度分布のバージン材を再び試作して(S101)、変更された添加量のシリカ粒子を新たに試作した所定の粒度分布のバージン材に添加して(S102)、耐久テストをやり直すようにする。
【0090】
リサイクル材の流動性が所定の基準値以上であれば、リサイクル材を金属積層造形装置1に供給して、金属積層造形装置1によってリサイクル材から焼結体21を積層造形する。そして、造形された焼結体21の空隙率と強度をそれぞれ測定する(S111)。焼結体21の空隙率が所定の基準値以上かどうか判定する(S113)。
【0091】
焼結体21の空隙率が所定の基準値を下まわれば、シリカ粒子の添加量を調整して、異なる任意の添加量に変更する(S112)。所定の粒度分布のバージン材を再び試作して(S101)、変更された添加量のシリカ粒子を新たに試作した所定の粒度分布のバージン材に添加して(S102)、耐久テストをやり直すようにする。
【0092】
焼結体21の空隙率が所定の基準値以上であれば、焼結体21の強度が所定の基準値以上かどうか判定する(S114)。
【0093】
焼結体21の強度が所定の基準値を下まわれば、シリカ粒子の添加量を調整して、異なる任意の添加量に変更する(S112)。所定の粒度分布のバージン材を再び試作して(S101)、変更された添加量のシリカ粒子を新たに試作した所定の粒度分布のバージン材に添加して(S102)、耐久テストをやり直すようにする。
【0094】
焼結体21の強度が所定の基準値以上であれば、このときリサイクル材の元となったバージン材に対して添加されたシリカ粒子の添加量を所定の添加量として決定する(S115)。なお、リサイクル材の流動性が所定の基準値以上であれば、リサイクル材の元となったバージン材を金属積層造形装置1に供給して、金属積層造形装置1によってバージン材から焼結体21を積層造形して、当該焼結体21の空隙率および強度が所定の基準値以上かどうか判定するようにしてもよい。
【0095】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。
前記シリカ粒子を添加する前の前記粒度分布は、前記流動性の所定の基準値よりも低い前記流動性に対応する前記粒度分布であり、前記シリカ粒子の添加量は、前記流動性が前記流動性の所定の基準値以上になるように調整されている、
請求項3記載の金属積層造形用の材料粉体の製造方法。