(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-25151(P2021-25151A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】保冷具及び保冷システム
(51)【国際特許分類】
A41D 23/00 20060101AFI20210125BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20210125BHJP
【FI】
A41D23/00 E
A41D13/005 108
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-143381(P2019-143381)
(22)【出願日】2019年8月2日
(71)【出願人】
【識別番号】519020926
【氏名又は名称】ランシャンデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】畑 あゆ美
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AB11
3B011AC01
3B011AC21
(57)【要約】
【課題】優れた断熱性を有する保冷具を提供する。
【解決手段】首周りに装着する保冷具1000において、装着バンド100内に収容される保冷容器300と、保冷容器300に隣接して配置される断熱シート210と、断熱シート210と保冷容器300との間に位置するスペーサ220と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
首周りに装着する保冷具において、
装着バンド内に収容される保冷容器と、
前記保冷容器に隣接して配置される断熱シートと、
前記断熱シートと前記保冷容器との間に位置するスペーサと、
を備える保冷具。
【請求項2】
前記保冷容器は、概形として長手方向が湾曲する態様で曲げられるように区分けされた複数の保冷剤封入部を有する、請求項1記載の保冷具。
【請求項3】
前記保冷剤封入部間の区切部の幅は、7mm〜25mmである、請求項2記載の保冷具。
【請求項4】
前記装着バンドは、不織布製である、請求項1記載の保冷具。
【請求項5】
前記保冷容器は、保冷剤注入後の重量が80g〜200gであり、長さが35cm〜50cmである、請求項1記載の保冷具。
【請求項6】
前記装着バンドは、その長さの調整手段を備える、請求項1記載の保冷具。
【請求項7】
請求項1記載の保冷具と、
前記保冷容器に付帯して設けられるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の放熱部に一端が接続され他端が前記保冷容器から離間したファンの近傍に位置する伝熱部と、
前記ペルチェ素子及び前記ファンの電源と、
を備える保冷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷具及び保冷システムに関し、特に、人間又は動物の首に保冷具及び保冷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、頭部を冷却する冷却性能が優れ、長時間の冷却維持性能を有し、繰り返し使用が可能であり、快適な装着感を有するとともに、安価に容易に製造でき、廉価に使用可能な頭部冷却用具が開示されている。この頭部冷却用具は、人体頭部に装着して冷却可能であり、柔軟性を有する不織布製シート状表面部材と不織布製シート状内面部材とにより形成され、該シート状表面部材とシート状内面部材との互いの接合により形成されたシート状表内面部材接合部により区分された複数個の収納部に冷却媒体が収納されてなる頭部冷却用具であり、熱融着性不織布製表内面素材を熱融着してシート状表内面部材接合部が形成されるというものである。
【特許文献1】特開2018−44275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されている頭部冷却用具は、一例としては、不織布製シート状表面部材と不織布製シート状内面部材という2種類の部材を、互い異なる断熱性構成することも開示されているが(請求項10)、不織布で実現できる断熱は限定的である。
【0004】
そこで、本発明は、優れた断熱性を有する保冷具及び保冷システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、首周りに装着する保冷具において、
装着バンド内に収容される保冷容器と、
前記保冷容器に隣接して配置される断熱シートと、
前記断熱シートと前記保冷容器との間に位置するスペーサと、
を備える。
【0006】
本発明によれば、断熱シートとスペーサとの双方を備えるため、優れた断熱効果を実現することができる。
【0007】
なお、前記保冷容器は、概形として長手方向が湾曲する態様で曲げられるように区分けされた複数の保冷剤封入部を有していてもよい。こうすると、凍結していた保冷剤が使用時間の経過によりジェル状になったときに、保冷剤が自重によって容器内で偏ってしまうことを回避できる。また、使用に際して、複数の保冷剤を用意して、複数個の収納部に収納するといった煩雑さが不要となるし、複数個の収納部を設けるための面倒な作業工程も不要となる。
【0008】
また、前記保冷剤封入部間の区切部の幅は、7mm〜25mmとすると、保冷剤が凍結時であっても首にフィットするような湾曲形状を実現することができる。
【0009】
前記装着バンドは、不織布製とすることもできる。これにより、装着バンドの洗濯が容易になるし、装着バンド自体を広告媒体としても利用することができる。
【0010】
前記保冷容器は、保冷剤注入後の重量が80g〜200gであり、長さが35cm〜50cmとすることができる。なお、当該条件は、成人用に好適な条件であり、例えば幼児用であったり、動物用であったりする場合には、これよりも大型化してもよいし、小型化してもよい。
【0011】
前記装着バンドは、その長さの調整手段を備えることもできる。こうすると、成人用幼児用の兼用とすることもできるし、体のサイズに個体差がある動物にも幾つものサイズの保冷具を用意する必要がない。
【0012】
また、本発明の保冷システムは、
上記保冷具と、
前記保冷容器に付帯して設けられるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の放熱部に一端が接続され他端が前記保冷容器から離間したファンの近傍に位置する伝熱部と、
前記ペルチェ素子及び前記ファンの電源と、
を備える。
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において、同様の部分には同一の符号を付している。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1の保冷具1000の説明図である。
図1に示す保冷具1000は、成人が首周りに装着する場合に好適に用いることができるものである。
図1に示す保冷具1000は、以下説明する、装着バンド100と、中間体200と、保冷容器300とに大別される。
【0015】
装着バンド100は、例えば、人間の衣類に用いられる素材であれば、如何なるものでも用いることができる。したがって、例えば、不織布製、綿製、布製などとすることができる。こうすると、装着バンドの洗濯が容易になり、装着バンド100を衛生的に用いることができる。本実施形態では、装着バンド100は、不織布製としている。こうすると、装着バンド100に広告を印刷することで、装着バンド100を広告媒体として利用することも可能となる。
【0016】
広告の例を示すと、例えば、
図1に示す保冷具1000は、夏季における、スポーツスタジアム、ゴルフ場などで、観戦者、プレイヤーが好適に用いることができるし、観光地巡りをする旅行者なども用いることができる。そうすると、装着バンド100には、例えば、スポーツチームの応援グッズを兼ねてロゴマークを印刷したり、ゴルフ場名、旅行会社の社名を印刷したりすると好適である。
【0017】
装着バンド100は、長さを45cm〜70cmとすればよい。幼児用の場合には、例えば、これらの60%〜70%程度の長さとすればよい。或いは、Lサイズ・Mサイズ・Sサイズというように、いくつかのサイズを用意し、それぞれ長さを異ならせてもよい。
【0018】
装着バンド100は、保冷容器300を収容する円筒部110と、円筒部110の両端に位置しており装着バンド100を輪状にするための接続部120,130と、接続部120に取り付けられた第1の面ファスナー(ループ)122と、接続部130に取り付けられており第1の面ファスナー122に着脱可能な第2の面ファスナー(フック)132,134とを含む。
【0019】
図2(a)及び
図2(b)は、
図1に示す装着バンド100の製造工程図である。
図2(a)に示すように、約60cm×約13cmの大きさの不織布を用意する。そして、この不織布のうち、接続部120に隣接する領域A(約10cm×約6.5cm)をカットする。
【0020】
また、接続部120に隣接する領域B(約10cm×約6.5cm)をカットする。その後、領域Cを領域Dに重ね合わせるように、折り返し線Eで折り返す。そして、部位F〜Hでそれぞれ、例えば、加熱シーリングをすることによって、領域Cと領域Dとを接続する。
【0021】
なお、領域Aと領域Bとの長さは、いずれも約10cmである例を説明したが、これらの長さは同一でなくてもよい。例えば、領域Bについては、約6cmの長さとすることもできる。もっとも、これらのいずれの数値も例示である点には留意されたい。
【0022】
図1に戻る。中間体200は、断熱シート210と、スペーサ220と、把持部230とを含む。断熱シート210は、例えば、金属薄膜を用いることができる。本実施形態では、アルミニウム薄膜を用いているが、熱反射率の高い他の金属薄膜としてもよいし、熱反射率さえ高ければ金属以外の薄膜を用いることもできる。
【0023】
スペーサ220は、装着バンド100内に空気層を設けて断熱シート210とともに保冷効果を高めるものである。本実施形態では、エアキャップとも称されるエアクッション付きの塩化ビニール製の気泡緩衝材を用いているが、これに代えて、エアクッションの有無に拘わらず、発泡スチロール、発泡ポリエチレン等を素材とした緩衝剤を用いることもできる。
【0024】
把持部230は、中間体200を円筒部110から取り出すときに把持するものである。把持部230は、中間体200に対して接着剤又は圧着によって接続することができる。なお、中間体200がある程度の硬性を有する場合には、保冷具1000の装着者等が中間体200自体を把持することで円筒部110から取り出すことが可能となるので、必ずしも設けなくてはならないものではない。
【0025】
中間体200は、断熱シート210とスペーサ220とを、それぞれ別パーツで構成してもよいし、蒸着、接着などにより一体化してもよい。前者の場合には、例えば、一方が摩耗や経年劣化した場合に他方はそのままで一方のみを交換することができる。後者の場合には、装着バンド100に対して挿抜するときの操作性を高めることができる。
【0026】
なお、中間体200と保冷容器300とを一体化することもできる。この場合には、保冷容器300の変形に対応可能なように、複数の保冷剤封入部310,320,330,340間の区切部315,325,335に対応する箇所にそれぞれ遊びを設けておくとよい。
【0027】
保冷容器300は、例えば、凍結させた保冷剤を収容し、装着者の首周りを冷却するものである。保冷剤は、既知のように、水と所要のポリマー及び調整材とを主成分としたものとすることができる。装着者は、暑さ対策として用いることもできるし、風邪等の発熱時に装着者の症状を和らげたり治療したりするために用いることができる。
【0028】
保冷容器300は、円筒部110の大きさに対応する大きさとすればよい。したがって、例えば円筒部110が約40cm×約6.5cmの大きさであれば、保冷容器300の大きさは、その保冷剤を注入することによって生じる厚み分も考慮して、約36cm×約5cmの大きさとすることが考えられる。保冷容器300自体は、例えば厚さ2mm程度の塩化ビニールを用いて作成すればよい。
【0029】
保冷容器300は、複数の保冷剤封入部310,320,330,340を有し、既述のように、これらの間にはそれぞれ区切部315,325,335が設けられている。また、保冷剤封入部310等の周辺は、封止部365が位置しており、保冷剤封入部310等を構成する。
【0030】
複数の保冷剤封入部310等を有していると、次のような利点がある。すなわち、保冷具1000を使用していくうちに、当初は凍結していた保冷剤は解凍されてジェル状になるため、保冷剤がその自重によって落下方向に移動するが、各保冷剤封入部310で各々保冷剤が移動しても、保冷容器300全体の両端に偏ることはないので、首の下側のみが極端に冷却され、首の上側が極端に冷却されないという事態は生じない。もっとも、このことは、保冷容器300が、単一の保冷剤封入部を有する場合を除外するものではない。
【0031】
ここで、保冷剤封入部310等の数は図示している4つに限定されるものではなく、これよりも多くてもよいし、少なくてもよい。ただし、偶数個とした方が、区切部325が装着者の首の真後ろに位置するため、保冷剤がジェル状になった場合にも区切部325を中心として保冷剤が両側に自重によって移動しても、保冷具1000が装着者の首からずれにくく納まりがよい。
【0032】
区切部315,325,335の幅は、例えば7mm〜25mmとすることができる。こうすると、保冷剤が凍結した状態にあっても、区切部315,325,335の各々の位置で円弧状のように曲がることができ、保冷具1000を首にフィットするような湾曲形状とすることができる。
【0033】
保冷容器300は、成人用であれば、保冷剤を含めた重量が80g〜200g(例えば、120g)になるようにするとよい。こうすると、保冷具1000の装着者が、それほど重量を感じることなく、保冷具1000を装着することが可能となる。
【0034】
なお、保冷具1000の装着は、第1の面ファスナー122と第2の面ファスナー132,134とが、装着者の顎の下あたりとなるようにするとよい。また、保冷具1000は、完全な輪状となる態様で第1の面ファスナー122と第2の面ファスナー132,134とが接続される必要はなく、保冷具1000の長手方向の中心線が所要の角度を持つ態様で接続されてもよい。
【0035】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2の保冷具1000の説明図である。
図1に示す保冷具1000は、動物が首周りに装着する場合に好適に用いることができるものである。
図3に示す保冷具1000は、
図1に示した部分に加えて、装着バンド100の長さの調整手段400を備える。
【0036】
犬、猫などに代表されるペット用の動物、牛、馬、豚などに代表される家畜動物、その他の動物にも幾つものサイズを用意せずに保冷具1000を用いることが可能となる。ここでは、家畜動物である乳牛に好適に用いることができる保冷具1000について説明する。
【0037】
乳牛は、家畜の中でも相対的にストレスに弱く、過度にストレスを感じると乳量が低下するなどの悪影響が出る。そのため、調整手段400を用いて、保冷具1000が過剰な締め付け又は緩みのある状態で装着することの回避が必要である。特に、乳牛は、成牛では20cmくらいの首回りの長さの個体差がある。したがって、調整手段400を設けることは重要である。
【0038】
そこで、本実施形態の保冷具1000は、
図3に示すような調整手段400を備えている。なお、ここでは、紐を用いることで装着バンド100の長さ調整を行う例を示しているが、調整手段400の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、第2の面ファスナー132として大判の面ファスナーを用いることで実現してもよいし、或いは、円筒部110と接続部130とにベルトを介して一対のプラスチック製のバックルを取り付けて、当該バックル及びベルトによって実現してもよい。
【0039】
装着バンド100は、保冷容器300が収容される部分については、その長さを例えば約60cm〜80cmとし、その幅を例えば15cm〜25cmとすることができる。保冷剤封入部310等の数は例えば6つとしているが、これよりも多くてもよいし、少なくてもよい。
【0040】
保冷容器300は、乳牛用であれば、保冷剤を含めた重量が500g〜4000g(例えば、2500g)になるようにするとよい。こうすると、保冷具1000の装着者が、それほど重量を感じることなく、保冷具1000を装着することが可能となる。
【0041】
なお、保冷具1000は、牛は頚静脈が顎の下付近を通っているので、第1の面ファスナー122と第2の面ファスナー132とが牛の背側になる態様で装着するとよい。
【0042】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態3の保冷システムの説明図である。
図4に示す保冷システムは、
図1に示した保冷具1000に加えて、以下説明する、ペルチェ素子2000と、流路3000と、電線4000と、ポーチ5000と、を備える。
【0043】
ペルチェ素子2000は、保冷具1000の保冷容器300に付帯して設けられる。ペルチェ素子2000は、保冷具1000の使用による装着者からの伝熱で保冷剤がジェル化するまでの時間を長期化するものである。ペルチェ素子2000は、吸熱部が保冷容器300又は中間体200に接続され、放熱部が流路3000に接続される。
【0044】
流路3000は、ペルチェ素子2000の放熱部からの放熱を保冷容器300から離間したポーチ5000まで伝送するものである。したがって、流路3000は、一端がペルチェ素子2000の放熱部に接続され、他端がポーチ5000に接続されている。流路3000は、銅などの熱伝導性が高い素材とこれを被覆する断熱素材とを含む。
【0045】
電線4000は、電源5100とペルチェ素子2000とを結ぶものである。電源5100をオン状態にするペルチェ素子2000に電流が流れる。したがって、ペルチェ素子2000によって、保冷剤がジェル化するまでの時間を長期化することができる。
【0046】
ポーチ5000は、既述の電源5100と、流路3000の他端近傍に位置するファン5200とを有する。電源5100は、ペルチェ素子2000に電流を供給するのみならず、ファン5200にも電流を供給する。これにより、ファン5200を回転させて、流路3000を伝熱してきた熱を外部に放出することができる。
【0047】
ポーチ5000は、例えば、保冷具1000の装着者がズボンのベルトに通したり、リュックサックなどに取り付けたりするなどして使用できるように、ベルト通しを設けたり、フックを設けたりするとよい。
【0048】
なお、本実施形態では、電源5100とファン5200とをいずれもポーチ5000に収容する例を説明したが、これらは一体化することは必要ではなく、別々にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の実施形態1の保冷具1000の説明図である。
【
図2】
図1に示す装着バンド100の製造工程図である。
【
図3】本発明の実施形態2の保冷具1000の説明図である。
【
図4】本発明の実施形態3の保冷システムの説明図である。
【符号の説明】
【0050】
100 装着バンド
110 円筒部
120,130 接続部
122 第1の面ファスナー
132,134 第2の面ファスナー
200 中間体
210 断熱シート
220 スペーサ
230 把持部
300 保冷容器
310,320,330,340,350,360 保冷剤封入部
315,325,335,345,355 区切部
365 封止部
1000 保冷具
2000 ペルチェ素子
3000 流路
4000 電線
5000 ポーチ
5100 電源
5200 ファン