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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-25659(P2021-25659A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】管更生工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20210125BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20210125BHJP
   B29C 63/34 20060101ALI20210125BHJP
【FI】
   F16L1/00 L
   E21D11/04
   B29C63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-115288(P2020-115288)
(22)【出願日】2020年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2019-143936(P2019-143936)
(32)【優先日】2019年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592057385
【氏名又は名称】株式会社湘南合成樹脂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】神山 隆夫
【テーマコード(参考)】
2D155
4F211
【Fターム(参考)】
2D155GC04
2D155GC06
2D155JA00
2D155KB11
2D155LA16
4F211AH43
4F211SA17
4F211SC03
4F211SD04
4F211SJ22
(57)【要約】
【課題】セグメントを管長方向に連結する連結ボルトがセグメントから抜け落ちるのを防止する。
【解決手段】セグメント1が、周方向に連結されて管ユニットが組み立てられ、管ユニットのセグメントが連結ボルト11を用いて管長方向に連結されて、既設管内に更生管が組み立てられる。内部板106、107間の連結ボルトに、舌片50bを形成した弾性変形可能な円柱部材50が取り付けられる。円柱部材の外径は内部板の連結ボルト挿通穴106a、107bより大きいので、連結ボルトの抜け落ちが防止される。舌片50bに下側から力を作用させると、円柱部材11は弾性変形して連結ボルトから取り外すことができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面板と、該内面板の両側に立設された側板と、内面板の両端に立設された端板と、側板の内側で内面板の上面に立設された内部板を複数有するセグメントを、周方向と管長方向に連結して既設管内に更生管を敷設する管更生工法であって、
セグメントの内部板に周方向に沿って複数のナットを固定する工程と、
連結ボルトをセグメントの側板並びに内部板に形成された挿通穴に挿通する工程と、
長手方向に延びる切り欠き部を有し、外径が前記内部板の挿通穴径より大きな弾性変形できる中空の円柱部材を、該切り欠き部を介して内部板間に位置する連結ボルトに嵌め込んで円柱部材を連結ボルトに取り付ける工程と、
前記ナットが固定されたセグメントと連結ボルトが挿通されたセグメントを位置合わせする工程と、
連結ボルトをナットに螺合することにより両セグメントを管長方向に連結する工程と、を備え、
前記円柱部材は、連結ボルトが重力で管長方向に移動するときは、円柱部材が連結ボルトに対しては移動せず、一方、ナットと螺合させるために連結ボルトを挿入方向に移動するときは、連結ボルトが円柱部材に対して移動するように、連結ボルトに取り付けられることを特徴とする管更生工法。
【請求項2】
前記円柱部材の一端上部に円柱部材を超えて管長方向に延びる舌片が形成され、円柱部材は、舌片に連結ボルト側から力を作用させたとき、円柱部材が連結ボルトから取り外せるように、拡径する方向に弾性変形することを特徴とする請求項1に記載の管更生工法。
【請求項3】
前記舌片を含む円柱部材の管長方向の長さが、セグメントの内部板間の距離の半分以上であることを特徴とする請求項2に記載の管更生工法。
【請求項4】
前記舌片を含む円柱部材の管長方向の長さが、セグメントの内部板間の距離に相当することを特徴とする請求項2に記載の管更生工法。
【請求項5】
前記舌片は、外周面並びに内周面が円弧状に湾曲しており、該外周面と内周面の円弧の曲率中心が円柱部材の断面円の中心に一致していることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の管更生工法。
【請求項6】
前記円柱部材は、外部から円柱部材に力を作用させ円柱部材を拡径する方向に弾性変形させることが可能な凹部を周面に一つ又は複数有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の管更生工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面を構成する内面板と、該内面板の周縁に立設された側板並びに端板とをプラスチックによって一体に形成してなるセグメントを、周方向並びに管長方向に連結して既設管内に更生管を敷設する管更生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、該管路を地中から掘出することなく、その内周面にライニングを施して管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。
【0003】
大口径の管路を更生する場合には、内周面を構成する内面板と、内面板の周縁に立設された側板並びに端板とをプラスチックによって一体に形成してなるセグメントが用いられる。セグメントは周方向に連結されて管ユニットが組み立てられ、該管ユニットが連結ボルトを介して管長方向に連結されて既設管内に更生管が組み立てられる。
【0004】
管ユニットの管長方向への連結は、連結ボルトをセグメントの側板と内部板に形成された挿通穴に通して他のセグメントに固定されたナットに螺合させることにより行われる。この場合、連結ボルトがセグメントから抜け落ちないようにするために、仮止め部材を用いて連結ボルトをセグメントに仮止めすることが下記特許文献1に提案されている。また、下記特許文献2には、弾性変形可能なクリップを連結ボルトに嵌め込んで、連結ボルトがセグメントから抜け落ちするのを防止する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−169711号公報
【特許文献2】特開2017−227255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている仮止め部材は、中央部に連結ボルトを挿入することができる開口部が形成されたシート部材であり、開口部と連結ボルト間に発生する摩擦抵抗により連結ボルトが仮止めされるので、連結ボルトがセグメントから落下するのを確実に防止することができず、セグメントの管長方向の連結が容易でない、という問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたようなクリップは、管長方向の長さが短いので、クリップを連結ボルトに取り付けても、連結ボルトの落下は防止できるものの、連結ボルトが内部板間を動くことにより、連結ボルトの位置が安定しない、という問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、連結ボルトがセグメントから落下するのを防止できるとともに、セグメントの管長方向への連結を容易にできる管更生工法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
内面板と、該内面板の両側に立設された側板と、内面板の両端に立設された端板と、側板の内側で内面板の上面に立設された内部板を複数有するセグメントを、周方向と管長方向に連結して既設管内に更生管を敷設する管更生工法であって、
セグメントの内部板に周方向に沿って複数のナットを固定する工程と、
連結ボルトをセグメントの側板並びに内部板に形成された挿通穴に挿通する工程と、
長手方向に延びる切り欠き部を有し、外径が前記内部板の挿通穴径より大きな弾性変形できる中空の円柱部材を、該切り欠き部を介して内部板間に位置する連結ボルトに嵌め込んで円柱部材を連結ボルトに取り付ける工程と、
前記ナットが固定されたセグメントと連結ボルトが挿通されたセグメントを位置合わせする工程と、
連結ボルトをナットに螺合することにより両セグメントを管長方向に連結する工程と、を備え、
前記円柱部材は、連結ボルトが重力で管長方向に移動するときは、円柱部材が連結ボルトに対しては移動せず、一方、ナットと螺合させるために連結ボルトを挿入方向に移動するときは、連結ボルトが円柱部材に対して移動するように、連結ボルトに取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弾性変形できる中空の円柱部材を、連結ボルトに嵌め込んで、弾性変形により拡大した中空部での挟持力で円柱部材を連結ボルトに取り付けているので、連結ボルトがセグメントから抜け落ちるのを確実に防止することができる。また、本発明では、円柱部材の管長方向の長さが、セグメントの内部板間の距離の半分以上、あるいはセグメントの内部板間の距離にほぼ等しいので、連結ボルトが内部板間を動く距離が僅かになり、連結ボルトの位置が安定する、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】更生管の組み立てに使用されるセグメントの構造を示した斜視図である。
図2】セグメントを周方向に連結して管ユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
図3】管ユニットのセグメントを連結ボルトを用いて管長方向に連結する状態を示した説明図である。
図4】円柱部材と連結ボルトを示す斜視図である。
図5】円柱部材を連結ボルトに取り付ける工程を、図4のA−A線に沿った断面で示した説明図である。
図6】円柱部材を連結ボルトに取り付ける状態を示した斜視図である。
図7a】円柱部材を連結ボルトに取り付けた状態を示す上面図である。
図7b】円柱部材を連結ボルトに取り付けた状態を示す側面図である。
図8a】他の実施例による円柱部材を連結ボルトに取り付けた状態を示す上面図である。
図8b】他の実施例による円柱部材を連結ボルトに取り付けた状態を示す側面図である。
図9】円柱部材の他の実施例を示した斜視図である。
図10】管ユニットを組み立て更生管を既設管内に敷設する状態を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を、添付図面に示す実施例に基づいて説明する。本発明は、下水管、上水管、トンネル、あるいは農業用水路などの大口径の既設管を更生あるいは修復するのに適している。実施例では、更生管は、管長方向に直交する断面形状が円形として説明されるが、矩形など円形以外の形状の更生管にも本発明を適用できることは勿論である。更に、断面形状が管として閉じた形状でなく、例えば馬蹄形や半円形、凹字形など片側が開いた形状である場合にも管と見なして本発明を適用することができる。
【0013】
この明細書において、管長方向とは図2で管ユニット10の管の長さ方向に延びる矢印Xで示した方向を、周方向とは管ユニット10の円の周方向をいう。
【0014】
図1には、更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同じ板厚の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0015】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板102、103と同じ板厚並びに同様な形状の複数の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。
【0016】
セグメント1は、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した形状となっているが、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形などにすることもできる。
【0017】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するために、連結ボルト11及びナット12(図3)を通すための円形の挿通穴102a、103aが周方向に等間隔に複数形成される。内部板106にも、連結ボルト11を通すための円形の挿通穴106aが等間隔に複数形成され、内部板107には、連結ボルトが挿入でき挿通穴として機能する切り欠き107aが等間隔に複数形成される。これらの挿通穴102a、103a、106a、並びに切り欠き107aは、それぞれ周方向の位置が一致している。
【0018】
端板104、105は、側板102と側板103の間に配置される部材で、端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルト等の連結ボルトを通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。
【0019】
セグメント1はその端板105と他のセグメントの端板104を当接させ、ボルト6とナット7(図3)を挿通穴104a、105aに位置決めして、ボルト6とナット7を螺合させることにより周方向に連結させることができる。
【0020】
セグメントを順次周方向に一周分連結させると、図2に示すような管長方向Xに垂直に所定幅Dを有するリング状の管ユニット10を組み立てることができる。管ユニット10は、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。なお、図2では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107等の補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0021】
このような管ユニット10は、図3に示したように、順次管長方向に連結される。図3において、管ユニットのセグメント1a、1b、1cの内部板106には、複数の金属製ナット12が連結ボルト13を用いて複数固定されている。ナット12の管長方向の長さは、側板102と内部板106の間隔より長く、側板102からはみ出てセグメントの他方の側板103の厚さと同等あるいはそれ以上となっている。連結ボルト11は、一端にナット12と螺合するネジ部11aが形成され、他端につば14aを有する頭部14が固定された円柱状の細長いボルトである。
【0022】
図3には、セグメント1cと1bは管長方向に連結されており、セグメント1bにセグメント1aを連結する状態が示されている。セグメント1aをセグメント1bに連結する場合、セグメント1bの側板102からはみ出ているナット12を、セグメント1aの側板103の穴103aに通過させ、両セグメント1a,1bの側板103、102を突き合わせる。
【0023】
続いて、連結ボルト11を、セグメント1aの側板102の挿通穴102a、内部板106の挿通穴106a、内部板107の切り欠き107aに通し、ネジ部11aをセグメント1bに固定されているナット12にねじ込む。これにより、連結ボルト11とナット12が連結される。その後、頭部14のつば14aがセグメント1aの最左端の内部板106に圧接するまで連結ボルト11をナット12にねじ込み、両セグメント1a、1bをボルト締めして管長方向に連結する。なお、図3には、後述するように、連結ボルト11がセグメントから落下しないようにするために、連結ボルト11に抜け落ち防止部材としての円柱部材が取り付けられている。
【0024】
このようにして、管ユニットのセグメントを、既に連結されている他の管ユニットのセグメントと管長方向に連結することにより、管ユニットを管長方向に任意の長さに連結することができる。
【0025】
管ユニットを管長方向に連結するとき、効率を高めるために、管ユニットを構成するセグメントに予め連結ボルトを挿通しておき、この連結ボルトが挿通された管ユニットを、既に連結されている管ユニットに連結することが行われる。しかし、この場合、挿通された連結ボルトに重力が作用して連結ボルトがセグメントから抜け落ちる恐れがあるので、本実施例では、連結ボルトがセグメントから抜け落ちるのを防止する。
【0026】
このような抜け落ち防止部材として、図4図5に示したようなポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック製円柱部材50が用いられる。円柱部材50は、長手方向(管長方向)の長さがt1で、内径d1、外径d2の中空の弾性変形可能な円柱部材で、下方部に長手方向と直交する方向に見て幅d3、長手方向に長さt1の切り欠き部50aが全長に渡って形成されている。円柱部材50の外径d2は、内部板106の挿通穴106a、内部板107の切り欠き107aの各径より大きく、円柱部材50が各挿通穴ないし切り欠きを通過することができない大きさになっている。
【0027】
本実施例では、円柱部材50の内径d1は連結ボルト11の外径d4と同径かあるいは外径d4より僅かに小さく(d1<d4)、円柱部材50の長さt1は、セグメント1の側板102(103)とそれに隣接する内部板106間の距離t2あるいは内部板106、107間の距離t2(図7a)より短く、t2/2以上の長さとなっている。
【0028】
円柱部50の切り欠き部50aの幅d3は、連結ボルト11の断面円の1/6円弧から2/6円弧の大きさで、円柱部材50を切り欠き部50aから円柱部材50を拡径方向に弾性変形させて連結ボルト11に嵌め込むことが可能な大きさになっている。また、円柱部材50の肉厚(d2−d1)/2は、いずれの径方向にも等しくなっており、円柱部材50を連結ボルト11に嵌め込むとき、円柱部材50が弾性変形して拡径し、当該嵌め込みを可能にする厚さになっている。
【0029】
円柱部材50の一端上部に切り欠き部50aと径方向に対向する位置に円柱部材50を超えて管長方向に延びる舌片50bが円柱部材50と一体に形成される。舌片50bは、肉厚が円柱部材50の肉厚と同じで外周面並びに内周面が円弧状に湾曲しており、舌片50bの内周面と円柱部材50の外周面は同一面となっている。また、舌片50bの該外周面と内周面の円弧の曲率中心は円柱部材50の断面円の中心に一致している。舌片50bは管長方向にt3の長さを有し、円柱部材50の先端から距離t4前方に延びていて、舌片50bの下側から作業者の手あるいは工具で舌片50bに力を作用できるようになっている。なお、舌片50bの円柱部材先端からの伸延距離t4と円柱部材50の長さt1を加算した長さ(t1+t4)は、内部板106、107間の距離t2よりも短く設定される(図7a)。また、舌片50bの周方向の幅w1(図5図6)は、内部板107の切り欠き107aの周方向幅w2(図6)より大きく設定され、また内部板106の挿通穴106aの径より大きく設定されるので、舌片50bは挿通穴106aないし切り欠き107aを通過することができない大きさになっている。
【0030】
図5には、円柱部材50を連結ボルト11に取り付ける状態が図示されている。図5の上段の図は、図4のA−A線に沿った断面図で、この状態から図5の中断に示したように、円柱部材50を、切り欠き部50aから連結ボルト11に押し当てると、円柱部材50は弾性変形して拡径する。更に、円柱部材50を押し込むと、図5の下段に示したように、円柱部材50は連結ボルト11に嵌め込まれる。連結ボルト11の外径d4は、円柱部材50の内径d1と同径あるいはそれより僅かに大きく、円柱部材50は、弾性変形により拡大した中空部で連結ボルト11をほぼ全周に渡って挟持し、連結ボルト11に確実に取り付けられる。この場合、円柱部材50の管長方向の長さは、内部板間の距離の半分以上あるので、連結ボルト11のセグメント1に対する管長方向の移動を抑制することができる。
【0031】
また、円柱部材50は弾性変形に応じた所定の挟持力(締付力)で連結ボルト11に取り付けられる。この挟持力は、連結ボルト11が重力で管長方向に移動して、円柱部材50あるいは舌片50bがいずれかの内部板106、107に当たった場合には、円柱部材50は連結ボルト11に対しては移動せず、一方、ナット12と螺合させるために連結ボルト11を挿入方向に移動し円柱部材50あるいは舌片50bが内部板106、107に当たった場合には、連結ボルト11が円柱部材50に対して移動するように、定められる。
【0032】
一方、図5の下段に示す状態で、矢印で示したように、舌片50bに連結ボルト11側から上向きに力を作用させたとき、円柱部材50は、図5の中段に示したように、持ち上がり、拡径する方向に弾性変形するので、上段に示したように、円柱部材50を連結ボルト11から取り外しことが可能になる。
【0033】
このような構成において、既設管内に更生管を敷設する工程を説明する。まず、図10に示すように、マンホール20を介してセグメント1を搬入し、図2に示すように、マンホール20内でセグメント1を周方向に順次連結して管ユニット10を組み立てる。なお、セグメント1をマンホール20に搬入する前、あるいはその後にセグメント1の内部板に周方向に沿って複数のナット12を固定しておく。
【0034】
続いて、管ユニット10を連結ボルト11を用いて管長方向に連結する。この連結に際して、図7a、図7bに示したように、連結ボルト11をセグメントの側板102、内部板106の挿通穴102a、106a、並びに内部板107の切り欠き107aに挿通しておく。
【0035】
続いて、図5図6に示したように、円柱部材50を連結ボルト11に取り付ける。円柱部材50の取り付け位置、方向としては、内部板106、107間、内部板107、107間で、舌片50bが右側あるいは左側に来るようにして、すべてを同一な位置、方向にするか、あるいはそれぞれ任意でランダムに円柱部材50を連結ボルト11に取り付けることもできる(図3参照)。
【0036】
円柱部材50は、図5の下段に示したように、連結ボルト11の全周を締め付けるように弾性縮小するので、円柱部材50は弾性変形に応じた所定の挟持力で連結ボルト11に取り付けられる。円柱部材50は、連結ボルト11が重力で管長方向に移動し、円柱部材50あるいはその舌片50bが内部板106、107に当たった場合には、円柱部材50は連結ボルト11に対しては移動せず、また、円柱部材50の外径d2あるいは舌片50bの周方向幅w1は、内部板106、107の挿通穴106aないし切り欠き107aより大きく、円柱部材50、舌片50bは挿通穴ないし切り欠きを通過することができないので、連結ボルト11がセグメント1から抜け落ちることを防止することができる。
【0037】
この連結ボルト11のセグメントへの挿通並びに円柱部材50の連結ボルト11への取り付けは、セグメント1がマンホールに搬入される前、あるいはマンホール20内で管ユニット10を組み立てる前に行う。例えば、セグメント1を製造した後、連結ボルト11をセグメント1の挿通穴102a、106aなどに挿通し、円柱部材50を取り付けてセグメント1を収納箱に収納しておき、現場に搬送することができる。このとき、セグメント1を収納箱に収納する作業中、あるいは現場への搬送中に連結ボルト11がセグメント1から抜け落ちるのを防止することができ、セグメントの連結作業を効率化できる。
【0038】
続いて、図3に示したように、連結ボルト11が挿通されたセグメントとナット12が固定されたセグメントとの位置合わせを行って連結ボルト11をナット12に螺合することにより両セグメントを管長方向に連結する。連結ボルト11をナット12に螺合させるために連結ボルト11を管長方向に移動させるときは、円柱部材50が内部板106、107に当たったとしても、連結ボルト11の管長方向への押し付け力を、強くすることにより、連結ボルト11を円柱部材50に対して移動させることができるので、連結ボルト11のナット12への螺合は円滑に行われる。
【0039】
上述したように、連結ボルト11のセグメントへの挿通並びに円柱部材50の連結ボルト11への取り付けは、セグメント1がマンホールに搬入される前、あるいはマンホール20内で管ユニット10を組み立てる前に行われる。その場合、連結ボルトの挿入並びに円柱部材の取り付けが誤った位置に対して行われる場合がある。しかし、本実施例では、図5の下段で矢印で示したように、舌片50bに連結ボルト11側から作業者が手で、あるいは平板又はピン状の工具を用いて上向きに力を作用させると、円柱部材50は、上段に示したように、円柱部材50を連結ボルト11から取り外すことが可能になる。従って、連結ボルト11を、セグメントから引き抜くことが可能になり、連結ボルトを正しい位置に変更してセグメントを管長方向に連結しなおすことができ、連結工事のやり直しを容易にすることができる。
【0040】
管ユニット10を順次管長方向に連結し、既設管21内に更生管40を敷設したあと、更生管40と既設管21間の隙間にグラウト材などの充填材(不図示)を充填し、充填材を固化させる。連結ボルト11に取り付けられた円柱部材50は舌片50bを含めて内部板106、107の高さを超えることはなく、充填材内に埋め込まれる。充填材の固化により既設管、充填材並びに更生管からなる複合管を構築することができる。
【0041】
上述した実施例では、円柱部材50を連結ボルト11から取り外すことができるようにするために、舌片50bを円柱部材50に形成したが、図9に示したように、舌片50bに加えて、あるいは舌片50bに代えて、外部から円柱部材50に力を作用させ円柱部材50を拡径する方向に弾性変形させることが可能な凹部50cを周面に設けるようにしてもよい。この凹部50cは、実施例では矩形状に円柱部材50を貫通する穴として形成される。この凹部50cに、ピン状の工具を挿入して円柱部材50に上向きの力を作用させると、円柱部材50は、弾性変形して拡径するので、円柱部材50を連結ボルト11から取り外すことが可能になる。このような凹部50cは、一つだけでなく、仮想線50dで示したように、複数設けることもできる。
【0042】
また、図8a、図8bに示したように、舌片50b’が形成された円柱部材50’の管長方向の長さを、セグメントの内部板間の距離に相当する長さにして、その両端を内部板106、107に接触ないし近接させるようにすることもできる。このような構成により、連結ボルト11に重力が作用しても、連結ボルト11は内部板間を動くことが殆どなくなり、連結ボルト11を更に安定した状態に保持することができる。
【0043】
なお、円柱部材50、50’は、管長方向に見て最初の内部板106、107間で連結ボルト11に取り付けられるが、内部板107、107間あるいは後の内部板107、106間に取り付けるようにしてもよい。
【0044】
また、本発明は、管路を更生する工法だけでなく、シールド工法においてシールド後の内巻の二次覆工を施す工法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 セグメント
10 管ユニット
11 連結ボルト
12 ナット
20 マンホール
21 既設管
40 更生管
50、50’ 円柱部材
50a 切り欠き部
50b、50b’ 舌片
101 内面板
102、103 側板
104、105 端板
106、107 内部板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10