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特開2021-25804化粧品の紫外線透過比率評価用基板および評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-25804(P2021-25804A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】化粧品の紫外線透過比率評価用基板および評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20210125BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20210125BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALN20210125BHJP
   A61K 8/00 20060101ALN20210125BHJP
【FI】
   G01N21/59 D
   G01N21/33
   A61Q17/04
   A61K8/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-141652(P2019-141652)
(22)【出願日】2019年7月31日
(11)【特許番号】特許第6741261号(P6741261)
(45)【特許公報発行日】2020年8月19日
(71)【出願人】
【識別番号】513103276
【氏名又は名称】黒田総合技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】黒田 章裕
【テーマコード(参考)】
2G059
4C083
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB04
2G059BB15
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH03
2G059NN10
4C083AA032
4C083AA072
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB352
4C083AB362
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC512
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC852
4C083AC912
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD222
4C083AD242
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD412
4C083AD432
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC12
4C083CC19
4C083CC50
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD32
4C083DD41
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】SPF等の値を測定するにあたり、本来多くの基板で測定しなければならないところを、1回の測定で済ますための測定方法と測定用基板を開発すること。
【解決手段】290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材の片面に、三酢酸セルロース以外の糖骨格を有するが塩ではない化合物を1種以上含有する層を有する、紫外線透過比率評価用基板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材の片面に、三酢酸セルロース以外の糖骨格を有するが塩ではない化合物を1種以上含有する層を有する、紫外線透過比率評価用基板。
【請求項2】
三酢酸セルロース以外の糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層に蒸留水を垂らした直後の接触角に対して、5分経過した後の接触角が15度以上変化する請求項1に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項3】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材が石英板である請求項1又は2に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項4】
糖骨格を有するが塩ではない化合物は、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトトリオース、ラフィノース、イヌリン、オリゴ糖、グルカン、寒天、α−シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、から選ばれた1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項5】
下記A及びB工程を有するSPF値の測定方法
A.請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線透過比率評価用基板に化粧料を塗工する。 B.塗工後の紫外線透過比率評価用基板を透過する紫外線吸収スペクトルを測定して透過比率を求め、さらにSPF値を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品の紫外線防御性能を評価するための基板およびその基板を用いた評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、本発明の技術的背景について説明する。
現在、日本では化粧料における紫外線防御効果の指標として、波長290〜320nmのB波紫外線の防御能力を示すSPF(Sun Protection Factorの略)と、波長320〜400nmのA波紫外線の防御能力を示すUVA−PA(Protection grade of UVA)が用いられている。これらの測定結果を化粧料に表示する場合、日本化粧品工業連合会の定めるそれぞれの測定方法基準(非特許文献1、非特許文献2)に基づいて測定した値、またはそのグレードを表示することが求められる。
海外においても基本的にはそれぞれの地域の測定方法及び表示方法(非特許文献3)に従って表示することが求められるが、基本的な測定方法はほぼ統一されている。測定方法基準では、ヒトの背中を用い、背中に高出力の紫外線を照射し、その際に肌に生じる炎症反応と黒化反応の目視観察の結果から、紫外線防御効果を測定する。しかしながら、ヒトを用いると手間と費用がかかり、測定結果が出るまでの期間が長い。
加えてヒトを用いることの倫理的、医学的問題などがあるため、日本、欧州においては、ヒトを用いないで、機械にて紫外線防御効果を測定する測定方法の検討が進められている(非特許文献4)。しかしながら、現在進められている測定方法には、多くの問題点が存在することが報告されている(非特許文献5)。本発明者の検討でも、同じ試料を用いて、同じ規格の中で試験しても、最大で20倍ほどSPF値が変動することを見いだしている。
【0003】
特許文献1の方法を用いることでこの問題はかなり解消することができる。しかしながら、この方法を用いて検討を進めたところ、新たな問題が発生した。これは水に対する接触角が異なる基板を用いた場合、試料の測定値が大きく変化してしまう(非特許文献6)現象である。
また化粧料はその組成毎に親水性等の物性が異なる。水に対する接触角が固定された基板に対して化粧料を塗布したときに、ある化粧料は均一に塗布できたとしても、他の化粧料は均一に塗布できず、化粧料が相分離していたり、基板表面の一部から弾かれて、基板表面の一部が露出する等した不均一な塗膜となることがある。
このため、測定精度を向上させたとしても、測定には、多くの接触角を有する基板を事前に用意しておき、それぞれの測定値をグラフに描いてようやく特性が把握できるに留まり、1つの製品の測定だけでも、複数種の接触角を備えた基板に対する測定を要する等、多くの労力を必要とする可能性がある。この手間はin vivo法と比較しても多大であり、実質的に代替法にならないことを意味した。
そこで、可能な限り手間がかからず、高精度な測定が行える測定方法の開発が必要とされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/047707号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本化粧品工業連合会 紫外線防御用化粧品と紫外線防止効果 −SPFとPA表示− 2003年改訂版
【非特許文献2】日本化粧品工業連合会 日本化粧品工業連合会SPF測定方法基準〈2007年改訂版〉
【非特許文献3】ISO/TR26369 Cosmetics -- Sun protection test methods -- Review and evaluation of methods to assess the photoprotection of sun protection products
【非特許文献4】Colipa Guidelines, Method for in vitro Determination of UVA protection, 2009
【非特許文献5】Rohr, M.; Klette, E.; Ruppert, S.; Bimzcok, R.; Klebon, B.; Heinrich, U.; Tronnier, H.; Johncock, W.; Peters, S.; Pfluecker, F.; Rudolph, T.; Floesser-Mueller, H.; Jenni, K.; Kockott, D.; Lademann, J.; Herzog, B.; Bielfeldt, S.; Mendrok-Edinger, C.; Hanay, C.; Zastrow, L. “In vitro Sun Protection Factor: Still a Challenge with No Final Answer” Skin Pharmacol. Phys. 2010, 23(4), 201-212.
【非特許文献6】K. Asakura, A. Kuroda, IFSCC Magazine 21(2), 53-57 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記背景技術に記載したように、SPF等の値を評価(測定)するにあたり、本来多くの基板で測定しなければならないところを、1回で正確な測定を行うための測定方法と測定用基板を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
測定用基板上の試料の状態と測定値の関係からみて、試料が相分離していたり、基板表面の一部から弾かれたことにより基板上に試料がないところができると、SPFの測定値は低くなり、試料が相分離せずに安定して基板全体を均一に覆っていると測定値は高くなる。これが基板の接触角を変化させた時に生じている現象の本質の1つである。
そのため、試料が安定的に基板全体を覆っている時の塗膜状態を自動的に選択でき、かつその状態が皮膚上でも再現できるのであれば、in vivo代替法として優れた性能を示すことになる。そこで、本発明者は鋭意検討した結果、下記の測定方法及び紫外線透過比率評価用基板(以下場合により単に「基板」という。)を発明した。
1.290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材の片面に、三酢酸セルロース以外の糖骨格を有するが塩ではない化合物を1種以上含有する層を有する、紫外線透過比率評価用基板。
2.三酢酸セルロース以外の糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層に蒸留水を垂らした直後の接触角に対して、5分経過した後の接触角が15度以上変化する1に記載の紫外線透過比率評価用基板。
3.290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材が石英板である1又は2に記載の紫外線透過比率評価用基板。
4.糖骨格を有するが塩ではない化合物は、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトトリオース、ラフィノース、イヌリン、オリゴ糖、グルカン、寒天、α−シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、から選ばれた1種以上である、1〜3のいずれかに記載の紫外線透過比率評価用基板。
5.下記A及びB工程を有するSPF値の測定方法
A.1〜4のいずれかに記載の紫外線透過比率評価用基板に化粧料を塗工する。
B.塗工後の紫外線透過比率評価用基板を透過する紫外線吸収スペクトルを測定して透過比率を求め、さらにSPF値を求める。
【発明の効果】
【0008】
以上説明するように、本発明の紫外線透過比率評価用基板を用い、本発明の測定方法により、多種の化粧料に対して、より少ない測定用基板を使用して、より簡易に、正確な測定値が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のSPF測定結果
図2】基板の接触角とSPFの測定値との関係を示す図
図3】基板の接触角とSPFの測定値との関係を示す図
図4】化粧料4のSPFの測定結果
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の紫外線透過比率評価用基板および評価方法の用途は、専ら、W/O/W型を含むO/Wエマルション型(水中油型)又はエマルションではない水分散性組成物等の各種の形態の化粧料の紫外線の透過比率の測定である。
【0011】
(化粧料)
この化粧料としては、乳化ファンデーション等のメイクアップ化粧料、化粧下地、サンスクリーンクリーム、多層分離型サンスクリーン剤、ノンケミカルサンスクリーン剤、デイエッセンス、デイケアローション等の日焼け止め化粧料等が含まれる。また、剤型としては、液状、乳液状、クリーム状、ローション状、エッセンス状、多層分離状等が挙げられる。
そして、皮膚、好ましくは顔、身体、手足等のいずれかにこの化粧料等を塗布することで、紫外線防御効果を得る。
この紫外線防御効果とは、一般に波長290〜320nmのB波紫外線に対応したSPF値、波長320〜400nmのA波紫外線に対応したUVA−PF値、またはPA分類、PPD値として表わされるが、これらの波長の防御効果を示す指標であれば特に限定されない。
【0012】
紫外線吸収性を発現させるために添加する紫外線吸収剤としては、化粧品に添加されるものであれば特に限定されるものではない。このような紫外線吸収剤のなかでも油溶性のものとしては、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、及び、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また水溶性のものとしては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸及び/又は2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンスルホン酸等を使用できる。
【0013】
紫外線を散乱、吸収させるために添加する顔料の例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化チタニアゾル、アルミニウムパウダー、金箔粉末、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール等が挙げられる。
さらに、これらの紫外線吸収剤、散乱剤以外の成分として、化粧料に配合可能な各種の成分を含有させてなるものである。
【0014】
<紫外線透過比率評価用基板>
本発明の紫外線透過比率評価用基板は、290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材の片面に、糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層を有するものである。
【0015】
(290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材)
本発明における、290〜400nmの範囲の紫外線に対して透明で、この紫外線を透過する基材としては、石英、ガラス板、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の表面が平滑な板やシートを採用とすることができ、特に石英板が好ましい。
この基材はいわゆる板やシート形状であれば良く、紫外線透過比率評価用基板としたときに、290〜400nmの範囲の紫外線の透過光の強度を測定できることが必要である。十分に紫外線を透過でき、かつ必要な強度を備えた基材であることが必要である。
【0016】
基材の片面には下記の三酢酸セルロース以外の糖骨格を有するが塩ではない化合物(以下場合により、「糖骨格を有するが塩ではない化合物」とする。)を1種以上含有する均一な層を形成させるため、その片面は十分に親水性が高いことが必要である。つまり、水の接触角が十分に小さいことであり、そのために、必要に応じて、予め親水性を向上させる親水化処理を行うことができる。なお、均一な層とは、層の厚さが均一であり、かつ層の表面が平滑であることを意味する。
その親水化処理としては、上記基材の少なくとも片面(測定される化粧料が塗布される側の面)に対して、プラズマ処理、アーク放電処理、コロナ放電処理等の物理的手段による処理を行い、純水に対する接触角を0〜20゜、好ましくは0〜10゜、より好ましくは0〜5゜の範囲にするものである。
これらの処理の条件、つまり、印加電圧、処理時間等としては、目的とする接触角に応じて任意に決定できる。さらに雰囲気としては、空気中のコロナ放電処理や、真空、又は酸素やアルゴン雰囲気下でのプラズマ放電処理とすることができる。中でも、石英基板をコロナ放電処理することが好ましい。
【0017】
(糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層)
上記のように基材に対して必要に応じて親水化処理を行った後、親水化処理面に対して、糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層を形成する。
この層を形成する目的は、この層に対して純水の滴下直後の接触角が例えば40〜60°であるが、5分後において5〜20°に低下する等の水の接触角を変化させることにある。つまり親水性の程度を時間の経過に応じて変化させることが可能となる。
このような接触角の変化を十分に広い範囲で変化させることにより、純水に対する接触角の範囲を広くカバーできる。そして、基板の純水に対する接触角が短時間に大きく変化するように設計する必要がある。
基材の純水に対する接触角の変化値としては、直後の接触角の値と5分後の接触角の値の差が15°以上が好ましく、20°以上あることが好ましい。
この接触角が大きく変化する表面に化粧料を塗工すると、塗工後の接触角の変化(低下)に応じて、化粧料の塗膜の安定性(つまり塗膜の均一性)も変化する。その接触角の変化の途中におけるある時点の接触角が化粧料にとって最も均一な塗膜を形成できるとき、塗膜は最も均一で安定な状態で固定される。この結果として塗膜中において水相と油相等の間での相分離が発生せず、かつ基板表面の一部から弾かれた状態(塗膜の一部が弾かれて穴が開いた状態)を生じない。このため、均一層をより精度良く測定でき、かつ高い吸光度を測定できる状態で安定化する。
つまり、純水に対する接触角が5〜60°の範囲の表面に対して均一塗膜を形成できる化粧料であれば、本発明の紫外線透過比率評価用基板を用いることにより、正確にSPF値を測定できることになる。
糖骨格を有するが塩ではない化合物の塗工量としては特に限定されないが、基材100cm当たり2〜15mgとなるように塗工することが好ましい。
【0018】
上記のように接触角を大きく変化させるために、親水化処理した基材表面に塗布する化合物としては、以下の糖骨格を有するが塩ではない化合物が挙げられる。そのような化合物としては、必要により可溶化された、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、マルトトリオース、ラフィノース等の三糖類、イヌリン等の四糖類、オリゴ糖、グルカン、寒天、α−シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、等の糖骨格を持つ化合物から1種以上を使用できる。中でもセルロース誘導体が好ましい。
これらの化合物は、処理後の基板の純水に対して接触角が変化するという共通の性質を備えており、かつ接触角が変化する範囲がそれぞれ異なっている。そして、これらの化合物から1種の化合物を選択して用いても、複数種を選択して組み合わせて用いても良い。もし、1種の化合物のみを選択し使用したときに、接触角の変化の範囲が被試験体である化粧料が求めるものではない等のとき、複数の化合物を混合して接触角の変化の範囲を調整できる。
但し、水に対して不溶性の化合物や、糖骨格を有するが塩ではない化合物は、石英板上にそれらの層を形成しても、純水に対して接触角を特段変化させないので本発明において単独で使用できない。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲において、エリスリトールやキシリトール等の糖アルコール、糖由来の化合物、さらにその他の糖ではない化合物を配合させてもよく、させなくてもよい。
さらに、層を構成する上では常温常圧で固体であり、かつ潮解性がなく、室温の水に不溶性ではないことが好ましい。不溶性ではないとは、室温の水に1g/100mL以上の溶解度を有する場合である。そして5g/100mL以上の溶解度を有するものがさらに好ましい。
但し、糖骨格を有する塩である化合物を含有させると、水の接触角を十分に変化させることが困難となるため、このような化合物を含有させない。また、三酢酸セルロースは水に不溶性であり、使用しない。
【0019】
糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層を形成する方法としては、この層を均一に形成できる方法であれば特に限定されない。
具体的には、上記親水化処理を施した板またはシートに、上記糖骨格を有するが塩ではない化合物の塗工液を塗工する。塗工液の溶媒としては、水、低級アルコール等の揮発性溶媒が挙げられ、特に蒸留水が好ましく、蒸留水と低級アルコールの混合溶媒も好ましい。
塗工の際に塗工液が板やシートから流れ落ちるのを防止するため、板やシートの表面の縁に予め疎水性のマスキングテープを貼り付けて枠を作っておき、その枠の内側に塗工液を塗工することが好ましい。マスキングテープとしては、市販のビニルテープ、ポリイミドテープがハンドリングに優れていることから好ましい。また、テープがあると、次の梱包工程で、板やシートを重ねた際の密着を防止することもできるメリットがある。
次いで、板やシート表面に形成された塗工液層を乾燥する。乾燥の方法としては、加熱乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。なお、乾燥時に塗工液が不均一にならないようにすることが好ましい。乾燥温度は40〜120℃の範囲が好ましい。
【0020】
(保管)
上記のように、基材上に糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層を形成した後には、上記層中の化合物が保管時に吸湿して結晶化などを生じることがないように、乾燥剤と共に、ビニル袋などの密閉容器に保管する必要がある。
【0021】
次に、本発明の測定方法を示す。
上記のようにして得られた紫外線透過比率評価用基板に化粧料を塗工し、紫外線吸収率測定装置により、吸光度として乾燥した塗膜の紫外線吸収スペクトルを測定して、この測定結果を基に、SPF値の測定値を求める。
化粧料を、上記基板の表面に塗布する手段としては、均一に塗布することができる手段であれば、特に限定されるものではないが、例えば、下記の液状化粧料の紫外線防御効果を測定する方法における手段を採用することができる。
【0022】
下記a)〜d)の工程にて液状化粧料の紫外線防御効果を測定する方法。
a)基材上に液状化粧料を塗布した後、金属製4方アプリケーターであって、間隙が5〜25μmの範囲にある塗り拡げ部材を、好ましくは一定の速度(1〜10mm/s)にて移動させて、基板上に平滑な液状化粧料層を塗工・形成する工程。
b)塗工直後の塗膜の膜厚をウェット膜厚計を用いて計測する工程。
c)SPFアナライザーを用いて、塗膜の吸光度を測定する工程。
d)b)で得られた膜厚から、基準膜厚におけるSPF値とUVA-PF値を得る工程。
【0023】
a)工程で用いるアプリケーターは、基板との間隙が5〜25μmのものを用いる。SPFアナライザーの測定感度からすると、膜厚は薄い方が良いが、化粧料中に5μmを超える大きさの粒子が配合されていた場合、間隙に詰まってしまい、アプリケーターの移動により線が入って塗工がうまく行かないケースがある。そのため、一般的な化粧料の場合では、特に間隙は10〜15μmのものが好ましい。
b)工程で用いるウェット膜厚計は、ロータリー型、エッジ型があるが、JIS K5600-1-7に規定されているロータリー型ゲージが好ましく、計測範囲が0〜25μmのものが好ましい。
c)工程で用いるSPFアナライザーとしては、例えば米国Solar Light Company社製SPF−290AS(https://solarlight.com/product/spf-290as-spf-analyzer/)が挙げられる。測定値を算定するにあたり、SPF、UVA−PFの計算は、Solarlight社製SPF-290AS付属のSPF V3.0ソフトウェアや、現在各地域で検討されている紫外線防御効果算出プログラムを用いることも可能である。
d)工程の基準膜厚としては、現在、in vivo測定に用いられている2mg/cm2の塗工量に相当する20μmや、消費者が実質的に塗工している量といわれている5〜10μmなどの値が挙げられる。
【0024】
一方、化粧料は多数の成分の混合物からなっており、混合物の組成のみに基づいて濡れの特性を判断することは難しい。そのため、純水に対する接触角が5〜60°の表面に対して最も紫外線防御効果の高い塗膜を形成する化粧料に対しては、本発明の紫外線透過比率評価用基板を用いて、SPF値を測定できる。
但し、純水に対して5〜60°の範囲外の接触角を有する表面に対して均一な塗膜を形成する化粧料に対しては、本発明の紫外線透過比率評価用基板表面ではなく、例えば、石英板をコロナ放電処理して得られる超親水性基板や、水との接触角が60゜以上の紫外線透過型PMMA(ポリメチルメタクリレート)板を用いて、0025段落の方法にて液状化粧料を塗工し、得られた測定値の中で一番高い測定値を示した基板の測定結果を用いて、化粧料の紫外線防御効果として評価することになる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(A.紫外線透過比率評価用基板表面の接触角変化の確認)
(接触角の測定方法)
接触角の測定は、接触角測定装置(エキシマ社製SImage Entry 5)を用いて、3.1μLの蒸留水を試料である紫外線透過比率評価用基板表面に滴下した直後の接触角の測定を行い、さらに5分経過した後の接触角の測定を行った。これらの2回の接触角の測定により得られた測定値の差を、接触角の差とした。
(SPF及びUVA−PFの求め方)
SPF及びUVA−PFは、Solarlight社製SPF-290AS付属のSPF V3.0ソフトウェアを用いて求めた。膜厚の変換や塗布重量による補正は計算により求めた。
【0026】
(実施例1)
コロナ放電処理した石英板(10cm角、純水との接触角0゜)の周囲を3mmの幅のポリイミドテープを用いて枠取りした。次いで、テープの内側に塗工液(セルロース誘導体の1種であるヒドロキシエチルセルロースを含む水溶液)を、基材100cm当たり、ヒドロキシエチルセルロースの塗工量が7mgとなるように塗工した後、加熱下に乾燥し、紫外線透過比率評価用基板を作成した。
なお、コロナ放電処理のみをした石英板は、コロナ放電処理後経時的に表面の接触角が上昇する性質を有する。
(実施例2)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、ヒドロキシプロピルセルロースを、基材100cm当たり3mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(実施例3)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、ヒドロキシエチルセルロース5mgとラフィノース5mgの混合物を用いて、合計で、基材100cm当たり10mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(実施例4)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、寒天を基材100cm当たり10mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(実施例5)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、キサンタンガムを基材100cm当たり5mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(実施例6)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、ネイティブジェランガムを基材100cm当たり5mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(実施例7)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、重量比でキサンタンガムとグルコースを2:1の比率で含有する混合物を、基材100cm当たり5mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(実施例8)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、重量比でネイティブジェランガムとα−シクロデキストリンを5:1の比率で含有する混合物を、基材100cm当たり5mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
【0027】
(比較例1)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、グリセリンを基材100cm当たり10mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(比較例2)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、エリスリトールを用いた他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(比較例3)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、カルボキシメチルセルロースナトリウムを用いた他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
(比較例4)
実施例1のヒドロキシエチルセルロースの代わりに、キシリトールを基材100cm当たり10mgとなるように塗工した他は全て実施例1と同様にして紫外線透過比率評価用基板を作成した。
【0028】
実施例及び比較例の評価
本発明の紫外線透過比率評価用基板では、純水に対する5分間の接触角の変化が15度以上あるか否かを評価した。接触角の差が15度未満の場合は、化粧料を塗布した際に、化粧料の剤型によっては安定した測定ができない。結果を表1に示す。
各実施例によれば、接触角の差がいずれも15度以上であった。しかしながら、比較例1では3.8度、比較例2では0.8度、比較例3では、8.5度、比較例4では3.5度であった。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果より、本発明の実施例はいずれも接触角が短時間に変化する特性を示したのに対して、比較例はいずれも接触角が変化しなかったか、又は僅かしか変化しなかった。よって、塩であったり、糖骨格を有しない化合物を使用した、結果的に接触角の差が小さかった比較例1〜4では、化粧料毎に最適な接触角を有する基板を探索するために、狭い範囲で表面張力(接触角)が変化する基板を多く使用しなければならない。実施例1〜8によれば、化粧料塗布後において基板表面の接触角が経時的に大きく変化するため、本発明の目的の一つである、SPF値の測定を、1回の基板への塗布測定で済ませることが可能な基板となる。
上記の各実施例にて使用した化合物からみて、本発明において、水に対して不溶性でない限り、糖骨格を有する点において共通し、しかも塩ではない化合物であれば、単糖から多糖にわたる各種の糖を使用できることを理解できる。
【0031】
(実施例9にて使用した化粧料(化粧料1〜8))
(化粧料1)
精製水、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、BG、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エタノール、エチルヘキシルトリアゾン、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジメチコン、アジピン酸ジイソプロピル、メタクリル酸メチルクロスポリマー、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、エチルヘキシルグリセリン、カプリル酸グリセリル、セスキイソステアリン酸ソルビタン、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー、水酸化K
【0032】
(化粧料2)
水、エタノール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジメチコン、セバシン酸ジイソプロピル、エチルヘキシルトリアゾン、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、酸化チタン、グリセリン、オキシベンゾン-3、カプリリルメチコン、(アクリレーツ/メタクリル酸メトキシPEG-90)クロスポリマー、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル、キサンタンガム、ラウリルベタイン、チャエキス、サクラ葉エキス、カニナバラ果実エキス、アセチルヒアルロン酸Na、ヒメンチラ根エキス、アロエベラ葉エキス、水溶性コラーゲン、PPG-17、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、パルミチン酸デキストリン、含水シリカ、トリエトキシカプリリルシラン、カルボマー、寒天、水酸化K、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、シリカ、ジステアリルジモニウムクロリド、BG、ステアリン酸、BHT、フェノキシエタノール、安息香酸Na、香料
【0033】
(化粧料3)
水、シクロメチコン、タルク、BG、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチコン、イソステアリン酸、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル、酢酸トコフェロール、ヒアルロン酸Na、水溶性コラーゲン、ジステアリン酸Al、ジメチコンコポリオール、水酸化Al、ステアリン酸Ca、ジステアルジモニウムヘクトライト、グリセリン、EDTA-3Na、トリエトキシカプリリルシラン、BHT、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラデセン、トコフェロール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、(+/-)酸化チタン、マイカ、酸化鉄、チタン酸コバルト
【0034】
(化粧料4)
プラセンタエキス、グリチルリチン酸2K、水、濃グリセリン、BG、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ジプロピレングリコール、エタノール、プラセンタエキス(1)、L-システイン、ブリエラスチン、コラーゲン、トリペプチドFヒアルロン酸ナトリウム(2)、ユズセラミド、ステアロイルオキシフェプタコサノイルフィトスフィンゴシン、N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、N-ステアロイルフィトスフィンゴシン、ヒドロキシステアリルフィトスフィンゴシン、アーティチョークエキス、サクラ葉抽出液、プルーン酵素分解物、キイチゴエキス、酵母エキス(3)、シロキクラゲ多糖体、黒砂糖、トリメチルグリシン、2-エチルヘキサン酸セチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル-2-オクチルドデシル)、フィトステロール、天然ビタミンE、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、水酸化カリウム、クエン酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、水素添加大豆リン脂質、メチルパラベン、フェノキシエタノール
【0035】
(化粧料5)
水、シクロペンタシロキサン、メタクリル酸メチルクロスポリマー、酸化チタン、エタノール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、PEG-10ジメチコン、グリセリン、DPG、エチルヘキサン酸セチル、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アロエベラ葉エキス、イザヨイバラエキス、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、イソステアリン酸、EDTA-3Na、水酸化Al、ステアリン酸、アルミナ、トリエトキシカプリリルシラン、シリカ、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、BG、BHT、テトラデセン、トコフェロール、ローズマリー葉エキス、フェノキシエタノール、メチルパラベン、酸化鉄、硫酸Ba
【0036】
(化粧料6)
水、シクロペンタシロキサン、エタノール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、水添ポリイソブテン、酸化亜鉛、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、オクトクリレン、DPG、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリシリコーン-15、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ヒアルロン酸Na、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、塩化Na、BHT、EDTA-2Na、メチルパラベン、プロピルパラベン
【0037】
(化粧料7)
水、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、DPG、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメチコン、グリセリン、ポリメチルシルセスキオキサン、エタノール、イソステアリン酸、ヒアルロン酸Na、水溶性コラーゲン、セラミドNP、モモ葉エキス、カワラヨモギ花エキス、キダチアロエ葉エキス、カンゾウ根エキス、酢酸トコフェロール、水酸化K、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トコフェロール、キサンタンガム、BG、フェノキシエタノール、メチルパラベン
【0038】
(化粧料8)
ジメチコン、水、酸化亜鉛、エタノール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、タルク、ミリスチン酸イソプロピル、メタクリル酸メチルクロスポリマー、シクロペンタシロキサン、イソドデカン、オクトクリレン、酸化チタン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、グリセリン、セバシン酸ジイソプロピル、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、シリカ、パルミチン酸デキストリン、キシリトール、トリメチルシロキシケイ酸、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールムメトキシフェニルトリアジン、PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル、塩化Na、チャエキス、サクラ葉エキス、カニナバラ果実エキス、アセチルヒアルロン酸Na、トリメンチラ根エキス、アロエベラ葉エキス、水溶性コラーゲン、PPG-17、トリエトキシカプリリルシラン、イソステアリン酸、ジステアリルジモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムヘクトライト、水酸化Al、ステアリン酸、EDTA-3Na、BHT、トコフェロール、イソプロパノール、BG、ピロ亜硫酸Na、フェノキシエタノール、香料
【0039】
(実施例9)
(B.基材表面の接触角に対するSPF値の測定値変化及びピーク値の確認)
糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層を有しない、コロナ放電処理してなる石英板の接触角を、コロナ放電処理後の経過時間を調整することにより変化させて、それぞれ異なる接触角を備えた複数の石英板を用意した。これらの石英板に対して化粧料1を下記条件で塗工した時の接触角とSPF値の関係を図1に示す。横軸が純水に対する接触角、縦軸がSPF値である。図1によれば、SPF値は基板の接触角に依存して変化することがわかる。
(測定方法)
測定前に基板周囲のマスキングテープを剥がしてから試験を実施した。間隙が10μmのステンレス製4方アプリケーターを用いて、5mm/sの速度にて移動させて、基板上に平滑な液状化粧料層を形成した。塗膜形成直後に、ロータリー型ウェット膜厚計を用いて膜厚を計測し、次いでSPFアナライザー(SPF−290AS、Solar Light Company社製)を用いて塗膜の吸光度測定を実施した。全て室温にて行った。
【0040】
図1の縦軸はSPF値、横軸は接触角である。
図1から化粧料1の場合、純水に対する接触角が30〜40゜付近、特に30°付近にSPF値のピークを有することがわかる。また、接触角が30〜40゜付近にない基板に試料を塗工した後の化粧料塗膜の表面は、均一ではなく、細かい相分離状態または基板表面の一部から弾かれたことによると思われる不均一な形態を示した。塗膜表面が不均一な形態になると、塗膜が薄くなった部位や穴の部位から紫外線がより多く透過するため、SPF値は低くなる傾向があり、均一な塗膜は測定値が高くなる傾向がある。
【0041】
(C.本発明の紫外線透過比率評価用基板を使用したSPF値の測定)
実施例1で作成した基板に対して、上記の化粧料1を上記のステンレス製4方アプリケーターを用いて、上記Bと同様にして塗膜を作成し、同様にSPF値の変化値を測定した。その結果、表2に示すように、同サンスクリーンのSPF測定値は30.5(3回平均値)であり、ほぼ図1のピーク値と一致していた。
このB及びCにおける測定方法及び測定値によれば、本発明の紫外線透過比率評価用基板によると、化粧料を均一に塗布可能な接触角を有するSPF測定用の基板を探索するために必要な基板を1種のみとすることができるという効果が得られる。
その効果に加えて、化粧料のSPF値を測定するために使用する基板も1種で足りること、ひいては、化粧料に依存して必要な表面張力(接触角)の範囲を満たす基板を探索するための基板を一つにし、かつ工程を、化粧料を基板に塗布する動作をわずか1回にしても、正確にSPF値を測定できる効果も得られる。
【0042】
(D.別のサンスクリーン剤のSPF値の測定)
上記Cでの測定方法に対して、サンスクリーン剤を上記化粧料2〜8に変更した以外は同様にしてSPF値を測定した。
別のサンスクリーンのSPF測定値の3回平均値は以下表2の通りであった。
SPF値が異なる化粧料であっても、1種類の紫外線透過比率評価用基板を用いてSPF値を測定することができる。また化粧料の塗膜の状態は均一であり、相分離や基板表面の一部から弾かれた状態を生じていなかった。
化粧料のタイプが互いに異なっており、これらの化粧料を本来均一に塗布できる基材の水に対する接触角の値も互いに異なっている。このように均一に塗布できる基材に求める接触角の値が異なっていても、相分離や基板表面の一部から塗膜が弾かれないということは、本発明の紫外線透過比率評価用基板に対してはいずれの化粧料も均一に塗布できたことを意味している。そしてSPF値を正確に測定できたことを示している。また本発明による紫外線透過比率評価用基板を使用すると、塗布後の均一な化粧料塗膜は安定して存在した。
【0043】
【表2】
【0044】
本発明の紫外線透過比率評価用基板によれば、上記表2に示すように、多種の化粧料を、それぞれ1枚の紫外線透過比率評価用基板により測定できる。
そのうちの化粧料3と化粧料8について、糖骨格を有するが塩ではない化合物を含有する層を設けないで、コロナ放電処理及びその後の時間が経過するにつれて変化する、純水に対する接触角の調整により、水に対する接触角を変化させた複数の測定用基板を用いてSPF値とUVA−PF値を測定した。
各基板が有する接触角の値と、SPF値の測定値関係を、それぞれ図2図3に示す。図の横軸は接触角を、図の縦軸は紫外線防御指数を示す。いずれも、上に凸の波形を示しており、SPFの値がピークのときの値は本発明の紫外線透過比率評価用基板を用いた上記表2に記載の測定値と良い一致を示していた。
図2及び3に示す結果は、従来のように、純水に対する接触角が特定の値である基板を用いると、正確なSPF値の変化値を測定するための適切な接触角を求めるため、それぞれ3種以上の基板の使用が必須であることを示す。
これに対して、本発明の紫外線透過比率評価用基板は、1種の基板を1枚使用するのみで、化粧料のSPF値を測定できる。
【0045】
化粧料4について、広い範囲の接触角の範囲で計測を行った場合の例を図4に示す。軸の説明は上記と同じである。接触角が5〜55゜の範囲では、SPFのピーク値は表2に示す本発明の基板を用いた測定値と一致していた。
しかし、接触角が0゜の超親水性においてはより高い値(4.4)を示した。さらに撥水性が高く接触角が70°程度のときにも高い値(2.4)を示した。
このように、接触角が5〜60°の範囲内であるため均一な塗膜を形成できる化粧料は本発明の紫外線透過比率評価用基板を使用してSPF値を測定できる。そして、上記化粧料1〜8に示す組成の化粧料ではなく、別の組成を有する化粧料でも、接触角が5〜60°であるために、均一な塗膜を形成できる化粧料であれば、本発明の紫外線透過比率評価用基板により正確に測定できる。
さらに、純水に対する接触角がどの程度の基板に対して均一塗膜を形成できるかが不明な化粧料に対しては、本発明の紫外線透過比率評価用基板により測定したのち、必要に応じて、超親水性基板や、純水に対する接触角が高いPMMA基板を併用して、どの接触角の領域にSPFの最大値があるかを評価できる。
【0046】
(実施例10)
(E.ウェット膜厚計の有効性評価)
実施例1の基板を用い、紫外線透過比率評価用基板の有効性検証で用いたモデルサンスクリーン剤と塗工方法を用い、塗工直後にロータリー型ウェット膜厚計を用いて膜厚の計測を1μmの精度で実施した。得られた吸光度曲線を単位膜厚(5μm)に換算し、Solarlight社製SPF-290AS付属のSPF V3.0ソフトウェアを用いて、換算後のSPF値とUVA-PF値を求めた。測定は3回実施した。
【0047】
(比較例5)
実施例10で用いたロータリー型ウエット膜厚計の代わりに、キーエンス社製レーザー変位計(LT-9010M+LT-9500)を用いて膜厚を0.1μmの精度で計測した他は実施例9と同様にして3回の測定を行った。レーザー変位計は、測定の基準点を事前にマジックインキを用いて設定しておき、その基準点近傍の塗工前後の計測値から、膜厚を換算して用いた。
【0048】
表3に実施例10及び比較例5の測定結果を示す。実施例10及び比較例5それぞれについて、3回の測定値を順に記載した。実施例10により得られた化粧料塗膜は、2日後であっても均一であった。
【0049】
【表3】
【0050】
表3の結果より、実施例の3回の測定値はほぼ同程度の値で安定して、おおむね設計値に近い値であった。また塗膜は安定して均一塗膜であった。これに対して、比較例では、過大な測定値となっており、かつ3回の測定値のバラツキが大きいものであった。これは、ウェット膜厚計の場合は、サンスクリーン剤がまだ乾燥していない塗工直後の測定が迅速にできているのに対して、測定に時間のかかる光学計測では、測定値はみかけ精密にでるものの、測定中に塗膜が乾燥してしまい、膜厚が薄くなったことで、計算上測定値が大きくなったものと考えられる。この結果より、より実際に近い測定結果が得られるウェット膜厚計を用いる方法は、サンスクリーン剤の薄膜を計測する際の補正方法として正確であり、大変優れていることがわかる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2019年9月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材の片面に、糖骨格を有するが塩ではない、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトトリオース、ラフィノース、イヌリン、オリゴ糖、グルカン、寒天、α−シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、から選ばれた化合物を1種以上含有する層を有する、紫外線透過比率評価用基板。
【請求項2】
上記の層に蒸留水を垂らした直後の接触角に対して、5分経過した後の接触角が15度以上変化する請求項1に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項3】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材が石英板である請求項1又は2に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項4】
下記A及びB工程を有するSPF値の測定方法
A.請求項1〜のいずれかに記載の紫外線透過比率評価用基板に化粧料を塗工する。 B.塗工後の紫外線透過比率評価用基板を透過する紫外線吸収スペクトルを測定して透過比率を求め、さらにSPF値を求める。
【手続補正書】
【提出日】2019年10月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過し、予めシランカップリング剤として有機シラン化合物又は有機チタン化合物で処理されていない基材の片面に、糖骨格を有するが塩ではない、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトトリオース、ラフィノース、イヌリン、オリゴ糖、グルカン、寒天、α−シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、から選ばれた化合物を1種以上含有する層を有する、紫外線透過比率評価用基板。
【請求項2】
上記の層に蒸留水を垂らした直後の接触角に対して、5分経過した後の接触角が15度以上変化する請求項1に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項3】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材が石英板である請求項1又は2に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項4】
下記A及びB工程を有するSPF値の測定方法
A.請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線透過比率評価用基板に化粧料を塗工する。 B.塗工後の紫外線透過比率評価用基板を透過する紫外線吸収スペクトルを測定して透過比率を求め、さらにSPF値を求める。
【手続補正書】
【提出日】2020年4月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過し、予めシランカップリング剤として有機シラン化合物又は有機チタン化合物で処理されていない基材の片面に、糖骨格を有するが塩ではない、マンノース、ガラクトース、キシロース、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、フルクトース、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、マルトトリオース、ラフィノース、イヌリン、オリゴ糖、グルカン、寒天、α−シクロデキストリン、マルトデキストリン、コーンスターチ、葛粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、タマリンドガム、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ジェランガム、から選ばれた化合物を1種以上含有する層を有し、この層に蒸留水を垂らした直後の接触角に対して、5分経過した後の接触角が15度以上変化する、紫外線透過比率評価用基板。
【請求項2】
290〜400nmの範囲の紫外線を透過する基材が石英板である請求項に記載の紫外線透過比率評価用基板。
【請求項3】
下記A及びB工程を有するSPF値の測定方法
A.請求項1又は2に記載の紫外線透過比率評価用基板に化粧料を塗工する。
B.塗工後の紫外線透過比率評価用基板を透過する紫外線吸収スペクトルを測定して透過比率を求め、さらにSPF値を求める。