特開2021-26268(P2021-26268A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2021-26268バルブメンテナンス支援装置および支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-26268(P2021-26268A)
(43)【公開日】2021年2月22日
(54)【発明の名称】バルブメンテナンス支援装置および支援方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20210125BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20210125BHJP
【FI】
   G05B23/02 302R
   F16K37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-140895(P2019-140895)
(22)【出願日】2019年7月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 史明
【テーマコード(参考)】
3C223
3H065
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA01
3C223EB02
3C223FF33
3C223FF35
3C223FF45
3C223HH01
3H065AA06
3H065BA01
3H065BA07
3H065BB11
3H065CA01
3H065CA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ON−OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができるバルブメンテナンス支援装置を提供する。
【解決手段】バルブメンテナンス支援装置は、メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを記憶するバルブID記憶部1と、ON−OFFバルブに設けられた開度センサから開度計測値データを取得する開度取得部2と、ON−OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力計測値データをON−OFFバルブに設けられた圧力センサから取得する圧力取得部3と、開度計測値データと圧力計測値データを記憶する記憶部4と、圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、操作器空気の圧力が変化してからON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、診断指標として算出する診断指標算出部5と、診断指標算出部5によって算出された診断指標の数値を提示する診断指標提示部6とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ON−OFFバルブに設けられた開度センサから開度計測値データを取得するように構成された開度取得部と、
前記ON−OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力計測値データを前記ON−OFFバルブに設けられた圧力センサから取得するように構成された圧力取得部と、
前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを記憶するように構成された第1の記憶部と、
前記第1の記憶部に記憶された圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、前記操作器空気の圧力が変化してから前記ON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、前記ON−OFFバルブの診断指標として算出するように構成された診断指標算出部と、
この診断指標算出部によって算出された診断指標の数値を提示するように構成された診断指標提示部とを備えることを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項2】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
前記診断指標を予め規定された閾値と比較するように構成された判定部と、
この判定部の判定結果を提示するように構成された判定結果提示部とをさらに備えることを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項3】
請求項1記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記診断指標算出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON−OFFバルブについて前記診断指標を算出することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項4】
請求項2記載のバルブメンテナンス支援装置において、
メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、
前記第1の記憶部は、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶し、
前記診断指標算出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON−OFFバルブについて前記診断指標を算出し、
前記判定結果提示部は、前記診断指標が前記閾値以上と判定されたON−OFFバルブについて、このバルブのIDと前記閾値以上の数値とを通常と異なる形式で提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項5】
請求項3または4記載のバルブメンテナンス支援装置において、
前記診断指標提示部は、ON−OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、前記診断指標の数値と共に提示することを特徴とするバルブメンテナンス支援装置。
【請求項6】
ON−OFFバルブに設けられた開度センサから開度計測値データを取得する第1のステップと、
前記ON−OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力計測値データを前記ON−OFFバルブに設けられた圧力センサから取得する第2のステップと、
前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを記憶する第3のステップと、
前記圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、前記操作器空気の圧力が変化してから前記ON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、前記ON−OFFバルブの診断指標として算出する第4のステップと、
前記診断指標の数値を提示する第5のステップとを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項7】
請求項6記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記診断指標を予め規定された閾値と比較する第6のステップと、
前記第6のステップの判定結果を提示する第7のステップとをさらに含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項8】
請求項6記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第3のステップは、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第4のステップは、メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON−OFFバルブについて前記診断指標を算出するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項9】
請求項7記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第3のステップは、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶するステップを含み、
前記第4のステップは、メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを予め記憶している記憶部を参照し、この記憶部にIDが記憶されているON−OFFバルブについて前記診断指標を算出するステップを含み、
前記第7のステップは、前記診断指標が前記閾値以上と判定されたON−OFFバルブについて、このバルブのIDと前記閾値以上の数値とを通常と異なる形式で提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【請求項10】
請求項8または9記載のバルブメンテナンス支援方法において、
前記第5のステップは、ON−OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、前記診断指標の数値と共に提示するステップを含むことを特徴とするバルブメンテナンス支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス作業を支援する技術に係り、特にON−OFFバルブのメンテナンスの効率的な作業のための支援を実現するバルブメンテナンス支援装置および支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラントなどで使用されるバルブ(例えば図13のコントロールバルブ)は、特に安全性に留意する必要があり、ゆえに定期的なメンテナンスが行なわれる。図13に示すコントロールバルブは、流体の流れる通路を開閉するバルブ本体100と、入力電気信号を空気圧に変換するポジショナ101と、ポジショナ101から供給される空気圧に応じてバルブ本体100を操作する操作器102とから構成される。
【0003】
図13に示したようなバルブが多数設置されているプラントにおいてバルブのメンテナンス作業効率を改善するために、バルブの摺動部分におけるスティックスリップの発生を検出する技術(特許文献1参照)、バルブのハンチング状態を判定する技術(特許文献2参照)、バルブへのスケールの付着を検出する技術(特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
一方、開度を連続的に変化させることが可能なコントロールバルブとは別の種類のバルブとして、開度を全開/全閉の二位置しか取ることができないON−OFFバルブがあり、例えばボールバルブやバタフライバルブやゲートバルブがある。図14に示すON−OFFバルブ200は、ボールバルブを用いたものであり、弁体であるボール201をボールシートと呼ばれるシートリング202で挟み込む構造であり、ステム(弁棒)203を操作器204によって90度回転させることで、バルブを開いたり閉めたりすることができる。また、種類によっては、90度以外のものもある。
【0005】
ON−OFFバルブ200の大半は、図15に示すように計装されており、電磁弁205を介してON−OFFバルブ200の操作器204に操作器空気が供給されるようになっている。ON−OFFバルブ200の開状態はリミットスイッチ206によって検出され、閉状態はリミットスイッチ207によって検出される。このように、リミットスイッチ206,207を用いたアンサーバックは、閉状態または開状態の2状態のみを表しており、ON−OFFバルブ200の開閉の動作過程はアンサーバックに反映されない。すなわち、ON−OFFバルブ200のアンサーバック機能は、異常時に警報を発報するだけであり、警報が発生した時に既に緊急の異常状態であれば、処置が手遅れになる。
【0006】
安全性や作業効率については、完全とか十分とか言える上限は無く、安全性、作業効率の更なる向上が求められている。特に、石油化学プラントなどでは、例えば図16に示すように複数のバルブ200−A,200−C,200−Mが使用される。したがって、バルブメンテナンスの作業効率については、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3254624号公報
【特許文献2】特開2015−114942号公報
【特許文献3】特開2015−114943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ON−OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができるバルブメンテナンス支援装置および支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバルブメンテナンス支援装置は、ON−OFFバルブに設けられた開度センサから開度計測値データを取得するように構成された開度取得部と、前記ON−OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力計測値データを前記ON−OFFバルブに設けられた圧力センサから取得するように構成された圧力取得部と、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを記憶するように構成された第1の記憶部と、前記第1の記憶部に記憶された圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、前記操作器空気の圧力が変化してから前記ON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、前記ON−OFFバルブの診断指標として算出するように構成された診断指標算出部と、この診断指標算出部によって算出された診断指標の数値を提示するように構成された診断指標提示部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、前記診断指標を予め規定された閾値と比較するように構成された判定部と、この判定部の判定結果を提示するように構成された判定結果提示部とをさらに備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶し、前記診断指標算出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON−OFFバルブについて前記診断指標を算出することを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例は、メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブのIDを予め記憶するように構成された第2の記憶部をさらに備え、前記第1の記憶部は、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶し、前記診断指標算出部は、前記第2の記憶部にIDが記憶されているON−OFFバルブについて前記診断指標を算出し、前記判定結果提示部は、前記診断指標が前記閾値以上と判定されたON−OFFバルブについて、このバルブのIDと前記閾値以上の数値とを通常と異なる形式で提示することを特徴とするものである。
また、本発明のバルブメンテナンス支援装置の1構成例において、前記診断指標提示部は、ON−OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、前記診断指標の数値と共に提示することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のバルブメンテナンス支援方法は、ON−OFFバルブに設けられた開度センサから開度計測値データを取得する第1のステップと、前記ON−OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力計測値データを前記ON−OFFバルブに設けられた圧力センサから取得する第2のステップと、前記開度計測値データと前記圧力計測値データとを記憶する第3のステップと、前記圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、前記操作器空気の圧力が変化してから前記ON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、前記ON−OFFバルブの診断指標として算出する第4のステップと、前記診断指標の数値を提示する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、操作器空気の圧力が変化してからON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、ON−OFFバルブの診断指標として算出し、診断指標の数値を提示することにより、ON−OFFバルブの動き出しの不感帯時間の大きさの変化を捉えることができ、オペレータがメンテナンス候補のON−OFFバルブを選定する作業を支援することができる。その結果、本発明では、ON−OFFバルブのメンテナンスの作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のON−OFFバルブの計装図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係るON−OFFバルブの構造の1例を示す図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係るON−OFFバルブの開度センサの構成を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の第1の実施例に係るON−OFFバルブの圧力センサの構成を示すブロック図である。
図7図7は、バルブ開度の立ち上がり時点の導出方法を説明する図である。
図8図8は、ON−OFFバルブの正常な動作のシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、ON−OFFバルブの異常な動作のシミュレーション結果を示す図である。
図10図10は、本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の診断指標提示部と判定結果提示部とによる診断指標の提示例を示す図である。
図11図11は、本発明の第2の実施例に係るプラントとその機器管理システムの構成を示す図である。
図12図12は、本発明の第1、第2の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図13図13は、コントロールバルブの1例を示す図である。
図14図14は、ON−OFFバルブの1例を示す図である。
図15図15は、従来のON−OFFバルブの計装図である。
図16図16は、プラントのタンクに使用される複数のバルブの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の原理]
石油化学プラントなどで使用されるバルブでは、プラント全体でのコンプレッサの使用状況などの事情により、供給される操作器空気圧力が制御指令(電磁弁への電気信号など)に対してばらつくのはむしろ当然であるため、制御指令と操作器空気圧力変化との間の時間がばらつくのは異常とは限らない。つまり、制御指令に対するON−OFFバルブの動き出しの不感帯(電気信号とON−OFFバルブの開度の時間差)に基づいて、ON−OFFバルブの不具合を判定することはできない。
【0015】
発明者は、ON−OFFバルブの大半は電磁弁を利用して操作器空気圧力を供給する単純な構造であるため、ON−OFFバルブの不具合の予兆も単純な形で現れる点に着眼した。そして、主にON−OFFバルブの摺動部に粘度性が高く、粒子が大きい物(スケール)が付着することでON−OFFバルブの作動速度が低下することを突き止めた。また、ON−OFFバルブのシール部品(グランドパッキンやガスケット)が摩耗して、本来の摩擦力を失うことにより、通常より早い速度でON−OFFバルブが作動してしまうこと(例えば内弁の食い込みによる弁開時のジャンピングの発生)を突き止めた。そして、操作器への圧力変化、特に動き出しの不感帯時間の大きさの変化が、ON−OFFバルブの不具合(基準トルク以上または基準トルク以下の力で作動させている)と相関することを、発明者は鋭意研究により突き止めた。
【0016】
本発明では、図1に示すように、ON−OFFバルブ200aに圧力センサ208を設け、電磁弁205を介して操作器204に供給される操作器空気の圧力値を検出できるようにすると共に、弁開閉動作(ストローク)を検知できる開度センサをON−OFFバルブ200aに設ける。これにより、ON−OFFバルブ200aの操作器204への圧力変化とON−OFFバルブ200aの開度の変化とを検出することができ、操作器空気圧力変化に対するON−OFFバルブ200aの動き出しの不感帯時間を求めることができる。そして、不感帯時間を基にON−OFFバルブ200aの不具合を推定することができる。なお、リミットスイッチ207を簡易的な開度センサとして扱い、リミットスイッチ207によって閉状態ではなくなった時点を検出して、これをON−OFFバルブ200aのバルブ開度の立ち上がり時点として代用してもよい。ただし、弁開閉動作(ストローク)を検知できる開度センサを設ける場合の方が、不感帯時間を高い精度で求めることができる。
【0017】
[第1の実施例]
以下、本発明の第1の実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施例に係るバルブメンテナンス支援装置の構成を示すブロック図である。本実施例は、開閉動作の動き出しの不感帯時間(圧力−開度の時間差)の大きさからON−OFFバルブの挙動を検知する例である。以下の実施例では、説明を簡潔にするため、バルブのIDの事例などは、実際のプラントで利用されるものよりも単純なものとする。
【0018】
バルブメンテナンス支援装置は、メンテナンスの候補となり得る複数のON−OFFバルブのID(識別情報)を予め記憶するバルブID記憶部1と、ON−OFFバルブに設けられた開度センサから開度計測値データを取得する開度取得部2と、ON−OFFバルブの操作器に供給される操作器空気の圧力計測値データをON−OFFバルブに設けられた圧力センサから取得する圧力取得部3と、開度計測値データと圧力計測値データとを送信元のON−OFFバルブのIDと共に記憶する記憶部4と、記憶部4に記憶された圧力計測値データと開度計測値データとに基づいて、操作器空気の圧力が変化してからON−OFFバルブの開度が変化するまでの不感帯時間を、ON−OFFバルブの診断指標として算出する診断指標算出部5と、診断指標算出部5によって算出された診断指標の数値を提示する診断指標提示部6と、診断指標を予め規定された閾値と比較する判定部7と、判定部7の判定結果を提示し、診断指標が閾値以上と判定されたON−OFFバルブについては、このバルブのIDと閾値以上の数値とを通常と異なる形式で提示する判定結果提示部8とを備えている。
【0019】
図3は本実施例のバルブメンテナンス支援装置の動作を説明するフローチャートである。本実施例では、例えばプラント内にバルブが26個あるとして、これら26個のバルブにそれぞれ“A”,“B”,“C”,・・・,“M”,・・・,“X”,“Y”,“Z”という固有のIDが予め割り当てられているものとする。特に、バルブID“A”,“C”,“M”のバルブが電磁弁を利用しているON−OFFバルブで、このID“A”,“C”,“M”がバルブID記憶部1に予め記憶されているものとする。
【0020】
バルブID“A”,“C”,“M”の各ON−OFFバルブには、図1で説明した圧力センサ208と共に開度センサが設けられ、バルブ開度を連続的に計測できるようになっている。図4は、本実施例のON−OFFバルブ200aの構造の1例を示す図であり、図14に示したON−OFFバルブ200に開度センサ209を追加したものである。なお、図4では、圧力センサ208の記載を省略している。開度センサ209の追加位置については、図4の位置に限られるものではなく、バルブ開度が計測できる位置であればよい。
【0021】
図5は開度センサ209の構成を示すブロック図である。開度センサ209は、ON−OFFバルブ200aのステム(弁棒)203の回転角度を連続的に検出することにより、バルブ開度を連続的に計測する開度計測部210と、開度センサ209が取り付けられたON−OFFバルブ200aに固有のバルブIDを記憶するバルブID記憶部211と、バルブメンテナンス支援装置に対して開度計測値データとバルブIDとを周期的に送信する送信部212とを備えている。
【0022】
送信部212は、バルブID記憶部211に記憶されているバルブIDを、開度計測値データに付加して送信する。なお、ON−OFFバルブ200aの開度を連続的に取得する必要があるので、開度計測値データの計測・送信周期は、ON−OFFバルブ200aの開閉所要時間の生じ得る最小値よりも短いことが必要である。
【0023】
図6は圧力センサ208の構成を示すブロック図である。圧力センサ208は、電磁弁205を介してON−OFFバルブ200aの操作器204に供給される操作器空気の圧力値を連続的に検出する圧力計測部213と、圧力センサ208が取り付けられたON−OFFバルブ200aに固有のバルブIDを記憶するバルブID記憶部214と、バルブメンテナンス支援装置に対して圧力計測値データとバルブIDとを周期的に送信する送信部215とを備えている。開度計測値データの場合と同様に、圧力計測値データの計測・送信周期は、ON−OFFバルブ200aの開閉所要時間の生じ得る最小値よりも短いことが必要である。
【0024】
バルブメンテナンス支援装置の開度取得部2は、各ON−OFFバルブ200aの開度センサ209から開度計測値データを受信し(図3ステップS100)、受信した開度計測値データとこの開度計測値データに付加されていたバルブIDと開度計測値データの受信時刻とを記憶部4に格納する(図3ステップS101)。
【0025】
一方、バルブメンテナンス支援装置の圧力取得部3は、各ON−OFFバルブ200aの圧力センサ208から圧力計測値データを受信し(図3ステップS102)、受信した圧力計測値データとこの圧力計測値データに付加されていたバルブIDと圧力計測値データの受信時刻とを記憶部4に格納する(図3ステップS103)。
【0026】
上記のように、バルブ開度と操作器空気圧力とは周期的に計測される。したがって、開度取得部2はステップS100,S101の処理を周期的に実施し、圧力取得部3はステップS102,S103の処理を周期的に実施する。
なお、本実施例では、開度計測値データと圧力計測値データとを個別に送信しているが、圧力センサ208と開度センサ209の送信部を統合して、開度計測値データと圧力計測値データとを纏めて送信するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0027】
次に、バルブメンテナンス支援装置の診断指標算出部5は、バルブID記憶部1にバルブIDが登録されている、メンテナンスの候補となり得る各ON−OFFバルブ200aについて、記憶部4に記憶された開度計測値データに基づいてバルブ開度の立ち上がり時点を求める(図3ステップS104)。また、診断指標算出部5は、メンテナンスの候補となり得る各ON−OFFバルブ200aについて、記憶部4に記憶された圧力計測値データに基づいて操作器空気圧力の立ち上がり時点を求める(図3ステップS105)。
【0028】
上記のとおり、記憶部4には、時系列に得られた開度計測値データとバルブIDと開度計測値データの受信時刻とが記憶されているので、バルブ開度の立ち上がり時点を求めることが可能である。図7はバルブ開度の立ち上がり時点の導出方法を説明する図である。開度計測値データとその受信時刻とから、例えば図7のようなバルブ開度変化曲線が得られたとする。診断指標算出部5は、バルブ開度Aが整定値Acontに対して規定開度幅以上大きく変化したときに、その変化の傾きが最大となったバルブ開度変化曲線上の点を求め、この点の接線L2と整定値Acontの延長線L1とが交わる時点を、バルブ開度Aの立ち上がり時点taとすればよい。
【0029】
同様に、記憶部4には、時系列に得られた圧力計測値データとバルブIDと圧力計測値データの受信時刻とが記憶されている。診断指標算出部5は、操作器空気圧力Pがその整定値に対して規定圧力幅以上大きく変化したときに、その変化の傾きが最大となった操作器空気圧力変化曲線上の点を求め、この点の接線と整定値の延長線とが交わる時点を、操作器空気圧力Pの立ち上がり時点tpとすればよい。
【0030】
そして、診断指標算出部5は、操作器空気圧力Pの立ち上がり時点tpとバルブ開度Aの立ち上がり時点taとの時間差(不感帯時間)ta−tpを、診断指標Txとして算出する(図3ステップS106)。
【0031】
バルブメンテナンス支援装置の診断指標提示部6は、診断指標算出部5によって算出された各ON−OFFバルブ200aの診断指標Txの数値をオペレータに対して提示する(図3ステップS107)。このとき、診断指標提示部6は、メンテナンスの候補となり得るON−OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、診断指標Txの数値と共に提示する。
【0032】
本実施例では、このような提示によって、ON−OFFバルブのメンテナンスの必要性についての知識が乏しいオペレータに対して、ON−OFFバルブへの着目の必要性を定量的に示すことになるので、ON−OFFバルブのチェック漏れが発生する危険性を低減できる。
【0033】
一方、バルブメンテナンス支援装置の判定部7は、バルブID記憶部1にバルブIDが登録されている各ON−OFFバルブ200aの診断指標Txが予め規定された閾値TH以上か否かをON−OFFバルブ毎に判定する(図3ステップS108)。
【0034】
バルブメンテナンス支援装置の判定結果提示部8は、判定部7の判定結果をオペレータに対して提示する(図3ステップS109)。具体的には、判定結果提示部8は、診断指標Txが閾値以上と判定されたON−OFFバルブについて、このバルブのIDと閾値以上の数値とを通常と異なる形式(例えば赤色で表示)で表示すればよい。
こうして、図3のステップS100〜S109の処理が定期的に、あるいはオペレータから診断実行の指示があったときに行われる。
【0035】
図8はON−OFFバルブの正常な動作のシミュレーション結果を示す図、図9はON−OFFバルブの異常な動作のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、操作器空気圧力Pを、とり得る最大値を100%としたときの百分率で表している。図8の正常な例では、診断指標Tx=10msec.(0.01sec.)であるのに対し、図9の例では、診断指標Tx=30msec.(0.03sec.)となっており、ON−OFFバルブの作動速度が低下している。
【0036】
なお、図8図9のt0は、制御指令(電磁弁205への電気信号など)の入力時点を示している。図8図9の例は、制御指令の入力時点t0と操作器空気圧力Pの立ち上がり時点tpとの時間差がばらつく例とした。これにより、図8図9では、制御指令に対するON−OFFバルブの動き出しの不感帯時間(ta−t0)は同一になっている。
【0037】
図10は診断指標提示部6と判定結果提示部8とによる診断指標の提示例を示す図である。図10の例では、診断指標提示部6が表示する画面60の領域600に、バルブID“A”,“C”,“M”の各バルブの診断指標Txが表示されている。診断指標提示部6は、ON−OFFバルブを診断対象としていることを伝える情報を、画面60の領域601に表示している。また、診断指標提示部6は、予め用意されている画像データを用いて、図10に示すように診断対象のON−OFFバルブが配設されている箇所の配管計装図602を画面60に表示するようにしてもよい。
【0038】
本実施例では、閾値THを例えば20msec.としている。図10の例では、バルブID“M”のON−OFFバルブの診断指標が30msec.である。このため、判定結果提示部8は、診断指標の数値とバルブIDとを、他のON−OFFバルブの診断指標と異なる色(図10の例では黒地に白)で表示している。
【0039】
こうして、本実施例では、ON−OFFバルブの動き出しの不感帯時間(操作器空気圧力の立ち上がり時点とバルブ開度の立ち上がり時点との時間差)の大きさの変化を捉えることができ、オペレータがメンテナンス候補のON−OFFバルブを選定する作業を支援することができる。
【0040】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、第1の実施例の実装例を説明するものである。図11はプラントとその機器管理システムの構成を示す図である。本実施例では、バルブID“A”,“M”のON−OFFバルブ200a−A,200a−Mが流路11−1に配設され、バルブID“C”のON−OFFバルブ200a−Cが流路11−3に配設されているものとする。図11における12−A,12−C,12−Mは流量計測器、13はタンク、14は圧力発信器である。なお、図11では、バルブIDが“A”,“C”,“M”以外のバルブについては記載を省略している。
【0041】
石油、化学系のプラントの機器管理システムには、プラントの各機器を制御・管理する管理装置15が設けられている。第1の実施例で説明したバルブID記憶部1と開度取得部2と圧力取得部3と記憶部4と診断指標算出部5については、プラント固有の膨大な情報を扱うので、管理装置15に実装されることが好ましい。
【0042】
一方、診断指標提示部6と判定部7と判定結果提示部8とは、原則的にバルブのメンテナンス要否判断時のみ必要な処理を提供するものである。また、メンテナンス実施者(メンテナンス受託企業の作業担当者)は、プラントオーナ企業から委託されてプラントのメンテナンスを実施するのが一般的である。したがって、不特定多数のプラントを対象にすることを想定して、メンテナンス受託企業の作業担当者(オペレータ)が持ち歩く携帯型のコンピュータ16に、診断指標提示部6と判定部7と判定結果提示部8とを実装することが好ましい。
【0043】
プラントの管理装置15とコンピュータ16とは、メンテナンス作業実施時にイーサネット(登録商標)などの通信機能を利用して一時的に接続される。
オペレータがコンピュータ16上のアプリケーションソフトウエアを起動すると、コンピュータ16のCPUは、メモリに格納されたプログラムに従って処理を実行し、診断指標提示部6と判定部7と判定結果提示部8としての機能を実現する。
【0044】
診断指標提示部6は、管理装置15上のバルブID記憶部1からバルブIDを読み込むと共に、診断指標算出部5によって算出された各ON−OFFバルブ200aの診断指標を読み込み、コンピュータ16のディスプレイに表示する(図3ステップS107)。また、判定結果提示部8は、判定部7の判定結果をコンピュータ16のディスプレイに表示する(図3ステップS109)。
【0045】
オペレータは、表示されたバルブIDと診断指標と判定結果に基づき、特に留意すべきON−OFFバルブ200aを確認する。オペレータは、表示された事項を確認した後で、コンピュータ16と管理装置15との接続を解除する。
こうして、第1の実施例で説明したバルブメンテナンス支援装置を実際のプラントに適用することができる。
【0046】
第1、第2の実施例で説明したバルブメンテナンス支援装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図12に示す。コンピュータは、CPU300と、記憶装置301と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)302とを備えている。I/F302には、例えばバルブ、管理装置、ディスプレイ等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明のバルブメンテナンス支援方法を実現させるためのプログラムは記憶装置301に格納される。CPU300は、記憶装置301に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。
なお、第2の実施例に示したようにバルブメンテナンス支援装置を管理装置15とコンピュータ16に分けて実装する場合には、これらの各々を図12のような構成で実現すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、バルブメンテナンス作業を支援する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,211,214…バルブID記憶部、2…開度取得部、3…圧力取得部、4…記憶部、5…診断指標算出部、6…診断指標提示部、7…判定部、8…判定結果提示部、11−1,11−3…流路、12−A,12−C,12−M…流量計測器、13…タンク、14…圧力発信器、15…管理装置、16…コンピュータ、200a…ON−OFFバルブ、208…圧力センサ、209…開度センサ、210…開度計測部、212,215…送信部、213…圧力計測部。
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