【解決手段】本体ケース(11)と該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材(12)とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、外カバー部材には熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を備え熱感知素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うヘッド部材が設けられている熱感知器において、熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の上端から上方へ向かって外側へ広がるすり鉢状の本体部を備えた内カバー部材(16)が、挿通用円筒部が回路基板の熱感知素子の周りに位置するように配設され、挿通用円筒部の内側には絶縁性の樹脂が充填され内カバー部材の上部は外カバー部材の開口に当接され封止されるようにした。
本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、前記外カバー部材には前記熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を備え前記熱感知素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うヘッド部材が設けられている熱感知器において、
前記熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の上端から上方へ向かって外側へ広がるすり鉢状の本体部を備えた内カバー部材が、前記挿通用円筒部が前記熱感知素子の周りに位置するように前記回路基板に接続され、
前記内カバー部材の前記挿通用円筒部の内側には絶縁性の樹脂が充填され、
前記内カバー部材の上部が、前記外カバー部材の前記開口に当接され、封止されるように構成されていることを特徴とする熱感知器。
前記回路基板は三角形状をなし、少なくとも角部の3箇所にてそれぞれ導電性のネジによって前記本体ケースの底壁に固定され、前記3箇所のうち2箇所は前記回路基板を物理的に固定しかつ前記回路基板上の前記検出回路と外部の端子とを電気的に接続可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱感知器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6に示すような構造を有する熱感知器においては、サーミスタ15が突出するカバー12のサーミスタ挿通孔12Eとサーミスタ15との間に隙間があるため、外部から埃が進入するおそれがある。また、熱感知器が取り付けられた天井面の室内側の空間よりも天井裏の空間の方が、空気圧が高くなることがあり、その場合、天井面に形成された配線等を通す穴からカバー12内に圧力の高い空気が入り込み、その高圧の空気がカバーの挿通孔12Eとサーミスタ15との間の隙間から外部へ流れ出すことで、サーミスタの周囲に円筒状の気流層が生じ、天井裏の温度が低い場合、その気流によってサーミスタが冷やされて熱感知機能が低下するおそれがある。また、天井裏の温度によらず、天井裏から感知器側へ気流が流入し、サーミスタ脇から漏れる気流によって、床面から上昇してくる熱気流を押し戻したり、天井面を伝って来る熱気流を遮蔽したりして、温度上昇の検知を妨害するおそれが生じる。
【0005】
そこで、例えば特許文献2に記載されているように、カバーの中央に設けた引き出し穴とサーミスタとの間の隙間を、接着剤等により密封することで、サーミスタの周囲から空気が流れ出さないようにすることによって、熱感知機能の低下を防止することが考えられる。しかし、特許文献2に記載されているような構成の場合、引き出し穴が大きめに形成されていると、接着剤をサーミスタの周囲の隙間にきれいに充填するのが難しくなってしまう。また、サーミスタには形の異なる種々のタイプのものがあるが、引き出し穴の径が小さいと複数種類のサーミスタに対応できない、つまりカバー(いわゆる外カバー)の共通化が図れないため、コストアップを招くという課題がある。
【0006】
また、特許文献3には、サーミスタの周囲から空気が流れ出さないようにするため、サーミスタを挿通する挿通孔を有する遮蔽板に円筒状の周壁を設け、該周壁の上に基板を乗せて周壁の端部を基板表面に接合させることで、検知素子挿通孔を通じてプロテクタ部へ流通する空気を遮断するように構成した熱感知器が記載されている。
【0007】
しかし、特許文献3の熱感知器にあっては、遮蔽板の周壁の端部全体を基板表面に接触させる構成であるため、基板の幅を周壁の径よりも大きくする必要があるため基板サイズが大きくなる、基板表面の周壁端部と接する部位に素子を設けることができないなどの制約がある。また、検知素子挿通孔の隙間に接着剤等を充填することはしていないため、遮蔽板の周壁の端部を基板表面に密着させて気密性を保持できるように組み立てる必要がある。そのため、部品に対して高い寸法精度が要求されるという課題がある。なお、特許文献3の熱感知器においては、検知素子挿通孔の周辺に傾斜部を設けているが、この傾斜部は素子の挿入の際の引っ掛かりをなくすためのものである。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、熱感知素子としてサーミスタを用いるとともに、サーミスタが基板に実装されその基板を覆うカバーにサーミスタが突出する挿通孔が形成されている熱感知器において、サーミスタと挿通孔の隙間から空気が流れ出して熱感知素子が冷やされて感知機能が低下してしまうのを防止することができるようにすることにある。
本発明の他の目的は、異なる大きさのサーミスタに対応できるように基板を覆うカバーに大きめのサーミスタ挿通孔を設けている場合においても、サーミスタの周囲に樹脂を適切に充填することができる熱感知器を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、組立てに要する作業時間を短縮することができる熱感知器の組立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、
本体ケースと該本体ケースの開口側を覆う外カバー部材とからなる筐体の内部に、熱感知素子および検出回路を構成する部品が実装された回路基板が収納され、前記外カバー部材には前記熱感知素子に対応した位置に開口が形成されているとともに、外側の空気が流入可能な流入口を備え前記熱感知素子の先端が臨む空間を形成しかつ前記開口を覆うヘッド部材が設けられている熱感知器において、
前記熱感知素子の径よりも内径の大きな挿通用円筒部および該挿通用円筒部の上端から上方へ向かって外側へ広がるすり鉢状の本体部を備えた内カバー部材が、前記挿通用円筒部が前記熱感知素子の周りに位置するように前記回路基板に接続され、
前記内カバー部材の前記挿通用円筒部の内側には絶縁性の樹脂が充填され、
前記内カバー部材の上部は、前記外カバー部材の前記開口に当接され、封止されるように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する熱感知器によれば、回路基板に実装された熱感知素子(サーミスタ)を、挿通用円筒部を備えた内カバー部材で覆い、挿通用円筒部の内側には絶縁性の樹脂が充填されているため、サーミスタと挿通孔の隙間から空気が流れ出して熱感知素子が冷やされて熱感知機能の低下してしまうのを防止することができる。また、内カバー部材が挿通用円筒部とすり鉢状の本体部とから構成されているため、円筒部の内側にのみ樹脂を充填すればよいので、異なる大きさのサーミスタに対応できるように内カバー部材に大きめの挿通孔を設けている場合に充填する樹脂の量を少なくできるとともに、本体部がすり鉢状であるため下方の円筒部内に容易に樹脂を充填することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記内カバー部材の前記すり鉢状の本体部には、下方へ向かって突出し先端部に各々外向きの爪を有する複数本の係止片が形成され、
前記回路基板の前記熱感知素子の実装部周辺には、前記係止片の爪が挿通可能な係合穴が、前記複数本の係止片に対応した数だけ形成され、
前記複数本の係止片が前記係合穴に挿入されて係止されることで前記内カバー部材の前記回路基板に装着されているように構成する。
かかる構成によれば、内カバー部材に設けた複数本の係止片を回路基板に設けた係合穴に係合させるだけで、内カバー部材を回路基板の熱感知素子実装部周辺に装着することができるとともに、内カバー部材の挿通用円筒部の下端が回路基板の表面に接合されるため、内カバー部材の上部のすり鉢状の本体部へディスペンサーのノズルを臨ませることでサーミスタの挿通用円筒部へ容易に樹脂を充填することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記内カバー部材の前記挿通用円筒部の上縁部には、周方向に沿って断面が山型をなすリブが形成されているように構成する。
かかる構成によれば、ディスペンサーのノズル先端における樹脂の切れを良くして、樹脂のはみだしを防止することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記内カバー部材の前記挿通用円筒部の下端面には突起が形成され、
前記回路基板の前記熱感知素子の実装部周辺には、前記突起が係合可能な係合穴が形成されているように構成する。
かかる構成によれば、内カバー部材の係止片と回路基板側の係合穴との係合が緩くても、挿通用円筒部の下端面の突起が回路基板の係合穴に係合することによって、内カバー部材が回路基板上で横ずれを起こすのを防止することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記回路基板は三角形状をなし、少なくとも角部の3箇所にてそれぞれ導電性のネジによって前記本体ケースの底壁に固定され、前記3箇所のうち2箇所は前記回路基板を物理的に固定しかつ前記回路基板上の前記検出回路と外部の端子とを電気的に接続可能に構成する。
かかる構成によれば、回路基板の面積が小さく本体ケースを他の種類の感知器ケースと共通化し易くなるとともに、回路基板の固定と回路基板上の検出回路への電気的接続を別々に行う必要がないため、組立てに要する作業時間を短縮することができる。
【0015】
さらに、本出願に係る熱感知器の組立て方法は、上記のような構成を有する熱感知器の前記回路基板の所定部位に前記熱感知素子を実装するとともに、該前記熱感知素子の基部を前記挿通用円筒部で囲むように前記内カバー部材を前記回路基板に装着し、前記挿通用円筒部の内側に絶縁性の樹脂を充填してユニット化し、ユニット化されたものを1つの部品として扱って、当該ユニット部品を前記本体ケース内に収納して前記回路基板を前記本体ケースの底壁に固定した後に、前記外カバー部材を前記本体ケースに被せて結合するようにしたものである。
【0016】
上記のような組立て方法によれば、熱感知器を構成する部品の取り扱いが容易となり、効率よく熱感知器を組み立てることができるため、組立てに要する作業時間を短縮することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る熱感知器によれば、熱感知素子としてサーミスタを用いるとともに、サーミスタが基板に実装されその基板を覆うカバーにサーミスタが突出する挿通孔が形成されている熱感知器において、サーミスタと挿通孔の隙間から空気が流れ出して熱感知素子が冷やされて感知機能が低下してしまうのを防止することができる。また、異なる大きさのサーミスタに対応できるように基板を覆うカバーに大きめのサーミスタ挿通孔を設けている場合においても、サーミスタの周囲に樹脂を適切に充填することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る熱感知器の一実施形態について説明する。
図1には実施形態の熱感知器の正面断面図が、
図2には実施形態の熱感知器の分解斜視図が示されている。
本実施形態の熱感知器10は、熱感知素子としてサーミスタを用い火災に伴い発生した熱によって熱せられた空気がサーミスタに接触することで生じる電気抵抗の変化を検出して火災を検知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。なお、以下の説明では、熱感知器10を建造物の天井面に設置した状態で上になる側を下側、下になる側を上側とする。
【0020】
本実施形態の熱感知器10は、
図1および
図2に示すように、熱を感知する部品を収容するための収容凹部を有し建造物の天井面に取り付けているベース部材に結合可能な有底円筒形の本体ケース11と、中央部が上方へ向かって膨らんだ形状を有し前記本体ケース11の上側全体を覆う外カバー12とを備え、本体ケース11と外カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
また、熱感知器10は、前記本体ケース11の収容凹部内に収容されネジ13によって本体ケース11底部のボス部に固定される回路基板14と、該回路基板14に実装されたサーミスタ15と、該サーミスタ15が挿通可能な挿通孔16aを有し下端が上記回路基板14の表面に接するように配設されたすり鉢状の内カバー16とを備える。
【0021】
上記回路基板14は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、回路基板14のほぼ中央にサーミスタ15のリード端子の先端が回路基板14を貫通して下面より突出し、フロー半田付け等によって回路基板14に接続される。
【0022】
また、回路基板14には上記ネジ13が挿通可能なネジ挿通穴を有するボス部11bが3箇所形成されており(
図2)、これらのボス部11bのネジ挿通穴にそれぞれ挿通された3個のネジ13によって本体ケース11の収容凹部内に固定される。回路基板14のネジ挿通穴14aのうち2つの周縁部には、基板上の素子に接続されている配線パターンが延設されており、ネジ13によって、基板の固定と同時に、後述の連結金具18と基板上の回路との電気的接続をとることができるようになっている。
なお、例えば、感知器に必要な電極が三極の場合は、感知器との電気的接続部は3箇所必要になるため、この場合、回路基板14のネジ挿通穴14aの3つの周縁部に、基板上の素子に接続される配線パターンを延設させ、ネジ13によって、基板の固定と同時に、後述の連結金具18と基板上の回路との電気的接続をとるようにすれば良い。
【0023】
さらに、本実施形態においては、本体ケース11を煙感知器等他の感知器と共用させることができるようにするため、上記回路基板14は三角形をなすように形成されており、
図3に示すように、内カバー16は一部が回路基板14の外側へはみ出した状態で回路基板14に実装される。また、回路基板14は角部3箇所で本体ケース11の底壁に固定される構成であり中央が撓むおそれがあるので、撓みを防止するための突起11aが本体ケース11の底壁に形成されている。
【0024】
内カバー16は、中央に上記サーミスタ15が挿通可能な挿通孔16aが形成されているとともに、周縁部には、先端に爪部を有する3本の係止片(フック)16bが下方へ向かって突出するように設けられており、
図3に示すように、係止片16bの先端が上記回路基板14の所定位置に設けられている3個の係合穴14bにそれぞれ係合されることによって、回路基板14に装着されるように構成されている。また、回路基板14の係合穴14bは、サーミスタ15が実装される部位を囲むようにして配設されている。
【0025】
一方、外カバー12は、その中央に、上記内カバー16の上部が当接する円形状の開口部12Aが形成されているとともに、上記内カバー16の上方に位置するリング状のヘッド部12Bが設けられ、該ヘッド部12Bの近傍まで頭部が達するようにサーミスタ15が配設されている。さらに、上記リング状ヘッド部12Bと外カバー12の上壁との間に、
図2に示すように、放射状に配設された隔壁12Cが複数個(例えば6個)形成され、これらの隔壁12C間に外部の空気をケース内部に流入可能にする流入口として機能する開口が設けられている。
【0026】
また、一方、上記内カバー16の上部の面(
図3における内カバー16のすり鉢状本体部の上部外周に現れる平板状の円環部の面)と、当該内カバー16の上部の面と対応する上記外カバー12の内側の面(開口部12Aを形成する周縁円環部の面)とは、感知器が組み立てられることにより押圧されて当接し、封止される。また、当該内カバー16の上部の面を包囲するリブが、外カバー12の開口部12Aの周囲に形成されており(
図1)、このリブは組み立て時の内カバー16に外カバー12を被せる際のガイドおよび位置決め(ズレ防止)の機能を有している。なお、このリブの径を、内カバー16の上部の径に合わせて、内カバー16に嵌合させ、封止されるようにして密閉性を上げ、感知器内部からサーミスタ周辺への気流の流出を遮断する補助的な構成としても良い。
【0027】
また、外カバー12の上面には、特に限定されるものではないが、上記開口部12Aを囲むように円形状の溝12Dが形成され、該溝12D内に、透光性を有する材料からなるリング状の間接発光表示体17(以下、表示リングと称する)が係合されている。表示リング17は、
図2に示すように、一対の棒状の光ガイド部17aを有しており、外カバー12の上面の上記溝12Dの底部に上記光ガイド部17aが挿通可能な挿通穴が2箇所形成されている。
【0028】
そして、この挿通穴に挿通された光ガイド部17aの(下端)の光入射部(端面)が上記回路基板14に実装されている図示しない動作状態報知用の発光ダイオード(LED)に対向されることで、LEDの光が光ガイド部17aを通って表示リング17へ誘導されるように構成されている。表示リング17の表面には多数の溝が形成されており、誘導されてきた光が溝に当たって反射することで、表示リング17全体が光を発し、感知器が作動中もしくは点検中であることを表示することができるようになっている。
【0029】
本体ケース11は熱感知器10の下側筐体壁を構成するもので、
図2に示すように、本体ケース11の底部には、収容凹部内に収容された回路基板14を固定するネジ13が挿通されるボス部11bが3個設けられている。
また、これらのボス部11bに対応して、本体ケース11の下面には、予め天井面に設置されるベース部材20の係止用金具21と係合し、当該熱感知器10を天井面に固定するための連結金具18が、上記3個のボス部11bにそれぞれ挿通されたネジ13によって本体ケース11の下面に固定されている。
【0030】
そして、上記連結金具18が天井側のベース部材20に設けられている係止用金具21と係合することで、本体ケース11がベース部材20に連結される。具体的には、本体ケース11をベース部材20に接合させてから、本体ケース11を回すと、連結金具18が係止用金具21に係合して、本体ケース11とベース部材20が一体に連結される。なお、上記3個の連結金具18のうち2個は、天井面に形成されている穴から引き出されて端部がベース部材20の係止用金具21に接続されている配線に電気的に接続される端子として機能するように構成されている。
【0031】
次に、
図4を用いて、上記内カバー16の詳細な構造について説明する。
図4のうち、(A)は本実施形態における内カバー16を回路基板14に装着した状態を示す断面図、(B)は内カバー16の挿通孔を絶縁性の樹脂(接着剤を含む)等で充填した状態を示す断面図、(C)は内カバー16の他の構成例を示す断面図である。
【0032】
図4(A)に示すように、内カバー16には、回路基板14に実装されているサーミスタ15が挿通される挿通孔16aを有する円筒部16cと、該円筒部16cの上端部から外側に広がるように形成されたすり鉢状のカバー本体部16dと、該カバー本体部16dの上端部に形成された鍔部16eと、該鍔部16eの縁から鉛直方向下方へ向かって突出するように形成された3本の係止片16bが設けられている(
図4には、3本の係止片16bのうち2本が示されている)。係止片16bの先端には爪部が形成されており、この爪部が、回路基板14に形成されている係合穴14bに係合されている。
【0033】
また、内カバー16の上記円筒部16cの下面には、突起16fが形成されており、この突起16fが回路基板14に形成されている係合穴14c(
図3)に係合される。回路基板14の係合穴14bは係止片16bを通しやすくするため、係止片16bの断面よりも大きく形成されているが、係合穴14cは突起16fの断面とほぼ同じ大きさになるよう形成されており、これによって内カバー16が回路基板14上で横ずれするのを防止できるようになる。
【0034】
さらに、本実施形態の熱感知器においては、
図4(B)に示すように、挿通孔16aの内側に樹脂19を充填した構造を採用している。これにより、天井面に形成された配線等を通す穴から筐体内(本体ケース11内側の基板収納空間)に圧力の高い空気が入り込み、その高圧の空気が内カバー16の挿通孔16aとサーミスタ15との隙間から流れ出すことで、サーミスタ15の周囲に円筒状の気流層が生じ、その気流によってサーミスタ15が冷やされて熱感知機能が低下するのを防止することができる。
【0035】
なお、筐体内に入り込んだ高圧空気は、表示リング17が係合される外カバー12の円形状の溝12Dの底部に形成されている光ガイド部17aの挿通穴より逃がすことができる。
また、本実施形態の熱感知器においては、内カバー16のサーミスタ挿通孔16aの径をサーミスタ15の径に比べて余裕のある大きさに設定しているため、径もしくはリード端子15aの間隔の大きなサーミスタを使用する場合にも、内カバー16を設計変更することなく共通に使用することができる。
【0036】
なお、前述したように本発明の内カバーの挿通孔16aの内径(筒径)は、感知器に使用されるあらゆるサーミスタの径(もしくは最大幅)を考慮したサイズとなっているが、具体的には、感知器に使用されるサーミスタ15として、
図4(C)のようなサーミスタ15は、幅が約5mmあり、厚みが約3mmほどのサイズであり、本発明の内カバー16の挿通孔16aの径は約8mmである。従って、この場合でも挿通孔16aとサーミスタ15には、樹脂の充填を行うのに充分な間隙が確保されている。
また、中央に配置される挿通孔16aは、すり鉢状の本体部16b(円環外郭部)に対して比較的近い径を有する円筒状であるため、内カバー16は、3本の係止片16bの係着よりに、挿通孔16の底部が、均等に回路基板14を押圧し、確実かつ安定して回路基板14に固定される。
【0037】
さらに、内カバー16の上記円筒部16cの上面には、挿通孔16aの開口縁部に沿って、断面が三角形の山型をなす凸状のリブ16gが連続して形成されている。このリブ16gを設けることによって、
図4(B)に示すように、挿通孔16aとサーミスタ15との隙間に樹脂19を充填する際に、ディスペンサーのノズル先端における樹脂の切れを良くして、樹脂のはみだしを防止することができる。
なお、内カバー16は、
図4(C)に示すような形状にすることも考えられるが、このような形状の場合、挿通孔16aの内側に充填する樹脂の量が多くなるとともに、上部の開口面積が
図4(A)のものに比べて小さいため樹脂の充填が難しくなる。つまり、内カバー16は
図4(A)のようなすり鉢状である方が、樹脂の充填がし易くなるという利点がある。
【0038】
次に、上記実施形態の熱感知器10の組立て方法について説明する。
熱感知器10の組立て工程においは、先ず、サーミスタ15が実装されている回路基板14上に内カバー16を装着する。続いて、内カバー16の挿通孔16aとサーミスタ15との隙間に樹脂19を充填して硬化させ、回路基板14と内カバー16を一体化したユニット部品とする。また、外カバー12には、上面の溝12D内に表示リング17を係合させて一体にする。
なお、製造時において、回路基板14とサーミスタ15および内カバー16を一体に組立てた状態で挿通孔16a内に樹脂を充填するので、感知器の製造過程において、組立て工程の後半で樹脂を充填する場合に比べて、サーミスタのコーティングがなされていない露出部(導通箇所)が外気に晒され、湿気や埃の堆積によるショートが発生するおそれを未然に防止することができる。
【0039】
その後、内カバー16と一体化された回路基板14のネジ挿通穴14aを本体ケース11のボス部11bに位置合わせしてから、ネジ13によって本体ケース11の底壁に固定する。この際、本体ケース11の下面側には、連結金具18を当てて回路基板14の固定と同時にネジ13によって連結金具18を結合する。その後、外カバー12を本体ケース11の上部に被せ、両者を結合させて組立てが完了する。
上記のように、本実施形態の熱感知器10は、回路基板14と内カバー16を一体化したユニット部品としているため、組立てが簡単に行えるという利点がある。
【0040】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、感知器の作動状態を表示するため外カバー12の表面に表示リング17を設けているが、
図5に示すように、スポット状の表示を行うランプLを設けるようにしても良い。
また、上記実施形態の熱感知器10においては、本体ケース11の底壁に回路基板14の撓みを防止するための突起11aを設けているが、
図4(A)に破線Hで示すように、係止片16bの先端に冗長部(突起)を設けて、この冗長部の先端本体ケース11の底壁に当接させることで回路基板14の撓みを防止するようにしても良い。