【解決手段】この発明は、基材の少なくとも一部の面に磁気をシールドするシールド皮膜を溶射によって成膜する磁気シールド材及びその製造方法であって、溶射材として低周波域の磁気を吸収することによってシールドする軟磁性材料の粉末を使用してシールド皮膜3を成膜するものであり、軟磁性材料はセンダスト,パーマロイ,珪素鋼その他の金属材料,フェライトその他のセラミックスである。
溶射方法がプラズマ溶射,減圧プラズマ溶射,ガスフレーム溶射,高速フレーム溶射,コールドスプレー溶射,高周波プラズマ溶射,サスペンション溶射,ウォームスプレー溶射のいずれかである
請求項1乃至3の何れかに記載の低周波磁気シールド材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、シート状の低周波磁気シールド材は電子機器類のカバー等の基材表面が平面の場合は使用できるが複雑な凹凸形状のものには使用できない欠点がある。
他方、特許文献1等の通常の溶射皮膜を成膜させるものは、基材が凹凸形状のものでも成膜できるが、軟磁性材料(高透磁率磁性材料)として知られるセンダスト等の材料は溶射に伴って酸化や熱変質し、シールド機能が低下する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の低周波磁気シールド材の製造方法は、基材の少なくとも一部の面に磁気をシールドするシールド皮膜を溶射によって成膜する磁気シールド材の製造方法であって、溶射材として低周波域の磁気を吸収することによってシールドする軟磁性材料の粉末を使用してシールド皮膜を成膜することを特徴とする。
【0007】
軟磁性材料がセンダスト,パーマロイ,珪素鋼その他の金属材料,フェライトその他のセラミックス材料の1又は2以上を組合わせた材料であるものとしてもよい。
【0008】
軟磁性材料として粉末状の材料に溶射による酸化又は熱変質を防止する変質防止処理を施したものを使用するものとしてもよい。
【0009】
溶射方法がプラズマ溶射,減圧プラズマ溶射,ガスフレーム溶射,高速フレーム溶射,コールドスプレー溶射,高周波プラズマ溶射,サスペンション溶射,ウォームスプレー溶射のいずれかであるものとしてもよい。
【0010】
プラズマ溶射、ガスフレーム溶射、高速フレーム溶射、サスペンション溶射又はウォームスプレー溶射の何れかを行った後、シールド皮膜表面に還元・緻密化熱処理を施すものとしてもよい。
【0011】
一方、本発明の低周波磁気シールド材は、基材の少なくとも一部の面に磁気をシールドする溶射皮膜からなるシールド皮膜を備え、該シールド皮膜が低周波域の磁気を吸収することによってシールドする軟磁性材料を含むことを特徴とする。
【0012】
低周波域が100kHz以下であるものとしてもよい。
【0013】
軟磁性材料がパーマロイ,珪素鋼その他の金属材料,フェライトその他のセラミックス材料の1又は2以上を組合わせた材料であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように構成される本発明によれば、シールド対象とする磁気の周波数を、全域ではなく、低周波域に限定するとともに、軟磁性材料の粉末を溶射材として用いるため、溶射の際に該シールドの機能が低下しないような材料を、溶射材の少なくとも一部を構成する材料として選ぶことが容易になる。このようにして適切な材料で構成された溶射材を、基材の少なくとも一部の面に溶射すれば、所望のシールド皮膜を得ることができるとともに、凹凸等の複雑な形状を有する基材にも容易に対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】無電解ニッケルメッキ(Ni−P)を施したセンダスト粉末の断面模式図である。
【
図3】Ni−Pメッキ後のセンダスト粉末の電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図4】(A)〜(C)はそれぞれNi−Pメッキを施したセンダスト粉末のNi,Fe,Pの分布状態を表したエネルギー分散型X線分析(EDX)画像である。
【
図5】Ni−Pメッキ済センダスト粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像である。
【
図6】(A)〜(E)は、それぞれ
図5の皮膜のFe,Si,Al,Ni,Pの分布状態を表すEDX画像である。
【
図7】(A)〜(C)は
図5に示す皮膜断面と同一のSEM像の異なる分析位置と分析位置に対応したEDX画像(X線回析パターン図)である。
【
図8】センダスト粉末をコールドスプレー(CS)溶射した皮膜断面のSEM像である。
【
図9】(A)〜(E)はそれぞれ
図8の皮膜のO,Mg,Al,Si,Feの分布状態を表したEDX画像である。
【
図10】(A),(B)は
図8に示す皮膜のSEM像の異なる分析位置と分析位置に対応したEDX画像(X線回析パターン図)である。
【
図11】Ni−Pメッキしたセンダスト粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。
【
図12】無処理のセンダスト粉末をコールドスプレー(CS)溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。
【
図13】Ni−Pメッキ済みのパーマロイの粒子の一例を示すSEM画像である。
【
図14】(A)乃至(E)はNi−Pメッキ済みパーマロイをEDX分析したC,O,P,Fe及びNiの分布状態を点で示す画像である。
【
図15】(A)は
図13に示すSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図16】(A)は
図13に示すSEM像の
図15とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図17】はNi−Pメッキ済みのパーマロイ粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像である。
【
図18】(A)乃至(F)は
図17に示す皮膜のC,O,P,Fe、Ni及びZnの分布状態を示すEDX画像である。
【
図19】(A)は
図17に示す皮膜断面と同一のSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図20】(A)は
図17に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図19とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図21】(A)は
図17に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図19及び
図20とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図22】Ni−Pメッキ済みのパーマロイ粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。
【
図23】はNi−Pメッキをしていないパーマロイの粒子の一例を示すSEM画像である。
【
図24】(A)乃至(F)はNi−PメッキをしていないパーマロイをEDX分析したC,O,Si,S,Fe及びNiの分布状態を点で示す画像である。
【
図25】Ni−Pメッキをしていないパーマロイ粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像である。
【
図26】(A)乃至(D)は
図25に示す皮膜のC,O,Fe及びNiの分布状態を示すEDX画像である。
【
図27】(A)は
図25に示す皮膜断面と同一のSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図28】(A)は
図25に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図27とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図29】Ni−Pメッキをしていないパーマロイ粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。
【
図30】Ni−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系の粒子の一例を示すSEM画像である。
【
図31】(A)乃至(F)はNi−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系の粒子をEDX分析したC,O,Si,P,Fe及びNiの分布状態を点で示す画像である。
【
図32】Ni−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像である。
【
図33】(A)乃至(H)は
図32に示す皮膜のC,O,Si,P,Cr,Fe、Ni及びAlの分布状態を示すEDX画像である。
【
図34】(A)は
図32に示す皮膜断面と同一のSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図35】(A)は
図32に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図34とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図36】(A)は
図32に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図34及び
図35とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【
図37】Ni−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。
【
図38】Ni−Pメッキをしていない鉄基アモルファス系の粒子の一例を示すSEM画像である。
【
図39】(A)乃至(E)はNi−Pメッキをしていない鉄基アモルファス系をEDX分析したC,Al,Si,Cr及びFeの分布状態を点で示す画像である。
【
図40】Ni−Pメッキをしない鉄基アモルファス系粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明は
図1に示すように、電子機器等の収容し又は外部からシールドするカバーや外箱、シールド板等を構成する低周波磁気シールド用のシールド材1は、これらの本体を構成する基材2の少なくとも一部の面(具体的には、外面又は内面の一部又は全部)に例えば100kHz程度の低周波電磁波の磁気を吸収することによってシールドする軟磁性材料からなる皮膜3を形成するものである。前記軟磁性材料としては、センダスト,パーマロイ,珪素鋼その他の金属材料,フェライトその他のセラミックス材料の1又は2以上を組合せた材料を用いる
【0017】
さらに具体的には、上記皮膜が粉末状の軟磁性材料を溶射することにより形成(成膜)され、その溶射材としては表1に示すものを使用する。同表は本発明を適用した低周波磁気シールド材の製造方法で用いる溶射材の例と、溶射材の夫々に溶射方法の例とを、本願発明者らの知見及び実験により確認したもので、ここではセンダスト,パーマロイ,フェライトと珪素鋼と、これらに採用可能な溶射方法を示している。なお、本願発明は、表1に示すものに限定されるものでないことは、後述する実施例4,6に示す通りであり、低周波磁気シールドに適した材料である軟磁性材料の粉末であれば、様々な材料を選択可能である。
【0019】
表1中のメッキは粒度−100/+350meshの粉状の材料に対し、Ni−Pメッキ(無電解ニッケルメッキ=変質防止処理)を施したものとメッキしないもの(無処理)の例を上下に分けて示しており、「〇印」は皮膜に本発明のシールド効果が認められるもの、「×印」は成膜が不可であるもの、「△(〇)印」は皮膜に本発明のシールド効果が認められないか、或いは認められ難いが、溶射後HIP(熱間等方圧加圧加工)処理による還元・緻密処理(表面改質処理)を施すか、溶射材を構成する材料を適切に選定するか、或いは、溶射の工程自体やその前後の工程において別処理を行うことによって、目的にかなった使用が可能な成膜が得られることを示している。
【0020】
上記無電解ニッケルメッキ以外にも無電解金属メッキとしてCu,Ag,Ni−P,Ni−Co−P,Ni−W-P,Co−P等を用いること、メカニカルコーティング、メカノフュージョン、真空蒸着等の変質防止処理の採用が可能である。
【0021】
本例のHIP処理(熱間等方圧加圧法)は一般的にArガス雰囲気で数100〜2000℃の高温と数10〜200MPaの等方的な圧力を同時に加えて処理をするもので、皮膜の表面の緻密化のための改質と酸化物を還元する効果が期待できる。
【0022】
また溶射前のNi−Pメッキは溶射による軟磁性材料の酸化と熱変質を防止するための処理である。
【0023】
上記軟磁性材料と溶射方法の内センダストをプラズマ溶射及びコールドスプレーした実施例につき以下説明する。
【0024】
[実施例1]
本例ではセンダストは大同特殊鋼株式会社製の粒度−100+350meshで表2に示す組成のものを使用し、溶射方法との関係で酸化や熱変質により軟磁性を損なうのを防止するためNi−Pメッキしたもの(メッキ金属化率28.6wt%)を用いた。
【0026】
またプラズマ溶射ガンとしては、9MBプラズマ溶射ガン(Oerlikon Metco)を使用し溶射を行った。
【0027】
プラズマ溶射は、出力:32.5kW、供給ガス:ArとH
2の混合ガスの条件で行った。
【0028】
図2は本発明の実施例で使用したセンダストの内、Ni−Pメッキを施したもののセンダスト粒の模式図で、メッキ後のセンダスト4は、中心部のセンダスト粒4bに対し、その外周にNi−Pメッキのメッキ層4aが被覆形成されており、メッキ後の粒径は大きいもので50〜150mm,小径のもので数〜数十μm程度である。
【0029】
図3は上記メッキ済センダストの粒子の1例を示すSEM像である。
図4(A)〜(C)は上記センダストをEDX(エネルギー分散型X線)分析したNi,Fe,Pの分布状態を点で示す画像で、この検出データではセンダストに含まれているAl,Siの分布が見られなかった。
【0030】
図5〜
図7は上記Ni−Pメッキを施したセンダスト粉末を前記[0026]に示す条件でプラズマ溶射した場合の断面画像データを示し、
図5は拡大したSEM(走査電子顕微鏡)像である。
【0031】
図5によれば、後述の
図11に示すように低周波磁気の磁気シールド効果が認められる。
【0032】
図6(A)〜(E)はFe,Si,Al,Ni,Pのそれぞれの分布状態を点で示すEDXデータ画像で、同図(A)〜(C)において主としてセンダスト成分が、(D),(E)においてNi−Pメッキ成分がそれぞれ分布していることを示している。
【0033】
図7(A)〜(C)は、
図5における異なる部位(スペクトル3,同2,同5で示される3カ所)の各部位のSEM(上図)とEDX(下図)(X線回析パターン)を示しており、
図7ではFe−Si−Al(センダスト)領域、Ni−P領域の他にFeとNiが一部合金化したと判断できる箇所が見受けられる。また
図7(C)では、センダストとNi−Pが合金化されていると解される組成になっており、この部分はパーマロイ(Fe50,Ni50)に近い合金と解される。
【0034】
[実施例2]
この例では無処理のセンダスト粉末(メッキなし)をCS(コールドスプレー)により溶射膜の成膜を行った。成膜条件は、作動ガス:N
2 ガス圧力:3.0MPa ガス圧力:400℃ 溶射距離:15mmである。
図8〜
図10は、無処理のセンダスト粉末(メッキなし)をCS(コールドスプレー)溶射した皮膜に関する画像で、
図8は成膜された皮膜断面のSEM像で、皮膜部分の白色の粒状部分がセンダストを表し、その下部の白色部分が基材を表している(黒色部分はモールド固定材)。
【0035】
図9(A)〜(E)は、
図8の皮膜部分のO,Mg,Al,Si,Feの分布状態を白点の分布で表しており、同図(A)にはO(酸素)が殆ど表れていないため、酸化物がないことを示しており、酸化による変質を抑えていることがわかる。
【0036】
図10(A),(B)は
図8に示す皮膜断面中のスペクトル2,スペクトル3で表される異なる部位と、各部のセンダスト粒子(白色の粒状部分)のEDX(X線回析パターン図)であり、いずれの箇所にもFe,Al,Siは検出されているものの、Oはなく、酸化物がないことを示しており、酸化による変質を抑えていることがわかる。
【0037】
図11,
図12は上記実施例1,同2の溶射皮膜の磁気シールド効果を、低周波磁気の磁気シールドの測定限界値と対比したものである。ちなみに、磁気シールド効果の測定方法にはKEC法を用いた。いずれの例も在来のシート状低周波磁気シールド材と概ね同等のシールド効果を発揮できるので、十分実用に耐えることが明らかになった。
図11,
図12中、上側の線a
0が測定限界値を、下側の線a
1,a
2がそれぞれ実測値を示す。
【0038】
[実施例3]
本例では、山陽特殊製鋼株式会社製のパーマロイ(軟磁性材料)であって且つ45〜106μmの粒径を有する粉末を溶射材として用いた。該パーマロイの組成は表3に示す通りである。また、溶射に伴う酸化や熱変質等によって軟磁性が損なわれることを防止するため、前記パーマロイの表面にNi−Pメッキを施した。さらに、このパーマロイを溶射する前の工程において、密着性向上を目的として、Znが99.99wt%以上含まれた溶射材(以下、単にZn)を成膜面に予め溶射し、その後、この成膜面に前記パーマロインを溶射した。
【0040】
図13はNi−Pメッキ済みのパーマロイの粒子の一例を示すSEM画像であり、
図14(A)乃至(E)はNi−Pメッキ済みパーマロイをEDX分析したC,O,P,Fe及びNiの分布状態を点で示す画像である。
図15(A)は
図13に示すSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像であり、
図16(A)は
図13に示すSEM像の
図15とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【0041】
前記Znの溶射は、アーク溶射ガンとしてM−9000溶射ガン(TAFA)を用いたアーク溶射により行う。前記Znで構成された皮膜の厚みが50〜100μmとなるように当該溶射は行った。
【0042】
Ni−Pメッキ済みの前記パーマロイの溶射は、9MBプラズマ溶射ガン(Oerlikon Metco)を用いたプラズマ溶射によって行った。該プラズマ溶射は、電流500A、電圧65V、出力32.5kWとし、雰囲気ガスとしてAr及びH
2の混合ガスを用いた条件下で行った。前記パーマロイから構成された皮膜の厚みが、前記Znの皮膜の厚みに加えて200μm増えるように、当該溶射を行った。
【0043】
図17はNi−Pメッキ済みのパーマロイ粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像であり、
図18(A)乃至(F)は
図17に示す皮膜のC,O,P,Fe、Ni及びZnの分布状態を示すEDX画像である。
【0044】
図19(A)は
図17に示す皮膜断面と同一のSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像であり、
図20(A)は
図17に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図19とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像であり、
図21(A)は
図17に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図19及び
図20とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【0045】
図22はNi−Pメッキ済みのパーマロイ粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。ちなみに、該測定値はKEC法により測定したものである。同図中の上側の線a
0が測定限界値であり、下側の線a
3が実測値であり、在来のシート状低周波磁気シールド材と概ね同等のシールド効果が確認された。
【0046】
[実施例4]
本実施例は、表面にNi−Pメッキをしていない状態の前記パーマロイ粉末を溶射材として用いること以外、実施例3と同一の条件とした。
図23はNi−Pメッキをしていないパーマロイの粒子の一例を示すSEM画像であり、
図24(A)乃至(F)はNi−PメッキをしていないパーマロイをEDX分析したC,O,Si,S,Fe及びNiの分布状態を点で示す画像である。
【0047】
図25はNi−Pメッキをしていないパーマロイ粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像であり、
図26(A)乃至(D)は
図25に示す皮膜のC,O,Fe及びNiの分布状態を示すEDX画像である。
【0048】
図27(A)は
図25に示す皮膜断面と同一のSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像であり、
図28(A)は
図25に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図27とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。これら2つの図面からは略同一の結果が確認された。
【0049】
図29はNi−Pメッキをしていないパーマロイ粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。ちなみに、該測定値はKEC法により測定したものである。同図中の上側の線a
0が測定限界値であり、下側の線a
4が実測値であり、在来のシート状低周波磁気シールド材と概ね同等のシールド効果が確認された。すなわち、変質防止処理や還元・緻密化熱処理を行わなくても、適切な溶射材を選択し、適切に処理すれば、十分なシールド効果が確保できることが確認された。
【0050】
[実施例5]
本例では、エプソンアトミックス株式会社製の鉄基アモルファス系(軟磁性材料)であって且つ150μm以下の粒径を有する粉末を溶射材として用いた。該鉄基アモルファス系の組成は表4に示す通りである。また、溶射に伴う酸化や熱変質等によって軟磁性が損なわれることを防止するため、前記パーマロイの表面にNi−Pメッキを施した。
【0052】
図30はNi−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系の粒子の一例を示すSEM画像であり、
図31(A)乃至(F)はNi−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系の粒子をEDX分析したC,O,Si,P,Fe及びNiの分布状態を点で示す画像である。
【0053】
前記鉄基アモルファスの溶射は、9MBプラズマ溶射ガン(Oerlikon Metco)を用いたプラズマ溶射によって行った。該プラズマ溶射は、電流500A、電圧65V、出力32.5kWとし、雰囲気ガスとしてAr及びH
2の混合ガスを用いた条件下で行った。前記鉄基アモルファスから構成された皮膜の厚みが200μmになるように、当該溶射を行う。
【0054】
図32はNi−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系粉末をプラズマ溶射して成膜した皮膜のSEM像であり、
図33(A)乃至(H)は
図32に示す皮膜のC,O,Si,P,Cr,Fe、Ni及びAlの分布状態を示すEDX画像である。
【0055】
図34(A)は
図32に示す皮膜断面と同一のSEM像の所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像であり、
図35(A)は
図32に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図34とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像であり、
図36(A)は
図32に示す皮膜断面と同一のSEM像の
図34及び
図35とは異なる所定の分析位置を示し、(B)は(A)に示す分析位置に対応したEDX画像である。
【0056】
図37はNi−Pメッキ済みの鉄基アモルファス系粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。ちなみに、該測定値はKEC法により測定したものである。同図中の上側の線a
0が測定限界値であり、下側の線a
5が実測値であり、在来のシート状低周波磁気シールド材と概ね同等のシールド効果が確認された。
【0057】
[実施例6]
本実施例は、表面にNi−Pメッキをしていない状態の前記鉄基アモルファス系粉末を溶射材として用いること以外、実施例5と同一の条件とした。
【0058】
図38はNi−Pメッキをしていない鉄基アモルファス系の粒子の一例を示すSEM画像であり、
図39(A)乃至(E)はNi−Pメッキをしていない鉄基アモルファス系をEDX分析したC,Al,Si,Cr及びFeの分布状態を点で示す画像である。
【0059】
図40はNi−Pメッキをしない鉄基アモルファス系粉末をプラズマ溶射したものと測定限界値との低周波磁気の磁気シールド性の測定値を比較したグラフである。ちなみに、該測定値はKEC法により測定したものである。同図中の上側の線a
0が測定限界値であり、下側の線a
6が実測値であり、在来のシート状低周波磁気シールド材と概ね同等のシールド効果が確認された。すなわち、変質防止処理や還元・緻密化熱処理を行わなくても、適切な溶射材を選択し、適切に処理すれば、十分なシールド効果が得られることが、ここでも確認された。