【解決手段】半導体装置は、半導体素子及びパッケージを備える。パッケージは、半導体素子を搭載する領域を含む導電性の主面を有するベース部材と、半導体素子を搭載する領域を囲む誘電体の側壁と、該領域を間に挟む側壁の一対の部分上に設けられた第1の導電膜と、一対の部分のうち一方の部分上の第1の導電膜に導電接合された導電性の第1リードと、一対の部分のうち他方の部分上の第1の導電膜に導電接合された導電性の第2リードとを有する。半導体素子は、一対の部分それぞれに設けられた第1の導電膜と電気的に接続されている。側壁はベース部材と対向する面に凹みを有し、一対の部分のうち少なくとも一方の部分における第1の導電膜下の側壁とベース部材との間に、凹みによる空隙が存在する。
前記側壁の延在方向と交差する方向における前記空隙の幅は、該方向における前記側壁の幅の半分以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記凹みが形成された部位における前記側壁の厚さは、他の部位における前記側壁の厚さの30%以上である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記側壁の延在方向における前記空隙の幅が該方向における前記第1の導電膜の幅よりも長く、前記主面の法線方向から見て、前記側壁の延在方向における前記第1の導電膜の両端から前記空隙がはみ出している、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の半導体装置は、半導体素子と、半導体素子を収容するパッケージとを備える。パッケージは、半導体素子を搭載する領域を含む導電性の主面を有するベース部材と、ベース部材の主面上に設けられ、半導体素子を搭載する領域を囲む誘電体の側壁と、該領域を間に挟む側壁の一対の部分上それぞれに設けられた第1の導電膜と、一対の部分のうち一方の部分上の第1の導電膜に導電接合された導電性の第1リードと、一対の部分のうち他方の部分上の第1の導電膜に導電接合された導電性の第2リードとを有する。半導体素子は、一対の部分それぞれに設けられた第1の導電膜と電気的に接続されている。側壁はベース部材と対向する面に凹みを有し、一対の部分のうち少なくとも一方の部分における第1の導電膜下の側壁とベース部材との間に、凹みによる空隙が存在する。
【0012】
この半導体装置では、側壁が、ベース部材と対向する面に凹みを有する。そして、第1の導電膜下の側壁とベース部材との間に、凹みによる空隙が存在する。これにより、ベース部材の主面と電気的に接続された第2の導電膜を、この凹みの内面に設けることが可能になる。そして、そのような第2の導電膜が設けられた場合、当該部分におけるMSLの誘電体厚さが他の部分と比較して薄くなり、MSLの静電容量が大きくなる。その結果、電気長を長くすることができる。すなわち、パッケージサイズに依らずパッケージのMSLの電気長をより長くすることができ、配線基板を含めたMSL全体の電気長の調整を容易にできる。また、このような第2の導電膜を凹みの内面に設けない場合、空隙(空気)の誘電率は側壁の誘電率よりも小さいので、当該部分におけるMSLの静電容量が他の部分と比較して小さくなる。その結果、電気長を短くすることができる。すなわち、パッケージサイズに依らずパッケージのMSLの電気長をより短くすることができ、配線基板を含めたMSL全体の電気長の調整を容易にできる。
【0013】
上記の半導体装置において、凹みの内面に第2の導電膜が設けられており、第2の導電膜はベース部材の主面と電気的に接続されてもよい。この場合、上述したように、空隙が存在する部分におけるMSLの誘電体厚さが他の部分と比較して薄くなり、MSLの静電容量が大きくなって、電気長を長くすることができる。すなわち、パッケージサイズに依らずパッケージのMSLの電気長をより長くすることができ、配線基板を含めたMSL全体の電気長の調整を容易にできる。また、この場合、第1の導電膜、側壁、及びベース部材の主面がMSLを構成し、主面の法線方向において空隙と重なる部位における当該MSLの特性インピーダンスは、他の部位における当該MSLの特性インピーダンスに対して少なくとも10%小さくてもよい。
【0014】
上記の半導体装置において、凹みの内面に導電膜が設けられなくてもよい。この場合、上述したように、空隙(空気)の誘電率は側壁の誘電率よりも小さいので、空隙が存在する部分におけるMSLの静電容量が他の部分と比較して小さくなり、電気長を短くすることができる。すなわち、パッケージサイズに依らずパッケージのMSLの電気長をより短くすることができ、配線基板を含めたMSL全体の電気長の調整を容易にできる。また、この場合、第1の導電膜、側壁、及びベース部材の主面がMSLを構成し、主面の法線方向において空隙と重なる部位における当該MSLの特性インピーダンスは、他の部位における当該MSLの特性インピーダンスに対して少なくとも10%大きくてもよい。
【0015】
上記の半導体装置において、側壁の延在方向と交差する方向における空隙の幅は、該方向における側壁の幅の半分以上であってもよい。このように、側壁の幅に占める空隙の割合を比較的大きく設定することにより、MSLの電気長の変化量が大きくなるので、電気長の調整幅を大きくすることができる。
【0016】
上記の半導体装置において、側壁の延在方向と交差する方向における空隙の両端のうち少なくとも一方が閉じていてもよい。この場合、空隙を設けたことによる側壁の機械的強度の低下を抑制することができる。また、パッケージの封止状態を維持することができる。
【0017】
上記の半導体装置において、凹みが形成された部位における側壁の厚さは、他の部位における側壁の厚さの30%以上であってもよい。この場合、空隙を設けたことによる側壁の機械的強度の低下を抑制することができる。
【0018】
上記の半導体装置において、側壁の延在方向における空隙の幅が該方向における第1の導電膜の幅よりも長く、主面の法線方向から見て、側壁の延在方向における第1の導電膜の両端から空隙がはみ出してもよい。この場合、第1の導電膜の全幅にわたってMSLの信号伝達特性を均等にし、信号波形等への影響を抑制することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体装置1Aの構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された半導体装置1Aの平面図である。
図3は、
図2に示すIII−III線に沿った半導体装置1Aの断面図である。本実施形態の半導体装置1Aは、例えば2.11〜2.17GHzといった高周波で駆動するトランジスタ装置である。
図1〜
図3に示すように、本実施形態の半導体装置1Aは、半導体素子としてのトランジスタ31と、整合回路32と、トランジスタ31及び整合回路32を収容するパッケージ3とを備える。なお、
図1〜
図3において、パッケージ3の蓋部(キャップ)の図示を省略している。
【0021】
パッケージ3は、ベース部材5、側壁10、導電膜(第1の導電膜)11及び12、導電膜(第2の導電膜)14、入力リード(第1リード)21、並びに出力リード(第2リード)22を有する。
【0022】
ベース部材5は、導電性(例えば金属製)の平坦な主面5aを有する板状の部材である。主面5aは、トランジスタ31及び整合回路32を搭載する領域を含んでおり、典型的には基準電位(GND電位)に規定される。ベース部材5は、例えば銅、銅とモリブデンの合金、銅とタングステンの合金、あるいは、銅板、モリブデン板、タングステン板、銅とモリブデンの合金板、銅とタングステンの合金板による積層材から成る。一実施例では、ベース部材5は、2枚の銅板の間に銅およびモリブデンの合金板が挟まれた構造を有する。ベース部材5の基材の表面には、ニッケルクロム(ニクロム、NiCr)−金、ニッケル(Ni)−金、ニッケル−パラジウム−金、銀若しくはニッケル、又は、ニッケル−パラジウム等のメッキが施されている。金、銀及びパラジウムがメッキ材であり、NiCr及びNi等がシード材である。メッキ材のみの場合よりもメッキ材及びシード材を含む場合の方が密着性を高めることができる。ベース部材5の厚さは、例えば、0.5〜1.5mmである。ベース部材5の平面形状は、例えば主面5aに沿った方向D2を長手方向とする長方形である。
【0023】
側壁10は、誘電体から成る枠状の部材である。誘電体は例えばセラミック(一例ではアルミナ)である。側壁10は、ベース部材5の主面5a上に設けられ、トランジスタ31及び整合回路32を搭載する領域を囲んでいる。より詳細には、側壁10は空洞(キャビティ)10aを有しており、該空洞10a内にトランジスタ31及び整合回路32が配置されている。空洞10aの平面形状は、例えば四隅が丸められた長方形である。空洞10aは、主面5aに沿っており方向D2と交差(例えば直交)する方向D1において、入力リード21寄りに形成されている。側壁10の厚さは例えば0.2mm以上2mm以下であり、一実施例では0.508mmである。
【0024】
図3に示すように、側壁10は、ベース部材5の主面5aと対向する下面10bを有する。導電膜14は、下面10bの全面に成膜されており、下面10bに固着している。導電膜14は、例えば金属膜(具体的には、チタンタングステン及びニッケルクロムなどの合金やCu膜上にAuまたはNiのメッキを施したもの)である。導電膜14は、導電性の接合材を介してベース部材5の主面5aに接合されている。接合材は、例えば焼結型金属ペーストである。焼結型金属ペーストは、従来より知られている銀ペーストに含有される銀フィラーの粒子径よりも格段に小さい粒子径を有する銀フィラー及び溶剤からなる銀ペーストである。
【0025】
側壁10は、下面10bとは反対側の上面10cを有する。導電膜11及び12は、上面10cに成膜されており、上面10cに固着している。導電膜11,12は、例えば金属膜(具体的には、タングステン及びCu膜上にAuまたはNiのメッキを施したもの)である。なお、理解の容易の為、
図2における導電膜11及び12の存在範囲をハッチングにより示している。側壁10は、トランジスタ31及び整合回路32を搭載する主面5aの領域を間に挟む(言い換えると空洞10aを間に挟む)一対の部分101,102を含んでいる(
図2,
図3を参照)。部分101,102は、それぞれ方向D2に沿って延在している。導電膜11は、部分101上に設けられており、方向D1における部分101の一端から他端にわたって延びている。導電膜12は、部分102上に設けられており、方向D1における部分102の一端から他端にわたって延びている。
【0026】
空洞10aは部分101寄りに形成されているため、方向D1における部分101の幅は、同方向における部分102の幅よりも小さい。従って、方向D1における導電膜11の長さは、同方向における導電膜12の長さよりも短い。すなわち、導電膜12は、外側部分12a及び内側部分12bを含む。外側部分12aは、導電膜11と同じ幅及び長さを有し、部分102の外縁側に位置する。内側部分12bは、外側部分12aに対して部分102の内縁側(空洞10a側)に位置する。方向D1における内側部分12bの長さは、同方向における外側部分12aの長さよりも長い。また、方向D2における内側部分12bの幅Wbは、同方向における外側部分12aの幅よりも狭い。内側部分12bは、トランスミッションライン(Transmission Line:TRL)と呼ばれる。
【0027】
図2及び
図3に示すように、側壁10の部分102の下面10bには、凹み103が形成されている。凹み103の断面形状は長方形または正方形であり、主面5aと対向する平坦な底面と、該底面を囲む平坦な側壁とを有する。この凹み103により、側壁10とベース部材5の主面5aとの間には、空隙104が存在している。空隙104は、主面5aの法線方向から見て導電膜12と重なる位置に設けられ、本実施形態では内側部分12bと重なる位置に設けられている。一例では、方向D1における空隙104の幅(すなわち凹み103の幅)は、同方向における部分102の幅の半分以上であってもよい。
【0028】
また、本実施形態では、方向D1における空隙104の両端が閉じている。言い換えると、方向D1における空隙104の空洞10a側の一端は空洞10aに通じておらず、該一端と空洞10aとの間には側壁10が介在している。また、方向D1における空隙104の空洞10aとは反対側の他端はパッケージ3の外部空間に通じておらず、該他端とパッケージ3の外部空間との間には側壁10が介在している。
【0029】
凹み103が形成された部位における側壁10の厚さTaは、他の部位における側壁10の厚さTbの30%以上であってよく、或いは50%以上であってよい。空隙104を設けたことによる側壁10の機械的強度の低下を抑制するためである。但し、側壁10の機械的強度が他の手段等により確保されるのであれば、凹み103が形成された部位における側壁10の厚さは、他の部位における側壁10の厚さの30%より小さくてもよい。また、
図2に示すように、方向D2における空隙104の幅Waは、同方向における導電膜12の幅Wbよりも長い。そして、空隙104は、主面5aの法線方向から見て、方向D2における導電膜12の両端からはみ出している。
【0030】
凹み103の内面(底面及び側壁)には、導電膜14の部分14aが設けられている。部分14aは、凹み103の内面に接し、該内面に固着している。上述したように、導電膜14は導電性の接合材を介して主面5aに接合されている。従って、凹み103の内面に設けられる部分14aもまた、主面5aと電気的に接続されている。なお、部分14aの形成方法としては、蒸着、スパッタ、パターン印刷またはめっき等が挙げられる。
【0031】
導電膜11と、誘電体である部分101と、ベース部材5の主面5aとは、入力側のMSLを構成する。入力側のMSLの電気長及び特性インピーダンスは、方向D1における導電膜11の長さ、方向D2における導電膜11の幅、並びに部分101の誘電率及び厚さによって定まる。同様に、導電膜12と、誘電体である部分102と、ベース部材5の主面5aとは、出力側のMSLを構成する。出力側のMSLの電気長及び特性インピーダンスは、方向D1における導電膜12の長さ、方向D2における導電膜12の幅、並びに部分102の誘電率及び厚さによって定まる。但し、上記のように部分102と主面5aとの間には凹み103が形成されており、凹み103の内面には導電膜14の部分14aが形成されているので、凹み103が形成された部位では部分102の厚みが薄くなり、静電容量が増加する。従って、当該部位では単位長さ当たりのMSLの電気長が他の部分よりも長くなり、特性インピーダンスは低下する。本実施形態では、主面5aの法線方向において空隙104と重なる部位におけるMSLの特性インピーダンスは、他の部位におけるMSLの特性インピーダンスに対して少なくとも10%小さい。
【0032】
入力リード21および出力リード22は、側壁10から外方に突出する導電性(例えば金属製)の板状の部材であって、一例では銅、銅合金、または鉄合金の金属薄板である。方向D1に沿った入力リード21の一端部は、部分101上に配置され、導電性の接合材を介して導電膜11に導電接合されている。方向D1に沿った出力リード22の一端部は、部分102上に配置され、導電性の接合材を介して導電膜12の外側部分12aに導電接合されている。導電性の接合材は、例えばAg−Cu系のロウ材である。
【0033】
トランジスタ31及び整合回路32は、パッケージ3に収容され、ベース部材5の主面5a上の側壁10に囲まれる領域に搭載されている。パッケージ3の側壁10に蓋部が被せられることにより半導体装置1Aが使用可能となる。なお、パッケージ3の内部空間が窒素置換された状態で側壁10に蓋部を被せ、ハーメチックシールをしてもよい。
【0034】
整合回路32及びトランジスタ31は、側壁10の部分101からこの順で設けられる。トランジスタ31は、例えば、Si、SiC、GaN、GaAs又はダイヤモンド等の基板を備えるトランジスタであり、当該基板の裏面には金属メッキが施されている。一例では、トランジスタ31はGaN−HEMTである。整合回路32は、入力リード21とトランジスタ31との間のインピーダンスのマッチングを行う。整合回路32は、例えば、セラミック基板の上面及び下面のそれぞれに電極を設けた平行平板型キャパシタである。或いは、整合回路32は、Si−MOS構造により形成されたキャパシタであってもよい。
【0035】
整合回路32及びトランジスタ31は、金属メッキ(例えば金メッキ)が施された裏面を有し、導電性の接合材(例えば焼結型金属ペースト)を介して、ベース部材5の主面5aに固定されている。入力リード21(及び導電膜11)と整合回路32とは、複数のボンディングワイヤ41により電気的に接続されている。整合回路32とトランジスタ31とは、複数のボンディングワイヤ42により電気的に接続されている。すなわち、トランジスタ31は、ボンディングワイヤ41、整合回路32、及びボンディングワイヤ42を介して、入力リード21及び導電膜11と電気的に接続されている。トランジスタ31と導電膜12とは、複数のボンディングワイヤ43により電気的に接続されている。
【0036】
なお、上記の例では整合回路32及びトランジスタ31が側壁10の部分101からこの順で設けられるが、これに限定されるものではない。例えば、部分101からトランジスタ及び整合回路の順で設けられてもよい。その場合、整合回路は出力リード22とトランジスタ31との間のインピーダンスのマッチングを行う。或いは、トランジスタの両側に整合回路が設けられてもよい。この場合、一方の整合回路は入力リード21とトランジスタ31との間のインピーダンスのマッチングを行い、他方の整合回路は出力リード22とトランジスタ31との間のインピーダンスのマッチングを行う。
【0037】
以上の構成を備える本実施形態の半導体装置1Aによって得られる作用効果について説明する。この半導体装置1Aでは、側壁10が、ベース部材5と対向する下面10bに凹み103を有する。そして、導電膜12下の側壁10とベース部材5との間に、凹み103による空隙104が存在する。これにより、ベース部材5の主面5aと電気的に接続された導電膜14の部分14aを、この凹み103の内面に設けることが可能になる。そして、そのような導電膜14の部分14aが設けられた場合、側壁10の当該部位におけるMSLの誘電体厚さが他の部分と比較して薄くなり、MSLの静電容量が大きくなる。その結果、電気長を長くすることができる。すなわち、パッケージ3のサイズに依らずパッケージ3のMSLの電気長をより長くすることができ、半導体装置1Aが実装される配線基板を含めたMSL全体の電気長の調整を容易にできる。
【0038】
特に、側壁10がセラミック製であり、実装基板を構成する誘電体基板が樹脂製(例えばガラスエポキシ)である場合、誘電体基板と比べて側壁10の誘電率が大きい。従って、上記の効果をより顕著に奏することができる。
【0039】
図4の(a)および(b)は、本実施形態による効果の一例を説明するための図である。
図4の(a)は側壁10に凹み103が設けられない場合を示し、
図4の(b)は側壁10に凹み103が設けられている場合を示す。パッケージ3を配線基板201上に実装する際、パッケージ3の外部において、配線基板201を構成する誘電体基板(例えばガラスエポキシ)と、誘電体基板の表面に設けられた配線パターン203と、誘電体基板の裏面に設けられた配線パターン(不図示)とによって、MSLが構成される。そして、このMSLとキャパシタ205とによって外部整合回路が構成される。
【0040】
配線基板201を構成する誘電体基板はパッケージ3の側壁10よりも格段に厚いので、配線基板201のMSLの静電容量は比較的小さい。従って、配線基板201のMSLはパッケージ3のMSLよりも長くなる傾向がある。例えば、比誘電率が4、厚さが0.5mm、線路導体厚が35μmである配線基板201上において、周波数2GHzに対応するλ/4長の伝送線の長さは21.6mmにもなる。配線基板201のMSLが長くなると、
図4の(a)に示すように、配線基板201において外部整合回路(配線パターン203及びキャパシタ205)に必要な面積が大きくなり、ひいては配線基板201を含む装置全体の大型化につながる。これに対し、本実施形態では、上述したようにパッケージ3のMSLの電気長をより長くすることができ、その分だけ、配線基板201のMSLを短くすることができる。故に、
図4の(b)に示すように、配線基板201において外部整合回路(配線パターン203及びキャパシタ205)に必要な面積が小さくなり、配線基板201を含む装置全体の小型化に寄与できる。なお、このような構成は、パッケージ3の寸法が或る周波数帯(例えば1GHzから2GHz)付近に適合している場合に、該周波数帯よりも短い(波長が長い)周波数帯(例えば700MHzから1GHz)において該パッケージ3を用いる場合に特に有効である。
【0041】
本実施形態のように、導電膜12、側壁10、及びベース部材5の主面5aがMSLを構成し、主面5aの法線方向において空隙104と重なる部位における当該MSLの特性インピーダンスは、他の部位における当該MSLの特性インピーダンスに対して少なくとも10%小さくてもよい。これにより、部品によるインピーダンス整合ではなく、MSLのみでのインピーダンス整合が可能となる。
【0042】
本実施形態のように、側壁10の部分102の延在方向と交差する方向D1における空隙104の幅は、該方向D1における部分102の幅の半分以上であってもよい。このように、部分102の幅に占める空隙104の割合を比較的大きく設定することにより、MSLの電気長の変化量が大きくなるので、電気長の調整幅を大きくすることができる。
【0043】
本実施形態のように、側壁10の部分102の延在方向と交差する方向D1における空隙104の両端が閉じていてもよい。この場合、空隙104を設けたことによる部分102の機械的強度の低下を抑制することができる。また、パッケージ3の封止状態を好適に維持することができる。なお、方向D1における空隙104の両端のうち一方のみが閉じている場合であっても、同様の効果を奏することができる。
【0044】
本実施形態のように、凹み103が形成された部位における側壁10の部分102の厚さは、他の部位における部分102の厚さの30%以上であってもよい。この場合、空隙104を設けたことによる部分102の機械的強度の低下を抑制することができる。
【0045】
本実施形態のように、部分102の延在方向D2における空隙104の幅Waが該方向D2における導電膜12の幅Wbよりも長く、主面5aの法線方向から見て、部分102の延在方向D2における導電膜12の両端から空隙104がはみ出してもよい。この場合、導電膜12の全幅にわたってMSLの信号伝達特性を均等にし、信号波形等への影響を抑制することができる。
【0046】
(変形例)
図5は、上記実施形態の一変形例に係る半導体装置1Bの断面図であって、
図2のIII−III線に対応する断面を示している。本変形例では、上記実施形態と異なり、凹み103の内面(底面及び側面)に導電膜14が設けられていない。言い換えると、凹み103の底面は、空気のみを介してベース部材5の主面5aと対向している。
【0047】
本変形例のように、凹み103の内面に導電膜14が設けられていない場合、導電膜12と、誘電体である部分102と、空隙104内の空気と、ベース部材5の主面5aとが、出力側のMSLを構成する。空気の誘電率は側壁10(例えばセラミック)の誘電率よりも小さいので、空隙104が存在する部位におけるMSLの静電容量は、他の部分の静電容量と比較して小さくなる。従って、当該部位では単位長さ当たりのMSLの電気長が他の部分よりも短くなる。すなわち、本変形例によれば、パッケージ3のサイズに依らずパッケージ3のMSLの電気長をより短くすることができ、配線基板を含めたMSL全体の電気長の調整を容易にできる。
【0048】
本変形例の効果についてより具体的に説明する。パッケージ内の電気長が長過ぎると、最適なインピーダンスを超えて位相が回ってしまう(行き過ぎてしまう)ことがある。そのような場合、配線基板201において半波長分だけ位相を余分に回転させる必要が生じ、配線基板201のMSLの電気長がさらに長くなる(
図4の(a)の状態)。これに対し、本変形例では、上述したようにパッケージ3のMSLの電気長をより短くすることができる。従って、最適なインピーダンスを超えて位相が回ってしまう(行き過ぎてしまう)ことを抑制し、配線基板201において位相を余分に回転させる必要性を低減できる。故に、配線基板201のMSLの電気長を短くすることが可能になる(
図4の(b))。これにより、配線基板201において外部整合回路(配線パターン203及びキャパシタ205)に必要な面積を小さくし、ひいては配線基板201を含む装置全体の小型化に寄与できる。更には、余分に回転させていた位相分だけ、MSLの伝送損失を低減することができる。なお、このような構成は、パッケージ3の寸法が或る周波数帯(例えば1GHzから2GHz)付近に適合している場合に、該周波数帯よりも長い(波長が短い)周波数帯(例えば2GHzから5GHz)において該パッケージ3を用いる場合に特に有効である。
【0049】
また、本変形例では、空隙104が存在する部位(主面5aの法線方向において空隙104と重なる部位)における特性インピーダンスは増加する。当該部位におけるMSLの特性インピーダンスは、他の部位におけるMSLの特性インピーダンスに対して少なくとも10%大きくてもよい。これにより、部品によるインピーダンス整合ではなく、MSLのみでのインピーダンス整合が可能となる。
【0050】
(第1実施例)
図6は、上記実施形態に係る半導体装置1A、及び上記変形例に係る半導体装置1Bについて、導電膜12の内側部分12b(TRL)における反射特性(S
11)を見積もった結果を示すグラフ(ポーラチャート)である。
図6において、角度位置は位相を表し、径方向位置は大きさ(振幅)を表す。図中において、グラフG11は空隙104が設けられない比較例の半導体装置の特性を示し、グラフG12は上記実施形態の(空隙104内に導電膜14が設けられた)半導体装置1Aの特性を示し、グラフG13は上記変形例の(空隙104内に導電膜14が設けられない)半導体装置1Bの特性を示す。周波数は100MHz〜5.1GHzである。グラフの右端(100MHz)から出発して、それぞれのグラフG11〜G13の回転量が電気長に相当する。これらのグラフG11〜G13から明らかなように、空隙104内に導電膜14が設けられた半導体装置1Aにおいては、空隙104が設けられない場合と比べて電気長が顕著に長くなり、空隙104内に導電膜14が設けられない半導体装置1Bにおいては、空隙104が設けられない場合と比べて電気長が顕著に短くなる。なお、これらの電気長は、空隙104の高さ(凹み103の深さ)、及び方向D1における空隙104の幅を変更することによって調整することが可能である。
【0051】
(第2実施例)
図7及び
図8は、上記実施形態の半導体装置1Aを配線基板上に実装した装置(
図4の(b)を参照)、及び空隙104が設けられない比較例の半導体装置を配線基板上に実装した装置(
図4の(a)を参照)のそれぞれについて、周波数900MHzでシミュレーションを行った実施例を示すグラフである。
図7は伝送特性(S
21)の周波数依存性を示す。
図8は、反射特性(S
11)を示すスミスチャートである。
図8において、周波数は400MHz〜1.4GHzである。これらの図において、グラフG21は空隙104が設けられない比較例の半導体装置の特性を示し、グラフG22は上記実施形態の(空隙104内に導電膜14が設けられた)半導体装置1Aの特性を示す。これらの図を参照すると、上記実施形態の半導体装置1Aにおいて、配線基板のMSLを短くしたにもかかわらず、伝送特性(S
21)及び反射特性(S
11)が比較例と殆ど変わらないことがわかる。
【0052】
(第3実施例)
図9及び
図10は、上記変形例の半導体装置1Bを配線基板上に実装した装置、及び空隙104が設けられない比較例の半導体装置を配線基板上に実装した装置のそれぞれについて、周波数4.7GHzでシミュレーションを行った実施例を示すグラフである。
図9は伝送特性(S
21)の周波数依存性を示す。
図10は、反射特性(S
11)を示すスミスチャートである。
図10において、周波数は3GHzから6GHzである。これらの図において、グラフG31は空隙104が設けられない比較例の半導体装置の特性を示し、グラフG32は上記変形例の(空隙104内に導電膜14が設けられない)半導体装置1Bの特性を示す。なお、変形例の半導体装置(グラフG31)では、配線パターン203(
図4)の長さを比較例(グラフG32)の1/3とした。これらの図を参照すると、上記変形例の半導体装置1Bにおいて、配線基板のMSLを短くしたにもかかわらず、伝送特性(S
21)及び反射特性(S
11)が比較例と殆ど変わらないことがわかる。
【0053】
本開示による半導体装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び変形例では側壁10が単一の空洞10aを画成しているが、側壁は、複数(例えば2つ)の空洞を画成してもよい。また、上記実施形態では半導体素子としてトランジスタ31を例示したが、本開示による半導体装置はこれに限らず様々な半導体素子を備えてもよい。
【0054】
また、上記実施形態及び変形例では、側壁10のうち出力側に位置する部分102に凹み103を設けているが、入力側に位置する部分101に凹み103を設けてもよく、部分101,102の双方に凹み103を設けてもよい。すなわち、側壁10の一対の部分101,102のうち少なくとも一方における、導電膜11(または12)の下方の側壁10とベース部材5との間に、凹み103による空隙104が存在してもよい。これにより、トランジスタ31の入力側においても、MSLの電気長をより長く(または短く)することができ、電気長の調整を容易にできる。