【課題】高アスペクト比を有しても、共振点における抵抗損失及びスプリアスノイズの性能を改善させるとともに、Q性能も向上させることができるバルク音響共振器を提供する。
【解決手段】基板110と、基板の上部に配置される下部電極150と、下部電極の少なくとも一部を覆う圧電層160と、圧電層の少なくとも一部を覆う上部電極170と、を含むバルク音響共振器100であって、下部電極、圧電層及び上部電極がすべて重なるように配置される活性領域を上部から見たとき、活性領域の重心と、活性領域のアスペクト比を定義する長方形の中心が一致する。活性領域は、上記アスペクト比を定義する長方形の中心を通過する少なくとも一つの軸に対して対称な多角形状を有し、活性領域のアスペクト比は2以上10以下である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態によるバルク音響共振器を示す概略平面図である。
【
図3】
図1のII−II'線に沿った断面図である。
【
図4】非対称の多角形のアスペクト比及び重心を説明するための説明図である。
【
図5】非対称の多角形のアスペクト比を定義するための長方形を説明するための説明図である。
【
図6】アスペクト比に応じたバルク音響共振器の性能を示すグラフである。
【
図7】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が1である場合を示す概略平面図である。
【
図8】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が1.5である場合を示す概略平面図である。
【
図9】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が2.0である場合を示す概略平面図である。
【
図10】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が2.5である場合を示す概略平面図である。
【
図11】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が3.0である場合を示す概略平面図である。
【
図12】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が3.5である場合を示す概略平面図である。
【
図13】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有する共振器を示す概略平面図である。
【
図14】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有する共振器を示す概略平面図である。
【
図15】共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有する共振器を示す概略平面図である。
【
図16】
図13〜
図15の共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)を示す周波数に応じたS21のグラフである。
【
図17】軸対称菱形の夾角に応じた各辺の法線ベクトルの重なり面積の割合を示すグラフである。
【
図18】共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が1である場合を示す概略平面図である。
【
図19】共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が1.5である場合を示す概略平面図である。
【
図20】共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が2.0である場合を示す概略平面図である。
【
図21】共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が2.5である場合を示す概略平面図である。
【
図22】共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が3.0である場合を示す概略平面図である。
【
図23】共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が3.5である場合を示す概略平面図である。
【
図24】共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が1である場合を示す概略平面図である。
【
図25】共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が1.5である場合を示す概略平面図である。
【
図26】共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が2.0である場合を示す概略平面図である。
【
図27】共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が2.5である場合を示す概略平面図である。
【
図28】共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が3である場合を示す概略平面図である。
【
図29】共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が3.5である場合を示す概略平面図である。
【
図30】共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が2.4である共振器を示す概略平面図である。
【
図31】共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が3.8である共振器を示す概略平面図である。
【
図32】共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.1である共振器を示す概略平面図である。
【
図33】共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が12.4である共振器を示す概略平面図である。
【
図34】
図30〜
図33に示された共振器の周波数に応じたインピーダンス値を示すグラフである。
【
図35】
図30〜
図33に示された共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)を示す周波数に応じたS21のグラフである。
【
図36】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が2.4である共振器を示す概略平面図である。
【
図37】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が3.8である共振器を示す概略平面図である。
【
図38】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.1である共振器を示す概略平面図である。
【
図39】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が12.4である共振器を示す概略平面図である。
【
図40】
図36〜
図39に示された共振器の周波数に応じたインピーダンス値を示すグラフである。
【
図41】
図36〜
図39に示された共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)を示す周波数に応じたS21のグラフである。
【
図42】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が3.8である共振器を示す概略平面図である。
【
図43】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が4.8である共振器を示す概略平面図である。
【
図44】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.1である共振器を示す概略平面図である。
【
図45】共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.6である共振器を示す概略平面図である。
【
図46】
図42〜
図45に示された共振器の周波数に応じたインピーダンス値を示すグラフである。
【
図47】
図42〜
図45に示された共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)を示す周波数に応じたS21のグラフである。
【
図48】共振器の活性領域がX軸対称の多角形状を有し、活性領域の重心とアスペクト比を定義する長方形の中心がY軸方向に離隔される共振器を説明するための説明図である。
【
図49】活性領域の重心の離隔比による減衰性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0012】
図1は本発明の一実施形態によるバルク音響共振器を示す概略平面図であり、
図2は
図1のI−I'線に沿った断面図であり、
図3は
図1のII−II'線に沿った断面図である。
【0013】
図1〜
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるバルク音響共振器100は、一例として、基板110、犠牲層120、エッチング防止部130、下部電極150、圧電層160、上部電極170、挿入層180、パッシベーション層190、及び金属パッド195を含んで構成されることができる。
【0014】
基板110は、シリコン基板であることができる。例えば、基板110としては、シリコンウェハが用いられてもよく、SOI(Silicon On Insulator)型の基板が用いられてもよい。
【0015】
基板110の上面には、絶縁層112が形成されることができ、上部に配置される構成と基板110を電気的に隔離させることができる。尚、絶縁層112は、製造過程において、キャビティCを形成する場合、エッチングガスによって基板110がエッチングされることを防止する役割を果たす。
【0016】
この場合、絶縁層112は、二酸化ケイ素(SiO
2)、シリコンナイトライド(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、及び窒化アルミニウム(AlN)のうち少なくとも一つで形成されることができ、化学気相蒸着(Chemical vapor deposition)、RFマグネトロンスパッタリング(RF Magnetron Sputtering)、蒸発(Evaporation)のいずれかの工程を介して形成されることができる。
【0017】
犠牲層120は、絶縁層112上に形成され、犠牲層120の内側には、キャビティC及びエッチング防止部130が配置されることができる。キャビティCは、製造時に犠牲層120の一部を除去することによって形成される。このように、キャビティCが犠牲層120の内側に形成されるため、犠牲層120の上部に配置される下部電極150などは平らに形成されることができる。
【0018】
エッチング防止部130は、キャビティCの境界に沿って配置される。エッチング防止部130は、キャビティCの形成過程において、キャビティ領域を超えてエッチングが行われることを防止する。
【0019】
下部電極150は、一部分がキャビティCの上部に配置される。また、下部電極150は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0020】
下部電極150は、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、下部電極150は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridiym:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることもできる。
【0021】
圧電層160は、少なくともキャビティCの上部に配置される下部電極150を覆うように形成される。一方、圧電層160は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛ジルコニウムチタン酸化物(PZT;PbZrTiO)のいずれかで形成されることができる。特に、圧電層160が窒化アルミニウム(AlN)で構成される場合、圧電層160は、希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。さらに、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、及びニオビウム(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、圧電層160には、2価金属であるマグネシウム(Mg)も含まれることができる。
【0022】
一方、圧電層160は、平坦部Sに配置される圧電部162と、拡張部Eに配置される屈曲部164と、を含む。
【0023】
圧電部162は、下部電極150の上部面に直接積層される部分である。これにより、圧電部162は、下部電極150と上部電極170の間に介在され、下部電極150及び上部電極170とともに平らな形で形成される。
【0024】
屈曲部164は、圧電部162から外側に延長され、拡張部E内に位置する領域として定義することができる。
【0025】
屈曲部164は、後述する挿入層180上に配置され、挿入層180の形状に沿って隆起する形で形成される。これにより、圧電層160は、圧電部162と屈曲部164の境界で屈曲され、屈曲部164は、挿入層180の厚さ及び形状に対応して隆起する。
【0026】
屈曲部164は、傾斜部164aと延長部164bに区分されることができる。
【0027】
傾斜部164aは、後述する挿入層180の傾斜面Lに沿って傾斜するように形成される部分を意味する。そして、延長部164bは、傾斜部164aから外側に延長される部分を意味する。
【0028】
傾斜部164aは、挿入層180の傾斜面Lと平行に形成され、傾斜部164aの傾斜角は、挿入層180の傾斜面Lの傾斜角θと同一に形成されることができる。
【0029】
上部電極170は、少なくともキャビティCの上部に配置される圧電層160を覆うように形成される。上部電極170は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。すなわち、下部電極150が入力電極として用いられる場合、上部電極170は、出力電極として用いられる。また、下部電極150が出力電極として用いられる場合、上部電極170は、入力電極として用いられることができる。
【0030】
上部電極170は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、上部電極170は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridiym:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることもできる。
【0031】
一方、活性領域とは、下部電極150、圧電層160、及び上部電極170がすべて重なって配置される領域のことである。
【0032】
そして、
図1に示すように、活性領域は、上部から見たとき、活性領域の重心と活性領域のアスペクト比を定義する長方形の中心が一致し、活性領域は、アスペクト比を定義する長方形の中心を通過する少なくとも一つの軸に対して対称な多角形状を有することができる。
【0033】
ここで、アスペクト比、及びアスペクト比を定義する長方形の定義についてより詳しく説明する。
【0034】
図4は非対称の多角形のアスペクト比及び重心を説明するための説明図である。
【0035】
図4を参照すると、多角形におけるアスペクト比は、多角形の3つ以上の頂点に接する長方形の短軸と長軸の比として定義する。
【0036】
すなわち、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)=h/bとする。
【0037】
還言すると、非対称の多角形の場合、
図4に示すように、3つの頂点に接する長方形を描くことができる。そして、
図4に示すように、アスペクト比が1に近い場合、多角形に接する長方形の中心(x、y)と多角形状の重心(x'、y')はほぼ一致するが、アスペクト比が大きくなるほど多角形に接する長方形の中心(x、y)と多角形状の重心(x'、y')は一致しなくなる。
【0038】
図5は非対称の多角形のアスペクト比を定義するための長方形を説明するための説明図である。
【0039】
図5に示すように、非対称の多角形の3つ以上の頂点に接する長方形は、同一の多角形の回転角に応じて様々な種類の長方形に示されることができる。一方、アスペクト比を定義するための長方形は、
図5に示されたいくつかの種類の長方形のうち長方形のアスペクト比が最大値を有する長方形として定義する。すなわち、回転角0°において多角形に接する長方形をアスペクト比を定義するための長方形として定義する。
【0040】
一方、アスペクト比は2以上10以下であることができる。すなわち、
図6に示すように、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)が増加するほど、ピーク挿入損失(Peak_IL)が改善されることが分かる。さらに、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)が増加するほど、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が改善されることが分かる。
【0041】
すなわち、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)が増加するほど、共振点における抵抗損失が減少する。一例として、アスペクト比が2よりも大きくなると、ピークの挿入損失(Peak_IL)が−0.06dB程度に改善され、アスペクト比が3よりも大きくなると、ピークの挿入損失(Peak_IL)が−0.05dB程度に改善されることが分かる。
【0042】
そして、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)が増加するほど、各辺で反射される共振モードによる高調波(Harmonics)モードの重なりが減少し、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が改善される。一例として、アスペクト比が2よりも大きくなると、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が0.08dB以下と小さくなり、アスペクト比が3よりも大きくなると、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が0.07dB以下と小さくなることが分かる。
【0043】
一方、一例として、活性領域が菱形状を有し、アスペクト比(Aspect Ratio、AR)が10超過では、菱形の夾角が非常に狭くなって、この間で高調波(Harmonics)モードの重なりが増加したり、又は共振駆動自体が円滑でない可能性がある。
【0044】
再び
図2及び
図3を参照すると、挿入層180は、下部電極150と圧電層160の間に配置される。挿入層180は、酸化ケイ素(SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)などの誘電体で形成されることができるが、圧電層160とは異なる材質で形成される。
【0045】
また、挿入層180は、少なくとも一部が圧電層160と下部電極150の間に配置される。一例として、挿入層180は、環状を有することができる。
【0046】
パッシベーション層190は、下部電極150及び上部電極170の一部分を除いた領域に形成される。一方、パッシベーション層190は、工程中に、上部電極170及び下部電極150が損傷することを防止する役割を果たす。
【0047】
一方、パッシベーション層190は、窒化シリコン(Si
3N
4)、酸化シリコン(SiO
2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0048】
金属パッド195は、下部電極150及び上部電極170の上記したパッシベーション層190が形成されない部分に形成される。一例として、金属パッド195は、金(Au)、金−スズ(Au−Sn)合金、銅(Cu)、銅−スズ(Cu−Sn)合金、及びアルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの材料からなることができる。例えば、アルミニウム合金は、アルミニウム−ゲルマニウム(Al−Ge)合金であることができる。
【0049】
上記したように、活性領域が軸対称の菱形状を有することから、共振駆動時のQ性能を向上させることができる。そして、活性領域が軸対称の菱形状を有することから、スプリアスノイズ(Spurious Noise)を減らすことができる。
【0050】
図7は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が1である場合を示す概略平面図であり、
図8は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が1.5である場合を示す概略平面図であり、
図9は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が2.0である場合を示す概略平面図であり、
図10は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が2.5である場合を示す概略平面図であり、
図11は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が3.0である場合を示す概略平面図であり、
図12は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有し、アスペクト比が3.5である場合を示す概略平面図である。
【0051】
図7〜
図12に示すように、上部から見たとき、共振器の活性領域が菱形状を有する場合には、菱形の重心がアスペクト比を定義する長方形の中心と一致することが分かる。
【0052】
図13〜
図15は共振器の活性領域が軸対称の菱形状を有する共振器を示す概略平面図である。
【0053】
一方、
図13に示された共振器(AR 1.0)は、菱形の夾角(θ)が90°、アスペクト比が1である場合である。この際、各辺の法線ベクトル同士の重なり面積(OA、Overlapping Area of Normal Vector on Each Side)は、菱形の全面積と同一の100%になる。
【0054】
そして、
図14に示された共振器(AR 1.7)は、菱形の夾角(θ)が60°、アスペクト比が1.7である場合である。この際、各辺の法線ベクトル同士の重なり面積(OA、Overlapping Area of Normal Vector on Each Side)は、菱形の全面積の50%になる。
【0055】
また、
図15に示された共振器(AR 3.8)は、菱形の夾角(θ)が26°、アスペクト比が3.8である場合である。この際、各辺の法線ベクトル同士の重なり面積(OA、 Overlapping Area of Normal Vector on Each Side)は、菱形の全面積の12%になる。
【0056】
かかる共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)は、
図16に示すように、AR 1.0である場合に最も大きく、AR 1.7である場合にはAR 1.0よりも減少し、AR 3.8である場合に最も小さくなる。
【0057】
つまり、菱形状におけるアスペクト比に応じて、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が変化する。アスペクト比が1.0に近い菱形は、向かい合う辺が平行になった状態で、各辺で反射される共振モードによる高調波モード(Harmonics mode)の重なりが100%発生するようになり、その結果、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が大きくなる。
【0058】
これに対し、アスペクト比が大きくなるほど、菱形の向かい合う辺に平行ではあるが、各辺における法線ベクトルが重なり面積(OA)を相対的に減少させることにより、各辺で反射される共振モードによる高調波モード(Harmonics mode)の重なりが減少する。結果として、アスペクト比が大きい軸対称の多角形構造では、かかる原理によってスプリアスノイズ(Spurious Noise)を減らすことができる。
【0059】
特に、軸対称の菱形状では、各辺の長さが同一であるため、
図17に示すように、各辺の法線ベクトルの重なり面積の割合は、菱形の夾角(θ)の値に応じて変化することが分かる。そして、スプリアスノイズ(Spurious Noise)を減らすための菱形の夾角(θ)は30°以下とすることが好ましい。
【0060】
一方、菱形の夾角(θ)が30°である場合、各辺の法線ベクトルの重なり面積の割合は13.4%であり、この際の軸対称の菱形のアスペクト比は3.7である。
【0062】
一方、
図13〜
図15に示された共振器のうちアスペクト比が3.8である
図15に示した共振器の場合、上記した表1に示すように、共振点における挿入損失(Insertion Loss)の性能が格段によくなることが分かる。これは、共振点における抵抗損失が小さくなったことを示すものである。ここで、ILは共振点でのS21サイズ(Magnitude)の最大値、Attn.は反共振点におけるS21サイズ(Magnitude)の最小値を意味する。
【0063】
図18は共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が1である場合を示す概略平面図であり、
図19は共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が1.5である場合を示す概略平面図であり、
図20は共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が2.0である場合を示す概略平面図であり、
図21は共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が2.5である場合を示す概略平面図であり、
図22は共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が3.0である場合を示す概略平面図であり、
図23は共振器の活性領域が軸対称の六角形状を有し、アスペクト比が3.5である場合を示す概略平面図である。
【0064】
図18〜
図23に示すように、上部から見たとき、共振器の活性領域が六角形状を有する場合には、六角形の重心がアスペクト比を定義する長方形の中心と一致することが分かる。
【0065】
このように、軸対称の六角形状では、高アスペクト比を用いても対称性が維持されて、共振駆動時のQ性能を向上させることができる。また、高アスペクト比の六角形状では、六角形の構成の上辺/下辺の追加による設計変数が追加されることから、設計自由度を高めることができ、共振点の抵抗をより低減させることができる。この場合、六角形の上辺/下辺は互いに平行ではあるものの、高アスペクト比の六角形になると、六角形の上辺/下辺の距離が遠くなって互いへの影響が減少し、スプリアスノイズ(Spurious Noise)の性能劣化を抑制することができる。
【0066】
図24は共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が1である場合を示す概略平面図であり、
図25は共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が1.5である場合を示す概略平面図であり、
図26は共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が2.0である場合を示す概略平面図であり、
図27は共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が2.5である場合を示す概略平面図であり、
図28は共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が3である場合を示す概略平面図であり、
図29は共振器の活性領域が軸対称の八角形状を有し、アスペクト比が3.5である場合を示す概略平面図である。
【0067】
図24〜
図29に示すように、上部から見たとき、共振器の活性領域が八角形状を有する場合には、八角形の重心がアスペクト比を定義する長方形の中心と一致することが分かる。
【0068】
このように、軸対称の八角形状では、高アスペクト比を用いても対称性が維持されて、共振駆動時のQ性能を向上させることができる。また、高アスペクト比の八角形状では、六角形の上辺/下辺のように、各辺の法線ベクトルが重なり領域をさらに減らすことができるため、スプリアスノイズ(Spurious Noise)の性能向上に有利である。
【0069】
図30は共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が2.4である共振器を示す概略平面図であり、
図31は共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が3.8である共振器を示す概略平面図であり、
図32は共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.1である共振器を示す概略平面図であり、
図33は共振器の活性領域が非対称の多角形状を有し、アスペクト比が12.4である共振器を示す概略平面図である。
【0070】
図30〜
図33に示された共振器の周波数に応じたインピーダンス値は、
図34に示されたグラフから確認できる。一方、
図30〜
図33に示された共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)は、
図35に示されたグラフから確認できる。
図35に示すように、アスペクト比が10以上である
図33に示された共振器において、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が多く劣化することが分かる。
【0071】
そして、下記表2に示すように、アスペクト比が大きくなるにつれて、共振点における抵抗損失が小さくなり、挿入損失(Insertion Loss)が改善されることが分かる。これに対し、kt
2性能及び減衰(Attenuation)の性能は劣化することが分かる。
【0073】
図36は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が2.4である共振器を示す概略平面図であり、
図37は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が3.8である共振器を示す概略平面図であり、
図38は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.1である共振器を示す概略平面図であり、
図39は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が12.4である共振器を示す概略平面図である。
【0074】
図36〜
図39に示された共振器の周波数に応じたインピーダンス値は、
図40に示されたグラフから確認できる。一方、
図36〜
図39に示された共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)は、
図41に示されたグラフから確認できる。
図41に示すように、アスペクト比が10超過である
図39に示された共振器において、スプリアスノイズ(Spurious Noise)が多く劣化することが分かる。
【0076】
一方、下記表3に示すように、上記表2の非対称の多角形共振器の性能と対比し、軸対称の多角形共振器の挿入損失(IL)、kt
2性能、スプリアスノイズ(Spurious Noise)の性能と同等以上のレベルであることが分かる。特に、下記表3に示すように、上記表2の非対称の多角形共振器の性能と対比し、軸対称の多角形共振器の減衰(Attenuation)性能が向上することが分かる。
【0077】
これは、高アスペクト比の構造において非対称の多角形共振器に比べて、軸対称の多角形共振器において共振駆動が円滑になってQ性能の改善に起因したものである。また、軸対称の多角形共振器のアスペクト比が12.4である場合、非対称の多角形共振器に比べてスプリアスノイズ(Spurious Noise)の性能が改善されたことが分かる。
【0078】
図42は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が3.8である共振器を示す概略平面図であり、
図43は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が4.8である共振器を示す概略平面図であり、
図44は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.1である共振器を示す概略平面図であり、
図45は共振器の活性領域が軸対称の多角形状を有し、アスペクト比が5.6である共振器を示す概略平面図である。
【0079】
一方、
図42に示された共振器は、夾角(θ)が26°、一辺の長さが130μmである場合であり、
図43に示された共振器は、夾角(θ)が13°、一辺の長さが130μmである場合である。
【0080】
また、
図44に示された共振器は、夾角(θ)が19°、一辺の長さが150μmである場合であり、
図45に示された共振器は、夾角(θ)が15°、一辺の長さが150μmである場合である。
【0081】
図42〜
図45に示された共振器の周波数に応じたインピーダンス値は、
図46に示されたグラフから確認できる。一方、
図42〜
図45に示された共振器のスプリアスノイズ(Spurious Noise)は、
図47に示されたグラフから確認できる。
【0083】
図42に示された共振器と
図43に示された共振器の性能を対比すると、
図43に示された共振器の挿入損失(IL)性能及び減衰(Attenuation)性能が改善されたことが分かる。また、
図44に示された共振器と
図45に示された共振器の性能を対比すると、
図45に示された共振器の挿入損失(IL)性能及び減衰(Attenuation)性能が改善されたことが分かる。
【0084】
図48は共振器の活性領域がX軸対称の多角形状を有し、活性領域の重心とアスペクト比を定義する長方形の中心がY軸方向に離隔される共振器を説明するための説明図であり、
図49は活性領域の重心の離隔比による減衰性能を示すグラフである。
【0085】
一方、
図48に示すように、活性領域を上部から見たとき、活性領域の重心と、上記活性領域のアスペクト比を定義する長方形の中心が一致しない。但し、活性領域の重心と、上記活性領域のアスペクト比を定義する長方形の中心のX軸の座標値は一致し、活性領域の重心と、上記活性領域のアスペクト比を定義する長方形の中心のY軸の座標値は一致しないことが分かる。
【0086】
また、上記活性領域の重心と上記長方形の中心とのY軸方向における離隔距離y'と上記活性領域のY軸方向の長さhは、h/y'<0.067の条件を満たす。すなわち、
図49に示すように、h/y'の値が0.067よりも大きい場合には減衰性能が急激に劣化することが分かる。逆に、h/y'の値が0.067よりも小さい場合には、活性領域の対称性が少しずれても、減衰性能が大きく劣化しないことが分かる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。