【解決手段】電圧型インバータ装置10に並列共振負荷200を接続したインバータユニット2におけるアース線206への漏れ電流抑止回路は、電圧型インバータ装置10と並列共振負荷200とを接続する線路のそれぞれにインダクタンスが同一となるように第1インダクタ3、第2インダクタ4をそれぞれ接続し、並列共振負荷200を構成する共振コンデンサ200bにアース線206を接続して構成する。
【背景技術】
【0003】
一般に、誘導加熱回路などのような並列共振負荷に接続する電源装置として電圧型インバータ装置が知られており、こうした電圧型インバータ装置を用いて並列共振負荷を駆動させる場合に、高調波除去用のフィルターとしてインダクタを直列接続することが知られている。
【0004】
なお、以下の本明細書の説明においては、説明ならびに図示を簡略化して本発明の理解を容易にするために、単相交流(AC)電源や三相交流(AC)電源などの各種の交流電源を用いる際の説明においては、交流電源として単相交流(AC)電源を用いた場合について説明する。
【0005】
ここで、
図1には、電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続する従来のインバータユニットの回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0006】
この
図1に示すインバータユニット1は、電圧型インバータ装置であるインバータ装置100、商用交流電源などの単相交流(AC)電源102、誘導加熱回路などのような並列共振負荷200、トランス202、高周波除去用のフィルターであるインダクタ204ならびにアース線206などを有して構成されている。
【0007】
より詳細には、インバータ装置100は、商用交流電源などの単相交流(AC)電源102から供給される交流電圧を所望の電圧の高周波交流電圧に変換して、トランス202を介して誘導加熱回路などのような並列共振負荷200へ供給するものである。
【0008】
並列共振負荷200を構成する並列共振回路は、誘導加熱用の加熱コイル200aと共振コンデンサ200bとを並列接続してなる並列共振回路により構成されている。
【0009】
高周波除去用のフィルターであるインダクタ204は、インバータ装置100とトランス202とを接続する2本の線路のうちの片方の線路に接続されている。
【0010】
アース線206は、並列共振負荷200の共振コンデンサ200bと接続されており、安全上、並列共振負荷200の電位を固定する目的で用いられている。
【0011】
上記において説明したように、従来のインバータユニット1の回路構成においては、単相の片側の線路にのみ高周波除去用のフィルターであるインダクタ204を配置し、共振回路にトランス202を使用して、トランス202の2次コイル側に接続されている並列共振負荷200の共振コンデンサ200bにおいてアース線206により接地している。
【0012】
このため従来のインバータユニット1の回路構成によれば、各相におけるインダクタンスのアンバランスが生じることとなっていた。
【0013】
こうした各相におけるインダクタンスのアンバランスが生じることにより、トランス202の1次コイル側に発生する対アース高調波電圧によって、トランス202の1次コイル側と2次コイル側との間の浮遊キャパシタンスを通して、アース線206への漏れ電流として大電流の高調波アース電流が流れる恐れがあるという問題点があった。
【0014】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路およびインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0034】
なお、以下の「発明を実施するための形態」の項の説明においては、上記において
図1を参照しながら説明した構成ならびに作用、あるいは、
図2以下の各図を参照しながら説明する構成ならびに作用と同一あるいは相当する構成ならびに作用については、
図1あるいは
図2以下において用いた符号と同一の符号をそれぞれ付して示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は省略する。
【0037】
図2には、本発明の実施の形態の一例(第1の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0038】
また、
図3には、
図2に示すインバータユニットにおけるインバータ装置(電圧型インバータ装置)における制御部の詳細な構成説明図があらわされている。
【0039】
これら
図2ならびに
図3を参照しながら、本発明の実施の形態の一例によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニットについて説明する。
【0040】
この
図2に示すインバータユニット2は、電圧型インバータ装置であるインバータ装置10に対してトランス202を介して並列共振負荷200を接続するインバータユニットである。
【0041】
インバータユニット2は、インバータ装置10、商用交流電源など単相交流(AC)電源102、誘導加熱回路などのような並列共振負荷200、トランス202、高周波除去用のフィルターである第1のインダクタ(第1インダクタ)3および第2のインダクタ(第2インダクタ)4ならびにアース線206などを有して構成されている。
【0042】
より詳細には、インバータ装置10は、並列共振負荷200に接続するPWM制御の電圧形インバータ装置である。
【0043】
即ち、インバータ装置10は、商用交流電源など単相交流(AC)電源102から供給される交流電圧を所望の電圧の高周波交流電圧に変換して、トランス202を介して誘導加熱回路などのような並列共振負荷200へ供給するものである。
【0044】
並列共振負荷200を構成する並列共振回路は、誘導加熱用の加熱コイル200aと共振コンデンサ200bとを並列接続してなる並列共振回路により構成されている。
【0045】
高周波除去用のフィルターである第1インダクタ3は、インバータ装置10とトランス202とを接続する2本の線路のうちの一方の線路に接続されている。
【0046】
一方、高周波除去用のフィルターである第2インダクタ4は、インバータ装置10とトランス202とを接続する2本の線路のうちの他方の線路に接続されている。
【0047】
このように、第1インダクタ3をインバータ装置10とトランス202とを接続する2本の線路のうちの一方の線路に接続するとともに、第2インダクタ4をインバータ装置10とトランス202とを接続する2本の線路のうちの他方の線路に接続することにより、アース線への漏れ電流抑止回路が構築される。
【0048】
ここで、上記した第1インダクタ3のインダクタンスと第2インダクタ4のインダクタンスとは、同一の値に設定されている。
【0049】
なお、第1インダクタ3のインダクタンスの値と第2インダクタ4とのインダクタンスの値とはそれぞれ、例えば、上記した従来のインバータユニット1における高周波除去用のフィルターであるインダクタ204のインダクタンスの値を2分割した値とすることが好ましい。
【0050】
即ち、インダクタ204のインダクタンスの値を「L」とすると、第1インダクタ3のインダクタンスの値と第2インダクタ4とのインダクタンスの値とをそれぞれ「L/2」とすることが好ましい。
【0051】
つまり、
インダクタ204=L
第1インダクタ3=L/2
第2インダクタ4=L/2
とすることが好ましい。
【0052】
アース線206は、並列共振負荷200の共振コンデンサ200bと接続されており、安全上、並列共振負荷200の電位を固定する目的で用いられている。
【0053】
次に、インバータ装置10について詳細に説明すると、インバータ装置10は、単相交流(AC)電源102から供給される交流電圧を入力してダイオードによる整流により直流電圧に変換して出力するコンバータ部302を備えている。
【0054】
即ち、インバータ装置10のコンバータ部302は、コンバータ制御部を使用しないダイオード整流回路で構成されており、単相交流(AC)電源102から交流電圧が入力され、入力された交流電圧を直流電圧に変換してインバータ部106へ出力する。
【0055】
インバータ部106は、コンバータ部302から出力された直流電圧を入力して高周波交流電圧に逆変換して出力する。
【0056】
インバータ部106の出力段には、インバータ部106からの出力(ここで、インバータ部106からの「出力」とは、インバータ部106から出力される電圧たる「出力電圧Vh」、または、インバータ部106から出力される電流たる「出力電流Ih」、または、インバータ部106から出力される電力たる「出力電力」である。)を検出してその検出結果を出力センサー信号として出力する出力センサー108が設けられている。
【0057】
インバータ装置10は、インバータ部106の動作を制御する制御手段として制御部12を備えている。
【0058】
図3に示すように、制御部12は、PWM制御部12aと、周波数シフト制御部12bとを有して構成されている。
【0059】
制御部12は、外部からインバータ部106の出力を設定する信号たる出力設定信号と出力センサー108から出力された出力センサー信号とに基づいて、インバータ部106をフィードバック制御する。
【0060】
即ち、制御部12は、インバータ部106からの出力が出力設定信号が示す出力設定値となるように、PWM制御部12aのPWM制御により、インバータ部106を構成する電圧型インバータのトランジスタを駆動するインバータ駆動信号たる矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルス幅を可変して、インバータ部106で変換される高周波交流電圧の出力を可変する。
【0061】
なお、インバータ部106からの出力は、出力センサー108を介して並列共振負荷200に入力される。
【0063】
以上の構成において、上記したインバータユニット2の回路構成においては、並列共振負荷200に高調波除去用のフィルターとしてインダクタを直列接続するに際して、インバータ装置10とトランス202とを接続する2本の線路のうちの一方の線路に第1インダクタ3を接続するとともに、インバータ装置10とトランス202とを接続する2本の線路のうちの他方の線路に第2インダクタ4を接続して、アース線への漏れ電流抑止回路を構築している。
【0064】
このアース線への漏れ電流抑止回路を備えることにより、各相でインダクタンスが等しくなって、各相におけるインダクタンスのアンバランスが抑制されることになり、このためアース線206への電流の漏れの発生が抑止され、アース線206への漏れ電流を減少することができる。
【0065】
次に、インバータ装置10の制御部12が実行する動作について、以下に詳細に説明する。
【0066】
即ち、インバータ装置10からの出力を開始する駆動開始時(スタート時)は、共振周波数周期より十分に短いパルス幅、例えば、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)となるパルス幅(本明細書および本特許請求においては、「外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値となるパルス幅」を「最低パルス幅」と適宜に称する。)であって、かつ、並列共振負荷200の共振周波数より離れた周波数を起点とした矩形波インバータ駆動信号Q、NQにより駆動開始(スタート)させる。
【0067】
これによって、並列共振負荷200の共振周波数が変動しても、駆動開始時(スタート時)から制御部12の周波数シフト制御部12bによる矩形波インバータ駆動信号Q、NQの周波数を共振周波数へシフトする周波数シフトにより、変動する共振周波数への自動追尾が可能になる。
【0068】
そして、インバータ装置10においては、制御部12のPWM制御部12aが、矩形波インバータ駆動信号Q、NQの周波数が共振周波数(共振点)または共振周波数近傍になった後に、外部からの出力設定信号が示す設定値の出力になるように、PWM制御により矩形波インバータ駆動信号Q、NQのパルス幅を広げる。
【0069】
即ち、インバータ装置10は、インバータ駆動信号である矩形波インバータ駆動信号Q、NQとして、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)を出力するとともに共振周波数周期より十分に短いパルス幅(例えば、上記した最低パルス幅である。)のパルス信号(狭幅パルス信号)を用い、その狭幅パルス信号を共振周波数より離れた周波数を起点にスタートさせてから共振周波数または共振周波数近傍まで周波数をシフトさせた後に、周波数制御により共振周波数に制御する。
【0070】
その後に、インバータ装置10は、PWM制御により狭幅パルス信号のパルス幅を広くして、外部からの出力設定信号が示す設定値の出力(出力電圧または出力電流または出力電力である。)になるようにする。
【0072】
上記において説明したインバータユニット2においては、アース線への漏れ電流抑止回路が構築されているので、電圧型インバータ装置であるインバータ装置10に並列共振負荷200を接続して用いる際において、負荷側である並列共振負荷200におけるアース線206への漏れ電流を減少することができるようになる。
【0073】
また、上記において説明したインバータユニット2のインバータ装置10によれば、出力制御を行ってもインバータ部の出力の周波数が共振周波数からずれることがなく、また、共振周波数が変動する負荷への追尾特性を改善することができる。
【0074】
また、上記において説明したインバータユニット2のインバータ装置10においては、インバータ部106において出力制御ができるため、従来の技術のようにコンバータ部のコンバータ回路としてサイリスタ整流回路やチョッパ回路を使用することがない。
【0075】
このため、上記において説明したインバータユニット2のインバータ装置10は、サイリスタ整流回路やチョッパ回路を使用する従来の技術と比較すると、電源力率の改善、出力応答速度の大幅な改善(本願発明者の実験によれば、応答速度は、従来の技術における100msから10msに大幅に改善された。)、部品点数の大幅削減によるコスト低減ならびに信頼性向上を図ることができるようになる。
【0076】
また、上記において説明したインバータユニット2のインバータ装置10は、インバータ駆動信号の駆動開始時(スタート時)の周波数たるスタート周波数を共振周波数より離れた周波数とし、それからインバータ駆動信号の周波数を共振周波数に近づけるように周波数シフトさせるため、共振周波数が変動する並列共振負荷200への追尾特性が大幅に改善され、また、共振周波数の異なる複数の並列共振負荷200を切り替えて接続する場合にも問題なく対応することができる。
【0077】
ここで、周波数シフト制御部12bにより周波数シフトする領域(周波数シフト領域)は、インバータ回路に最適なダイオード逆回復特性を考慮した誘導性領域に決定することが好ましい。
【0078】
換言すれば、スタート周波数は、周波数シフト領域がインバータ回路のダイオード逆回復特性に基づく誘導性領域となるように決定することが好ましい。
【0079】
本願発明者による実験によれば、インバータ駆動信号の駆動開始時(スタート時)の周波数たるスタート周波数としては、共振周波数の周波数に対して5%以上離れた周波数(例えば、共振周波数が20kHzであるとすると、共振周波数の周波数に対して5%以上離れた周波数は19kHz以下の周波数または21kHz以上の周波数となる。)とすると良好な結果が得られた。
【0080】
なお、スタート周波数を共振周波数の周波数に対して5%以上離れた周波数とする際、即ち、スタート周波数を共振周波数の周波数から5%以上離す際には、共振周波数の低域側(共振周波数よりも低い周波数方向)に離してもよいし(例えば、共振周波数が20kHzであるとすると、共振周波数の低域側に5%以上離れた周波数は19kHz以下の周波数となる。)、あるいは、共振周波数の高域側(共振周波数よりも高い周波数方向)に離してもよい(例えば、共振周波数が20kHzであるとすると、共振周波数の高域側に5%以上離れた周波数は21kHz以上の周波数となる。)。
【0081】
なお、本願発明者の知見によれば、上記した本発明によるインバータ装置10のように、スタート周波数を共振周波数の周波数から離すようにして(例えば、共振周波数の周波数に対して5%以上離すようにする。)、当該スタート周波数から狭幅パルス信号によりインバータ部の駆動を開始した後に、当該狭幅パルス信号を共振周波数へ周波数シフトさせ、その後に共振周波数で狭幅パルス信号のパルス幅を広げるPWM制御を開始させるような従来の技術は存在しない。
【0083】
図4には、本発明の実施の形態の一例(第2の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0084】
この
図4に示すインバータユニット5と
図2に示すインバータユニット2とを比較すると、インバータユニット2がアース線206を並列共振負荷200の共振コンデンサ200bと接続して接地させているのに対し、インバータユニット5がアース線207をトランス202の2次コイル側の巻線の中点に直接接続して接地させている点において、インバータユニット5とインバータユニット2とは異なる。
【0085】
即ち、インバータユニット5は、並列共振負荷200に接続するトランス202の2次コイル側の巻線の中点を直接接地するようにしたものである。
【0086】
このように、接地点をトランス202の2次コイル側の巻線の中点とすることにより、トランス202の2次コイル側の対アース電位のアンバランスによる漏れ電流を抑制することができる。
【0087】
つまり、上記した構成を備えることにより、インバータユニット5においては、トランス202の1次コイル側と2次コイル側との間の浮遊キャパシタンスを通して流れるアース電流を打ち消すことがき、その結果、負荷側である並列共振負荷200におけるアース線207への漏れ電流を減少することができるようになる。
【0089】
図5には、本発明の実施の形態の一例(第3の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0090】
この
図5に示すインバータユニット6と
図2に示すインバータユニット2とを比較すると、インバータユニット2がアース線206を並列共振負荷200の共振コンデンサ200bと接続して接地させているのに対し、インバータユニット6がアース線208を2個の分圧用の第1のコンデンサ(分圧用第1コンデンサ)209と第2のコンデンサ(分圧用第2コンデンサ)210との中点に接続して接地させている点において、インバータユニット6とインバータユニット2とは異なる。
【0091】
即ち、インバータユニット6は、共振に影響のないように、並列共振負荷200の共振コンデンサ200bよりも小さい静電容量の2個のコンデンサ(分圧用第1コンデンサ209および分圧用第2コンデンサ210)を接続して分圧し、分圧用第1コンデンサ209と分圧用第2コンデンサ210との中点にアース線208を接続して接地させている。
【0092】
上記した構成を備えることにより、インバータユニット6においても、アース線208への漏れ電流を減少することができるようになる。
【0094】
図6には、本発明の実施の形態の一例(第4の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0095】
この
図6に示すインバータユニット7と
図4に示すインバータユニット5とを比較すると、インバータユニット7がアース線207に抵抗211を接続している点において、インバータユニット7とインバータユニット5とは異なる。
【0096】
即ち、インバータユニット7は、並列共振負荷200に接続するトランス202の2次コイル側の巻線の中点を接地するアース線207に抵抗211を接続して、並列共振負荷200に接続するトランス202の2次コイル側の巻線の中点を抵抗接地するようにしたものである。
【0097】
上記した構成を備えることにより、インバータユニット7は、インバータユニット5と同様な作用効果を奏するとともに、抵抗接地により地絡時にアース線207に流れる電流を抑制することができる。
【0099】
図7には、本発明の実施の形態の一例(第5の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0100】
この
図7に示すインバータユニット8と
図2に示すインバータユニット2とを比較すると、インバータユニット2がアース線206を並列共振負荷200の共振コンデンサ200bと接続して接地させているのに対し、インバータユニット8がアース線212を変流器213の2次側の中間点に接続して接地させている点において、インバータユニット8とインバータユニット2とは異なる。
【0101】
即ち、インバータユニット8は、並列共振負荷200に変流器213を接続して、変流器213の2次側の中間点にアース線212を接続して接地させている。
【0102】
上記した構成を備えることにより、インバータユニット8においても、アース線212への漏れ電流を減少することができるようになる。
【0104】
図8には、本発明の実施の形態の一例(第6の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0105】
この
図8に示すインバータユニット9と
図4に示すインバータユニット5とを比較すると、インバータユニット9がアース線207に電流センサー214を設けるとともに、電流センサー214から出力される信号(地絡検知信号)に基づいてインバータ装置10の動作を停止する動作停止制御部215を設けた点において、インバータユニット9とインバータユニット5とは異なる。
【0106】
即ち、インバータユニット9は、アース線207に電流センサー214を設け、電流センサー214によりアース線207に流れる電流の大きさを監視し、アース線207に流れる電流の大きさに基づいて電流センサー214によって地絡を検知するようにしたものである。
【0107】
電流センサー214が地絡を検知すると、電流センサー214は地絡検知信号を動作停止制御部215へ出力する。地絡検知信号を入力した動作停止制御部215は、インバータ装置10の動作を瞬時に停止する制御を行い、これにより地絡によるインバータユニット9の誤動作を防止するとともに電源を保護する。
【0108】
また、このインバータユニット9においても、アース線207への漏れ電流を減少することができるようになる。
【0109】
なお、インバータユニット2、6、7、8においても、インバータユニット9と同様な構成、即ち、アース線206、207、208、212に電流センサー214を設けるようにするとともに、電流センサー214から出力される信号(地絡検知信号)に基づいてインバータ装置10の動作を停止する動作停止制御部215を設けるようにしてもよい。
【0110】
このようにすると、インバータユニット2、6、7、8においても、インバータユニット9と同様に、地絡による誤動作を防止するとともに電源を保護することができるようになる。
【0111】
(VII)その他の実施の形態および変形例の説明
【0112】
なお、上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0113】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(VII−1)乃至(VII−7)に示すように変形するようにしてもよい。
【0114】
(VII−1)上記において第1の実施の形態乃至第6の実施の形態によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニットとして説明したインバータユニット2、5、6、7、8、9において、
図9に例示するように、インバータ装置10に代えてインバータ装置20を用いるようにしてもよい。
【0115】
なお、
図9には、
図2に示すインバータユニットにおいて、
図2に示すインバータ装置に代えて他の構成のインバータ装置を用いた場合のインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介して並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0116】
また、
図10(a)(b)(c)(d)(e)には、
図9に示すインバータ装置における動作を示す模式的な波形図があらわされている。
【0117】
図9ならびに
図10を参照しながら、インバータユニット2’のインバータ装置20について説明すると、インバータ装置20はトランス202を介して並列共振負荷200に接続されている。
【0118】
ところで、並列共振負荷200では、共振周波数より周波数が低い範囲では誘導性になる特性があり、一方、電圧型インバータは、インバータ素子に並列に接続されているダイオードの電流の逆回復特性より、誘導性でのスイッチング動作は容量性に比較して安定なことが分かっている。
【0119】
従って、インバータ装置20は、並列共振回路200の共振周波数よりも低い周波数(例えば、共振周波数より5%以上低い周波数である。)をインバータ駆動信号のスタート周波数とし、このスタート周波数から周波数シフトさせてインバータ駆動信号の周波数を共振周波数まで上昇し、共振周波数でインバータ駆動信号の周波数をロックさせるようにしている。
【0120】
以下に、インバータ装置20について説明すると、符号26は電圧センサーであり、符号28は制御部である。
【0121】
なお、電圧センサー26は、上記した出力センサー108に相当する構成要素であり、電圧を検知して、出力センサー信号として検知した電圧を示す信号を出力する。
【0122】
制御部28は、周波数シフト回路30と、電圧制御発振器(VCO:Voltage−controlled oscillator)回路32と、狭幅パルス信号発生回路34と、出力回路36と、位相比較回路38と、遅れ設定回路40と、ロック完了回路42と、検波回路44と、誤差アンプフィルタ46と、三角波発生回路48と、PWM回路50とを有して構成されている。
【0123】
ここで、インバータ装置20は、制御部28が周波数シフト回路30を備えていてインバータ駆動信号の周波数を周波数シフトする点と信号切換の点を除いて、従来より公知のインバータ装置の技術を適用することができるので、インバータ駆動信号の周波数を周波数シフトする点と信号切換の点を除く他の構成に関する詳細な説明は省略する。
【0124】
以上の構成において、インバータユニット2’のインバータ装置20の動作について、制御部28の動作を中心に説明する。
【0125】
制御部28においては、外部からの出力オン(ON)信号を周波数シフト回路30に入力し、並列共振負荷22の共振周波数より低い周波数(例えば、共振周波数より5%以上低い周波数である。)からインバータ部106の駆動を開始するようにVCO回路32に信号を出力し、VCO回路32の出力からの周波数信号は狭幅パルス信号発生回路34に入力され、VCO回路32の出力の周波数の狭幅パルス信号が狭幅パルス信号発生回路34により発生されて出力回路36に出力される。出力回路36では、ロック完了回路42の信号により、狭幅パルス信号発生回路34の信号からPWM回路50の信号に切り換える。
【0126】
ここで、狭幅パルス信号発生回路34により発生される狭幅パルス信号のパルス幅は、インバータ部106から出力される出力値が、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)となるように設定することが好ましい。
【0127】
図10(a)(b)(c)(d)(e)には、インバータ装置20における動作を模式的に示す波形図があらわされている。
【0128】
なお、
図10(a)(b)(c)(d)(e)において、波形D、波形E、波形F、波形Gならびに波形Hは、電圧センサー26により検知された電圧(コンデンサ電圧Vc)波形である。
【0129】
図10(a)は、駆動開始時(スタート時)のスタート周波数におけるインバータ部106の出力として電圧センサー26により検知された電圧(コンデンサ電圧Vc)波形(波形D)とインバータ駆動信号たる狭幅パルス信号との位相差を示す。
【0130】
インバータ装置20に並列共振負荷200が接続されている場合には、共振周波数以下の周波数領域ではインバータ駆動信号の位相はコンデンサ電圧Vcの位相より遅れることが分かっている。
【0131】
ここで、位相比較回路38において、インバータ駆動信号のパルスの周期の1/4遅れの位置たるA点を位相検波パルスのパルス位置とし、比較するコンデンサ電圧Vc位相波形(波形E)のゼロクロス点をB点として(
図10(b)を参照する。)、A点とB点との位相差を比較し、位相差がゼロ(0)または予め設定されている位相差となった周波数でロックする(
図10(c)を参照する。)。
【0132】
一方、電圧センサー26からの波形信号とVCO回路32からの周波数信号とを位相比較回路16に入力してそれぞれの位相を比較し、共振周波数となるようにVCO回路32の周波数を制御する。
【0133】
具体的には、共振周波数から離れた周波数、例えば、共振周波数より5%以上低い周波数をスタート周波数とした狭幅パルス信号のインバータ駆動信号によりインバータ部106の駆動を開始し(
図10(a)を参照する。)、当該インバータ信号の周波数を周波数シフトして上昇させる(
図10(b)を参照する。)。
【0134】
そして、位相比較回路38によりインバータ駆動信号の周波数を共振周波数でロックさせ(
図10(c)を参照する。)、ロック完了回路42がロック完了を検知して出力回路36へ信号を出力する。この信号により、出力回路36からは、狭幅パルス信号からPWM制御によりパルス幅twが広がったインバータ駆動信号が出力され、インバータ部106の出力が出力設定信号によって設定された設定値の出力まで上昇する(
図10(d)(e)を参照する。)。
【0135】
即ち、インバータ装置20は、並列共振負荷200を接続し、インバータ駆動信号である矩形波インバータ駆動信号Q、NQとして、外部からの出力設定信号が示す設定値の最低設定出力値(出力電圧または出力電流または出力電力である。)を出力する共振周波数周期より十分に短いパルス幅のパルス信号(狭幅パルス信号)を用い、その狭幅パルス信号を共振周波数より離れた周波数(例えば、共振周波数より5%以上低い周波数である。)を起点にスタートさせてから共振周波数または共振周波数近傍まで周波数を上昇する周波数シフトによる周波数制御を行って、インバータ駆動信号の周波数を共振周波数に制御する。
【0136】
その後に、インバータ装置20は、PWM制御により狭幅パルス信号のパルス幅を広くして、外部からの出力設定信号が示す設定値の出力(出力電圧または出力電流または出力電力である。)になるようにする。
【0137】
従って、インバータ装置20においても、インバータ装置10に関して上記において説明したと同様な作用効果が得られる。
【0138】
なお、インバータユニット2’においては、インバータユニット2と同様に、インバータ装置とトランス202との間に、高調波電流を防止する第1インダクタ3と第2インダクタ4とが接続されている。
【0139】
即ち、インバータユニット2’のインバータ装置20においては、並列共振負荷200に電圧形インバータであるインバータ部106を接続した場合に、矩形波電圧の高調波成分の電圧により高調波電流が流れるので、これを防止するための第1インダクタ3と第2インダクタ4とをインバータ部106の出力段に直列接続している。
【0140】
インバータ部106の出力電圧は矩形波になるが、矩形波はサイン波と奇数高調波との合成波形からなることは一般的に知られており、矩形波のまま並列共振負荷200に接続すると奇数高調波成分は周波数が高いためコンデンサのリアクタンスが小さくなり、高調波電流が増大し電流波形ひずみを起こしたり、インバータ部106のスイッチング素子であるトランジスタの損失悪化などを引き起こす。
【0141】
このため、こうした高調波電流を抑制する目的で、インバータ装置10と同様に、インバータ装置20もインバータ部106の出力段に第1インダクタ3と第2インダクタ4とが接続されている。
【0142】
また、インバータ装置20の制御部28においては、VCO回路32からの出力信号を位相比較回路38に入力して位相比較を行う際に、信号遅れ時間を設定するための遅れ設定回路40を設けている。
【0143】
即ち、インバータ装置20においては、並列共振負荷200に電圧形インバータであるインバータ部106を接続した場合に、矩形波電圧の高調波成分の電圧により高調波電流が流れるので、これを防止するために第1インダクタ3と第2インダクタ4とを直列接続したが、この第1インダクタ3と第2インダクタ4との直列接続によるインダクタ成分により共振時の電圧位相に遅れが生じる。
【0144】
インバータ装置20の制御部28においては、この電圧位相の遅れを補正するために、位相比較回路38に入力する駆動側のパルス位相を遅らせる遅れ設定回路40を設けて遅れ補正を行っている。
【0145】
(VII−2)上記した実施の形態において、スタート周波数を共振周波数から離す際に、具体的には共振周波数から5%以上離すことを例示した。
【0146】
しかしながら、スタート周波数は共振周波数から5%以上離すことに限られるものではなく、共振周波数から5%未満離すようにしてもよい。
【0147】
即ち、「5%」との数値は本願発明者が実験により実証的に求めた好適な数値ではあるが、スタート周波数を共振周波数から離す際は「5%」の数値に限られものではなく、スタート周波数が共振周波数から離れていればよい。
【0148】
スタート周波数を共振周波数から離すことにより、並列共振負荷側の共振周波数がいかようにずれても、周波数シフトにより自動で共振周波数を探し当てることが可能となる。
【0149】
ここで、周波数シフトする領域(周波数シフト領域)は、インバータ回路に最適なダイオード逆回復特性を考慮した誘導性領域に決定することが好ましく、本願発明者が実験によれば共振周波数から5%以上の領域であった。
【0150】
(VII−3)上記した実施の形態においては、各構成における具体的な回路構成などは説明を省略したが、各構成に対応する従来より公知の回路構成を用いてよいことは勿論である。
【0151】
(VII−4)上記した実施の形態においては、各構成における具体的な回路定数などの説明を省略したが、各構成に対応する従来より公知の回路定数を用いてよいことは勿論である。
【0152】
(VII−5)上記において第1の実施の形態乃至第6の実施の形態によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニットとして説明したインバータユニット2、2’、5、6、7、8、9においては、トランス202を介して電圧型インバータ装置(インバータ装置10、インバータ装置20)と並列共振負荷200とを接続したインバータユニット2、2’、5、6、7、8、9について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0153】
例えば、インバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えるとともに、トランス202を介することなくインバータ装置10と並列共振負荷200とを接続するインバータユニットを構築するようにしてもよい。
【0154】
具体的には、
図11に例示するように、第1の実施の形態によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えるとともに、トランス202を介することなくインバータ装置10と並列共振負荷200とを接続するインバータユニット2”を構築するようにしてもよい。
【0155】
ただし、この場合には、単相交流(AC)電源102側において電源トランス400で絶縁して、回路全体をフローーティグ状態にしておくことが好ましい。
【0156】
なお、
図11には、トランスを介することなく電圧型インバータ装置と並列共振負荷とを接続するインバータユニットであって、本発明の実施の形態の一例(第1の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介することなく並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0157】
あるいは、
図12に例示するように、第3の実施の形態によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えるとともに、トランス202を介することなくインバータ装置10と並列共振負荷200とを接続するインバータユニット6’を構築するようにしてもよい。
【0158】
この場合には、2個のコンデンサ(分圧用第1コンデンサ209および分圧用第2コンデンサ210)の静電容量を小さくとることで、商用周波数成分の電流は小さくなるため、単相交流(AC)電源102側において電源トランスを設ける必要はない。
【0159】
なお、
図12には、トランスを介することなく電圧型インバータ装置と並列共振負荷とを接続するインバータユニットであって、本発明の実施の形態の一例(第3の実施の形態)によるインバータユニットにおけるアース線への漏れ電流抑止回路を備えたインバータユニット(電圧型インバータ装置に対してトランスを介することなく並列共振負荷を接続するインバータユニット)の回路構成を示す回路構成説明図があらわされている。
【0160】
(VII−6)上記した実施の形態においては、交流電源として単相交流(AC)電源を用いた場合について説明したが、交流電源はこれに限られるものではないことは勿論であり、交流電源として、例えば、三相交流電源を用いてもよい。即ち、本発明はいずれの交流電源を用いてよいものであり、電圧型インバータ装置と並列共振負荷とを接続する線路のそれぞれに、インダクタンスが同一となるようにインダクタをそれぞれ接続するようにすればよい。
【0161】
(VII−7)上記した各実施の形態ならびに上記した(VII−1)乃至(VII−6)に示す各実施の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。