【解決手段】制御装置10は、電動モータ110の駆動を制御するモータ駆動部30への制御値を予め定められた制御周期で設定するモータ駆動制御部20と、電動モータ110の回転角度を検出する回転角度センサ120が出力した値を取得値として取得し、取得値を用いてモータ110の電気角を算出した後に、算出した電気角の正弦値を算出し、正弦値を制御周期の所定回数分平均化した正弦値平均値を算出し、正弦値平均値を用いて、出力値を出力する回転角度出力部50と、を有し、モータ駆動制御部20は、出力値を用いて、制御値を設定する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の概略構成の一例を示す図である。
電動パワーステアリング装置100(以下、単に「ステアリング装置100」と称する場合もある。)は、車両の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であり、本実施の形態においては車両の一例としての自動車1に適用した構成を例示している。なお、
図1は、自動車1を前方から見た図である。
【0009】
ステアリング装置100は、自動車1の進行方向を変えるために運転者が操作する輪(ホイール)状のステアリングホイール(ハンドル)101と、ステアリングホイール101に一体的に設けられたステアリングシャフト102とを備える。また、ステアリング装置100は、ステアリングシャフト102と自在継手103aを介して連結された上部連結シャフト103と、この上部連結シャフト103と自在継手103bを介して連結された下部連結シャフト108とを備える。下部連結シャフト108は、ステアリングホイール101の回転に連動して回転する。
【0010】
また、ステアリング装置100は、転動輪としての左右の前輪150それぞれに連結されたタイロッド104と、タイロッド104に連結されたラック軸105とを備える。また、ステアリング装置100は、ラック軸105に形成されたラック歯105aとともにラック・ピニオン機構を構成するピニオン106aを備える。
【0011】
また、ステアリング装置100は、ピニオンシャフト106を収納するステアリングギヤボックス107を有する。ピニオンシャフト106は、ステアリングギヤボックス107内にてトーションバー112を介して下部連結シャフト108と連結されている。ステアリングギヤボックス107の内部には、トーションバー112の捩れ量に基づいて、ステアリングホイール101に加えられた操舵トルクTを検出するトルクセンサ109が設けられている。
【0012】
また、ステアリング装置100は、ステアリングギヤボックス107に支持された電動モータ110と、電動モータ110の駆動力を減速してピニオンシャフト106に伝達する減速機構111とを有する。本実施の形態に係る電動モータ110は、電動モータ110の回転軸の回転角度である機械角θmに連動した回転角度信号を出力する回転角度センサ120と、3相の巻線とを有する3相ブラシレスモータである。回転角度センサ120は、機械角θmの正弦波信号(sin)と余弦波信号(cos)とを出力するMRセンサを有するセンサであることを例示することができる。
【0013】
また、ステアリング装置100は、電動モータ110の作動を制御する制御装置10を備える。制御装置10には、上述したトルクセンサ109からの出力信号が入力される。また、制御装置10には、自動車1に搭載される各種の機器を制御するための信号を流す通信を行うネットワーク(CAN)を介して、自動車1の移動速度である車速Vcを検出する車速センサ170からの出力信号などが入力される。また、制御装置10には、回転角度センサ120からの、電動モータ110の機械角θmに応じた出力信号である、正弦波信号及び余弦波信号が入力される。
【0014】
以上のように構成されたステアリング装置100は、トルクセンサ109が検出した操舵トルクTに基づいて電動モータ110を駆動し、電動モータ110の駆動力(発生トルク)をピニオンシャフト106に伝達する。これにより、電動モータ110の駆動力(発生トルク)が、ステアリングホイール101に加える運転者の操舵をアシストする。
【0015】
(制御装置10)
図2は、制御装置10のブロック図の一例である。
制御装置10は、CPU、ROM、RAM、EEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory)等からなる算術論理演算回路である。
制御装置10は、電動モータ110の作動を制御するモータ駆動制御部20と、電動モータ110を駆動させるモータ駆動部30と、電動モータ110に実際に流れる実電流を検出するモータ電流検出部40とを有する。
また、制御装置10は、回転角度センサ120からの出力信号を取得するとともに、モータ駆動制御部20が電動モータ110の制御値を設定する際に利用可能な値に変換して出力する回転角度出力部50を有する。
【0016】
(モータ駆動制御部20)
モータ駆動制御部20は、電動モータ110に供給する目標電流を設定する目標電流設定部21を有する。また、モータ駆動制御部20は、目標電流設定部21にて設定された目標電流と、モータ電流検出部40にて検出された電動モータ110へ供給される実電流との偏差に基づいてフィードバック制御を行うフィードバック(F/B)制御部22とを有する。また、モータ駆動制御部20は、F/B制御部22からの出力値に基づいて電動モータ110をPWM(パルス幅変調)駆動するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号を出力するPWM信号生成部23を有する。
【0017】
目標電流設定部21は、d−q座標系のq軸目標電流Iqtを設定するq軸目標電流設定部211と、d−q座標系のd軸目標電流Idtを設定するd軸目標電流設定部212とを有する。
q軸目標電流設定部211は、トルクセンサ109にて検出された操舵トルクTと、車速センサ170にて検出された車速Vcとに基づいてq軸目標電流Iqtを設定する。操舵トルクTがプラスである場合にはq軸目標電流Iqtはプラス、操舵トルクTがマイナスである場合にはq軸目標電流Iqtはマイナスとすることを例示することができる。また、q軸目標電流Iqtは、操舵トルクTの絶対値が同じである場合には、車速Vcが低速であるほどq軸目標電流Iqtの絶対値が大きくなる。
d軸目標電流設定部212は、q軸目標電流設定部211が設定したq軸目標電流Iqtと、電動モータ110の回転速度ωmとに基づいてd−q座標系のd軸目標電流Idtを算出する。回転速度ωmは、回転角度センサ120からの出力信号に基づいて算出することを例示することができる。
【0018】
F/B制御部22は、モータ電流検出部40によって検出された電流をd−q座標系の電流に変換する3相2軸変換部221を有する。3相2軸変換部221には、モータ電流検出部40にて検出されたU相実電流,W相実電流、及び、回転角度出力部50から出力された値が入力される。そして、3相2軸変換部221は、予め定められた式に従って、U相実電流,W相実電流をd−q座標系の値であるd軸実電流Idaとq軸実電流Iqaとに変換し、変換したd軸実電流Ida,q軸実電流Iqaを出力する。
【0019】
また、F/B制御部22は、目標電流設定部21にて設定されたd軸目標電流Idtから、3相2軸変換部221にて算出されたd軸実電流Idaを減算するd軸減算部222dを有する。また、F/B制御部22は、目標電流設定部21にて算出されたq軸目標電流Iqtから、3相2軸変換部221にて算出されたq軸実電流Iqaを減算するq軸減算部222qを有する。
【0020】
また、F/B制御部22は、d軸減算部222dにて算出された偏差(Idt−Ida)に基づいてd軸目標電流Idtとd軸実電流Idaとが一致するようにPI(比例積分)制御を行い、d軸目標電圧Vdtを算出するd軸PI制御部223dを有する。また、F/B制御部22は、q軸減算部222qにて算出された偏差(Iqt−Iqa)に基づいてq軸目標電流Iqtとq軸実電流Iqaとが一致するようにPI(比例積分)制御を行い、q軸目標電圧Vqtを算出するq軸PI制御部223qを有する。
【0021】
d軸減算部222d,q軸減算部222q及びd軸PI制御部223d,q軸PI制御部223qは、電動モータ110に供給する目標電流(d軸目標電流Idt,q軸目標電流Iqt)と電動モータ110に供給される実電流(d軸実電流Ida,q軸実電流Iqa)との偏差が零となるようにフィードバック制御を行う。
【0022】
また、F/B制御部22は、d軸PI制御部223d及びq軸PI制御部223qにて算出されたd軸目標電圧Vdt,q軸目標電圧Vqtを、3相交流座標系のU相目標電圧,V相目標電圧,W相目標電圧に変換する2軸3相変換部224を有する。2軸3相変換部224は、予め定められた式及び回転角度出力部50から出力された値に基づいて、d軸目標電圧Vdt及びq軸目標電圧Vqtを、U相目標電圧及びW相目標電圧に変換する。つまり、2軸3相変換部224は、d軸PI制御部223d及びq軸PI制御部223qから出力された、言い換えればフィードバック制御された値と、回転角度出力部50から出力された値と、に基づいて電動モータ110に印加する印加電圧を決定する。また、2軸3相変換部224は、零からU相目標電圧及びW相目標電圧を減算することによりV相目標電圧を算出する。
【0023】
PWM信号生成部23は、2軸3相変換部224にて算出された、U相目標電圧、V相目標電圧及びW相目標電圧に基づいて電動モータ110をPWM駆動するためのPWM(パルス幅変調)信号を生成し、生成したPWM信号を出力する。PWM信号は、モータ駆動部30のトランジスタのON/OFFを制御するための制御信号であり、OFF時には0(V)、ON時には1(V)の電圧が出力される信号であることを例示することができる。
なお、目標電流設定部21、F/B制御部22及びPWM信号生成部23は、それぞれ、後述する制御周期Tで、繰り返し上記処理を実行する。
【0024】
(モータ駆動部30)
モータ駆動部30は、所謂インバータであり、例えば、スイッチング素子として6個の独立したトランジスタ(FET)を備え、6個の内の3個のトランジスタは電源の正極側ラインと各相の電気コイルとの間に接続され、他の3個のトランジスタは各相の電気コイルと電源の負極側(アース)ラインと接続されている。そして、モータ駆動部30は、6個の中から選択した2個のトランジスタのゲートを駆動してこれらのトランジスタをスイッチング動作させることにより、電動モータ110の駆動を制御する。
【0025】
(モータ電流検出部40)
モータ電流検出部40は、3相ブラシレスモータである電動モータ110のU相に実際に流れる電流であるU相実電流を検出するためのU相電流検出部と、電動モータ110のW相に実際に流れる電流であるW相実電流を検出するためのW相電流検出部と、を有する。U相電流検出部及びW相電流検出部は、それぞれ電動モータ110のU相、W相に接続されたいわゆるシャント抵抗の両端に生じる電圧から各相に流れる実電流の値を検出する。
【0026】
(回転角度出力部50)
図3は、第1の実施形態に係る回転角度出力部50のブロック図の一例である。
回転角度出力部50は、回転角度センサ120から送られてくる正弦波信号及び余弦波信号に基づいて、予め定められた制御周期Tで機械角θmの正弦値(sinθm)と余弦値(cosθm)とを取得する取得部51を有する。制御周期Tは、例えば4ミリ秒ごとであることを例示することができる。
また、回転角度出力部50は、取得部51が取得した正弦値(sinθm)及び余弦値(cosθm)に基づいて電気角θeを算出する電気角算出部52を有する。電気角算出部52は、取得部51が取得した正弦値及び余弦値を用いて、電動モータ110の電気角θeを算出する。電気角算出部52は、予め記憶している式に、正弦値及び余弦値を代入することにより電気角θeを算出することを例示することができる。
【0027】
また、回転角度出力部50は、電気角算出部52が算出した電気角θeの正弦値(sinθe)を算出する正弦値算出部53を有する。
また、回転角度出力部50は、正弦値算出部53が算出した正弦値(sinθe)の、制御周期N回分の平均値を算出する平均化部54を有する。平均化部54は、正弦値算出部53が算出した最新の正弦値(sinθe)をN回目の値(sinθe(N))として、過去制御周期N回分の平均値Asinθe(=(sinθe(1)+・・・+sinθe(N))/N)を算出する。Nは5であることを例示することができる。Nが5である場合、5回分の平均値Asinθeは、(sinθe(1)+sinθe(2)+sinθe(3)+sinθe(4)+sinθe(5))/5)となる。
【0028】
また、回転角度出力部50は、平均化部54が算出した平均値Asinθeを、3相2軸変換部221が、d軸実電流Ida、q軸実電流Iqaを算出する際に利用可能な値として、3相2軸変換部221に対して出力する出力部55を有する。また、出力部55は、平均化部54が算出した平均値Asinθeを、2軸3相変換部224が、U相目標電圧、W相目標電圧を算出する際に利用可能な値として、2軸3相変換部224に対して出力する。このように、第1の実施形態においては、出力部55は、平均値Asinθeを、3相2軸変換部221、2軸3相変換部224に対して出力する出力値Ovとする。
【0029】
図4は、第1の実施形態に係る回転角度出力部50が行う出力処理を示すフローチャートである。
回転角度出力部50は、
図4に示す出力処理を、制御周期Tで繰り返し実行する。
回転角度出力部50は、先ず、電動モータ110の機械角θmの正弦値(sinθm)と余弦値(cosθm)とを取得する(S401)。これは、取得部51が行う処理である。
その後、回転角度出力部50は、S401にて取得した正弦値(sinθm)及び余弦値(cosθm)を用いて電気角θeを算出する(S402)。これは、電気角算出部52が行う処理である。
その後、回転角度出力部50は、S402にて算出された電気角θeの正弦値(sinθe)を算出する(S403)。これは、正弦値算出部53が行う処理である。
その後、回転角度出力部50は、電気角θeの正弦値(sinθe)の制御周期N回分の平均値Asinθeを算出する(S404)。これは、平均化部54が行う処理である。平均化部54は、今回の制御フローのS403にて算出された正弦値(sinθe)をN回目の値(sinθe(N))とするとともに、過去N−1回分の制御フローの正弦値(sinθe(1)、・・・、sinθe(N−1))をRAMから読み出して、制御周期N回分の平均値Asinθeを算出する。
その後、回転角度出力部50は、S404にて算出された平均値Asinθeを3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に対して出力する(S405)。これは、出力部55が行う処理である。
【0030】
以上、説明したように、制御装置10は、電動モータ110の駆動を制御する駆動部の一例としてのモータ駆動部30への制御値を予め定められた制御周期Tで設定する設定部の一例としてのモータ駆動制御部20を備える。また、制御装置10は、電動モータ110の回転角度を検出する検出部の一例としての回転角度センサ120が出力した値を取得し、取得した取得値を、モータ駆動制御部20が制御値を設定する際に利用可能な値に変換して出力するにあたって、制御周期Tの所定回数N分の平均値を用いて出力値Ovとする回転角度出力部50を備える。
【0031】
より具体的には、回転角度出力部50は、取得値を用いて電動モータ110の電気角θeを算出した後に、算出した電気角θeを、モータ駆動制御部20が制御値を設定する際に利用可能な値の一例としての正弦値(sinθe)に変換し、正弦値(sinθe)の制御周期Tの所定回数の一例としてのN回分の平均値Asinθeを算出し、算出した平均値Asinθeを出力値Ovとする。
【0032】
以下、第1の実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。
比較例に係る制御装置として、回転角度出力部50の代わりに、回転角度センサ120から取得した取得値を用いて電気角θeを算出し、算出した電気角θeの正弦値(sinθe)を出力値とする回転角度出力部を備える構成を考える。比較例に係る制御装置においては、正弦値(sinθe)を平均化することなく、出力値とする。
【0033】
図5(a)は、第1の実施形態に係る回転角度出力部50から出力された出力値Ovに対して高速フーリエ変換(以下、「FFT」と称する場合がある。)を行った振幅値を示す図である。
図5(b)は、比較例に係る制御装置の回転角度出力部から出力された出力値に対してFFTを行った振幅値を示す図である。
図5(c)は、回転角度センサ120から出力された正弦波信号(sin)に対してFFTを行った振幅値を示す図である。
図6(a)は、第1の実施形態に係る3相2軸変換部221から出力されたd軸実電流Idaに対してFFTを行った電流値を示す図である。
図6(b)は、第1の実施形態に係る3相2軸変換部221から出力されたd軸実電流Idaの時間変化を示す図である。
図6(c)は、比較例に係る3相2軸変換部221から出力されたd軸実電流Idaに対してFFTを行った電流値を示す図である。
図6(d)は、比較例に係る3相2軸変換部221から出力されたd軸実電流Idaの時間変化を示す図である。
【0034】
図5(c)に示すように、回転角度センサ120から出力された正弦波信号には、周波数1(kHz)付近と2(kHz)付近にノイズが乗っている。そのため、
図5(a)に示した、第1の実施形態に係る回転角度出力部50から出力された出力値Ov、及び、
図5(b)に示した、比較例に係る回転角度出力部から出力された出力値にも、周波数1(kHz)付近と2(kHz)付近にノイズが乗っている。しかしながら、
図5(a)と
図5(b)とを比較すると明らかなように、第1の実施形態に係る回転角度出力部50からの出力値Ovの方が、比較例に係る回転角度出力部からの出力値よりもノイズが小さい。特に、
図5(a)に斜線で示した、ノイズ低減領域の全体に亘ってノイズが小さい。その結果、
図6(a)と
図6(c)とを比較すると明らかなように、第1の実施形態に係る3相2軸変換部221から出力されたd軸実電流Idaの方が、比較例に係る3相2軸変換部221から出力されたd軸実電流Idaよりもノイズが小さくなっている。特に、
図5(a)に斜線で示した、ノイズ低減領域の全体に亘ってノイズが小さくなっている。それゆえ、
図6(b)と
図6(d)とを比較すると明らかなように、第1の実施形態に係るd軸実電流Idaの暴れ量の方が、比較例に係るd軸実電流Idaの暴れ量よりも小さくなっている。なお、回転角度センサ120からの出力信号にノイズが乗っていない場合のd軸実電流Idaは0である。
【0035】
上述したように、第1の実施形態に係る制御装置10によれば、比較例に係る制御装置よりもd軸実電流Idaの暴れ量が小さいので、F/B制御部22及びPWM信号生成部23から出力される制御値の暴れ量も小さい。このように、第1の実施形態に係る制御装置10によれば、回転角度センサ120からの出力信号に乗っているノイズが、電動モータ110の制御値に与える影響を低減することができる。その結果、電動モータ110の振動を抑制することができる。
【0036】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る制御装置200においては、第1の実施形態に係る制御装置10に対して、回転角度出力部50に相当する回転角度出力部250が異なる。以下、第1の実施形態に係る制御装置10と異なる点について説明する。第1の実施形態に係る制御装置10と第2の実施形態に係る制御装置200とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図7は、第2の実施形態に係る回転角度出力部250のブロック図の一例である。
回転角度出力部250は、取得部51と、取得部51が取得した、正弦値(sinθm)、余弦値(cosθm)それぞれの、制御周期N回分の平均値を算出する平均化部252を有する。平均化部252は、取得部51が取得した最新の正弦値(sinθm)をN回目の値(sinθm(N))として、過去制御周期N回分の平均値Asinθm(=(sinθm(1)+・・・+sinθm(N))/N)を算出する。Nは5であることを例示することができる。Nが5である場合、5回分の平均値Asinθmは、(sinθm(1)+sinθm(2)+sinθm(3)+sinθm(4)+sinθm(5))/5)となる。また、平均化部252は、取得部51が取得した最新の余弦値(cosθm)をN回目の値(cosθm(N))として、過去制御周期N回分の平均値Acosθm(=(cosθm(1)+・・・+cosθm(N))/N)を算出する。Nは5であることを例示することができる。Nが5である場合、5回分の平均値Acosθmは、(cosθm(1)+cosθm(2)+cosθm(3)+cosθm(4)+cosθm(5))/5)となる。
【0038】
また、回転角度出力部250は、平均化部252が算出した平均値Asinθm及び平均値Acosθmに基づいて電気角θeを算出する電気角算出部253を有する。電気角算出部253は、平均化部252が算出した平均値Asinθm及び平均値Acosθmを用いて、電動モータ110の電気角θeを算出する。電気角算出部253は、予め記憶している式に、平均値Asinθm及び平均値Acosθmを代入することにより電気角θeを算出することを例示することができる。
また、回転角度出力部250は、電気角算出部253が算出した電気角θeの正弦値(sinθe)を算出する正弦値算出部254を有する。また、回転角度出力部250は、正弦値算出部254が算出した正弦値(sinθe)を、3相2軸変換部221、2軸3相変換部224に対して出力する出力部255を有する。このように、第2の実施形態においては、出力部255は、正弦値算出部254が算出した正弦値(sinθe)を、3相2軸変換部221、2軸3相変換部224に対して出力する出力値Ovとする。
【0039】
図8は、第2の実施形態に係る回転角度出力部250が行う出力処理を示すフローチャートである。
回転角度出力部250は、
図8に示す出力処理を、制御周期Tで繰り返し実行する。
回転角度出力部250は、先ず、電動モータ110の機械角θmの正弦値(sinθm)と余弦値(cosθm)とを取得する(S801)。これは、取得部51が行う処理である。
その後、回転角度出力部250は、今回の制御フローのS801にて取得した正弦値(sinθm)をN回目の値(sinθm(N))とするとともに、過去N−1回分の制御フローの正弦値(sinθm(1)、・・・、sinθm(N−1))をRAMから読み出して、制御周期N回分の正弦平均値Asinθmを算出する(S802)。また、回転角度出力部250は、今回の制御フローのS801にて取得した余弦値(cosθm)をN回目の値(cosθm(N))とするとともに、過去N−1回分の制御フローの余弦値(cosθm(1)、・・・、cosθm(N−1))をRAMから読み出して、制御周期N回分の余弦平均値Acosθmを算出する(S802)。これらは、平均化部252が行う処理である。
その後、回転角度出力部250は、S802にて算出された正弦平均値Asinθm及び余弦平均値Acosθmを用いて電気角θeを算出する(S803)。これは、電気角算出部253が行う処理である。
その後、回転角度出力部250は、S803にて算出された電気角θeの正弦値(sinθe)を算出する(S804)。これは、正弦値算出部254が行う処理である。
その後、回転角度出力部250は、S804にて算出された正弦値(sinθe)を3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に対して出力する(S805)。これは、出力部255が行う処理である。
【0040】
以上、説明したように、制御装置200の回転角度出力部250は、取得部51が取得した取得値の制御周期TのN回分の平均値(Asinθm及びAcosθm)を算出し、算出した平均値を用いて電動モータ110の電気角θeを算出した後に、算出した電気角θeを、モータ駆動制御部20が制御値を設定する際に利用可能な値の一例としての正弦値(sinθe)に変換した正弦値(sinθe)を出力値Ovとする。
このように、第2の実施形態に係る回転角度出力部250によれば、取得部51が取得した取得値の制御周期TのN回分の平均値を用いて算出した正弦値(sinθe)を出力値Ovとするので、比較例に係る制御装置よりもd軸実電流Idaの暴れ量を小さくすることができ、F/B制御部22及びPWM信号生成部23から出力される制御値の暴れ量も小さくすることができる。このように、第2の実施形態に係る制御装置200によれば、回転角度センサ120からの出力信号に乗っているノイズが、電動モータ110の制御値に与える影響を低減することができる。その結果、電動モータ110の振動を抑制することができる。
【0041】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る制御装置300においては、第1の実施形態に係る制御装置10に対して、回転角度出力部50に相当する回転角度出力部350が異なる。以下、第1の実施形態に係る制御装置10と異なる点について説明する。第1の実施形態に係る制御装置10と第3の実施形態に係る制御装置300とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
図9は、第3の実施形態に係る回転角度出力部350のブロック図の一例である。
回転角度出力部350は、平均化部54が算出した平均値Asを補正する機能を有する。これは、平均化部54が算出した平均値Asinθeがそのまま3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に出力することに起因して生じる、3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224が認識する電気角θeと、電動モータ110の実際の電気角θeとのズレを補正する機能である。
【0043】
より具体的には、回転角度出力部350は、取得部51と、電気角算出部52と、正弦値算出部53に相当する正弦値算出部353と、平均化部54に相当する平均化部354と、を有する。また、回転角度出力部350は、電気角算出部52が算出した電気角θeを補正するための補正角度θcと、平均化部354が算出した平均値を補正するための補正振幅係数Kaと、を算出する補正値算出部356を有する。また、回転角度出力部350は、補正値算出部356が算出した補正角度θcを用いて電気角算出部52が算出した電気角θeを補正する位相補正部357を有する。また、回転角度出力部350は、補正値算出部356が算出した補正振幅係数Kaを用いて平均化部354が算出した平均値を補正する振幅補正部358を有する。また、回転角度出力部350は、振幅補正部358が補正した後の平均値を出力する出力部355を有する。
【0044】
補正値算出部356は、補正角度θc(deg)を、以下の式(1)を用いて算出する。
補正角度θc(deg)=電気角回転速度(deg/sec)×制御周期T(sec)×0.5×(N−1)・・・(1)
なお、補正値算出部356は、電気角回転速度を、電気角算出部52が算出した電気角θeを微分することにより算出することができる。例えば、補正値算出部356は、今回の制御フローで電気角算出部52が算出した電気角θeと前回の制御フローで電気角算出部52が算出した電気角θeとを用いて算出することができる。
また、補正値算出部356は、補正振幅係数Kaを、以下の式(2)を用いて算出する。
補正振幅係数Ka=1/(2×π×f×N×T)×R・・・(2)
ここで、R=(2×(1−cos(2×π×f×N×T)))
1/2である。
【0045】
位相補正部357は、補正値算出部356が算出した補正角度θc(deg)を用いて、進角後電気角θf(deg)を、以下の式(3)を用いて算出する。
進角後電気角θf(deg)=元の電気角θe(deg)+補正角度θc(deg)・・・(3)
正弦値算出部353は、位相補正部357が算出した進角後電気角θfの正弦値(sinθf)を算出する。
【0046】
平均化部354は、正弦値算出部353が算出した正弦値(sinθf)の、制御周期N回分の平均値を算出する。平均化部354は、正弦値算出部353が算出した最新の正弦値(sinθf)をN回目の値(sinθf(N))として、過去制御周期N回分の平均値Asinθf(=(sinθf(1)+・・・+sinθf(N))/N)を算出する。Nは5であることを例示することができる。
振幅補正部358は、補正値算出部356が算出した補正振幅係数Kaを用いて、平均化部354が算出した平均値Asinθfの振幅を、以下の式(4)を用いて算出する。
補正後振幅Ac=補正前振幅A×(1/Ka)・・・(4)
そして、振幅補正部358は、算出した補正後振幅Acを用いて、平均化部354が算出した平均値Asinθfを補正した、補正後平均値Acsinθf=(A/Ka)sinθfを算出する。
【0047】
出力部355は、振幅補正部358が補正した後の平均値Asinθfである補正後平均値Acsinθfを、3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に対して出力する。このように、第3の実施形態においては、出力部355は、補正後平均値Acsinθfを、3相2軸変換部221、2軸3相変換部224に対して出力する出力値Ovとする。
【0048】
図10は、第3の実施形態に係る回転角度出力部350が行う出力処理を示すフローチャートである。
回転角度出力部350は、
図10に示す出力処理を、制御周期Tで繰り返し実行する。
回転角度出力部350は、電動モータ110の機械角θmの正弦値(sinθm)と余弦値(cosθm)とを取得し(S1001)、S1001にて取得した正弦値(sinθm)及び余弦値(cosθm)を用いて電気角θeを算出する(S1002)。これらS1001、S1002の処理は、それぞれ、S401、S402の処理と同一である。
その後、回転角度出力部350は、補正角度θc及び補正振幅係数Kaを算出する(S1003)。これは、補正値算出部356が行う処理である。
その後、回転角度出力部350は、進角後電気角θfを算出する(S1004)。これは、位相補正部357が行う処理である。
その後、回転角度出力部350は、S1004にて算出された進角後電気角θfの正弦値(sinθf)を算出する(S1005)。これは、正弦値算出部353が行う処理である。
その後、回転角度出力部350は、正弦値(sinθf)の制御周期N回分の平均値Asinθfを算出する(S1006)。これは、平均化部354が行う処理である。
【0049】
その後、回転角度出力部350は、S1003にて算出した補正振幅係数Kaを用いて、補正後平均値Acsinθfを算出する(S1007)。これは、振幅補正部357が行う処理である。
その後、回転角度出力部350は、S1007にて算出された補正後平均値Acsinθfを3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に対して出力する(S1007)。これは、出力部355が行う処理である。
【0050】
以上、説明したように、第3の実施形態に係る回転角度出力部350は、平均化部354が平均値を算出する前後の電気角θe及び振幅のズレを考慮して補正し、補正した後の補正後平均値Acsinθfを出力値Ovとする。
図11(a)は、電気角θeを補正することなしに平均値Asinθeを算出する前後の電気角θeの位相遅れ、及び、振幅の減衰を示す図である。
図11(a)においては、平均値Asinθeを算出する後、つまり、平均値Asinθeの時間変化を実線で示している。また、
図11(a)においては、平均値Asinθeを算出する前、つまり、正弦値(sinθe)の時間変化を破線で示している。
図11(a)に示すように、平均値Asinθeは、正弦値(sinθe)よりも振幅が小さくなり、遅角する。
【0051】
図11(b)は、補正角度θcを用いて電気角θeを補正した進角後電気角θfの正弦値(sinθf)の平均値Asinθfの時間変化を示す図である。電気角θeを、補正角度θc分だけ進角させることにより、
図11(b)に示すように、電気角θeの位相遅れを補正することができる。言い換えれば、補正角度θcは、
図11(b)に示すように、平均値Asinθeを算出する前後の電気角θeの位相遅れを補正するための補正角度θcである。進角後電気角θfの正弦値(sinθf)を平均化することにより、電気角θeの位相遅れが補正される。
【0052】
図11(c)は、平均値Asinθfを、補正振幅係数Kaを用いて補正した状態を示す図である。平均値Asinθfの振幅を1/Ka倍することにより、
図11(c)に示すように、振幅の減衰を補正することができる。補正振幅係数Kaは、
図11(c)に示すように、平均値Asinθfを算出する前後の振幅の減衰を補正するための値である。
【0053】
以上のように構成された制御装置300によれば、平均化することに起因して生じる電気角θeの位相遅れ、及び、振幅の減衰を補正することができるので、第1の実施形態に係る制御装置10が奏する効果に加えて、より適切に電動モータ110の駆動を制御することができる。
なお、第3の実施形態においては、電気角θeの位相遅れと振幅の減衰の両方を補正しているが、特にかかる態様に限定されない。電気角θeの位相遅れ及び振幅の減衰のいずれか一方を補正しても良い。
【0054】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る制御装置400においては、第2の実施形態に係る制御装置200に対して、回転角度出力部250に相当する回転角度出力部450が異なる。以下、第2の実施形態に係る制御装置200と異なる点について説明する。第2の実施形態に係る制御装置200と第4の実施形態に係る制御装置400とで、同じ構造、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
図12は、第4の実施形態に係る回転角度出力部450のブロック図の一例である。
回転角度出力部450は、平均化部252が算出した平均値Asinθm及び平均値Acosθmを補正する機能を有する。これは、平均化部252が算出した平均値Asinθm及び平均値Acosθmがそのまま3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に出力されることに起因して生じる、3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224が認識する電気角θeと、電動モータ110の実際の電気角θeとのズレを補正する機能である。
【0056】
より具体的には、回転角度出力部450は、取得部51と、平均化部252と、を有する。
また、回転角度出力部450は、平均化部252が算出した平均値Asinθm及び平均値Acosθmを補正するための、補正角度θcと、補正振幅係数Kaと、を算出する補正値算出部456を有する。補正値算出部456は、上記式(1)を用いて補正角度θcを算出し、上記(2)を用いて補正振幅係数Kaを算出する。
また、回転角度出力部450は、補正値算出部456が算出した補正振幅係数Kaを用いて平均値Asinθm及び平均値Acosθmを補正する振幅補正部458を有する。振幅補正部458は、上記(4)を用いて補正後振幅を算出する。そして、振幅補正部458は、補正後振幅を用いて、平均化部252が算出した平均値Asinθm及び平均値Acosθmを補正した、補正後平均値Acsinθm、補正後平均値Accosθmを算出する(Acsinθm=(1/Ka)×Asinθm、Accosθm=(1/Ka)×Acosθm)。
【0057】
また、回転角度出力部450は、振幅補正部458が補正した後の、平均値Asinθm、平均値Acosθmである、補正後平均値Acsinθm、補正後平均値Accosθmに基づいて電気角θeを算出する電気角算出部453を有する。電気角算出部453は、振幅補正部458が算出した補正後平均値Acsinθm及び補正後平均値Accosθmを用いて、電動モータ110の電気角θeを算出する。
【0058】
また、回転角度出力部450は、補正値算出部456が算出した補正角度θcを用いて電気角算出部453が算出した電気角θeを補正する位相補正部457を有する。位相補正部457は、上記式(3)を用いて進角後電気角θf(deg)を算出する(θf=θe+θc)。
また、回転角度出力部450は、位相補正部457が算出した進角後電気角θfの正弦値(sinθf)を算出する正弦値算出部454と、正弦値算出部454が算出した正弦値(sinθf)を、3相2軸変換部221、2軸3相変換部224に対して出力する出力部455と、を有する。このように、第4の実施形態においては、出力部455は、正弦値算出部454が算出した正弦値(sinθf)を、3相2軸変換部221、2軸3相変換部224に対して出力する出力値Ovとする。
【0059】
図13は、第4の実施形態に係る回転角度出力部450が行う出力処理を示すフローチャートである。
回転角度出力部450は、
図12に示す出力処理を、制御周期Tで繰り返し実行する。
回転角度出力部450は、先ず、電動モータ110の機械角θmの正弦値(sinθm)と余弦値(cosθm)とを取得し(S1301)、正弦平均値Asinθm及び余弦平均値Acosθmを算出する(S1302)。
その後、回転角度出力部450は、補正角度θc及び補正振幅係数Kaを算出する(S1303)。これは、補正値算出部456が行う処理である。
その後、回転角度出力部450は、S1303にて算出した補正角度θc及び補正振幅係数Kaを用いて、補正後平均値Acsinθm及び補正後平均値Accosθmを算出する(S1304)。これは、補正部457が行う処理である。
その後、回転角度出力部450は、S1304にて算出された補正後平均値Acsinθm及び補正後平均値Accosθmを用いて電気角θeを算出する(S1305)。これは、電気角算出部453が行う処理である。
その後、回転角度出力部450は、進角後電気角θfを算出する(S1306)。これは、位相補正部457が行う処理である。
その後、回転角度出力部450は、S1306にて算出された電気角θfの正弦値(sinθf)を算出する(S1307)。これは、正弦値算出部454が行う処理である。
その後、回転角度出力部450は、S1307にて算出された正弦値(sinθf)を3相2軸変換部221及び2軸3相変換部224に対して出力する(S1308)。これは、出力部455が行う処理である。
【0060】
以上のように構成された制御装置400によれば、平均化することに起因して生じる電気角θeの位相遅れ及び振幅の減衰を補正することができるので、第2の実施形態に係る制御装置200が奏する効果に加えて、より適切に電動モータ110の駆動を制御することができる。
なお、第4の実施形態においては、電気角θeの位相遅れと振幅の減衰の両方を補正しているが、特にかかる態様に限定されない。電気角θeの位相遅れ及び振幅の減衰のいずれか一方を補正しても良い。