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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-27981(P2021-27981A)
(43)【公開日】2021年2月25日
(54)【発明の名称】抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法
(51)【国際特許分類】
   A62D 3/30 20070101AFI20210129BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20210129BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20210129BHJP
   A62D 101/22 20070101ALN20210129BHJP
   A62D 101/26 20070101ALN20210129BHJP
   A62D 101/28 20070101ALN20210129BHJP
   A62D 101/20 20070101ALN20210129BHJP
【FI】
   A62D3/30
   A61K33/04
   A61P39/02
   A62D101:22
   A62D101:26
   A62D101:28
   A62D101:20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-228381(P2019-228381)
(22)【出願日】2019年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-147793(P2019-147793)
(32)【優先日】2019年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503248662
【氏名又は名称】セコム医療システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】森川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石田 志織
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA24
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZC37
(57)【要約】
【課題】次亜塩素酸を有効成分として含有する新規な抗がん剤分解剤を提供する。
【解決手段】抗がん剤分解剤は、抗がん剤を分解するために用いられ、次亜塩素酸(特に次亜塩素酸分子)を有効成分として含有する弱酸性の水溶液である。具体的には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であって、次亜塩素酸ナトリウムと、酸性剤とを含むものである。抗がん剤分解剤は、好ましくは、抗がん剤によって汚染された汚染対象に対し散布又は噴霧して用いられ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液における有効塩素濃度が50〜400ppmであって、pHが5.0以上、6.8以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗がん剤を分解するために用いられ、次亜塩素酸を有効成分として含有する弱酸性の水溶液であることを特徴とする抗がん剤分解剤。
【請求項2】
前記水溶液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であって、
次亜塩素酸ナトリウムと、酸性剤とを含むことを特徴とする請求項1に記載の抗がん剤分解剤。
【請求項3】
対象となる前記抗がん剤が、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、シタラビン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、及びエトポシドからなる群から選択される抗がん剤であることを特徴とする請求項2に記載の抗がん剤分解剤。
【請求項4】
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液における有効塩素濃度が50〜400ppmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の抗がん剤分解剤。
【請求項5】
対象となる前記抗がん剤を分解処理するにあたって、処理開始から3分後で90%以上分解することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の抗がん剤分解剤。
【請求項6】
前記抗がん剤によって汚染された汚染対象に対し散布又は噴霧して用いられることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の抗がん剤分解剤。
【請求項7】
前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHが5.0以上、6.8以下であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の抗がん剤分解剤。
【請求項8】
次亜塩素酸を有効成分として含有する弱酸性の水溶液を用いて、抗がん剤を分解することを特徴とする抗がん剤分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法に係り、特に次亜塩素酸を有効成分として含有する抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場で取り扱われている抗がん剤は、適切に患者に投与することで高い薬理効果を奏する一方で、薬剤師や看護師等の医療従事者に健康障害をもたらす恐れがある。
具体的には、気化した抗がん剤の吸入曝露や、漏出した抗がん剤との接触による経皮曝露等によって医療従事者が健康障害を発症する虞があって、消化器症状や循環器症状等の急性症状を引き起こすことや、抗がん剤が有する慢性毒性(発がん性等)によってがん発症につながることも考えられる。
現在、厚生労働省労働基準局からは、抗がん剤に対する曝露防止対策に関する通知がなされ、病院内での必要な曝露防止対策に関する留意事項がまとめられている。しかしながら、実際の現場では、当該対策に必要な器具の整備が費用の関係から整備されていなかったり、抗がん剤の調剤時の対策に重きがおかれ、抗がん剤の投与時や廃棄時の対策が不十分であったりする等、医療施設によって曝露対策の格差が大きく、対策が十分とは言えない状況である。
また、今後、在宅での経口抗がん剤による治療が増えていけば、在宅内において患者の家族が抗がん剤曝露によって健康障害を引き起こしてしまうことも懸念される。
【0003】
そうしたなかで、例えば抗がん剤を分解する発明として、特許文献1のようなオゾンガスを用いた抗がん剤分解装置等が提案されており、各種抗がん剤に対して高い分解率を示し、調剤時における曝露の危険性から医療従事者を保護することが開示されている。
しかしながら、上述したように、より安価で安全で手軽なものであって、抗がん剤曝露の虞のある様々な場面で抗がん剤の分解効果を発揮することが可能な分解剤の開発が求められている。
【0004】
ところで、抗がん剤分解剤とは全く異なる技術分野で、弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、高い殺菌効果を発揮するものとして注目されている(例えば、特許文献2参照)。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、有効成分となる次亜塩素酸の反応によって殺菌効果を発揮しており、当該次亜塩素酸は、水溶液中において次亜塩素酸分子(HClO)と次亜塩素酸イオン(ClO−)に解離している。
次亜塩素酸分子、次亜塩素酸イオンともに細胞内部の栄養素を変性又は消費させ、不活性化させる殺菌メカニズムとなっているところ、当該分子は細胞膜を速やかに透過するのに対し、当該イオンは細胞膜を透過することができず外側から作用する。そのため、当該分子は、当該イオンと比較して約80倍の殺菌効力を有すると言われている。
そのため、弱酸である次亜塩素酸分子の存在率を高めるべく、もともとアルカリ性である次亜塩素酸ナトリウム水溶液をpH調整して弱酸性にすることで、高い殺菌効果を奏することができる。
なお、酸性に傾けるほど有毒な塩素ガスを発生するため安全上に劣るものではあったが、現在では、混合制御技術の向上によって、次亜塩素酸ナトリウムに希塩酸等の酸性剤を混合させてpH6.0程度に調整された次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、安全、無害、無公害な殺菌剤として市販されている。
【0005】
そうしたなかで、上記のような弱酸性の次亜塩素酸水溶液を抗がん剤分解剤に適用させるという発想はなく、また抗がん剤分解剤ならではの機能性、操作性に特化した配合や添加剤、操作方法等について検討しているものはなく、あるいは対象となる抗がん剤の特定について検討しているものも知られていなかった。
なお、通常のアルカリ性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いたときの抗がん薬汚染環境の除染効果を評価する試みが一応なされてはいるものの、抗がん薬単独で高い除染効果を示すものではないこと、かつ、金属の腐食対策を別途行う必要があること等の課題が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/208428号
【特許文献2】特開2018−2726号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】濱宏仁「オゾン水および次亜塩素酸ナトリウムを用いた抗がん薬汚染環境の除染効果」、医療薬学、2015年、第41巻、第10号、p.740-749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、新規な抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、比較的安価かつ安全で手軽なものであって、抗がん剤曝露の恐れのある様々な場面で分解効果を発揮可能な抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、次亜塩素酸を有効成分とする弱酸性の水溶液、特に弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、例えば、抗がん剤によって汚染された汚染対象に対し散布又は噴霧して用いられることで、高い抗がん剤分解効果を発揮することを見出して、本発明をするに至った。
【0010】
従って、前記課題は、本発明によれば、抗がん剤を分解するために用いられ、次亜塩素酸を有効成分として含有する弱酸性の水溶液であることを特徴とする抗がん剤分解剤によって解決される。
このとき、前記水溶液は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であって、次亜塩素酸ナトリウムと、酸性剤とを含むと良い。
上記構成により、従来からある弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の殺菌剤のように比較的安価、安全で手軽なものであって、かつ、抗がん剤曝露の恐れのある様々な場面で分解効果を発揮することが可能な抗がん剤分解液を実現することができる。
【0011】
このとき、対象となる前記抗がん剤が、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、シタラビン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、及びエトポシドからなる群から選択される抗がん剤であると良い。
上記のように、対象となる抗がん剤を特定することによって、当該抗がん剤に対する分解効果を有効に発揮することができる。
【0012】
このとき、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液における有効塩素濃度が50〜400ppmであると良い。
また、対象となる前記抗がん剤を分解処理するにあたって、処理開始から3分後で90%以上分解すると良い。
また、前記抗がん剤によって汚染された汚染対象に対し散布又は噴霧して用いられると良い。
また、前記次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHが5.0以上、6.8以下であると良い。
上記構成により、抗がん剤分解剤ならではの機能性や操作性を特化させるべく、好適な有効塩素濃度やpH、好適な処理時間、好適な使用方法等を定めることで、理想的な抗がん剤分解剤を実現することができる。
特に、本発明の抗がん剤分解剤であれば、従来のものと比較して即効性の抗がん剤分解効果を期待することができる。
【0013】
また前記課題は、本発明によれば、次亜塩素酸を有効成分として含有する弱酸性の水溶液を用いて、抗がん剤を分解することを特徴とする抗がん剤分解方法によっても解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新規な抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法を提供することができる。
また、比較的安価かつ安全で手軽なものであって、抗がん剤曝露の恐れのある様々な場面で分解効果を発揮可能な抗がん剤分解剤及び抗がん剤分解方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】抗がん剤分解剤の分解効果を確認した試験1の試験結果を示すものである。
図2】抗がん剤分解剤の分解効果を確認した試験2の試験結果を示すものである。
図3】上記試験2の試験結果を示すものである。
図4】上記試験2の試験結果を示すものである。
図5】上記試験2の試験結果を示すものである。
図6】抗がん剤分解剤の分解効果を確認した試験3の試験結果を示すものである。
図7】抗がん剤分解剤の分解効果を確認した試験4の試験結果を示すものである。
図8】上記試験4の試験結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図1図8を参照しながら説明する。
本実施形態は、抗がん剤を分解するために用いられ、次亜塩素酸(特に次亜塩素酸分子)を有効成分として含有する弱酸性の水溶液であることを特徴とする抗がん剤分解剤(抗がん剤分解液)の発明に関するものである。
【0017】
<抗がん剤分解剤>
抗がん剤分解剤は、次亜塩素酸を有効成分として含有する弱酸性の水溶液であって、例えば、抗がん剤によって汚染された汚染対象に対し直接散布又は噴霧されることで、抗がん剤を分解することが可能なものである。
詳しく述べると、抗がん剤分解剤は、有効成分となる「次亜塩素酸塩」と、pHを調整するための「酸性剤」と、濃度調整のための「水」と、から主に構成されている。
【0018】
「次亜塩素酸塩」としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム又はそれらの組み合わせ等が用いられるところ、分解効力及び安全上の観点から好ましくは、次亜塩素酸ナトリウムが用いられると良く、より好ましくは、食品添加物用の次亜塩素酸ナトリウムが用いられると良い。
すなわち、「水溶液」として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液であると好ましい。
「酸性剤」としては、塩酸や酢酸等が用いられるところ、好ましくは、希塩酸が用いられると良く、より好ましくは、食品添加物用の希塩酸が用いられると良い。
「水」としては、純水(イオン交換水)、精製水又は蒸留水のほか、水道水(常水)等が用いられるところ、好ましくは、純水又は精製水が用いられると良い。
【0019】
なお、抗がん剤分解剤は、抗がん剤の分解効果を阻害しない範囲内において「添加剤」を含むこととして良い。「添加剤」としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、緩衝剤、香料又は着色剤が挙げられる。
【0020】
抗がん剤分解剤を製造するにあたっては、上述したように、アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の液性が酸性へ傾くほど(pHが下がるほど)、有毒な塩素ガスを発生することになるため留意する必要がある。
例えば、特許第4740892号や特許第5307351号等に記載の混合制御装置を用いて、これら次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸塩)、希塩酸(酸性剤)及び純水(水)を混合させることで、抗がん剤分解剤を製造することができる。
【0021】
抗がん剤分解剤の「液性」は、弱酸性を呈するところ、具体的には、その「pH」が4.5越えであって7.0未満、好ましくは、5.0以上であって6.8以下、より好ましくは、5.5以上であって6.8以下、一層好ましくは、6.0以上であって6.8以下であると良い。
詳しく述べると、抗がん剤分解剤のpHが4.5以下になると、極めて急激に分解反応を起こし塩素ガスを発生するため危険であること、かつ、有効成分となる次亜塩素酸において高い分解効力を発揮する次亜塩素酸分子の存在率が徐々に低下することから、pHが4.5越えであると良い。5.0以上であるとより良い。
また、抗がん剤分解剤のpHが7.0以上になると、有効成分となる次亜塩素酸において次亜塩素酸イオンの存在率が高くなり、高い分解効力を発揮することができなくなるため、pHが7.0未満であると良い。6.8以下であるとより良い。
なお、pHを測定する方法としては、例えば、温度25度において市販のpH試験紙を用いて測定する方法が挙げられる。
【0022】
抗がん剤分解剤の「有効塩素濃度」は、対象となる抗がん剤の種類や使用方法等によって適宜設定されるところ、具体的には、50〜400ppm、好ましくは、100〜400ppm、より好ましくは、200〜300ppm、一層好ましくは、200ppmであると良い。
詳しく述べると、有効塩素濃度が50ppm未満になると、主要な抗がん剤に対し有効な分解効果が得られなくなるためである。
また、有効塩素濃度が400ppm越えになると、費用対効果の観点から実用的ではなくなるためである。
なお、有効塩素濃度を測定する方法としては、例えば、JIS K−0102:2016に基づいて測定する方法が挙げられる。
【0023】
抗がん剤分解剤の「利用方法」としては、抗がん剤によって汚染された汚染対象に対し散布又は噴霧して用いられる方法が挙げられる。なお、当該利用方法に特に限定されるものではない。
「散布又は噴霧する方法」としては、例えばユーザーがスプレーを操作することで汚染対象に対し直接散布又は噴霧する方法等が挙げられる。
また「汚染対象」としては、医療施設内において調剤時、投与時又は廃棄時に用いられる呼吸用保護具、保護衣、保護キャップ、保護メガネ、保護マスク、保護手袋、各種器具のほか、安全キャビネット、作業用イスや患者用イス、作業用床等、一般的に曝露し易い箇所が挙げられる。また、自宅内においてトイレ周りの壁面や床面等も挙げられる。
また、医療従事者や患者の家族等が経皮曝露してしまった場合に、当該経皮暴露してしまった人体の部位等も汚染対象として挙げられる。
【0024】
そのほか、抗がん剤曝露対策キットとしての利用方法も考えられる。
具体的には、保護衣、保護マスク、作業用マット(トイレ用マット)等の繊維品や、保護グローブ等のゴム素材品に対して予め抗がん剤分解剤を染み込ませる等の加工を施すことで、当該繊維品やゴム素材品に付着する抗がん剤を分解し、無害化することができる。
【0025】
抗がん剤分解剤は、次亜塩素酸(特に次亜塩素酸分子)を有効成分とするため、「即効性の抗がん剤分解効果」を発揮することができる。
具体的には、抗がん剤分解剤は、抗がん剤を分解処理するにあたって、処理開始から10分後で90%以上、具体的には95%以上、より具体的には100%分解する。好ましくは、処理開始から3分後で50%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には100%分解する。より好ましくは、処理開始から1分後で50%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には100%分解する。
【0026】
また、抗がん剤分解剤は、抗がん剤分解効果とともに、「殺菌効果」及び「ウイルス不活化効果(殺ウイルス効果)」を同時に発揮することができる。また、「消臭効果」を同時に発揮することもできる。
また、抗がん剤分解剤では、抗がん剤との分解反応後は、その効力を消失することから、残留性がほぼ無く、次亜塩素酸由来(塩素由来)の腐食性の影響もない。
そのため、抗がん剤分解剤は、従来のアルカリ性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を抗がん剤分解液として用いた場合と比較して、単独で高い分解効果を発揮しながらも、金属の腐食対策を別途行う必要もない。
【0027】
抗がん剤分解剤は、抗がん剤全般に対して用いられるところ、分解対象となる具体的な「抗がん剤の種類」は、以下の通りである。
まず、「アルキル化薬」のナイトロジェンマスタード類に分類されるシクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、メルファラン等、また、ニトロソウレア類に分類されるニムスチン、ラニムスチン、カルムスチン、ストレプトゾシン等が挙げられる。
また、「代謝拮抗薬」のピリミジン拮抗薬に分類される5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール等、また、プリン拮抗薬に分類される6−メルカプトプリン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン等、また、葉酸拮抗薬に分類されるメソトレキセート、ペメトリキセナトリウム等が挙げられる。
また、「白金化合物」に分類されるシスプラチン、カルボプラチン、ミリプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン等が挙げられる。
また、「トポイソメラーゼ阻害薬」に分類されるエトポシド、イリノテカン、ノギテカン、ソブゾキサン等が挙げられる。
また、「微小管阻害薬」のタキサンに分類されるパクリタキセル、ドセタキセル等、またビンアルカロイドに分類されるビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシ等、またエリブリンに分類されるエリブリンメシル酸等が挙げられる。
最後に、「抗生物質」のアントラサイクリン系に分類されるドキソルビシン、マイトマイシン、ダウノマイシン等、またその他に分類されるアクチノマイシンD、ブレオマイシン等が挙げられる。
【0028】
これらの中で、より好ましくは、主要な抗がん剤として知られているシクロホスファミド、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、シタラビン、6−メルカプトプリン、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、ドキソルビシンの9種類の抗がん剤が挙げられる。
ここで、本実施例の抗がん剤分解剤による分解効力は、分解対象となる抗がん剤に含まれる有機物の量(例えば、有機物を構成する炭素の量)に依存して変化するものと推定される。
そうすると、例えばタキサン系の抗癌剤となるドセタキセルやパクリタキセルでは、植物成分を原料として合成される化合物であって比較的有機物の量を多く含むことから、これら抗がん剤に対して分解効力を有効に発揮するためには、抗がん剤分解剤の有効塩素濃度を高めたほうが好ましいと推定される。
なお、抗がん剤分解剤による分解効力について上記メカニズムに特に限定されるものではない。
【0029】
以下、本発明における抗がん剤分解剤の実施例について詳しく説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
<実施例1>
弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液((株)ハセッパー技研製、商品名:カンファ水(登録商標)、有効塩素濃度:200ppm、400ppm、pH:6.0〜6.8)を用いた。
当該水溶液を抗がん剤分解剤として用いた。
【0031】
<実施例2>
弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液((株)ハセッパー技研製、商品名:カンファ水(登録商標)、有効塩素濃度:50ppm、pH:6.0〜6.8)を用いた。
当該水溶液を抗がん剤分解剤として用いた。
【0032】
<実施例3、4>
弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液((株)ハセッパー技研製、商品名:カンファ水(登録商標)、有効塩素濃度:200ppm、pH:5.0、6.8にそれぞれ調製したもの)を実施例3、実施例4として用いた。
当該水溶液を抗がん剤分解剤として用いた。
【0033】
<試験1:抗がん剤に対する分解効果その1>
実施例1の抗がん剤分解剤を用いて、「アルキル化薬」の(1)シクロホスファミド、「代謝拮抗薬」の(2)5−フルオロウラシルに対する抗がん剤分解効果を確認する試験を以下の手順で行った。
まず、分解対象の2種類の抗がん剤をそれぞれ以下のように調整した。
(1)抗がん剤「シクロホスファミド(塩野義製薬製、商品名:注射用エンドキサン100mg)」に対し生理的食塩水5.0mLを加えて溶解させたものをシクロホスファミド原液(20mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、シクロホスファミド溶液(10μg/mL)とした。
(2)抗がん剤「5−フルオロウラシル(協和発酵キリン製、商品名:5−FU注250mg/5mL」をそのまま5−フルオロウラシル原液(50mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、5−フルオロウラシル溶液(100μg/mL)とした。
そして、上記の抗がん剤1.0mlそれぞれに対し、実施例1の分解剤9.0mlを加えて振り混ぜたものを測定試料溶液とし、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて定量分析を行った。
なお、比較対照として、上記の抗がん剤1.0mlそれぞれに対し精製水9.0mlを加えて振り混ぜたものも用意して定量分析を行った。
【0034】
HPLC定量分析の試験条件は以下の通りである。
高速液体クロマトグラフ(Waters Corpоratiоn社製、Alliance e2695)を用い、検出器は紫外可視光検出器(同社製、2489UV/VIS)を用いた。
(1)シクロホスファミドについては、移動相に超純水とアセトニトリルの溶媒を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、ODSカラムで分離した後、測定波長200nmで測定を行った。
(2)5−フルオロウラシルについては、移動相にリン酸水素二ナトリウム水溶液とメタノールの混合溶媒を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、ODSカラムで分離した後、測定波長265nmで測定を行った。
【0035】
試験1の試験結果を図1に示す(n=3)。
それぞれの抗がん剤に対し、抗がん剤分解剤(有効塩素濃度:200ppm、400ppm)を加えてから10分後の抗がん剤分解率を求めた。
詳しく述べると、紫外可視吸収スペクトル測定や質量分析法、クロマトグラムにおける保持時間から、シクロホスファミド、5−フルオロウラシルの存在を推定し、また、シクロホスファミド、5−フルオロウラシルに対応する各ピーク面積の割合(%)から絶対検量線法によって測定濃度(μg/ml)を求めて、当該測定濃度から抗がん剤の「検出量(μg)」、「抗がん剤の分解率(%)」を求めた。
【0036】
試験結果から、有効塩素濃度200ppmの抗がん剤分解剤は、(1)シクロホスファミド及び(2)5−フルオロウラシルを分解処理するにあたって、処理開始から10分後で100%分解することが分かった。
また、有効塩素濃度400ppmの抗がん剤分解剤は、(1)シクロホスファミド及び(2)5−フルオロウラシルを分解処理するにあたって、処理開始から10分後で100%分解することが分かった。
【0037】
<試験2:抗がん剤に対する分解効果その2>
実施例1の抗がん剤分解剤を用いて、「代謝拮抗薬」の(1)ゲムシタビン、(2)シタラビン、(3)6−メルカプトプリン、「白金化合物」の(4)シスプラチン、(5)カルボプラチン、「トポイソメラーゼ阻害薬」の(6)エトポシド、「抗生物質」の(7)ドキソルビシンに対する抗がん剤分解効果を確認する試験を以下の手順で行った。
まず、分解対象の7種類の抗がん剤をそれぞれ以下のように調整した。
(1)抗がん剤「ゲムシタビン(サンド製、商品名:ゲムシタビン点滴静注液200mg「サンド」5mL)」をそのままゲムシタビン原液(40mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、ゲムシタビン溶液(100μg/mL)とした。
(2)抗がん剤「シタラビン(武田薬品製、商品名:シタラビン点滴静注液400mg「テバ」20mL)」をそのままシタラビン原液(20mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、シタラビン溶液(100μg/mL)とした。
(3)抗がん剤「6−メルカプトプリン(大原薬品製、商品名:ロイケリン散10%)」を精製水で溶解して6−メルカプトプリン原液(1mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、6−メルカプトプリン溶液(100μg/mL)とした。
(4)抗がん剤「シスプラチン(日医工製、商品名:シスプラチン注10mg「日医工」20mL)」をそのままシスプラチン原液(0.5mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、シスプラチン溶液(100μg/mL)とした。
(5)抗がん剤「カルボプラチン(沢井製薬製、商品名:カルボプラチン点滴静注液50mg「サワイ」5mL)」をそのままカルボプラチン原液(10mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、カルボプラチン溶液(100μg/mL)とした。
(6)抗がん剤「エトポシド(武田テバファーマ製、商品名:エトポシド点滴静注100mg「タイヨー」5mL)」をそのままエトポシド原液(20mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、カルボプラチン溶液(100μg/mL)とした。
(7)抗がん剤「ドキソルビシン(日本化薬製、商品名:ドキソルビシン塩酸塩注射用10mg「NK」5mL)」をそのままドキソルビシン原液(2mg/mL)とし、さらに精製水を混合させて希釈し、ドキソルビシン溶液(100μg/mL)とした。
そして、上記の抗がん剤1.0mlそれぞれに対し、実施例1の分解剤9.0mlを加えて振り混ぜたものを測定試料溶液とし、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて定量分析を行った。
【0038】
(1)ゲムシタビン、(4)シスプラチン、(5)カルボプラチン、(6)エトポシドのHPLC定量分析の試験条件は以下の通りである。
高速液体クロマトグラフ タンデム四重極型質量分析計(Waters Corpоratiоn社製、ACQUITY UPLC)、検出器(同社製、Xevо TQ)を用いた。
(1)ゲムシタビンについては、移動相にギ酸アンモニウム水溶液とアセトニトリルの混合溶媒を用いたグラジエント条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、UPLC用アミド基結合型カラムで分離した後、ESI法のポジティブモードで264⇒112(m/Z)のマスクロマトグラムの測定を行った。
(4)シスプラチンについては、移動相に超純水を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、UPLC用ODSカラムで分離した後、ESI法のネガティブモードで301⇒268(m/Z)のマスクロマトグラムの測定を行った。
(5)カルボプラチンについては、移動相に超純水を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、UPLC用ODSカラムで分離した後、ESI法のポジティブモードで373⇒248(m/Z)のマスクロマトグラムの測定を行った。
(6)エトポシドについては、移動相にギ酸水溶液とアセトニトリルの混合溶媒を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、UPLC用極性基内包型カラムで分離した後、ESI法のポジティブモードで590⇒229(m/Z)のマスクロマトグラムの測定を行った。
【0039】
また、(2)シタラビン、(3)6−メルカプトプリン、(7)ドキソルビシンのHPLC定量分析の試験条件は以下の通りである。
高速液体クロマトグラフ(Waters Corpоratiоn社製、Alliance e2695)を用い、検出器は紫外可視光検出器(同社製、2489UV/VIS)を用いた。
(2)シタラビンについては、移動相に超純水とアセトニトリルの溶媒を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、ODSカラムで分離した後、測定波長210nmで測定を行った。
(3)6−メルカプトプリンについては、移動相にアセトニトリルと2−プロパノールと酢酸アンモニウム水溶液の混合溶媒を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、UPLC用アミド基結合型カラムで分離した後、測定波長325nmで測定を行った。
(7)ドキソルビシンについては、移動相にドデシル硫酸ナトリウムとリン酸水溶液とアセトニトリルの混合溶媒を用いたイソクラティック条件で送液し、移動相中に測定試料溶液を注入し、ODSカラムで分離した後、測定波長254nmで測定を行った。
【0040】
試験2の試験結果を図2図5に示す(n=3)
それぞれの抗がん剤に対し、抗がん剤分解剤(有効塩素濃度:200ppm)を加えてから3分後、10分後の抗がん剤分解率(%)を求めた。
詳しく述べると、これら7種類の抗がん剤に対応する各ピーク面積の割合(%)から絶対検量線法によって測定濃度(μg/ml)を求めて、当該測定濃度から抗がん剤の「検出量(μg)」、「抗がん剤の分解率(%)」を求めた。
【0041】
試験結果から、有効塩素濃度200ppmの抗がん剤分解剤は、(1)ゲムシタビン、(2)シタラビン、(3)6−メルカプトプリン、(4)シスプラチン、(6)エトポシド、及び(7)ドキソルビシンを分解処理するにあたって、処理開始から3分後で100%分解することが分かった。また、(5)カルボプラチンを分解処理するにあたって、処理開始から3分後で99%以上分解することが分かった。
【0042】
試験1、試験2で用いられた各抗がん剤の濃度は、一般的に病院内で抗がん剤曝露が起こっているとされる濃度範囲の上限よりも高い濃度を想定して設定した。
そのため、実際の現場において、対象となる抗がん剤のこぼれ(スピル)によって汚染された汚染対象(曝露された曝露対象)に対し、本実施例の抗がん剤分解剤を適用させることで、当該抗がん剤を有効かつ即効的に分解させることができることが示唆された。
【0043】
<試験3:抗がん剤に対する分解効果その3>
実施例2の抗がん剤分解剤を用いて、(1)シスプラチン、(2)エトポシド、(3)ドキソルビシンに対する抗がん剤分解効果を確認する試験を以下の手順で行った。
まず、分解対象の3種類の抗がん剤を上記試験2と同様にして調整した。
上記の抗がん剤1.0mlそれぞれに対し、実施例2の分解剤9.0mlを加えて振り混ぜたものを測定試料溶液とし、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて上記試験2と同様の試験条件で定量分析を行った。
【0044】
試験3の試験結果を図6に示す(n=3)
それぞれの抗がん剤に対し、抗がん剤分解剤(有効塩素濃度:50ppm)を加えてから3分後の抗がん剤分解率(%)を求めた。
試験結果から、有効塩素濃度50ppmの抗がん剤分解剤は、(1)シスプラチンを分解処理するにあたって、処理開始から3分後で99%以上分解することが分かった。また、(2)エトポシド、(3)ドキソルビシンを分解処理するにあたって、処理開始から3分後でそれぞれ50%以上、70%以上分解することが分かった。
また、試験2、3の結果から、有効塩素濃度50ppmの抗がん剤分解剤を用いる場合には、抗がん剤を分解処理するにあたって、処理開始から10分経過させることで(より長い時間を経過させることで)、抗がん剤をより分解できることが示唆された。
【0045】
<試験4:抗がん剤に対する分解効果その4>
実施例4の抗がん剤分解剤を用いて、(1)シクロホスファミド、(2)フルオロウラシル、(3)シスプラチン、(4)エトポシド、(5)ドキソルビシンに対する抗がん剤分解効果を確認する試験を以下の手順で行った。
まず、分解対象の5種類の抗がん剤を上記試験1、2と同様にして調整した。
上記の抗がん剤1.0mlそれぞれに対し、実施例4の分解剤9.0mlを加えて振り混ぜたものを測定試料溶液とし、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて上記試験1、2と同様の試験条件で定量分析を行った。
【0046】
試験4の試験結果を図7−8に示す(n=3)
それぞれの抗がん剤に対し、抗がん剤分解剤(有効塩素濃度:200ppm、pH:5.0、6.8に調製したもの)を加えてから3分後の抗がん剤分解率(%)を求めた。
試験結果から、pH:5.0、pH6.8の抗がん剤分解剤は、(4)エトポシドを分解処理するにあたって、処理開始から3分後で100%分解することが分かった。また、(1)シクロホスファミド及び(3)シスプラチンを分解処理するにあたって、処理開始から3分後で99%以上分解することが分かった。
【0047】
また、試験結果から、(2)フルオロウラシル及び(5)ドキソルビシンを分解処理するにあたっては、pH:5.0の抗がん剤分解剤よりもpH6.8の抗がん剤分解剤を用いた場合のほうが、高い分解効果を奏することが分かった。
このことから、上述した弱酸性の次亜塩素酸ナトリウム水溶液による「殺菌メカニズム」とは異なるメカニズムによって、抗がん剤に対する分解効果を奏することが示唆された。
すなわち、本発明の抗がん剤分解剤では、pH5.0〜6.8の範囲内においてpH5.0の場合に最も高い分解効果を奏するものではなく、pH6.8の場合に最も高い分解効果を奏するか、あるいはpH5.0〜6.8の所定値においてピークが存在し、当該ピーク値において最も高い分解効果を奏することが示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8