【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。
【0017】
本方法(請求項1を参照)の核となる概念は、以下のステップを用いて、基板材の中又は上に硬磁性構造体の逆向き磁化配列体を有する磁気構造体を生成することを可能としたものである。
【0018】
1. 基板材の中又は上に複数の第一キャビティを生成し、第一保磁力を示す第一硬磁性体で充填して、硬磁性構造体の第一配列体を生成するステップ。
【0019】
2. 基板材の中又は上に複数の第二キャビティを生成し、第一保磁力よりも小さな第二保磁力を示す第二硬磁性体で充填して、硬磁性構造体の第二配列体を生成するステップ。
【0020】
3. 第一保磁力と第二保磁力を超える磁場強度を有する第一磁場によって、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体を第一向きに磁化するステップ。
【0021】
4. 第一保磁力未満であるが第二保磁力を超える磁場強度を有する第二磁場によって、硬磁性構造体の第二配列体を第一向きと異なる第二向きに磁化するステップ。硬磁性構造体の第二配列体を磁化するステップは、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体を第二磁場に晒すことを含む。
【0022】
1.と2.に記載のステップの順番は、半導体技術とMEMS技術の一般的に用いられている製造条件に応じてフレキシブルである。
【0023】
ステップ1とステップ2の代替例として、例えば、第一キャビティと第二キャビティは、基板材の中又は上に、同時に又は交互に生成され得て、同時に又は交互にそれぞれ第一硬磁性体と第二硬磁性体で充填され得る。
【0024】
基板の中又は上に生成された硬磁性構造体の硬磁性マイクロ構造体又は配列体は、例えば適切な磁化デバイスを用いて、基板レベルで一回のステップで磁化され得る。このプロセスでは、磁石又はマイクロ磁石は逆向きに、例えば交互に逆向きに磁化される。直径300mmの領域にわたって数千kA/mの磁場を生成することができる磁化システムが利用可能となっている。
【0025】
また、異なる硬磁性体の硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体が逆向き磁化を可能にする。
【0026】
まず、保磁力H
CAを有する第一硬磁性体Aから、硬磁性構造体(又はマイクロ構造体)の配列体を生成する。
【0027】
次いで、同じ様にして、基板の他の領域に、保磁力H
CBを有する第二硬磁性体Bから、硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を生成する。H
CBはH
CAよりも小さい。
【0028】
次いで、両種の硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を、H
CAとH
CBを超える強度H
1の磁場によって、一回のステップで同時に磁化させる。
【0029】
最後に、H
CBよりも大きいがH
CAよりも小さい強度H
2の逆向き磁場を印加することによって、一回のステップで、物質Bの硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体を再び磁化させる。このプロセスにおいて、物質Aの硬磁性構造体又はマイクロ構造体の配列体の元々の磁化は維持される。
【0030】
プロセスを加速させることによって、硬磁性構造体又はマイクロ構造体の逆向き磁化配列体の大量生産が促進される。硬磁性体の磁化は一回のステップで行われる。また、複数の物質を利用することで、それら物質の異なる保磁力に基づいて、物質を異なって磁化させることができる。
【0031】
硬磁性構造体の配列体の典型的な寸法は以下のとおりである:
・ 構造体/磁石の端部長さ:10〜1000μm、及び/又は
・ 構造体/磁石同士の間の距離:10〜1000μm
【0032】
硬磁性構造体の配列体の好ましい寸法は以下のとおりである:
・ 構造体/磁石の端部長さ:20〜500μm、及び/又は
・ 構造体/磁石同士の間の距離:20〜500μm
【0033】
硬磁性構造体又はマイクロ構造体の集積配列体の逆向き磁化性は、例えば、以下のものの対象となる:
・ 小型磁気スケール、
・ ボイルコイルドライブやハルバッハ配列に基づいたMEMS部品、
・ 磁気浮上に基づいて無接触で支持された硬磁性構造体又はマイクロ構造体の可動配列体を備えるMEMS部品。
【0034】
実施形態に係る方法(請求項2を参照)では、第一保磁力と第二保磁力の差は50%以上である。
【0035】
最近の磁化デバイスは数パーセントの精度内で磁場を設定及び/又は再生することができるので、物質同士の間の50%以上の保磁力の差が、硬磁性構造体又はマイクロ構造体の逆向き磁化配列体を実現するのに十分なものである。
【0036】
実施形態に係る方法(請求項3を参照)では、硬磁性構造体の第一配列体の複数の第一キャビティの深さ及び/又は断面積が、硬磁性構造体の第二配列体の複数の第二キャビティの深さ及び/又は断面積と異なることで、磁化後の第一配列体と第二配列体の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0037】
つまり、本方法では、第一配列体の磁石の深さ及び/又は断面積が第二配列体の磁石の深さ及び/又は断面積と異なることで、磁化後の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0038】
磁石又はマイクロ磁石が、異なる特性を有する二種類の異なる磁性体製の配列体から成るので、同じ寸法を有する磁石又は構造体が、逆向き(逆符号)で異なる強度を有する磁場をもたらす。この影響は、両種の磁石又はマイクロ磁石の寸法を介して補償可能である。つまり、異なる物質製のマイクロ磁石が発生させる磁場を、製造中において、第一物質製の磁石又は構造体用に第二物質製の磁石又は構造体用よりも浅いキャビティを基板にエッチングすることで、調整することができる。
【0039】
実施形態に係る方法(請求項4を参照)では、複数の第一キャビティと複数の第二キャビティの断面積が互いに等しく、複数の第一キャビティと複数の第二キャビティの深さが互いに異なることで、磁化後の硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0040】
つまり、本方法では、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の磁石の断面積が互いに等しく、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の磁石の深さが互いに異なることで、磁化後の各磁石の磁場強度が等しくなるようにする。
【0041】
本実施形態の具体的な利点は、全ての磁石又はマイクロ磁石の断面積を同じにすることができるという点である。これは、例えば磁気スケールにとって顕著なものとなり得る。
【0042】
実施形態に係る方法(請求項5を参照)では、複数の第一キャビティと複数の第二キャビティを充填することは、充填された物質の物理的及び/又は化学的固化を備え、例えば、基板材に原子層堆積法を行う。
【0043】
元々は緩かった硬磁性粒子及び/又は粉体が、キャビティ又はマイクロキャビティ内で凝集して、機械的に堅固な多孔質構造体又はマイクロ構造体を形成する。
【0044】
実施形態に係る方法(請求項6を参照)では、基板材はガラス材、シリコン材、プラスチック材、又はセラミック材である。
【0045】
例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、セラミック等の一般的な基板材を用いることで、半導体技術やMEMS技術の通常の製造条件で本発明の方法を適用することが促進される。
【0046】
実施形態に係る方法(請求項7を参照)では、第一硬磁性体と第二硬磁性体は、NdFeB材及び/又はSmCo材及び/又はPtCo材である。
【0047】
例えば、NdFeB及び/又はSmCo及び/又はPtCo等の一般的な硬磁性体を用いることで、半導体技術やMEMS技術の通常の製造条件で本発明の方法を適用することが促進される。
【0048】
実施形態に係る方法(請求項8を参照)では、第一硬磁性体と第二硬磁性体は、粉体及び/又は物質粒子で形成される。
【0049】
粉体及び/又は粒子は、多様な断面積及び/又は深さのキャビティを充填することを可能にする。
【0050】
実施形態に係る方法(請求項9を参照)では、基板の中又は上に硬磁性構造体の配列体を生成することは、以下のステップを含む。
【0051】
1. 第一基板の中又は上に硬磁性構造体の第一配列体を生成するステップ。
【0052】
2. 第二基板の中又は上に硬磁性構造体の第二配列体を生成するステップ。
【0053】
第一基板と第二基板は磁化の前に接続される。
【0054】
各基板は、一種類のみの物質製の磁石又はマイクロ磁石を含み、磁化の前に、基板レベルでの接合によって、互いに固定して接続される。このために利用可能な多数の確立された接合プロセスをシリコン技術は有していて、例えば、密封接続用のガルバニック堆積Au‐Sn積層体や、印刷ガラスフリットに基づいたものや、非密封接続用のパターン化された接着剤やポリマーを用いたものが挙げられる。
【0055】
基板を積層することによって、硬磁性マイクロ構造体の三次元配列体を実現することもできる。対応する基板内の磁石又はマイクロ磁石の幾何学的形状と配置は所望のとおりに変更可能であるので、この方法で相互に反発する磁石又はマイクロ磁石の配列体を生成することができる。
【0056】
実施形態に係る方法(請求項10を参照)では、基板の中又は上に硬磁性構造体の配列体を生成することは、以下のステップを含む。
【0057】
1. 第一基板の中又は上に第一数個の第一硬磁性構造体と第二硬磁性構造体を生成するステップ。
【0058】
2. 第二基板の中又は上に第二数個の第一硬磁性構造体と第二硬磁性構造体を生成するステップ。
【0059】
第一基板と第二基板は磁化の前に接続される。
【0060】
いずれの基板上の各磁石又はマイクロ磁石の幾何学的形状と配置を所望のとおりに変更することができるので、この方法で相互に反発するマイクロ磁石の配列体を生成することができる。
【0061】
また、第一基板及び/又は第二基板内の第一硬磁性構造体と第二硬磁性構造体を用いることで、硬磁性マイクロ構造体の三次元配列体を多種多様に生成することができる。
【0062】
実施形態に係る方法(請求項11を参照)では、硬磁性構造体の第一配列体と第二配列体の各磁石は、基板材の中又は上に交互に配置される。
【0063】
実施形態に係る方法(請求項12を参照)では、硬磁性構造体の第一配列体及び/又は第二配列体は、基板材の第一面上に位置するか、又は、基板材の第一面から、基板材の所定の深さまで若しくは第一面の反対側の第二面まで延在する。硬磁性構造体の第一配列体及び/又は第二配列体は、応用に応じてあらゆる深さを有することができ、基板材の第二面まで延在してもよい。
【0064】
連続的な構造体を用いることで、高い(最大)アスペクト比に起因して特に高い磁場強度が達成される(
図6を参照)。しかしながら、特定の値、例えば、7:1を超える値では、発生する磁場は僅かな増大しか示さなくなる。
【0065】
実施形態(請求項13から15を参照)によると、本発明の方法を用いて、2D(二次元)及び/又は3D(三次元)磁気構造体が生成される。
【0066】
以下、図面を参照して、本願の好ましい実施形態をより詳細に説明する。