【解決手段】本体容器1と開口部に着脱可能に装着される吸引・吸入カートリッジ2とからなる非加熱式の吸引・吸入器で、吸引・吸入カートリッジ2は、外筒内に間隙を介して内筒を配設してなる二重管構造を有し、本体容器1は吸着体21に吸着せしめられた液剤を微粒化させて放出する微粒化手段13が備えられ、電源部14とセンサ15とが備えられ、微粒化手段13が棒状電極131と円筒電極132との間でなされるコロナ放電を利用したものであり、吸引・吸入操作を検知したセンサ15からの検知信号により電源部14から電力が供給されて開始されるコロナ放電により液剤は蒸散され微粒化されて吸着体21から放出され、放出された液剤を吸い口22から吸引・吸入しうるように構成されている。
【背景技術】
【0002】
近年、喫煙による健康被害の甚大さから、たばこ葉に火をつけて燃焼させ、煙と共にニコチンを吸引する「紙巻たばこ」に代わる「加熱式たばこ」が普及し始めている。
この「加熱式たばこ」は、「紙巻たばこ」と同様にたばこ葉を用いるものの、燃焼させず、加熱して暖めるに留めているものであるため、「紙巻たばこ」に比べてにおいが少ない。
【0003】
一方、この「加熱式たばこ」とは異なり、たばこ葉を用いず、ニコチンなどが入った液体を加熱して、吸引する、いわゆる「電子たばこ」が、欧米を中心に普及している。
ニコチンが入った液体を加熱して吸引する「電子たばこ」は、我が国では、「医薬品医療機器法」の規制対象であることから、健康影響を調べて厚生労働省の承認を得なければ販売できない。
また、世界の多くの国でも、ニコチンを含む「電子たばこ」には、独自の内容で規制を行っている。
このため、ニコチンを含まない液体を加熱して用いる「電子たばこ」が、「電子ベイプ(VAPE)」などとして販売されている。
この「電子ベイプ(VAPE)」は、ニコチンを含まない液体、例えばコーヒーや、ラベンダー油等のアロマオイル、などを含んだ液体を加熱して吸引する。
【0004】
一方、蒸気圧を利用して吸入用の水を吸い上げ噴霧する蒸気式の喉吸入用又は鼻吸入用吸入器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この吸入器(霧化装置)では、液体(水)をヒータを用いて加熱し沸騰させることにより霧化させ、これを吸入・吸引する。
【0005】
しかしながら、上記したいずれの吸入器,吸引器も、加熱を行っているため、対象とする液体には、加熱により変質しにくいものであることが要求されており、広範な用途に用いるためにも、その改善が要望されていた。
【0006】
なお、加熱を行わないタイプの吸引器として、非加熱型香味吸引器が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、このものは、非加熱型とはいうものの、単純にユーザの吸引のみによりユーザにたばこ等の香味成分を提供するというものであり、香味成分の放出が必ずしも十分でないおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、加熱を行うことなく、常温にて、カートリッジ中に取り込まれている液剤を霧化、蒸散させ、微粒化させて微粒化物として吸引・吸入することのできる、非加熱式の吸引・吸入器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の(1)〜(2)に関するものである。
(1):上部に開口部を有する本体容器と;
前記本体容器の前記開口部に着脱可能に装着される吸引・吸入カートリッジと;
からなる非加熱式の吸引・吸入器であって、
前記吸引・吸入カートリッジは、
外筒内に所定の間隙を介して内筒を配設してなる二重管構造を有し、かつ、
前記内筒の内部に液剤を吸着せしめた吸着体が装着せしめられると共に、
前記外筒の上端部に吸い口が備えられており、
前記本体容器は、
前記開口部の下方の格納空間に、前記吸着体に吸着せしめられた前記液剤を蒸散させ微粒化させて、前記吸着体より放出する微粒化手段が備えられると共に、
前記微粒化手段に電力を供給する電源部と、
前記吸引・吸入カートリッジの前記吸い口からの吸引・吸入操作を検知するセンサと、が備えられ、
前記微粒化手段が、
高電圧が印加される棒状電極と、
前記棒状電極の上方に配置された円筒電極と、
の間でなされるコロナ放電を利用したものであり、
前記吸引・吸入操作を行うことにより生み出される略密閉状態の中で、前記吸引・吸入操作を検知したセンサからの検知信号により前記電源部から電力が供給されて、前記微粒化手段にて前記コロナ放電が行われ、
前記コロナ放電により前記液剤は蒸散され微粒化されて前記吸着体から放出され、
この微粒化されて前記吸着体から放出された前記液剤を、前記吸引・吸入カートリッジの上端の前記吸い口から吸引・吸入しうるように構成されている、
ことを特徴とする、非加熱式の吸引・吸入器に関する。
(2):前記液剤が、カフェインを含む液体、ビタミンを含む液体、アミノ酸を含む液体のうちの1種又は2種以上のものである、前記(1)に記載の非加熱式の吸引・吸入器に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器によれば、加熱を行うことなく、常温にて、カートリッジ中に取り込まれている液剤を霧化、蒸散させ、微粒化させて微粒化物として吸引・吸入することができる。
本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器は、コイルなどのヒーターを用いて加熱していないため、カートリッジ中に取り込まれている液剤について、加熱による変質などのおそれがない。
従って、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器によれば、カートリッジ内の吸着体に浸透せしめる液剤として、熱に弱く、例えば加熱すると香りの成分が変質してしまうアロマオイルなどを用いることができ、この場合にはアロマオイル本来の香りを十分に楽しむことができる。
また、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器によれば、カートリッジ内の吸着体に浸透せしめる液剤として、薬剤(例えば呼吸器疾患を治療する薬剤など)を含むものを用いることにより、医療用機器とすることもできる。
この場合、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器によれば、加熱による薬剤の活性の低下や活性喪失のおそれがない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、非加熱式の吸引・吸入器に関し、
上部に開口部を有する本体容器と;
前記本体容器の前記開口部に着脱可能に装着される吸引・吸入カートリッジと;
からなる非加熱式の吸引・吸入器であって、
前記吸入・吸引カートリッジは、
外筒内に所定の間隙を介して内筒を配設してなる二重管構造を有し、かつ、
前記内筒の内部に液剤を吸着せしめた吸着体が装着せしめられると共に、
前記外筒の上端部に吸い口が備えられており、
前記本体容器は、
前記開口部の下方の格納空間に、前記吸着体に吸着せしめられた前記液剤を蒸散させ微粒化させて、前記吸着体より放出する微粒化手段が備えられると共に、
前記微粒化手段に電力を供給する電源部と、
前記吸引・吸入カートリッジの前記吸い口からの吸引・吸入操作を検知するセンサと、が備えられ、
前記微粒化手段が、
高電圧が印加される棒状電極と、
前記棒状電極の上方に配置された円筒電極と、
の間でなされるコロナ放電を利用したものであり、
前記吸引・吸入操作を行うことにより生み出される略密閉状態の中で、前記吸引・吸入操作を検知したセンサからの検知信号により前記電源部から電力が供給されて、前記微粒化手段にて前記コロナ放電が行われ、
前記コロナ放電により前記液剤は蒸散され微粒化されて前記吸着体から放出され、
この微粒化されて前記吸着体から放出された前記液剤を、前記吸引・吸入カートリッジの上端の前記吸い口から吸引・吸入しうるように構成されている、
ことを特徴とするものである。
【0013】
以下、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器の一実施形態を示す説明図であって、
図1(a)は正面から見た説明図、
図1(b)は平面から見た説明図、
図1(c)は底面から見た説明図、
図1(d)は右側面から見た説明図、
図1(e)は左側面から見た説明図である。また、
図2は、
図1(a)で示される正面から見た説明図の中央部縦断面説明図であり、
図3は、
図1で示される発明に係る非加熱式の吸引・吸入器の一実施形態を示す説明図の斜視説明図であり、
図4は、
図3において、本体容器と吸引・吸入カートリッジとを分離した状態を示す斜視説明図である。
また、
図5は、
図1で示される発明に係る非加熱式の吸引・吸入器の一実施形態を示す説明図について、内部の構造を示す斜視説明図であり、
図6は、
図5の一部拡大説明図である。
さらに、
図7は、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器のうちの吸引・吸入カートリッジについての一実施形態を示す説明図であって、
図7(a)は正面から見た説明図、
図7(b)は平面から見た説明図、
図7(c)は底面から見た説明図である。
また、
図8は、
図7(a)で示される正面から見た説明図の中央部縦断面説明図であり、
図9は、
図7で示される吸引・吸入カートリッジの一実施形態を示す説明図の斜視説明図である。さらに、
図10は、
図7(a)で示される正面から見た説明図の中央部縦断面説明図であって、コロナ放電により微粒化された微粒化物の流路を示す断面説明図である。
但し、図面は、いずれも本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器を示す概略図である。従って、製品化に際しては、必要に応じて、適宜より実用的な設計をなすことができる。
【0014】
本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器Aは、本体容器1と;吸引・吸入カートリッジ2と;からなるものである。
【0015】
本体容器1は、上部に開口部11を有しており、この開口部11の下方に格納空間(内部空間)12を有している。
本体容器1の開口部11の下方の格納空間12には、棒状電極131と円筒電極132とからなる微粒化手段13が備えられている。
さらに、本体容器1の内部には、電源部14と、センサ15と、が備えられている。
【0016】
電源部14としては、充電式電池が用いられる。必要に応じて、本体容器1には、充電式電池の充電用の外部電源接続口141(具体的には例えば、マイクロUSB差し込み口)を設けることもできる。
なお、符号17は制御基板であり、符号171は高圧回路であり、符号172はトランスであり、符号173は充電回路である。
【0017】
センサ15としては、吸い口22から行われる吸引・吸入操作を検知することのできるセンサであればよく、通常、負圧センサが用いられる。センサ15(特に負圧センサ)にて、吸引・吸入操作により生じる圧力の変化を計測し、圧力の変化が一定値以上となると、これを電気信号に変換し、検知信号として出力することができる。
このセンサ15からの検知信号により、電源部14のスイッチがONとなるようにされており、このため、吸い口22から行われる吸引・吸入操作をセンサ15が検知すると、センサ15はこれを検知信号として出力し、この結果、電源部14から電力が供給されて、微粒化手段13にてコロナ放電が行われることになる。
【0018】
図では、本体容器1は、外形が略箱型のものを示しているが、これに限定されるものではない。
本体容器1の上部には、開口部11が備えられており、この開口部11に、後記するように吸引・吸入カートリッジ2が着脱可能に装着される。吸引・吸入カートリッジ2の装着により、開口部11は略密閉状態となる。
なお、吸引・吸入カートリッジ2を装着する方法としては、吸引・吸入カートリッジ2を挿入すること(即ち、中に差し込むこと、挟み込むこと)によるものであってもよいし、或いは吸引・吸入カートリッジ2を接続すること(即ち、つなぐこと、続けること)によるものであってもよい。この意味で、「装着」は、「挿入・接続」という文言に置き換えることもできる。
ここで「略密閉状態」と表記し、「密閉状態」と表記しなかったのは、着脱可能に装着されるものにあっては、完全密閉状態というのが困難であることに加えて、吸引・吸入カートリッジ2の下部周縁には、開口部11への装着の際の密着性を高めるために、通常、スリット(図示していない)が入れられていたりするからである。
【0019】
なお、本体容器1の上部に備えられている開口部11に、吸引・吸入カートリッジ2を装着した後に、後記するように、吸引・吸入カートリッジ2の上端の吸い口22をくわえて、この吸い口22からの吸引・吸入操作を行うことにより、格納空間12に略密閉状態が生み出される。
ここで「略密閉状態」と表記し、「密閉状態」と表記しなかったのは、吸引・吸入操作をより容易なものとするために、格納空間12の外側にあたる本体容器1の外装には、通気孔16が設けられており、完全密閉状態とはされていないからである。
【0020】
このような略密閉状態の中で、前記吸引・吸入操作を検知したセンサ15からの検知信号により、電源部14から電力が供給されて、コロナ放電が行われることになる。
【0021】
本体容器1に備えられている微粒化手段13は、吸引・吸入カートリッジ2内の吸着体21に吸着せしめられている液剤を蒸散させ微粒化させて、吸着体21より放出する機能を有するものであって、具体的には、前記したように棒状電極131と円筒電極132とからなるものである。
円筒電極132は、文字通り円筒形状に設けられ、接地されて、棒状電極131との二つの電極間でコロナ放電がなされる。
【0022】
ここで円筒電極132と組み合わせる電極としては、棒状電極131が用いられる。円筒電極132と組み合わせる棒状電極としては、全体が細長い円筒状をなす棒電極や、棒電極の先端が尖った形の針電極などが挙げられる。円筒電極132と組み合わせる棒状電極としては、針電極のように尖った先端を有するものを用いる方が、コロナ放電によるオゾンの発生量がより少なくなるため、オゾンの発生を避ける見地からより好ましい。
なお、符号133は印加側端子であり、符号134はGND側端子である。図中、配線は省略してある。
【0023】
棒状電極131の上端は、上方に配置されている円筒電極132の中空部と近接して配置され、両電極間でコロナ放電しうるように構成されている。
この棒状電極131には、直流又は交流による、プラス又はマイナスの高電圧が印加される。
棒状電極131に高電圧が印加されることで、棒状電極131の上端からコロナ放電を生じさせることができる。
なお、コロナ放電は、火花が散るような放電ではなく、また、運転中、万一電極に触れたとしても、静電気程度のものであり、安全性についての心配はない。必要に応じて、適宜、既知の安全回路を組み込むことができる。
【0024】
なお、棒状電極131に高電圧を印加するために、電源部14としては、直流又は交流による、高圧回路171を備えたものが用いられている。電源部14として具体的には、高圧回路171を備えた充電式電池が好ましく用いられる。
高圧回路171を備えていることから、電源部14からは、−2,000V〜−15,000Vという、高電圧の直流又は交流の電流が印加される。
【0025】
また、棒状電極131の上方には、詳しくは棒状電極131の上端の上方には、円筒電極132が設けられている。
プラスの高電圧(−2,000〜−15,000V)を印加する場合、棒状電極131側がマイナス側(陰極)に、円筒電極132側がプラス側(陽極)とされる。
【0026】
上記した如き本体容器1の上部の開口部11に、吸引・吸入カートリッジ2が着脱可能に装着される。
従って、吸入・吸引カートリッジ2は、本体容器1の上部の開口部11から、容易に着脱することができる。即ち、吸入・吸引カートリッジ2は、本体容器1の上部の開口部11から容易に取り外したり、反対に開口部11へ容易に取付けたりすることができる。
【0027】
吸入・吸引カートリッジ2は、外筒2A内に所定の間隙2Bを介して内筒2Cを配設してなる二重管構造を有している。
本実施形態においては、吸引・吸入カートリッジ2は、筒型、特に円筒形の中空容器からなっており、
図8などに示すように、縦断面形状が略凸状をなすものが用いられているが、これに限定されるものではない。
【0028】
吸入・吸引カートリッジ2は、内筒2Cの内部に吸着体21が装着せしめられており、外筒2Aの上端部には、吸い口22が備えられている。
【0029】
吸着体21には、液剤が吸着せしめられている。液剤については、後述する。
吸着体21としては、液剤を吸着しうるものであれば特に限定されず、例えばろ紙やフィルターなどが用いられるが、本実施形態においては、ろ紙が用いられている。
吸着体21の形状としても特に限定されないが、本実施形態においては、吸着体21を装着している内筒2Cの形状に合わせて、円筒形状のものとされている。
【0030】
吸入・吸引カートリッジ2の外筒2Aと内筒2Cとの間の間隙2Bが、吸引・吸入カートリッジ2内の吸着体21に吸着せしめられている液剤がコロナ放電により蒸散させられ微粒化させられたときの流路となる。
【0031】
吸引・吸入カートリッジ2の外筒2Aの上端部に備えられている吸い口22をくわえて吸引する吸引・吸入操作を一度行うと、本体容器1の開口部11の下方の格納空間12に略密閉状態が生み出され、このように吸引・吸入操作を行うことにより生み出される略密閉状態の中で、前記吸引・吸入操作を検知したセンサ14からの検知信号により、電源部13から電力が供給されて、微粒化手段13によりコロナ放電が開始されることになる。
棒状電極131と円筒電極132との間におけるコロナ放電の開始により、棒状電極131と、棒状電極131の上方に配置されている円筒電極132との間に、棒状電極131の方向へと向かう上向流(上昇流)のイオン風が生じるが、上記したように、格納空間12に略密閉状態が生み出されていることから、この上向流(上昇流)のイオン風は、弱いものとなる。
この上向流(上昇流)のイオン風について、あまり強い流れとせず、弱い(僅かな)ものとすることが望ましい。
このため、適宜、印加する電圧を落とすなどの工夫を行っておくことが好ましい。
なお、コロナ放電の時間は、予め既知の手段により所定時間に設定しておく。
【0032】
ここで本体容器1の上部の開口部11に、吸引・吸入カートリッジ2を装着したときに、吸引・吸入カートリッジ2と棒状電極131と円筒電極132とからなる微粒化手段13とは、近接位置に配置されるように構成されている。
即ち、棒状電極131と円筒電極132とからなる微粒化手段13の真上に、特に円筒電極132の真上の近接位置に、吸引・吸入カートリッジ2内の吸着体21がくるように、両者は同軸上に配置されている。
それ故、棒状電極131と円筒電極132とからなる微粒化手段13(特に棒状電極131の上方に配置されている円筒電極132)と、吸引・吸入カートリッジ2内の吸着体21とは、近接位置に配置されている。
従って、吸引・吸入カートリッジ2内の吸着体21に予め吸着せしめられている液剤は、このようにコロナ放電を利用した微粒化手段13(棒状電極131と円筒電極132とからなる)によって発生する上向流(上昇流)のイオン風により、霧化、蒸散させられ微粒化させられて、吸着体21より放出されるが、上向流(上昇流)のイオン風は弱いものであるため、放出された液剤は、棒状電極131と円筒電極132とからなる微粒化手段13と、吸着体21との間の空間付近に限りなく留まっている。ここで「限りなく留まっている。」としたのは、全て留まっているというのではなく、ほぼ(9割程度以上)留まっている状態であるという趣旨である。
【0033】
ここでさらに吸い口22をくわえて吸引する吸引・吸入操作を続けると(吸い続けると)、吸着体21から放出され、棒状電極121と円筒電極122とからなる微粒化手段13と吸着体21との間の空間付近に留まっている、微粒化された液剤は、吸引・吸入カートリッジ2の外筒2Aと内筒2Cとの間の間隙2Bを流路として、上方にある吸引・吸入カートリッジの上端の吸い口22方向に流れ、吸い口22から吸引・吸入することができることとなる。
この一連の1回の吸引・吸入操作毎に所定時間1回のコロナ放電が行われ、微粒化させられている液剤が1回分吸引・吸入されることになる。
この一連の吸引・吸入操作を適宜何回か繰り返すことにより、コロナ放電を複数回行い、1回のコロナ放電毎に微粒化させられている液剤を、繰り返し複数回吸引・吸入することができる。
一つの吸入・吸引カートリッジ2内の吸着体21に、1回のコロナ放電にて吸引・吸入される量の数回分(4〜5回分)に相当する量の放出が可能な量の液剤を吸着させておくことにより、一つの吸引・吸入カートリッジ2にて、数回(4〜5回)程度の吸引・吸入操作を行うことができる。
数回程度、吸引・吸入操作を行った後は、吸引・吸入カートリッジ2を本体容器1の上部の開口部11から取り外し、必要に応じて新たな吸引・吸入カートリッジ2を装着することにより、連続しての吸引・吸入が可能となる。
吸引・吸入カートリッジ2は、吸い口22と、液剤を吸着させた吸着体21と、が一体となっているため、交換を1回(一度)で済ますことができる。
【0034】
本発明において、吸引・吸入カートリッジ内の吸着体21に浸透せしめる液剤としては、液体状のものであればよく、特に制限はない。具体的には例えばオゾン水,イオン水,アルカリイオン水,水素水,酸性水などの機能水や精製水や水道水などの水、コーヒー,紅茶,緑茶等やこれらの成分(例えば、カフェインやカテキンなど)を有する液体;ピーチ,アップル,オレンジ等のフルーツの風味を有する液体;チョコレート,バニラ等のデザート系の風味を有する液体;ラベンダー油,ユーカリ油等のアロマオイル;液体状のサプリメント(例えば、それぞれ液体状のビタミン,アミノ酸,不飽和脂肪酸,ミネラル,ハーブ等)などが挙げられ、これらの1種を、又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの他に、必要に応じてニコチンを含む液剤を用いることもできる。
ここで液体状のビタミンとしては、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなどを挙げることができる。また、アミノ酸としては、バリン,ロイシン,イソロイシン,グルタミン,グルタミン酸,アスパラギン,アスパラギン酸などを挙げることができる。さらに、不飽和脂肪酸としては、DHAやEPAを挙げることができる。
これらの中でもとりわけ香りを楽しむことのできるものや、肺から血中へ直接入れる成分、などが好ましく用いられ、具体的には、カフェインを含む液体、ビタミン(特にビタミンB群)を含む液体、アミノ酸を含む液体のうちの1種又は2種以上が特に好ましく用いられる。
【0035】
ここでアロマオイルとは、「アロマテラピーに用いるオイル」を意味しており、換言すればエッセンシャルオイル(精油)を指している。
アロマオイルは熱に弱く、熱が加わった時点で香りの成分が変質してしまう。
しかしながら、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器では、加熱を行うことなく、常温にて、カートリッジ中に取り込まれている液剤を霧化、蒸散させ、微粒化させて微粒化物として吸引・吸入できるため、液剤としてアロマオイルを用いた場合には、アロマオイル本来の香りを楽しむことができ、吸引・吸入する対象として好ましく用いられる。
アロマテラピーに用いられるエッセンシャルオイル(精油)としては、例えばラベンダー油,ユーカリ油など、植物の花や果実などから抽出した揮発性のオイルが挙げられる。
【0036】
なお、本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器は、必要に応じて、医療用吸引・吸入器として用いることもでき、この場合には、カートリッジ内の吸着体に浸透せしめる液剤として、薬剤(例えば、呼吸器疾患を治療する薬剤など)を含むものを用いることもできる。
【0037】
また、カートリッジ内の吸着体に浸透せしめる液剤として、前記したように、いわゆるサプリメントを液剤化したものを用いることもできる。この場合には、サプリメントを経口摂取するよりも胃腸等に与えるダメージを軽減できる可能性がある。
【0038】
なお、吸引・吸入カートリッジ内の吸着体21に浸透せしめる液剤としては、上記した如き液剤、特に水溶性の液剤に「ゲル化剤」を組み合わせたものであってもよい。「ゲル化剤」を組み合わせることにより、ろ紙を使用しなくとも、液剤を吸引・吸入カートリッジに留めることができる。この意味で、この「ゲル化剤」を一種の吸着体ということもできる。
【0039】
ここで、ゲル化剤としては、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムなどを挙げることができ、本発明においては、これらのうちの1種を単独で、或いは、これらの2種以上を組合せて用いることができる。
【0040】
このうち高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer;略称 SAP)は、高吸水性ポリマー或いは高吸水性高分子などとも呼ばれ、多量の水を吸水してゲル化し、吸水した水を保持する機能を有する高分子材料である。
この高吸水性樹脂(高吸水性ポリマー)としては、ポリアクリル酸系樹脂などの合成ポリマー系のものと;デンプン系、セルロース系などの天然物由来系のものと;が挙げられ、本発明においては、これらのいずれを用いることができる。
【0041】
高吸水性樹脂のうち、ポリアクリル酸系樹脂、なかでもポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩系樹脂は、非常に親水性が高く、さらに網目構造に架橋し、3次元に架橋した分子構造を有していることから、高い吸水性・保水性を持つゲルとなっている(自重の数百倍から約千倍までの吸水力・保水力がある)ので、本発明において好ましく用いられる。但し、ポリアクリル酸塩系樹脂は、吸水力・保水力が高いことから、一旦吸収した水などは、多少の圧力をかけてもほとんど放出しないという特質がある。
【0042】
例えば、ゲル化剤として、高吸水性樹脂を用いた場合には、高吸水性樹脂に液剤、特に水溶性の液剤を染み込ませたものを吸着体とすることができる。この場合、高吸水性樹脂の網目構造の中に液剤が取り込まれることになり、これによって液剤を少しずつ放出することができるものである。
【0043】
本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器によれば、本体容器1の上部の開口部11に、吸引・吸入カートリッジ2を装着し、吸引・吸入カートリッジ2の吸い口22をくわえて吸引・吸入することにより、コロナ放電が開始され、コロナ放電により発生した上向流(上昇流)のイオン風を利用して、吸引・吸入カートリッジ2内の吸着体21に予め吸着せしめられている液剤は、霧化、蒸散させられ微粒化させられて、吸着体21より放出され、さらに吸い口22をくわえて吸引する吸引・吸入操作を行うことにより、吸着体21から放出され、棒状電極131と円筒電極132とからなる微粒化手段13と吸着体21との間の空間付近に限りなく留まっている液剤は、吸引・吸入カートリッジ2の外筒2Aと内筒2Cとの間の間隙2Bを流路として、上方にある吸引・吸入カートリッジの上端の吸い口22方向に流れ、吸い口22から吸引・吸入することができることとなる。
【0044】
以上の構成による本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器によれば、加熱を行うことなく、常温にて、吸引・吸入カートリッジ2中に取り込まれている液剤を霧化、蒸散させ、微粒化させて微粒化物として吸引・吸入することができる。
本発明に係る非加熱式の吸引・吸入器は、コイルなどのヒーターを用いて加熱していないため、カートリッジ中に取り込まれている液剤について、加熱による変質などのおそれがない。
【0045】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。