(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-29451(P2021-29451A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】綿加工体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20210201BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20210201BHJP
A61F 13/36 20060101ALI20210201BHJP
【FI】
A61F13/00 T
A61F13/00 301S
A61F13/00 301A
A61F13/15 320
A61F13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-150887(P2019-150887)
(22)【出願日】2019年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】391022120
【氏名又は名称】株式会社長谷川綿行
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 豪
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA09
3B200BB03
3B200BB30
3B200CA17
3B200EA01
(57)【要約】
【課題】製造工数、製造コストをかけずに製造することができる綿加工体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】X線造影部材12を、整形ガイド40内において棒状の取付部材30に取り付けられた状態とする取り付け工程と、X線造影部材12の外側に綿体を覆い綿球10を形成する覆い加工工程と、綿球10内にX線造影部材12を残した状態で、取付部材30を取付部材30の軸線C方向に沿って引き抜く引き抜き工程と、を行うことでX線造影部材12が配される綿球10が製造される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線造影部材が配される綿加工体の製造方法であって、
前記X線造影部材を、整形ガイド内において棒状の取付部材に取り付けられた状態とする取り付け工程と、
前記X線造影部材の外側に綿体を覆い前記綿加工体を形成する覆い加工工程と、
前記綿加工体内に前記X線造影部材を残した状態で、前記取付部材を前記取付部材の軸線方向に沿って引き抜く引き抜き工程と、
を行うことを特徴とする綿加工体の製造方法。
【請求項2】
前記取り付け工程は、前記整形ガイドの外で前記X線造影部材を前記取付部材に取り付け、前記整形ガイド内に移動させることを特徴とする請求項1記載の綿加工体の製造方法。
【請求項3】
綿体により、X線造影部材が外周面に露出しない状態で被覆され、
外周面から内部に向かう孔が形成され、前記孔の内周面の一部を前記X線造影部材が構成していることを特徴とする綿加工体。
【請求項4】
前記X線造影部材が、平板状に形成され、変形を容易にする変形容易手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の綿加工体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線造影部材が配設された綿加工体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の綿加工体(使い捨て衛生部材)及びその製造方法として、特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
これによれば、球状の衛生材料を上面視で2等分する縦方向仮想線によって形成される縦方向断面と、衛生部材の縦方向仮想線の中央部分でこの縦方向仮想線に直交する横方向仮想線によって形成される横方向断面との交線から離間した位置の衛生材料の下部から、横方向断面に沿って衛生部材の上部に向けて連続した一本の糸状のX線造影糸を通していた。
【0004】
次いで、この衛生部材の横方向断面に沿ってこの衛生部材に通したX線造影糸に対して衛生部材の上部で縦方向仮想線をまたいだ略対称な位置の衛生材料の上部から、横方向断面に沿って衛生部材の下部に向けてX線造影糸を通していた。この後、この衛生部材の縦方向断面と横方向断面との交線から離間した位置の衛生部材の下部から、縦方向断面に沿って衛生部材の上部に向けてX線造影糸を通していた。
【0005】
さらに、この衛生部材の縦方向断面に沿って衛生部材に通したX線造影糸に対して衛生部材の上部で横方向仮想線をまたいだ略対称な位置の衛生部材の上部から、縦方向断面に沿って衛生部材の下部に向けてX線造影糸を通して形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−217946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の綿加工体では、複雑な製造工程を経て製造されるため、製造工数、製造コストがかかる問題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、製造工数、製造コストをかけずに製造することができる綿加工体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、X線造影部材が配される綿加工体の製造方法であって、
前記X線造影部材を、整形ガイド内において棒状の取付部材に取り付けられた状態とする取り付け工程と、
前記X線造影部材の外側に綿体を覆い前記綿加工体を形成する覆い加工工程と、
前記綿加工体内に前記X線造影部材を残した状態で、前記取付部材を前記取付部材の軸線方向に沿って引き抜く引き抜き工程と、
を行う。
【0010】
これによれば、X線造影部材を、整形ガイド内において棒状の取付部材に取り付けられた状態とし、X線造影部材の外側に綿体を覆い綿加工体を形成し、綿加工体内にX線造影部材を残した状態で取付部材を取付部材の軸線方向に沿って引き抜くという簡易な工程で、製造工数、製造コストをかけずに綿加工体を製造することができる。
【0011】
また、前記取り付け工程を、前記整形ガイドの外で前記X線造影部材を前記取付部材に取り付け、前記整形ガイド内に移動させることとする。
【0012】
これによれば、スペースの制約がない整形ガイドの外でX線造影部材を取り付け、手動、又は、駆動手段を用いて取付部材を移動させることで、製造効率を向上させることができる。
【0013】
また、請求項3の発明では、綿体により、X線造影部材が外周面に露出しない状態で被覆され、
外周面から内部に向かう孔が形成され、前記孔の内周面の一部を前記X線造影部材が構成している。
【0014】
これによれば、上記の製造方法により製造された結果物としての綿加工体として、製造工数、製造コストを減少させた綿加工体となる。また、X線造影部材が外周面に露出しない状態で被覆されているのでX線造影部材が外れにくい綿加工体となるとともに、孔の内周面を覗くことで、X線造影部材の存在を確認することが可能となるので、取り扱い物品の取り違えを防止することができる。
【0015】
また、前記X線造影部材が、平板状に形成され、変形を容易にする変形容易手段を備えている構成とすれば、X線造影部材の変形を容易にすることで、タクトタイムを減少させることができるため、製造コスト削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の綿加工体の(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【
図2】同実施形態の綿加工体の製造方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の綿加工体の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
綿加工体として、綿球10を例示して説明する。綿球10は、
図1(a)、(b)に示すように、綿体11により、X線造影部材12が外周面10aに露出しない状態で被覆されている。綿球10の外周面10aから内部に向かう断面略円形状状の有底孔10bが形成され、有底孔10bの内周面10cの一部をX線造影部材12が構成している。
【0019】
綿体11は、綿花を脱脂・漂白した脱脂綿が用いられている。そして、棒状に形成された綿体11を加工して綿球10を形成する。
【0020】
X線造影部材12は、可塑剤を含んだポリ塩化ビニル製で、
図3に示すように、変形可能な円盤状に形成され、X線造影剤として、硫酸バリウムが配合されている。
【0021】
製造装置20は、
図2に示すように、取付部材30と、整形ガイド40と、で構成されている。
【0022】
取付部材30は、金属製で円柱状に形成されている。本実施形態では、取付部材30は、モータ31に接続され、
図2における上下方向を軸として回転可能とされている。さらに、モータ31は、図示しない既存の油圧シリンダ等を用いた移動機構により、上下方向(取付部材30の軸線C方向)に沿って移動可能とされている。
【0023】
整形ガイド40は、金属製で直方体状に形成され、
図2の紙面手前側から向こう側に貫通する断面円形状のガイド孔40aが形成され、ガイド孔40aの内面がガイド面40bとされ、X線造影部材12の外側を覆う綿体11を、球状に整形可能とされている。
【0024】
整形ガイド40の上面側には、X線造影部材12を取り付けた取付部材30が、整形ガイド40内外に出入り可能な挿通部40cが配設されている。
【0025】
本発明の綿球10の製造方法を以下に説明する。
【0026】
図2(a)に示すように、製造装置20の取付部材30としての針の先端部分に、X線造影部材12を厚み方向に沿って挿通させて取り付ける。そして、
図2(b)に示すように、取付部材30を下側に移動させ、取付部材30に取り付けられたX線造影部材12を、整形ガイド40内に配置する(取り付け工程)。
【0027】
図2(c)に示すように、モータ31を駆動させて、取付部材30に取り付けられたX線造影部材12を回転させ、整形ガイド40内に棒状の綿体11を送り、X線造影部材12の外側に綿体11を覆い綿球10を形成する(覆い加工工程)。
【0028】
このとき、回転するX線造影部材12に向けて棒状の綿体11を送りこむと、綿体11が、取付部材30及びX線造影部材12に絡み付き、整形ガイド40のガイド面40bに当たることで、球状に整形される。
【0029】
球状に形成された綿球10に表面加工剤を、スプレー等を用いて塗布する。
【0030】
図2(d)に示すように、綿球10内にX線造影部材12を残した状態で、取付部材30を上方向(取付部材30の軸線C方向に沿って)に引き抜く(引き抜き工程)。
【0031】
このとき、X線造影部材12と、取付部材30の基端側に位置する整形ガイド40との間に綿体11が配置され、取付部材30を上側に移動させてもX線造影部材12は、綿体11により上方向への移動を規制されて、取付部材30の上方向の移動に追随することはない。換言すれば、取付部材30のみが引き抜かれることになる。
【0032】
排出用の棒等を用いて、整形ガイド40から綿球10を取り出し、X線造影部材12入りの綿球10が完成する。完成した、綿球10は、
図1に示すように、X線造影部材12が外周面10aに露出しない状態で被覆され、外周面10aから内部に向かう有底孔10bが形成され、有底孔10bの内周面10cの一部をX線造影部材12が構成する状態となっている。
【0033】
本発明を製造方法としてみれば、X線造影部材12が配される綿加工体の製造方法であって、
X線造影部材12を、整形ガイド40内において棒状の取付部材30に取り付けられた状態とする取り付け工程と、
X線造影部材12の外側に綿体11を覆い綿球10を形成する覆い加工工程と、
綿球10内にX線造影部材12を残した状態で、取付部材30を取付部材30の軸線C方向に沿って引き抜く引き抜き工程と、
を行う。
【0034】
これによれば、X線造影部材12を、整形ガイド40内において棒状の取付部材30に取り付けられた状態とし、X線造影部材12の外側に綿体11を覆い綿球10を形成し、綿球10内にX線造影部材12を残した状態で取付部材30を取付部材30の軸線C方向に沿って引き抜くという簡易な工程で、製造工数、製造コストをかけずに綿球10を製造することができる。
【0035】
また、取り付け工程を、整形ガイド40の外でX線造影部材12を取付部材30に取り付け、整形ガイド40内に移動させることとしている。
【0036】
これによれば、スペースの制約がない整形ガイド40の外でX線造影部材12を取り付け、駆動手段を用いて取付部材30を移動させることで、製造効率を向上させることができる。
【0037】
また、物の発明としてみれば、綿体11により、X線造影部材12が外周面10aに露出しない状態で被覆され、
外周面10aから内部に向かう有底孔10bが形成され、有底孔10bの内周面10cの一部をX線造影部材12が構成している。
【0038】
これによれば、上記の製造方法により製造された結果物としての綿球10として、製造工数、製造コストを減少させた綿球10となる。また、X線造影部材12が外周面10aに露出しない状態で被覆されているのでX線造影部材12が外れにくい綿球10となるとともに、有底孔10bの内周面10cを覗くことで、X線造影部材12の存在を確認することが可能となるので、取り扱い物品の取り違えを防止することができる。
【0039】
本発明の綿球10は、上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0040】
例えば、X線造影部材12を、整形ガイド40内において、取付部材30に取り付けることも可能である。
【0041】
また、X線造影部材12の形状は、綿球10内にX線造影部材12を残した状態で取付部材30を取付部材30の軸線C方向に沿って引き抜くことが可能であれば、適宜変更することができる。平板状であれば、多角形状、楕円形状、星形形状等とすることができる。さらに、立体形状であれば、球状、立方体状、金平糖形状等とすることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、X線造影部材12を円盤状に形成していたが、覆い加工工程時に変形を容易にする変形容易手段を設けることも可能である。変形容易手段としては、例えば、X線造影部材12を星形形状としたり、多角形状、円形状、楕円形状、等に形成して、外周縁から内側に向かうスリット等を形成したりすることが考えられる。
【0043】
このような構成とすれば、X線造影部材12の変形を容易にすることで、タクトタイムを減少させることができるため、製造コスト削減に寄与する。
【0044】
また、取付部材30は、綿球10内にX線造影部材12を残した状態で取付部材30を取付部材30の軸線C方向に沿って引き抜くことが可能であれば、中空状、針状であってもよいし、素材も、適宜変更することができる。
【0045】
また、綿体11は、綿製の脱脂綿が用いられたが、同様の性質を有するのであれば、ポリエステル、レーヨン等の化学繊維を適用することができる。
【0046】
また、綿加工体として綿球10を例示したが、綿加工体の形状としては、X線造影部材12が外周面10aから露出しないのであれば、球状の綿球10以外の、タンポンのような円柱状、楕円球状、直方体状、多角面体状等の外形形状とすることも可能である。
【0047】
また、綿球10の外周面10aから内部に向かう有底孔10bとしていたが、綿球10を貫通する貫通孔とすることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 綿球
10a 外周面
10b 有底孔
10c 内周面
11 綿体
12 X線造影部材
30 取付部材
40 整形ガイド
C 軸線