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特開2021-30217高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-30217(P2021-30217A)
(43)【公開日】2021年3月1日
(54)【発明の名称】高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒及びその用途
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/80 20060101AFI20210201BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20210201BHJP
   B01J 37/12 20060101ALI20210201BHJP
   B01J 37/32 20060101ALI20210201BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20210201BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20210201BHJP
   C01B 32/174 20170101ALI20210201BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20210201BHJP
【FI】
   B01J23/80 M
   B01J35/10 301G
   B01J37/12
   B01J37/32
   B01J37/34
   B01J37/16
   C01B32/174
   C02F1/72 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-23888(P2020-23888)
(22)【出願日】2020年2月15日
(11)【特許番号】特許第6706404号(P6706404)
(45)【特許公報発行日】2020年6月10日
(31)【優先権主張番号】201910775488.8
(32)【優先日】2019年8月21日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】許柯
(72)【発明者】
【氏名】張翼飛
(72)【発明者】
【氏名】任洪強
(72)【発明者】
【氏名】耿金菊
【テーマコード(参考)】
4D050
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4D050AA12
4D050AB03
4D050AB13
4D050AB14
4D050AB15
4D050AB16
4D050AB17
4D050AB18
4D050BB02
4D050BC06
4D050BC07
4D050CA13
4G146AA11
4G146AB08
4G146AD11
4G146AD35
4G146BA04
4G146BB03
4G146BC02
4G146BC32A
4G146BC32B
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA21C
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CA05
4G169CA10
4G169EC03Y
4G169EC14Y
4G169EC24
4G169FB30
4G169FB41
4G169FB46
4G169FB57
4G169FB58
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】触媒分解技術分野に関し産業廃水の高度処理をサポートする、高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒及びその用途を提供する。
【解決手段】高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒は、カーボンナノチューブ前処理→3次元CNTs―P骨格調製→3次元CNTs―Fe/Zn複合材料調製のステップで取得され、シュウ酸、シプロフロキサシン、インジゴ、メチルオレンジ、フェノール、フタル酸ジメチルおよびスルファメトキサゾールなどの有機廃水に含まれる処理対象に対するの触媒処理に用いられ、該方法は簡単で入手しやすく、調製された3次元CNTs―Fe/Zn触媒は磁性を有し、分離可能であり、再利用率が向上し、経済的で環境に優しく、特に酸塩基条件下で、フタル酸ジブチル(DBP)に対して良好な触媒活性を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブを5時間ボールミルした後、平均長さ1μmのCNTsを得るS1
1と、カーボンナノチューブを機能修飾し、濃硝酸と濃硫酸の体積比3:1の混酸を酸酸
化システムとして使用し、ステップS11で調製されたCNTsを前記混酸システムに分
散させ、135℃で14時間攪拌し、室温まで冷却し、pH=6.2まで洗浄し、凍結乾
燥してCNTs―Pを得るステップS12を含む、カーボンナノチューブを前処理するス
テップS1と、
等量のCNTs―P水溶液とアルギン酸ナトリウム溶液を取り均一に混合して金型に入れ
、異なる温度勾配で固体状態に冷却するステップS21と、ステップS21で得られた固
体状態の生成物を凍結乾燥して、3次元CNTs―P骨格を得るステップS22とを含む
、3次元CNTs―P骨格を調製するステップS2と、
モル比1:2:2でZn(NO・6HO、Fe(NO・9HOおよびク
エン酸を改質剤として計量するステップS31と、前記改質剤と前記3次元CNTs―P
骨格を1:(5〜6)の比例で混合し、前記混合物を無水エタノールに溶解し、30分超
音波処理し、水浴で水分が目立たなく成るまで蒸発させ尿素を混合し攪拌するステップS
32と、ステップS32で調製された混合物を管状炉に入れ、窒素ガス雰囲気中で焼成し
、焼成物を室温まで冷却し、凍結乾燥した後3次元CNTs―Fe/Zn複合材料を得る
を含むステップS33とを含む3次元CNTs―Fe/Zn複合材料を調製するステップ
S3と、を含むことを特徴とする高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の調
製方法。
【請求項2】
前記ステップS21では、凍結乾燥の具体的なパラメータとして、凍結温度が‐50℃で
、真空度<20Pa、干燥時間が48時間であることを特徴とする請求項1に記載の高p
Hに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の調製方法により製造された高pHに適合
したカーボンナノチューブオゾン触媒。
【請求項3】
前記ステップS33では、前記窒素ガス流量が50mL/分であり、管状炉の焼成時の昇
温速度が5℃/分であり、焼成温度の範囲が500〜800℃であり、焼成時間均が4時
間であることを特徴とする請求項1に記載の高pHに適合したカーボンナノチューブオゾ
ン触媒の調製方法により製造された高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒。
【請求項4】
pH値の分散度が大きい産業有機廃水のオゾン触媒酸化高度処理プロセスに使用されるこ
とを特徴とする請求項1に記載の高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の調
製方法により製造された高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の用途。
【請求項5】
前記有機廃水中の処理対象が、シュウ酸、シプロフロキサシン、インジゴ、メチルオレン
ジ、フェノール、フタル酸ジメチルおよびスルファメトキサゾールを含むことを特徴とす
る請求項4に記載の高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒分解技術分野に関し、具体的には高pHに適合したカーボンナノチューブ
オゾン触媒及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
中国における産業廃水の排出量が益々高くなっており、廃水高度処理技術の有効な方式と
して、オゾン触媒酸化が近年注目を集めている研究話題になっている。しかしながら、オ
ゾン触媒酸化では、その調製方法が多くの要因によって制限され、その中でもpHの影響
が顕著であり、溶液のpHが触媒の等電点よりも大きい場合、触媒の正電荷が陰イオン汚
染物と効果的に反応し、溶液のpHが触媒の等電点よりも小さい場合、触媒の負電荷が陽
イオン汚染物と効果的に反応するため、PKa>pH>PZCまたはPZC>pH>PK
aの場合、触媒オゾン酸化效果が高く、つまり、他の条件下で触媒反応がうまく進行せず
、高pHに適合した触媒を開発することが重要である。
【0003】
カーボンナノチューブ(CNTs)は潜在的な触媒担体の一種であり、その優れた物理的
および化学的特性により、一定の触媒能力があり、また、前処理されたカーボンナノチュ
ーブは亜鉛鉄などの金属イオンとの間良い錯合作用が発生すると指摘されていたが、単独
のカーボンナノチューブの触媒の活性が限られ酸塩基条件下の触媒反応に適応できなくな
り、そして吸着、濾過および分離材料では、現在の産業要求を満たすためにその気孔率お
よび比表面積を改善する必要がある。したがって、3次元構造のカーボンナノチューブ材
料を調製し、その表面を改質することによって、オゾン触媒酸化技術用の高pHに適合し
たカーボンナノチューブオゾン触媒を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、触媒pHの適応性に関する研究がほとんどなく、既存の研究によってはpH適応性
をある程度改善できるが、不可避の欠点があり、以上の研究背景を踏み、本発明は、物理
的および化学的前処理前のカーボンナノチューブを担体として使用し、鉄-亜鉛ドーパン
トにより形成された亜鉛鉄スピネルを活性成分として使用し触媒を調製し、DBP(フタ
ル酸ジブチル)を標的有機物とし、その触媒活性を調べメカニズムを説明し、オゾン触媒
酸化による実際の産業廃水の高度処理のサポートを提供する。
【0005】
酸性条件下では、溶液中の過剰な水素イオンにより、オゾンが反応中に過酸化水素を生成
し、過酸化水素がオゾンの分解を促進し、ヒドロキシルラジカルの生成速度を増大する。
具体的なプロセスが以下のとおりである。
【0006】
【0007】
触媒オゾン処理の過程で、二価の鉄および亜鉛イオンが電子をオゾン分子に移動させヒド
ロキシルラジカルの中間生成物を生成し、反応進行を促進し、Fe2+―Fe3+―Fe
+の連鎖反応を形成する。
【0008】
アルカリ条件下では、オゾンが水酸化物と反応しヒドロキシルラジカルまたは連鎖反応に
重要な中間生成物を生成し、従って、該触媒のアルカリ条件下での反応促進作用が酸性条
件よりも低下するが、依然として顕著な改善がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の考えに基づいて、本発明は、Zn、Feスピネルを担持するカーボンナノチューブ
及びその触媒オゾン調製方法を考案した。カーボンナノチューブ、Zn(NO・6
O、Fe(NO・9HOおよびクエン酸などを原料として、浸漬焼成方法に
よって触媒を調製する。DBPをモデル有機物とし、オゾンの存在下でその触媒性能を調
べ、具体的には以下のとおりである。
【0010】
一、3次元CNTs―Fe/Zn複合材料の調製
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes、CNTs)は典型的な1次
元ナノ材料であり、軽量で、空間構造が完璧であるとともに、独自の機械的、電気的、化
学的特性を備える。3次元カーボンナノチューブ材料は、長さ、幅、高さの3次元のマク
ロ寸法を有するカーボンナノチューブ組成体その界面原子の割合が比較的高く、従来のマ
クロ材料とは異なる性能を示し、優れた電気的、光学的および磁気特性を有する。
【0011】
1、カーボンナノチューブの前処理
(1)市販のカーボンナノチューブを5時間ボールミルした後、平均長さ1μmのCNT
sを得て、ボールミルした後のカーボンナノチューブのアモルファス中断チューブ構造が
増加し、比表面積の活性部位が大幅に増加する。
【0012】
(2)カーボンナノチューブのカルボキシル基の機能修飾:濃硝酸と濃硫酸の体積比3:
1の混酸を酸酸化システムとして使用し、ステップS11で調製されたCNTsを前記混
酸システムに分散させ、混酸によってCNTsの閉じた終端キャップを開き、その反応活
性を向上させる。
【0013】
続いて、上述混合溶液を135℃で14時間攪拌し、室温まで冷却し、pH=6.2にな
るまで洗浄し、凍結乾燥してCNTs―P(Carbon Nanotube―Prep
are)を得て、前記CNTs―P側壁に形成された―OH、―COOHおよびC=Oな
どの活性官能基により、CNTsの反応活性を向上させる。
【0014】
図1に示すように、CNTsの形態に対する酸化処理時間の影響がSEMで観察された。
未処理のCNTsチューブの長さが長く、チューブの表面が滑らかで互いに絡み合ってお
り、凝集がより深刻であり、カーボンナノチューブの分散に悪影響を与えることが分かる
。混酸で酸化されたCNTsには顕著なショートカット現象があり、カーボンナノチュー
ブの表面が粗くなり、チューブの長さが短くなり、互いの絡み合いが減少し、相互絡み合
い現象が大幅に改善され、同時にCNTs中の高い欠点密度および竹型構造によって酸化
中に破片が形成される可能性が低くなる。
【0015】
2、3次元CNTs―P材料の調製
CNTsベースの3次元構造材料は、軽量で多孔質で比表面積が大きいという利点がある
。材料の吸着、濾過および分離に使用され得る。有機および无机吸着に関しては、従来の
粘土や活性炭と比較して、3次元カーボンナノチューブ材料は、より高い平衡速度、より
高い吸着容量および調整可能な表面状態などの利点を有する。
【0016】
(1)等量のCNTs―P水溶液とアルギン酸ナトリウム溶液を取り、均一に混合し金型
に入れ、異なる温度勾配で固体状態まで冷却し、氷のテンプレート法を使用して柔軟な3
次元CNTs材料を調製し、凍結温度制御によりスポンジ内部構造を調整制御する。比較
的高温で凍結すると、水が大きい氷の結晶を生成し、凍結乾燥して大孔径構造を取得し、
皮下的低温で凍結すると、水が小さい氷の結晶を生成し、凍結乾燥して小孔径構造を取得
する。3次元CNTs材料の機械的変形を制御することにより、その吸着速度を制御し、
触媒材料分野での用途が改善される。
【0017】
(2)ステップS21で得られた固体状態の生成物を凍結乾燥した後3次元CNTs―P
を取得する
氷テンプレート法は、多層構造を取得するための有効な方法である。その強力な機械的特
性、生体適合性および幅広い供給源により、アルギン酸ナトリウムは3次元構造材料を強
化するために使用される。CNTs―Pおよびアルギン酸ナトリウムを組成単元として3
次元材料を構築する。
【0018】
まず、等量のアルギン酸ナトリウム溶液およびCNTs―P溶液をとり、完全に均一に混
合し、対象の金型に流し込み、予め凍結した鋼板上にしばらく置いてから、冷蔵庫で様々
な温度で冷凍する。
【0019】
次に、凍結過程中に、氷の結晶の成長速度および核形成速度により氷の結晶の成長形態を
制御し、温度勾配がある値を超えると、水が急速に冷却して核を形成し、多数の小さな氷
の結晶を生成し、等方性の氷テンプレートを形成し、氷の昇華後に残る3次元構造が等方
性になる傾向があり、氷の結晶の成長速度が水冷却核形成速度よりもはるかに高い場合、
氷の結晶が温度勾配に合わせて成長し、氷の結晶サイズが大きくない異方性の氷テンプレ
ートを生成する。
【0020】
この過程では、カーボンナノチューブおよびアルギン酸ナトリウムが組成単元として生成
された氷の結晶で押圧され、比較的均一な配向の膜状組成体に積み重ね、これらの膜状組
成体が互い接触し接続された3次元層間ネットワーク構造を形成し、氷の昇華後に残る3
次元構造が異方性になる傾向がある。本発明では、凍結温度が―50℃であり、真空度<
20Pa、干燥時間が48hであり、つまり氷の結晶の成長速度が水冷却核形成速度より
もはるかに高く、形成した氷テンプレートが異方性になる傾向がある。本発明は、氷テン
プレート法を使用して、異なる形状およびサイズを有する3次元CNTs骨格を調製し、
低い密度(16.5mg/cm)を有する。
【0021】
3、3次元CNTs―Fe/Zn複合材料の調製
(1)モル比1:2:2でZn(NO・6HO、Fe(NO・9HOお
よびクエン酸を改質剤として取り、Fe3+、Zn2+によりCNT表面で大量の活性部位
を提供する。クエン酸を錯合剤として、金属イオンのCNTs―P表面への担持を強化し
、触媒の安定性を高め、一方、クエン酸を燃焼剤として調製された酸化物前駆体の粒子径
が小さく、分散度が良好である。
【0022】
(2)前記改質剤と前記3次元CNTs―Pを1:(5−6)の比例で無水エタノール中
に溶解し、30分超音波処理し、水浴で水分がほとんどなくなるまで蒸発すると尿素を加
え攪拌し混合する。
【0023】
CNTs―Pに担持された改質剤の量が最終生成物CNTs―Fe/Znの触媒性能に直
接影響し、担持量が不十分であると、CNTs―Fe/Znが目的の触媒性能を実現せず
、担持量が多く過ぎると、カーボンナノチューブの壁上の活性部位が覆われ、金属イオン
がしっかり担持されず、簡単に脱落するおそれがある。
ただし、尿素をポロゲンとして使用すると、焼成中の不必要な比表面積の減少を減らすこ
とができる。
【0024】
(3)ステップ(2)で調製された混合物を管状炉に入れ、窒素ガス雰囲気で焼成し、焼
成物を室温まで冷却し、凍結乾燥した後3次元CNTs―Fe/Zn複合材料を得て、具
体的なプロセスパラメータとして、管状炉の焼成中の昇温速度が5℃/分であり、焼成温
度範囲が500―800℃であり、焼成時間が4時間である。
【0025】
カーボンナノチューブが分離しにくい問題、および亜鉛鉄スピネルが析出しやすい問題を
解決するために、本発明は、浸漬焼成法を使用し、ポロゲンを添加し、両者の効果的な結
合を実現し、磁気分離方式により触媒を再利用可能になり、同時にカーボンナノチューブ
上の表面水酸基が金属イオンとの良好な錯合を形成し、金属析出を大幅に削減する。
【0026】
ただし、窒素ガス流量を50mL/分とする必要があり、焼成中に、窒素ガス流量が低す
ぎると、焼成中に生成された排気をできるだけ早く取り除き、窒素ガス流量が高すぎると
、焼成物が乱れ最終収量に悪影響を与える。
【0027】
二、高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の用途
まず、一定濃度の有機廃水を1L容量の反応容器に入れ、濃度50mg/Lの3次元CN
Ts―Fe/Znを加えて、酸素ボンベ内の酸素がオゾン発生器を通過して一定濃度のオ
ゾンを生成し、オゾンと酸素の混合ガス流れを、触媒オゾン酸化実験のために曝気ヘッド
を介して反応容器の底部に送り、最後に、反応容器の頂端から2%のKI溶液に排気して
吸収処理を行う。
【0028】
さらに、前記有機廃水中の処理対象は、シュウ酸、シプロフロキサシン、インジゴ、メチ
ルオレンジ、フェノール、フタル酸ジメチルおよびスルファメトキサゾールを含む。ただ
し、フタル酸ジブチル(DBP)は環境ホルモンおよび内分泌かく乱物質の一種であり、
中国で規制されている汚染物質のリストに含まれ、一般に印刷および染色の廃水に含まれ
、DHPがわずかに溶解し除去し難いため、触媒性能検出用のシミュレートされた有機物
質として使用され、本発明では濃度2mg/LのDHPを選択した。
【発明の効果】
【0029】
従来のオゾン酸化触媒と比較して、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)従来のオゾン酸化触媒は酸性条件またはアルカリ条件でのみ適用できるが、本発明
により調製された3次元CNTs―Fe/Zn触媒は、酸性条件下で優れた触媒性能を有
し、アルカリ環境でも良好な触媒性能を有する。
(2)本発明において、浸漬焼成法を使用し、ZnFeを3次元CNTsの気孔壁
に含浸させCNTs―Fe/Zn触媒を合成し、調製されたCNTs―Fe/Zn触媒は
優れた磁気特性を有し、分離が容易で、優れた回収率を有し、10回実験した後除去率が
10%しか削減されず、コストを効果的に低減できる。
(3)本発明により調製されたCNTs―Fe/Zn触媒は優れたヒドロキシルラジカル
生成率を有し、水酸基捕捉剤の存在下でも依然として良好な触媒効果を有する。
(4)本発明により調製された3次元CNTs―Fe/Zn触媒は、1次元カーボンナノ
チューブ基触媒よりも、高い気孔率および比表面積を有する。汚染物質の吸着に関しては
、より高い平衡速度、より高い吸着容量及び調整可能な表面状態などの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の走査型電子顕微鏡画像である。
図2】本発明の異なるpHでのCNTs―Fe/Znの触媒性能図である。
図3】本発明の異なるオゾン投与量でのCNTs―Fe/Znの触媒性能図である。
図4】本発明のオゾン触媒酸化過程中に亜鉛鉄スピネルとカーボンナノチューブの相乗作用の比較図である。
図5】本発明のカーボンナノチューブの吸着実験の比較図である。
図6】本発明のCNTs―Fe/Znラジカル実験のデータ図である。
図7】本発明のヒドロキシルクエンチング実験の結果データ図である。
図8】本発明のCNTs―Fe/ZnのBoehm滴定実験結果データ図。
図9】本発明のCNTs―Fe/Znの調製方法の概略フローチャートである。
【0031】
[符号の説明]
1 酸素ボンベ
2 オゾン発生器
3 反応容器
31 曝気ヘッド
32 ミリポアフィルター
33 CNTs―Fe/Zn触媒
4 KI溶液
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によって採用される方法および達成する効果をさらに説明するために、本発明の技
術手段を添付の図面を参照して以下に明確かつ完全に説明する。
【0033】
実施例一
本実施例は、本発明の高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の調製プロセス
を説明するために用いられる。
1、材料および機器の準備
前記市販のカーボンナノチューブは、重慶渝時興科技有限公司(YusLab Tech
nology Co., Ltd)から購入し、具体的なパラメータは表1に示される。
表1 CNTパラメータ
【0034】
【0035】
使用した原料および試薬が表2に示される。
表2 主要原料および試薬
【0036】

【0037】
使用した機器および設備が表3に示される。
表3 主要機器及び設備
【0038】

【0039】
2、カーボンナノチューブの前処理
(1)市販のカーボンナノチューブを遊星ボールミルに入れボールミルを行い、平均長さ
1μmのCNTsを得て、未処理のカーボンナノチューブは顕著な絡合現象があり、且つ
長さが長く、ボールミルで処理されたカーボンナノチューブの絡合が減少し、長さが短く
なり、アモルファス構造が増加し、これらの物理的変化はその触媒性能を改善することが
できる。
【0040】
(2)不純物を除去し、酸素含有基を添加し、粉砕したCNTsを500mg計量し、8
0mL混酸(濃硝酸と濃硫酸の体積比3:1)システムに入れ、130℃で14時間攪拌
し、室温まで冷却し、pH=6.2まで洗浄し、凍結乾燥してCNTs―Pを得て、前記
CNTs―Pの側壁に形成された―OH、―COOHおよびC=Oなどの活性官能基によ
って、カーボンナノチューブ活性が改善される。
【0041】
3、3次元CNTs―P材料の調製
(1)等量のCNTs―P水溶液(20mg/mL)とアルギン酸ナトリウム溶液(8m
g/mL)を取り、均一に混合し金型に入れ、異なる温度勾配で固体状態まで冷却し、氷
テンプレート法を使用し柔軟な3次元CNTs材料を調製し、凍結温度の制御によりスポ
ンジ内部構造を調節制御する。比較的高温で凍結すると、水が大きな氷の結晶を生成し、
凍結乾燥して大孔径構造を得て、比較的低温で凍結すると、水が小さな氷の結晶を生成し
、凍結乾燥して小孔径構造を得る。3次元CNTs材料の機械変形を制御することにより
、その吸着速度を制御し、それによりその触媒材料分野の用途が改善される。
【0042】
(2)3次元CNTs―P骨格の凍結乾燥の具体的なパラメータとして、真空度<20P
a、干燥時間が48hであり、ただし、凍結温度と孔径の関係が表4に示される。
表4 凍結温度と3次元CNTs―P孔径の関係
【0043】

【0044】
表4から分かるように、凍結温度が―10℃から―50℃に低下することに伴い、3次元
CNTs―P骨格の孔径も減少し、ネットワークフィルムの厚さも薄くなり、これは、低
い凍結温度条件下で、氷の結晶核形成が加速され、多数の小さいな氷の結晶の生成を助長
するからである。この過程中、CNTs―Fe/Znハイブリッド粒子およびアルギン酸
ナトリウムが氷の結晶の端に移動し、多数のコンパートメントが発生し、CNTs―Fe
/Znハイブリッド粒子およびアルギン酸ナトリウムの含有量が固定の場合、コンパート
メントの数の増加によりコンパートメントを構成する壁の厚さが薄くなり、孔径が小さく
なり、比表面積が増加し、最終生成物の分解能が増加する。したがって、本発明では凍結
温度が―50℃であることが好ましい。
【0045】
4、3次元CNTs―Fe/Zn複合材料の調製
(1)1gの3次元CNTs―Pを計量し、改質剤としてモル比1:2:2でZn(NO
・6HO、Fe(NO・9HOおよびクエン酸を取り混合し、3次元C
NTs―Pと改質剤の質量比が表5に示される。
表5 3次元CNTs―Pと改質剤の質量比
【0046】
【0047】
表5から分かるように、改質剤量の増大に伴い、CNTs―Fe/Znの触媒性能が最初
に上昇し、その後減少する。この現象は、改質剤の量がカーボンナノチューブの理論担持
値の上限に達した後、継続的に改質剤を増加するとカーボンナノチューブ外壁上の活性部
位が覆われ、CNTs―Fe/Znの触媒性能が低下することから発生する。したがって
、本発明では、CNTs―Pと改質剤の質量比が10:57であり、即ち、本実施例では
1gのCNTs―P、1.14gのZn(NO・6HO、3.09gのFe(N
・9HOおよび1.47gのクエン酸を計量することが好ましい。
【0048】
その後計量したCNTs―Pと改質剤を無水エタノールに溶解し、30分超音波処理し、
水浴で水分がほとんどなくなるまで蒸発すると尿素を加え攪拌し混合する。
Fe3+、Zn2+によって3次元CNTs孔径表面に大量の活性部位が提供され、クエン
酸により金属イオンのCNTs―P表面への担持が強化され、触媒の安定性が向上し、尿
素をポロゲンとして添加すると、焼成過程中の不必要の比表面積の減少を削減することが
できる。
【0049】
得られた混合物を管状炉に入れ、流量50mL/分の窒素ガス雰囲気下で焼成し、焼成温
度とCNTs―Fe/Zn触媒オゾン酸化のDBP除去性能(分解能)の影響が表6およ
び表7に示される。
分解能(%)=(C-C)/C×100%
表6 pH=4場合CNTs―Fe/Zn触媒オゾン酸化のDBP除去性能に対する焼成
温度の影響
【0050】

【0051】
表7 pH=9場合CNTs―Fe/Zn触媒オゾン酸化のDBP除去性能に対する焼成
温度の影響

【0052】
表6及び表7から分かるように、焼成温度が400℃から600℃まで上昇すると、CN
Ts―Fe/Znの触媒性能がますます向上し、焼成温度が600℃以上に達すると、C
NTs―Fe/Znの触媒性能が保持するが、焼成温度が800℃まで上昇すると、CN
Ts―Fe/Znの触媒性能が大幅に低下する。図から分かるように、カーボンナノチュ
ーブの比表面積及び孔容積が焼成温度の上昇に伴い、最初に増加し、その後低下する傾向
があり、焼成温度が600℃である場合得られた触媒性能が最も良い。このような現象は
、焼成温度が高すぎるとカーボンナノチューブの微細構造が破壊され、孔構造が崩壊し、
表面焼結の現象が発生し、その比表面積が減少し、有機物質に対する抵抗能力が低下する
からである。したがって、本発明では焼成温度が600℃であることが好ましい。
表6および表7を比較すると、本発明により調製された触媒CNTs―Fe/Znは、酸
性環境下で優れた触媒性能を有し、アルカリ環境下でも触媒性能が良好であり、良いpH
適応性を有し、従来のオゾン触媒が酸性またはアルカリ環境のみ適用できる欠点を解決し
、適用範囲を大幅に拡大し、市場の見通しが良好である。
焼成物を室温まで冷却し、凍結乾燥してCNTs―Fe/Znを得る。
【0053】
実験例
本実験例は、実際応用により高pHに適合したカーボンナノチューブオゾン触媒の相関性
能を説明する。
図9に示すように、2mg/LのDBP溶液を調製し容積1Lの反応容器に入れ、50m
gのCNTs―Fe/Znを加え、酸素ボンベ1の酸素分圧バルブを調節し、吸気量0.
4L/分でオゾン反応容器2に酸素を注入し、オゾン生成量が8mg/分になるように制
御し、オゾンと酸素の混合ガス流れを曝気ヘッド31を介して反応容器3の底部に送り、
触媒オゾン酸化実験を行い、反応容器の頂端から2%のKI溶液4に排気して吸収処理を
行う。
【0054】
図1に示すように、未処理のカーボンナノチューブは顕著な絡合現象があり、且つ長さが
長く、処理されたカーボンナノチューブの絡合が減少し、長さが短くなり、アモルファス
構造が増加し、金属イオンがカーボンナノチューブ表面に結晶成長し、大量の活性部位を
提供し、これらの変化によりCNTs―Fe/Znの触媒性能が改善される。
【0055】
1、ことなるpHでのCNTs―Fe/Znの触媒性能
図2に示すように、異なるpHでの実験により、CNTs―Fe/Znの高pH適応性も
確認され、CNTs―Fe/Znの触媒性能は、中性、酸性及びアルカリ性(pH4―9
)条件下で他の2種類の改質カーボンナノチューブよりも高く、30分で触媒オゾン酸化
DBPの除去率が52%―73%であり、オゾンのみの条件よりも約40%高くなる。
【0056】
2、異なるオゾン投与量の影響
図3に示すように、注入オゾン濃度の増加に伴い、CNTs―Fe/Znの触媒性能は、
DBPの除去率が徐々に上昇するが、増加率が徐々に低下し、注入オゾン濃度が20mg
/Lである場合一定になる。したがって、本発明は、オゾン濃度20mg/L、pH=4
の条件下で行われることが好ましい。
【0057】
3、相乗作用
図4に示すように、亜鉛鉄スピネルを担持するカーボンナノチューブ触媒(CNTs―F
e/Zn)のDBP分解効果がイオン状態の鉄および亜鉛よりも高く、亜鉛鉄スピネルが
物理的添加されたカーボンナノチューブよりも高い。したがって、浸漬焼成法により、亜
鉛鉄スピネルとカーボンナノチューブがオゾン触媒酸化過程に優れた相乗作用を果たす。
【0058】
4、吸着実験
カーボンナノチューブの有機物への吸着は、それ自体の特性および有機物の特性に影響さ
れる。カーボンナノチューブは無極性の分子であり、分子量が小さく、極性の強い有機物
および大分子有機物への吸着能力が低い。カーボンナノチューブの吸着バランスを取るた
めに、飽和吸着量が小さいものをオゾン酸化の目標汚染物質として使用する。
【0059】
図5に示すように、30分でカーボンナノチューブのDBPの除去率が約15%であり、
総除去率の約20%を占めるため、ラジカルの酸化作用がCNTs―Fe/Zn触媒酸化
によるDBPを除去する主なメカニズムである。
【0060】
5、ラジカル実験
図6に示すように、単純なオゾン酸化とCNTs―Fe/Zn触媒を加えたオゾン酸化を
比較組とすると、CNTs―Fe/Znの存在下でヒドロキシルラジカルとHの濃
度および消費量が顕著に増加し、CNTs―Fe/Znはオゾンのヒドロキシルラジカル
およびHへの変換を促進することができる。
【0061】
6、ヒドロキシルクエンチング実験
原理:塩化物イオンは水中の一般的な陰イオンとして、TBAと同じヒドロキシルラジカ
ルを捕捉する能力を持ち、リン酸塩と有機物及びオゾンの反応過程での競争作用により反
応が抑制される。
図7に示すように、ヒドロキシルクエンチング実験結果から分かるように、ヒドロキシル
ラジカルの酸化作用および触媒吸着作用は本発明の主なメカニズムである。
【0062】
7、Boehm滴定実験
Boehm滴定実験は、異なる強度のアルカリと酸性表面酸化物との反応可能性に基づく
酸化物に対する定性的および定量的な分析である。NaHCOは炭表面のカルボキシル
基のもを中和し、NaCOは炭表面のカルボキシル基およびラクトン基を中和できる
が、NaOHは炭表面のカルボキシル基、ラクトン基およびフェノール性水酸基を中和す
ることができる。アルカリ消費量に応じて、対応する官能基の量を算出することができる
【0063】
図8に示すように、Boehm滴定実験により、触媒CNTs―Fe/Zn表面の酸素含
有基(水酸基、カルボキシル基)は触媒に大量の活性部位を提供し、ただし表面水酸基は
主な活性中心である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2020年3月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNTsをボールミルにより5時間研磨した後、平均長さ1μmのCNTsを得るステッ
S11と、CNTsを機能修飾し、濃硝酸と濃硫酸の体積比3:1の混酸を混酸システ
ムとして使用し、ステップS11で得られたCNTsを前記混酸システムに分散させ、1
35℃で14時間攪拌し、室温まで冷却し、pH=6.2になるまで蒸留水で洗浄し、凍
結乾燥してCNTs―Pを得るステップS12を含む、CNTsを前処理するステップS
1と、
等量のCNTs―P水溶液とアルギン酸ナトリウム溶液を取り均一に混合して金型に入れ
金型に入れられ均一に混合されたCNTs―P水溶液とアルギン酸ナトリウム溶液との
混合溶液を異なる温度勾配で固体状態に冷却するステップS21と、ステップS21で得
られた固体状態の生成物を凍結乾燥して、3次元CNTs―P骨格を得るステップS22
とを含む、3次元CNTs―P骨格を調製するステップS2と、
モル比1:2:2でZn(NO・6HO、Fe(NO・9HOおよびク
エン酸を改質剤として計量するステップS31と、前記改質剤と前記3次元CNTs―P
骨格を1:(5〜6)の質量比率で混合し、前記混合物を無水エタノールに溶解し、30
分超音波処理し、水浴の水分が蒸発して水浴の水分がなくなったときに尿素を混合し攪拌
するステップS32と、ステップS32で調製された混合物を管状炉に入れ、窒素ガス雰
囲気中で焼成し、焼成物を室温まで冷却し、凍結乾燥した後3次元CNTs―Fe/Zn
複合材料を得ることを含むステップS33とを含む3次元CNTs―Fe/Zn複合材料
を調製するステップS3と、を含むことを特徴とする高pHに適合したCNTsオゾン触
媒の調製方法。