【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0044】
(1)試験例1:頭皮用及び/又は毛髪用組成物の評価
【0045】
(頭皮用及び/又は毛髪用組成物の調製)
実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物(頭皮用ローション)を、次に示す組成となるように、公知の製造方法により成分を混合して調製した。なお、(A)成分としてはリン酸アスコルビルMgを用いた。
実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物の組成:
リン酸アスコルビルMg 0.25質量%、フィチン酸 0.8質量%、グリシン 4質量%、トコフェロール 0.05質量%、プロピレングリコール 3質量%、フェノキシエタノール 0.5質量%、PEG−40水添ヒマシ油 0.5質量%、PEG−60水添ヒマシ油 0.5質量%、香料 0.1質量%、クエン酸Na 2.3質量%、精製水 88質量%。
【0046】
(評価方法)
以下に示す継続試験を行い、調製した実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物を継続使用により評価した。
【0047】
(継続試験)
継続試験は、ヘルシンキ宣言に則り、倫理委員会の承認を得た同意書に同意した被験者(根元部分の毛髪にうねりが見られる45〜55歳の日本人女性10名)を対象として、下記[1−1]〜[1−5]の手順に従って行った。
【0048】
[1−1]継続試験開始前に、各被験者に対して、毛髪の分け目とつむじの周囲を除く頭頂部の頭皮から粘着テープを用いて頭皮細菌叢の採取を行った後、後ろ姿及び頭頂部の写真撮影を行った。その後、頭頂部の毛髪数本を根元からハサミで切り取った。
[1−2]各被験者に対して、実施例1の頭皮用ローションを1日1回、1か月間継続して使用した。実施例1の頭皮用ローションは、市販のシャンプーで頭皮及び毛髪を洗浄してすすぎ後の濡れた頭皮全体及び根元付近の毛髪に約2gを塗布し、その後洗い流さずに、ドライヤーで頭皮と毛髪を乾燥させる方法で使用した。
[1−3]継続試験の1カ月後の各被験者に対して、上記[1−1]と同様に頭皮細菌叢の採取を行った。
[1−4]上記[1−2]、[1−3]の手順を2回繰り返し行った。
[1−5]継続試験開始3か月後における被験者の後ろ姿及び頭頂部を上記[1−1]と同様にして写真撮影を行った。また、頭頂部の毛髪数本を根元からハサミで切り取った。
【0049】
(頭皮細菌叢の解析)
上記[1−1]、[1−3]、[1−4]の手順において、各被験者から採取した頭皮細菌叢を次に示す方法で解析した。各被験者の頭皮細菌叢の採取に用いた粘着テープから、核酸を常法により抽出した。続いて、抽出後の核酸を用いて、PCR法により16S rRNA遺伝子の増幅を行った。そして、増幅した上記16S rRNA遺伝子を用いて、次世代シークエンサー(Illumina社製のMilseq(商品名))により、16S rRNA遺伝子のDNA解析を行った。DNA解析の結果を用いて、解析ツールのQIIMEにより、採取した頭皮細菌叢における各種細菌の属(genus)レベルの存在割合を求めた。
【0050】
(頭皮細菌叢の評価)
継続試験開始前の被験者の頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌の存在割合を基準として、継続試験開始1か月後、継続試験開始2か月後、継続試験開始3か月後の頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌の存在割合について、被験者10名から算出した各平均値を比較することで評価した。また、比較対象として、スタフィロコッカス属の細菌の存在割合も同様に評価した。
【0051】
(毛髪状態の評価)
日常的に毛髪の状態評価を行っている評価者2名に、継続試験開始前の各被験者の後ろ姿及び頭頂部の写真の毛髪状態を基準として、継続試験開始3か月後の各被験者の後ろ姿及び頭頂部の写真における根元部分(根元側から約5cmまでの部位)の毛髪のツヤ、及び毛髪のまとまりについて、「優れる」、「変化がない」、又は「劣る」のいずれかを回答させて、下記評価基準に従って評価した。
なお、加齢により毛髪にうねりが生じると根元部分の毛髪のツヤと毛髪のまとまりが減少するため、各被験者の継続試験開始前と継続試験開始3か月後との根元部分の毛髪のツヤと毛髪のまとまりを比較して評価することで、継続試験開始3か月後において加齢による毛髪の状態変化に改善が見られたかどうかが評価可能となる。
【0052】
(毛髪のツヤの評価基準)
〇:評価者2名が、継続試験開始前の毛髪のツヤに比べて、継続試験開始3か月後の毛髪のツヤが優れていると回答。
−:評価者1名以上が、継続試験開始前の毛髪のツヤに比べて、継続試験開始3か月後の毛髪のツヤに変化がないと回答。
×:評価者1名以上が、継続試験開始前の毛髪のツヤに比べて、継続試験開始3か月後の毛髪のツヤが劣ると回答。
【0053】
(毛髪のまとまりの評価基準)
〇:評価者2名が、継続試験開始前の毛髪のまとまりに比べて、継続試験開始3か月後の毛髪のまとまりが優れていると回答。
−:評価者1名以上が、継続試験開始前の毛髪のまとまりに比べて、継続試験開始3か月後の毛髪のまとまりに変化がないと回答。
×:評価者1名以上が、継続試験開始前の毛髪のまとまりに比べて、継続試験開始3か月後の毛髪のまとまりが劣ると回答。
【0054】
(評価結果)
表1及び
図1に頭皮細菌叢の評価結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1、
図1に示す結果から、実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物を用いた継続試験1カ月〜3か月後では、継続試験開始前に比べて、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌の存在割合が減少していた。また、比較対象のスタフィロコッカス属の細菌の存在割合は、継続試験開始前に比べて、継続試験1カ月〜3か月後で減少傾向は見られなかった。
そのため、実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物を用いれば、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌の存在割合を低下できることがわかる。
【0057】
表2に毛髪状態の評価結果を示す。なお、表2において、各被験者をA〜Jと記号化して表記している。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示す結果から、被験者のうち10名中7名(70%)が毛髪のツヤ及びまとまりの両方に優れていた(被験者D〜J)。また、被験者のうち10名中2名(20%)が毛髪のツヤ、毛髪のまとまりのいずれかに優れていた(被験者A、C)。そのため、10名中9名(90%)の被験者に毛髪のツヤ、毛髪のまとまりの両方あるいはいずれか一方が優れる結果であった。したがって、実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物を用いれば、加齢に伴う毛髪の状態変化である毛髪のツヤ、毛髪のまとまりの改善に優れることがわかる。
【0060】
図2に、同一被験者における継続試験開始前と継続試験3か月後の切り取った毛髪の写真を示す。
図2に示す通り、継続試験開始前の切り取った毛髪に比べて、継続試験3か月後の切り取った毛髪は、毛髪の根元部分のうねりが改善されていた。また、その他の被験者においても、同様に継続試験開始前の切り取った毛髪に比べて、毛髪の根元部分のうねりに改善が認められた。そのため、実施例1の頭皮用及び/又は毛髪用組成物を用いれば加齢による毛髪の状態変化を改善できることがわかる。
【0061】
(2)試験例2:エンテロコッカス属の細菌による細胞老化を抑制する成分の検討
表皮角化細胞とエンテロコッカス属の細菌との共培養を行い、表皮角化細胞の細胞老化の指標としてSA−β−Gal活性測定を用いることで、表皮角化細胞の老化を抑制する成分の検討を行った。評価方法は、以下[2−1]〜[2−4]で示す通りに行った。なお、以下の記載において、表皮角化細胞を「NHEK」、相対SA−β−Gal活性を「相対β−Gal活性」とそれぞれ表記することがある((3)参考試験例1、及び(6)参考試験例4においても同様)。
【0062】
[2−1]細胞培養用の培地(クラボウ社製のHumedia KG−2)で増殖させたNHEK(クラボウ社製:製品名KK−4009)を細胞培養用の24穴プレートに1.0×10
5cells/wellで播種し、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。また、市販されているエンテロコッカスの細菌であるEnterococcus sp.(ATCC 9625)を培養試験管にBHI培地(BD社製)5mLで37℃の条件下において一晩培養した。
[2−2]一晩培養したNHEKの細胞培養用の24穴プレートから細胞培養用の培地を除去し、PBSで洗浄した後、上記細胞培養用の培地からハイドロコルチゾン及び抗菌剤を除いた培地を500μL加えた。また、一晩培養したエンテロコッカスの細菌の培養試験管からBHI培地を除去しPBSで1度洗浄した後、吸光度OD600=0.2になるように、上記細胞培養用の培地からハイドロコルチゾン及び抗菌剤を除いた培地を加え、エンテロコッカス属の細菌の希釈液とした。
[2−3]NHEKを播種した24穴プレートに細胞培養用インサートを設置し、そこに上記[2−1]で調製したエンテロコッカス属の細菌の希釈液を500μL加えたもの(試験例2b〜2eで使用)と、エンテロコッカス属の細菌の希釈液の代わりに上記細胞培養用の培地からハイドロコルチゾン及び抗菌剤を除いた培地のみを加えたもの(試験例2aで使用:陰性コントロール)を準備した。続いて、試験例2c〜2eの各24穴プレートに次の表3に示す添加成分を加えた(表3中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(mg/mL))。
[2−4]上記[2−3]の操作が完了した24穴プレートを、37℃、5%CO
2の条件下2日間培養し、その後96―well Cellular Senescence Assay Kit(Cell Biolabs社製)を用いて、キットに記載のプロトコルに従ってSA−β−Gal活性を測定した。そして、試験例2a(陰性コントロール)におけるSA−β−Gal活性を100とした場合の各試験例2b〜2eのSA−β−Gal活性の相対値(%)である相対SA−β―Gal活性を求めた。なお、相対β―Gal活性の値が低いほど、NHEKの細胞老化がより抑制されていることを示す。
【0063】
表3、
図3に、試験例2a〜2eの相対β−Gal活性の結果を示す。なお、表3における「NHEKとエンテロコッカス属の細菌との共培養」の欄において、「なし」の表記は、上記[2−3]においてNHEKを播種した24穴プレートに設置した細胞培養用インサートに、細胞培養用の培地からハイドロコルチゾン及び抗菌剤を除いた培地のみを加えたものを意味する。また、「あり」の表記は、上記[2−3]においてNHEKを播種した24穴プレートに設置した細胞培養用インサートに、上記[2−1]で調製したエンテロコッカス属の細菌の希釈液を500μL加えたものを意味する。また、表3中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(mg/mL)を表し、「−」は未添加であることを示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3及び
図3に示す結果から、試験例2bと試験例2a(陰性コントロール)とを比較すると、エンテロコッカス属の細胞と共培養したNHEKの相対β−Gal活性(試験例2b)は、エンテロコッカス属の細胞と共培養しなかったNHEKの相対β−Gal活性(試験例2a:陰性コントロール)よりも高くなっていることがわかる。そのため、NHEKとエンテロコッカス属の細菌との共培養によって、NHEKの細胞老化が促進されることが理解できる。また、各種添加成分を用いた試験例2c〜2eを比較すると、試験例2cにおける相対β−Gal活性は、試験例2d、2eにおける相対β−Gal活性に比べて、値が低いことがわかる。このことから、リン酸アスコルビルMg及びフィチン酸を併用したもの(試験例2c)は、リン酸アスコルビルMg及びマンニトールを併用したもの(試験例2d)やリン酸アスコルビルMg単独のもの(試験例2e)に比べて、エンテロコッカス属の細菌の共培養によるNHEKの細胞老化を抑制できることが理解できる。なお、試験例2cにおける相対β−Gal活性は、試験例2a(陰性コントロール)における相対β−Gal活性よりも値が低くなっており、NHEKの細胞老化の抑制に優れることが認められる。
この結果から、アスコルビン酸誘導体であるリン酸アスコルビルMgと、フィチン酸とが頭皮用及び/又は毛髪用組成物に配合されることで、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌による頭皮又は毛髪の老化を抑制できると考えられる。
【0066】
(3)参考試験例1:NHEKの老化抑制試験1
細胞培養用の培地(クラボウ社製のHumedia KG−2)で増殖させたNHEK(クラボウ社製:製品名KK−4009)を細胞培養用の24穴プレートに1.0×10
5cells/wellで播種し、37℃、5%CO
2の条件下で一晩培養した。その後、培地を除去し、PBSで洗浄した後、上記の細胞培養用の培地からハイドロコルチゾン及び抗菌剤を除いた培地を500μL加えた。続いて、試験例3a〜3fとして表4に示す各添加成分を24穴プレートに加えた(表4中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(質量%))。
その後、24穴プレートを、37℃、5%CO
2の条件下2日間培養し、その後96―well Cellular Senescence Assay Kit(Cell Biolabs社製)を用いて、キットに記載のプロトコルに従って細胞老化マーカーの一種であるSA−β−Gal活性を測定した。そして、試験例3aにおけるSA−β−Gal活性を100とした場合の各試験例3b〜3fのSA−β−Gal活性の相対値(%)である相対SA−β−Gal活性を求めた。なお、相対β―Gal活性の値が低いほど、NHEKの細胞老化がより抑制されていることを示す。
【0067】
表4に添加成分と相対β−Gal活性の評価結果を示す。なお、表4中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(質量%)を表し、「−」は未添加であることを示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示す結果から、試験例3b〜3eの相対β−Gal活性は、試験例3aの相対β−Gal活性に比べて、値が低かった。しかし、試験例3fの相対β−Gal活性は、試験例3aの相対β−Gal活性に比べて、値が高かった。そのため、試験例3b〜3eに用いたアスコルビン酸誘導体又はアスコルビン酸により、NHEKの細胞老化を抑制できることが理解できる。
【0070】
(4)参考試験例2:エンテロコッカス属の細菌による過酸化水素の産生の抑制試験
ある種のエンテロコッカス属の細菌は、細胞膜のシトクロームによって、過酸化水素を産生させることが報告されている(Mark M.Huycke, et al., (1996) The Journal of Infectious Diseases, 173:743-6)。そのため、頭皮や毛髪の老化の原因は、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌が産生した過酸化水素によって、頭皮の表皮角化細胞や毛包細胞が酸化を受けることや、毛髪が酸化を受けることが一因と考えられ、エンテロコッカス属の細菌による過酸化水素の産生を抑制できる成分を検討した。
【0071】
(評価方法)
参考試験例2の検討は、次の評価方法により行った。市販されているエンテロコッカスの細菌であるEnterococcus sp.(ATCC 9625)をBHI寒天平培地(BD社製)で37℃の条件下で一晩培養した。その後、BHI寒天平培地の出現コロニーを培養試験管に移し、BHI培地(BD社製)5mLを加え37℃の条件下において一晩培養した。次に、培養試験管から培地を除去した後、培養試験管にフィチン酸を0.08質量%含むPBSを加えたものと、培養試験管にPBSのみを加えたものとを準備し、37℃で8時間処理した。処理後、培養試験管中の溶液を除去し、PBSで洗浄した。その後、上記Markらの報告(Mark M.Huycke, et al., (1996) The Journal of Infectious Diseases, 173:743-6)に記載の方法を用いて、フェリシトクロームcの酸化を比色測定して過酸化水素濃度を測定した。この測定は、測定時間0分から60分まで1分ごとの550nmの吸光度を測定することで、0分における550nmの吸光度の値を1とした場合の各測定時間における550nmの吸光度の相対値である相対550nm吸光度を算出して行った。なお、この相対550nm吸光度の値が低いほど、エンテロコッカス属の細菌が産生する過酸化水素の産生量が少ないことを示す。
【0072】
(評価結果)
図4に示す評価結果から、試験成分であるフィチン酸を用いたもの(試験例4b)は、試験成分を添加しなかったもの(試験例4a)に比べて、相対550nm吸光度の値が低かった(20〜60分における試験例4a、4bの比較)。
この結果から、フィチン酸はエンテロコッカス属の細菌による過酸化水素の産生を抑制できることがわかる。
【0073】
ここで、上記(3)参考試験例1及び上記(2)試験例2で得られた各結果と、本参考試験2で得られた結果とを合わせて考察すると、上記(3)参考試験例1でNHEKの細胞老化が抑制できた「アスコルビン酸誘導体又はアスコルビン酸」と、本参考試験例2でエンテロコッカス属の細菌による過酸化水素の産生が抑制できた「フィチン酸」とを組み合わせることによって、上記(2)試験例2で示す結果(試験例2b〜2eの比較)と同様に、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌による頭皮又は毛髪の老化をより抑制できると考えられる。また、「アスコルビン酸誘導体又はアスコルビン酸」と「フィチン酸」とを頭皮用及び/又は毛髪用組成物に配合されたものとすれば、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌による頭皮又は毛髪の老化を抑制可能であると考えられる。
【0074】
(5)参考試験例3:エンテロコッカス属の細菌の増殖抑制試験
細胞培養用の96穴プレートにBHI培地(BD社製)を300μL入れ、市販されているエンテロコッカスの細菌であるEnterococcus sp.(ATCC 9625)を終濃度がOD600=0.2の1/100になるように播種した。次に、表5に示す添加成分をそれぞれ培地中に添加した(表5中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(質量%)であり、「−」は未添加である)。
続いて、96穴プレートの蓋に曇り止め剤(山本光学株式会社製のスイマーズデミストSPS−311)を塗布し、蓋を滅菌水で軽く洗浄し乾燥させた後、パラフィルムで96穴プレートを密閉してプレートリーダー(コロナ電気株式会社製のSH−9000)にセットした。そして、上記プレートリーダーを用いて、96穴プレートの各ウェルの培養直後(0時間目)の吸光度(600nm)を測定した。さらに、96穴プレートを1時間に1度、10秒間振とうさせながら、18時間後まで吸光度(600nm)の測定を行った。
なお、吸光度の値が低いほど、エンテロコッカスの細菌の増殖数が少ないことを示す。
【0075】
【表5】
【0076】
結果を
図5に示す。グリシンを添加した試験例5bは、添加成分なしの試験例5a及びバリンを添加した試験例5cに比べて、600nm吸光度の値が低く、エンテロコッカス属の細菌の増殖を抑制していた(4〜18時間における試験例5a〜5cの値の比較)。そのため、グリシンはエンテロコッカス属の細菌の増殖を抑制する作用を有することが理解できる。また、この結果から、頭皮用及び/又は毛髪用組成物にグリシンが配合されたものとすれば、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌の増殖を抑制できると考えられる。
【0077】
(6)参考試験例4:NHEKの老化抑制試験2
上記の(3)参考試験例1と同様の評価方法を用い、添加成分のみを表6に示すものに変更して、相対β―Gal活性を測定することで細胞の老化抑制効果のある成分を検討した(表6中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(質量%))。
なお、相対β―Gal活性の値が小さいほど、NHEKの細胞老化がより抑制されていることを示す。
【0078】
表6に添加成分と相対SA−β−Gal活性の評価結果を示す。なお、表6中の各添加成分の数字は培地中に添加した成分の終濃度(質量%)を表し、「−」は未添加であることを示す。
【0079】
【表6】
【0080】
表6に示す結果から、試験例6bの相対β−Gal活性は、試験例6aの相対β−Gal活性に比べて、値が小さかった。また、試験例6cの相対β−Gal活性は、試験例6aの相対β−Gal活性と値が近いものであった。そのため、試験例6bに用いたトコフェロールは、NHEKの細胞老化を抑制できることが理解できる。また、この結果から、頭皮用及び/又は毛髪用組成物にトコフェロールが配合されたものとすれば、頭皮細菌叢におけるエンテロコッカス属の細菌による頭皮の細胞老化を抑制できると考えられる。